(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60N 3/00 20060101AFI20230905BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20230905BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20230905BHJP
B60J 1/17 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
B60N3/00 C
B60J5/04 F
B60J5/06 A
B60J1/17 A
(21)【出願番号】P 2020176304
(22)【出願日】2020-10-20
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 辰弥
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-056424(JP,A)
【文献】特開2020-050279(JP,A)
【文献】特開2019-018668(JP,A)
【文献】実開昭50-031633(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0079228(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第10307481(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/00-99/00
B60J 5/04-5/08
B60J 1/00-1/20
B60N 2/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートとサイドドアとの間に配置されたアームレストと、
前記アームレストが、前記車両用シートに着座した乗員が使用可能となる使用位置と、前記サイドドアに設けられた収納部に収納される収納位置と、を取り得るように、前記アームレストを前記サイドドアの厚み方向へ移動させる移動機構と、
手動運転モードと自動運転モードとに切り替える走行制御部と、
前記移動機構を制御する移動制御部と、
前記サイドドアに昇降可能に設けられたドアガラスと、
前記ドアガラスの昇降状態を検出する検出部と、
を備え
、
前記走行制御部により前記手動運転モードから前記自動運転モードへ切り替えられたときに、前記検出部により前記ドアガラスが所定位置以上上昇していることが検出された場合には、前記アームレストが前記使用位置から前記収納位置へ移動するように、前記移動制御部が前記移動機構を制御し、前記検出部により前記ドアガラスが所定位置以上下降していることが検出された場合には、前記アームレストが前記使用位置から前記収納位置へ移動しないように、前記移動制御部が前記移動機構を制御する車両。
【請求項2】
前記アームレストが前記使用位置から前記収納位置へ移動しないように、前記移動制御部が前記移動機構を制御したことを乗員へ通知する通知手段を備えた請求項1に記載の車両。
【請求項3】
車両用シートとサイドドアとの間に配置されたアームレストと、
前記アームレストが、前記車両用シートに着座した乗員が使用可能となる使用位置と、前記サイドドアに設けられた収納部に収納される収納位置と、を取り得るように、前記アームレストを前記サイドドアの厚み方向へ移動させる移動機構と、
手動運転モードと自動運転モードとに切り替える走行制御部と、
前記移動機構を制御する移動制御部と、
前記サイドドアに昇降可能に設けられたドアガラスと、
前記ドアガラスの昇降状態を検出する検出部と、
前記ドアガラスの昇降を制御するガラス制御部と、
車両用空調装置を制御する空調制御部と、
を備え、
前記走行制御部により前記手動運転モードから前記自動運転モードへ切り替えられたときに、
前記検出部により前記ドアガラスが所定位置以上上昇していることが検出された場合には、前記アームレストが前記使用位置から前記収納位置へ移動するように、前記移動制御部が前記移動機構を制御し、前記検出部により前記ドアガラスが所定位置以上下降していることが検出された場合には、前記ガラス制御部が前記ドアガラスを所定位置以上上昇させ、
前記移動制御部が前記移動機構を制御して前記アームレストを前記収納位置へ移動させたときに、前記検出部により前記ドアガラスが上限まで上昇されていることが検出された場合には、前記空調制御部が、前記車両用空調装置を外気導入モードに切り替える車両。
【請求項4】
車両用空調装置を制御する空調制御部を備え、
前記移動制御部が前記移動機構を制御して前記アームレストを前記収納位置へ移動させたときに、前記検出部により前記ドアガラスが上限まで上昇されていることが検出された場合には、前記空調制御部が、前記車両用空調装置を外気導入モードに切り替える請求項1又は請求項2に記載の車両。
【請求項5】
移動不能なアームレストが設けられたサイドドアのドアガラスの昇降を制御するサブガラス制御部を備え、
前記移動制御部が前記移動機構を制御して前記アームレストを前記収納位置へ移動させたときに、前記検出部により前記ドアガラスが上限まで上昇されていることが検出された場合には、前記サブガラス制御部が、移動不能なアームレストが設けられた前記サイドドアのドアガラスを下降させる請求項1~請求項4
の何れか1項に記載の車両。
【請求項6】
車両用シートとサイドドアとの間に配置されたアームレストと、
前記アームレストが、前記車両用シートに着座した乗員が使用可能となる使用位置と、前記サイドドアに設けられた収納部に収納される収納位置と、を取り得るように、前記アームレストを前記サイドドアの厚み方向へ移動させる移動機構と、
手動運転モードと自動運転モードとに切り替える走行制御部と、
前記移動機構を制御する移動制御部と、
前記サイドドアに昇降可能に設けられたドアガラスと、
前記ドアガラスの昇降状態を検出する検出部と、
前記ドアガラスの昇降を制御するガラス制御部と、
移動不能なアームレストが設けられたサイドドアのドアガラスの昇降を制御するサブガラス制御部と、
を備え、
前記走行制御部により前記手動運転モードから前記自動運転モードへ切り替えられたときに、前記検出部により前記ドアガラスが所定位置以上上昇していることが検出された場合には、前記アームレストが前記使用位置から前記収納位置へ移動するように、前記移動制御部が前記移動機構を制御し、前記検出部により前記ドアガラスが所定位置以上下降していることが検出された場合には、前記ガラス制御部が前記ドアガラスを所定位置以上上昇させ、
前記移動制御部が前記移動機構を制御して前記アームレストを前記収納位置へ移動させたときに、前記検出部により前記ドアガラスが上限まで上昇されていることが検出された場合には、前記サブガラス制御部が、移動不能なアームレストが設けられた前記サイドドアのドアガラスを下降させる車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動運転時において、サイドドアの内壁に設けられたアームレストが、車両の手動運転時における初期位置から車両前方側で、かつ車幅方向内側の前進位置へ移動可能に構成されたアームレスト装置は、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。このアームレストは、サイドドアの内壁から車幅方向内側へ突出したベース部材の内部に設けられたリンク機構によって初期位置から前進位置へ移動可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の自動運転時には、車両用シートに着座している乗員は、車両前方側を向く姿勢以外の姿勢を取ることがある。しかしながら、上記のように初期位置から前進位置へ移動するアームレストであると、自動運転中の車両用シートに着座している乗員にとって、そのアームレストが邪魔になることがあり、その乗員の周辺の車室空間が狭くなってしまう不具合がある。このように、車両の自動運転時において、車室空間を広げ、乗員の快適性を向上させるという観点においては、改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、車室空間を広げられ、乗員の快適性を向上させられる車両を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る第1の態様の車両は、車両用シートとサイドドアとの間に配置されたアームレストと、前記アームレストが、前記車両用シートに着座した乗員が使用可能となる使用位置と、前記サイドドアに設けられた収納部に収納される収納位置と、を取り得るように、前記アームレストを前記サイドドアの厚み方向へ移動させる移動機構と、を備えている。
【0007】
第1の態様の発明によれば、サイドドアの厚み方向へ移動させる移動機構により、アームレストが、車両用シートに着座した乗員が使用可能となる使用位置と、サイドドアに設けられた収納部に収納される収納位置と、を取る。したがって、アームレストが不要なときに、そのアームレストを収納部に収納することで、車室空間を広げることが可能となる。これにより、例えば自動運転時において、車両用シートに着座している乗員が、その車両用シート上で姿勢を変更しても、その膝等がアームレストに当たることが防止され、その乗員の快適性が向上される。
【0008】
また、本発明に係る第2の態様の車両は、第1の態様の車両であって、手動運転モードと自動運転モードとに切り替える走行制御部と、前記移動機構を制御する移動制御部と、を備え、前記走行制御部により前記手動運転モードから前記自動運転モードへ切り替えられたときに、前記アームレストが前記使用位置から前記収納位置へ移動するように、前記移動制御部が前記移動機構を制御する。
【0009】
第2の態様の発明によれば、走行制御部によって手動運転モードから自動運転モードへ切り替えられたときに、移動制御部が、移動機構を制御して、アームレストを使用位置から収納位置へ移動させる。したがって、自動運転時において、車両用シートに着座している乗員が、別途操作をしなくても、アームレストが収納部に自動的に収納される。これにより、乗員の快適性が更に向上される。
【0010】
また、本発明に係る第3の態様の車両は、第2の態様の車両であって、前記サイドドアに昇降可能に設けられたドアガラスと、前記ドアガラスの昇降状態を検出する検出部と、前記ドアガラスの昇降を制御するガラス制御部と、を備え、前記走行制御部により前記手動運転モードから前記自動運転モードへ切り替えられたときに、前記検出部により前記ドアガラスが所定位置以上下降していることが検出された場合には、前記ガラス制御部が前記ドアガラスを所定位置以上上昇させる。
【0011】
第3の態様の発明によれば、走行制御部によって手動運転モードから自動運転モードへ切り替えられたときに、検出部によってドアガラスが所定位置以上下降していることが検出された場合には、ガラス制御部が、ドアガラスを所定位置以上上昇させる。したがって、車両用シートに着座している乗員が、別途操作をしなくても、収納位置へ移動するアームレストがドアガラスに当たることによる不具合の発生が防止される。
【0012】
また、本発明に係る第4の態様の車両は、第2の態様の車両であって、前記サイドドアに昇降可能に設けられたドアガラスと、前記ドアガラスの昇降状態を検出する検出部と、を備え、前記走行制御部により前記手動運転モードから前記自動運転モードへ切り替えられたときに、前記検出部により前記ドアガラスが所定位置以上下降していることが検出された場合には、前記アームレストが前記使用位置から前記収納位置へ移動しないように、前記移動制御部が前記移動機構を制御する。
【0013】
第4の態様の発明によれば、走行制御部によって手動運転モードから自動運転モードへ切り替えられたときに、検出部によってドアガラスが所定位置以上下降していることが検出された場合には、移動制御部が、移動機構を制御して、アームレストの使用位置から収納位置への移動を禁止する。したがって、車両用シートに着座している乗員が、別途操作をしなくても、収納位置へ移動するアームレストがドアガラスに当たることによる不具合の発生が防止される。
【0014】
また、本発明に係る第5の態様の車両は、第4の態様の車両であって、前記アームレストが前記使用位置から前記収納位置へ移動しないように、前記移動制御部が前記移動機構を制御したことを乗員へ通知する通知手段を備えている。
【0015】
第5の態様の発明によれば、通知手段により、アームレストの使用位置から収納位置への移動が禁止されたことが乗員へ通知される。これにより、その乗員が、アームレストの収納不可の原因を認識可能となり、アームレストの収納に必要な対応を適切に取ることが可能となる。
【0016】
また、本発明に係る第6の態様の車両は、第3~第5の何れか1つの態様の車両であって、車両用空調装置を制御する空調制御部を備え、前記移動制御部が前記移動機構を制御して前記アームレストを前記収納位置へ移動させたときに、前記検出部により前記ドアガラスが上限まで上昇されていることが検出された場合には、前記空調制御部が、前記車両用空調装置を外気導入モードに切り替える。
【0017】
第6の態様によれば、移動制御部が、移動機構を制御して、アームレストを収納位置へ移動させたときに、検出部によってドアガラスが上限まで上昇されていることが検出された場合には、空調制御部が、車両用空調装置を外気導入モードに切り替える。したがって、自動運転時において、車室内の換気不良が自動的に抑制され、乗員の快適性が向上される。
【0018】
また、本発明に係る第7の態様の車両は、第3~第6の何れか1つの態様の車両であって、移動不能なアームレストが設けられたサイドドアのドアガラスの昇降を制御するサブガラス制御部を備え、前記移動制御部が前記移動機構を制御して前記アームレストを前記収納位置へ移動させたときに、前記検出部により前記ドアガラスが上限まで上昇されていることが検出された場合には、前記サブガラス制御部が、移動不能なアームレストが設けられた前記サイドドアのドアガラスを下降させる。
【0019】
第7の態様の発明によれば、移動制御部が、移動機構を制御して、アームレストを収納位置へ移動させたときに、検出部によってドアガラスが上限まで上昇されていることが検出された場合には、サブガラス制御部が、移動不能なアームレストが設けられたサイドドアのドアガラスを下降させる。したがって、自動運転時において、車室内の換気不良が自動的に抑制され、乗員の快適性が向上される。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、車室空間を広げることができ、乗員の快適性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係る自動運転が可能な車両を示す側面図である。
【
図2】本実施形態に係るアームレストを備えたサイドドアを示す斜視図である。
【
図3】本実施形態に係るアームレストが使用位置にあるときの
図2のX-X線矢視断面図である。
【
図4】本実施形態に係るアームレストが収納位置にあるときの
図2のX-X線矢視断面図である。
【
図5】本実施形態に係るアームレストの平行リンク機構を示す斜視図である。
【
図6】本実施形態に係るアームレストの平行リンク機構を示す
図3、
図4に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、本実施形態に係るアームレスト30(
図2参照)は、主に自動運転が可能な車両10(
図1参照)に好適である。したがって、以下においては、自動運転が可能な車両10について説明する。
【0023】
また、その説明の便宜上、各図において適宜示す矢印UPを車両10の上方向、矢印FRを車両10の前方向、矢印RHを車両10の右方向とする。したがって、以下の説明で、特記することなく上下、前後、左右の方向を記載した場合は、車両10における上下方向の上下、車両10における前後方向の前後、車両10における左右方向の左右を示すものとする。
【0024】
また、以下において、車両10の前席に乗車する乗員の乗降口を開閉するフロントサイドドア(以下、単に「サイドドア」という)12を例に取る。また、サイドドア12における各方向は、サイドドア12が乗降口を閉じている状態を基準とする。したがって、サイドドア12における上下、前後、左右は、車両10における上下、前後、左右と同じである。また、サイドドア12の厚み方向は、車両10の左右方向(車幅方向)に沿った方向と同方向であるが、
図3、
図4に示されるようなサイドドア12の縦断面視で、アームレスト30が僅かにカーブする動軌跡で移動した場合も、厚み方向への移動とする。
【0025】
図1、
図2に示されるように、車両10には、サイドドア12が設けられている。なお、
図2に示されているサイドドア12は、右側のサイドドアであるが、サイドドア12は、左右対称で同じ構成である。
図2~
図4に示されるように、サイドドア12は、ドア本体部14を有している。ドア本体部14は、車幅方向外側に配置されてドア外板を構成するドアアウタパネル16と、ドアアウタパネル16の車幅方向内側(車室側)に配置されてドア内板を構成するドアインナパネル18と、を有している。
【0026】
すなわち、ドア本体部14は、ドアアウタパネル16とドアインナパネル18とが、その前端部同士、後端部同士及び下端部同士をヘミング加工によって結合することで(ドアアウタパネル16の端末がドアインナパネル18の端末を挟み込むことで)構成されている。これにより、ドアアウタパネル16とドアインナパネル18との間(ドア本体部14の内部)に、上下方向、前後方向及び車幅方向に亘って所定の空隙を有する空間部Sが形成される構成になっている。
【0027】
そして、このドア本体部14(サイドドア12)の内部に形成された空間部Sに、インパクトビーム(図示省略)が配置されるとともに、ドアガラス28が昇降可能に設けられている。また、
図1に示されるように、ドア本体部14の内部には、ドアガラス28の昇降状態(例えばドアガラス28の下端面28Aの位置など)を検出する検出部54と、ドアガラス28の昇降を制御するガラス制御部58と、が設けられている。
【0028】
図3、
図4に示されるように、ドアアウタパネル16は、車幅方向に沿った縦断面視で、その中央部が車幅方向外側へ凸となるように湾曲されている。そして、ドアインナパネル18の車幅方向内側には、車室の意匠面を構成する樹脂製のドアトリム20が取り付けられている。なお、ドアインナパネル18には、ドアトリム20の後述する開口部22と連通し、アームレスト30をドア本体部14(サイドドア12)の厚み方向へ移動可能にするための開口部18Aが形成されている。
【0029】
ドアトリム20は、ドアインナパネル18を車室側から覆うことが可能な略平板状に形成されており、アームレスト30をドア本体部14(サイドドア12)の厚み方向へ移動可能にするための開口部22を有している。この開口部22は、ドアインナパネル18の開口部18Aよりも小さい形状とされており、アームレスト30が通過可能なように、その開口部18Aと連通している。
【0030】
図2に示されるように、アームレスト30は、前後方向が長手方向とされたブロック状に形成されており、その上面における前部側には、ドアガラス28を昇降させるためのスイッチ類36が設けられている。そして、アームレスト30の上面(前部側を除く)には、乗員の肘等を乗せることができるようになっている。また、ドアトリム20におけるアームレスト30の下方側には、ペットボトル等を収納可能なドアポケット24(
図3、
図4も参照)が一体に形成されている。
【0031】
図5、
図6に示されるように、アームレスト30は、移動機構としての平行リンク機構40によってサイドドア12(ドア本体部14)の厚み方向へ移動可能に構成されている。平行リンク機構40は、アームレスト30の長手方向両端部における上部に車幅方向外側へ向けて一体に突設されたブラケット32に、それぞれ上端部が枢支連結された前後一対の第1リンクロッド42と、アームレスト30の長手方向両端部における高さ方向略中央部に車幅方向外側へ向けて一体に突設されたブラケット34に、それぞれ上端部が枢支連結された前後一対の第2リンクロッド44と、を有している。
【0032】
そして、平行リンク機構40は、各第1リンクロッド42の下端部がそれぞれ固定され、ドアインナパネル18に設けられたブラケット(図示省略)に前後方向を軸方向として回転可能に支持された第1回転軸46と、各第2リンクロッド44の下端部がそれぞれ固定され、ドアインナパネル18に設けられたブラケット(図示省略)に前後方向を軸方向として回転可能に支持された第2回転軸48と、を有している。また、第2回転軸48の軸方向一端部には、電動モーター38が同軸的に取り付けられている。
【0033】
この電動モーター38で第2回転軸48を回転させることにより、平行リンク機構40を作動させるようになっている。すなわち、第2回転軸48を正逆両方向に回転させることにより、第1回転軸46及び第2回転軸48を回動支点として、第1リンクロッド42及び第2リンクロッド44を左右方向に回動させるようになっている。
【0034】
これにより、アームレスト30は、サイドドア12の車室側に隣接して配置された車両用シート(図示省略)に着座した乗員がスイッチ類36を操作(使用)可能なように開口部22から車室側へ突出した使用位置(
図3参照)と、ドア本体部14の内部(空間部S内)に形成された収納部Snへ収納される収納位置(
図4参照)と、を取り得るようになっている。なお、アームレスト30が収納部Snへ収納されたとき、アームレスト30の車室側を向く壁面は、開口部22から車室側へ突出していないことが好ましいが、微少であれば突出していても構わない。
【0035】
また、
図3、
図4に示されるように、ドア本体部14の内部には、開口部22を空間部S側から閉鎖可能な平板状のシール部材26が設けられている。このシール部材26は、柔軟なゴム製であり、アームレスト30の収納位置への移動を阻害しない程度に弾性変形可能になっている。また、このシール部材26は、開口部22を閉鎖可能なように、その開口部22よりも一回り以上大きい形状に形成されている。
【0036】
そして、このシール部材26は、その周縁部が、ドアトリム20の空間部S側の壁面に接合されて固定されている。なお、このシール部材26の開口部22を覆う中央部分は、アームレスト30が使用位置に配置されているときに、ドアガラス28の昇降を妨げることがないように、通常(復元)状態でドアガラス28よりもドアトリム20側に位置する構成になっている(
図3参照)。
【0037】
このような構成のシール部材26により、例えばドアガラス28とドア本体部14の上端部との隙間から進入してきた雨水等が、ドアインナパネル18の開口部18A及びドアトリム20の開口部22を通って車室側へ漏れるのを防止する構成になっている。そして、アームレスト30が収納部Snへ収納されるときには、シール部材26が弾性変形して、その収納部Snへの移動を許容する構成になっている(
図4参照)。
【0038】
また、
図1に示されるように、車両10は、手動運転モードと自動運転モードとに切り替える走行制御部50と、車両用空調装置(図示省略)を制御する空調制御部52と、を備えている。そして、サイドドア12のドア本体部14の内部には、平行リンク機構40を作動させる電動モーター38の駆動を制御する移動制御部56が設けられている。
【0039】
この移動制御部56は、走行制御部50によって手動運転モードから自動運転モードへ切り替えられたときに、その切り替えに連動してアームレスト30が使用位置から収納位置へ移動するように、平行リンク機構40を作動させる電動モーター38の駆動を制御するようになっている。
【0040】
また、走行制御部50によって手動運転モードから自動運転モードへ切り替えられたときに、検出部54によってドアガラス28の下端面28Aが所定位置以上下降していることが検出された場合には、ガラス制御部58によってドアガラス28の下端面28Aを所定位置以上上昇させるようになっている。なお、ここで言う「所定位置」とは、アームレスト30が収納部Snへ収納されたときに、そのアームレスト30の上面と上下方向で対向するシール部材26の上面26Aが配置される高さ位置である(
図4参照)。
【0041】
また、このとき、ドアガラス28を上昇させずに、アームレスト30が使用位置から収納位置へ移動しないように、移動制御部56が、平行リンク機構40を作動させる電動モーター38の駆動を制御するようにしてもよい。すなわち、移動制御部56により、アームレスト30の収納位置への移動(収納部Snへの収納)を禁止するようにしてもよい。
【0042】
但し、この場合には、そのアームレスト30の収納位置への移動が禁止されたことが、通知手段60(
図2参照)によって乗員へ通知されるようになっていることが好ましい。通知手段60としては、アラーム音を鳴らす、アラーム光を点灯させるなどでよく、車両用シートを振動させるなどでもよい。本実施形態における通知手段60は、一例として、サイドドア12に設けられたスピーカー62(
図2参照)を有しており、そのスピーカー62からアラーム音を発生させるようになっている。
【0043】
また、移動制御部56が平行リンク機構40を制御してアームレスト30を収納位置へ移動させたときに、検出部54によってドアガラス28が上限まで上昇されていることが検出された場合には、空調制御部52が、車両用空調装置を外気導入モードに自動的に切り替えるように構成されている。これにより、自動運転中における車両10の車室が自動的に換気される。
【0044】
また、このような自動運転が可能な車両10では、後席に乗車する乗員の乗降口を開閉するリアサイドドア13(
図1参照)のアームレスト(図示省略)が移動不能とされている場合がある。そして、
図1に示されるように、このリアサイドドア13におけるドア本体部15の内部には、ドアガラス29の昇降を制御するサブガラス制御部59が設けられている。
【0045】
したがって、移動制御部56が平行リンク機構40を制御してアームレスト30を収納位置へ移動させたときに、検出部54によってドアガラス28が上限まで上昇されていることが検出された場合には、サブガラス制御部59が、リアサイドドア13のドアガラス29を自動的に下降させるように構成されていてもよい。これにより、自動運転中における車両10の車室が自動的に換気される。
【0046】
以上のような構成とされた本実施形態に係る車両10において、次にその作用について説明する。
【0047】
図2、
図3に示されるように、車両10の手動運転時には、サイドドア12のアームレスト30は、使用位置に配置されている。すなわち、アームレスト30は、平行リンク機構40により、ドアトリム20の開口部22から車室側へ突出している。したがって、そのサイドドア12に隣接する車両用シートに着座している乗員は、そのアームレスト30の上面における前部側に設けられているスイッチ類36を操作(使用)することができたり、そのアームレスト30の上面(前部側を除く)に肘等を乗せたりすることができる。
【0048】
一方、車両10の自動運転時には、車両用シートに着座している乗員が、アームレスト30に設けられているスイッチ類36を操作する機会が殆どない。そのため、車両10の自動運転時においては、不必要となるアームレスト30をサイドドア12の収納位置へ移動させる(ドア本体部14に形成された収納部Snに収納する)ことができる。
【0049】
すなわち、検出部54によってドアガラス28の下端面28Aが所定位置以上上昇していることが検出されている状態で、走行制御部50によって手動運転モードから自動運転モードへ切り替えられたときには、移動制御部56が、その切り替えに連動して平行リンク機構40を制御し、アームレスト30を使用位置から収納位置へ移動させる。
【0050】
これにより、そのサイドドア12に隣接する車両用シートに着座している乗員の周辺の車室空間を広げることができ、その乗員の足部及び脚部の移動自由度を向上させることができる。つまり、その乗員が車両用シート上で姿勢を変更しようとしても、その乗員の例えば膝等がアームレスト30に当たるのを防止することができる。よって、乗員の快適性を向上させることができる。
【0051】
しかも、その車両用シートに着座している乗員が、別途操作をしなくても、手動運転モードから自動運転モードへの切り替えに連動して、アームレスト30が自動的に収納部Snに収納されるようになっている。そのため、乗員の快適性を更に向上させることができる。また、これにより、ドアポケット24へ容易にアクセスすることができるようになるため、例えばドアポケット24に収納したペットボトル等を取り出すことが極めて容易にできる。
【0052】
また、走行制御部50によって手動運転モードから自動運転モードへ切り替えられたときに、検出部54によってドアガラス28の下端面28Aが所定位置以上下降していることが検出された場合には、ガラス制御部58が、ドアガラス28の下端面28Aを所定位置以上上昇させる。したがって、その車両用シートに着座している乗員が、別途操作をしなくても、収納位置へ移動するアームレスト30がドアガラス28に当たることによる不具合の発生を防止することができる。
【0053】
また、走行制御部50によって手動運転モードから自動運転モードへ切り替えられたときに、検出部54によってドアガラス28の下端面28Aが所定位置以上下降していることが検出された場合には、移動制御部56が、平行リンク機構40を制御して、アームレスト30の使用位置から収納位置への移動を禁止するようにしてもよい。この場合でも、その車両用シートに着座している乗員が、別途操作をしなくても、収納位置へ移動するアームレスト30がドアガラス28に当たることによる不具合の発生を防止することができる。
【0054】
なお、この場合、アームレスト30の使用位置から収納位置への移動が禁止されたことが、通知手段60によって乗員へ通知される。つまり、その乗員が、アームレスト30の収納不可の原因を認識することができる。したがって、その乗員は、スイッチ類36を操作してドアガラス28を上昇させるなど、アームレスト30を収納部Snへ収納させるために必要な対応を適切に取ることができる。
【0055】
また、移動制御部56が、平行リンク機構40を制御して、アームレスト30を収納位置へ移動させたときに、検出部54によってドアガラス28が上限まで上昇されていることが検出された場合には、空調制御部52が、車両用空調装置を外気導入モードに切り替える。したがって、車両10の自動運転時において、車室内の換気不良を自動的に抑制することができ、乗員の快適性を向上させることができる。
【0056】
なお、移動制御部56が、平行リンク機構40を制御して、アームレスト30を収納位置へ移動させたときに、検出部54によってドアガラス28が上限まで上昇されていることが検出された場合には、サブガラス制御部59が、移動不能なアームレストが設けられたリアサイドドア13のドアガラス29を下降させるようにしてもよい。この場合でも、車両10の自動運転時において、車室内の換気不良を自動的に抑制することができ、乗員の快適性を向上させることができる。
【0057】
また、電動モーター38を設けずに、手動でアームレスト30を使用位置から収納位置へ移動させられるように構成してもよい。すなわち、アームレスト30を使用位置から収納位置へ移動させるときには、乗員がアームレスト30を車幅方向外側へ向けて押圧することで収納部Snへ収納されるようになっていてもよい。
【0058】
そして、アームレスト30を収納位置から使用位置へ移動させるときには、そのアームレスト30を乗員が手指で把持して収納部Snから引き出せるようになっていればよい。したがって、この場合には、そのアームレスト30を手動で引き出し易くするために、アームレスト30の下面に、手指を挿入可能な大きさとされた凹部30A(
図3、
図4、
図6参照)を形成することが好ましい。
【0059】
また、上記したように、サイドドア12のドア本体部14の内部には、開口部22を空間部S側から閉鎖可能なシール部材26が設けられている。したがって、例えばドアガラス28とドア本体部14の上端部との隙間から雨水等が進入しても、その雨水等がドアインナパネル18の開口部18A及びドアトリム20の開口部22を通って車室側へ漏れるのを防止することができる。
【0060】
以上、本実施形態に係る車両10について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る車両10は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、本実施形態に係るアームレスト30は、手動でしか運転できない車両(図示省略)のサイドドア(図示省略)にも適用が可能である。
【0061】
また、アームレスト30は、サイドドア12に設けられる構成に限定されるものではなく、例えば車両用シートとサイドドア12との間のフロアパネル(図示省略)上に設けられたアームレストベース(図示省略)に、使用位置と収納位置とを取り得るように移動可能に設けられていてもよい。なお、アームレスト30がサイドドア12に設けられている場合でも、アームレスト30は、車両用シートとサイドドア12との間に配置されていると言える。
【0062】
また、移動制御部56が平行リンク機構40を制御してアームレスト30を収納位置へ移動させたときに、検出部54によってドアガラス28が上限まで上昇されていることが検出され、かつ助手席側の車両用シートに乗員が着座していない場合には、その助手席側の車両用シートに隣接するサイドドア12のドアガラス28を、そのサイドドア12に設けられたガラス制御部58が自動的に下降させるように構成して、車室を換気するようにしてもよい。
【0063】
また、走行制御部50によって手動運転モードから自動運転モードへ切り替えられたときに、移動制御部56が、その切り替えに連動して平行リンク機構40を制御し、アームレスト30を使用位置から収納位置へ移動させる構成に限定されるものではない。例えば、車両用シートにシートバックの後傾角度を検知する検知手段(図示省略)を設け、移動制御部56が、そのシートバックの所定角度以上の後傾角度を検知手段が検知したことに連動して平行リンク機構40を制御し、アームレスト30を使用位置から収納位置へ移動させる構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 車両
12 サイドドア
13 リアサイドドア
28 ドアガラス
29 ドアガラス
30 アームレスト
40 平行リンク機構(移動機構)
50 走行制御部
52 空調制御部
54 検出部
56 移動制御部
58 ガラス制御部
59 サブガラス制御部
60 通知手段
Sn 収納部