(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】加圧バッグ
(51)【国際特許分類】
A61J 1/10 20060101AFI20230905BHJP
A61J 1/14 20230101ALI20230905BHJP
A61M 5/148 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
A61J1/10 333E
A61J1/14 390Z
A61M5/148 500
(21)【出願番号】P 2020190490
(22)【出願日】2020-11-16
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中野 きよみ
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03153414(US,A)
【文献】国際公開第2018/181502(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/14
A61J 1/10
A61M 5/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状物が充填された袋状容器を収納するための収納室と、密閉された加圧室とを備え、前記加圧室に流体が注入されると、前記加圧室が膨張して前記収納室に収納された前記袋状容器を加圧して、前記液状物を前記袋状容器から押し出すことができるように構成された加圧バッグであって、
前記加圧バッグは、略長方形の平面視形状を有し、
前記加圧バッグは、前記略長方形の第1短辺に前記収納室に対して前記袋状容器を出し入れするための開口が設けられた袋形状を有し、
前記加圧バッグは、可撓性を有する内シートと、可撓性を有する外シートとが、前記外シートが前記内シートに対して前記収納室とは反対側に位置するように重ね合わされた二重構造を有し、
前記加圧室は、前記内シートと前記外シートとの間に設けられており、
前記内シート、前記外シート、及び、前記内シートと前記外シートとの間の前記加圧室は、いずれも前記
略長方形の第1長辺を介して、前記収納室に対して一方の側から他方の側に延在して
おり、
前記内シートと前記外シートとが重ね合わされて接合された内外シート接合領域が、前記略長方形の第1短辺、第2長辺、及び第2短辺に沿って設けられており、
2層の前記外シートが重ね合わされて接合された外外シート接合領域が、前記略長方形の第2長辺及び第2短辺に沿って設けられており、
前記第2長辺及び前記第2短辺において、前記外外シート接合領域は前記内外シート接合領域より外側に配置されていることを特徴とする加圧バッグ。
【請求項2】
2層の前記内シートと2層の前記外シートとが重ね合わされて接合された4層接合領域を有しない請求項
1に記載の加圧バッグ。
【請求項3】
前記内シート及び前記外シートのうちの少なくとも一つが2層以上重ね合わされて接合された接合領域が、前記略長方形の第2短辺に沿って設けられており、
前記接合領域の幅が、前記加圧バッグの長辺方向寸法の8%以上である請求項1
又は2に記載の加圧バッグ。
【請求項4】
前記加圧室に連通した連通管を更に備える請求項1~
3のいずれか一項に記載の加圧バッグ。
【請求項5】
前記加圧室は、前記収納室に対して一方の側に位置する第1加圧室と、他方の側に位置する第2加圧室とを含み、
前記連通管が、前記第1加圧室に連通するように設けられている請求項
4に記載の加圧バッグ。
【請求項6】
前記外シートは、前記略長方形の短辺方向よりも長辺方向において引っ張り変形量が小さい請求項1~
5のいずれか一項に記載の加圧バッグ。
【請求項7】
前記内シート及び前記外シートは、それぞれ連続する単一のシートからなる請求項1~
6のいずれか一項に記載の加圧バッグ。
【請求項8】
前記内シートは、折り返し部にて折り返されており、
前記内シートの前記折り返し部は、前記略長方形の第1長辺の側に配置されている請求項1~
7のいずれか一項に記載の加圧バッグ。
【請求項9】
前記外シートは、折り返し部にて折り返されており、
前記外シートの前記折り返し部は、前記略長方形の第1長辺の側に配置されている請求項1~
8のいずれか一項に記載の加圧バッグ。
【請求項10】
前記内シートの全外周端は、前記外シートに接合されている請求項1~
9のいずれか一項に記載の加圧バッグ。
【請求項11】
前記略長方形の第1長辺に沿って、前記内シートと前記外シートとは接合されていない請求項1~
10のいずれか一項に記載の加圧バッグ。
【請求項12】
前記内シートが前記収納室の内面を構成し、前記外シートが前記加圧バッグの外面を構成する請求項1~
11のいずれか一項に記載の加圧バッグ。
【請求項13】
前記略長方形のいずれかの短辺を上にして前記加圧バッグを吊り下げることができるように、前記略長方形の一方又は両方の短辺に穴が設けられている請求項1~
12のいずれか一項に記載の加圧バッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状物が充填された袋状容器を加圧するための加圧バッグに関する。より詳細には、袋状容器を加圧して液状物を袋状容器から押し出すために使用される加圧バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
食事を口から摂れなくなった患者に栄養剤、流動食、又は薬剤等を含む液状物を投与する方法として経腸栄養法が知られている。経腸栄養法では、可撓性を有するシートを貼り合わせて構成された袋状容器(「パウチ」または「ラミネートパック」などと呼ばれることがある)に充填された液状物を、柔軟なカテーテル(一般に「経腸栄養カテーテル」と呼ばれる)を介して患者の体内に送り込む。経腸栄養法に用いられるカテーテルとしては、患者の鼻腔から胃又は十二指腸に挿入される経鼻カテーテルや、患者の腹に形成された胃瘻を通って胃内に挿入される胃瘻カテーテルなどが知られている。
【0003】
患者に投与される液状物の粘度が低いと、胃内の液状物が食道に逆流して肺炎を併発したり、液状物の水分が体内で吸収しきれずに下痢したりする等の問題がある。この問題を防止するために、液状物は高粘度化されることが多い。
【0004】
ところが、液状物を高粘度化すると流動性が低下する。高粘度化された液状物を患者の体内に送り込むためには、液状物が充填された袋状容器を圧縮する必要がある。この作業を素手で行おうとすると、非常に大きな力が必要であるので作業者(例えば看護師、介護者)の負担が大きい。
【0005】
そこで、袋状容器を加圧して、液状物を袋状容器から押し出すことができる押出装置が用いられる。特許文献1には、空気を注入することで膨張する加圧バッグを用いて袋状容器を加圧する押出装置が記載されている。この押出装置の加圧バッグは、略長方形の平面視形状を有する。加圧バッグは、袋状容器を収納するための収納室を備え、収納室に対して袋状容器を出し入れするための開口が、略長方形の一方の短辺に設けられている。加圧バッグは、内シート及び外シートが重ね合わされた二重構造を有する。内シートと外シートとの間に、空気が注入される加圧室が形成されている。内シート、外シート、及び、加圧室は、いずれも加圧バッグの底部(略長方形の他方の短辺)を介して、収納室に対して一方の側から他方の側に延在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の押出装置は、概略以下のように使用される。液状物(例えば経腸栄養剤)が充填された袋状容器のポートに延長チューブを介して経腸栄養カテーテルを接続する。延長チューブにはクランプが設けられている。この段階では、クランプは閉じられている。袋状容器を、加圧バッグの収納室に収納する。そして、手動式ポンプを用いて加圧室に空気を送り込む。加圧室が膨張し、袋状容器が圧縮される。加圧室が所定圧力に達したとき、クランプを開く。袋状容器内の液状物は、延長チューブ、カテーテルを介して患者に送り込まれる。袋状容器からの液状物の流出が終了すると、加圧室の圧力を開放し、加圧室内の空気を外界に放出する。加圧バッグが萎んだ後、袋状容器を加圧バッグから取り出す。
【0008】
特許文献1の加圧バッグは、加圧バッグを膨張させた後、加圧室の圧力を開放しても、加圧室内の空気を外界に十分に放出できない(即ち、空気抜け性が悪い)という課題がある。加圧バッグから空気が抜けない(即ち、加圧バッグが膨らんだままである)と、加圧バッグから袋状容器を取り出すことができない。このため、経腸栄養法に長時間を要する。
【0009】
本発明の目的は、加圧室が収納室に対して一方の側から他方の側に延在している加圧バッグにおいて、加圧バッグの空気抜け性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の加圧バッグは、液状物が充填された袋状容器を収納するための収納室と、密閉された加圧室とを備える。前記加圧バッグは、前記加圧室に流体が注入されると、前記加圧室が膨張して前記収納室に収納された前記袋状容器を加圧して、前記液状物を前記袋状容器から押し出すことができるように構成されている。前記加圧バッグは、略長方形の平面視形状を有する。前記加圧バッグは、前記略長方形の第1短辺に前記収納室に対して前記袋状容器を出し入れするための開口が設けられた袋形状を有する。前記加圧バッグは、可撓性を有する内シートと、可撓性を有する外シートとが、前記外シートが前記内シートに対して前記収納室とは反対側に位置するように重ね合わされた二重構造を有する。前記加圧室は、前記内シートと前記外シートとの間に設けられている。前記内シート、前記外シート、及び、前記内シートと前記外シートとの間の前記加圧室は、いずれも前記略長方形の第1長辺を介して、前記収納室に対して一方の側から他方の側に延在している。前記内シートと前記外シートとが重ね合わされて接合された内外シート接合領域が、前記略長方形の第1短辺、第2長辺、及び第2短辺に沿って設けられている。2層の前記外シートが重ね合わされて接合された外外シート接合領域が、前記略長方形の第2長辺及び第2短辺に沿って設けられている。前記第2長辺及び前記第2短辺において、前記外外シート接合領域は前記内外シート接合領域より外側に配置されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、空気抜け性が改良された加圧バッグを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態にかかる加圧バッグを備えた押出装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態にかかる加圧バッグの平面図である。
【
図3】
図3は、
図2の3-3線に沿った本発明の一実施形態にかかる加圧バッグの断面図である。
【
図4】
図4は、
図2の4-4線に沿った本発明の一実施形態にかかる加圧バッグの断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態にかかる加圧バッグの製造方法の一工程を示した平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態にかかる加圧バッグの製造方法の次の工程を示した斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態にかかる加圧バッグの製造方法の次の工程を示した平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態にかかる加圧バッグの製造方法の次の工程を示した斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態にかかる加圧バッグの製造方法の次の工程を示した斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態にかかる加圧バッグを備えた押出装置の使用方法を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好ましい一態様では、前記内シートと前記外シートとが重ね合わされて接合された内外シート接合領域が、前記略長方形の第1短辺、第2長辺、及び第2短辺に沿って設けられていてもよい。2層の前記外シートが重ね合わされて接合された外外シート接合領域が、前記略長方形の第2長辺及び第2短辺に沿って設けられていてもよい。前記第2長辺及び前記第2短辺において、前記外外シート接合領域は前記内外シート接合領域より外側に配置されていてもよい。かかる態様によれば、加圧バッグに、2層の内シートと2層の外シートとを含む合計4層のシートが重ね合わされて接合された4層接合領域を設ける必要がなくなる。これは、シートの接合領域での気密性や接合強度を向上させるのに有利である。
【0014】
本発明の好ましい一態様では、2層の前記内シートと2層の前記外シートとが重ね合わされて接合された4層接合領域を有していなくてもよい。かかる態様は、シートの接合領域での気密性や接合強度を向上させるのに有利である。
【0015】
本発明の好ましい一態様では、前記内シート及び前記外シートのうちの少なくとも一つが2層以上重ね合わされて接合された接合領域が、前記略長方形の第2短辺に沿って設けられていてもよい。前記接合領域の幅が、前記加圧バッグの長辺方向寸法の8%以上であってもよい。かかる態様は、加圧バッグを用いて袋状容器から液状物を押し出した後に袋状容器に残存する液状物の量(残存液状物量)を少なくするのに有利である。
【0016】
本発明の好ましい一態様では、前記加圧室に連通した連通管を更に備えていてもよい。かかる態様によれば、連通管を介して、加圧室に対して流体を流出入させ、また、加圧室内の流体を外界に放出することが容易である。
【0017】
本発明の好ましい一態様では、前記加圧室は、前記収納室に対して一方の側に位置する第1加圧室と、他方の側に位置する第2加圧室とを含んでいてもよい。前記連通管が、前記第1加圧室に連通するように設けられていてもよい。かかる態様によれば、空気抜け性が良好であるという本発明の効果が顕著に発現する。
【0018】
本発明の好ましい一態様では、前記外シートは、前記略長方形の短辺方向よりも長辺方向において引っ張り変形量が小さくてもよい。かかる態様は、袋状容器から液状物を押し出すのに要する時間を短くすること、及び、残存液状物量を少なくすること、に有利である。
【0019】
本発明の好ましい一態様では、前記内シート及び前記外シートは、それぞれ連続する単一のシートから構成されていてもよい。かかる態様は、加圧バッグの構造の簡単化及び製造の容易化に有利である。
【0020】
本発明の好ましい一態様では、前記内シートは、折り返し部にて折り返されていてもよい。前記内シートの前記折り返し部は、前記略長方形の第1長辺の側に配置されていてもよい。かかる態様は、内シートを連続する単一のシートで構成することを可能にする。これは、加圧バッグの構造の簡単化及び製造の容易化に有利である。
【0021】
本発明の好ましい一態様では、前記外シートは、折り返し部にて折り返されていてもよい。前記外シートの前記折り返し部は、前記略長方形の第1長辺の側に配置されていてもよい。かかる態様は、外シートを連続する単一のシートで構成することを可能にする。これは、加圧バッグの構造の簡単化及び製造の容易化に有利である。
【0022】
本発明の好ましい一態様では、前記内シートの全外周端は、前記外シートに接合されていてもよい。かかる態様によれば、密閉された加圧室を簡単な構成で得ることができる。
【0023】
本発明の好ましい一態様では、前記略長方形の第1長辺に沿って、前記内シートと前記外シートとは接合されていなくてもよい。かかる態様は、収納室に対して両側に位置する加圧室の部分(第1加圧室及び第2加圧室)を第1長辺にて連通させるのに有利である。また、かかる態様は、加圧バッグの構造の簡単化及び製造の容易化に有利である。
【0024】
本発明の好ましい一態様では、前記内シートが前記収納室の内面を構成してもよく、前記外シートが前記加圧バッグの外面を構成してもよい。かかる態様は、加圧バッグの構造の簡単化及び製造の容易化に有利である。
【0025】
本発明の好ましい一態様では、前記略長方形のいずれかの短辺を上にして前記加圧バッグを吊り下げることができるように、前記略長方形の一方又は両方の短辺に穴が設けられていてもよい。かかる態様によれば、加圧バッグを例えばイルリガートルスタンドに吊り下げながら、袋状容器から液状物を押し出すことができる。これは、患者の周囲に加圧バッグを置く場所を確保できない場合に有利である。
【0026】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、本発明の実施形態を簡略化して示したものである。従って、本発明の範囲内において、以下の各図に示された各部を変更もしくは省略してもよく、また、図示されていない任意の部材もしくは構成を追加してもよい。異なる図面において、同一の部材には同一の符号が付してある。そのような部材については、重複する説明が省略されており、先行する図面についての説明を適宜参酌すべきである。図面に示された各部の寸法比は、図面間において異なっていることがあり、また、実際の寸法比と同じであるとは限らない。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態にかかる加圧バッグ1を備えた押出装置100の斜視図である。押出装置100は、加圧バッグ1と空気ポンプ110とを備える。加圧バッグ1は、開口11を有する袋形状を有する。開口11を介して、袋状容器50を加圧バッグ1の収納室10に出し入れ可能である。袋状容器50には、経腸栄養において患者に投与される液状物(例えば経腸栄養剤)が充填されている。加圧バッグ1に設けられた連通管17と柔軟な第1チューブ101とが圧力ゲージ107を介して接続されている。圧力ゲージ107は、圧力が所定値を超えると空気を外界に放出して圧力を当該所定値以下にするリミッタ機能を備えていてもよい。空気ポンプ110に柔軟な第2チューブ102が接続されている。第1チューブ101と第2チューブ102とが、圧力開放弁としても機能する三方活栓105を介して接続されている。袋状容器50を加圧バッグ1の収納室10に収納した状態で、空気ポンプ110で空気を加圧バッグ1に送り込み、加圧バッグ1を膨張させる。加圧バッグ1は袋状容器50を圧縮し、袋状容器50のポート52から液状物が押し出される。
【0028】
図2は、加圧バッグ1の平面図である。加圧バッグ1は、第1短辺13a、第2短辺13b、第1長辺14a、及び第2長辺14bを備えた略長方形の平面視形状を有する。加圧バッグ1の開口11(
図1参照)は、第1短辺13aに設けられている。内外シート接合領域41(多数のドットが付してある。詳細は後述する。)が、第1短辺13a、第2長辺14b、及び第2短辺13bに沿って設けられている。外外シート接合領域42(多数のドットが付してある。詳細は後述する。)が、第2長辺14b及び第2短辺13bに沿って設けられている。第1短辺13aに沿った内外シート接合領域41の一部が長辺方向に突出して突出部18が形成されている。突出部18に、突出部18を貫通する穴19が形成されている。穴19は、穴19にフック等を通すことにより、加圧バッグ1を吊り下げるために利用することができる。
【0029】
以下の説明において、加圧バッグ1の上記略長方形に垂直な方向(
図2の紙面に垂直な方向)を、加圧バッグ1の「厚さ方向」という。また、短辺13a,13bに平行な方向を加圧バッグ1の「短辺方向」といい、長辺14a,14bに平行な方向を加圧バッグ1の「長辺方向」という。
【0030】
図3は、
図2の短辺13a,13bに平行な3-3線に沿った加圧バッグ1の断面図である。
図4は、
図2の長辺14a,14bに平行な4-4線に沿った加圧バッグ1の断面図である。
【0031】
図3に示されているように、加圧バッグ1は、折り返し部21で折り返された単一の内シート20と、折り返し部31で折り返された単一の外シート30とを備える。内シート20が収納室10の内面を構成し、外シート30が加圧バッグ1の外面を構成する。加圧バッグ1は、内シート20と、内シート20に対して収納室10とは反対側(外側)に位置する外シート30とが重ね合わされた二重構造を有する。内シート20の折り返し部21、及び、外シート30の折り返し部31は、加圧バッグ1の第1長辺14a側に配置されている。内シート20と外シート30とが、内外シート接合領域41にて重ね合わされて気密に接合されている。2層の外シート30が、外外シート接合領域42にて重ね合わされて気密に接合されている。内外シート接合領域41及び外外シート接合領域42は、加圧バッグ1の第2長辺14b側に配置されている。外外シート接合領域42は内外シート接合領域41より外側に配置されている。
【0032】
図4に示されているように、内シート20と外シート30とが、内外シート接合領域41にて重ね合わされて気密に接合されている。2層の外シート30が、外外シート接合領域42にて重ね合わされて気密に接合されている。内外シート接合領域41及び外外シート接合領域42は、加圧バッグ1の第1短辺13a側及び第2短辺13b側にそれぞれ配置されている。第2短辺13bにおいて、外外シート接合領域42は内外シート接合領域41より外側に配置されている。
【0033】
上記から明らかなように、内シート20の全外周端が外シート30に内外シート接合領域41にて接合されている。その結果、内シート20と外シート30との間に、密閉された加圧室15が形成されている。内シート20、外シート30、及び、内シート20と外シート30との間の加圧室15は、いずれも第1長辺14a側にて、収納室10に対して一方の側(
図3において上側)から他方の側(
図3において下側)に、略「U」字状に延在している(
図3参照)。内シート20と外シート30とは、第1長辺14aに沿って接合(または封止)されていない。このため、収納室10に対して一方の側に位置する加圧室(第1加圧室)15aと、他方の側に位置する加圧室(第2加圧室)15bとは、第1長辺14aを介して連通している。
【0034】
連通管17は、中空の円筒形状を有するパイプであって、略「L」字状に屈曲されている。連通管17は、外シート30に設けられた貫通孔に気密に接続されている(
図4参照)。加圧室15は、連通管17のみを介して外界とを連通している。本実施形態では、連通管17は、第1加圧室15aを構成する外シート30の部分に接続されている。
【0035】
図3及び
図4では、収納室10を挟んで対向する内シート20が厚さ方向にわずかに離間しており、且つ、加圧室15を挟んで対向する内シート20と外シート30とが厚さ方向にわずかに離間している。しかしながら、これらは、加圧バッグ1の構成の理解を容易にするためである。非使用時の萎んだ加圧バッグ1では、収納室10を挟んで対向する内シート20が厚さ方向に互いに密着していてもよく、また、加圧室15を挟んで対向する内シート20と外シート30とが厚さ方向に互いに密着していてもよい。即ち、非使用時の加圧バッグ1は、2層の外シート30と、この間の2層の内シート20とが厚さ方向に互いに密着した薄板状であってもよい。
【0036】
また、
図3では、第1長辺14aにて、内シート20の折り返し部21と外シート30の折り返し部31とが短辺方向にわずかに離間している。しかしながら、これも、加圧バッグ1の構成の理解を容易にするためである。後述する加圧バッグ1の製造方法から容易に理解できるように、非使用時の萎んだ加圧バッグ1では、折り返し部21と折り返し部31とは、第1長辺14aに沿って短辺方向に互いに接していてもよい。
【0037】
内シート20及び外シート30は、容易に変形可能な可撓性(または柔軟性)を有する。内シート20及び外シート30は、更に、加圧室15に流体(例えば空気)を所定圧力(例えば60kPa)で注入しても、流体が外界に漏れ出ることがないシール性と、加圧バッグ1が破裂しない機械的強度とを備えることが好ましい。内シート20及び外シート30の材料としては、このような特性を満足すれば制限はなく、例えばポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、軟質ポリ塩化ビニルなどの樹脂材料を用いることができる。内シート20及び外シート30は、材料が異なる複数の層が積層された積層シートであってもよい。内シート20及び外シート30の材料は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。加圧室15を膨張させたときに収納室10内の袋状容器50を効果的に加圧するために、外シート30は、実質的に伸縮性を有しないことが好ましい。内シート20は、伸縮性を有していても、有していなくてもよい。
【0038】
連通管17は、加圧室15と外界とを連通させることができれば、その材料は任意である。実質的に変形しない硬質材料や、容易に変形可能な軟質材料のいずれであってもよい。使用可能な硬質材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ブチレンスチレンブロック共重合体、ポリオキシメチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、ポリスチレン、ポリアミド、硬質ポリ塩化ビニル等の樹脂材料や、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム等の金属材料を例示できる。使用可能な軟質材料としては、天然ゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム等のゴムや、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー、軟質ポリ塩化ビニル等を用いることができる。
【0039】
加圧バッグ1の加圧室15は、連通管17を介して加圧室15に流体が注入されることによって膨張する。注入される流体は、気体及び液体のいずれであってもよいが、気体、特に空気が好ましい。
図1に示した押出装置100は、加圧室15に空気を注入するために、空気ポンプ110を備える。空気ポンプ110は、ポンプ基部111に対してハンドル112を往復移動させることにより、空気を第2チューブ102に送出することができる手動式のピストンポンプである。但し、加圧室15に空気を注入するためのポンプは、これに限定されず、例えば手動式の送気球や任意の電動ポンプであってもよい。送気球は、ゴム等からなる、球状又はラグビーボール状等の中空体であり、押し潰すことによって空気を排出することができる。
【0040】
袋状容器50(
図1参照)は、限定されないが、例えば可撓性を有するシートで構成された袋状物であって、一般に「パウチ」または「ラミネートパック」と称されるものが好ましい。袋状容器50は、例えば、同一寸法の2枚の略長方形のシートを重ね合わせてその外周端で貼り合わせた平袋型パウチ、表裏面を構成する2枚の略長方形のシートと、底面を構成する1枚のシートとで構成されたスタンディングパウチ、表裏面を構成する2枚の略長方形のシートと、これらのシート間にマチを形成するためのシートとで構成された箱型パウチ(角底パウチと呼ばれることもある)等の任意の構成を有していてもよい。袋状容器50には、液状物を流出させるためのポート(スパウトと呼ばれることもある)52が設けられている。本実施形態では、ポート52は、略長方形の平面視形状を有する袋状容器50の短辺の中央に設けられている。但し、ポート52の位置はこれに限定されず、例えば短辺と長辺とが交差する角部に、短辺及び長辺に対して傾斜してポート52が設けられていてもよい。
【0041】
袋状容器50に充填された液状物の種類に制限はない。例えば、液状物は、栄養剤(例えば経腸栄養法で使用される経腸栄養剤)、流動食、造影剤、ヒアルロン酸、生理食塩水、血液などの任意の液状物であってもよい。液状物は、例えば1000mPa・s以上に高粘度化(または半固形化)されていてもよい。液状物の粘度の上限は、制限されないが50000mPa・s以下であることが好ましい。
【0042】
加圧バッグ1の製造方法の一例を説明する。
【0043】
最初に、
図5に示すように、内シート20及び外シート30を用意する。内シート20及び外シート30は、いずれも略長方形を有する。外シート30は、縦方向及び横方向のいずれにおいても、内シート20より大きい。内シート20及び外シート30のそれぞれの一辺から、加圧バッグ1の突出部18(
図1、
図2参照)となる突出部28,38が突出している。突出部28,38には、加圧バッグ1の穴19となる穴29,39(
図1、
図2参照)が形成されている。本実施形態では、共通する原反シートから、内シート20及び外シート30を切り出している。原反シートは、織布(例えばナイロン織布)を基材層とし、その片面の全面にヒートシール層(例えばウレタン層)をコーティングしたものであってもよい。
図5では、手前側の面にヒートシール層が設けられている。図示していないが、外シート30に貫通孔を形成し、当該貫通孔の開口端に連通管17を気密に接合する。外シート30と連通管17との接合方法は、制限はないが、例えば接着剤を付与する方法や、融着する方法などを用いることができる。
【0044】
次に、
図6に示すように、平坦面上で、外シート30及び内シート20を、それぞれのヒートシール層が設けられた面が対向するように重ね合わせる。外シート30の突出部38と内シート20の突出部28とが重なり合い、且つ、外シート30の突出部38が設けられた辺と内シート20の突出部28が設けられた辺とが一致するように、外シート30に内シート20を位置合わせする。そして、重ね合わされた外シート30及び内シート20の上に、加熱された第1溶着型91を重ね合わせる。第1溶着型91は、内シート20の外周端に沿った矩形枠形状を有する。第1溶着型91を、内シート20の外周端に位置合わせして、内シート20及び外シート30に押し付ける。第1溶着型91が押し付けられた領域において、内シート20のヒートシール層と外シート30のヒートシール層とがヒートシールされ、内外シート接合領域41が形成される。
【0045】
図7に示すように、矩形枠形状の内外シート接合領域41(
図7において多数のドットが付与された領域)が形成された、内シート20及び外シート30からなる積層シート45が得られる。内外シート接合領域41において、外シート30と内シート20とが重ね合わされて接合されている。内外シート接合領域41は、内シート20の全外周端に沿って形成されている。外シート30の突出部18が突出した辺を除く3辺は、内シート20(または内外シート接合領域41)より外側にはみ出している。
【0046】
次に、
図8に示すように、内シート20を内側にして、積層シート45を
図7の二点鎖線46に沿って折り返す(即ち、二つ折りする)。矩形枠形状の内外シート接合領域41が二つ折りされて重なり合う。内外シート接合領域41より外側にはみ出した外シート30が二つ折りされて重なり合う。二点鎖線46に沿って形成された内シート20の折り目は、内シート20の折り返し部21(
図3参照)となる。同様に、二点鎖線46に沿って形成された外シート30の折り目は、外シート30の折り返し部31(
図3参照)となる。
【0047】
次に、
図9に示すように、平坦面上に、二つ折りした
図8の積層シート45を載置し、その上に、加熱された第2溶着型92を重ね合わせる。第2溶着型92は、外シート30の隣り合う2辺に沿った略「L」字形状を有する。第2溶着型92を、内外シート接合領域41より外側の2層の外シート30が重ね合わされた部分に位置合わせして、外シート30に押し付ける。第2溶着型92が押し付けられた領域において、2層の外シート30のヒートシール層が互いにヒートシールされ、外外シート接合領域42が形成される。
【0048】
かくして、
図2~
図4に示した加圧バッグ1が得られる。加圧バッグ1は、略長方形の平面視形状を有する。内シート20及び外シート30からなる二重構造の積層シート45(
図7参照)が、第1長辺14aにて折り返され、外シート30が第2長辺14b及び第2短辺13bに沿った外外シート接合領域42にて互いに接合されている。加圧バッグ1は、第1短辺13aに開口11が設けられた袋形状を有している。加圧バッグ1の収納室10は、開口11のみを介して外界と連通している。積層シート45において、内シート20の全外周端が内外シート接合領域41にて外シート30に接合されている(
図7参照)。このため、内シート20と外シート30との間に、密閉された加圧室15が形成されている。加圧室15は、連通管17のみを介して外界と連通する。内シート20及び外シート30と同様に、加圧室15も、第1長辺14aにて折り返されている。
【0049】
上記の製造方法では、積層シート45(
図7参照)において、外シート30の3辺が内シート20(または内外シート接合領域41)より外側にはみ出している。このため、その後、積層シート45を二つ折りすると、内外シート接合領域41より外側にはみ出した外シート30を互いに重ね合わせて、第2長辺14b及び第2短辺13bに沿った外外シート接合領域42を形成することができる。即ち、内シート20と外シート30とが接合された内外シート接合領域41の外側に、2層の外シート30が重ね合わされて接合された外外シート接合領域44が形成される。最終的に得られる加圧バッグ1が内シート20と外シート30とが重ね合わされた二重構造を有するにもかかわらず、加圧バッグ1は、2層の内シート20と2層の外シート30とを含む合計4層のシートが重ね合わされて接合された4層接合領域を有しない。一般に、ヒートシールでは、重ね合わされるシートの数が多くなればなるほど、各シートに加えられる圧力や各シートの温度等を適切に管理することが困難になり、得られる接合領域において所望する気密性や接合強度が得られない欠点箇所が発生する可能性が高くなる。本実施形態の加圧バッグ1では、外外シート接合領域42は、必ず内外シート接合領域41より外側に配置されている。これは、加圧バッグ1に形成された全ての接合領域41,42を、2層のシートのみが接合された2層接合領域とすることを可能にする。2層のシートのみの接合は、4層のシートの接合に比べて圧力や温度の管理が格段に容易になる。このため、接合領域に欠点箇所が発生するのが抑制され、接合領域の気密性や接合強度が向上する。本実施形態によれば、歩留まりが向上し、高品質の加圧バッグ1を安定して製造することが可能である。
【0050】
次に、加圧バッグ1を備えた押出装置100(
図1参照)を用いた経腸栄養法の一例を説明する。
【0051】
図1に示すように、押出装置100と袋状容器50とを用意する。加圧バッグ1の加圧室15(
図3及び
図4参照)は膨らんでおらず、加圧室15を規定する内シート20と外シート30とは実質的に密着している。袋状容器50には液状物(例えば経腸栄養剤)が充填されている。図示していないが、袋状容器50のポート52に柔軟なチューブ(例えば経腸栄養セット)の上流端が接続されている。チューブの下流端は、患者に留置されたカテーテルに接続されている。カテーテルは、例えば患者の腹に形成された胃瘻に挿入された胃瘻カテーテルであってもよい。チューブには、その流路を開閉するためのクランプ(図示せず)が設けられている。この段階では、チューブの流路はクランプによって閉じられている。
【0052】
次いで、
図10に示すように、袋状容器50を、加圧バッグ1の開口11から収納室10に挿入する。三方活栓105を操作して、第1チューブ101と第2チューブ102とを連通させる。空気ポンプ110を操作して、空気を加圧バッグ1の加圧室15に送り込む。加圧室15は膨張し、収納室10に収納された袋状容器50を加圧する。但し、ポート52に接続されたチューブ(図示せず)の流路はクランプによって閉じられているので、袋状容器50から液状物は流出できない。
【0053】
加圧室15内の圧力は圧力ゲージ107で確認できる。加圧室15内の圧力が所定値(例えば40kPa)に到達したことを確認後、三方活栓105を操作して、第1チューブ101と第2チューブ102との連通を遮断する。次いで、ポート52に接続されたチューブのクランプを開く。液状物は、袋状容器50からポート52を通って押し出され、患者に投与される。袋状容器50から液状物が流出することによる袋状容器50の体積減少はわずかである。従って、袋状容器50からの液状物の流出による加圧室15内の圧力の減少はごくわずかである。
【0054】
袋状容器50からの液状物の流出が終了した後、三方活栓105を操作して、第1チューブ101を外界に連通させる。加圧室15内の圧力が、連通管17、第1チューブ101及び三方活栓105を介して外界に開放される。加圧バッグ1が萎んだ後、袋状容器50を収納室10から取り出す。袋状容器50は、加圧バッグ1によって実質的に平坦な薄板状に押し潰されている。必要に応じて、袋状容器50をしごくなどして、袋状容器50内に残存するわずかな液状物を袋状容器50から出し切ってもよい。また、袋状容器50を取り出した後の加圧バッグ1は、押し潰して加圧室15内の空気を外界に出しきる。
【0055】
上述したように、特許文献1に記載された従来の加圧バッグでは、加圧室が、袋形状の底部(本実施形態の加圧バッグ1の第2短辺13bに相当する)を介して、収納室に対して一方の側から他方の側に延在していた。押出装置100の加圧バッグ1をこの従来の加圧バッグに置き換えて経腸栄養法を行うと、以下の課題がある。即ち、加圧室を膨張させて袋状容器から液状物を押し出した後、単に三方活栓を操作して加圧室の圧力を外界に開放させただけでは、加圧室内の空気を外界に十分に放出できない(即ち、空気抜け性が悪い)。加圧室が膨らんだままであるので、袋状容器は加圧室によって依然として圧縮力を受けている。このため、袋状容器を加圧バッグから取り出すことが困難である。手作業にて加圧バッグを押し潰して加圧室内の空気を外界に放出させる必要がある。経腸栄養法を終了することができず、経腸栄養法に長時間を要する。
【0056】
本発明者らは、従来の加圧バッグの空気抜け性が悪い原因が、加圧室が、袋形状の底部を介して、収納室に対して一方の側から他方の側に延在している点にあることを突き止めた。加圧室が、収納室に対して一方の側から他方の側に延在している加圧バッグにおいては、一方の側の加圧室(第1加圧室)と他方の側の加圧室(第2加圧室)との間の空気の流動性が空気抜け性に大きく影響する。従来の加圧バッグでは、第1加圧室と第2加圧室とが、袋形状の底部を介して連通する。この底部は、平面視形状が略長方形である袋形状の短辺に位置するため、第1加圧室と第2加圧室とをつなぐ流路断面積が小さい。これが、空気抜け性が悪い原因である。
【0057】
これに対して、本実施形態の加圧バッグ1では、加圧室15が、第1長辺14aを介して、収納室10に対して一方の側(第1加圧室15a)から他方の側(第2加圧室15b)に延在している。第1長辺14aは、袋形状の底部(即ち、第2短辺13b)より長いため、第1加圧室15aと第2加圧室15bとをつなぐ流路断面積が大きい。このため、本実施形態の加圧バッグ1は、空気抜け性が良好である。三方活栓105を操作して加圧室15内の圧力を開放すると、加圧室15内の空気は直ちに外界に放出され、加圧室15は急速に萎む。三方活栓105の操作から、袋状容器50を加圧バッグ1から取り出し可能な状態になるまでの時間が極めて短い。このため、経腸栄養法を短時間で行うことができる。
【0058】
本実施形態のように、連通管17が、収納室10に対して一方の側の第1加圧室15aに連通するように設けられている場合には、空気抜け性が良好であるという本発明の効果が顕著に発現する。なぜなら、収納室10に対して他方の側の第2加圧室15b内の空気が連通管17を通って外界に流出するためには、第2加圧室15b内の空気は必ず第1加圧室15aに移動する必要があるからである。
【0059】
本実施形態では、
図2に示すように、第2短辺13bに沿って設けられた接合領域41,42の長辺方向の幅Wが、加圧バッグ1の長辺方向寸法Lの8%以上、更には10%以上であることが好ましい。また、幅Wは、20mm以上、更には25mm以上、特に30mm以上であることが好ましい。これらの好ましい条件は、加圧バッグ1を用いて袋状容器50から液状物を押し出した後に袋状容器50に残存する液状物の量(残存液状物量)を少なくするのに有利である。この理由は明確ではないが、本発明者らは、概略以下のように推測している。袋状容器50を収納室10に収納した状態で加圧室15を膨張させると、第2短辺13bに沿った接合領域41,42が、その短辺方向の中央部分が加圧室15(または第1短辺13a)側に近づくように長辺方向に変形し、且つ、厚さ方向に波打つように変形する。このような接合領域41,42の変形は、加圧室15が、収納室10に収納された袋状容器50の接合領域41,42(第2短辺13b)近傍部分に加える厚さ方向の加圧力を弱める。これが残存液状物量を増加させる。従って、複数のシートが接合されていることによって相対的に高強度である接合領域41,42の幅Wを大きくすれば、接合領域41,42の上記変形を抑えることができ、その結果、残存液状物量が減少するのである。但し、接合領域41,42の幅Wが大きすぎると、残存液状物量を減少させる効果が低減するばかりか、加圧バッグ1が大きくなり、取り扱い性が低下する。このため、接合領域41,42の幅Wは、加圧バッグ1の長辺方向寸法Lの30%以下、更には20%以下であることが好ましく、また、70mm以下、更には50mm以下であることが好ましい。なお、接合領域41,42の幅Wは、内外シート接合領域41及び外外シート接合領域42の長辺方向寸法の合計であり、内外シート接合領域41と外外シート接合領域42とが長辺方向に離間している場合には、両者間の隙間の長辺方向寸法を含まない。また、加圧バッグ1の長辺方向寸法Lは、第1短辺13a及び/又は第2短辺13bに設けられた突出部18を含まない。
【0060】
加圧バッグ1の収納室10の内寸法は、袋状容器50の外寸法に応じて設定されることが好ましい。袋状容器50に対して収納室10が大きすぎると、袋状容器50を収納室10内のどこに収納するかが加圧バッグ1の使用者ごとに異なりうる。この場合、収納室10内での袋状容器50の位置によって、残存液状物量が変化しうる。収納室10内での袋状容器50の位置のバラツキを少なくして、残存液状物量を安定的に減少させることが望まれる。このような観点から、加圧バッグ1の収納室10の長辺方向の内寸法(開口11から収納室10の最深部までの距離)は、袋状容器50の長辺方向の外寸法(ポート52を含まない)に対して、1.3倍以下、更には1.2倍以下であることが好ましい。また、袋状容器50に対して収納室10が小さすぎても、袋状容器50の全面を圧縮することができないため、残存液状物量が増加する。従って、残存液状物量を少なくする観点から、加圧バッグ1の収納室10の長辺方向の内寸法は、袋状容器50の長辺方向の外寸法に対して、1.0倍以上、更には1.05倍以上であることが好ましい。
【0061】
袋状容器50を収納室10に収納した状態で加圧室15を膨張させると、加圧バッグ1の外シート30は全体として略ラグビーボール状に膨らむ。本発明者らは、加圧室15を膨張させたとき、外シート30の長辺方向の伸び量が相対的に小さいと、袋状容器50から液状物を短時間で押し出すことができ且つ残存液状物量を少なくすることができることを実験的に確認した。このため、外シート30は、加圧バッグ1の短辺方向よりも長辺方向において引っ張り変形量が小さいことが好ましい。引っ張り変形量は、外シート30から一定幅の細長い試料を切り出し、該試料を、その長手方向に沿って引っ張ったときの試料の伸び率で評価できる。具体的には、外シート30が上記実施形態のように織布を含む場合、引っ張り変形量は繊維の密度と相関するため、当該織布は、長辺方向に平行に延びる繊維(経糸)が短辺方向に延びる繊維(緯糸)より高密度であることが好ましい。一般には、原反シートから外シート30(
図5参照)を切り出す場合、加圧バッグ1の長辺方向が原反シートの経糸方向になるように外シート30を切り出すことが好ましい。
【0062】
上記の実施形態は例示にすぎない。本発明は、上記の実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
【0063】
上記の実施形態では、第2長辺14b及び第2短辺13bにおいて、外外シート接合領域42は内外シート接合領域41より外側に配置されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、2層の外シート30の間に2層の内シート20が配置された4層のシートが重ね合わされて接合された4層接合領域が、第2長辺14b及び/又は第2短辺13bに沿って配置されていてもよい。4層接合領域を第2長辺14b及び第2短辺13bに沿って配置する場合、同一寸法の内シート20及び外シート30を用いうる(
図5参照)。共通する原反シートから内シート20及び外シート30を切り出す場合、内シート20と外シート30との区別が不要になるので、加圧バッグの製造を簡単化できる。
【0064】
連通管17が設けられる位置は、任意である。連通管17は、第2加圧室15bに連通するように外シート30に設けられていてもよく、外シート30の折り返し部31に設けられていてもよい。あるいは、連通管17が、第1短辺13aに沿った内外シート接合領域41に、内シート20と外シート30とに挟まれるように設けられてもよい。連通管17の形状も、略「L」字状に屈曲している必要はなく、例えば屈曲部を有しない直線状であってもよい。
【0065】
本発明の加圧バッグは、袋状容器を収納せず且つ加圧室が膨張していないとき、略長方形の平面視形状を有する。ここで、「略長方形」とは、厳密な意味での長方形はもちろん、実質的に長方形と見なしうる形状をも含む。例えば、長方形の四隅の少なくとも一つを円弧状又は斜めに切り落とした形状や、長方形の四辺の少なくとも一つに突出部(例えば突出部18)や凹状の切り欠きが設けられた形状等を含む。
【0066】
穴19は、上記の実施形態では第2加圧室15b側の第1短辺13aに設けられているが、本発明はこれに限定されない。穴19は、第1加圧室15a側の第1短辺13aや、第2短辺13b、第2長辺14bに設けられていてもよい。穴19が、異なる2以上の辺にそれぞれ設けられていてもよい。穴19は、袋状容器50を収納した加圧バッグを吊り下げるために用いることができる。上記の実施形態のように、穴19が第1短辺13aに設けられていると、収納室10に収容された袋状容器50が重力で落下しない。穴19が第2短辺13bに設けられていると、液状物の袋状容器50からの流出を重力を利用して促進することができる。なお、加圧室15が膨張している状態では、開口11が下方を向いていても、袋状容器50が収納室10から抜け落ちる可能性は低い。穴19を設けるために加圧バッグの辺から突出部18を突出させる必要はない。例えば、辺に沿って延びた接合領域41又は42に単に穴19を設けてもよい。穴19の位置は、加圧バッグ1の略長方形の辺(13a,13b,または14b)の長手方向の中央である必要はなく、例えば辺(13a,13b,または14b)の端部(即ち、略長方形の隅部)であってもよい。本発明の加圧バッグは、穴19を備えていなくてもよい。
【0067】
内シート20及び外シート30のうちの少なくとも一方は、複数のシート片を組み合わせて構成されていてもよい。例えば、外シート30が、折り返し部31に相当する位置で分断された2枚の外シート片で構成されていてもよい。
【0068】
複数のシートを重ね合わせて接合する方法は、ヒートシールに限定されず、気密(または液密)に接合することができる任意の方法を用いうる。例えば、接着剤や粘着テープ(両面粘着テープまたは片面粘着テープ)を用いる方法、融着する方法、糸で縫い合わせる方法、あるいはこれらを組み合わせた方法などで接合することができる。
【0069】
本発明の加圧バッグを備えた押出装置の構成も、上記の実施形態に示したもの(
図1参照)に限定されない。例えば、上記の押出装置100は、加圧バッグ1の加圧室15の連通先を空気ポンプ110と外界とで切り替えるために三方活栓105を備えるが、三方活栓105を別の部材に置き換えてもよい。例えば、三方活栓105の代わりに、互いに接続及び分離が可能な第1コネクタと第2コネクタとからなる接続具を用いることができる。第1コネクタは第1チューブ101に設けられ、第2コネクタは第2チューブ102に設けられる。第1コネクタを第2コネクタに接続した状態で、空気ポンプ110で空気を加圧バッグ1に送り込み、加圧バッグ1を膨張させる。その後、第1コネクタを第2コネクタから分離すると、加圧室15内の圧力を、第1コネクタを介して外界に開放することができる。第1コネクタが、加圧室15に向かう空気の流れを許容し、加圧室15から外界に向かう空気の流れを阻止するように構成された一方向弁を備えていてもよい。この場合、第1コネクタを第2コネクタから分離しただけでは加圧室15内の圧力は外界に開放されず、第1コネクタを第2コネクタから分離した後、一方向を開放させるための何らかの操作を更に行うことによって、加圧室15内の圧力は外界に開放される。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の利用分野は特に制限はないが、袋状容器に充填された液状物(特に半固形化された低流動性の流動物)を押し出すための加圧バッグとして好ましく利用することができる。医療分野、特に、患者の体に挿入したカテーテルを介して半固形化栄養剤を注入する経腸栄養法に本発明を好ましく利用することができる。但し、本発明は、医療分野に限られず、液状物を押し出す必要がある分野(例えば食品分野、一般工業分野など)にも広範囲に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 加圧バッグ
10 収納室
13a 第1短辺
13b 第2短辺
14a 第1長辺
14b 第2長辺
15 加圧室
15a 第1加圧室
15b 第2加圧室
17 連通管
19 穴
20 内シート
21 内シートの折り返し部
30 外シート
31 外シートの折り返し部
41 内外シート接合領域
42 外外シート接合領域
50 袋状容器
100 押出装置
W 接合領域の幅
L 加圧バッグの長辺方向寸法