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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】頭部保護エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/232 20110101AFI20230905BHJP
   B60R 21/213 20110101ALI20230905BHJP
   B60R 21/231 20110101ALI20230905BHJP
【FI】
B60R21/232
B60R21/213
B60R21/231
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020155582
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049393
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】永田 松雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-052513(JP,A)
【文献】特開2019-010940(JP,A)
【文献】特開2020-001456(JP,A)
【文献】特開2007-331421(JP,A)
【文献】特開2001-114059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/232
B60R 21/213
B60R 21/231
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車内側における窓の上縁側に折り畳まれて収納され、上縁側を前記車両のボディ側に取付固定され、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて、下方に突出しつつ前記窓の車内側を覆うように展開膨張する構成のエアバッグを、備え、
該エアバッグが、膨張完了時に、前席に着座した乗員の頭部の側方を覆うように配置される前席用保護部と、膨張完了時の前端側であって該前席用保護部の前側に隣接して配置される端側膨張部と、を有し、前記前席用保護部と前記端側膨張部とを、膨張完了時に車内側に配置される車内側壁部と車外側に配置される車外側壁部とを結合させて構成される区画用閉じ部によって、区画させ、前記端側膨張部を、前記前席用保護部を経て内部に膨張用ガスを流入させて膨張させる構成とした頭部保護エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、前記車両の斜め衝突時やオフセット衝突時に斜め前方に向かって移動する前記頭部を、前記前席用保護部によって受け止める単独受止エリアと、前記前席用保護部と前記端側膨張部とによって受け止める協働受止エリアと、を配設させる構成とされ、
前記区画用閉じ部が、膨張完了時の前記エアバッグを側方から見た状態で、前下がりに傾斜するように線状に配設され、
前記協働受止エリアが、前記区画用閉じ部を間にした前記端側膨張部と前記前席用保護部との車内側面から、構成され
前記区画用閉じ部が、前端側に、後下方に向かって反転するような反転部を、配設させ
ていることを特徴とする頭部保護エアバッグ装置。
【請求項2】
前記区画用閉じ部が、膨張完了時の前記エアバッグを側方から見た状態で、後端を、前席に着座した状態の前記乗員の前記頭部の中心を通る上下方向に沿った基準線よりも前側に位置させるように、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項3】
前記区画用閉じ部が、膨張完了時の前記エアバッグを側方から見た状態で、後端側に比べて前端側を、斜め前方に向かって移動する前記頭部の移動軌跡に接近させるように、構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前席に着座した乗員の頭部の側方を覆うように配置される前席用保護部と、前席用保護部の前側に隣接して配置される端側膨張部と、を有するエアバッグを備える頭部保護エアバッグ装置に、関する。
【背景技術】
【0002】
従来、頭部保護エアバッグ装置としては、車両の斜め衝突時やオフセット衝突時に、乗員の頭部を、窓の車内側を覆うように膨張しているエアバッグと接触させつつ斜め前方に向かって移動させて、保護する構成のものがあった(例えば、特許文献1及び2参照)。乗員の頭部には、エアバッグと接触しつつ斜め前方に向かって移動する際に、エアバッグとの間に生じる摩擦力によって、頭部を水平方向に沿って車内側に向かって回転させるような力が作用することから、特許文献1及び2に記載のいずれの頭部保護エアバッグ装置においても、頭部を円滑に保護するために、このような頭部に作用する回転力を低減させる構成とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-40487公報
【文献】特開2016-55824公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグと別体の規制テザーを、頭部の側方を覆っているエアバッグの車内側面側に配設させて、エアバッグの膨張完了形状を規制することにより、頭部に作用する回転力を低減させる構成であり、特許文献2に記載の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグと別体の滑り布を、頭部の側方を覆っているエアバッグの車内側面側に配設させて、接触時に頭部に作用する回転力を低減させる構成であった。すなわち、特許文献1及び2に記載のいずれの頭部保護エアバッグ装置も、エアバッグと別体の部材を、別途配設させる構成であり、構成が簡便ではなく、また、窓の上縁側の狭い収納スペースに収納させるために、装置をコンパクト化する点においても、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡便な構成として、斜め前方に向かって移動する乗員の頭部を、膨張を完了させたエアバッグによって円滑に拘束可能な頭部保護エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、車両の車内側における窓の上縁側に折り畳まれて収納され、上縁側を車両のボディ側に取付固定され、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて、下方に突出しつつ窓の車内側を覆うように展開膨張する構成のエアバッグを、備え、
エアバッグが、膨張完了時に、前席に着座した乗員の頭部の側方を覆うように配置される前席用保護部と、膨張完了時の前端側であって前席用保護部の前側に隣接して配置される端側膨張部と、を有し、前席用保護部と端側膨張部とを、膨張完了時に車内側に配置される車内側壁部と車外側に配置される車外側壁部とを結合させて構成される区画用閉じ部によって、区画させ、端側膨張部を、前席用保護部を経て内部に膨張用ガスを流入させて膨張させる構成とした頭部保護エアバッグ装置であって、
エアバッグが、車両の斜め衝突時やオフセット衝突時に斜め前方に向かって移動する頭部を、前席用保護部によって受け止める単独受止エリアと、前席用保護部と端側膨張部とによって受け止める協働受止エリアと、を配設させる構成とされ、
区画用閉じ部が、膨張完了時のエアバッグを側方から見た状態で、前下がりに傾斜するように線状に配設され、
協働受止エリアが、区画用閉じ部を間にした端側膨張部と前席用保護部との車内側面から、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の頭部保護エアバッグ装置では、車両の斜め衝突時やオフセット衝突時に、斜め前方に向かって移動する乗員の頭部は、まず、単独受止エリアにおいて、前席用保護部によって受け止められることとなり、その後、協働受止エリアにおいて、前席用保護部と端側膨張部とによって受け止められることとなるが、前席用保護部と端側膨張部とを区画する線状の区画用閉じ部が、前下がりに傾斜して形成されるとともに、協働受止エリアは、この区画用閉じ部を間にした端側膨張部と前席用保護部との車内側面から、構成されている。そのため、エアバッグに接触しつつ斜め前方に向かって移動する乗員の頭部が、車内側となる側方から見た状態において、区画用閉じ部を直交方向側で跨ぐように移動せず、区画用閉じ部に略沿うように移動することとなる。その結果、斜め前方に向かって移動する乗員の頭部を、単独受止エリアから、協働受止エリアにかけて、端側膨張部と前席用保護部とによって受け止められつつ、スムーズに移動させることができる。また、頭部は、協働受止エリアにおいては、間に区画用閉じ部を配設させた状態の端側膨張部と前席用保護部とに、共に、接触されつつ、斜め前方に向かって移動することから、エアバッグ自体の頭部への接触面積も小さい。そのため、斜め前方に向かって移動する乗員の頭部に、水平方向に沿って車内側に向かって回転させるような力が生じることを、極力抑制でき、乗員の頭部を、エアバッグに接触させつつスムーズに斜め前方に向かって移動させることができて、端側膨張部によって受け止めることができる。そして、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、従来の頭部保護エアバッグ装置のごとく別部材を使用せず、前席用保護部を経て内部に膨張用ガスを流入させて膨張する構成の端側膨張部と、前席用保護部と、を区画している区画用閉じ部の配置位置や形状を調整することにより、このような作用を得ることができることから、構成を簡便にすることができ、また、別部材を使用していないことから、エアバッグを、コンパクトに折り畳むことができて嵩張らず、窓の上縁側の狭い収納スペースに円滑に収納させることもできる。
【0008】
したがって、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、簡便な構成として、斜め前方に向かって移動する乗員の頭部を、膨張を完了させたエアバッグによって円滑に拘束することができる。
【0009】
また、本発明の頭部保護エアバッグ装置において、区画用閉じ部を、膨張完了時のエアバッグを側方から見た状態で、後端を、前席に着座した状態の乗員の頭部の中心を通る上下方向に沿った基準線よりも前側に位置させるように、構成すれば、前席用保護部において、側面衝突時に乗員の頭部を保護する領域の上下に区画用閉じ部を配置させない構成であることから、側面衝突時に乗員の頭部を保護する領域の膨張完了時の厚さを、十分に確保することが可能となって、好ましい。
【0010】
さらに、上記構成の頭部保護エアバッグ装置において、区画用閉じ部を、膨張完了時のエアバッグを側方から見た状態で、後端側に比べて前端側を、斜め前方に向かって移動する頭部の移動軌跡に接近させるように、構成すれば、区画用閉じ部を頭部の移動軌跡と略沿うように傾斜させる場合と比較して、端側膨張部の容積を大きく確保することが可能となって、好ましい。
【0011】
さらにまた、上記構成の頭部保護エアバッグ装置において、区画用閉じ部の前端側に、後下方に向かって反転するような反転部を、配設させる構成とすれば、端側膨張部の容積を一層大きく確保することが可能となり、また、端側膨張部内に、反転部の下端側の隙間から内部に膨張用ガスを流入させる構成とすることで、端側膨張部内への膨張用ガスの流入開始を、前席用保護部よりも、確実に遅らせることができて、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態である頭部保護エアバッグ装置を車内側から見た概略正面図である。
図2】実施形態の頭部保護エアバッグ装置で使用するエアバッグを平らに展開した状態を示す正面図である。
図3図2のエアバッグにおいて、前席用保護部から端側膨張部にかけての部位を示す部分拡大正面図である。
図4】実施形態の頭部保護エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す車内側から見た概略正面図である。
図5】実施形態の頭部保護エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す運転席側方の領域を示す部分拡大正面図である。
図6】実施形態の頭部保護エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を車内側から見た状態の概略斜視図である。
図7】実施形態の頭部保護エアバッグ装置において、斜め前方に向かって移動する頭部が膨張したエアバッグと接触する状態を示す概略縦断面図である。
図8】実施形態の頭部保護エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す前後方向に沿った概略部分拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mは、図1に示すように、2つの窓(サイドウィンド)W1,W2を有した二列シートタイプの車両Vに搭載されている。なお、実施形態では、右ハンドル車において、運転席DSの右側(車外側O)の窓W1,W2の上縁側に搭載される頭部保護エアバッグ装置Mについて、説明をする。実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mは、図1に示すように、エアバッグ20と、インフレーター14と、取付ブラケット11,16と、エアバッグカバー9と、を備えている。エアバッグ20は、図1に示すように、車両Vの車内側における窓W1,W2の上縁側において、フロントピラー部FPの下縁側から、ルーフサイドレール部RRの下縁側を経て、リヤピラー部RPの上方の領域まで、折り畳まれて収納されている。
【0014】
エアバッグカバー9は、図1,8に示すように、フロントピラー部FPに配置されるフロントピラーガーニッシュ4と、ルーフサイドレール部RRに配置されるルーフヘッドライニング5と、のそれぞれの下縁から、構成されている。フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5とは、合成樹脂製として、フロントピラー部FPとルーフサイドレール部RRとにおいて、それぞれ、ボディ1(車体)側のインナパネル2における車内側に、取付固定されている。このエアバッグカバー9は、折り畳まれて収納されるエアバッグ20の車内側を覆って、展開膨張時のエアバッグ20を車内側下方へ突出可能とするために、エアバッグ20に押されて車内側に開き可能に、構成されている。
【0015】
インフレーター14は、エアバッグ20に膨張用ガスを供給するもので、図1に示すように、略円柱状のシリンダタイプとして、先端側に、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口を、配設させている。インフレーター14は、ガス吐出口付近を含めた先端側を、エアバッグ20の後述する接続口部26に挿入させ、接続口部26の外周側に配置されるクランプ15を用いて、エアバッグ20に対して連結されている。また、インフレーター14は、インフレーター14を保持する取付ブラケット16と、取付ブラケット16をボディ1側のインナパネル2に固定するためのボルト17と、を利用して、インナパネル2において、窓W2の上方となる位置に、取り付けられている(図1参照)。インフレーター14は、図示しないリード線を介して、車両Vの図示しない制御装置と電気的に接続されており、制御装置が、車両Vの側面衝突、斜め衝突、オフセット衝突、若しくは、ロールオーバー等を検知した際に、制御装置からの作動信号を入力させて、作動するように構成されている。
【0016】
取付ブラケット11は、図1,4,5に示すように、エアバッグ20の上縁21a側に形成される後述する各連結タブ50を窓W1,W2の上縁側に取り付けるためのもので、詳細な図示は省略するが、板金製として、ループ状に形成される連結タブ50に挿入されることにより、各連結タブ50に取り付けられる構成である。この取付ブラケット11は、ボルト12を利用して、ボディ1側のインナパネル2に取り付けられている。
【0017】
エアバッグ20は、実施形態の場合、図2,3に示すように、バッグ本体21と、バッグ本体21をボディ1側に取り付けるための連結タブ50と、バッグ本体21の内部に配置されるインナチューブ52と、を備えている。
【0018】
バッグ本体21は、可撓性を有した袋状として、図1の二点鎖線及び図4~8に示すように、インフレーター14からの膨張用ガスを内部に流入させて、折畳状態から展開して、窓W1,W2や、センターピラー部CP及びリヤピラー部RPのピラーガーニッシュ6,7の車内側Iを覆うように構成されている。バッグ本体21は、膨張完了時の外形形状を、窓W1からセンターピラー部CP及び窓W2を経て、リヤピラー部RPの前側にかけて覆い可能に、長手方向を前後方向に略沿わせた略長方形板状とされている(図2,4参照)。また、バッグ本体21は、実施形態の場合、図4,5に示すように、膨張完了時の下縁を、窓W1,W2の下縁から構成されるベルトラインBLよりも下方に位置させるように、上下の幅寸法を設定されている。
【0019】
実施形態の場合、バッグ本体21は、ポリアミド糸やポリエステル糸等を使用した袋織りによって、製造されている。バッグ本体21は、図2,3,7,8に示すように、膨張完了時に車内側Iに位置する車内側壁部22aと車外側Oに位置する車外側壁部22bとを離隔させるように内部に膨張用ガスを流入させて膨張する膨張部22と、車内側壁部22aと車外側壁部22bとを結合させて構成されて膨張用ガスを流入させない非膨張部40と、を有している。
【0020】
膨張部22は、実施形態の場合、車両Vのロールオーバー時にも乗員MPの頭部MHを保護可能なように、インフレーター14から吐出される膨張用ガスを流入させてまず膨張する一次膨張部24と、一次膨張部24よりも膨張用ガスの流入を遅らせて膨張する二次膨張部32と、を備える構成とされている。一次膨張部24は、ガス案内流路25、接続口部26、前席用保護部27、及び、後席用保護部30を、備えている。二次膨張部32は、端側膨張部33と中央側膨張部35とを備えている。実施形態のバッグ本体21は、ガス案内流路25,端側膨張部33,前席用保護部27,中央側膨張部35,後席用保護部30を区画する前側区画用閉じ部42,中央側区画用閉じ部46,後側区画用閉じ部47と、中央側膨張部35内を区画している厚さ規制区画部48A,48B,48C,48Dと、の僅かな領域を除いて、略全面にわたって内部に膨張用ガスを流入させて膨張するように、構成されている。
【0021】
ガス案内流路25は、図2に示すように、バッグ本体21の上縁21a側において、前後方向に略沿って延びるように配設されるもので、インフレーター14から吐出される膨張用ガスGを、ガス案内流路25の下方に配置される前席用保護部27及び後席用保護部30に案内するように、構成されている。ガス案内流路25において、前席用保護部27の後上方となる位置(バッグ本体21の前後の略中央)には、インフレーター14と接続される接続口部26が、ガス案内流路25と連通されて、ガス案内流路25から上方に突出するように、配設されている。実施形態の場合、接続口部26は、ガス案内流路25に対して後上がりに傾斜して形成されて、後端26a側を、インフレーター14を挿入可能に、開口させている。この接続口部26は、内部にインフレーター14を挿入させた状態で、外周側にクランプ15を嵌めることにより、インフレーター14に接続される。バッグ本体21内において、接続口部26からガス案内流路25における接続口部26の直下にかけての部位には、耐熱性を高めるためのインナチューブ52が、配設されている(図2,3参照)。このインナチューブ52は、前端側と後端側とに、膨張用ガスGを流出させるためのガス流出口52a,52bを有する構成であり、接続口部26から流入する膨張用ガスGは、このインナチューブ52を経て、2つのガス流出口52a,52bから、ガス案内流路25を前方側と後方側とに流れることとなる(図2,3参照)。
【0022】
前席用保護部27は、膨張完了時に前席(運転席DS)の側方に配置されるもので、側面衝突時においてエアバッグ20が膨張を完了させた際に、前席(運転席DS)に着座した乗員MP(運転者)の頭部MHを保護するための部位である。前席用保護部27は、エアバッグ20の膨張完了時に、ベルトラインBLよりも下方に延びるように構成されている(図4,5参照)。後席用保護部30は、膨張完了時に後席の側方に配置されるもので、側面衝突時においてエアバッグ20が膨張を完了させた際に、後席に着座した乗員の頭部を保護するための部位である。
【0023】
端側膨張部33は、一次膨張部24である前席用保護部27の前側に隣接するように、バッグ本体21の前端21c側に配置されている。端側膨張部33は、後述する前側区画用閉じ部42によって、後側に隣接される前席用保護部27と区画されるもので、実施形態の場合、膨張完了形状を、上下の中間部位を最も狭幅として、上端33a側と下端33b側とにかけてそれぞれ広幅とするように、構成されている(図2,3参照)。端側膨張部33は、エアバッグ20の膨張完了時に、ベルトラインBLよりも下方に延びるように構成されている。この端側膨張部33は、前席用保護部27を経て、内部に膨張用ガスを流入させて膨張する構成であり、実施形態の場合、端側膨張部33は、上端33a側を閉塞され、下端33b側に設けられる連通部37により、前席用保護部27と連通されている。実施形態の場合、この連通部37は、エアバッグ20の膨張完了時に、ベルトラインBLよりも下方となる位置に、配置される(図4,5参照)。すなわち、端側膨張部33と前席用保護部27とは、膨張完了時にベルトラインBLよりも下方の領域で、相互に連通される構成であり、二次膨張部32である端側膨張部33は、一次膨張部24である前席用保護部27よりも膨張用ガスの流入を遅らせて膨張することとなる。
【0024】
中央側膨張部35は、一次膨張部24である前席用保護部27と後席用保護部30との間であって、ガス案内流路25の下側の領域に配置されている。この中央側膨張部35は、前席用保護部27の後上側に配置される連通部38によって前席用保護部27と連通されている。中央側膨張部35は、膨張完了時に、ベルトラインBLよりも下方に延びる構成とされており、このベルトラインBLより下側に位置する下端35a側の領域に、膨張完了時の厚さ寸法を規制する厚さ規制区画部48A,48B,48C,48Dを、前後方向側で複数個(実施形態の場合4個)配設させて、ベルトラインBLより下側に位置する下端35a側の領域を薄肉に膨張させる構成とされている(図4参照)。中央側膨張部35と前席用保護部27とを連通させる連通部38は、詳細には、接続口部26(接続口部26とガス案内流路25との境界部位)の略直下となる位置に、形成されている。実施形態のエアバッグ20では、接続口部26からガス案内流路25における接続口部26の直下にかけての部位には、上述したごとくインナチューブ52が配設されており、膨張用ガスGは、インナチューブ52に形成される2つのガス流出口52a,52bから、ガス案内流路25内を、前方側と後方側とに向かうように流れることとなり、連通部38から直接的に、中央側膨張部35内に流入しない。中央側膨張部35内には、ガス流出口52aを経て前席用保護部27内に流入した膨張用ガスGが、連通部38を経て、内部に流入することとなる(図3参照)。すなわち、二次膨張部32である中央側膨張部35は、一次膨張部24である前席用保護部27よりも膨張用ガスの流入を遅らせて膨張することとなる。
【0025】
非膨張部40は、図2,3に示すように、膨張部22の外周縁を構成する周縁部41と、膨張部22の領域内に配置される前側区画用閉じ部42,中央側区画用閉じ部46,後側区画用閉じ部47,厚さ規制区画部48A,48B,48C,48Dと、を備えている。
【0026】
周縁部41は、接続口部26の後端26a側を除いて、膨張部22の周囲を全周にわたって囲むように、配置されている。バッグ本体21と別体とされてバッグ本体21の上縁21aをボディ1側に取り付けるための連結タブ50は、周縁部41におけるバッグ本体21の上縁21aを構成する部位の複数箇所(実施形態の場合、6箇所)と、バッグ本体21の前端21c側の一箇所と、に、配設されるもので、上述したごとく、取付ブラケット11を挿入可能なループ状とされている。
【0027】
前側区画用閉じ部42は、端側膨張部33と前席用保護部27とを区画しているもので、実施形態の場合、上端側(本体部43の後端43b側)を周縁部41と連ならせ、下端側(反転部44の先端44a側)を周縁部41から分離させて構成されている。詳細には、前側区画用閉じ部42は、図2,3に示すように、バッグ本体21を平らに展開した状態(膨張完了時のエアバッグ20を側方から見た状態)で、前下がりに傾斜して形成される本体部43と、本体部43の前端43a側において後下方に向かって延びるように形成される反転部44と、を有する構成として、略「く」字形の線状とされている。具体的には、実施形態の場合、前側区画用閉じ部42は、太さ(幅寸法)を、4~10mmの範囲内に設定された線状とされている。この前側区画用閉じ部42は、直線状の本体部43の後端43bを、膨張完了時のバッグ本体21を側方から見た状態において、運転席DS(前席)に着座した状態の乗員MP(AM50ダミー相当)の頭部MHの中心HC0を通る上下方向(鉛直方向)に沿った着座基準線L1よりも前側に位置させるように構成されている(図5参照)。実施形態の場合、本体部43の後端43bは、バッグ本体21において、接続口部26より前側の領域の前後の略中央となる位置に、配置されている(図2,3参照)。また、本体部43は、前下がりの傾斜状態を、膨張完了時のバッグ本体21を側方から見た状態において、後端43b側に比べて前端43a側を、斜め前方に向かって移動するの頭部MHの移動軌跡MTに接近させるように、構成されている(図5参照)。この頭部MHの移動軌跡MTは、車両Vの斜め衝突時やオフセット衝突時に、図示しないシートベルトにより腰部を拘束された状態で、腰部を起点として上半身を下半身に接近させるように前傾しつつ斜め前方に向かって移動する乗員MPにおいて、頭部中心HCの移動軌跡MTを、側方から見た状態を示しており、具体的には、車両Vを、90km/hの速度で衝突角度を15°としてラップ量35%でオフセット衝突させた際の、頭部中心HCの移動軌跡MTを側方から見た状態である。具体的には、実施形態の場合、本体部43は斜め下方に向かって延びる略直線状とされており、バッグ本体21を平らに展開した状態での前後方向に対する傾斜角度αを、45°以下とするように、構成されている(図3参照)。さらに具体的には、本体部43の前後方向に対する傾斜角度αは、40°程度に設定されている。
【0028】
また、本体部43は、前端43aを、膨張完了時のエアバッグ20を側方から見た状態で、運転席DSの前方に配置されているステアリングホイール70のリング部72の後端72aより前方に位置させるように構成されている。具体的には、本体部43は、前端43aを、ステアリングホイール70におけるステアリング中心SC(回転中心とボス部71表面との交点)を通る鉛直(上下)方向に沿ったステアリング基準線L2よりも前方に位置させるように、構成されている(図5参照)。このように、前側区画用閉じ部42の前端(本体部43の前端43a)を、ステアリング中心SCよりも前方に位置させることにより、後述する協働受止エリア62を、ステアリングホイール70の上方の領域まで配置させることができることから、乗員MPの頭部MHがステアリングホイール70に近接するまで前方移動することとなっても、この頭部MHを円滑に受け止めることができる。実際には、この本体部43の前端43aは、斜め前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHの移動軌跡MTにおいて、移動完了時の頭部中心HC1を通る上下方向(鉛直方向)に沿った移動基準線L3(図5参照)よりも前側(上側ともいえる)に位置している。さらに、実施形態では、前側区画用閉じ部42は、膨張完了時のエアバッグ20を側方から見た状態で、反転部44の先端44aを、ベルトラインBLと略一致した位置に配置させるように、構成されている(図4,5参照)。すなわち、本体部43の前端43aは、ベルトラインBLより上方となる位置に、配置されている。反転部44は、直線状とされており、前後方向に対する傾斜角度βを、15°程度に設定されるとともに、前後方向側の幅寸D1を、本体部43の前後方向側の幅寸法D2の3/4程度に設定されている(図3参照)。この反転部44の先端44aと周縁部41との間の隙間が、連通部37を構成している。
【0029】
中央側区画用閉じ部46は、図2,3に示すように、周縁部41の下縁側から後上方に延びるように配設されるもので、前席用保護部27と中央側膨張部35とを区画している。後側区画用閉じ部47は、図2に示すように、周縁部41の後下縁側から前方に延びるように配設されるもので、後席用保護部30及びガス案内流路25と、中央側膨張部35と、を区画している。中央側区画用閉じ部46と後側区画用閉じ部47との間の隙間が、連通部38を構成している。厚さ規制区画部48A,48B,48C,48Dは、図2に示すように、中央側膨張部35の領域内において、周縁部41の下縁から上方に延びるように配設されるもので、前後方向側で4箇所に、並設されている。
【0030】
そして、実施形態のエアバッグ20は、車両Vの斜め衝突時やオフセット衝突時に斜め前方に向かって移動する頭部MHを、前席用保護部27によって受け止める単独受止エリア60と、前席用保護部27と端側膨張部33とによって受け止める協働受止エリア62と、を配設させる構成とされている。車両Vの斜め衝突時やオフセット衝突時に、乗員MPは、図示しないシートベルトにより腰部を拘束された状態で、腰部を起点として上半身を下半身に接近させるように前傾しつつ斜め前方に向かって移動することとなる。そして、このような移動に伴って斜め前方に向かって移動する頭部MHは、頭部MHの側方を覆っている前席用保護部27において、後側部位29の領域の車内側壁部22aに接触し、その後、車内側壁部22aとの接触を維持されつつ、エアバッグ20に対して斜めに進入するようにして、前下方に向かうように移動し(図5,8の二点鎖線参照)、図示しないシートベルトのロックにより、さらなる移動を規制されて、移動を完了することとなる(移動完了後、頭部MHは、図5の移動軌跡MTに示すごとく、反動でやや後下方に振り戻されることとなる)。詳細には、単独受止エリア60は、図3に示すように、前席用保護部27において、運転席DS着座時の乗員MPの頭部MHの側方から前側区画用閉じ部42の本体部43の後端43bの略直下となる位置までの領域(具体的には、前席用保護部27の後側部位29)の車内側壁部22aから、構成されている。協働受止エリア62は、単独受止エリア60の前側に隣接して、前側区画用閉じ部42における本体部43の略全域における周縁の領域、具体的には、端側膨張部33において本体部43の上側を構成している上側部位34の車内側壁部22aと、前席用保護部27において本体部43の下側を構成している前側部位28の車内側壁部22aと、から、構成されている(図3参照)。すなわち、協働受止エリア62は、前側区画用閉じ部42(本体部43)を間にした端側膨張部33と前席用保護部27との車内側面(車内側壁部22a)から、構成されている。
【0031】
次に、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明する。まず、車内側壁部22aと車外側壁部22bとを平らに展開した状態のバッグ本体21を、下縁21b側を上縁21a側に接近させるように折り畳んで、エアバッグ20を折り畳む。実施形態では、詳細な図示は省略するが、バッグ本体21は、上縁21a側となるガス案内流路25の部位を、複数の前後方向に沿った折目を付けて蛇腹折りし、ガス案内流路25より下方の領域を、下縁21b側から車外側に向かって巻くようなロール折りにより、折り畳んでいる。エアバッグ20の折畳完了後には、破断可能な図示しない折り崩れ防止用のラッピング材により、折り畳まれたエアバッグ20の所定箇所をくるんでおく。
【0032】
その後、取付ブラケット16を取付済みのインフレーター14を、クランプ15を利用して、エアバッグ20の接続口部26と接続させ、各連結タブ50に取付ブラケット11を挿入させて、エアバッグ組付体を形成する。次いで、取付ブラケット11,16を、ボディ1側のインナパネル2の所定位置に配置させて、ボルト12,17止めし、所定のインフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を、インフレーター14に結線し、フロントピラーガーニッシュ4やルーフヘッドライニング5をボディ1側のインナパネル2に取り付け、さらに、ピラーガーニッシュ6,7をボディ1側のインナパネル2に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0033】
実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載後において、車両Vの側面衝突時、斜め衝突時、オフセット衝突時、若しくは、ロールオーバー時に、図示しない制御装置からの作動信号を受けてインフレーター14が作動されれば、インフレーター14から吐出される膨張用ガスが、バッグ本体21内に流入して、膨張するバッグ本体21が、図示しないラッピング材を破断させ、さらに、フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5との下縁から構成されるエアバッグカバー9を押し開いて、下方へ突出しつつ、図1の二点鎖線及び図4~8に示すごとく、窓W1,W2、センターピラー部CP、及び、リヤピラー部RPの車内側Iを覆うように、大きく膨張することとなる。
【0034】
そして、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、車両Vの斜め衝突時やオフセット衝突時に、斜め前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHは、まず、単独受止エリア60において、前席用保護部27(具体的には、前席用保護部27の後側部位29)によって受け止められることとなり、その後、協働受止エリア62において、前席用保護部27(前席用保護部27の前側部位28)と端側膨張部33(端側膨張部33の上側部位34)とによって受け止められることとなるが(図8の二点鎖線参照)、前席用保護部27と端側膨張部33とを区画する線状の前側区画用閉じ部42が、図5,6に示すように、前下がりに傾斜して形成されるとともに、協働受止エリア62は、この前側区画用閉じ部42を間にした端側膨張部33(上側部位34)と前席用保護部27(前側部位28)との車内側面(車内側壁部22a)から、構成されている。そのため、エアバッグ20の車内側壁部22aに接触しつつ斜め前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHが、車内側となる側方から見た状態において、前側区画用閉じ部42を直交方向側で跨ぐように移動せず、前側区画用閉じ部42に略沿うように移動することとなる(図5,6参照)。その結果、斜め前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHを、単独受止エリア60から、協働受止エリア62にかけて、端側膨張部33と前席用保護部27とによって受け止められつつ、スムーズに移動させることができる。また、頭部MHは、協働受止エリア62においては、間に前側区画用閉じ部42を配設させた状態の端側膨張部33と前席用保護部27とに、ともに、接触されつつ、斜め前方に向かって移動することから(図7参照)、エアバッグ20自体の頭部MHへの接触面積も小さい。そのため、斜め前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHに、水平方向に沿って車内側に向かって回転させるような力が生じることを、極力抑制でき、乗員MPの頭部MHを、エアバッグ20に接触させつつスムーズに斜め前方に向かって移動させることができて、端側膨張部33によって受け止めることができる。なお、詳細には図示していないが、ステアリングホイール70には、ステアリングホイール70の上面を全面にわたって覆うように膨張するエアバッグが、収納されており、実際には、乗員MPは、膨張したステアリングホイール用のエアバッグと、端側膨張部33と、によって、受け止められることとなる。そして、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、従来の頭部保護エアバッグ装置のごとく別部材を使用せず、前席用保護部27を経て内部に膨張用ガスを流入させて膨張する構成の端側膨張部33と、前席用保護部27と、を区画している前側区画用閉じ部42の配置位置や形状を調整することにより、このような作用を得ることができることから、構成を簡便にすることができ、また、別部材を使用していないことから、エアバッグ20を、コンパクトに折り畳むことができて嵩張らず、窓W1,W2の上縁側の狭い収納スペースに円滑に収納させることもできる。
【0035】
したがって、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、簡便な構成として、斜め前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHを、膨張を完了させたエアバッグ20によって円滑に拘束することができる。
【0036】
また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mにおいて、前側区画用閉じ部42は、膨張完了時のエアバッグ20を側方から見た状態で、後端(本体部43の後端43b)を、前席としての運転席DSに着座した状態の乗員MPの頭部MHの中心HC0を通る上下方向に沿った着座基準線L1よりも前側に位置させるように、構成されている(図5参照)。すなわち、前席用保護部27において、側面衝突時に乗員MPの頭部MHを保護する領域(後側部位29)の上下に前側区画用閉じ部42を配置させない構成であることから、側面衝突時に乗員MPの頭部MHを保護する領域(後側部位29)の膨張完了時の厚さを、十分に確保することができる。なお、このような点を考慮しなければ、前側区画用閉じ部は、後端を、頭部の中心を通る基準線よりも後側に位置するように、構成してもよい。
【0037】
さらに、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、前側区画用閉じ部42の本体部43は、膨張完了時のエアバッグ20を側方から見た状態で、後端43b側に比べて前端43a側を、斜め前方に向かって移動する頭部MHの移動軌跡MTに接近させるように、構成されていることから、前側区画用閉じ部を頭部の移動軌跡と略沿うように傾斜させる場合と比較して、端側膨張部33の容積を大きく確保することができる。なお、このような点を考慮しなければ、前側区画用閉じ部は、頭部の移動軌跡と略沿うように傾斜させる構成としてもよい。
【0038】
さらにまた、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、前側区画用閉じ部42が、本体部43の前端43a側に、後下方に向かって反転するような反転部44を、配設させている構成であることから、端側膨張部33が、下端33b側に、下側に向かって広幅となる部位を有することとなって、端側膨張部33の容積を一層大きく確保することが可能となる。また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、端側膨張部33内に、反転部44の下端(先端44a)側の隙間(連通部37)から内部に膨張用ガスを流入させる構成とすることで、端側膨張部33内への膨張用ガスの流入開始を、前席用保護部27よりも、確実に遅らせることができる。なお、このような点を考慮しなければ、前側区画用閉じ部として、反転部を備えない構成としてもよい。
【0039】
実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、前側区画用閉じ部42の本体部43は、略直線状とされるとともに、後端43bを、周縁部41に連結させて構成されている。すなわち、端側膨張部33は、上端33a側を閉塞されて構成されている。この前側区画用閉じ部の外形形状は、実施形態に限られるものではない。前側区画用閉じ部(本体部)は、直線状ではなく湾曲させて構成してもよく、また、端側膨張部内に多量の膨張用ガスを流入させない程度に、後端を、周縁部から離隔させるように、構成してもよい。
【0040】
なお、実施形態では、運転席DSの側方(車外側)に配置される頭部保護エアバッグ装置Mを例に採り説明しているが、本発明は、勿論、助手席の側方(車外側)に配置される頭部保護エアバッグ装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…ボディ、2…インナパネル、14…インフレーター、20…エアバッグ、21…バッグ本体、21a…上縁、21c…前端、22…膨張部、22a…車内側壁部、22b…車外側壁部、27…前席用保護部、33…端側膨張部、40…非膨張部、42…前側区画用閉じ部(区画用閉じ部)、43…本体部、43a…前端、43b…後端、44…反転部、44a…先端、60…単独受止エリア、62…協働受止エリア、70…ステアリングホイール、DS…運転席(前席)、MP…乗員、MH…頭部、MT…移動軌跡、W1,W2…窓、V…車両、M…頭部保護エアバッグ装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8