(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】搬送車
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20230905BHJP
【FI】
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2020185880
(22)【出願日】2020-11-06
【審査請求日】2022-11-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】安部 健史
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-095261(JP,A)
【文献】特開2006-213216(JP,A)
【文献】特開2021-048309(JP,A)
【文献】特開2017-154840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送する搬送車であって、
移動経路に沿って移動する本体部と、前記物品を保持する保持部と、前記保持部を前記本体部に対して昇降方向に昇降させる昇降装置と、を備え、
前記保持部は、前記昇降装置に連結された第1部分と、前記第1部分を介して前記昇降装置に連結されると共に前記物品に接触する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に設けられ、前記第1部分に対する前記第2部分の傾斜角度を変更する角度調整機構と、を備え、
前記昇降装置は、回転駆動される複数の回転体と、複数の前記回転体のそれぞれに巻き取り及び繰り出し自在に巻回された伝動部材と、を備え、
前記第1部分は、前記伝動部材に連結されている、搬送車。
【請求項2】
物品を搬送する搬送車であって、
移動経路に沿って移動する本体部と、前記物品を保持する保持部と、前記保持部を前記本体部に対して昇降方向に昇降させる昇降装置と、を備え、
前記保持部は、前記昇降装置に連結された第1部分と、前記第1部分を介して前記昇降装置に連結されると共に前記物品に接触する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に設けられ、前記第1部分に対する前記第2部分の傾斜角度を変更する角度調整機構と、を備え、
前記角度調整機構は、前記第2部分に固定された揺動部材と、前記第1部分に固定されていると共に前記揺動部材を水平方向に沿う軸心周りに回転可能に支持する支持部材と、を備え、
前記角度調整機構を駆動する駆動部が、前記揺動部材を前記軸心周りに揺動させるように構成されている、搬送車。
【請求項3】
物品を搬送する搬送車であって、
移動経路に沿って移動する本体部と、前記物品を保持する保持部と、前記保持部を前記本体部に対して昇降方向に昇降させる昇降装置と、を備え、
前記保持部は、前記昇降装置に連結された第1部分と、前記第1部分を介して前記昇降装置に連結されると共に前記物品に接触する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に設けられ、前記第1部分に対する前記第2部分の傾斜角度を変更する角度調整機構と、を備え
、
前記物品は、側面に開口部を有する容器であり、
前記昇降装置は、第1位置と、前記保持部による前記物品の保持及び保持解除を行う位置であって前記第1位置よりも下方の第2位置との間で、前記保持部を昇降させ、
前記昇降方向における前記第2位置を含む領域を規定領域とし、前記開口部が斜め上方を向く前記物品の姿勢を傾斜姿勢とし、前記開口部が水平方向を向く前記物品の姿勢を水平姿勢として、
前記角度調整機構を駆動する駆動部は、前記保持部が前記物品を保持している場合に、傾斜角度調整制御を実行し、
前記傾斜角度調整制御は、前記保持部が前記規定領域の外部に配置されている状態では、前記傾斜角度を、前記物品の姿勢が前記傾斜姿勢となる角度である第1角度とし、前記保持部が前記第2位置に配置されている状態では、前記傾斜角度を、前記物品の姿勢が前記水平姿勢となる角度である第2角度とする制御であり、
前記第2位置は、前記第1位置よりも下方の複数の位置を含み、
複数の前記第2位置のうちの、前記保持部の昇降動作の始点又は終点となる前記第2位置を対象第2位置として、
前記駆動部は、前記対象第2位置を含む領域を前記規定領域に設定して前記傾斜角度調整制御を実行する、搬送車。
【請求項4】
物品を搬送する搬送車であって、
移動経路に沿って移動する本体部と、前記物品を保持する保持部と、前記保持部を前記本体部に対して昇降方向に昇降させる昇降装置と、を備え、
前記保持部は、前記昇降装置に連結された第1部分と、前記第1部分を介して前記昇降装置に連結されると共に前記物品に接触する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に設けられ、前記第1部分に対する前記第2部分の傾斜角度を変更する角度調整機構と、を備え
、
前記物品は、側面に開口部を有する容器であり、
前記昇降装置は、第1位置と、前記保持部による前記物品の保持及び保持解除を行う位置であって前記第1位置よりも下方の第2位置との間で、前記保持部を昇降させ、
前記昇降方向における前記第2位置を含む領域を規定領域とし、前記開口部が斜め上方を向く前記物品の姿勢を傾斜姿勢とし、前記開口部が水平方向を向く前記物品の姿勢を水平姿勢として、
前記角度調整機構を駆動する駆動部は、前記保持部が前記物品を保持している場合に、傾斜角度調整制御を実行し、
前記傾斜角度調整制御は、前記保持部が前記規定領域の外部に配置されている状態では、前記傾斜角度を、前記物品の姿勢が前記傾斜姿勢となる角度である第1角度とし、前記保持部が前記第2位置に配置されている状態では、前記傾斜角度を、前記物品の姿勢が前記水平姿勢となる角度である第2角度とする制御であり、
前記駆動部は、前記物品を保持していない前記保持部が前記第2位置へ向かって下降している間、前記傾斜角度を前記第2角度とする、搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を搬送する搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような搬送車の一例が、特開2012-64799号公報(特許文献1)に開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示す符号は特許文献1のものである。特許文献1には、物品を搬送する搬送車として、収納容器(4)を搬送する天井搬送車(A)が開示されている。この天井搬送車(A)は、走行経路(3)に沿って走行する走行部(11)と、収納容器(4)を保持する保持部(10)と、保持部(10)を走行部(11)に対して昇降させる昇降装置と、を備えている。
【0003】
特許文献1では、収納容器(4)は、基板(5)を出し入れするための開口(6)が側面に形成されたオープンカセットである。保持部(10)に保持されている収納容器(4)の開口(6)から、基板(5)が飛び出すことを防止するために、特許文献1の天井搬送車(A)には、基板(5)の側面に接触する接触位置と基板(5)の側面から離間する離間位置とに移動可能な接触体(26)を備えた飛び出し防止機構(9)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
搬送車の走行時には保持部に保持されている物品に振動が伝わりやすいため、特許文献1の飛び出し防止機構のような機構の有無にかかわらず、搬送車の走行時には、振動に対する許容度を高く確保しやすい姿勢で物品が保持部に保持されることが望ましい。このように、搬送車の走行時には、搬送車の走行時に適した姿勢で物品が保持部に保持されることが望ましいが、搬送車の走行時に適した物品の姿勢が、移載対象箇所(保持部との間で物品が移載される箇所)において要求される物品の姿勢と異なる場合がある。例えば、特許文献1では、物品が、側面に開口が形成された収納容器であり、移載対象箇所が、収納容器から取り出された基板に対して処理を行う処理装置のロードポートである。そのため、移載対象箇所において要求される収納容器の姿勢が、特許文献1の
図5に示されるように、収納容器に対して基板を出し入れしやすい姿勢(具体的には、開口が水平方向を向く水平姿勢)となるのに対して、搬送車の走行時に適した収納容器の姿勢は、基板が開口から収納容器の外部に移動し難い姿勢(例えば、開口が斜め上方を向く傾斜姿勢)となる。
【0006】
搬送車の走行時に適した物品の姿勢が、移載対象箇所において要求される物品の姿勢と異なる場合、単に搬送車の走行時に適した姿勢で物品が保持部に保持される構成とすると、保持部と移載対象箇所との間での物品の移載時に移載対象箇所に配置される物品の姿勢も、搬送車の走行時に適した姿勢となる。そのため、搬送車の走行時に適した姿勢と移載対象箇所において要求される姿勢との間で物品の姿勢を変更する機構を移載対象箇所に設けて、保持部と移載対象箇所との間での物品の移載動作とは別に、移載対象箇所において物品の姿勢変更動作を行う必要が生じ、物品の処理効率が低下するおそれがある。
【0007】
そこで、搬送車の走行時に適した物品の姿勢が移載対象箇所において要求される物品の姿勢と異なる場合に、搬送車の走行時には搬送車の走行時に適した姿勢で物品を保持部により保持しつつ、保持部と移載対象箇所との間での物品の移載時に移載対象箇所に配置される物品の姿勢を、当該移載対象箇所において要求される姿勢とすることが可能な技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る搬送車は、物品を搬送する搬送車であって、移動経路に沿って移動する本体部と、前記物品を保持する保持部と、前記保持部を前記本体部に対して昇降方向に昇降させる昇降装置と、を備え、前記保持部は、前記昇降装置に連結された第1部分と、前記第1部分を介して前記昇降装置に連結されると共に前記物品に接触する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に設けられ、前記第1部分に対する前記第2部分の傾斜角度を変更する角度調整機構と、を備えている。
【0009】
本構成によれば、保持部が角度調整機構を備えるため、保持部の姿勢を変更するための機構を昇降装置に設けなくても、角度調整機構により第1部分に対する第2部分の傾斜角度を変更することで、第2部分が接触する物品(すなわち、保持部に保持されている物品)の姿勢を所望の姿勢とすることができる。よって、搬送車の走行時における物品の姿勢を、搬送車の走行時に適した姿勢としつつ、保持部と移載対象箇所との間での物品の移載時における物品の姿勢を、当該移載対象箇所において要求される姿勢とすることができる。よって、搬送車の走行時には搬送車の走行時に適した姿勢で物品を保持部により保持しつつ、保持部と移載対象箇所との間での物品の移載時に移載対象箇所に配置される物品の姿勢を、当該移載対象箇所において要求される姿勢とすることが可能となっている。なお、本構成では、保持部の姿勢を変更するための機構を昇降装置に設ける必要がないため、昇降装置の複雑化を抑制しつつ本開示の搬送車を実現することができる。
また、上記搬送車における第1の特徴構成は、前記昇降装置は、回転駆動される複数の回転体と、複数の前記回転体のそれぞれに巻き取り及び繰り出し自在に巻回された伝動部材と、を備え、前記第1部分は、前記伝動部材に連結されている、点にある。この第1の特徴構成によれば、本構成によれば、複数の回転体を回転させて伝動部材を巻き取り又は繰り出すことで、保持部を吊り下げ支持した状態で保持部を昇降させることができる。また、保持部の姿勢を変更するための機構を昇降装置に設ける必要がない。そのため、本構成のように昇降装置が構成される場合に、吊り下げ支持される保持部の姿勢を変更可能に各部を構成する必要はなく、昇降装置の簡素化を図ることができる。
また、上記搬送車における第2の特徴構成は、前記角度調整機構は、前記第2部分に固定された揺動部材と、前記第1部分に固定されていると共に前記揺動部材を水平方向に沿う軸心周りに回転可能に支持する支持部材と、を備え、前記角度調整機構を駆動する駆動部が、前記揺動部材を前記軸心周りに揺動させるように構成されている、点にある。この第2の特徴構成によれば、駆動部により揺動部材を軸心周りに揺動させることで、第1部分に対する第2部分の傾斜角度を大きくなるように変化させたり小さくなるように変化させたりすることができ、当該傾斜角度を変更する角度調整機構を適切に設けることができる。
また、上記搬送車における第3の特徴構成は、前記物品は、側面に開口部を有する容器であり、前記昇降装置は、第1位置と、前記保持部による前記物品の保持及び保持解除を行う位置であって前記第1位置よりも下方の第2位置との間で、前記保持部を昇降させ、前記昇降方向における前記第2位置を含む領域を規定領域とし、前記開口部が斜め上方を向く前記物品の姿勢を傾斜姿勢とし、前記開口部が水平方向を向く前記物品の姿勢を水平姿勢として、前記角度調整機構を駆動する駆動部は、前記保持部が前記物品を保持している場合に、傾斜角度調整制御を実行し、前記傾斜角度調整制御は、前記保持部が前記規定領域の外部に配置されている状態では、前記傾斜角度を、前記物品の姿勢が前記傾斜姿勢となる角度である第1角度とし、前記保持部が前記第2位置に配置されている状態では、前記傾斜角度を、前記物品の姿勢が前記水平姿勢となる角度である第2角度とする制御であり、前記第2位置は、前記第1位置よりも下方の複数の位置を含み、複数の前記第2位置のうちの、前記保持部の昇降動作の始点又は終点となる前記第2位置を対象第2位置として、前記駆動部は、前記対象第2位置を含む領域を前記規定領域に設定して前記傾斜角度調整制御を実行する点にある。この第3の特徴構成によれば、第2位置が複数の位置を含む場合に、規定領域よりも上方の領域と規定領域との境界を、その時点で昇降動作の始点又は終点となっている対象第2位置に比較的近い近接位置に設定することができる。よって、保持部が第1位置と近接位置との間の比較的大きい昇降範囲内に配置されている間、傾斜姿勢で物品を保持することができ、保持部に保持された物品を適切に昇降させやすくなる。
また、上記搬送車における第4の特徴構成は、前記物品は、側面に開口部を有する容器であり、前記昇降装置は、第1位置と、前記保持部による前記物品の保持及び保持解除を行う位置であって前記第1位置よりも下方の第2位置との間で、前記保持部を昇降させ、前記昇降方向における前記第2位置を含む領域を規定領域とし、前記開口部が斜め上方を向く前記物品の姿勢を傾斜姿勢とし、前記開口部が水平方向を向く前記物品の姿勢を水平姿勢として、前記角度調整機構を駆動する駆動部は、前記保持部が前記物品を保持している場合に、傾斜角度調整制御を実行し、前記傾斜角度調整制御は、前記保持部が前記規定領域の外部に配置されている状態では、前記傾斜角度を、前記物品の姿勢が前記傾斜姿勢となる角度である第1角度とし、前記保持部が前記第2位置に配置されている状態では、前記傾斜角度を、前記物品の姿勢が前記水平姿勢となる角度である第2角度とする制御であり、前記駆動部は、前記物品を保持していない前記保持部が前記第2位置へ向かって下降している間、前記傾斜角度を前記第2角度とする点にある。この第4の特徴構成によれば、物品を保持していない保持部を第2位置へ向かって下降させる場合にも、物品を保持している保持部を第2位置へ向かって下降させる場合と同様に、保持部が規定領域の外部に配置されている状態では傾斜角度を第1角度とする場合に比べて、傾斜角度を第1角度から第2角度に変更する制御を保持部が規定領域に進入してから行う必要がない分、制御の簡素化や処理の高速化を図ることができる。
【0010】
搬送車の更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】保持部と移載対象箇所との間で物品が移載される状況を示す図
【
図4】傾斜角度が第2角度に調整されている状態での保持部の斜視図
【
図5】傾斜角度が第1角度に調整されている状態での保持部の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
搬送車の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
搬送車1は、
図3に例示するような物品搬送設備100において、移動経路2に沿って走行して物品90を搬送する。
図1~
図3に示すように、搬送車1は、移動経路2に沿って移動する本体部10と、物品90を保持する保持部20と、保持部20を本体部10に対して鉛直方向Vに昇降させる昇降装置50と、を備えている。ここで、移動経路2の長手方向(移動経路2が延びる方向)を経路長手方向Lとし、移動経路2の幅方向を経路幅方向Wとする。経路幅方向Wは、経路長手方向L及び鉛直方向Vの双方に直交する方向である。また、搬送車1を基準として定義される方向(すなわち、搬送車1の姿勢に応じて変化する方向)であって、移動経路2に配置された状態で経路長手方向Lに沿う方向を車体前後方向Xとし、搬送車1を基準として定義される方向であって、移動経路2に配置された状態で経路幅方向Wに沿う方向を車体左右方向Yとする。本実施形態では、鉛直方向Vが「昇降方向」に相当する。
【0014】
移動経路2は、物理的に形成されても仮想的に設定されてもよい。本実施形態では、移動経路2は、レール3を用いて物理的に形成されている。具体的には、物品搬送設備100は、移動経路2に沿って配置されたレール3(ここでは、経路幅方向Wに間隔を空けて配置された一対のレール3)を備えており、本体部10は、レール3に沿って移動する。また、本実施形態では、レール3は、天井4から吊り下げ支持されており、移動経路2は、天井4に沿って形成されている。すなわち、本実施形態では、搬送車1は、天井4に沿って形成された移動経路2に沿って走行する天井搬送車である。なお、搬送車1は、天井搬送車以外の搬送車であってもよい。
【0015】
図1及び
図2に示すように、本体部10は、レール3(ここでは、一対のレール3)の走行面を転動する車輪12を備えた走行部11と、走行部11に連結されたカバー部14と、を備えている。レール3の走行面は、鉛直方向Vの上方V1を向く面であり、車輪12は、鉛直方向Vに直交する軸心周りに回転する。走行部11は、車輪12を回転させる走行駆動部70(例えば、サーボモータ等の電動モータ、
図14参照)を備えており、車輪12が走行駆動部70により回転駆動されることで、走行部11がレール3に沿って走行する。
図2に示すように、本実施形態では、走行部11は、レール3の案内面を転動する案内輪13を備えており、走行部11は、案内輪13がレール3の案内面に接触案内された状態で、レール3に沿って走行する。レール3の案内面は、経路幅方向Wの内側(一対のレール3の間の経路幅方向Wの中心位置に向かう側)を向く面であり、案内輪13は、鉛直方向Vに沿う軸心周りに回転する(本例では、遊転する)。
図1に示す例では、本体部10は、走行部11を、車体前後方向Xに並ぶように一対備えている。
【0016】
図1に示すように、本実施形態では、カバー部14は、走行部11に対して鉛直方向Vの下方V2に配置された状態で、走行部11に支持されている。搬送車1の走行時には、保持部20に保持された状態の物品90は、カバー部14の内部空間に配置される。
図1に示すように、本実施形態では、カバー部14の内部空間は、車体前後方向Xの両側が閉じられていると共に、車体左右方向Yの少なくとも一方側が開放されている。よって、カバー部14の内部空間に配置された物品90は、カバー部14の壁部によって少なくとも車体前後方向Xの両側から覆われる。
【0017】
図4に示すように、保持部20は、物品90に形成された被保持部91(
図2参照)を支持する支持部23を備えており、支持部23を用いて物品90を保持する。
図2に示す例では、保持部20は、物品90を上方V1から保持する。具体的には、被保持部91は、物品90の上面90aを構成する上面部(例えば、板状の天板部)に形成されたフランジ部であり、支持部23は、当該支持部23の支持部分が被保持部91と上面部との間の空間(以下、「支持用空間」という)に挿入された状態で、被保持部91を下方V2から支持する。支持部23は、上方V1を向く支持面23a(
図4参照)を備えており、支持面23aを被保持部91の下面に接触させて被保持部91を下方V2から支持する。なお、被保持部91は、物品90の上部に形成されるフランジ部に限られず、例えば、物品90の上面部(具体的には、上面部の外周部分)が被保持部91として用いられる構成、物品90の側面90bを構成する側面部に被保持部91が形成される構成、或いは、物品90の底面90cを構成する底面部(例えば、板状の底板部)が被保持部91として用いられる構成とすることができる。
【0018】
保持部20は、保持部20による物品90の保持及び保持解除を行うための保持駆動部72(例えば、ソレノイドや電動モータ、
図14参照)を備えており、保持駆動部72の駆動により、保持部20による物品90の保持及び保持解除が行われる。本実施形態では、
図4に示すように、保持部20は、一対の支持部23を備えており、保持駆動部72は、一対の支持部23(具体的には、一対の支持部23の一方の支持部分と他方の支持部分)を互いに接近及び離間させるように構成されている。なお、支持部分は、支持面23aが形成された部分である。
【0019】
一対の支持部23が互いに接近及び離間する方向(言い換えれば、一対の支持部23の並び方向)を対象方向とすると、保持部20による物品90の保持を行う場合、保持駆動部72は、一対の支持部23を互いに接近させて、一対の支持部23の姿勢を、一対の支持部23の間隔が被保持部91の対象方向の幅よりも小さくなる保持姿勢に切り替える。また、保持部20による物品90の保持解除を行う場合、保持駆動部72は、一対の支持部23を互いに離間させて、一対の支持部23の姿勢を、一対の支持部23の間隔が被保持部91の対象方向の幅よりも大きくなる保持解除姿勢に切り替える。ここで、姿勢は、位置及び向きの少なくとも一方を含む概念として用いている。
図4及び
図5に示す例では、車体前後方向Xが対象方向である。
【0020】
保持部20が後述する第2位置P2(
図3、
図6、
図11参照)に配置されている状態で、一対の支持部23の姿勢を保持解除姿勢から保持姿勢に切り替えることで、一対の支持部23のそれぞれの支持部分が、移載対象箇所6に配置されている物品90の支持用空間に挿入される。この状態で保持部20を上昇させることで、物品90が保持部20と共に上昇する。また、保持部20が第2位置P2に配置されている状態で、一対の支持部23の姿勢を保持姿勢から保持解除姿勢に切り替えることで、一対の支持部23のそれぞれの支持部分が、保持部20に保持されていた物品90の支持用空間から抜き出される。この状態で保持部20を上昇させることで、物品90を移載対象箇所6に残した状態で保持部20のみが上昇する。
【0021】
物品90の種類はこれに限定されないが、
図2に示すように、本実施形態では、物品90は、側面90bに開口部92を有する容器である。開口部92は、物品90に対して収容物を出し入れするために設けられており、開口部92を介して物品90に対する収容物の出し入れが行われる。開口部92とは別の開口(例えば、軽量化や洗浄のための開口、或いは物品90の構造上形成される開口)が、物品90の側面90bに形成されていてもよいが、物品90に収容されている収容物は、開口部92を通らなければ物品90の外部に移動できないように、物品90が構成されている。本実施形態では、ガラス基板や半導体ウェハ等の基板93(収容物の一例)が、物品90に収容される。また、本実施形態では、物品90は、複数枚の基板93を上下方向(底面90cが水平に配置された状態で鉛直方向Vに沿う方向)に並べて収容可能に構成されている。
【0022】
本実施形態では、物品90は、開口部92を閉じる蓋を備えていない。例えば、オープンカセットを物品90として用いることができる。物品90が、開口部92を閉じする蓋を備える構成とすることもできる。この場合、例えば、FOUP(Front Opening Unified Pod)を物品90として用いることができる。
【0023】
図4及び
図5では、一対の支持部23が車体前後方向Xに互いに接近及び離間する向きで、保持部20が配置される場合を例示しているが、一対の支持部23が車体左右方向Yに互いに接近及び離間する向きで、保持部20が配置されてもよい。また、
図1~
図3では、開口部92が車体左右方向Yの一方側を向く向きで、物品90が保持部20に保持される場合を例示しているが、開口部92が車体前後方向Xの一方側を向く向きで、物品90が保持部20に保持されてもよい。なお、搬送車1が、保持部20を本体部10に対して鉛直方向Vに沿う軸心周りに回転させる機構を備える構成とすることもできる。物品90に収容されている基板93が、搬送車1の走行時に開口部92から物品90の外部に移動することをより確実に防止するという観点から、開口部92がカバー部14の壁部を向く向きで、物品90が保持部20に保持される構成とすると好適である。
【0024】
昇降装置50は、保持部20を昇降させるための昇降駆動部71(例えば、サーボモータ等の電動モータ、
図14参照)を備えており、昇降駆動部71の駆動により、保持部20が昇降される。昇降装置50は、第1位置P1(
図2及び
図3参照)と、第1位置P1よりも下方V2の第2位置P2(
図3参照)との間で、保持部20を昇降させる。第1位置P1は、昇降方向(鉛直方向V)の上端の位置である。第1位置P1は、本体部10が移動する場合の保持部20の鉛直方向Vの位置である。すなわち、第1位置P1は、搬送車1の走行時における保持部20の位置である。本実施形態では、第1位置P1は、保持部20に保持された状態の物品90がカバー部14の内部空間に配置されるような保持部20の位置である。また、第2位置P2は、保持部20による物品90の保持及び保持解除を行う場合の保持部20の鉛直方向Vの位置である。すなわち、第2位置P2は、保持部20による物品90の保持及び保持解除を行う位置であり、言い換えれば、保持部20と移載対象箇所6との間での物品90の移載時における保持部20の位置である。第2位置P2は、各移載対象箇所6の高さ(鉛直方向Vの位置)に応じて設定される。本実施形態では、第2位置P2は、一対の支持部23の姿勢を保持姿勢と保持解除姿勢とに切り替えることで、移載対象箇所6に配置されている物品90の支持用空間に、一対の支持部23のそれぞれの支持部分を挿脱可能な高さに設定される。
【0025】
図3では、移載対象箇所6の一例として、処理装置5に隣接して配置されるロードポートを示している。処理装置5は、物品90を処理対象とする装置であり、本実施形態では、物品90から取り出された基板93に対して処理を行う。
図3に示すように、物品90は、開口部92が処理装置5側を向くように移載対象箇所6に配置される。
【0026】
図2に簡略化して模式的に示すように、昇降装置50は、回転駆動される回転体51と、回転体51に巻き取り及び繰り出し自在に巻回された伝動部材52と、を備えている。昇降装置50は、更に、回転体51を回転駆動する上述した昇降駆動部71(
図14参照)を備えている。回転体51及び昇降駆動部71は、本体部10に支持されており、本実施形態では、カバー部14の内部空間における上方V1の部分に配置されている。例えば、伝動部材52がベルトであり、回転体51がベルトを巻き取る巻取プーリである構成とし、或いは、伝動部材52がワイヤであり、回転体51がワイヤを巻き取る巻取ドラムである構成とすることができる。伝動部材52は、保持部20に連結されている。具体的には、
図3に示すように、伝動部材52における回転体51から繰り出される先端側に設けられた連結部52aが、保持部20に連結されている。昇降装置50は、回転体51を昇降駆動部71の駆動により回転させて、伝動部材52を巻き取り又は繰り出すことで、保持部20を上昇又は下降させる(すなわち、昇降させる)。このように、昇降装置50は、保持部20を吊り下げ支持した状態で、保持部20を昇降させる。
【0027】
図2及び
図3に示すように、本実施形態では、昇降装置50は、複数の回転体51を備えており、複数の回転体51のそれぞれに伝動部材52が巻回されている。
図2及び
図3に示す例では、昇降装置50は、3つの回転体51を備えている。そして、複数の伝動部材52(本例では、3つの伝動部材52)のそれぞれの連結部52aが、保持部20に連結されている。
図4に示すように、複数の連結部52aは、保持部20における互いに異なる部分に連結されている。なお、
図2及び
図3では、昇降装置50が複数の回転体51を備えていることを示すために、複数の回転体51をそれぞれ別軸に配置しているが、複数の回転体51は、同軸に並べて配置されてもよい。また、
図3では、伝動部材52の連結部52aが、当該伝動部材52が巻回された回転体51の直下に配置されているが、伝動部材52における回転体51から繰り出された部分が、案内用回転体(案内用プーリ等)に巻き掛けられ、伝動部材52の連結部52aが、当該案内用回転体の直下に配置される構成としてもよい。
【0028】
本実施形態では、物品90は、側面90bに形成された開口部92を介して基板93が出し入れされる容器である。そのため、搬送車1の走行時には、
図2に示すように、物品90の姿勢を開口部92が斜め上方を向く傾斜姿勢S1とすることで、物品90に収容された基板93が開口部92から物品90の外部に移動し難いようにすることができる。一方、
図3に示す例のように、移載対象箇所6において物品90に対する基板93の出し入れが行われる場合には、物品90の姿勢を開口部92が水平方向を向く水平姿勢S2とすることで、開口部92を介した基板93の物品90に対する出し入れを行いやすくなる。すなわち、
図3に示す例では、移載対象箇所6において要求される物品90の姿勢が、水平姿勢S2となる。本実施形態では、保持部20が以下に説明する角度調整機構40を備えており、これにより、搬送車1の走行時には傾斜姿勢S1で物品90を保持部20により保持しつつ、移載対象箇所6に配置される物品90の姿勢を水平姿勢S2とすることが可能となっている。
【0029】
図2~
図5に示すように、保持部20は、昇降装置50に連結された第1部分21と、第1部分21を介して昇降装置50に連結されると共に物品90に接触する第2部分22と、角度調整機構40と、を備えている。保持部20は、更に、角度調整機構40を駆動する揺動駆動部73(例えば、電動モータやソレノイド、
図14参照)を備えている。本実施形態では、揺動駆動部73が「駆動部」に相当する。
【0030】
本実施形態では、第1部分21は、伝動部材52に連結されている。第1部分21は、複数の伝動部材52のそれぞれに(具体的には、複数の伝動部材52のそれぞれの連結部52aに)連結されている。そのため、第1部分21の姿勢は、複数の連結部52a(ここでは、3つの連結部52a)の間の高低差に応じて定まる。本実施形態では、複数の回転体51を回転駆動する共通の昇降駆動部71が設けられており、第1部分21は、姿勢が特定の姿勢(ここでは、全ての連結部52aが同じ高さに配置される姿勢)に維持されるように昇降装置50により昇降される。そのため、
図3に示すように、保持部20が第1位置P1に位置する状態、保持部20が第2位置P2に位置する状態、及び、保持部20が第1位置P1と第2位置P2との間の第3位置P3に位置する状態のいずれにおいても、第1部分21は上記特定の姿勢で配置される。
【0031】
第2部分22は、保持部20における物品90に接触する部分である。そのため、保持部20に保持されている物品90の姿勢は、第2部分22の姿勢に応じて定まる。第2部分22は支持部23(本実施形態では、一対の支持部23)を備えており、第2部分22を構成する支持部23が、物品90(具体的には、被保持部91)に接触する。
【0032】
角度調整機構40は、第1部分21と第2部分22との間に設けられ、第1部分21に対する第2部分22の傾斜角度A(
図2、
図5参照)を変更する。
図4及び
図5に示すように、本実施形態では、角度調整機構40は、水平方向に沿う軸心R周りに第2部分22を揺動させる(第1部分21に対して揺動させる)ことで傾斜角度Aを変更する。ここでは、保持部20(具体的には、第2部分22)に保持されている物品90が水平姿勢S2で配置される場合を0度とするように、傾斜角度Aを定義する。
図4は、傾斜角度Aが0度である状態の保持部20を示している。また、保持部20に保持されている物品90が、開口部92が斜め上方を向く傾斜姿勢S1で配置される場合(
図2参照)に正の鋭角となるように、傾斜角度Aを定義する。ここでは、開口部92を介した収容物(本実施形態では、基板93)の出し入れが行われる際の収容物の移動方向に沿って、物品90の外部に向かう方向を、開口部92の向きとしており、本実施形態では、物品90の底面90cが水平面に沿う姿勢が、開口部92が水平方向を向く水平姿勢S2である。
【0033】
本実施形態では、軸心Rは、車体前後方向Xに沿うように配置されており、
図5に示すように、第2部分22が第1部分21に対して傾斜している場合(具体的には、傾斜角度Aが正の鋭角である場合)には、第2部分22は、車体左右方向Yの一方側が他方側よりも高くなる。そのため、本実施形態では、物品90は、開口部92が平面視(鉛直方向Vに沿う方向視)で車体左右方向Yの当該一方側を向く向きで、保持部20に保持される。
【0034】
図4及び
図5に一例を示すように、本実施形態では、角度調整機構40は、第2部分22に固定された揺動部材41と、第1部分21に固定された支持部材42と、を備えており、支持部材42は、揺動部材41を軸心R周りに回転可能に支持している。そして、揺動駆動部73は、揺動部材41を軸心R周りに揺動させるように構成されている。揺動部材41は第2部分22に固定されているため、このように揺動部材41を軸心R周りに揺動させることで、第2部分22を軸心R周りに揺動させて、傾斜角度Aを変更することができる。なお、揺動駆動部73は、第1部分21に固定されている。
【0035】
図4及び
図5に示す例では、揺動部材41は、軸心R上に配置される軸部材であり、固定部材43を介して第2部分22に固定されている。本例では、軸心Rに沿う方向(ここでは、車体前後方向X)の2箇所で、揺動部材41が固定部材43を介して第2部分22(具体的には、第2部分22が備える本体部)に固定されている。一対の支持部23は、案内機構46によって、互いに接近及び離間する方向(ここでは、軸心Rに沿う方向)の移動を案内される。本例では、案内機構46は、軸心Rに沿う方向に延びる案内レールと、案内レールに係合する案内ブロックとを備えた直動機構であり、案内レールが第2部分22の上記本体部に固定され、案内ブロックが一対の支持部23のそれぞれに固定されている。
【0036】
一対の支持部23を駆動する保持駆動部72は、第2部分22の上記本体部に固定されている。本例では、保持駆動部72は、運動変換機構45を介して一対の支持部23を駆動する。ここでは、運動変換機構45は、ボールねじ機構であり、保持駆動部72としての電動モータによって回転駆動される回転軸の回転運動が、一対の支持部23のそれぞれの直線運動に変換される。なお、一対の支持部23が、軸心Rに沿う方向に互いに接近及び離間する構成ではなく、一対の支持部23が、平面視で軸心Rに直交する方向(本例では、車体左右方向Y)に互いに接近及び離間する構成としてもよい。
【0037】
図4及び
図5に示す例では、揺動部材41は、軸心Rに沿う方向の2箇所で、軸心R周りに回転可能に支持部材42に支持されている。具体的には、一対の固定部材43に対して軸心Rに沿う方向の両側のそれぞれに支持部材42が設けられており、支持部材42のそれぞれは、揺動部材41を第1部分21に対して回転可能に支持している。そして、本例では、第1部分21に固定されている揺動駆動部73が、ギヤ機構44(例えば、減速機構)を介して揺動部材41に連結されており、揺動駆動部73としての電動モータの回転がギヤ機構44を介して揺動部材41に伝達されて、揺動部材41が揺動される。なお、
図4及び
図5における各部の寸法や形状は概念的なものであり、実際の寸法や形状はこれに限定されない。
【0038】
図14に示すように、物品搬送設備100は、搬送車1の動作を制御する制御部80を備えている。制御部80は、CPU等の演算処理装置を備えると共にメモリ等の周辺回路を備え、これらのハードウェアと、演算処理装置等のハードウェア上で実行されるプログラムとの協働により、制御部80の各機能が実現される。制御部80は、搬送車1に設けられても、搬送車1とは独立に設けられてもよい。また、制御部80が互いに通信可能に分離された複数のハードウェアを備える場合、一部のハードウェアが搬送車1に設けられ、残りのハードウェアが搬送車1とは独立に設けられてもよい。
【0039】
制御部80は、走行駆動部70の駆動を制御することで、移動経路2に沿って移動する移動動作を本体部10に行わせる。具体的には、制御部80は、走行駆動部70の駆動を制御することで、レール3に沿って走行する走行動作を走行部11に行わせる。本実施形態では、走行部11の走行動作によって本体部10の移動動作が実現される。制御部80は、保持部20が保持している物品90を移載対象箇所6に搬送する場合に、保持部20が物品90を保持した状態で走行部11に走行動作を行わせる。また、制御部80は、昇降駆動部71の駆動を制御することで、保持部20を昇降させる昇降動作を昇降装置50に行わせる。また、制御部80は、保持駆動部72の駆動を制御することで、物品90を保持する保持動作や物品90の保持を解除する保持解除動作を保持部20に行わせる。本実施形態では、物品90の保持動作は、一対の支持部23を互いに接近させる動作(言い換えれば、一対の支持部23の姿勢を保持姿勢に切り替える動作)であり、物品90の保持解除動作は、一対の支持部23を互いに離間させる動作(言い換えれば、一対の支持部23の姿勢を保持解除姿勢に切り替える動作)である。また、制御部80は、揺動駆動部73の駆動を制御することで、第1部分21に対する第2部分22の傾斜角度Aを変更する傾斜角度変更動作を保持部20に行わせる。
【0040】
移載対象箇所6から保持部20に物品90を移載する場合(すなわち、移載対象箇所6から物品90を搬出する場合)、制御部80は、移載対象箇所6に対応する位置(ここでは、移載対象箇所6より上方V1であって、平面視で移載対象箇所6と重複する位置)まで搬送車1を走行させる走行動作を走行部11に行わせた後、物品90を保持していない保持部20を第1位置P1から第2位置P2まで下降させる昇降動作を、昇降装置50に行わせる(
図6参照)。本実施形態では、揺動駆動部73は、物品90を保持していない保持部20が第2位置P2へ向かって下降している間、傾斜角度Aを後述する第2角度とする。具体的には、物品90を保持していない保持部20は、傾斜角度Aが第2角度とされた状態で第1位置P1に配置されており、保持部20が第1位置P1から第2位置P2まで下降する間、傾斜角度Aが第2角度に維持される。保持部20が第2位置P2に到達すると、制御部80は、物品90の保持動作を保持部20に行わせ、その後、保持部20を第2位置P2から第1位置P1まで上昇させる昇降動作を昇降装置50に行わせる(
図7、
図8参照)。これにより、物品90を保持している保持部20が第1位置P1まで上昇する。
【0041】
一方、保持部20から移載対象箇所6に物品90を移載する場合(すなわち、移載対象箇所6に物品90を搬入する場合)、制御部80は、移載対象箇所6に対応する位置まで搬送車1を走行させる走行動作を走行部11に行わせた後、物品90を保持している保持部20を第1位置P1から第2位置P2まで下降させる昇降動作を、昇降装置50に行わせる(
図9~
図11参照)。保持部20が第2位置P2に到達すると、制御部80は、物品90の保持解除動作を保持部20に行わせ、その後、保持部20を第2位置P2から第1位置P1まで上昇させる昇降動作を昇降装置50に行わせる(
図11参照)。これにより、物品90を移載対象箇所6に残した状態で、物品90を保持していない保持部20が第1位置P1まで上昇する。本実施形態では、揺動駆動部73は、物品90を保持していない保持部20が第2位置P2から上昇している間、傾斜角度Aを第2角度とする。
【0042】
本実施形態では、揺動駆動部73が、保持部20が物品90を保持している場合に、傾斜角度調整制御を実行するように構成されている。揺動駆動部73は、制御部80による制御を受けて、傾斜角度調整制御を実行する。鉛直方向Vにおける第2位置P2を含む領域を規定領域ΔV2として(
図6、
図11参照)、傾斜角度調整制御は、保持部20が規定領域ΔV2の外部に配置されている状態では、傾斜角度Aを第1角度とし、保持部20が第2位置P2に配置されている状態では、傾斜角度Aを第2角度とする制御である。ここで、第1角度は、物品90(保持部20に保持されてる物品90、以下同様)の姿勢が傾斜姿勢S1(開口部92が斜め上方を向く物品90の姿勢)となる角度であり、例えば5度とされる。また、第2角度は、物品90の姿勢が水平姿勢S2(開口部92が水平方向を向く物品90の姿勢)となる角度であり、本実施形態では0度である。なお、
図6~
図13では、鉛直方向Vにおける規定領域ΔV2の外部の領域を外部領域ΔV1としている。
【0043】
規定領域ΔV2は第1位置P1を含まないように設定される。すなわち、第1位置P1は、規定領域ΔV2の上限よりも上方V1に配置され、外部領域ΔV1に含まれる。そのため、揺動駆動部73が傾斜角度調整制御を実行することで、保持部20が第1位置P1に配置される搬送車1の走行時や、保持部20が外部領域ΔV1に配置されている状態での保持部20の昇降時には、物品90の姿勢を、物品90に収容された収容物(本実施形態では、基板93)が開口部92から物品90の外部に移動し難い傾斜姿勢S1とすることができる。また、保持部20が第2位置P2に配置される物品90の移載時には、物品90の姿勢を、移載対象箇所6において要求される水平姿勢S2とすることができる。
【0044】
保持部20が物品90を保持している場合に揺動駆動部73が傾斜角度調整制御を実行するため、移載対象箇所6から保持部20に物品90を移載する場合には、物品90の保持動作後の、保持部20が第2位置P2に配置されている状態では、
図6に示すように、傾斜角度Aが第2角度とされることで、物品90の姿勢が水平姿勢S2とされる。その後、保持部20を第2位置P2から第1位置P1まで上昇させる昇降動作が開始されると、保持部20が外部領域ΔV1に進入するまでの間に、傾斜角度Aを第2角度から第1角度に変更する傾斜角度変更動作が行われる。これにより、保持部20が外部領域ΔV1において上昇している間、
図8に示すように、傾斜角度Aが第1角度とされることで、物品90の姿勢が傾斜姿勢S1とされる。
【0045】
図7及び
図8では、保持部20が規定領域ΔV2の上限(規定領域ΔV2よりも上方V1の外部領域ΔV1と規定領域ΔV2との境界)に到達するのに合わせて傾斜角度変更動作が行われて、物品90の姿勢が
図7に示す水平姿勢S2から
図8において二点鎖線で示す傾斜姿勢S1に変更される場合を例示している。この場合、規定領域ΔV2の上限において保持部20の上昇速度をそれ以前の速度からゼロ或いはゼロより大きな値まで低下させる構成としてもよい。保持部20を上昇させながら姿勢変更動作を行う場合には、例えば、保持部20が規定領域ΔV2の上限に到達する前に傾斜角度変更動作が開始され、保持部20が規定領域ΔV2の上限に到達した時点で傾斜角度変更動作が終了するように、傾斜角度変更動作が行われる。物品90が傾斜姿勢S1で昇降される昇降範囲をできるだけ大きく確保するために、規定領域ΔV2の上限は、傾斜角度変更動作に伴う物品90の姿勢変化によって物品90が移載対象箇所6に接触しない範囲で、できるだけ第2位置P2に近い位置に設定すると好適である。
【0046】
また、保持部20から移載対象箇所6に物品90を移載する場合には、保持部20を第1位置P1から第2位置P2まで下降させる昇降動作が開始されると、保持部20が外部領域ΔV1において下降している間、
図9に示すように、傾斜角度Aが第1角度とされることで、物品90の姿勢が傾斜姿勢S1とされる。保持部20が規定領域ΔV2に進入すると、保持部20が第2位置P2に到達するまでの間に、傾斜角度Aを第1角度から第2角度に変更する傾斜角度変更動作が行われる。これにより、
図11に示すように、保持部20の姿勢が傾斜姿勢S1から水平姿勢S2に変更された後、保持部20が第2位置P2に到達する。
【0047】
図9及び
図10では、保持部20が規定領域ΔV2の上限に到達するのに合わせて傾斜角度変更動作が行われて、物品90の姿勢が
図9において実線で示す傾斜姿勢S1から
図10に示す水平姿勢S2に変更される場合を例示している。この場合、規定領域ΔV2の上限において保持部20の下降速度をそれ以前の速度からゼロ或いはゼロより大きな値まで低下させる構成としてもよい。保持部20を下降させながら姿勢変更動作を行う場合には、例えば、保持部20が規定領域ΔV2の上限に到達した時点で傾斜角度変更動作が開始され、保持部20が第2位置P2に到達する前に傾斜角度変更動作が終了するように、傾斜角度変更動作が行われる。
【0048】
ところで、
図12及び
図13に一例を示すように、移載対象箇所6が複数の高さに分かれて配置される場合がある。この場合、移載対象箇所6が配置される複数の高さのそれぞれに応じて第2位置P2が設定されるため、第2位置P2は、第1位置P1よりも下方V2の複数の位置を含む。
図12及び
図13に示す例では、第2位置P2は、実線で示す移載対象箇所6に対応する第2位置P2と、二点鎖線で示す移載対象箇所6に対応する第2位置P2(
図12及び
図13では図示を省略)とを含む。
【0049】
このように第2位置P2が複数の位置を含む場合、複数の第2位置P2のうちの、保持部20の昇降動作の始点又は終点となる第2位置P2を対象第2位置P2aとして(
図13参照)、本実施形態では、揺動駆動部73が、対象第2位置P2aを含む領域を規定領域ΔV2に設定して傾斜角度調整制御を実行するように構成されている。なお、規定領域ΔV2は、基本的には対象第2位置P2aのみを含むように設定されるが、対象第2位置P2aに近い高さに存在する別の第2位置P2が規定領域ΔV2に含まれる場合もある。
図12及び
図13に示す例では、実線で示す移載対象箇所6に物品90を搬入する場合を想定しており、実線で示す移載対象箇所6に対応する第2位置P2が対象第2位置P2aとされている。そして、本例では、対象第2位置P2aのみを含むように(すなわち、二点鎖線で示す移載対象箇所6に対応する第2位置P2を含まないように)規定領域ΔV2が設定されており、二点鎖線で示す移載対象箇所6に対応する第2位置P2は、外部領域ΔV1に含まれている。これにより、二点鎖線で示す移載対象箇所6に対応する第2位置P2を含む比較的大きい昇降範囲において、傾斜姿勢S1で物品90を保持することが可能となっている。
【0050】
〔その他の実施形態〕
次に、搬送車のその他の実施形態について説明する。
【0051】
(1)上記の実施形態では、角度調整機構40を駆動する駆動部(揺動駆動部73)が、第2部分22に固定された揺動部材41を軸心R周りに揺動させることで、第1部分21に対する第2部分22の傾斜角度Aを変更する構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、例えば、第2部分22がリンク機構を介して第1部分21に連結され、角度調整機構40を駆動する駆動部が、当該リンク機構を駆動して傾斜角度Aを変更する構成とすることもできる。また、上記の実施形態では、角度調整機構40を駆動する駆動部が、第1部分21に固定される構成を例として説明したが、角度調整機構40の構成によっては、角度調整機構40を駆動する駆動部が第2部分22に固定されてもよい。
【0052】
(2)上記の実施形態では、軸心Rが車体前後方向Xに沿うように配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、軸心Rが車体左右方向Yに沿うように配置される構成とすることもできる。この場合、第2部分22が第1部分21に対して傾斜している場合(具体的には、傾斜角度Aが正の鋭角である場合)には、第2部分22は、車体前後方向Xの一方側が他方側よりも高くなり、物品90は、開口部92が平面視で車体前後方向Xの当該一方側を向く向きで、保持部20に保持される。
【0053】
(3)上記の実施形態では、第2位置P2が複数の位置を含む場合に、揺動駆動部73が、対象第2位置P2aを含む領域を規定領域ΔV2に設定して傾斜角度調整制御を実行する構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、例えば第2位置P2に含まれる複数の位置の間の高低差が小さい場合等に、全ての第2位置P2を含む領域が規定領域ΔV2に設定される構成としてもよい。
【0054】
(4)上記の実施形態では、第2角度が、物品90の姿勢が水平姿勢S2となる角度とされる構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第2角度を、物品90の姿勢が傾斜姿勢S1となる角度であって第1角度とは異なる角度(例えば、第1角度よりも小さい角度)とすることもできる。
【0055】
(5)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0056】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した搬送車の概要について説明する。
【0057】
物品を搬送する搬送車であって、移動経路に沿って移動する本体部と、前記物品を保持する保持部と、前記保持部を前記本体部に対して昇降方向に昇降させる昇降装置と、を備え、前記保持部は、前記昇降装置に連結された第1部分と、前記第1部分を介して前記昇降装置に連結されると共に前記物品に接触する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に設けられ、前記第1部分に対する前記第2部分の傾斜角度を変更する角度調整機構と、を備えている。
【0058】
本構成によれば、保持部が角度調整機構を備えるため、保持部の姿勢を変更するための機構を昇降装置に設けなくても、角度調整機構により第1部分に対する第2部分の傾斜角度を変更することで、第2部分が接触する物品(すなわち、保持部に保持されている物品)の姿勢を所望の姿勢とすることができる。よって、搬送車の走行時における物品の姿勢を、搬送車の走行時に適した姿勢としつつ、保持部と移載対象箇所との間での物品の移載時における物品の姿勢を、当該移載対象箇所において要求される姿勢とすることができる。よって、搬送車の走行時には搬送車の走行時に適した姿勢で物品を保持部により保持しつつ、保持部と移載対象箇所との間での物品の移載時に移載対象箇所に配置される物品の姿勢を、当該移載対象箇所において要求される姿勢とすることが可能となっている。なお、本構成では、保持部の姿勢を変更するための機構を昇降装置に設ける必要がないため、昇降装置の複雑化を抑制しつつ本開示の搬送車を実現することができる。
【0059】
ここで、前記昇降装置は、回転駆動される複数の回転体と、複数の前記回転体のそれぞれに巻き取り及び繰り出し自在に巻回された伝動部材と、を備え、前記第1部分は、前記伝動部材に連結されていると好適である。
【0060】
本構成によれば、複数の回転体を回転させて伝動部材を巻き取り又は繰り出すことで、保持部を吊り下げ支持した状態で保持部を昇降させることができる。本開示の搬送車では、上述したように、保持部の姿勢を変更するための機構を昇降装置に設ける必要がない。そのため、本構成のように昇降装置が構成される場合に、吊り下げ支持される保持部の姿勢を変更可能に各部(回転体、伝動部材、回転体を回転駆動する駆動部等)を構成する必要はなく、昇降装置の簡素化を図ることができる。
【0061】
また、前記角度調整機構は、前記第2部分に固定された揺動部材と、前記第1部分に固定されていると共に前記揺動部材を水平方向に沿う軸心周りに回転可能に支持する支持部材と、を備え、前記角度調整機構を駆動する駆動部が、前記揺動部材を前記軸心周りに揺動させるように構成されていると好適である。
【0062】
本構成によれば、駆動部により揺動部材を軸心周りに揺動させることで、第1部分に対する第2部分の傾斜角度を大きくなるように変化させたり小さくなるように変化させたりすることができ、当該傾斜角度を変更する角度調整機構を適切に設けることができる。
【0063】
また、前記物品は、側面に開口部を有する容器であり、前記昇降装置は、第1位置と、前記保持部による前記物品の保持及び保持解除を行う位置であって前記第1位置よりも下方の第2位置との間で、前記保持部を昇降させ、前記昇降方向における前記第2位置を含む領域を規定領域とし、前記開口部が斜め上方を向く前記物品の姿勢を傾斜姿勢とし、前記開口部が水平方向を向く前記物品の姿勢を水平姿勢として、前記角度調整機構を駆動する駆動部は、前記保持部が前記物品を保持している場合に、傾斜角度調整制御を実行し、前記傾斜角度調整制御は、前記保持部が前記規定領域の外部に配置されている状態では、前記傾斜角度を、前記物品の姿勢が前記傾斜姿勢となる角度である第1角度とし、前記保持部が前記第2位置に配置されている状態では、前記傾斜角度を、前記物品の姿勢が前記水平姿勢となる角度である第2角度とする制御であると好適である。
【0064】
本構成のように、物品が側面に開口部を有する容器である場合、物品の姿勢を傾斜姿勢とすることで、物品の姿勢が水平姿勢である場合に比べて、物品に収容された収容物が開口部から物品の外部に移動し難くすることができる。また、物品の姿勢を水平姿勢とすることで、開口部を介した収容物の物品に対する出し入れを行いやすくなる。本構成によれば、保持部が物品を保持している場合に傾斜角度調整制御が実行されるため、搬送車の走行時における保持部の位置を規定領域の外部の位置(例えば、第1位置)とすることで、搬送車の走行時や規定領域の外部での保持部の昇降時には、物品の姿勢を傾斜姿勢としつつ、保持部による物品の保持又は保持解除を行う物品の移載時には、物品の姿勢を水平姿勢とすることができる。
【0065】
上記のように前記駆動部が前記傾斜角度調整制御を実行する構成において、前記第2位置は、前記第1位置よりも下方の複数の位置を含み、複数の前記第2位置のうちの、前記保持部の昇降動作の始点又は終点となる前記第2位置を対象第2位置として、前記駆動部は、前記対象第2位置を含む領域を前記規定領域に設定して前記傾斜角度調整制御を実行すると好適である。
【0066】
本構成によれば、第2位置が複数の位置を含む場合に、規定領域よりも上方の領域と規定領域との境界を、その時点で昇降動作の始点又は終点となっている対象第2位置に比較的近い近接位置に設定することができる。よって、保持部が第1位置と近接位置との間の比較的大きい昇降範囲内に配置されている間、傾斜姿勢で物品を保持することができ、保持部に保持された物品を適切に昇降させやすくなる。
【0067】
また、前記駆動部は、前記物品を保持していない前記保持部が前記第2位置へ向かって下降している間、前記傾斜角度を前記第2角度とすると好適である。
【0068】
本構成によれば、物品を保持していない保持部を第2位置へ向かって下降させる場合にも、物品を保持している保持部を第2位置へ向かって下降させる場合と同様に、保持部が規定領域の外部に配置されている状態では傾斜角度を第1角度とする場合に比べて、傾斜角度を第1角度から第2角度に変更する制御を保持部が規定領域に進入してから行う必要がない分、制御の簡素化や処理の高速化を図ることができる。
【0069】
本開示に係る搬送車は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0070】
1:搬送車
2:移動経路
10:本体部
20:保持部
21:第1部分
22:第2部分
40:角度調整機構
41:揺動部材
42:支持部材
50:昇降装置
51:回転体
52:伝動部材
73:揺動駆動部(駆動部)
90:物品
90b:側面
92:開口部
A:傾斜角度
P1:第1位置
P2:第2位置
P2a:対象第2位置
R:軸心
S1:傾斜姿勢
S2:水平姿勢
V:鉛直方向(昇降方向)
V2:下方
ΔV2:規定領域