(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】分析作業支援装置及び分析作業支援ソフトウェア
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20230905BHJP
H01J 49/04 20060101ALI20230905BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20230905BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20230905BHJP
【FI】
G01N35/00 E
H01J49/04 180
H01J49/04 130
G01N35/00 A
G01N1/00 101B
G01N27/62 F
(21)【出願番号】P 2020146824
(22)【出願日】2020-09-01
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】押川 倫憲
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕子
(72)【発明者】
【氏名】田井中 善樹
(72)【発明者】
【氏名】大久保 達樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 晃平
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/012571(WO,A1)
【文献】再公表特許第2008/068847(JP,A1)
【文献】特開2015-192636(JP,A)
【文献】国際公開第2019/111310(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0253194(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
H01J 49/04
G01N 1/00
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置との間で通信可能に構成され、該分析装置にセットされる試料収容部材に設けられた複数の試料配置部に試料を配置し、複数のプロトコルを順番に実行する分析作業を支援する装置であって、
複数のプロトコルのそれぞれにおいて配置すべき試料の情報及び分析パラメータを含む分析条件と、該複数のプロトコルの実行順に関する情報が保存された記憶部と、
表示部と、
前記複数のプロトコルのいずれかを選択する入力を受け付けるプロトコル選択入力受付部と、
前記プロトコル選択入力受付部に入力されたプロトコルにおいて配置すべき試料の情報を前記記憶部から読み出し、前記表示部に、前記試料収容部材に設けられた複数の試料配置部の位置とともに表示する試料位置表示部と、
前記分析装置から前記複数のプロトコルの実行状況に関する情報を収集するプロトコル実行情報収集部と、
前記プロトコル実行情報収集部により収集された前記複数のプロトコルの実行状況と前記記憶部に保存された前記複数のプロトコルの実行順に基づいて、前記プロトコル選択入力受付部に入力されたプロトコルよりも先に実行されるべきプロトコルが実行済みであるかを判定する判定部と、
前記判定部により、前記先に実行されるべきプロトコルが実行済みであると判定された場合に、前記プロトコル選択入力受付部に入力されたプロトコルに対応する分析条件を前記記憶部から読み出して当該プロトコルを実行するバッチファイルを作成するバッチファイル作成部と
を備える分析作業支援装置。
【請求項2】
前記複数の試料配置部が格子状に設けられており、
前記試料位置表示部が、予め決められた方向に並ぶ試料配置部のうちのいずれかが使用されている場合に、該方向に並ぶ全ての試料配置部を使用済みとして取り扱い、使用済みの試料配置部を未使用の試料配置部と識別可能に表示する、請求項1に記載の分析作業支援装置。
【請求項3】
前記試料位置表示部が、未使用の試料配置部のうち、予め決められた角部に位置する試料配置部を基点として前記配置すべき試料の情報を表示する、請求項2に記載の分析作業支援装置。
【請求項4】
前記試料位置表示部が、前記配置すべき試料の種類に応じて前記試料配置部を識別可能に表示する、請求項1から3のいずれかに記載の分析作業支援装置。
【請求項5】
前記試料位置表示部が、前記配置すべき試料に同一種類の異なる試料が含まれる場合に、該異なる試料を特定するテキスト情報を表示する、請求項1から4のいずれかに記載の分析作業支援装置。
【請求項6】
分析装置にセットされる試料収容部材に設けられた複数の試料配置部に試料を配置し、複数のプロトコルを順番に実行する分析作業を支援するプログラムであって、
複数のプロトコルのそれぞれにおいて配置すべき試料の情報及び分析パラメータを含む分析条件と、該複数のプロトコルの実行順に関する情報が保存された記憶部と、
表示部と、
を有する
、前記分析装置との間で通信可能に構成されたコンピュータを、
前記複数のプロトコルのいずれかを選択する入力を受け付けるプロトコル選択入力受付部と、
前記プロトコル選択入力受付部に入力されたプロトコルにおいて配置すべき試料の情報を前記記憶部から読み出し、前記表示部に、前記試料収容部材に設けられた複数の試料配置部の位置とともに表示する試料位置表示部と、
前記分析装置から前記複数のプロトコルの実行状況に関する情報を収集するプロトコル実行情報収集部と、
前記プロトコル実行情報収集部により収集された前記複数のプロトコルの実行状況と前記記憶部に保存された前記複数のプロトコルの実行順に基づいて、前記プロトコル選択入力受付部に入力されたプロトコルよりも先に実行されるべきプロトコルが実行済みであるかを判定する判定部と、
前記判定部により、前記先に実行されるべきプロトコルが実行済みであると判定された場合に、前記プロトコル選択入力受付部に入力されたプロトコルに対応する分析条件を前記記憶部から読み出して当該プロトコルを実行するバッチファイルを作成するバッチファイル作成部
として動作させる分析作業支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析作業を支援する装置及びコンピュータソフトウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
認知症を生じさせる疾病としてアルツハイマー病が知られている。アルツハイマー病に罹患すると、記憶能力や認知能力の低下といった症状が徐々に進行していく。そのため、認知症を発症する前にアルツハイマー病を早期発見して治療を開始することが有効である。
【0003】
アルツハイマー病患者は、アミロイドベータと呼ばれる物質が脳内に蓄積していることが知られている(例えば非特許文献1)。従来、陽電子放射断層撮影装置(PET)を用いた脳内のアミロイドベータの蓄積状態の検査が行われているが、PETによる検査は所要時間が長くまた高額である。そこで、特許文献1では、被験者の血液に含まれる2種類の特定のペプチドのそれぞれに由来するイオンの強度を質量分析により測定し、それらの強度比からアミロイドベータの蓄積状態を検査する方法が提案されている。この方法では、PETを用いるよりも迅速かつ安価にアルツハイマー病の診断を行うことができる。また、複数の被験者のアルツハイマー病の診断を連続して効率よく行うことができる。
【0004】
特許文献1に記載の方法ではMALDI-TOF型の質量分析装置を用いている。MALDI-TOF型の質量分析装置では、サンプルプレートのウェルに配置した、マトリクスを添加した試料にレーザー光を照射してイオンを生成し(MALDI)、それを飛行時間(TOF)型の質量分離部に導入する。質量分離部に導入された各種のイオンは、それぞれの質量電荷比に応じた飛行時間でTOF空間を飛行し検出される。
【0005】
上記の通り、特許文献1に記載の方法では、被験者の血液に含まれる2種類の特定のペプチドのそれぞれに由来するイオンの強度を測定してアミロイドベータの蓄積状態を検査する。そのため、正確な検査を行うにはそれらのマスピークの位置及び強度を正確に測定する必要がある。即ち、常に一定の質量精度や感度で試料を質量分析することが求められる。このように一定の質量精度や感度を担保することが求められる場合には、予め定められた分析の標準的な作業手順(SOP: Standard Operation Procedure)に沿って質量分析を実行する。
【0006】
ここで、MALDI-TOF型の質量分析装置を用いて試料を質量分析する場合の標準的な作業手順の一例を説明する。MALDIで使用されるサンプルプレートは、多数の正方形状の個別領域に区画されており、各個別領域の中央にはキャリブラントを配置するウェルが、その周囲の4箇所にはそれぞれ試料を配置するウェルが設けられている。キャリブラントは、質量較正のために用いられる、質量電荷比が既知であるイオンを生成する物質である。
【0007】
まず、試料のイオン化に最適なレーザー光の強度を決定するための第1プロトコルを実施する。第1プロトコルでは、サンプルプレート上の、予め設定された複数のレーザー光の強度の候補値と同数である複数の個別領域を使用し、各個別領域の4箇所のウェルには目的物質を規定量含む標準試料を、1箇所のウェルにはキャリブラントを配置する。第1プロトコルでは全ての個別領域に同一の標準試料及びキャリブラントを配置する。標準試料及びキャリブラントを配置した後、サンプルプレートを質量分析装置にセットする。その後、最初の個別領域に配置されたキャリブラントに対して1つの候補値の強度を有するレーザー光を照射し、生成されたイオンの検出結果と当該イオンの実際の質量電荷比を照合して質量分析装置を質量較正する。キャリブラントの測定後、同じ個別領域内の4つのウェルに配置された試料のそれぞれに対しても同様に、前記1つの候補値の強度を有するレーザー光を照射し、生成されたイオンを検出する。そして、4回の質量分析で得られたイオンの検出強度を平均し、予め決められた質量電荷比のイオンの検出強度から当該強度のレーザー光に対するイオンの検出感度を求める。こうした質量分析を、全ての個別領域に配置した標準試料に対して異なる候補値の強度を有するレーザー光を照射して実行することにより、レーザー光の強度の候補値のそれぞれに対するイオンの検出感度を求め、その結果に基づいて実際の試料に照射するレーザー光の強度を決定する。一般的には、最も検出感度が高いレーザー光の強度の候補値が選択される。
【0008】
試料に照射するレーザー光の強度を決定すると、次に、目的物質の含有量とイオンの検出強度の関係に関する補正値を決定するための第2プロトコルを実施する。第2プロトコルでは、それぞれが異なる規定量の目的物質を含有する複数の標準試料を使用し、該複数試料と同数である複数の個別領域を使用する。各個別領域の4箇所のウェルには同一の標準試料を配置し、1箇所のウェルにはキャリブラントを配置する。キャリブラントは全ての個別領域に共通のものを使用する。標準試料及びキャリブラントを配置した後、サンプルプレートを質量分析装置にセットする。その後、最初の個別領域に配置されたキャリブラントに対して先のプロトコルで決定した強度のレーザー光を照射して第1プロトコル実行時と同様に質量分析装置を質量較正する。キャリブラントの測定後、同じ個別領域内の4つのウェルに配置された標準試料のそれぞれに対して同様に、第1プロトコルで決定した強度のレーザー光を照射する。4回の質量分析で得られたイオンの検出強度を平均し、予め決められた質量電荷比のイオンの検出強度から当該標準試料に含まれる目的物質の含有量とイオンの検出強度の関係を求める。これら一連の質量分析を、全ての個別領域において実行する。そして、各規定量の目的物質のイオンの検出強度が予め決められた強度になるように検出強度の補正値を決定する。
【0009】
上記2つのプロトコルを実施した後、測定対象試料の質量分析を行う第3プロトコルを実行する。第3プロトコルでは、最初の個別領域に標準試料を配置し、次の個別領域から測定対象試料を順に配置していく。予め決められた数の測定対象試料を配置すると、次の個別領域には再び標準試料を配置する。即ち、所定数の測定対象試料を質量分析する毎に標準試料を測定するように、標準試料と測定対象試料が配置される。標準試料は、各時点で質量分析が正常に行われていることを確認するために用いられる。第3プロトコルにおいても上記2つのプロトコルと同様に各個別領域には質量較正用のキャリブラントを配置する。そして、最初の個別領域から順に質量分析を実行し、各個別領域内の4つのウェルに配置された測定対象試料のそれぞれに対して第1プロトコルで決定した強度のレーザー光を照射する。4回の質量分析で得られたイオンの検出強度を平均し、予め決められた質量電荷比のイオンの検出強度を第2プロトコルで決定した補正値により補正して、測定対象試料に含まれる目的物質由来のイオンの強度を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【文献】"High performance plasma amyloid-β biomarkers for Alzheimer's disease", Akinori Nakamura, Naoki Kaneko, Victor L. Villemagne, Takashi Kato, James Doecke, Vincent Dore, Chris Fowler, Qiao-Xin Li, Ralph Martins, Christopher Rowe, Taisuke Tomita, Katsumi Matsuzaki, Kenji Ishii, Kazunari Ishii, Yutaka Arahata, Shinichi Iwamoto, Kengo Ito, Koichi Tanaka, Colin L. Masters, Katsuhiko Yanagisawa, Nature, 2018, 554 pp.249-254
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載の方法では、第1~第3プロトコルを正しい順番で実施する必要がある。また、各プロトコルを実行する際には各個別領域内のウェルのそれぞれに正しく試料を配置する必要がある。しかし、分析に不慣れな者がこの方法を実行する場合、プロトコルの実施順を誤ったり、ウェルに誤った試料を配置したりしてしまう可能性があるという問題があった。
【0013】
上記はMALDI-TOF型の質量分析装置を用いて試料を質量分析する場合を例に説明したが、他の分析装置を用いた試料の分析においても同様の問題があった。
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、使用者が、試料収容部材に設けられた複数の試料配置部に正しい試料を配置し、複数のプロトコルを正しい順番で実行することができるように分析作業を支援する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために成された本発明は、分析装置との間で通信可能に構成され、該分析装置にセットされる試料収容部材に設けられた複数の試料配置部に試料を配置し、複数のプロトコルを順番に実行する分析作業を支援する装置であって、
複数のプロトコルのそれぞれにおいて配置すべき試料の情報及び分析パラメータを含む分析条件と、該複数のプロトコルの実行順に関する情報が保存された記憶部と、
表示部と、
前記複数のプロトコルのいずれかを選択する入力を受け付けるプロトコル選択入力受付部と、
前記プロトコル選択入力受付部に入力されたプロトコルにおいて配置すべき試料の情報を前記記憶部から読み出し、前記表示部に、前記試料収容部材に設けられた複数の試料配置部の位置とともに表示する試料位置表示部と、
前記分析装置から前記複数のプロトコルの実行状況に関する情報を収集するプロトコル実行情報収集部と、
前記プロトコル実行情報収集部により収集された前記複数のプロトコルの実行状況と前記記憶部に保存された前記複数のプロトコルの実行順に基づいて、前記プロトコル選択入力受付部に入力されたプロトコルよりも先に実行されるべきプロトコルが実行済みであるかを判定する判定部と、
前記判定部により、前記先に実行されるべきプロトコルが実行済みであると判定された場合に、前記プロトコル選択入力受付部に入力されたプロトコルに対応する分析条件を前記記憶部から読み出して当該プロトコルを実行するバッチファイルを作成するバッチファイル作成部と
を備える。
【0016】
また、上記課題を解決するために成された本発明の別の態様は、分析装置にセットされる試料収容部材に設けられた複数の試料配置部に試料を配置し、複数のプロトコルを順番に実行する分析作業を支援するプログラムであって、
複数のプロトコルのそれぞれにおいて配置すべき試料の情報及び分析パラメータを含む分析条件と、該複数のプロトコルの実行順に関する情報が保存された記憶部と、
表示部と、
を有する、前記分析装置との間で通信可能に構成されたコンピュータを、
前記複数のプロトコルのいずれかを選択する入力を受け付けるプロトコル選択入力受付部と、
前記プロトコル選択入力受付部に入力されたプロトコルにおいて配置すべき試料の情報を前記記憶部から読み出し、前記表示部に、前記試料収容部材に設けられた複数の試料配置部の位置とともに表示する試料位置表示部と、
前記分析装置から前記複数のプロトコルの実行状況に関する情報を収集するプロトコル実行情報収集部と、
前記プロトコル実行情報収集部により収集された前記複数のプロトコルの実行状況と前記記憶部に保存された前記複数のプロトコルの実行順に基づいて、前記プロトコル選択入力受付部に入力されたプロトコルよりも先に実行されるべきプロトコルが実行済みであるかを判定する判定部と、
前記判定部により、前記先に実行されるべきプロトコルが実行済みであると判定された場合に、前記プロトコル選択入力受付部に入力されたプロトコルに対応する分析条件を前記記憶部から読み出して当該プロトコルを実行するバッチファイルを作成するバッチファイル作成部
として動作させるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る分析作業支援装置及びプログラムでは、使用者が、記憶部に予め保存されている複数のプロトコルのいずれかを選択すると、試料位置表示部は、当該プロトコルにおいて配置すべき試料の情報を記憶部から読み出して、試料収容部材に設けられた複数の試料配置部の位置とともに表示部に表示する。試料の情報は、例えば格子状に複数の試料配置部が設けられたサンプルプレートの場合、当該サンプルプレートを所定の向きで表示したときに画面上で右上の端部に位置する試料配置部を基点として、当該プロトコルで配置すべき試料の数だけ表示される。そのため、使用者は、各プロトコルを実行しようとする際に、どの位置にどの試料を配置すればよいかを簡便に確認して正しく試料を配置することができる。
【0018】
また、本発明では、使用者が選択したプロトコルについて、当該プロトコルよりも先に実行すべきプロトコルが実行済みであるかが判定部により判定され、該先に実行すべきプロトコルが実行済みである場合に、使用者が選択したプロトコルを実行するためのバッチファイルが作成される。つまり、使用者が、先に実行すべきプロトコルを未実行のままで別のプロトコルを選択した場合には、そのプロトコルを実行するバッチファイルが作成されない。そのため、複数のプロトコルを正しい順番で使用者に実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る分析作業支援装置及び分析作業支援プログラムの一実施例を含む分析システムの要部構成図。
【
図2】本実施例の分析システムにおける表示画面の一例。
【
図3】本実施例におけるレーザーパワー選定の分析プロトコルの実行時に表示されるサンプルプレート概形表示部の表示例。
【
図4】本実施例におけるレーザーパワー選定の分析プロトコルの実行時に表示されるサンプルプレート概形表示部の別の表示例。
【
図5】本実施例におけるレーザーパワー選定の分析プロトコルの実行時に表示されるサンプルプレート概形表示部のさらに別の表示例。
【
図6】本実施例における強度比キャリブレーションの分析プロトコルの実行時に表示されるサンプルプレート概形表示部の表示例。
【
図7】本実施例における強度比キャリブレーションの分析プロトコルの実行時に表示されるサンプルプレート概形表示部の別の表示例。
【
図8】本実施例における検体分析の分析プロトコルの実行時に表示されるサンプルプレート概形表示部の表示例。
【
図9】本実施例における検体分析の分析プロトコルの実行時に表示されるサンプルプレート概形表示部の別の表示例。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る分析作業支援装置及びプログラムの実施例について、以下、図面を参照して説明する。本実施例の分析作業支援装置及びプログラムは、被験者から採取した血液に含まれる2種類の特定のペプチドのそれぞれに由来するイオンの強度を質量分析により測定し、それらの強度比からアミロイドベータの蓄積状態を検査する一連の分析作業を支援するために用いられる。
【0021】
図1は、本実施例の分析作業支援装置及びプログラムを含む分析システム1の要部構成図である。分析システム1は、大別して分析部2と制御・処理部4から構成されており、分析作業支援装置及びプログラムは制御・処理部4の一部に組み込まれている。
【0022】
分析部2は、MALDIイオン源とリニア型の飛行時間型質量分離器(TOF)とを組み合わせたMALDI-TOF型の質量分析計である。
【0023】
分析部2は、真空ポンプ21により真空排気されるチャンバ20を備えている。チャンバ20の内部には、サンプルプレート23が保持されるサンプルステージ22と、引き出し電極24と、加速電極25と、内部に飛行空間を形成するフライトチューブ28と、検出器29とが配置されている。チャンバ20の壁面には後述するレーザー光の波長帯域の光を透過する窓201が設けられている。窓201を挟んで、チャンバ20の外側にはレーザー光源を含むレーザー照射部26が配置されており、チャンバ20の内側にはミラー27が配置されている。サンプルステージ22はモータ等を含むステージ駆動部200により水平方向(X軸及びY軸方向)と鉛直方向(Z軸方向)により移動可能である。
【0024】
試料の測定時には、ステージ駆動部200によりサンプルステージ22を移動させ、該サンプルステージ22上に保持されたサンプルプレート23の、試料が配置されたウェルをレーザー光の照射位置に合わせる。続いて、レーザー照射部26から予め決められた強度のレーザー光を所定時間、出射する。出射されたレーザー光は窓201を通過したあとミラー27で下方に反射され、サンプルプレート23上のウェルに配置された試料に照射される。
【0025】
レーザー光の照射を受けて、試料中の成分は気化してイオン化される。生成された試料成分由来のイオンは、図示しない電源部から引出電極24に印加される直流電圧によって形成される電場の作用で、サンプルプレート23の表面近傍から鉛直(Z軸)方向に引き出される。このイオンは加速電極25まで達し、図示しない電源部から加速電極25に印加される直流電圧により形成される加速電場の作用で運動エネルギーを付与される。これにより、イオンは鉛直(Z軸)方向に加速され、フライトチューブ28の内部の無電場、無磁場の飛行空間に導入される。この飛行空間内を飛行する間にイオンは質量電荷比m/zに応じて時間的に分離され、検出器29に到達する。検出器29では到達したイオンが順次検出され、そのイオンの量に応じた検出信号が検出器29から出力され、順次、後記の記憶部41に保存される。
【0026】
制御・処理部4は、記憶部41の他に、機能ブロックとして、プロトコル選択入力受付部42、試料位置表示部43、表示切替部44、プロトコル実行情報収集部45、判定部46、バッチファイル作成部47、測定実行部48、解析処理部49を備えている。制御・処理部4の実体は一般的なパーソナルコンピュータであり、予めインストールされた分析プログラムをプロセッサで実行することにより、上記の各機能ブロックが具現化される。また、制御・処理部4には使用者が入力操作を行うためのキーボードやマウス等からなる入力部5と、液晶ディスプレイ等からなる表示部6とが接続されている。
【0027】
記憶部41には、4つの分析プロトコルに関する情報が保存されている。4つの分析プロトコルはそれぞれ、レーザーパワー選定、強度比キャリブレーション、標準血漿分析、及び検体分析を実行するためのものである。記憶部41には、分析プロトコルの実行順の情報も保存されている。本実施例における分析プロトコルは、レーザーパワー選定、強度比キャリブレーション、標準血漿分析、検体分析の順に実行すべきものと規定されている。ただし、標準血漿分析は省略可能(つまり、標準血漿分析が未実行であっても検体分析を実行することが可能)となっている。
【0028】
また、記憶部41には、これら4つの分析プロトコルのそれぞれにおいて使用する試料の情報(試料の種別、試料名等)及び分析パラメータの情報が保存されている。レーザーパワー選定では、測定対象であるペプチドを規定量含有する標準試料を使用すること、及びレーザーパワーの値に関する5つの設定値(-10, -5, 0, +5, +10)を含む分析パラメータが保存されている。レーザーパワーの値に関する5つの設定値(-10, -5, 0, +5, +10)は、後述するレーザーパワー選定の分析プロトコルにおいて試料に照射するレーザー光の強度を決定する際に、使用者により入力されるレーザーパワーの基準値に増減される値である。
【0029】
強度比キャリブレーションでは、測定対象であるペプチドの含有量が異なる5種類の標準試料(IC-1, IC-2, IC-3, IC-4, IC-5)を使用すること、及び先の分析プロトコル(レーザーパワー選定)の解析結果に基づくレーザーパワーの値を含む分析パラメータが保存されている。
【0030】
標準血漿分析では、標準血漿を使用すること、及び先の分析プロトコル(レーザーパワー選定)の解析結果に基づくレーザーパワーの値を含む分析パラメータが保存されている。なお、標準血漿とは、ヒト血漿に前処理を経て作製されたものであり、測定対象であるペプチドの含有量は既知であるものを意味する。
【0031】
検体分析では、上記標準血漿と、未検査の被験者から採取した血液から抽出した血漿とを使用すること、及び先の分析プロトコル(レーザーパワー選定)の解析結果に基づくレーザーパワーの値を含む分析パラメータが保存されている。本実施例では12名の被験者から採取した測定対象試料1-12を使用する場合について説明するが、被験者の数はサンプルプレート23にセットすることが可能な範囲内で適宜に変更可能である。
【0032】
次に、本実施例の分析システム1を用いた分析の手順を説明する。使用者が分析の開始を指示すると
図2に示すような画面が表示部6に表示される。なお、
図2はレーザーパワー選定及び強度比キャリブレーションの分析プロトコルを実行した後に、検体分析の分析プロトコルを選択した状態の表示例である。
【0033】
図2に示す画面は、分析プロトコル選択部61、データセット名入力部62、開始ウェル番号表示部63、試料情報表示部64、及びサンプルプレート表示部65を含んでいる。
【0034】
分析プロトコル選択部61には上記4つの分析プロトコルの名称及び選択部611と、分析プロトコル実施情報表示部612が設けられている。使用者が4つの選択部611のいずれかを選択すると、プロトコル選択入力受付部42により対応する分析プロトコルの入力が受け付けられる。分析プロトコル実施情報表示部612には、実施済みの分析プロトコルに関する情報が表示される。
【0035】
データセット名入力部62には、一連の分析プロトコルの実施により取得したデータのデータセット名を入力する欄が設けられている。開始ウェル番号表示部63には、次に実行する分析プロトコルにおいて最初の試料をセットするウェル番号が表示されている。試料情報表示部64には、後述するサンプルプレート表示部65に表示されるラベルと、分析プロトコル選択部61において選択された試料の試料名の関係が表示される試料名表示部641と、データ編集用ボタン642が設けられている。データ編集用ボタン642には、試料名が記載されたファイルを読み込んで試料名表示部641に表示させる「インポート」ボタン、試料名表示部641に表示欄を追加する「+」ボタン、試料名表示部641から表示欄を削除する「×」ボタン、及び試料名表示部641に表示されている試料名を編集する「編集」ボタン642が設けられている。
【0036】
サンプルプレート表示部65には、サンプルプレート概形表示部651と表示項目選択部653が設けられている。本実施例で用いられるサンプルプレートには、サンプルプレート概形表示部651に示されているように、試料を配置する個別領域652が格子状に配置されている。各個別領域652の四隅に位置するウェルには同一試料を、中央に位置するウェルにはキャリブラントを配置する。サンプルプレート表示部65の下方には、各分析プロコルを実行するバッチファイルを作成するためのファイル作成ボタン66が表示される。
【0037】
まず、使用者が、分析プロトコル選択部61に表示されている分析プロトコルのうち、最初に実行すべき分析プロトコル(レーザーパワー選定)の選択部611を選択すると、プロトコル選択入力受付部42によりレーザーパワー選定のプロトコルの入力が受け付けられる。分析プロトコルが選択されると、判定部46は、記憶部41に保存された、分析プロトコルの実施順の情報を読み出す。レーザーパワー選定のプロトコルは最初に実行される分析プロトコルであるため、判定部46はそのまま動作を終了する。また、使用者は、データセットの名称を入力する。表示部6には、レーザーパワー選定のプロトコルを実行する際に使用する、レーザーパワーの基準値を入力する画面を表示し、使用者に入力を促す。基準値は、例えば15~170の範囲内で入力することが可能である。以下、基準値として「15」が入力された場合を一例に説明する。
【0038】
次に、試料位置表示部43は、記憶部41から、プロトコル選択入力受付部42が受け付けた分析プロトコル(レーザーパワー選定)に対応する試料の情報及び分析パラメータを読み出す。上記の通り、レーザーパワー選定のプロトコルに対しては、測定対象であるペプチドを規定量含有する標準試料を使用すること、及びレーザーパワーの値に関する5つの設定値(-10, -5, 0, +5, +10)を含む分析パラメータが保存されている。試料位置表示部43は、これらの情報を読み出すと、使用者により入力されたレーザーパワーの基準値を5つの設定値で増減した値(実際に試料に照射するレーザーパワーの値。この例では5, 10, 15, 20, 25)を算出し、サンプルプレート概形表示部651の、試料を配置すべきウェルの位置にそれらの情報を表示する。
【0039】
試料位置表示部43によるサンプルプレート概形表示部651の表示例を
図3に示す。本実施例では、試料位置表示部43は、未使用の個別領域652(この時点では全てのウェルが未使用の状態である)のうち、右上の隅に位置する個別領域652を最初の領域として横方向に並ぶ5つの個別領域を抽出する。そして、開始ウェル番号表示部63にその個別領域652の右上に位置するウェル(当該個別領域652内で試料が配置される4つのウェルのうち、最初に試料の測定を行うウェル)の番号(ここではA1)を表示する。
【0040】
次に、試料位置表示部43は、5つの個別領域652のそれぞれに位置する5つのウェルのうち、四隅に位置するウェルを、レーザーパワー選定用の標準試料を配置するウェルであることを示す黄色で表示し、中央に位置する1つのウェルを、キャリブラントを配置するウェルであることを示す紫色で表示する。なお、本願明細書に添付する図面はモノクロ図面であるため、
図3では異なる色を異なるハッチングで示している(
図4以降も同様)。また、各個別領域652に、各個別領域内のウェルに配置した標準試料及びキャリブラントに照射するレーザーパワーの値(使用者により入力されたレーザーパワーの基準値を5つの設定値で増減した値。5, 10, 15, 20, 25)をラベルとして重畳表示する。なお、
図3に示す表示例は、表示項目選択部653の全ての項目にチェックが入った状態のものである。個別領域652に重畳表示されるラベルは分析プロトコル毎に異なる。個別領域652間で異なる試料を配置する場合には各試料に関するラベルが、各個別領域に同一試料を配置し異なる分析パラメータで測定する場合にはそのパラメータの値がラベルとして表示される。レーザーパワー選定の分析プロトコルは後者にあたる。
【0041】
上記のように表示すると、
図3に示す通り、各個別領域652内のウェルの表示と分析パラメータの値(ここではレーザーパワーの値の候補値)の表示が重なり、キャリブラントを配置するウェルを確認することが困難になる。そこで、本実施例では、使用者が、表示項目選択部653の項目を適宜に選択することにより、表示形態を変更することができるようになっている。
図4は、表示項目選択部653においてウェルとキャリブラントウェルを選択した状態の表示例、
図5は、表示項目選択部653においてラベルのみを選択した状態の表示例である。使用者が表示項目選択部653において選択する項目を変更すると、表示切替部44により、このように表示の形態が変更される。
【0042】
使用者は、試料位置表示部43によりサンプルプレート概形表示部651に表示される情報を確認し、サンプルプレート23の各ウェルに標準試料とキャリブラントを配置する。その後、ファイル作成ボタン66を押すと、バッチファイル作成部47によりレーザーパワー選定の分析プロトコルを実行するためのバッチファイルが作成され、記憶部41に保存される。
【0043】
バッチファイルの作成後、使用者はサンプルプレート23をサンプルステージ22上にセットする。そして、使用者が測定開始を指示すると、測定実行部48が記憶部41からバッチファイルを読み出して測定を開始する。測定開始後、最初の個別領域652に配置されたキャリブラントに対して最初の候補値(5)の強度を有するレーザー光を照射し、生成されたイオンの検出結果と当該イオンの実際の質量電荷比を照合して質量分析計を質量較正する。質量較正は、例えば、質量分析計が有する、あるいは記憶部41に予め保存されている飛行時間-質量電荷比変換テーブルを変更することにより行われる。キャリブラントの測定後、同じ個別領域652内の4つのウェル(A1, A2, B1, B2)に配置された標準試料のそれぞれに対しても同じ強度(5)を有するレーザー光を照射してイオンを生成し、質量分離して検出器29により検出する。検出器29からの出力信号は順次、記憶部41に保存される。残り4つの個別領域においても上記同様に、それぞれに対応する候補値の強度を有するレーザー光を照射して質量分析を実行する。
【0044】
全ての個別領域652の測定を終了した後、解析処理部49は個別領域652毎に、4回の質量分析で得られたイオンの検出強度を平均し、測定対象である2種類のペプチドに特徴的な質量電荷比のイオンの検出強度を算出する。そして、当該強度のレーザー光に対するイオンの検出感度を求める。そして、2種類のペプチド由来のイオンを予め決められた基準以上の感度で検出可能であって、2種類のペプチド由来のイオンの検出感度の合計が最大となるレーザーパワーの候補値(ここでは一例として20とする。)を決定して記憶部41に保存する。
【0045】
また、分析プロトコル選択部61の分析プロトコル実施情報表示部612に、レーザーパワー選定のプロトコルの実施に関する情報を表示する。本実施例では、「2020/**/**に解析を実施。強度比キャリブレーション、標準血漿分析、検体分析は、レーザーパワー20で測定されます。」と表示される。レーザーパワーの値20はレーザーパワー選定の分析プロトコルを実行した結果に基づいて決められた値である。
【0046】
さらに、プロトコル実行情報収集部45は、レーザーパワー選定の分析プロトコルが実施されたことを記録する(例えば、記憶部41に保存されたレーザーパワー選定の分析プロトコルに実施済みであることを示すフラグを付して情報を更新する)。
【0047】
レーザーパワー選定の分析プロトコルを終了すると、使用者は分析部2からサンプルプレート23を取り出す。使用者が次に実行する分析プロトコル(強度比キャリブレーション)の選択部611を選択すると、プロトコル選択入力受付部42により強度比キャリブレーションの分析プロトコルの入力が受け付けられる。分析プロトコルが選択されると、判定部46は、記憶部41に保存された、分析プロトコルの実施順の情報を読み出す。強度比キャリブレーションは、レーザーパワー選定の分析プロトコルの次に実行される分析プロトコルである。そこで、判定部46は、先に実行されるべき分析プロトコル(レーザーパワー選定)が実行済みであるかを確認する。上記のとおり、プロトコル実行情報収集部45によって、レーザーパワー選定の分析プロトコルを実施済みであることが記録されている。判定部46は、先に実行されるべき分析プロトコル(レーザーパワー選定)が実行済みであるかを確認すると、動作を終了する。一方、先に実行されるべき分析プロトコル(レーザーパワー選定)が未実行である場合には、レーザーパワー選定が未実行である旨を表示部6に表示して使用者に確認を促す。
【0048】
次に、試料位置表示部43は、記憶部41から、プロトコル選択入力受付部42が受け付けた分析プロトコル(強度比キャリブレーション)に対応する試料の情報及び分析パラメータを読み出す。上記の通り、強度比キャリブレーションのプロトコルに対しては、測定対象であるペプチドの含有量が異なる5種類の標準試料(IC-1, IC-2, IC-3, IC-4, IC-5 )を使用すること、レーザーパワー選定の分析プロトコルの解析結果に基づくレーザーパワー(20)等の分析パラメータが保存されている。試料位置表示部43は、これらの情報を読み出すと、サンプルプレート概形表示部651の、試料を配置すべきウェルの位置にそれらの情報を表示する。
【0049】
試料位置表示部43によるサンプルプレート概形表示部651の表示例を
図6に示す。この時点では、サンプルプレート23に設けられた5つの個別領域652がレーザーパワー選定の分析プロトコルにおいて使用されている。このように使用済みの個別領域652が存在する場合、試料位置表示部43は、横方向に並ぶ全ての個別領域652を使用済みとして取り扱い、これらの個別領域652の内部のウェルを全て、使用不可であることを示す灰色で表示する。
【0050】
試料位置表示部43は、続いて、未使用の個別領域652のうち、右上の隅に位置する個別領域652を最初の領域として、横方向に並ぶ5つの個別領域を抽出する。そして、開始ウェル番号表示部63にその個別領域652の右上に位置するウェルの番号(ここではA3)を表示する。
【0051】
次に、試料位置表示部43は、5つの個別領域652のそれぞれに位置する5つのウェルのうち、四隅に位置するウェルを、強度比キャリブレーション用の標準試料を配置するウェルであることを示す緑色で表示し、中央に位置する1つのウェルを、キャリブラントを配置するウェルであることを示す紫色で表示する。
図6においても
図3及び
図4と同様に異なる色を異なるハッチングで示している。また、各個別領域652には、当該個別領域652内のウェルに配置すべき標準試料の名称(IC-1, IC-2, IC-3, IC-4, IC-5)をラベルとして重畳表示する。
図6に示す表示例は、表示項目選択部653の全ての項目にチェックが入った状態のものである。
図3~
図5と同様に、使用者は、表示項目選択部653の項目を適宜に選択することにより、表示形態を変更することができる。
図7に、表示項目選択部653の項目のうちラベルのみを選択した場合の表示例を示す。
【0052】
使用者は、試料位置表示部43によりサンプルプレート概形表示部651に表示された情報を確認し、サンプルプレート23の各ウェルに5種類の強度比キャリブレーション用の標準試料とキャリブラントを配置する。その後、ファイル作成ボタン66を押すと、バッチファイル作成部47により強度比キャリブレーションの分析プロトコルを実行するためのバッチファイルが作成され、記憶部41に保存される。
【0053】
バッチファイルの作成後、使用者は5種類の標準試料とキャリブラントを所定のウェルに配置したサンプルプレート23をサンプルステージ22上にセットする。そして、使用者が測定開始を指示すると、測定実行部48は記憶部41からバッチファイルを読み出して測定を開始する。測定の手順は先のレーザーパワー選定を実行する際と同様であるため、説明を省略する。ただし、強度比キャリブレーションでは、全ての試料とキャリブラントに同じ強度(レーザーパワー20)のレーザー光を照射する。
【0054】
全ての個別領域652の測定を終了した後、解析処理部49は個別領域652毎に、4回の質量分析で得られたイオンの検出強度を平均し、予め決められた質量電荷比(典型的には2種類のペプチドに特徴的なイオンの質量電荷比)のイオンの検出強度から当該標準試料に含まれる目的物質の含有量とイオンの検出強度の関係を求める。そして、各規定量の目的物質のイオンの検出強度が予め決められた強度になるように検出強度の補正値を決定し、記憶部41に保存する。
【0055】
また、分析プロトコル選択部61の分析プロトコル実施情報表示部612に、強度比キャリブレーションのプロトコルの実施に関する情報を表示する。本実施例では、「2020/**/**に解析を実施。」と表示される。
【0056】
さらに、プロトコル実行情報収集部45は、強度比キャリブレーションの分析プロトコルが実施されたことを記録する(例えば、記憶部41に保存された強度比キャリブレーションの分析プロトコルに実施済みであることを示すフラグを付して情報を更新する)。
【0057】
強度比キャリブレーションの分析プロトコルを終了すると、使用者は分析部2からサンプルプレート23を取り出す。使用者が次に実行する分析プロトコル(標準血漿分析又は検体分析を実行可能。ここでは標準血漿分析を省略して検体分析を実行。)を選択すると、プロトコル選択入力受付部42により検体分析の分析プロトコルの入力が受け付けられる。分析プロトコルが選択されると、判定部46は、記憶部41に保存された、分析プロトコルの実施順の情報を読み出す。検体分析は、レーザーパワー選定及び強度比キャリブレーションの分析プロトコルの後に実行される分析プロトコルである。そこで、判定部46は、先に実行されるべき分析プロトコル(レーザーパワー選定及び強度比キャリブレーション)が実行済みであるかを確認する。上記のとおり、プロトコル実行情報収集部45によって、レーザーパワー選定及び強度比キャリブレーションの分析プロトコルが実施済みであることが記録されている。判定部46は、先に実行されるべき分析プロトコル(レーザーパワー選定及び強度比キャリブレーション)が実行済みであるかを確認すると、動作を終了する。一方、先に実行されるべき分析プロトコル(レーザーパワー選定及び/又は強度比キャリブレーション)が未実行である場合には、未実行である分析プロトコルを表示部6に表示して使用者に実行を促す。
【0058】
次に、試料位置表示部43は、記憶部41から、プロトコル選択入力受付部42が受け付けた分析プロトコル(検体分析)に対応する試料の情報及び分析パラメータを読み出す。上記の通り、標準血漿と、未検査の被験者から採取した血液から抽出した血漿(この例では12名の未検査の測定対象試料1-12)を使用すること、レーザーパワー選定の分析プロトコルの解析結果に基づくレーザーパワー(20)等の分析パラメータ保存されている。試料位置表示部43は、これらの情報を読み出すと、サンプルプレート概形表示部651の、試料を配置すべきウェルの位置にそれらの情報を表示する。ただし、測定対象試料の試料名には、採取日、被験者の氏名、性別、年齢等の多くの内容が含まれうる。そのような長い試料名を限られた個別領域652内に表示することは難しい。そのため、本実施例では、試料名表示部641に、上記試料名を表示用の符号(S1, S2, ...)の対応関係を表示し、サンプルプレート概形表示部651には表示用の符号をラベルとして重畳表示するように構成されている。
【0059】
試料位置表示部43によるサンプルプレート概形表示部651の表示例を
図8に示す。ここでも先の例と同様に、試料位置表示部43は、使用済みの個別領域652が存在する行の個別領域652を全て使用済みとして取り扱い、これらの個別領域652の内部のウェルを全て、使用不可であることを示す灰色で表示する。
【0060】
試料位置表示部43は、続いて、未使用の個別領域652のうち、右上の隅に位置する個別領域652を最初の領域として抽出し、そこから所定の順に並ぶ15の個別領域652を抽出する。測定対象試料は12であるが、本実施例では最初に標準血漿を測定し、その後、所定個(ここでは一例として9個)の測定対象試料を連続測定した後、再び標準血漿を測定する、という順で測定を行い、最後の測定対象試料を測定した後、再び標準血漿を測定する。そのため、試料位置表示部43は15の個別領域652(1個の標準血漿、9個の測定対象試料、1個の標準血漿、3個の測定対象試料、及び1個の標準血漿を配置する個別領域)を抽出する。また、行方向の端部に位置する個別領域652の試料を測定した後は、当該個別領域652の下方に隣接する個別領域652の試料を測定する。つまり、行をまたいで測定を行う場合には、個別領域652を順に折り返し(最初の行は右から左へ、次の行は左から右へ)測定する。従って、試料位置表示部43もこの測定順に沿って15の個別領域652を抽出する。そして、開始ウェル番号表示部63にその個別領域652の右上に位置するウェル(当該個別領域652内で試料が配置される4つのウェルのうち、最初に試料の測定を行うウェル)の番号(ここではA5)を表示する。
【0061】
次に、試料位置表示部43は、最初の個別領域652、11番目の個別領域652、及び15番目の個別領域652に位置する5つのウェルのうち、四隅に位置するウェルを、標準血漿を配置するウェルであることを示す青色で表示し、中央に位置する1つのウェルを、キャリブラントを配置するウェルであることを示す紫色で表示する。また、2番目から10番目
及び12番目から14番目の個別領域652のそれぞれに位置する5つのウェルのうち、四隅に位置するウェルを、測定対象試料(未検査の被験者の血漿)を配置するウェルであることを示す赤色で表示し、中央に位置する1つのウェルを、キャリブラントを配置するウェルであることを示す紫色で表示する。
図8においても
図3、
図4、及び
図6と同様に異なる色を異なるハッチングで示している。また、標準血漿が配置される個別領域652には、標準血漿であることを示すラベル(StdPlasma)が重畳表示され、測定対象試料(測定対象試料1-12)が配置される個別領域652には、当該個別領域652内のウェルに配置すべき測定対象試料の試料名に対応付けられた表示用の符号(S1, S2, S3, ..., S12)がラベルとして重畳表示される。
図8に示す表示例は、表示項目選択部653の全ての項目にチェックが入った状態のものであり、上記同様に、使用者は、表示項目選択部653の項目を適宜に選択することにより、表示形態を変更することができる。
図9に、表示項目選択部653の項目のうちラベルのみを選択した場合の表示例を示す。
【0062】
使用者は、試料位置表示部43によりサンプルプレート概形表示部651に表示された情報を確認し、サンプルプレート23の各ウェルに標準血漿、測定対象試料1-12、及びキャリブラントを配置する。その後、ファイル作成ボタン66を押すと、バッチファイル作成部47により検体分析の分析プロトコルを実行するためのバッチファイルが作成され、記憶部41に保存される。
【0063】
バッチファイルの作成後、使用者は標準血漿、測定対象試料1-12、及びキャリブラントを所定のウェルに配置したサンプルプレート23をサンプルステージ22上にセットする。そして、使用者が測定開始を指示すると、測定実行部48は記憶部41からバッチファイルを読み出して測定を開始する。個別領域652内のウェルに配置したキャリブラントと標準血漿/測定対象試料測定の手順は先のレーザーパワー選定を実行する際と同様であるため、説明を省略する。強度比キャリブレーションと同様に、検体分析でも全ての試料とキャリブラントに同一の強度(レーザーパワー20)のレーザー光を照射する。
【0064】
検体分析では、まず、標準血漿について得られた2種類のペプチド由来のイオンの検出強度を強度比キャリブレーションの分析プロトコルで算出した補正値により補正する。そして、補正後の2種類のペプチド由来のイオンの検出強度の比が事前に決められた値から許容範囲内にあることを確認する。これが許容範囲内である場合には、隣接する個別領域652内の測定対象試料の測定を行う。測定対象試料1-9の測定を行った後、再び上記同様に標準血漿の測定を行う。補正後の2種類のペプチド由来のイオンの検出強度の比が事前に決められた値から許容範囲外である場合には、測定完了後に当該標準血漿の測定結果に異常が発生している(イオンの検出強度の比が事前に決められた値から許容範囲外である)旨を表示部6に表示する。
【0065】
全ての個別領域652の測定を終了した後、解析処理部49は測定対象試料を配置した個別領域652毎に、4回の質量分析で得られたイオンの検出強度を平均し、予め決められた質量電荷比(2種類のペプチドに特徴的なイオンの質量電荷比)のイオンの検出強度を抽出する。そして、強度比キャリブレーションの分析プロトコルにおいて算出した補正値により強度値を補正する。測定対象試料毎に得られた補正前後のイオンの強度値はそれぞれ記憶部41に保存される。これらの強度値に基づく以降の解析処理は特許文献1と同様であるため説明を省略する。
【0066】
このように本実施例の分析システム1では、各分析プロトコルを実施する際に、試料位置表示部43によって、試料を配置すべきウェルの位置及び配置すべき試料の情報がサンプルプレート概形表示部651にされる。そのため、使用者は、各プロトコルを実行しようとする際に、どの位置にどの試料を配置すればよいかを簡便に確認して正しく試料を配置することができる。
【0067】
また、本実施例の分析システム1では、プロトコル実行情報収集部45によって各分析プロトコルを実施済みであることが記録され、使用者が分析プロトコルを選択したときに、当該分析プロトコルよりも先に実行すべき分析プロトコルが完了しているかを判定部46が確認した後にバッチファイル作成部47が当該分析プロトコルを実行するためのバッチファイルを作成する。言い換えれば、使用者が、先に実行すべきプロトコルを未実行のままで別のプロトコルを選択した場合には、そのプロトコルを実行するバッチファイルが作成されない。そのため、複数のプロトコルを正しい順番で使用者に実行させることができる。
【0068】
さらに、本実施例の分析システム1では、試料位置表示部43が、使用済みの個別領域652が存在する行について、その行に並ぶ個別領域652を全て使用済みとして取り扱い、次の行の右端に位置する個別領域652を開始ウェルとするため、最初に試料を配置すべき個別領域652の位置を使用者が誤る可能性を低減することができる。
【0069】
さらに、本実施例の分析システム1では、個別領域652内のウェルが、当該ウェルに配置すべき試料の種類に対応した色で表示されるため、配置すべき試料を誤る可能性を低減することができる。また、レーザーパワー選定の分析プロトコルのように、各個別領域652に同一試料を配置し異なる分析パラメータで測定する場合にはそのパラメータの値がラベルとして表示され、強度比キャリブレーションや検体分析の分析プロトコルのように、個別領域652間で異なる試料を配置する場合には各試料に関するラベルが表示される。そのため、どの個別領域652にどのような試料を配置してどのような分析パラメータで測定を行うかを使用者が簡便に確認することができる。
【0070】
上記実施例は一例であって、本発明の趣旨に沿って適宜に変更することができる。上記実施例は、MALDI-TOF型の質量分析計を備えた分析システム1としたが、分析の目的や内容に応じて適宜の分析装置を用いることができる。
【0071】
また、上記実施例では分析作業支援装置及び分析作業支援プログラムを制御・処理部4の一部に組み込んだ構成としたが、両者を独立して構成することもできる。
【0072】
図10に変形例の分析システム100の要部構成を示す。変形例の分析システム100は、分析計102、制御・処理部140、及び分析作業支援装置340から構成され、相互に通信可能である。分析計102は、上記実施例と同じ質量分析計であってもよく、別の種類の分析計であってもよい。
【0073】
制御・処理部140は、主に分析計102の各部の動作の制御と解析処理を担う。制御・処理部140は記憶部141の他に、機能ブロックとして、測定実行部148と解析処理部149を備えている。測定実行部148及び解析処理部149の具体的な機能は上記実施例と同様であるため説明を省略する。制御・処理部140の実体は一般的なパーソナルコンピュータであり、予めインストールされた分析プログラムをプロセッサで実行することにより、上記機能ブロックが具現化される。また、制御・処理部140には入力部15及び表示部16が接続されている。
【0074】
分析作業支援装置340は、使用者による分析作業、特にサンプルプレート23への試料の配置作業を支援するものである。分析作業支援装置340は、記憶部341の他に、機能ブロックとして、プロトコル選択入力受付部342、試料位置表示部343、表示切替部344、プロトコル実行情報収集部345、判定部346、及びバッチファイル作成部347を備えている。これらの機能ブロックの具体的な機能は上記実施例と同様であるため説明を省略する。分析作業支援装置340の実体も一般的なパーソナルコンピュータであり、予めインストールされた分析プログラムをプロセッサで実行することにより、上記の各機能ブロックが具現化される。また、分析作業支援装置340にも入力部35及び表示部36が接続されている。
【0075】
上記実施例の分析システム1の記憶部41に保存されていた情報は、制御・処理部140の記憶部141と分析作業支援装置340の記憶部341のいずれか一方又は両方に保存される。両方に同じ情報を保存する場合には、記憶部141、341の情報の更新を同期させればよい。
【0076】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0077】
(第1項)
一態様は、分析装置との間で通信可能に構成され、該分析装置にセットされる試料収容部材に設けられた複数の試料配置部に試料を配置し、複数のプロトコルを順番に実行する分析作業を支援する装置であって、
複数のプロトコルのそれぞれにおいて配置すべき試料の情報及び分析パラメータを含む分析条件と、該複数のプロトコルの実行順に関する情報が保存された記憶部と、
表示部と、
前記複数のプロトコルのいずれかを選択する入力を受け付けるプロトコル選択入力受付部と、
前記プロトコル選択入力受付部に入力されたプロトコルにおいて配置すべき試料の情報を前記記憶部から読み出し、前記表示部に、前記試料収容部材に設けられた複数の試料配置部の位置とともに表示する試料位置表示部と、
前記分析装置から前記複数のプロトコルの実行状況に関する情報を収集するプロトコル実行情報収集部と、
前記プロトコル実行情報収集部により収集された前記複数のプロトコルの実行状況と前記記憶部に保存された前記複数のプロトコルの実行順に基づいて、前記プロトコル選択入力受付部に入力されたプロトコルよりも先に実行されるべきプロトコルが実行済みであるかを判定する判定部と、
前記判定部により、前記先に実行されるべきプロトコルが実行済みであると判定された場合に、前記プロトコル選択入力受付部に入力されたプロトコルに対応する分析条件を前記記憶部から読み出して当該プロトコルを実行するバッチファイルを作成するバッチファイル作成部と
を備える。
【0078】
(第6項)
また、別の一態様は、分析装置にセットされる試料収容部材に設けられた複数の試料配置部に試料を配置し、複数のプロトコルを順番に実行する分析作業を支援するプログラムであって、
複数のプロトコルのそれぞれにおいて配置すべき試料の情報及び分析パラメータを含む分析条件と、該複数のプロトコルの実行順に関する情報が保存された記憶部と、
表示部と、
を有する、前記分析装置との間で通信可能に構成されたコンピュータを、
前記複数のプロトコルのいずれかを選択する入力を受け付けるプロトコル選択入力受付部と、
前記プロトコル選択入力受付部に入力されたプロトコルにおいて配置すべき試料の情報を前記記憶部から読み出し、前記表示部に、前記試料収容部材に設けられた複数の試料配置部の位置とともに表示する試料位置表示部と、
前記分析装置から前記複数のプロトコルの実行状況に関する情報を収集するプロトコル実行情報収集部と、
前記プロトコル実行情報収集部により収集された前記複数のプロトコルの実行状況と前記記憶部に保存された前記複数のプロトコルの実行順に基づいて、前記プロトコル選択入力受付部に入力されたプロトコルよりも先に実行されるべきプロトコルが実行済みであるかを判定する判定部と、
前記判定部により、前記先に実行されるべきプロトコルが実行済みであると判定された場合に、前記プロトコル選択入力受付部に入力されたプロトコルに対応する分析条件を前記記憶部から読み出して当該プロトコルを実行するバッチファイルを作成するバッチファイル作成部
として動作させるものである。
【0079】
第1項に記載の分析作業支援装置及び第6項に記載の分析作業支援プログラムでは、使用者が、記憶部に予め保存されている複数のプロトコルのいずれかを選択すると、試料位置表示部は、当該プロトコルにおいて配置すべき試料の情報を記憶部から読み出して、試料収容部材に設けられた複数の試料配置部の位置とともに表示部に表示する。試料の情報は、例えば格子状に複数の試料配置部が設けられたサンプルプレートの場合、当該サンプルプレートを所定の向きで表示したときに画面上で右上の端部に位置する試料配置部を基点として、当該プロトコルで配置すべき試料の数だけ表示される。そのため、使用者は、各プロトコルを実行しようとする際に、どの位置にどの試料を配置すればよいかを簡便に確認して正しく試料を配置することができる。
【0080】
また、第1項に記載の分析作業支援装置及び第6項に記載の分析作業支援プログラムでは、使用者が選択したプロトコルについて、当該プロトコルよりも先に実行すべきプロトコルが実行済みであるかが判定部により判定され、該先に実行すべきプロトコルが実行済みである場合に、使用者が選択したプロトコルを実行するためのバッチファイルが作成される。つまり、使用者が、先に実行すべきプロトコルを未実行のままで別のプロトコルを選択した場合には、そのプロトコルを実行するバッチファイルが作成されない。そのため、複数のプロトコルを正しい順番で使用者に実行させることができる。
【0081】
(第2項)
第1項に記載の分析作業支援装置において、
前記複数の試料配置部が格子状に設けられており、
前記試料位置表示部が、予め決められた方向に並ぶ試料配置部のうちのいずれかが使用されている場合に、該方向に並ぶ全ての試料配置部を使用済みとして取り扱い、使用済みの試料配置部を未使用の試料配置部と識別可能に表示する。
【0082】
第2項に記載の分析作業支援装置では、上記予め決められた方向に並ぶ行又は列の全てが使用済みとなるため、試料を配置すべき位置の基点を使用者が誤る可能性を低減することができる。
【0083】
(第3項)
第2項に記載の分析作業支援装置において、
前記試料位置表示部が、未使用の試料配置部のうち、予め決められた角部に位置する試料配置部を基点として前記配置すべき試料の情報を表示する。
【0084】
第3項に記載の分析作業支援装置では、プロトコルを問わず常に予め決められた角部に位置する試料配置部から試料を配置していくため、試料を配置すべき位置の基点を使用者が誤る可能性をより一層低減することができる。
【0085】
(第4項)
第1項から第3項のいずれかに記載の分析作業支援装置において、
前記試料位置表示部が、前記配置すべき試料の種類に応じて前記試料配置部を識別可能に表示する。
【0086】
複数のプロトコルを実行する際には、実際の測定対象試料だけでなく、各プロトコルの目的に応じた標準試料を測定することがある。第4項に記載の分析作業支援装置では、こうした試料の種類に応じて試料配置部が識別可能に表示されるため、配置すべき試料を誤る可能性を低減することができる。
【0087】
(第5項)
第1項から第4項のいずれかに記載の分析作業支援装置において、
前記試料位置表示部が、前記配置すべき試料に同一種類の異なる試料が含まれる場合に、該異なる試料を特定するテキスト情報を表示する。
【0088】
複数人の被験者からそれぞれ採取した測定対象試料や、それぞれが異なる規定量の目的物質を含有した標準試料を測定する場合、試料の種類は同じである。第5項に記載の分析作業支援装置では、このように同一種類の異なる試料を配置する場合に、それらを相互に識別可能なテキスト情報が表示されるため、これらの試料を正しく配置することができる。
【符号の説明】
【0089】
1、100…分析システム
102…分析計
2…分析部
22…サンプルステージ
23…サンプルプレート
26…レーザー照射部
27…ミラー
28…フライトチューブ
29…検出器
4、140…制御・処理部
41、141、341…記憶部
42、342…プロトコル選択入力受付部
43、343…試料位置表示部
44、344…表示切替部
45、345…プロトコル実行情報収集部
46、346…判定部
47、347…バッチファイル作成部
48、148…測定実行部
49、149…解析処理部
5、15、35…入力部
6、16、36…表示部
61…分析プロトコル選択部
611…選択部
612…分析プロトコル実施情報表示部
62…データセット名入力部
63…開始ウェル番号表示部
64…試料情報表示部
641…試料名表示部
642…データ編集用ボタン
65…サンプルプレート表示部
651…サンプルプレート概形表示部
652…個別領域
653…表示項目選択部
66…ファイル作成ボタン