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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】車体構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/42 20060101AFI20230905BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20230905BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20230905BHJP
   B60N 2/005 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
B60N2/42
B60N2/68
B60N2/90
B60N2/005
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020177261
(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公開番号】P2022068523
(43)【公開日】2022-05-10
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 佑奈
(72)【発明者】
【氏名】青木 純
【審査官】中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-002130(JP,U)
【文献】特開平05-112168(JP,A)
【文献】特開2010-030363(JP,A)
【文献】実開平07-022868(JP,U)
【文献】米国特許第08998283(US,B1)
【文献】実開昭58-043555(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
B60R 22/00-22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が乗り込む運転席と乗客が乗り込む客室とを仕切り、ルーフとフロアに結合し、運転者用シートベルト装置のショルダアンカが固定されている仕切りと、
運転者座席が固定される運転者座席土台部材と、
前記仕切りと前記運転者座席土台部材とに結合され、一部が前記運転者座席に着席した前記運転者の臀部または腰部の側方に位置する側方支持部材と、
を備え、
前記仕切りは上下方向に延びる縦骨材を含み、前記運転者用シートベルト装置の前記ショルダアンカが固定された前記縦骨材に、前記側方支持部材が結合されており、
前記仕切りは左右方向に延びる横骨材を含み、
複数の乗客用シートベルト装置のショルダアンカが共通の前記横骨材である第1横骨材に固定され、当該第1横骨材が前記運転者用シートベルト装置の前記ショルダアンカが固定された前記縦骨材に結合されており、
前記運転者座席土台部材が、後端部において、前記第1横骨材とは別の第2横骨材に結合され、当該第2横骨材は前記第1横骨材より低い位置に配置されている、
車体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車体構造であって、前記側方支持部材は、前記運転者座席に着席した前記運転者のヒップポイントより高い位置で前記仕切りに結合され、前記ヒップポイントより前方の位置で前記運転者座席土台部材と結合されている、車体構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車体構造であって、前記仕切りに、乗客用シートベルト装置のショルダアンカが固定されている、車体構造。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載の車体構造であって、前記運転席の下方には、車両駆動用の原動機が搭載される原動機室が画定され、前記運転者座席は、前記原動機室より高い位置に設置され、前記運転者座席の一方の側方には、前記運転者が通る通路が形成され、前記側方支持部材は、前記運転者座席の前記通路側に配置されている、車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体構造に関し、特に運転席周囲の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両衝突時の乗員への衝撃低減を目的とした様々な技術が開発されている。下記特許文献1には、運転者が車両幅方向において中央に位置し、運転者の側方に大きな空間が形成された車両が示されている。側面衝突時には、運転者側方の空間にエアバッグを展開し運転者の左右方向の移動を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-79863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エアバッグを展開する空間が大きい場合、エアバッグが大形化して、コストが増加し、またエアバッグの収納スペースの確保が必要となる。本発明は、側面衝突時に運転者の左右方向の移動を抑制し、運転者を運転席上に留める、エアバッグ以外の手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車体構造は、運転者が乗り込む運転席と乗客が乗り込む客室とを仕切り、ルーフとフロアに結合した仕切りと、運転者座席が固定される運転者座席土台部材と、仕切りと運転者座席土台部材とに結合され、一部が前記運転者座席に着席した運転者の臀部または腰部の側方に位置する側方支持部材と、を備える。
【0006】
側方支持部材によって、側面衝突時の運転者の左右方向の移動が抑制され、運転者を運転者座席上に留めることができる。
【0007】
側方支持部材は、運転者座席に着席した運転者のヒップポイントより高い位置で仕切りに結合され、ヒップポイントより前方の位置で運転者座席土台部材と結合されるようにすることができる。側方支持部材の運転者から受ける力に対する強度を高めることができる。
【0008】
仕切りに、運転者用シートベルト装置のショルダアンカが固定されるようにすることができる。仕切りに側方支持部材が結合していることで、前面衝突時に運転者用のショルダアンカから力が加わる仕切りの変形を抑制することができる。
【0009】
仕切りは上下方向に延びる縦骨材を含み、運転者用シートベルト装置のショルダアンカが固定された縦骨材に側方支持部材が結合しているようにすることができる。ショルダアンカと側方支持部材を共通の骨材に結合することにより、ショルダアンカからの入力を側方支持部材によって効率良く受けることができる。
【0010】
仕切りに、複数の乗客用シートベルト装置のショルダアンカが固定されているようにすることができる。仕切りに側方支持部材が結合していることで、後面衝突時に乗客用のショルダアンカから力が加わる仕切りの変形を抑制することができる。
【0011】
仕切りは左右方向に延びる横骨材を含み、複数の乗客用シートベルト装置のショルダアンカが共通の横骨材に固定されているようにすることができる。さらに、この乗客用のショルダアンカが固定された横骨材は、運転者用のショルダアンカが固定され、かつ側方支持部材が結合された縦骨材と結合するものとすることができる。乗客用のショルダアンカからの入力が縦横の骨材を介して効率良く側方支持部材に伝わる。
【0012】
運転者座席土台部材は、後端部において、横骨材の1つに結合されるようにでき、この横骨材は、乗客用のショルダアンカが固定された横骨材より低い位置に配置されている。運転者座席用土台部材が結合した横部材より高い位置で仕切りに結合した側方支持部材が、乗客用のショルダアンカからの入力の一部を支持する。
【0013】
運転席の下方には、車両駆動用の原動機が搭載される原動機室が画定され、運転者座席は、前記原動機室より高い位置に設置され、運転者座席の一方の側方には、運転者が通る通路が形成され、側方支持部材は、運転者座席の通路側に配置されるものとすることができる。運転者の通路側の支持を効果的に実現できる。
【発明の効果】
【0014】
側面衝突時に、運転者の左右方向の移動を抑制し、座席上に留めることに対して有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の車両10の構成を模式的に示す側面図である。
図2】本実施形態の車両10の構成を模式的に示す平面図である。
図3】本実施形態の車体12の前部構造を前方から見た状態を示す斜視図である。
図4】本実施形態の車体12の前部構造を後方から見た状態を示す斜視図である。
図5】本実施形態の車体12の前部構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。以下の説明において、特段の断りがない限り、前後左右上下等の相対位置および向きを表す語句は、車両に関する相対位置および向きを表す。各図において、矢印FRの向きが前方、矢印UPの向きが上方、矢印LHの向きが左方である。
【0017】
図1および図2は、本発明の車両10の構成を模式的に示す図であり、図1が側面図、図2が平面図である。車両10は、多数の乗客を乗せる自動車、いわゆるバス用の車両である。車両10の車体12は、概略直方体の形状を有し、前部に、運転者が乗り込む空間である運転席14が設けられ、運転席14の後方の空間に乗客が乗り込む客室16が設けられている。運転席14には、運転者18が着席する運転者座席20が配置される。運転者座席20は、左右方向において車体12のほぼ中央に配置されてよい。客室16には、乗客のための3列の乗客座席22,24,26が配置される。最も前方に配置された第1列の乗客座席22は、乗客28が着席したとき後を向くように設置され、第2列、第3列の乗客座席24,26は、前向きに設置される。第1列の乗客座席22は、不使用時には、座面を跳ね上げて、背もたれと重ねるようにして第2列の乗客座席24に着席した乗客の膝周りのスペースに余裕を持たせるようにしてもよい。
【0018】
運転席14の下方には、車両10を駆動する原動機が搭載される原動機室30が画定されている。この車両10において、原動機は電動機であるが、他の原動機、例えばガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等のエンジンであってもよい。運転者座席20は、原動機室30より高い位置に設置され、運転者18が着席したとき、運転者18の足の下に原動機室30が位置する。
【0019】
車体12右側面の前後方向ほぼ中央には、ドア32が設けられ、このドア32から運転者18および乗客が乗り降りする。運転者18は、運転者座席20の側方の通路34を通って運転席14に乗り込み、運転者座席20に着席する。この車両10において、ドア32は、客室16の側方に配置されているが、より前方である運転席14の側方にドアを設けてもよい。この場合、乗客が運転者座席20の側方の通路34を通って客室16に乗り込む。右側面にドア32を設けた車両10は、法規において、車両が道路の右側を通行するよう定められている地域に対応したものであり、左側通行の場合には、左側面にドアを設ける。
【0020】
運転席14と客室16の間には、仕切り36が設けられている。仕切り36は、上部において車体12のルーフ38と結合し、下部において車体12のフロア40と結合して固定されている。また、仕切り36は、通路34を確保するよう、右側の側壁との間を空けて設けられている。さらに、仕切り36は、ルーフ38とフロア40の間で全面にわたって運転席14と客室16を隔てる壁面であってよく、また一部のみ壁面が構成されてもよい。
【0021】
仕切り36には、第1列の乗客座席22が取り付けられてよく、この場合、仕切り36は、第1列の乗客座席22の土台部材となる。また、仕切り36には、運転者座席20が固定される運転者座席土台部材42の後端が結合されている。運転者座席土台部材42の前端は、車体12の下部車体、特に原動機室30の上部に配置されたクロスメンバに結合されていてよい。
【0022】
図3は、仕切り36を運転席14側から見た斜視図、図4は、仕切り36を客室16側から見た斜視図、図5は、仕切り36を右方より見た図である。各図において仕切り36は、骨組みとなる骨材のみが示されており、この骨材に、必要に応じて板状の部材が固定されて壁を形成している。板状の部材は、フロア40からルーフ38まで全体にわたって取り付けられてよく、また主として下部に取り付けられ、上部に隙間が形成されてもよい。
【0023】
仕切り36は、縦横に配置された複数の骨材を含む。上下方向に延びて配置された骨材を縦骨材44、左右方向に延びて配置された骨材を横骨材46と記す。縦骨材44は、上端がルーフ38に固定された2本の上縦骨材44-1,44-2と、下端がフロア40に固定された2本の下縦骨材44-3,44-4を含む。2本の下縦骨材44-3,44-4は、2本の上縦骨材44-1,44-2の外側に配置され、上縦骨材44-1,44-2と下縦骨材44-3,44-4は、2本の横骨材46を介して連結されている。また、縦骨材44を分割せず、ルーフ38からフロア40まで通した1本の骨材としてもよい。
【0024】
横骨材46は、縦骨材44の客室16側に配置される4本、運転席14側に配置される1本を含む。客室16側の横骨材46のうち最も高い位置に配置された横骨材を第1横骨材46-1と記し、また運転席14側の横骨材を第2横骨材46-2と記す。客室16側の残余の3本の横骨材46について、上から第3横骨材46-3、第4横骨材46-4、第5横骨材46-5と記す。客室16側において、最も高い位置に配置された第1横骨材46-1と、その次に高い位置に配置された第3横骨材46-3の2本が、上縦骨材44-1,44-2と下縦骨材44-3,44-4を連結している。さらに、第4横骨材46-4、第5横骨材46-5が、下縦骨材44-3,44-4に結合して、配置されている。運転席14側に配置された第2横骨材46-2は、上下方向において、第3横骨材46-3と第4横骨材46-4の間に配置され、左右の端、または端近傍において、下縦骨材44-3,44-4に結合している。
【0025】
第1列の乗客座席22は、仕切り36に固定される。第1列の乗客座席22の背もたれが、第3および第4横骨材46-3,46-4に固定され、座面は第4および第5横骨材46-4,46-5に結合された座面用ブラケット48に支持されている。座面は、座面用ブラケット48に回動可能に支持されてよく、上方に向けた回動によって、背もたれと重なるようにして収納される。第1列の乗客座席22に着席した乗客用のシートベルト装置50も、仕切り36に固定されている。シートベルト装置50のウェビングを巻き取るリトラクタ52は、リトラクタ用ブラケット54を介して第4横骨材46-4に固定される。ショルダアンカ56は第1横骨材46-1に固定され、左右のラップアンカ58は座面用ブラケット48に固定される。ショルダアンカ56は、以降、乗客用ショルダアンカ56と記す。
【0026】
運転者座席土台部材42は、概略L字形の部材であり、後端が第2横骨材46-2に結合し、前部が下方に屈曲して、その下端において下部車体の、原動機室30の上方を横切るクロスメンバ60に結合している。また、運転者座席土台部材42は、L字の角部に筋交い状の補強材を有してよい。運転者座席土台部材42は、左右に2個配置され、それらに運転者座席20のフレームが固定されている。左右の運転者座席土台部材を区別する必要がある場合には、右側に符号「42R」、左側に符号「42L」を付す。運転者座席20のフレームがシートトラックを含む場合、シートトラックが運転者座席土台部材42に結合され、運転者座席20の前後方向の位置調整が可能となる。運転者座席20は、運転者18の臀部を支持する座面を運転者座席土台部材42に固定し、背もたれを隔壁に固定するようにしてもよい。運転者用シートベルト装置62は、そのリトラクタ64とショルダアンカ66が仕切り36に固定され、特にショルダアンカ66は、右側に配置された上縦骨材44-1に固定されている。右側のラップアンカ68は運転者座席土台部材42Rに、左側のラップアンカ70は運転者座席20に固定されている。ショルダアンカ66は、以降、運転者用ショルダアンカ66と記す。
【0027】
運転者座席20の側方、特に運転者座席20に着席した運転者18の臀部または腰部の側方に側方支持部材72が配置されている。側方支持部材72の後端は、仕切り36、特に右側の上縦骨材44-1に結合され、前端は、運転者座席土台部材42、特に右側の運転者座席土台部材42Rに結合されている。側方支持部材72は、運転者18の側方において運転者18に近接して位置し、運転者18の右側への移動を抑制する。運転者18の右側に配置された側方支持部材72は、右方向からの側面衝突時において、運転者18を側方から支持し、この支持は、運転者18、特にその臀部を座席上に留めることの一助となる。通路34が設けられた側は、車体側面との間隔が大きくなり、エアバッグによって運転者の通路側への移動を抑制するには、エアバッグを大形にする必要がある。この車両10においては、通路34側に側方支持部材72を設けることにより運転者の通路側への移動を抑制している。通路がない反対側にも側方支持部材を設けてもよい。
【0028】
側方支持部材72は、運転者18のヒップポイント74(図5参照)、つまり股関節の位置より高い位置と、ヒップポイント74より前方の位置で、運転者18を支持するようにしてよい。側方支持部材72が上縦骨材44-1に結合する位置は、ヒップポイント74より高い位置であってよく、運転者座席土台部材42Rと結合する位置は、ヒップポイント74より前方であってよい。
【0029】
側方支持部材72は、棒状部材、特に中空の棒状部材(つまりパイプ材)を屈曲して形成されてよい。棒状部材の断面形状は、円、または四角形などの多角形でよい。さらには、側方支持部材72は、異形断面の形材で形成されてもよい。側方支持部材72は、上縦骨材44-1から前方に延びる部分と、前方に延びる部分の前端から下方に延びる部分を有する、概略L字形とすることができる。特に、この側方支持部材72においては、後端部が、さらに高い位置となるように屈曲され、2段の階段状となっている。側方支持部材は、棒状部材に限らず板状部材により形成されてもよい。例えば、側方から見たとき、縦骨材44-1、44-3と、運転者座席土台部材42Rと、図示される側方支持部材72で囲まれた領域を覆うように設けられた板状部材により形成されてよい。また、側方支持部材は、図示される側方支持部材72に倣って延びる屈曲した長板によって形成されてもよい。
【0030】
側方支持部材72は、衝突時における仕切り36の変形を抑制するよう機能する。前面衝突時には、運転者用ショルダアンカ66に前方に向いた力が加わり、この力は、上縦骨材44-1を前方に湾曲させるよう作用する。このような変形に対し、側方支持部材72は、突っ張るようにして上縦骨材44-1を支持する。これにより、前面衝突時の上縦骨材44-1の変形が抑制される。また、後面衝突時には、乗客用ショルダアンカ56に後方に向いた力が加わり、この力は、第1横骨材46-1を介して、2本の上縦骨材44-1,44-2を後方に湾曲させるよう作用する。このような変形に対し、側方支持部材72は、引っ張るようにして上縦骨材44-1を支持する。これにより、後面衝突時の上縦骨材44-1の変形が抑制される。
【符号の説明】
【0031】
10 車両、12 車体、14 運転席、16 客室、18 運転者、20 運転者座席、22,24,26 乗客座席、28 乗客、30 原動機室、32 ドア、34 通路、36 仕切り、38 ルーフ、40 フロア、42 運転者座席土台部材、44 縦骨材、46 横骨材、50 乗客用シートベルト装置、56 乗客用ショルダアンカ、60 クロスメンバ、62 運転者用シートベルト装置、66 運転者用ショルダアンカ、72 側方支持部材。
図1
図2
図3
図4
図5