(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】情報処理システム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G06F 21/60 20130101AFI20230905BHJP
G06F 8/77 20180101ALI20230905BHJP
G16Y 10/25 20200101ALI20230905BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20230905BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20230905BHJP
G16C 60/00 20190101ALI20230905BHJP
【FI】
G06F21/60
G06F8/77
G16Y10/25
G16Y40/20
G06Q50/04
G16C60/00
(21)【出願番号】P 2020115210
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2022-03-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 正雄
(72)【発明者】
【氏名】庄司 哲也
【審査官】宮司 卓佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-215074(JP,A)
【文献】特開2015-221276(JP,A)
【文献】特開2014-056549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/60
G06F 8/77
G16Y 10/25
G16Y 40/20
G06Q 50/04
G16C 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユーザ端末と情報処理装置と
前記ユーザ端末毎に設けられた記憶装置とを備える情報処理システムであって、
前記ユーザ端末は、
材料に関する第1データと、該材料を計測することにより得られるデータであって、前記第1データよりも機密度が低いデータである第2データとの組み合わせに対してデータIDを付与し、
前記第1データと前記データIDとのペアを第1記憶部へ格納し、
前記第2データと前記データIDとのペアを前記情報処理装置へ送信し、
前記情報処理装置は、
前記ユーザ端末から送信された、前記第2データと前記データIDとのペアを受信し、
前記第2データと前記データIDとのペアを
、前記ペアを送信した前記ユーザ端末に対応する前記記憶装置の第2記憶部へ格納し、
前記ペアを送信した前記ユーザ端末に対応する前記記憶装置の分析手法記憶部から、前記第2データに応じて1以上の分析手法を選択し、選択した1以上の分析手法によって、前記第2データに応じた材料分析を行い、前記第2データに対応する分析結果データを生成し、
前記分析結果データを前記ユーザ端末へ送信し、
前記第1データは、前記材料を製造する際の工程に関するデータ及び前記材料の性能に関するデータを含み、
前記第2データは、前記材料を所定の計測方法により計測した際に得られるデータを含む、
情報処理システム。
【請求項2】
前記第1記憶部は、前記ユーザ端末が有する記憶部とは異なる記憶部である、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記情報処理システムは、前記第1データを記憶するための複数の記憶部を更に備えており、
前記第1データは、前記第1データの機密度のレベルに応じて複数の前記記憶部のうちの何れかの前記記憶部へ記憶される、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記ユーザ端末は、前記データIDをキーとして使用することにより、前記第1記憶部に記憶された前記第1データと前記第2記憶部に記憶された前記第2データとを対応付け、材料開発に関する統計分析を行う、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項5】
複数のユーザ端末と情報処理装置と
前記ユーザ端末毎に設けられた記憶装置とを備える情報処理システムにおいて実行される情報処理方法であって、
前記ユーザ端末が、
材料に関する第1データと、該材料を計測することにより得られるデータであって、前記第1データよりも機密度が低いデータである第2データとの組み合わせに対してデータIDを付与し、
前記第1データと前記データIDとのペアを第1記憶部へ格納し、
前記第2データと前記データIDとのペアを前記情報処理装置へ送信し、
前記情報処理装置が、
前記ユーザ端末から送信された、前記第2データと前記データIDとのペアを受信し、
前記第2データと前記データIDとのペアを
、前記ペアを送信した前記ユーザ端末に対応する前記記憶装置の第2記憶部へ格納し、
前記ペアを送信した前記ユーザ端末に対応する前記記憶装置の分析手法記憶部から、前記第2データに応じて1以上の分析手法を選択し、選択した1以上の分析手法によって、前記第2データに応じた材料分析を行い、前記第2データに対応する分析結果データを生成し、
前記分析結果データを前記ユーザ端末へ送信し、
前記第1データは、前記材料を製造する際の工程に関するデータ及び前記材料の性能に関するデータを含み、
前記第2データは、前記材料を所定の計測方法により計測した際に得られるデータを含む、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソースコードの開示なしで解析サービスを実現する情報処理装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。特許文献1に開示されている情報処理装置は、ユーザがソースコードの解析過程のうちの少なくともいずれか1の工程において作成された中間形式のデータ(ファイル)を、解析サービス提供者が管理する情報処理装置へ渡す。そして、情報処理装置は、それを元に解析を続けた結果として得られるレポートをユーザに受け渡す(例えば、段落[0032]を参照)。これにより、ユーザは、ソースコードの開示をすることなく解析サービスを利用することができる。このため、ユーザは、膨大な時間をかけて作成された製品情報であるソースコード自体を解析サービス提供者に開示せずに済む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示の技術は、ソースコードを対象とする技術であり、その他の機密度が高いデータについては考慮されていない。
【0005】
例えば、材料分析を行う際には、その材料の製造プロセスに関するデータ等は機密度が高い情報であり、その情報を他者に開示することは好ましくない。
【0006】
一方で、分析対象の材料を計測することにより得られる計測データは、材料の製造プロセスに関するデータに比べれば機密度は低い。このため、例えば、ユーザが材料の計測データをサーバへ送信し、そのサーバが計測データに応じた分析結果を出力するような、ネットワークを介した材料分析のサービスが考えられる。
【0007】
しかし上記特許文献1に開示の技術は、ソースコードのみが対象であり、材料の分析に関しては考慮されていない。このため、上記特許文献1に開示の技術は、ユーザが、ネットワークを介して材料分析のサービスを利用する場合に機密度が高いデータを適切に管理することができない、という課題がある。
【0008】
本発明は、上記事実を考慮し、ネットワークを介した材料分析のサービスにおいて、機密度が高いデータを適切に管理することができる情報処理システム及び情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1態様の情報処理システムは、ユーザ端末と情報処理装置とを備える情報処理システムであって、前記ユーザ端末は、材料に関する第1データと、該材料を計測することにより得られるデータであって、前記第1データよりも機密度が低いデータである第2データとの組み合わせに対してデータIDを付与し、前記第1データと前記データIDとのペアを第1記憶部へ格納し、前記第2データと前記データIDとのペアを前記情報処理装置へ送信し、前記情報処理装置は、前記ユーザ端末から送信された、前記第2データと前記データIDとのペアを受信し、前記第2データと前記データIDとのペアを第2記憶部へ格納し、前記第2データに応じた材料分析を行い、前記第2データに対応する分析結果データを生成し、前記分析結果データを前記ユーザ端末へ送信する、情報処理システムである。
【0010】
ユーザ端末は、材料に関する第1データと、該材料を計測することにより得られるデータであって、第1データよりも機密度が低いデータである第2データとの組み合わせに対してデータIDを付与し、第1データとデータIDとのペアを第1記憶部へ格納する。そして、ユーザ端末は、第2データとデータIDとのペアを情報処理装置へ送信する。そして、情報処理装置は、ユーザ端末から送信された、第2データとデータIDとのペアを受信し、第2データとデータIDとのペアを第2記憶部へ格納する。また、情報処理装置は、第2データに応じた材料分析を行い、第2データに対応する分析結果データを生成し、分析結果データをユーザ端末へ送信する。これにより、ネットワークを介した材料分析のサービスにおいて、機密度が高いデータを適切に管理することができる。
【0011】
第2態様の情報処理システムの前記第1データは、前記材料を製造する際の工程に関するデータ及び前記材料の性能に関するデータの何れか一方または両方を含む。これにより、材料を製造する際の工程に関するデータ又は材料の性能に関するデータの情報漏洩のリスクを低減させることができる。
【0012】
第3態様の情報処理システムの前記第1記憶部は、前記ユーザ端末が有する記憶部とは異なる記憶部である。ユーザ端末自身が有する記憶部ではなくとも、情報漏洩のリスクが低い記憶部を設けることは可能である。そのため、ユーザ端末自身が有する記憶部とは異なり、かつ情報漏洩のリスクが低い第1記憶部へ第1データを格納することにより、機密度が高いデータを適切に管理することが可能となる。
【0013】
第4態様の情報処理方法は、ユーザ端末と情報処理装置とを備える情報処理システムにおいて実行される情報処理方法であって、前記ユーザ端末が、材料に関する第1データと、該材料を計測することにより得られるデータであって、前記第1データよりも機密度が低いデータである第2データとの組み合わせに対してデータIDを付与し、前記第1データと前記データIDとのペアを第1記憶部へ格納し、前記第2データと前記データIDとのペアを前記情報処理装置へ送信し、前記情報処理装置が、前記ユーザ端末から送信された、前記第2データと前記データIDとのペアを受信し、前記第2データと前記データIDとのペアを第2記憶部へ格納し、前記第2データに応じた材料分析を行い、前記第2データに対応する分析結果データを生成し、前記分析結果データを前記ユーザ端末へ送信する、情報処理方法である。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、ネットワークを介した材料分析のサービスにおいて、機密度が高いデータを適切に管理することができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る情報処理システムの概略ブロック図である。
【
図2】端末記憶部に格納されるデータの一例を示す図である。
【
図3】計測データと分析結果データの一例を示す図である。
【
図4】分析手法記憶部に格納されるデータの一例を示す図である。
【
図5】データ記憶部に格納されるデータの一例を示す図である。
【
図6】実施形態に係るユーザ端末、サーバ、及び記憶装置のコンピュータの構成例を示す図である。
【
図7】実施形態に係る情報処理システムで行われる第1の情報処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態に係る情報処理システムで行われる第2の情報処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
【0017】
複数の分析手法を用いて材料の分析を行う場合には、膨大な手間と時間がかかる。また、例えば、分析対象の材料が複数存在する場合又は1つの材料に対して複数のサンプルが存在する場合、それらの複数の材料の各々に対しても各分析手法を用いた分析を実施する必要があり、その手間と時間は膨大なものとなる。
【0018】
そこで、本実施形態の情報システムは、ユーザが操作する端末であるユーザ端末を介して材料に関連するデータをクラウド上のサーバへ送信する。そして、サーバは受信したデータに基づいて材料分析を行い、その分析結果のデータ(以下、単に「分析結果データ」という。)をユーザ端末へ送信する。これにより、ユーザは、材料の分析結果データを効率的に得ることができる。
【0019】
なお、材料に関連するデータには、機密度が高いデータが含まれている場合がある。例えば、材料を製造する際の工程に関するデータ及び材料の性能に関するデータ等は、材料を計測することにより得られる計測データよりも機密度は高い。これらの機密度の高いデータについては、ネットワークを介した材料分析のサービスを受ける際、外部のサーバへ送信するのは好ましくない。
【0020】
そこで、本実施形態の情報システムのユーザ端末は、材料を計測することにより得られる計測データは外部のサーバへ送信し、計測データとは異なる機密度の高いデータはユーザ端末の記憶部又は外部のサーバとは異なる特定の記憶部へ格納する。これにより、ネットワークを介した材料分析のサービスにおいて、機密度が高いデータを適切に管理することができる。
【0021】
以下、図面を用いて実施形態の情報処理システムについて説明する。
【0022】
図1は、実施形態に係る情報処理システム10の機能構成の一例を示すブロック図である。情報処理システム10は、
図1に示されるように、複数のユーザ端末12A,12B,・・・,12Zと、情報処理装置の一例であるサーバ14と、複数の記憶装置16A,16B,・・・,16Zとを備える。複数のユーザ端末12A,12B,・・・,12Zとサーバ14とは、例えば、インターネット等のネットワーク13を介して接続される。また、サーバ14と複数の記憶装置16A,16B,・・・,16Zとは、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)又はインターネット等のネットワークを介して接続される。なお、以下では、1つのユーザ端末を指し示す場合には、単に、ユーザ端末12と称する。また、1つの記憶装置を指し示す場合には、単に、記憶装置16と称する。
【0023】
(ユーザ端末)
【0024】
複数のユーザ端末12A,12B,・・・,12Zの各々は、複数の異なるユーザによって操作される。
【0025】
図1に示されるように、1つのユーザ端末12は、端末制御部120と、端末記憶部122と、端末送信部124と、端末受信部126とを備えている。
【0026】
ユーザは、分析対象の材料に関するデータ(以下、単に「材料データ」と称する。)を、自身が操作するユーザ端末12へ入力する。
【0027】
材料データには様々な種類のデータが含まれている。例えば、材料データには、材料を製造する際の工程に関するデータを表す製造工程データ、材料の性能に関するデータである性能データ、及び材料を所定の計測方法によって計測することにより得られたデータである計測データ等が含まれている。
【0028】
製造工程データは、例えば、材料を製造する際の工程に関するデータであり、材料の製造工程における温度、時間、及び圧力等のデータである。また、性能データは、例えば、材料の強度、耐久性、及び靭性等のデータである。計測データは、材料を所定の計測方法により計測した結果得られるデータである。なお、製造工程データ及び性能データは、第1データの一例である。また、計測データは第2データの一例である。
【0029】
計測データは、材料に対して何らかの計測を行った場合に得られるデータである。例えば、材料に対してX線小角散乱(Small-Angle X-ray Scattering: SAXS)法を適用し、材料を構成する粒子の粒径分布等を得たい場合には、SAXS法による計測によって得られるデータが計測データである。
【0030】
端末制御部120は、ユーザから入力された材料データを受け付ける。
【0031】
端末制御部120は、材料データのうちの、製造工程データと性能データと計測データの組み合わせに対し共通のデータIDを付与する。そして、端末制御部120は、製造工程データと性能データとデータIDとの組み合わせを端末記憶部122に格納する。
【0032】
図2に、端末記憶部122に格納されるデータの一例を示す。
図2に示されるように、製造工程データの一例である、材料を製造する際の「温度」及び「時間」等のデータ30と、性能データの一例である、材料の「強度」及び「耐久性」等のデータ32と、データIDとが対応付けられている。ここで、データID「00001」に対応付けられている、温度:A1、時間:B1、強度:C1、及び耐久性:D1は、同一の材料に関連するデータである。
【0033】
端末送信部124は、端末制御部120の処理により得られた、データIDと計測データとのペアを、ネットワーク13を介してサーバ14へ送信する。なお、端末送信部124は、ユーザ端末12の識別情報を表すユーザIDと分析手法を識別するための分析手法IDもサーバ14へ送信する。
【0034】
後述するサーバ14において、ユーザ端末12から送信された計測データを用いた分析が行われる。例えば、ユーザ端末12は、
図3に示されるような計測データ20をサーバ14へ送信する。
図3に示される計測データ20はSAXS法による計測によって得られるデータであり、計測データ20は散乱角度x及び散乱強度yである。サーバ14はその計測データ20を分析することにより分析結果データ22を生成し、分析結果データ22をユーザ端末12へ送信する。なお、
図3に示される分析結果データ22は、材料に含まれる粒子の粒径とその粒径の粒子の存在比率である。
【0035】
端末受信部126は、サーバ14から送信された分析結果データを受信し、その分析結果データを表示部(図示省略)へ表示させる。
【0036】
(記憶装置)
【0037】
複数の記憶装置16A,16B,・・・,16Zの各々は、複数のユーザ端末毎に設けられている。具体的には、ユーザ端末12Aに対して記憶装置16Aが設けられており、ユーザ端末12Bに対して記憶装置16Bが設けられており、ユーザ端末Zに対して記憶装置16Zが設けられている。
【0038】
図1に示されるように、記憶装置16Aは、分析手法記憶部160Aとデータ記憶部162Aとを備える。また、記憶装置16Bは、分析手法記憶部160Bとデータ記憶部162Bとを備える。また、記憶装置16Zは、分析手法記憶部160Zとデータ記憶部162Zとを備える。なお、以下では、1つの分析手法記憶部又はデータ記憶部を指し示す場合には、A,B・・・,Zを付与せずに、単に、分析手法記憶部160又はデータ記憶部162と称する。
【0039】
後述するサーバ14は、計測データが送信されたユーザ端末12に対応する記憶装置16の分析手法記憶部160から1以上の分析手法を選択する。サーバ14は、選択した分析手法によって計測データを分析して、分析結果データを得る。そして、サーバ14は、計測データが送信されたユーザ端末12に対応する記憶装置16のデータ記憶部162へ、計測データと分析結果データとを格納する。詳細については後述する。
【0040】
(サーバ)
【0041】
サーバ14は、
図1に示されるように、サーバ受信部140と、分析部142と、サーバ送信部144とを備えている。
【0042】
サーバ受信部140は、ユーザ端末12から送信された、分析対象の材料の計測データとデータIDとのペアを受信する。なお、サーバ14から送信されるデータは、複数の分析手法毎のデータであってもよい。また、サーバ受信部140は、ユーザ端末を識別するためのユーザIDと、分析手法を識別するための分析手法IDとを受信する。
【0043】
分析部142は、サーバ受信部140により受信された計測データに対して1以上の分析手法による分析を行う。具体的には、分析部142は、記憶装置16の分析手法記憶部160に格納されている複数の分析手法から分析手法を選択する。この場合、分析部142は、ユーザ端末12から送信されたユーザIDに応じて、計測データを送信したユーザ端末12に対応する記憶装置16を選択する。例えば、分析部142は、ユーザ端末12Aから計測データが送信された場合には、記憶装置16Aを選択する。そして、分析部142は、記憶装置16Aの分析手法記憶部160Aに記憶された分析手法の中から、ユーザ端末12Aから送信された分析手法IDに応じた分析手法を選択する。
【0044】
分析手法記憶部160には、複数の分析手法に応じたプログラム等が格納されている。
図4は、分析手法記憶部160に格納されるデータ形式の一例である。
図4に示されるように、分析手法記憶部160には、例えば、分析手法の識別情報を表す分析手法IDと、当該分析手法のプログラム等とが対応付けられて格納される。
【0045】
そして、分析部142は、選択した対象の分析手法のプログラムを用いて計測データの分析を行う。これにより、分析結果データが得られる。
【0046】
サーバ送信部144は、分析部142により得られた分析結果データをユーザ端末12に送信する。具体的には、サーバ送信部144は、サーバ受信部140により受信したユーザIDに対応するユーザ端末12へ分析結果データを送信する。例えば、サーバ送信部144は、ユーザIDがユーザ端末12Aを表す場合には、ユーザ端末12Aへ分析結果データを送信する。
【0047】
また、分析部142は、サーバ受信部140により受信されたデータID及び計測データと、分析結果データとを対応付けてデータ記憶部162へ格納する。なお、データ記憶部162はユーザ毎に予め設置されている。このため、分析部142は、サーバ受信部140により受信したデータID及び計測データと、分析結果データとを対応付けて、サーバ受信部140により受信したユーザIDに対応するデータ記憶部162へ格納する。例えば、ユーザIDがユーザ端末12Aを表す場合には、ユーザ端末12Aに対応する記憶装置16Aのデータ記憶部162Aへ各データを格納する。
【0048】
図5に、データ記憶部162に格納されるデータの一例を示す。
図5は、複数の分析手法毎に計測データが格納されている例である。
図5に示されるように、分析手法の一例であるXRD(X‐ray diffraction)法に対応する計測データである「X1」及びSAXS(Small-Angle X-ray Scattering)法に対応する計測データである「Y1」等のデータ34と、XRD法に対応する分析結果データである「W1」及びSAXS法に対応する計測データである「Z1」等のデータ36と、データIDとが対応付けられている。
【0049】
ここで、データID「00001」に対応付けられている、XRD:X1、SAXS:Y1、XRD-R:W1、及びSAXS-R:Z1は、同一の材料に関連するデータである。
【0050】
このように、本実施形態の情報処理システム10では、機密度の高いデータである、製造工程データ及び性能データはユーザ端末12の端末記憶部122に格納され、製造工程データ及び性能データに比べ機密度が低いデータである計測データがサーバ14のデータ記憶部162に格納される。このため、機密度が高いデータを適切に管理することができる。具体的には、機密度の高いデータを外部のサーバへ送信する必要がないため、機密度の高いデータの情報漏洩のリスクを低減させることができる。
【0051】
更に、あるデータIDをキーにして、端末記憶部122に格納されているデータとデータ記憶部162に格納されるデータとを突き合わせることにより、材料開発に有用な解析(例えば、統計解析等)を行うことができる。例えば、分析結果データと製造工程データ及び性能データとの組み合わせを用いて統計解析を行うことにより、有用な性能を有している材料は、どのような分析結果データに対応しどのような製造工程を経る必要があるのか、といった知見を得ることができる。
【0052】
ユーザ端末12、サーバ14、及び記憶装置16は、例えば、
図6に示すようなコンピュータ50よって実現することができる。ユーザ端末12、サーバ14、及び記憶装置16を実現するコンピュータ50は、CPU51、一時記憶領域としてのメモリ52、及び不揮発性の記憶部53を備える。また、コンピュータは、入出力装置等(図示省略)が接続される入出力interface(I/F)54、及び記録媒体59に対するデータの読み込み及び書き込みを制御するread/write(R/W)部55を備える。また、コンピュータは、インターネット等のネットワークに接続されるネットワークI/F56を備える。CPU51、メモリ52、記憶部53、入出力I/F54、R/W部55、及びネットワークI/F56は、バス57を介して互いに接続される。
【0053】
記憶部53は、Hard Disk Drive(HDD)、Solid state drive(SSD)、フラッシュメモリ等によって実現できる。記憶媒体としての記憶部53には、コンピュータを機能させるためのプログラムが記憶されている。CPU51は、プログラムを記憶部53から読み出してメモリ52に展開し、プログラムが有するプロセスを順次実行する。
【0054】
次に、実施形態の情報処理システム10の作用について説明する。
【0055】
ユーザ端末12へ材料データが入力されると、ユーザ端末12は、
図7に示す第1の情報処理ルーチンを実行する。
【0056】
ステップS100において、端末制御部120は、材料データを受け付ける。
【0057】
ステップS102において、端末制御部120は、材料データのうちの、製造工程データ、性能データ、及び計測データの組み合わせに対しデータIDを付与する。
【0058】
ステップS104において、端末制御部120は、上記ステップS102で得られた、製造工程データ、性能データ、及びデータIDを端末記憶部122へ格納する。
【0059】
ステップS106において、端末制御部120は、上記ステップS102で得られた、計測データ及びデータIDをサーバ14へ送信する。また、端末制御部120は、ユーザIDと分析手法IDとをサーバ14へ送信する。
【0060】
ユーザ端末12からサーバ14へ、計測データとデータID及びユーザIDと分析手法IDとが送信され、サーバ14がそれらのデータを受け付けると、サーバ14は、
図8に示す第2の情報処理ルーチンを実行する。
【0061】
ステップS200において、サーバ14のサーバ受信部140は、ユーザ端末12から送信されたデータID及び計測データを受信する。また、サーバ14のサーバ受信部140は、ユーザ端末12から送信されたユーザIDと分析手法IDとを受信する。
【0062】
ステップS202において、分析部142は、上記ステップS200で受信された計測データに対しての分析手法を選択する。具体的には、分析部142は、ユーザ端末12から送信された分析手法IDに応じて分析手法を選択する。なお、分析部142は、上記ステップS200で受信したユーザIDに対応する記憶装置16を選択し、その記憶装置16の分析手法記憶部160に格納されている分析手法の中から、分析手法IDに応じた分析手法を選択する。
【0063】
ステップS204において、分析部142は、上記ステップS202で選択した対象の分析手法を用いて計測データの分析を行い、分析結果データを得る。
【0064】
ステップS206において、分析部142は、上記ステップS200で受信した計測データとデータIDとの組み合わせを、上記ステップS204で得られた分析結果データとを対応付けてデータ記憶部162へ格納する。
【0065】
ステップS208において、サーバ送信部144は、上記ステップS204で得られた分析結果データとデータIDとをユーザ端末12に送信する。具体的には、サーバ送信部144は、上記ステップS200で受信したユーザIDに対応するユーザ端末12へ分析結果データとデータIDを送信する。
【0066】
ユーザ端末12は、サーバ14から送信された分析結果データとデータIDとを得る。そして、ユーザ端末12の端末制御部120は、分析結果データを表示部(図示省略)へ表示させる。ユーザ端末12を操作するユーザは、分析対象の材料の分析結果データを確認する。
【0067】
なお、ユーザ端末12は、サーバ14から送信された分析結果データとデータIDとを、端末記憶部122へ格納するようにしてもよい。この場合には、ユーザ端末12は、データIDをキーにして、分析結果データを製造工程データ及び性能データと対応付けて端末記憶部122へ格納する。
【0068】
以上説明したように、実施形態に係る情報処理システム10のユーザ端末は、材料に関する第1データの一例である製造工程データ及び性能データと、該材料を計測することにより得られるデータであって、製造工程データ及び性能データよりも機密度が低いデータである第2データの一例である計測データとの組み合わせに対してデータIDを付与する。そして、ユーザ端末は、製造工程データ及び性能データとデータIDとのペアを第1記憶部の一例である端末記憶部へ格納する。また、ユーザ端末は、計測データとデータIDとのペアをサーバへ送信する。そして、サーバは、ユーザ端末から送信された、計測データとデータIDとのペアを受信する。サーバは、計測データとデータIDとのペアを第2記憶部の一例であるデータ記憶部へ格納する。サーバは、計測データに応じた材料分析を行い、計測データに対応する分析結果データを生成し、当該分析結果データをユーザ端末へ送信する。これにより、ネットワークを介した材料分析のサービスにおいて、機密度が高いデータを適切に管理することができる。具体的には、機密度の高いデータを外部のサーバへ送信する必要がないため、機密度の高いデータの情報漏洩のリスクを低減させることができる。
【0069】
更に、あるデータIDをキーにして、端末記憶部122に格納されているデータとデータ記憶部162に格納されるデータとを突き合わせることにより、材料開発に有用な解析(例えば、統計解析等)を行うことができる。例えば、分析結果データと製造工程データ及び性能データとの組み合わせを用いて統計解析を行うことにより、有用な性能を有している材料は、どのような分析結果データに対応しどのような製造工程を経る必要があるのか、といった知見を得ることができる。
【0070】
また、本実施形態に係る情報処理システム10によれば複数のユーザ端末毎にデータ記憶部が設けられており、サーバ14は、計測データを送信したユーザ端末に対応するデータ記憶部に、計測データと分析結果データとを格納する。これにより、適切に情報管理をすることができる。例えば、複数のユーザ端末12A,12B,・・・,12Zが異なる企業により利用される場合には、1つのデータ記憶部に複数の企業のデータが格納されることがないため、適切に情報管理をすることができる。
【0071】
また、本実施形態に係る情報処理システム10では、材料分析を行うサーバ14は1つであるため、システムを実装する際のコストを低減することができる。
【0072】
なお、上記の実施形態における各装置で行われる処理は、プログラムを実行することにより行われるソフトウエア処理として説明したが、ハードウエアで行う処理としてもよい。或いは、ソフトウエア及びハードウエアの双方を組み合わせた処理としてもよい。また、ROMに記憶されるプログラムは、各種記憶媒体に記憶して流通させるようにしてもよい。
【0073】
さらに、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0074】
例えば、上記実施形態では、サーバは1つである場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。複数のユーザ端末毎にサーバが設けられていてもよい。例えば、
図9に示される情報処理システム210のように構成されてもよい。
【0075】
図9の情報処理システム210は、複数のユーザ端末12A,12B,・・・,12Zと、複数のユーザ端末12A,12B,・・・,12Z毎に設けられたサーバ14A,14B,・・・,14Zと、を備える。なお、
図9に示されるように、複数のサーバ14A,14B,・・・,14Zの各々は、分析手法記憶部160A,160B,・・・,160Zとデータ記憶部162A,162B,・・・,162Zとを備えている。複数のサーバ14A,14B,・・・,14Zの各々は、複数のユーザ端末12A,12B,・・・,12Zのうちの特定のユーザ端末から送信された、計測データを受信し、受信した計測データに対して1以上の分析手法による分析を行い、分析結果を表す分析結果データを取得する。そして、複数のサーバ14A,14B,・・・,14Zの各々は、分析結果データを、特定のユーザ端末へ送信し、受信した計測データと分析結果データとを対応付けて、サーバが備えるデータ記憶部へ格納する。
【0076】
例えば、サーバ14Aは、特定のユーザ端末であるユーザ端末12Aから送信された計測データを受信し、当該計測データに対して1以上の分析手法による分析を行い、分析結果を表す分析結果データを取得する。そして、サーバ14Aは、分析結果データを、特定のユーザ端末であるユーザ端末12Aへ送信し、受信した計測データと分析結果データとを対応付けて、サーバ14Aが備えるデータ記憶部162Aへ格納する。
【0077】
図9の情報処理システム210によれば、ユーザ端末毎にサーバが設けられているため、材料分析の処理を高速化することができる。
【0078】
また、上記実施形態では、複数のユーザ端末毎にデータ記憶部が設けられている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、
図10に示される情報処理システム310のように構成されてもよい。
【0079】
図10に示される情報処理システム310のサーバ314は、ユーザ端末から送信された計測データを受信する。サーバ314は、受信された計測データに対して1以上の分析手法による分析を行い、分析結果を表す分析結果データを取得する。そして、サーバ314は、取得された分析結果データを、ユーザ端末へ送信する。
図10の情報処理システム310では、ユーザ端末毎にはサーバが設けられていないため、システムを実装する際のコストを低減することができる。また、1つの企業内に属する複数のユーザの各々が、複数のユーザ端末12A,12B,・・・,12Zの各々を利用する場合には、各データを共有することができる。
【0080】
また、上記実施形態では、分析部142は、ユーザ端末12から送信された分析手法の識別情報を表す分析手法IDに応じて分析手法を選択する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、分析部142は、計測データの値又は種類(値の分布(0.1~1等)又は画像か数値データか)に応じて分析手法を選択してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、サーバ14が分析手法を選択し、選択した分析手法による分析を行う場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、分析手法毎に異なる複数のサーバが予め用意されており、それらのサーバが分析を実行するようにしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、第1データが製造工程データ及び性能データである場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。第1データは、製造工程データ及び性能データの何れか一方であってもよい。すなわち、第1データは、製造工程データ及び性能データの何れか一方または両方であってよい。また、第1データは、製造工程データ及び性能データとは異なるデータであってもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、ユーザ端末12自身が有する端末記憶部122へ製造工程データ及び性能データを格納する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。ユーザ端末12自身が有する記憶部ではなくとも、情報漏洩のリスクが低い記憶部を設けることは可能である。そのため、製造工程データ及び性能データを格納する対象の記憶部は、ユーザ端末12が有する記憶部とは異なる記憶部であってもよい。例えば、ユーザ端末12が有する記憶部とは異なる記憶部は、ユーザ端末12と所定のネットワーク(例えば、インターネット又はLAN等)により接続される。情報漏洩のリスクが低い外部の記憶部へ製造工程データ及び性能データを格納することにより、機密度が高いデータを適切に管理することが可能となる。
【0084】
更に、機密度のレベルに応じて第1データを分散して記憶させるようにしてもよい。例えば、第1データのうち機密度のレベルが「高」であるデータは記憶部S1へ格納され、第1データのうち機密度のレベルが「中」であるデータは記憶部S2へ格納され、第1データのうち機密度のレベルが「低」であるデータは記憶部S3へ格納されるようにしてもよい。この場合、ユーザ端末12は、分散格納された各データを結合するためのデータIDを保持し、データIDを用いてそれらの各データを結合するようにしてもよい。
【0085】
また、ユーザ端末12は、データIDをキーにして、端末記憶部122に格納されているデータとデータ記憶部162に格納されるデータとを突き合わせることにより、材料開発に関する統計解析を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10,210,310 情報処理システム
12A,12B,12Z ユーザ端末
13 ネットワーク
14,14A,14B,14Z サーバ
140 サーバ受信部
142 分析部
144 サーバ送信部
160A,160B,160Z 分析手法記憶部
162A,162B,162Z データ記憶部
50 コンピュータ
52 メモリ
53 記憶部