(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】ポリエステルカーボネート樹脂および光学レンズ
(51)【国際特許分類】
C08G 63/64 20060101AFI20230905BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
C08G63/64
G02B1/04
(21)【出願番号】P 2020553095
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2019039690
(87)【国際公開番号】W WO2020080199
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2018195283
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】平川 学
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宣之
(72)【発明者】
【氏名】本多 栄一
(72)【発明者】
【氏名】吉村 康明
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 雄一郎
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/170691(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/047555(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/181157(WO,A1)
【文献】特開平05-155964(JP,A)
【文献】特開2007-161917(JP,A)
【文献】国際公開第2014/073496(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/052370(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/078074(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/175693(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/64
G02B 1/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構成単位、下記一般式(2)で表される構成単位、及び下記式(3)で表される構成単位を含むポリエステルカーボネート樹脂
であって、
前記一般式(1)で表される構成単位と前記一般式(2)で表される構成単位とのモル比が、一般式(1)で表される構成単位:一般式(2)で表される構成単位=85:15~50:50であり、
前記一般式(1)で表される構成単位と前記一般式(3)で表される構成単位とのモル比が、一般式(1)で表される構成単位:一般式(3)で表される構成単位=60:40~40:60である、前記ポリエステルカーボネート樹脂。
【化1】
(一般式(1)中、Rは、水素、または炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【化2】
(一般式(2)中、Qは下記を表す。)
【化3】
(nおよびmは、各々独立して0~5の整数を表す。)
【化4】
【請求項2】
さらに、下記一般式(4)で表される構成単位を含
み、前記一般式(1)で表される構成単位と前記一般式(4)で表される構成単位とのモル比が、一般式(1)で表される構成単位:一般式(4)で表される構成単位=70:30~95:5である、請求項1に記載のポリエステルカーボネート樹脂。
【化5】
(一般式(4)中、qは下記を表し、R
1、R
2は各々独立して、水素、メチル基、またはアリール基を表し、Zは炭素数1~8のアルキレン基を表し、e及びfは、それぞれ独立に、0~10の整数を表す。)
【化6】
(R
3およびR
4は、各々独立に水素、炭素数1~5の分岐してもよいアルキル基、またはアリール基を表す。q1は、1~12の整数を表す。)
【請求項3】
さらに、下記一般式(5)で表される構成単位を含
み、前記一般式(1)で表される構成単位と前記一般式(5)で表される構成単位とのモル比が、一般式(1)で表される構成単位:一般式(5)で表される構成単位=70:30~95:5である、請求項1又は2に記載のポリエステルカーボネート樹脂。
【化7】
(一般式(5)中、Xは、炭素数1~8のアルキレン基を表し、aおよびbは、それぞれ独立に、0~10の整数を表す。)
【請求項4】
さらに、下記一般式(6)で表される構成単位を含
み、前記一般式(1)で表される構成単位と前記一般式(6)で表される構成単位とのモル比が、一般式(1)で表される構成単位:一般式(6)で表される構成単位=70:30~95:5である、請求項1又は2に記載のポリエステルカーボネート樹脂。
【化8】
(一般式(6)中、Yは、炭素数1~8のアルキレン基を表し、cおよびdは、それぞれ独立に、0~10の整数を表す。)
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のポリエステルカーボネート樹脂を用いた光学レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリエステルカーボネート樹脂、およびそれにより形成される光学レンズに関するものである。また、本発明は、配向複屈折、光弾性係数、ガラス転移温度および屈折率の少なくとも一つに優れた光学レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラ、フィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種カメラの光学系に使用される光学素子の材料として、光学ガラスあるいは光学用透明樹脂が使用されている。光学ガラスは、耐熱性や透明性、寸法安定性、耐薬品性等に優れ、様々な屈折率(nD)やアッベ数(νD)を有する多種類の材料が存在しているが、材料コストが高い上、成形加工性が悪く、また生産性が低いという問題点を有している。とりわけ、収差補正に使用される非球面レンズに加工するには、極めて高度な技術と高いコストがかかるため実用上大きな障害となっている。
【0003】
一方、光学用透明樹脂、中でも熱可塑性透明樹脂からなる光学レンズは、射出成形により大量生産が可能で、しかも非球面レンズの製造も容易であるという利点を有しており、現在カメラ用レンズ用途として使用されている。例えば、ビスフェノールAからなるポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ-4-メチルペンテン、ポリメチルメタクリレートあるいは非晶質ポリオレフィンなどが例示される。
【0004】
しかしながら、光学用透明樹脂を光学レンズとして用いる場合、屈折率やアッベ数以外にも、透明性、耐熱性、低複屈折性が求められるため、樹脂の特性バランスによって使用箇所が限定されてしまうという弱点がある。例えば、ポリスチレンは耐熱性が低く複屈折が大きい、ポリ-4-メチルペンテンは耐熱性が低い、ポリメチルメタクリレートはガラス転移温度が低く、耐熱性が低く、屈折率が小さいため使用領域が限られ、ビスフェノールAからなるポリカーボネートは複屈折が大きい等の弱点を有するため使用箇所が限られてしまい好ましくない。
【0005】
一方、一般に光学材料の屈折率が高いと、同一の屈折率を有するレンズエレメントをより曲率の小さい面で実現できるため、この面で発生する収差量を小さくでき、レンズの枚数の低減、レンズの偏心感度の低減、レンズ厚の低減によるレンズ系の小型軽量化を可能にすることが出来るため、高屈折率化は有用である。
【0006】
また、光学ユニットの光学設計においては、互いにアッベ数が異なる複数のレンズを組み合わせて使用することにより色収差を補正することが知られている。例えば、アッベ数45~60の脂環式ポリオレフィン樹脂製のレンズと、低アッベ数のビスフェノールAからなるポリカーボネート(nD=1.59、νD=29)樹脂製のレンズとを組み合わせて色収差を補正することが行われている。
【0007】
光学レンズ用途に実用化されている光学用透明樹脂の中でアッベ数が高いものとしては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シクロオレフィンポリマーなどがある。とりわけ、シクロオレフィンポリマーは、優れた耐熱性および優れた機械特性を有するため光学レンズ用途に幅広く使用されてきた。
【0008】
低アッベ数の樹脂としては、ポリエステルやポリカーボネートが挙げられる。例えば特許文献1記載の樹脂は高屈折率かつ低アッベ数であることが特徴である。
【0009】
高アッベ数であるシクロオレフィンポリマーと、低アッベ数のポリマーであるポリカーボネート樹脂の間には吸水膨張率に差があり、両者のレンズを組み合わせてレンズユニットを形成すると、スマートフォン等の使用環境で吸水した際にレンズの大きさに違いが発生する。この膨張率差によりレンズの性能が損なわれる。
【0010】
特許文献2~4には、ペルヒドロキシジメタノナフタレン骨格を含むポリカーボネート共重合体が記載されているが、ジヒドロキシメチル基の位置がいずれも2,3位であるため強度が弱く、光学レンズ用途には適していない。更に、特許文献2~4に記載のポリカーボネートは、ガラス転移温度(Tg)が低いため、耐熱性の面で問題がある。例えば、特許文献4の実施例1に記載のHOMOのポリカーボネートは、数平均分子量が38000であるにも拘わらず、ガラス転移温度(Tg)が125℃と低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2014/73496号
【文献】特開平5-70584号
【文献】特開平2-69520号
【文献】特開平5-341124号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来における課題の少なくとも一つを解決することを課題とする。また、本発明の好ましい態様は、配向複屈折、光弾性係数、ガラス転移温度および屈折率の少なくとも一つに優れたポリエステルカーボネート樹脂を提供することを課題とする。更に、この樹脂から製造された光学レンズを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、デカヒドロ-1、4:5、8-ジメタノナフタレンジオール(D-NDM)を原料とするポリエステルカーボート樹脂が上記課題を解決し得ることを見出し、本発明に到達した。
【0014】
すなわち、本発明は、以下に示すポリエステルカーボネート樹脂およびそれを用いた光学レンズに関する。
<1> 下記一般式(1)で表される構成単位、下記一般式(2)で表される構成単位、及び下記式(3)で表される構成単位を含むポリエステルカーボネート樹脂である。
【化1】
(一般式(1)中、Rは、水素、または炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【化2】
(一般式(2)中、Qは下記を表す。)
【化3】
(nおよびmは、各々独立して0~5の整数を表す。)
【化4】
<2> さらに、下記一般式(4)で表される構成単位を含む、上記<1>に記載のポリエステルカーボネート樹脂である。
【化5】
(一般式(4)中、qは下記を表し、R
1、R
2は各々独立して、水素、メチル基、またはアリール基を表し、Zは炭素数1~8のアルキレン基を表し、e及びfは、それぞれ独立に、0~10の整数を表す。)
【化6】
(R
3およびR
4は、各々独立に水素、炭素数1~5の分岐してもよいアルキル基、またはアリール基を表す。q1は、1~12の整数を表す。)
<3> さらに、下記一般式(5)で表される構成単位を含む、上記<1>又は<2>に記載のポリエステルカーボネート樹脂である。
【化7】
(一般式(5)中、Xは、炭素数1~8のアルキレン基を表し、aおよびbは、それぞれ独立に、0~10の整数を表す。)
<4> さらに、下記一般式(6)で表される構成単位を含む、上記<1>又は<2>に記載のポリエステルカーボネート樹脂である。
【化8】
(一般式(6)中、Yは、炭素数1~8のアルキレン基を表し、cおよびdは、それぞれ独立に、0~10の整数を表す。)
<5> 上記<1>から<4>のいずれかに記載のポリエステルカーボネート樹脂を用いた光学レンズである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、配向複屈折、光弾性係数、ガラス転移温度および屈折率の少なくとも一つに優れたポリエステルカーボネート樹脂が得られる。更に、この樹脂から製造された光学レンズが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(A)ポリエステルカーボネート樹脂
本発明のポリエステルカーボネート樹脂は、下記一般式(1)で表される構成単位(以下、「構成単位(1)」という)を含む。これにはデカヒドロ-1、4:5、8-ジメタノナフタレンジオール(D-NDMと記載することがある)から誘導される構成単位が例示される。後述するように構成単位(1)は、例えば、後述する式(I)で表されるジオール化合物と炭酸ジエステルを反応させて得られる。
【化9】
一般式(1)中、Rは、水素、または炭素数1~4のアルキル基を表し、好ましくは、Rは水素を表す。
【0017】
本発明のポリエステルカーボネート樹脂は、構成単位(1)に加え、下記一般式(2)で表される構成単位、及び下記式(3)で表される構成単位を含む。
【化10】
一般式(2)中、Qは下記を表す。
【化11】
nおよびmは、各々独立して0~5の整数を表す。
【化12】
【0018】
一般式(2)中、Qは下記を表すことが好ましい。
【化13】
【0019】
更に、一般式(2)中、Qは下記を表すことがより好ましい。
【化14】
【0020】
前記一般式(1)で表される構成単位と前記一般式(2)で表される構成単位とのモル比は、一般式(1)で表される構成単位:一般式(2)で表される構成単位=90:10~10:90が好ましく、85:15~50:50がより好ましく、80:20~50:50が更により好ましく、80:20~60:40が特に好ましい。前記一般式(2)で表される構成単位のモル比が、上記範囲より少ないと、ポリエステルカーボネート樹脂の結晶性が上昇し、成形体を成形する際の結晶化による白化、脆化が起きやすくなることがある。一方、前記一般式(2)で表される構成単位のモル比が、上記範囲より多いと、光学レンズなどの光学用途で使用する場合、ポリエステルカーボネート樹脂の配向複屈折や光弾性係数が高くなりすぎ、溶融成形した際の流動性が低下することがある。
また、前記一般式(1)で表される構成単位と前記一般式(3)で表される構成単位とのモル比は、一般式(1)で表される構成単位:一般式(3)で表される構成単位=70:30~30:70が好ましく、60:40~40:60がより好ましく、55:45~45:55が特に好ましい。前記一般式(3)で表される構成単位のモル比が、上記範囲より少ないと、分子量が上がらず、樹脂中に未反応のモノマーが残存し、得られる成形体の強度が低下したり、耐加水分解性が低下することがある。一方、前記一般式(3)で表される構成単位のモル比が、上記範囲より多いと、分子量が上がらず、樹脂中に未反応のモノマーが残存し、得られる成形体の強度が低下したり、成形時に金型の汚れやすくなることがある。
【0021】
本発明のポリエステルカーボネート樹脂は、上記一般式(1)で表される構成単位、上記一般式(2)で表される構成単位、及び上記式(3)で表される構成単位のみからなる樹脂の他、他の構成単位を含んでもよい。
他の構成単位としては、下記一般式(4)で表される構成単位や、下記一般式(5)で表される構成単位や、下記一般式(6)で表される構成単位が好ましく挙げられる。
【化15】
一般式(4)中、qは下記を表す。R
1、R
2は各々独立して、水素、メチル基、またはアリール基を表し、好ましくは、水素またはフェニル基を表す。Zは炭素数1~8のアルキレン基を表し、好ましくは炭素数1~3のアルキレン基を表し、特に好ましくはエチレン基を表す。e及びfは、それぞれ独立に、0~10の整数を表し、好ましくは0~3の整数を表し、特に好ましくは1を表す。
【化16】
R
3およびR
4は、各々独立に水素、炭素数1~5の分岐してもよいアルキル基、またはアリール基を表し、好ましくはメチル基を表す。q1は、1~12の整数を表し、好ましくは1~7の整数を表し、特に好ましくは1を表す。
【化17】
一般式(5)中、Xは、炭素数1~8のアルキレン基を表し、好ましくは炭素数1~3のアルキレン基を表し、特に好ましくはエチレン基を表す。aおよびbは、それぞれ独立に、0~10の整数を表し、好ましくは0~3の整数を表し、特に好ましくは1を表す。
【化18】
一般式(6)中、Yは、炭素数1~8のアルキレン基を表し、好ましくは炭素数1~3のアルキレン基を表し、特に好ましくはエチレン基を表す。cおよびdは、それぞれ独立に、0~10の整数を表し、好ましくは0~3の整数を表し、特に好ましくは1を表す。
【0022】
前記一般式(1)で表される構成単位と前記一般式(4)で表される構成単位とのモル比は、一般式(1)で表される構成単位:一般式(4)で表される構成単位=50:50~100:0が好ましく、50:50~95:5がより好ましく、70:30~95:5が特に好ましい。前記一般式(4)で表される構成単位のモル比が、上記範囲であると配向複屈折の値を小さくできる点で好ましい。
また、前記一般式(1)で表される構成単位と前記一般式(5)で表される構成単位とのモル比は、一般式(1)で表される構成単位:一般式(5)で表される構成単位=50:50~100:0が好ましく、50:50~95:5がより好ましく、70:30~95:5が特に好ましい。前記一般式(5)で表される構成単位のモル比が、上記範囲であると配向複屈折の値を小さくできる点で好ましい。
更に、前記一般式(1)で表される構成単位と前記一般式(6)で表される構成単位とのモル比は、一般式(1)で表される構成単位:一般式(6)で表される構成単位=50:50~100:0が好ましく、50:50~95:5がより好ましく、70:30~95:5が特に好ましい。前記一般式(6)で表される構成単位のモル比が、上記範囲であると配向複屈折の値を小さくできる点で好ましい。
【0023】
本発明のポリエステルカーボネート樹脂は、上記構成単位以外にも、他の構成単位を含んでもよい。
他に含んでも良い構成単位とは、後述する式(I)以外のジオール化合物と炭酸ジエステルを反応させて得られる構成単位が挙げられ、式(I)以外のジオール化合物として、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTMC、ビスフェノールZ、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン等が例示される。この中でも9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレンが好適である。
【0024】
本発明のポリエステルカーボネート樹脂の好ましいポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は5,000~300,000である。より好ましいポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は30,000~120,000である。Mwが5,000より小さいと、光学レンズが脆くなるため好ましくない。Mwが300,000より大きいと、溶融粘度が高くなるため製造後の樹脂の抜き取りが困難になり、更には流動性が悪くなり溶融状態で射出成形しにくくなるため好ましくない。
【0025】
さらに本発明のポリエステルカーボネート樹脂には、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、流動性改質剤、結晶核剤、強化剤、染料、帯電防止剤あるいは抗菌剤等を添加することが好ましい。
【0026】
本発明のポリエステルカーボネート樹脂には、製造時に生成するフェノールや、反応せずに残存した炭酸ジエステルが不純物として存在していてもよい。ポリエステルカーボネート樹脂中のフェノール含量は、0.1~3000ppmであることが好ましく、0.1~2000ppmであることがより好ましく、1~1000ppm、1~800ppm、1~500ppm、または1~300ppmであることが特に好ましい。また、ポリエステルカーボネート樹脂中の炭酸ジエステル含量は、0.1~1000ppmであることが好ましく、0.1~500ppmであることがより好ましく、1~100ppmであることが特に好ましい。ポリエステルカーボネート樹脂中に含まれるフェノールおよび炭酸ジエステルの量を調節することにより、目的に応じた物性を有する樹脂を得ることができる。フェノールおよび炭酸ジエステルの含量の調節は、重縮合の条件や装置を変更することにより適宜行うことができる。また、重縮合後の押出工程の条件によっても調節可能である。
【0027】
フェノールまたは炭酸ジエステルの含量が上記範囲を上回ると、得られる樹脂成形体の強度が落ちたり、臭気が発生する等の問題が生じ得る。一方、フェノールまたは炭酸ジエステルの含量が上記範囲を下回ると、樹脂溶融時の可塑性が低下する虞がある。
さらに、原料モノマーが、樹脂中に残存する場合がある。原料モノマーの樹脂中残存量は、各々3000ppm以下が好ましく、1~1000ppmがより好ましい。
【0028】
(B)式(I)で表されるジオール化合物の製造方法
下記式(I)で表されるジオール化合物は、WO2017/175693に示すように、ジシクロペンタジエンまたはシクロペンタジエンと官能基を有するオレフィンを原料として合成することが可能である。
【化19】
式(I)中、Rは、水素、または炭素数1~4のアルキル基を表し、好ましくは、Rは水素を表す。
【0029】
(C)ポリエステルカーボネート樹脂の製造方法
本発明のポリエステルカーボネート樹脂は、式(I)で表されるジオール化合物とエステル骨格を有する化合物と炭酸ジエステルを原料として溶融重縮合法により製造することができる。式(I)で表されるジオール化合物には、ヒドロキシメチル基が2,6位の異性体および2,7位の異性体の混合物が存在する。これらの異性体は質量比で、2,6位の異性体:2,7位の異性体=0.1:99.9~99.9:0.1である。樹脂の強度、引張伸度、成形体の外観などの樹脂物性の観点から、2,6位の異性体:2,7位の異性体=1.0:99.0~99.0:1.0であることが好ましく、2,6位の異性体:2,7位の異性体=20:80~80:20であることがより好ましく、2,6位の異性体:2,7位の異性体=50:50~80:20であることが特に好ましい。さらに、他のジオール化合物を併用しても良い。この反応では重縮合触媒として、塩基性化合物触媒、エステル交換触媒もしくはその双方からなる混合触媒の存在下、製造することができる。
【0030】
炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも特にジフェニルカーボネートが反応性と純度の観点から好ましい。炭酸ジエステルは、ジオール成分とジカルボン酸成分の合計1モルに対して0.60~1.00モルの比率で用いられることが好ましく、更に好ましくは0.70~1.00モルの比率である。このモル比率を調整することにより、ポリエステルカーボネート樹脂の分子量が制御される。
【0031】
塩基性化合物触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、および含窒素化合物等が挙げられる。
【0032】
本発明に使用されるアルカリ金属化合物としては、例えばアルカリ金属の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物又はアルコキシド等が挙げられる。触媒効果、価格、流通量、樹脂の色相への影響などの観点から、炭酸ナトリウム、及び炭酸水素ナトリウムが好ましい。
【0033】
アルカリ土類金属化合物としては、例えばアルカリ土類金属化合物の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物又はアルコキシド等が挙げられる。
【0034】
含窒素化合物としては、例えば4級アンモニウムヒドロキシドおよびそれらの塩、アミン類等が挙げられる。
【0035】
エステル交換触媒としては、亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛の塩が好ましく用いられ、これらは単独もしくは組み合わせて用いることができる。また、上述したアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物と組み合わせて用いてもよい。
【0036】
エステル交換触媒としては、具体的には、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)、酢酸ジルコニウム、チタンテトラブトキサイド等が用いられる。なかでも、酢酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、およびチタンテトラブトキサイドが好ましく、チタンテトラブトキサイドがより好ましい。
【0037】
これらの触媒は、ジオール化合物の合計1モルに対して、1×10-9~1×10-3モルの比率で、好ましくは1×10-7~1×10-4モルの比率で用いられる。
【0038】
溶融重縮合法は、前記の原料および触媒を用いて、加熱下に常圧または減圧下にエステル交換反応により副生成物を除去しながら溶融重縮合を行うものである。
【0039】
具体的には、反応を120~260℃、好ましくは180~260℃の温度で0.1~5時間、好ましくは0.5~3時間反応させる。次いで反応系の減圧度を上げながら反応温度を高めてジオール化合物と炭酸ジエステルとの反応を行い、最終的には1mmHg以下の減圧下、200~350℃の温度で0.05 ~2時間重縮合反応を行う。このような反応は、連続式で行っても良くまたバッチ式で行ってもよい。上記の反応を行うに際して用いられる反応装置は、錨型攪拌翼、マックスブレンド攪拌翼、ヘリカルリボン型攪拌翼等を装備した縦型であっても、パドル翼、格子翼、メガネ翼等を装備した横型であってもスクリューを装備した押出機型であってもよく、また、これらを重合物の粘度を勘案して適宜組み合わせた反応装置を使用することが好適に実施される。
【0040】
本発明のポリエステルカーボネート樹脂の製造方法では、重合反応終了後、熱安定性および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させてもよい。一般的には、公知の酸性物質の添加による触媒の失活を行う方法が好適に実施される。これらの物質としては、具体的には、安息香酸ブチル等のエステル類、p-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類、p-トルエンスルホン酸ブチル、p-トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類、亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジn-プロピル、亜リン酸ジn-ブチル、亜リン酸ジn-ヘキシル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸モノオクチル等の亜リン酸エステル類、リン酸トリフェニルリン酸ジフェニル、リン酸モノフェニル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノオクチル等のリン酸エステル類、ジフェニルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸等のホスホン酸類、フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類、トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類、ホウ酸、フェニルホウ酸等のホウ酸類、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類、ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p-トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸等のアルキル硫酸、塩化ンジル等の有機ハロゲン化物等が好適に用いられる。失活効果、樹脂の色相や安定性の観点から、p-トルエンスルホン酸ブチルを用いるのが好ましい。また、これらの失活剤は、触媒量に対して0.01~50倍モル、好ましくは0.3~20倍モル使用される。触媒量に対して0.01倍モルより少ないと、失活効果が不充分となり好ましくない。また、触媒量に対して50倍モルより多いと、耐熱性が低下し、成形体が着色しやすくなるため好ましくない。
【0041】
触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を0.1~1mmHgの圧力、200~350℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良く、このためには、パドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新能の優れた攪拌翼を備えた横型装置、あるいは薄膜蒸発器が好適に用いられる。
【0042】
本発明のポリエステルカーボネート樹脂は、異物含有量が極力少ないことが望まれ、溶融原料の濾過、触媒液の濾過が好適に実施される。フィルターのメッシュは5μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下である。さらに、生成する樹脂のポリマーフィルターによる濾過が好適に実施される。ポリマーフィルターのメッシュは100μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下である。また、樹脂ペレットを採取する工程は当然低ダスト環境でなければならず、クラス1000以下であることが好ましく、より好ましくはクラス100以下である。
【0043】
なお、本発明の要件を満たすポリエステルカーボネートと、上述した一般式(4)~(6)のいずれかの構造を有するポリカーボネートとを混合してもよい。
例えば、後述する実施例1で得られたポリエステルカーボネート(ポリエステルカーボネート)と、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)及びジフェニルカーボネート(DPC)を反応させて得られるポリカーボネートを各々重合してから、両者を混合してもよい。混合は、公知の溶融混練やクロロホルム等の有機溶剤に溶解して混合する方法などが挙げられる。
【0044】
(D)ポリエステルカーボネート樹脂の物性
本発明のポリエステルカーボネート樹脂は、配向複屈折、光弾性係数、ガラス転移温度および屈折率の少なくとも一つに優れたものである。
本発明のポリエステルカーボネート樹脂の好ましいガラス転移温度(Tg)は95~180℃であり、より好ましくは110~160℃であり、特に好ましくは120~160℃である。また、ガラス転移温度(Tg)の好ましい下限値として、130℃が挙げられ、ガラス転移温度(Tg)の好ましい上限値として、150℃が挙げられる。Tgが95℃より低いと、レンズやカメラの使用温度範囲が狭くなるため好ましくない。また、180℃を超えると射出成形を行う際の成形条件が厳しくなるため好ましくない。
【0045】
本発明のポリエステルカーボネート樹脂は、成形後にJIS-K-7142の方法で測定した屈折率が1.50~1.65であることが好ましく、1.52~1.59であることがより好ましい。
【0046】
本発明のポリエステルカーボネート樹脂は、成形後にJIS-K-7142の方法で測定したアッベ数が25以上、好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上である。アッベ数の上限は、60程度である。
【0047】
本発明のポリエステルカーボネート樹脂は、エリプソメータで測定した配向屈折率が1~150nmであることが好ましく、2~13nmであることがより好ましく、2~9nmであることが特に好ましい。
更に、本発明のポリエステルカーボネート樹脂は、エリプソメータで測定した光弾性係数が10×10-12~30×10-12Pa-1であることが好ましく、12×10-12~18×10-12Pa-1であることがより好ましい。
【0048】
(E)光学レンズ
本発明の光学レンズは、上述した本発明のポリエステルカーボネート樹脂を射出成形機あるいは射出圧縮成形機によりレンズ形状に射出成形することによって得ることができる。射出成形の成形条件は特に限定されないが、成形温度は好ましくは180~280℃である。また、射出圧力は好ましくは50~1700kg/cm2である。
【0049】
光学レンズへの異物の混入を極力避けるため、成形環境も当然低ダスト環境でなければならず、クラス1000以下であることが好ましく、より好ましくはクラス100以下である。
【0050】
本発明の光学レンズは、必要に応じて非球面レンズの形で用いることが好適に実施される。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要がなく、軽量化および生産コストの低減化が可能になる。従って、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。非球面レンズの非点収差は0~15mλであることが好ましく、より好ましくは0~10mλである。
【0051】
本発明の光学レンズの厚みは、用途に応じて広範囲に設定可能であり特に制限はないが、好ましくは0.01~30mm、より好ましくは0.1~15mmである。本発明の光学レンズの表面には、必要に応じ、反射防止層あるいはハードコート層といったコート層が設けられていても良い。反射防止層は、単層であっても多層であっても良く、有機物であっても無機物であっても構わないが、無機物であることが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム等の酸化物あるいはフッ化物が例示される。これらのうちでより好ましいものは酸化ケイ素、酸化ジルコニウムであり、更に好ましいものは酸化ケイ素と酸化ジルコニウムの組み合わせである。また、反射防止層に関しては、単層/多層の組み合わせ、またそれらの成分、厚みの組み合わせ等について特に限定はされないが、好ましくは2層構成又は3層構成、特に好ましくは3層構成である。また、該反射防止層全体として、光学レンズの厚みの0.00017~3.3%、具体的には0.05~3μm、特に好ましくは1~2μmとなる厚みで形成するのがよい。
【実施例】
【0052】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に何らの制限を受けるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法あるいは装置を用いて測定した。
<重量平均分子量(Mw)の測定方法>
予め作成した標準ポリスチレンの検量線からポリスチレン換算重量平均分子量を求めた。即ち、分子量既知(分子量分布=1)の標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、“PStQuick MP-M”)を用いて検量線を作成し、測定した標準ポリスチレンから各ピークの溶出時間と分子量値をプロットし、3次式による近似を行い、較正曲線とした。Mwは、以下の計算式より求めた。
Mw=Σ(Wi×Mi)÷Σ(Wi)
ここで、iは分子量Mを分割した際のi番目の分割点、Wiはi番目の重量、Miはi番目の分子量を表す。また分子量Mとは、較正曲線の同溶出時間でのポリスチレン分子量値を表す。GPC装置として、東ソー株式会社製、HLC-8320GPCを用い、ガードカラムとして、TSKguardcolumn SuperMPHZ-Mを1本、分析カラムとしてTSKgel SuperMultiporeHZ-Mを3本直列に連結したものを用いた。その他の条件は以下の通りである。
溶媒:HPLCグレードテトラヒドロフラン
注入量:10μL
試料濃度:0.2w/v% HPLCグレードクロロホルム溶液
溶媒流速:0.35ml/min
測定温度:40℃
検出器:RI
【0053】
<ガラス転移温度(Tg)>
JIS K7121-1987に基づき、示差熱走査熱量分析計(DSC)により測定した。該分析計として、日立ハイテクサイエンスX-DSC7000を用いた。
<配向屈折率>
得られたポリエステルカーボネート樹脂を、樹脂のTg+65℃に加熱し、プレス機(100kgf/cm2、2分)にてプレスすることによりシートを作製し、樹脂のTg+20℃で一軸1.5倍延伸を行い、600nmにおける位相差を日本分光製M-220にて測定した。
<光弾性係数>
得られたポリエステルカーボネート樹脂を、樹脂のTg+65℃に加熱し、プレス機(100kgf/cm2、2分)にてプレスすることによりシートを作製し、樹脂のTg+20℃で一軸1.5倍延伸を行い、日本分光製M-220にて測定した。
<屈折率>
得られたポリエステルカーボネート樹脂を、40φ、3mm厚の円板にプレス成形(成形条件:200℃、100kgf/cm2、2分)し、直角に切り出し、カルニュー製KPR-200により測定した。
【0054】
(実施例1)
原料として、下記構造式で表されるD-NDM:200.00g(0.900モル)、下記構造式で表される9,9-フルオレン-ジプロピオン酸メチル(FDPM):66.67g(0.197モル)、ジフェニルカーボネート:155.00g(0.724モル)、およびチタンテトラブトキサイド:29.1mg(8.6×10
-5モル)を攪拌機および留出装置付きの500mL反応器に入れ、窒素雰囲気101.3kPaの下1時間かけて180℃まで加熱し、撹拌した。180℃到達から30分かけて40kPaまで減圧を開始した。減圧開始とともに2時間かけて255℃まで昇温をしつつ、留出メタノール、留出フェノールが60%となったところでさらに減圧をしていき1時間かけて0.133kPa以下とした。0.133kPa以下で30分保持しポリエステルカーボネート樹脂を取得した。
得られたポリエステルカーボネート樹脂の物性は表1に示した。
【化20】
【0055】
(実施例2)
原料として、上述のD-NDM:185.11g(0.833モル)、下記構造式で表される9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF):26.45g(0.060モル)、上述のFDPM:52.90g(0.156モル)、ジフェニルカーボネート:163.40g(0.763モル)、およびチタンテトラブトキサイド:19.4mg(5.8×10
-5モル)を用いる以外は実施例1と同様に操作し、ポリエステルカーボネート樹脂を得た。
【化21】
【0056】
(実施例2-1)
原料として、上述のD-NDM:135.00g(0.607モル)、上述のBPEF:110.00g(0.251モル)、上述のFDPM:52.90g(0.156モル)、ジフェニルカーボネート:163.40g(0.763モル)、およびチタンテトラブトキサイド:19.4mg(5.8×10-5モル)を用いる以外は実施例1と同様に操作し、ポリエステルカーボネート樹脂を得た。
【0057】
(実施例2-2)
原料として、上述のD-NDM:140.00g(0.630モル)、上述のBPEF:20.00g(0.046モル)、上述のFDPM:100.00g(0.296モル)、ジフェニルカーボネート:163.40g(0.763モル)、およびチタンテトラブトキサイド:19.4mg(5.8×10-5モル)を用いる以外は実施例1と同様に操作し、ポリエステルカーボネート樹脂を得た。
【0058】
(実施例3)
原料として、上述のD-NDM:185.11g(0.833モル)、下記構造式で表される9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン(BPPEF):35.63g(0.060モル)、上述のFDPM:52.90g(0.156モル)、ジフェニルカーボネート:163.40g(0.763モル)、およびチタンテトラブトキサイド:19.4mg(5.8×10
-5モル)を用いる以外は実施例1と同様に操作し、ポリエステルカーボネート樹脂を得た。
【化22】
【0059】
(実施例4)
原料として、上述のD-NDM:185.11g(0.833モル)、下記構造式で表される2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン(BNE):22.60g(0.060モル)、上述のFDPM:52.90g(0.156モル)、ジフェニルカーボネート:163.40g(0.763モル)、およびチタンテトラブトキサイド:19.4mg(5.8×10
-5モル)を用いる以外は実施例1と同様に操作し、ポリエステルカーボネート樹脂を得た。
【化23】
【0060】
(実施例5)
原料として、上述のD-NDM:200.00g(0.900モル)、下記構造式で表されるテレフタル酸ジメチル(DMT):38.26g(0.197モル)、ジフェニルカーボネート:155.00g(0.724モル)、およびチタンテトラブトキサイド:19.4mg(5.8×10
-5モル)を用いる以外は実施例1と同様に操作し、ポリエステルカーボネート樹脂を得た。
【化24】
【0061】
(比較例1)
原料として、上述のD-NDM:200.00g(0.900モル)、ジフェニルカーボネート:220.00g(1.027モル)、および炭酸水素ナトリウム:1.3mg(15.0μモル)を用いる以外は、実施例1と同様に操作した。
【0062】
(比較例2)
原料として、上述のD-NDM:170.00g(0.765モル)、上述のBPEF:60.00g(0.137モル)、ジフェニルカーボネート:220.00g(1.027モル)、および炭酸水素ナトリウム:1.3mg(15.0μモル)を用いる以外は、実施例1と同様に操作した。
【0063】
【表1】
実施例1と実施例5の結果を比較してみると、テレフタル酸ジメチル(DMT)を用いた実施例5では、フルオレンジプロピオン酸ジメチル(FDPM)を用いた実施例1よりも、配向屈折率および光弾性係数が高い値となっている。しかし、テレフタル酸ジメチル(DMT)は、フルオレンジプロピオン酸ジメチル(FDPM)よりもコストが安いというメリットがあり、実施例5で得られたポリエステルカーボネート樹脂を実施例1で得られたポリエステルカーボネート樹脂に混ぜて使用してもよい。勿論、実施例5で得られたポリエステルカーボネート樹脂を単独で使用しても構わない。