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特許7342901水処理方法、制御装置、及び水処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】水処理方法、制御装置、及び水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20230101AFI20230905BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230905BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230905BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20230905BHJP
【FI】
C02F1/00 C
C12Q1/02
C12M1/34 B
C12Q1/68
C02F1/00 V
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021030935
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131800
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】宮内 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】田口 朋之
(72)【発明者】
【氏名】松井 康弘
(72)【発明者】
【氏名】片山 浩之
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-000673(JP,A)
【文献】特開2015-181356(JP,A)
【文献】特開平06-304546(JP,A)
【文献】特開2016-221480(JP,A)
【文献】国際公開第2014/148580(WO,A1)
【文献】特開2007-098305(JP,A)
【文献】特開2005-262048(JP,A)
【文献】特開2001-299337(JP,A)
【文献】特開平8-131199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
C12N 1/00 - 7/08
C12M 1/00 - 3/10
C12Q 1/00 - 3/00
G01N 15/00 - 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料水中の微生物を濃縮して濃縮液を精製する濃縮ステップと、
前記試料水又は前記濃縮液に含まれる阻害物質であって、前記微生物の測定を阻害する前記阻害物質を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおける検出結果に基づいて除去ステップを実行するか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて実行すると判定すると前記濃縮液から前記阻害物質を除去する前記除去ステップと、
前記判定ステップ又は前記除去ステップの後に実行され、前記濃縮液に含まれる前記微生物を測定する測定ステップと、
を含み、
前記除去ステップにおいて、前記阻害物質の指標値に応じて前記濃縮液から前記阻害物質を除去する除去方法の条件が決定される
水処理方法。
【請求項2】
前記判定ステップにおいて、前記阻害物質の前記指標値が閾値に達したか否かを判定し、
前記判定ステップにおいて前記阻害物質の前記指標値が前記閾値に達したと判定すると前記除去ステップを実行する、
請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記検出ステップは、前記濃縮ステップの後に実行され、
前記検出ステップにおいて、前記濃縮液に含まれる前記阻害物質が検出される、
請求項1又は2に記載の水処理方法。
【請求項4】
前記検出ステップは、前記濃縮ステップの前に実行され、
前記検出ステップにおいて、前記試料水に含まれる前記阻害物質が検出される、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項5】
前記濃縮ステップは、一次濃縮ステップと、一次濃縮ステップの後に実行される二次濃縮ステップと、を含む、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項6】
前記検出ステップは、前記一次濃縮ステップの後に実行され、
前記検出ステップにおいて、一次濃縮液に含まれる前記阻害物質が検出される、
請求項に記載の水処理方法。
【請求項7】
前記検出ステップは、前記二次濃縮ステップの後に実行され、
前記検出ステップにおいて、二次濃縮液に含まれる前記阻害物質が検出される、
請求項5又は6に記載の水処理方法。
【請求項8】
前記閾値は、環境要因で高値を示した経験値から設定される、
請求項2に記載の水処理方法。
【請求項9】
前記閾値は、前記阻害物質の前記指標値をフィードバックして機械学習に基づき算出される、
請求項2に記載の水処理方法。
【請求項10】
前記閾値は、複数の前記指標値の主成分回帰分析及びクラシフィケーションを含む多変量解析又はニューラルネットワークにより得られた結果に基づき算出される、
請求項9に記載の水処理方法。
【請求項11】
試料水中の微生物を濃縮して精製された濃縮液又は前記試料水に含まれる阻害物質であって、前記微生物の測定を阻害する前記阻害物質を検出するセンサ部と、
前記センサ部による検出結果に基づいて前記濃縮液から前記阻害物質を除去するか否かを判定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記濃縮液から前記阻害物質を除去すると判定すると、前記濃縮液から前記阻害物質を除去する除去装置であって、前記阻害物質の指標値に応じて前記濃縮液から前記阻害物質を除去する除去方法の条件を決定する前記除去装置を前記微生物の測定前に前記濃縮液が通過するように水処理プロセスを制御する、
制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載の制御装置と、
前記試料水中の前記微生物を濃縮して前記濃縮液を精製する濃縮装置と、
前記濃縮液から前記阻害物質を除去する前記除去装置と、
前記濃縮液に含まれる前記微生物を測定する測定装置と、
を備える、
水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水処理方法、制御装置、及び水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
細菌及びウイルスなどを含む水中の微生物は、表面電荷が弱酸性である領域において等電点が存在し、中性からアルカリ性の水域では負電荷を帯び、酸性の水域では正電荷を帯びるという性質を有する。従来、この性質を利用して、水中から微生物を捕捉する方法が知られている。例えば、非特許文献1には、陰電荷膜を用いて水中から微生物を捕捉する、陰電荷膜法が記載されている。
【0003】
また、例えば陰電荷膜法などを用いて精製された微生物の濃縮液は回収され、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づくアッセイとして、水生環境における微生物の定性的又は定量的な測定に用いられる。このとき、濃縮液を精製するための微生物の濃縮プロセスにおいて、PCRを阻害して微生物の測定に不正確な定量化をもたらす可能性のある阻害物質も濃縮される。例えば、非特許文献3には、微生物の濃縮プロセスにおいて濃縮された阻害物質を除去することでより正確な定量化をもたらす方法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Katayama et al, “Development of a Virus Concentration Method and Its Application to Detection of Enterovirus and Norwalk Virus from Coastal Seawater”, Applied and Environmental Microbiology, 2002年3月, Vol. 68, No. 3, p.1033-1039
【文献】Hata et al, “Sequential treatment using a hydrophobic resin and gel filtration to improve viral gene quantification from highly complex environmental concentrates”, Water Research, 2020年5月, Vol. 174, 115652
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、浄水場、下水処理場、水再生施設、及び海水淡水化施設などを含む水処理インフラにおいて、プロセス処理水中の阻害物質の量は一日の内に大きく変動したり、異なる日ごとに大きく変動したりする。阻害物質を除去することを前提とした水処理プロセスでは、阻害物質の除去プロセスが必ずしも必要ではない場合にまで除去プロセスが過剰に実行されてしまう。これにより、不必要なコストが生じていた。加えて、除去プロセスにおける過剰な試薬の使用に起因して不必要なコストが生じていた。
【0006】
本開示は、水処理プロセスにおける不必要なコストを抑制可能な水処理方法、制御装置、及び水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係る水処理方法は、試料水中の微生物を濃縮して濃縮液を精製する濃縮ステップと、前記試料水又は前記濃縮液に含まれる阻害物質を検出する検出ステップと、前記検出ステップにおける検出結果に基づいて除去ステップを実行するか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにおいて実行すると判定すると前記濃縮液から前記阻害物質を除去する前記除去ステップと、前記判定ステップ又は前記除去ステップの後に実行され、前記濃縮液に含まれる前記微生物を測定する測定ステップと、を含む。
【0008】
これにより、水処理プロセスにおける不必要なコストを抑制可能である。例えば、上述した判定ステップを実行することで、阻害物質の除去ステップが必ずしも必要ではない場合に、除去ステップの過剰な実行が抑制可能である。例えば、水処理システムにおいて阻害物質が検出されていない場合には、コストが発生する不要な除去ステップを実行しないこともできる。例えば、水処理システムにおいて、阻害物質の指標値があらかじめ設定された閾値に達していないと判定された場合には、コストが発生する不要な除去ステップを実行しないこともできる。
【0009】
一実施形態では、前記判定ステップにおいて、前記阻害物質の指標値が閾値に達したか否かを判定し、前記判定ステップにおいて前記阻害物質の前記指標値が前記閾値に達したと判定すると前記除去ステップを実行してもよい。これにより、正確に定量化された客観的な指標値に基づいて除去ステップを実行するか否かが精度良く判定可能である。阻害物質の指標値に応じて異なる2つの水処理プロセスを正確に切り替えることが可能である。結果として、水処理システムのシステムとしての信頼性が向上し、水処理システムを利用するユーザの利便性も向上する。
【0010】
一実施形態では、前記除去ステップにおいて、前記阻害物質の前記指標値に応じて前記濃縮液から前記阻害物質を除去する除去方法が最適化されてもよい。これにより、水処理プロセスにおけるコストをさらに抑制可能である。例えば、阻害物質の量に応じて除去方法を変更したり、又は試薬量などの他の条件を適切に決定したりすることでコストが低減可能である。加えて、把握された阻害物質の指標値に応じて最適化された除去ステップが実行されるので、阻害物質の除去効果の信頼性が向上する。結果として、後段の微生物の測定ステップにおける測定の信頼性も向上する。
【0011】
一実施形態では、前記検出ステップは、前記濃縮ステップの後に実行され、前記検出ステップにおいて、前記濃縮液に含まれる前記阻害物質が検出されてもよい。これにより、後段の微生物の測定ステップにおいて用いられる濃縮液に対して直接的に阻害物質の有無又は指標値が判定可能である。後段の微生物の測定ステップにおいて用いられる濃縮液の阻害物質の状態を直接的に反映したサンプルに基づいて、上述した判定ステップが実行可能である。
【0012】
一実施形態では、前記検出ステップは、前記濃縮ステップの前に実行され、前記検出ステップにおいて、前記試料水に含まれる前記阻害物質が検出されてもよい。これにより、微生物濃縮前のサンプルを阻害物質の検出に用いることができる。したがって、サンプル量を潤沢に確保でき、多量のサンプルが必要となる阻害物質の検出方法を実行することもできる。加えて、微生物濃縮前に阻害物質の指標値を算出することも可能であるため、算出された阻害物質の指標値に応じて濃縮ステップにおける微生物の濃縮率を変更することもできる。
【0013】
一実施形態において、前記濃縮ステップは、一次濃縮ステップと、一次濃縮ステップの後に実行される二次濃縮ステップと、を含んでもよい。これにより、大容量の試料水に対しても微生物を濃縮して濃縮液を精製することができる。
【0014】
一実施形態において、前記検出ステップは、前記一次濃縮ステップの後に実行され、前記検出ステップにおいて、一次濃縮液に含まれる前記阻害物質が検出されてもよい。これにより、容量が希少となった二次濃縮後のサンプルをロスすることなく、阻害物質の検出ステップを実行して、阻害物質の除去ステップの要否を判定することができる。
【0015】
一実施形態では、前記検出ステップは、前記二次濃縮ステップの後に実行され、前記検出ステップにおいて、二次濃縮液に含まれる前記阻害物質が検出されてもよい。これにより、後段の微生物の測定ステップにおいて用いられる二次濃縮液に対して直接的に阻害物質の有無又は指標値が判定可能である。後段の微生物の測定ステップにおいて用いられる二次濃縮液の阻害物質の状態を直接的に反映したサンプルに基づいて、上述した判定ステップが実行可能である。
【0016】
幾つかの実施形態に係る制御装置は、試料水中の微生物を濃縮して精製された濃縮液又は前記試料水に含まれる阻害物質を検出するセンサ部と、前記センサ部による検出結果に基づいて前記濃縮液から前記阻害物質を除去するか否かを判定する制御部と、を備え、前記制御部は、前記濃縮液から前記阻害物質を除去すると判定すると、前記濃縮液から前記阻害物質を除去する除去装置を前記微生物の測定前に前記濃縮液が通過するように水処理プロセスを制御する。
【0017】
これにより、水処理プロセスにおける不必要なコストを抑制可能である。例えば、制御装置は、上述した判定ステップを実行することで、阻害物質の除去ステップが必ずしも必要ではない場合に、除去ステップの過剰な実行を抑制可能である。例えば、水処理システムは、制御装置が阻害物質を検出していない場合には、コストが発生する不要な除去ステップを実行しないこともできる。例えば、水処理システムは、阻害物質の指標値があらかじめ設定された閾値に達していないと制御装置が判定した場合には、コストが発生する不要な除去ステップを実行しないこともできる。
【0018】
幾つかの実施形態に係る水処理システムは、上記の制御装置と、前記試料水中の前記微生物を濃縮して前記濃縮液を精製する濃縮装置と、前記濃縮液から前記阻害物質を除去する前記除去装置と、前記濃縮液に含まれる前記微生物を測定する測定装置と、を備える。
【0019】
これにより、水処理プロセスにおける不必要なコストを抑制可能である。例えば、制御装置は、上述した判定ステップを実行することで、阻害物質の除去ステップが必ずしも必要ではない場合に、除去ステップの過剰な実行を抑制可能である。例えば、水処理システムは、制御装置が阻害物質を検出していない場合には、コストが発生する不要な除去ステップを実行しないこともできる。例えば、水処理システムは、阻害物質の指標値があらかじめ設定された閾値に達していないと制御装置が判定した場合には、コストが発生する不要な除去ステップを実行しないこともできる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、水処理プロセスにおける不必要なコストを抑制可能な水処理方法、制御装置、及び水処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の第1実施形態に係る水処理システムの概略構成図である。
図2図1の制御装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図3】本開示の第1実施形態に係る水処理方法を説明するためのフローチャートである。
図4】本開示の第2実施形態に係る水処理システムの概略構成図である。
図5】本開示の第2実施形態に係る水処理方法を説明するためのフローチャートである。
図6図4の水処理システムの変形例を示す概略構成図である。
図7】本開示の一実施形態に係る水処理システムの濃縮装置の変形例を示す概略構成図である。
図8】陰電荷膜法の処理を実行可能な設備の一例を説明するための概略構成図である。
図9図8の設備により実行される陰電荷膜法の処理手順を説明するための第1概略図である。
図10図8の設備により実行される陰電荷膜法の処理手順を説明するための第2概略図である。
図11図8の設備により実行される陰電荷膜法の処理手順を説明するための第3概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
初めに、陰電荷膜法によって微生物の濃縮液を精製する設備の一例について説明する。本明細書において、「微生物」は、例えば原虫、細菌、及びウイルスなどを含む。「原虫」は、例えばクリプトスポリジウム及びジアルジアなどを含む。「細菌」は、例えば大腸菌、ブドウ球菌、コレラ菌、結核菌、及びピロリ菌などを含む。「ウイルス」は、例えばノロウイルス、アデノウイルス、腸管系ウイルス、及びPMMoVなどを含む。以下では、一例として、ウイルスの濃縮液を精製する場合について説明するが、細菌などの他の微粒子に対しても、同様の設備及び方法が適用可能である。
【0024】
微生物は、中性からアルカリ性の水域では、負電荷に帯電するという性質を有する。陰電荷膜法による処理を実行する試料水は、中性からアルカリ性である。したがって、これらの微生物は、試料水中で負電荷に帯電している。
【0025】
図8は、陰電荷膜法の処理を実行可能な設備の一例を説明するための概略構成図である。図8に示すように、設備1は、陰電荷膜2と、アスピレータ3と、吸引ビン4と、を有する。図8において、各構成要素を結合する実線は、流体を流す配管を示す。
【0026】
陰電荷膜2は、負電荷に帯電した膜であり、例えばMillipore社製の混合セルロース膜(以下、単に「HA膜」とも言う)を用いることができる。陰電荷膜2には、ウイルスを捕捉可能で、水分子などの流体を構成する分子を透過可能な孔が形成されている。陰電荷膜2の孔の孔径は、陰電荷膜2で捕捉するウイルスに応じて、適宜定められてよい。
【0027】
陰電荷膜2の上流側には、流体を供給するための配管5が設けられている。図8に示すとおり、配管5には、3本の異なる第1配管5a、第2配管5b、及び第3配管5cが連結されている。これら3本の第1配管5a、第2配管5b、及び第3配管5cから、それぞれ異なる流体が配管5を経由して陰電荷膜2に供給される。
【0028】
第1配管5aは、配管5と、試料水供給口6とをつなぐ配管である。試料水供給口6からは、ウイルスを含みうる試料水が第1配管5aに供給される。なお、試料水供給口6からは、水処理インフラの施設から採水された試料水に、所定の溶液が混合された溶液が供給されてもよい。所定の溶液は、例えば塩化マグネシウム溶液であってよい。所定の溶液には、試料水の性質に応じて適宜の溶液が用いられてよい。また、所定の溶液は、試料水の性質に応じて、用いられなくてもよい。
【0029】
第2配管5bは、配管5と、酸性の水溶液が収容された酸性溶液収容タンク7とをつなぐ配管である。酸性溶液収容タンク7からは、酸性の水溶液が第2配管5bに供給される。本明細書では、酸性の水溶液は、一例として硫酸溶液であるとして説明するが、これに限定されない。
【0030】
第3配管5cは、配管5と、アルカリ性の水溶液が収容されたアルカリ性溶液収容タンク8とをつなぐ配管である。アルカリ性溶液収容タンク8からは、アルカリ性の水溶液が第3配管5cに供給される。本明細書では、アルカリ性の水溶液は、一例として水酸化ナトリウム水溶液であるとして説明するが、これに限定されない。
【0031】
配管5に連結されている3本の第1配管5a、第2配管5b、及び第3配管5cには、それぞれ弁9a、9b、及び9cが設けられている。弁9a、9b、及び9cの開閉により、それぞれの3本の第1配管5a、第2配管5b、及び第3配管5cから陰電荷膜2への流体の供給が制御される。陰電荷膜2には、試料水、酸性の水溶液、及びアルカリ性の水溶液のいずれか1つのみが、一のタイミングで供給される。すなわち、同一のタイミングで、試料水、酸性の水溶液、及びアルカリ性の水溶液の2つ以上が供給されないように、弁9a、9b、及び9cが開閉される。
【0032】
アスピレータ3は、陰電荷膜2に対して下流側に配置される。アスピレータ3は、減圧状態を作り出すことにより、陰電荷膜2に供給された流体を引き込む。例えば、試料水及び酸性の水溶液が陰電荷膜2に供給される場合に、アスピレータ3が駆動されて、流体がアスピレータ3側に引き込まれ、外部に排出される。
【0033】
吸引ビン4は、陰電荷膜2に対して下流に配置され、アスピレータ3と並列に配置される。吸引ビン4は、減圧状態を作り出すことにより、陰電荷膜2に供給された流体を引き込んで、内部に設けられた濃縮液回収容器1aに、流体を回収する。例えば、アルカリ性の水溶液が陰電荷膜2に供給される場合に、流体が吸引ビン4に引き込まれ、濃縮液回収容器1aに回収される。
【0034】
次に、図8の設備1を用いた、陰電荷膜法による処理方法について説明する。
【0035】
図9は、図8の設備1により実行される陰電荷膜法の処理手順を説明するための第1概略図である。図9における太線は、流体の流れを表す。
【0036】
第1配管5aの弁9aが開放され、アスピレータ3が駆動されることによって、試料水が試料水供給口6から第1配管5a及び配管5を経由して陰電荷膜2に供給される。試料水が陰電荷膜2を通過すると、試料水中に含まれる陽イオンは、正電荷に帯電しているため、負電荷に帯電した陰電荷膜2に捕捉される。試料水中に含まれるウイルスは、負電荷に帯電しているため陽イオンに捕捉される。陰電荷膜2として、このときにウイルスを捕捉可能なものが使用される。例えば、陰電荷膜2として、孔径0.45μm、口径13-90mmのHA膜を使用することができる。陽イオン及びウイルスが捕捉された試料水は、アスピレータ3により、陰電荷膜2の下流に配置された配管5d及び5eを介して排水される。
【0037】
図10は、図8の設備1により実行される陰電荷膜法の処理手順を説明するための第2概略図である。図10における太線は、流体の流れを表す。
【0038】
第1配管5aの弁9aを閉じた後、第2配管5bの弁9bが開放され、アスピレータ3が駆動されることによって、酸性溶液収容タンク7から硫酸溶液が陰電荷膜2に供給される。これにより、陰電荷膜2の酸洗浄が行われる。つまり、硫酸溶液を陰電荷膜2に供給し、アスピレータ3で下流に流すことにより、陰電荷膜2に捕捉された陽イオンが、陰電荷膜2からはがされて硫酸溶液とともに配管5d及び5eを介して排水される。硫酸溶液は、酸洗浄が可能な任意のものであってよく、例えばpH3.0で、0.5mMの硫酸溶液を用いることができる。硫酸溶液は、適宜の量が供給されてよく、例えば供給された試料水の10分の1の容量が供給されてよい。硫酸溶液は、適宜の量が供給されてよく、例えば10ml以上の容量が供給されてよい。酸洗浄により、陰電荷膜2にはウイルスが付着して残っている状態となる。
【0039】
図11は、図8の設備1により実行される陰電荷膜法の処理手順を説明するための第3概略図である。図11における太線は、流体の流れを表す。
【0040】
第2配管5bの弁9bを閉じた後、第3配管5cの弁9cが開放され、アスピレータ3の駆動を停止し吸引ビン4が駆動されることによって、アルカリ性溶液収容タンク8から水酸化ナトリウム水溶液が陰電荷膜2に供給される。これにより、陰電荷膜2に捕捉され、負電荷に帯電したウイルスが、陰電荷膜2からはがされて水酸化ナトリウム水溶液とともに、配管5d及び5fを介して吸引ビン4に流れ、濃縮液回収容器1aに回収される。水酸化ナトリウム水溶液は、ウイルスを回収可能な任意のものであってよく、例えばpH10.5-10.8で、1.0mMの水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。また、水酸化ナトリウム水溶液は、適宜の量が供給されてよく、例えば1-10mlが供給されてよい。
【0041】
濃縮液回収容器1aには、ウイルスを回収した水酸化ナトリウム水溶液を中和するための溶液が、予め入れられていてもよい。例えば、濃縮液回収容器1aには、5-50μlの0.2Nの硫酸溶液と、10-100μlのpH8.0の緩衝液とが、予め入れられていてもよい。
【0042】
以上のように、図9乃至図11を参照して説明した処理により設備1で陰電荷膜法を行うことで、試料水中のウイルスを濃縮液回収容器1aに精製することができる。
【0043】
上記のような陰電荷膜法などを用いて精製された微生物の濃縮液は回収され、PCRに基づくアッセイとして、水生環境における微生物の定性的又は定量的な測定に用いられる。このとき、濃縮液を精製するための微生物の濃縮プロセスにおいて、PCRを阻害して微生物の測定に不正確な定量化をもたらす可能性のある阻害物質も濃縮される。例えば、微生物の濃縮プロセスにおいて濃縮された阻害物質を除去することでより正確な定量化をもたらす方法が従来から知られている。
【0044】
しかしながら、例えば、浄水場、下水処理場、水再生施設、及び海水淡水化施設などを含む水処理インフラにおいて、プロセス処理水中の阻害物質の量は一日の内に大きく変動したり、異なる日ごとに大きく変動したりする。阻害物質を除去することを前提とした水処理プロセスでは、阻害物質の除去プロセスが必ずしも必要ではない場合にまで除去プロセスが過剰に実行されてしまう。これにより、不必要なコストが生じていた。加えて、除去プロセスにおける過剰な試薬の使用に起因して不必要なコストが生じていた。加えて、プロセス処理水中の阻害物質の量の変動は大きく、除去プロセスにおいて阻害物質の量に応じて除去方法を最適化しなければ除去効果が向上しないこともあり得る。
【0045】
以下では、これらの問題を解決可能な水処理方法、制御装置10、及び水処理システム100について説明する。
【0046】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態に係る水処理システム100の概略構成図である。図1を参照しながら、第1実施形態に係る水処理システム100の構成及び機能について主に説明する。図1において、各構成要素を結合する実線矢印は、流体の流れを示す。制御装置10を起点とする破線矢印は、信号の流れを示す。
【0047】
水処理システム100は、水処理システム100における水処理プロセスを制御する制御装置10を有する。水処理システム100は、試料水中の微生物を濃縮して濃縮液を精製する濃縮装置20と、濃縮装置20によって精製された濃縮液から阻害物質を除去する除去装置30と、濃縮液に含まれる微生物を測定する測定装置40と、を有する。本明細書において、「阻害物質」は、例えばフミン様物質を含む。
【0048】
第1実施形態では、制御装置10は濃縮装置20の下流側に配置される。上流から下流に向けて、濃縮装置20、制御装置10、除去装置30、及び測定装置40の順に各装置が配置される。水処理システム100では、制御装置10と測定装置40との間で、流体の流れが2つの第1経路100a及び第2経路100bに分岐し、分岐した2つの流れが再度合流する。水処理システム100は、第1経路100aにおいて制御装置10と除去装置30との間に配置される第1電磁弁100cと、第2経路100bにおいて制御装置10と測定装置40との間に配置される第2電磁弁100dと、を有する。
【0049】
濃縮装置20は、例えば図8乃至図11を用いて説明した設備1に基づいて構成されてもよい。濃縮装置20は、例えば試料水供給口6から取得した試料水中の微生物を濃縮して濃縮液を精製する。
【0050】
図2は、図1の制御装置10の概略構成を示す機能ブロック図である。図2を参照しながら、図1の制御装置10の構成及び機能について主に説明する。制御装置10は、センサ部11、演算部12、及び制御部13を有する。
【0051】
センサ部11は、濃縮装置20により試料水中の微生物を濃縮して精製された濃縮液に含まれる阻害物質を検出する。例えば、センサ部11は、濃縮装置20の濃縮液回収容器1aにより回収された濃縮液の少なくとも一部をサンプルとして検出対象とする。センサ部11は、例えば阻害物質を検出可能な任意のセンサ素子、センサモジュール、又はセンサ装置を含む。センサ部11は、阻害物質の検出の有無を検出信号として制御部13に出力する。これに限定されず、センサ部11は、演算部12が後述の阻害物質の指標値を算出するために必要となる情報を検出信号として演算部12に出力してもよい。
【0052】
演算部12は、センサ部11により検出された検出信号に基づいて阻害物質の指標値を算出する。演算部12は、阻害物質の指標値を算出可能な任意の演算素子又は演算モジュールを含む。本明細書において、「阻害物質の指標値」は、例えば阻害物質の量を含む。阻害物質がフミン様物質である場合、阻害物質の指標値としてフミン様物質を定量的に測定するための方法は、例えば元素分析、赤外吸収スペクトル、紫外・可視吸光分析、蛍光分析、サイズ排除クロマトグラフィー、及び核磁気共鳴(NMR)分析などを含む。
【0053】
阻害物質の指標値は、阻害物質の量のような直接的なものに代えて、又は加えて、サンプルのフローサイト粒子、濁度、色度、化学的酸素要求量(COD)、生物化学的酸素要求量(BOD)、全有機炭素(TOC)、溶存酸素量(DO)、浮遊物質(SS)、クロロフィル濃度、全窒素(T-N)、全リン(T-P)、有機性汚濁物質濃度(紫外吸収分析)、及びアデノシン三リン酸(ATP)など間接的なものを含んでもよい。
【0054】
例えば、阻害物質の指標値がフローサイト粒子を含むとき、センサ部11はフローイメージング装置を含む。例えば、阻害物質の指標値が濁度を含むとき、センサ部11は比濁センサ及び吸光センサなどを含む。例えば、阻害物質の指標値が色度を含むとき、センサ部11は透過光方式の色度計を含む。例えば、阻害物質の指標値がCODを含むとき、センサ部11はCOD分析計を含む。例えば、阻害物質の指標値がBODを含むとき、センサ部11はBOD測定器及びバイオセンサ式迅速BOD測定器などを含む。
【0055】
例えば、阻害物質の指標値がTOCを含むとき、センサ部11はTOC計を含む。例えば、阻害物質の指標値がDOを含むとき、センサ部11は光学式のDO計を含む。例えば、阻害物質の指標値がSSを含むとき、センサ部11は後方散乱光方式又は透過光方式のSSセンサを含む。例えば、阻害物質の指標値がクロロフィル濃度を含むとき、センサ部11は蛍光クロロフィルセンサを含む。例えば、阻害物質の指標値がT-Nを含むとき、センサ部11は、UV法、硫酸ヒドラジン還元法、及び銅・カドミウム還元法などに基づく装置、並びに自動定量装置などを含む。
【0056】
例えば、阻害物質の指標値がT-Pを含むとき、センサ部11は、加熱濃縮法及び溶媒抽出法などに基づく装置、並びに自動定量装置などを含む。例えば、阻害物質の指標値が有機性汚濁物質濃度(紫外吸収分析)を含むとき、センサ部11はUV計を含む。例えば、阻害物質の指標値がATPを含むとき、センサ部11はATP測定器を含む。
【0057】
制御部13は、1つ以上のプロセッサを含む。一実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。制御部13は、制御装置10を構成する各構成部と通信可能に接続され、制御装置10全体の動作を制御する。制御部13は、センサ部11による検出結果に基づいて濃縮液から阻害物質を除去するか否かを判定する。
【0058】
例えば、制御部13は、センサ部11から直接的に取得した阻害物質の検出の有無を示す検出信号に基づいて阻害物質が検出されたか否かを判定して濃縮液から阻害物質を除去するか否かを判定してもよい。例えば、制御部13は、阻害物質が検出されたと判定することで濃縮液から阻害物質を除去すると判定してもよい。
【0059】
例えば、制御部13は、演算部12により算出された阻害物質の指標値が閾値に達したか否かを判定して濃縮液から阻害物質を除去するか否かを判定してもよい。例えば、制御部13は、阻害物質の指標値が閾値に達したと判定することで濃縮液から阻害物質を除去すると判定してもよい。
【0060】
制御部13は、サンプリングに合わせたタイミングで阻害物質の測定を必要とし、リアルタイムによる常時モニタリング又は数分から数時間の測定時間による連続的な監視を実行してもよい。制御部13は、連続的な監視により阻害物質の除去の要否をサンプリングごとに判断してもよい。制御部13は、連続的な監視により日内変動、日間変動、週間変動、月間変動、及び季節性変動などによって阻害物質の除去の要否を判断してもよい。
【0061】
阻害物質の除去の判断の基準となる上記の阻害物質の指標値の閾値は、水処理インフラの処理施設ごとに異なって設定されてもよい。例えば、既設の処理施設であり、かつ阻害物質の指標値が阻害物質の量以外である場合、システムの稼働中に取得した阻害物質の指標値の参照値と阻害物質の量との相関を算出し、相関が高い阻害物質の指標値が閾値として選択されてもよい。例えば、既設の処理施設である場合、システムの稼働中に取得した阻害物質の指標値から日内変動、日間変動、週間変動、月間変動、及び季節性変動などの平均値をあらかじめ算出し、平均値からの変動値から閾値が設定されてもよい。
【0062】
変動値は、システムの稼働中に取得した阻害物質の指標値から日内変動、日間変動、週間変動、月間変動、及び季節性変動などの平均値と標準偏差σとをあらかじめ算出し、標準偏差から平均値の信頼区間を設定し信頼区間を超える値を有意差有りとして閾値とすることができる。変動値は、システムの稼働中に取得した阻害物質の指標値の対数から日内変動、日間変動、週間変動、月間変動、及び季節性変動などの平均値と標準偏差σとをあらかじめ算出し、標準偏差から平均値の信頼区間を設定し信頼区間を超える値を有意差有りとして閾値とすることができる。
【0063】
信頼区間は、任意に設定可能であるが、平均値の95%から外れる値を異常値とする場合、平均値に1.96σを足した値に基づいて設定される。信頼区間は、平均値の99%から外れる値を異常値とする場合、平均値に2.33σを足した値に基づいて設定される。
【0064】
閾値は、信頼区間として設定せずに降雨状況などの環境要因で高値を示した経験値から設定されてもよい。上記の変動値は、システムの稼働中に取得した阻害物質の指標値を常に閾値算出にフィードバックするように機械学習などに組み込まれてもよい。閾値は、1つの指標値の閾値とはせずに、複数の指標値の主成分回帰分析及びクラシフィケーションなどの多変量解析、ニューラルネットワーク、並びに機械学習などによって得られた結果に基づいてもよい。この場合も閾値算出に常にデータがフィードバックされてもよい。
【0065】
その他にも、閾値は、外れ値を検定するスミルノフ・グラブス検定及び四分位範囲の利用などを含む外れ値検出の統計的手法を用いて設定されてもよい。
【0066】
制御部13は、濃縮液から阻害物質を除去すると判定すると、測定装置40による微生物の測定前に濃縮液が除去装置30を通過するように水処理システム100における水処理プロセスを制御する。例えば、図1を参照すると、2つの第1電磁弁100c及び第2電磁弁100dはあらかじめ閉状態である。制御部13は、濃縮液から阻害物質を除去すると判定すると、第1電磁弁100cを開状態にする制御信号を第1電磁弁100cに出力する。これにより、第2電磁弁100dが閉状態のまま、第1電磁弁100cが開状態となる。一方で、制御部13は、濃縮液から阻害物質を除去しないと判定すると、第2電磁弁100dを開状態にする制御信号を第2電磁弁100dに出力する。これにより、第1電磁弁100cが閉状態のまま、第2電磁弁100dが開状態となる。
【0067】
制御部13は、除去装置30が阻害物質の指標値に応じて濃縮液から阻害物質を除去する除去方法を最適化するために、演算部12により算出された阻害物質の指標値に関する情報を除去装置30に出力してもよい。これに限定されず、制御部13は、演算部12により算出された阻害物質の指標値に応じて除去装置30に除去方法を最適化させるための制御信号を除去装置30に出力してもよい。
【0068】
除去装置30は、濃縮装置20によって精製された濃縮液から阻害物質を除去することが可能な任意の装置を含む。除去装置30では、例えば阻害物質がフミン様物質である場合、その除去のために陰イオン交換樹脂、ゲルろ過、フェリハイドレート、及び疎水性樹脂(DAX-8)などを使用する除去方法が用いられてもよい。
【0069】
陰イオン交換樹脂を用いたフミン様物質の除去は、強陰イオン交換樹脂と弱イオン交換樹脂とを一定量サンプルに混合し、室温でインキュベートした後、遠心ろ過ユニットにより処理してろ液を回収することで行われる。陰イオン交換樹脂にフミン様物質を吸着させてろ過ユニットのフィルタなどにより阻害物質が除去される。
【0070】
ゲルろ過を用いたフミン様物質の除去は、遠心ゲルろ過ユニットによりサンプルを処理してろ液を回収することで行われる。対象微生物とフミン様物質とのサイズ排除により阻害物質が除去される。
【0071】
フェリハイドレートを用いたフミン様物質の除去は、フェリハイドレートを一定量サンプルに混合し室温でインキュベートした後、遠心ろ過ユニットにより処理してろ液を回収することで行われる。フェリハイドレートをフミン様物質の凝集剤として用いてろ過ユニットのフィルタなどにより阻害物質が除去される。
【0072】
疎水性樹脂(DAX-8)を用いたフミン様物質の除去は、疎水性樹脂(DAX-8)を一定量サンプルに混合し、室温でインキュベートした後、遠心ろ過ユニットにより処理してろ液を回収することで行われる。樹脂に残った微生物を回収するために、処理後の樹脂に適宜溶解バッファが使用されて再び遠心ろ過ユニットにより微生物が回収されてもよい。疎水性樹脂(DAX-8)にフミン様物質を吸着させてろ過ユニットのフィルタなどにより阻害物質が除去される。
【0073】
除去装置30では、上記のような阻害物質の除去方法のうち同一の方法が複数回繰り返されてもよいし、又は異なる方法が多段に実行されてもよい。また、除去装置30は、微生物の核酸などを含む生体分子の抽出に与える影響は取り除けないが生体分子抽出後に阻害物質の除去方法を実行してもよい。除去装置30は、阻害物質の除去方法を一度実行した後にサンプルから生体分子抽出を行い、その後に再度阻害物質の除去方法を実行してもよい。
【0074】
測定装置40は、濃縮液に含まれる微生物を測定可能な任意の装置を含む。測定装置40は、濃縮装置20による微生物濃縮又は除去装置30による阻害物質の除去の後段でサンプル中の微生物の検出、並びに定性的及び定量的な測定に用いられる。微生物の検出、並びに定性的及び定量的な測定に用いられる方法は、培養法、ATP測定、カタラーゼ測定、CO2測定、MALDI-TOF-MS同定法、qPCR、LAMP法、DNA塩基配列解析法、DNAマイクロアレイ法、イムノクロマト法、キャピラリー電気泳動、染色法、蛍光法、酵素法、電気インピーダンス法、及びマイクロコロニー検出法などを含む。
【0075】
測定装置40は、標識抗体法などの方法を実行してもよい。測定装置40は、例えば、組織又は細胞内の特定の染色体又は遺伝子の発現を、蛍光物質を用いて蛍光測定する蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法を実行してもよい。この他にも、測定装置40は、ユーロピウムなどの蛍光発光物質を標識として抗原抗体反応を測定する蛍光免疫測定(FIA)法、抗原となる病原体などに蛍光物質をラベルした血清(抗体)反応を測定する間接蛍光抗体(IFA)法、酵素免疫測定(ELISA)法、ラテックス凝集法、及び抗体価測定法などの方法を実行してもよい。
【0076】
例えば阻害物質がフミン様物質である場合、フミン様物質の酵素反応の阻害が起きやすい測定方法として、qPCR及びLAMP法が挙げられる。qPCR及びLAMP法において遺伝子増幅のスタートとなるRNAの逆転写反応にも阻害の影響が大きいとされている。フミン様物質は、核酸抽出、RNAの親水性画分などへの分離、及びたんぱく質除去などに対してもアーチファクトとなる可能性がある。
【0077】
図3は、本開示の第1実施形態に係る水処理方法を説明するためのフローチャートである。図3を参照しながら、図1の水処理システム100を用いて実行される第1実施形態に係る水処理方法について主に説明する。
【0078】
ステップS100では、試料水中の微生物を濃縮して濃縮液を精製する濃縮ステップが濃縮装置20により実行される。
【0079】
ステップS101では、ステップS100において精製された濃縮液に含まれる阻害物質を検出する検出ステップが制御装置10により実行される。
【0080】
ステップS102では、ステップS101の検出ステップにおける検出結果に基づいて除去ステップを実行するか否かを判定する判定ステップが制御装置10により実行される。水処理システム100は、ステップS102において除去ステップを実行すると判定するとステップS103の処理を実行する。水処理システム100は、ステップS102において除去ステップを実行しないと判定するとステップS104の処理を実行する。
【0081】
ステップS103では、ステップS102の判定ステップにおいて実行すると判定すると濃縮液から阻害物質を除去する除去ステップが除去装置30により実行される。
【0082】
ステップS104では、ステップS102の判定ステップ又はステップS103の除去ステップの後に実行され、濃縮液に含まれる微生物を測定する測定ステップが測定装置40により実行される。
【0083】
第1実施形態に係る水処理方法では、制御装置10による検出ステップは、濃縮装置20による濃縮ステップの後に実行される。すなわち、検出ステップにおいて、濃縮装置20により精製された濃縮液に含まれる阻害物質が検出される。
【0084】
制御装置10による判定ステップにおいて、例えば阻害物質が検出されたか否かが判定されてもよい。水処理システム100は、このような判定ステップにおいて阻害物質が検出されたと判定すると除去ステップを実行してもよい。制御装置10による判定ステップにおいて、例えば阻害物質の指標値があらかじめ設定された閾値に達したか否かが判定されてもよい。水処理システム100は、このような判定ステップにおいて阻害物質の指標値が閾値に達したと判定すると除去ステップを実行してもよい。
【0085】
除去装置30による除去ステップにおいて、濃縮液から阻害物質を除去する除去方法が阻害物質の指標値に応じて最適化されてもよい。例えば、除去装置30は、定量的な阻害物質の指標値に応じて、上述した阻害物質の除去方法において実行すべき方法の種類、数、回数、順序、及び実行時間などの条件を適切に決定してもよい。これらに限定されず、除去装置30は、阻害物質の除去方法に使用される試薬量を定量的な阻害物質の指標値に応じて適切に決定してもよい。
【0086】
以上のような第1実施形態によれば、水処理プロセスにおける不必要なコストを抑制可能である。例えば、水処理システム100の制御装置10は、上述した判定ステップを実行することで、阻害物質の除去ステップが必ずしも必要ではない場合に、除去ステップの過剰な実行を抑制可能である。例えば、水処理システム100は、制御装置10が阻害物質を検出していない場合には、コストが発生する不要な除去ステップを実行しないこともできる。例えば、水処理システム100は、阻害物質の指標値があらかじめ設定された閾値に達していないと制御装置10が判定した場合には、コストが発生する不要な除去ステップを実行しないこともできる。
【0087】
水処理システム100の制御装置10は、上述した判定ステップにおいて阻害物質の指標値が閾値に達したか否かを判定することで、正確に定量化された客観的な指標値に基づいて除去ステップを実行するか否かを精度良く判定することができる。水処理システム100は、阻害物質の指標値に応じて異なる2つの水処理プロセスを正確に切り替えることが可能である。これにより、水処理システム100のシステムとしての信頼性が向上し、水処理システム100を利用するユーザの利便性も向上する。
【0088】
水処理システム100の除去装置30は、上述した除去ステップにおいて、阻害物質の指標値に応じて濃縮液から阻害物質を除去する除去方法を最適化することで、水処理プロセスにおけるコストをさらに抑制可能である。例えば、除去装置30は、阻害物質の量に応じて除去方法を変更したり、又は試薬量などの他の条件を適切に決定したりすることでコストを低減可能である。加えて、制御装置10を用いて把握された阻害物質の指標値に応じて最適化された除去ステップが実行されるので、阻害物質の除去効果の信頼性が向上する。結果として、後段の微生物の測定ステップにおける測定の信頼性も向上する。
【0089】
水処理システム100は、濃縮ステップの後に検出ステップを実行することで、後段の微生物の測定ステップにおいて用いられる濃縮液に対して直接的に阻害物質の有無又は指標値を判定することができる。水処理システム100は、後段の微生物の測定ステップにおいて用いられる濃縮液の阻害物質の状態を直接的に反映したサンプルに基づいて、上述した制御装置10による判定ステップを実行することができる。
【0090】
水処理システム100は、サンプルが希少である場合、サンプルを希釈して阻害物質の検出ステップを実行することも可能である。水処理システム100は、検出ステップの対象となるサンプルを後段の微生物の測定ステップにおいても用いるために、検出ステップにおいて非汚染的な阻害物質の検出方法を実行することもできる。
【0091】
(第2実施形態)
図4は、本開示の第2実施形態に係る水処理システム100の概略構成図である。図4を参照しながら、第2実施形態に係る水処理システム100の構成及び機能について主に説明する。図4において、各構成要素を結合する実線矢印は、流体の流れを示す。制御装置10を起点とする破線矢印は、信号の流れを示す。
【0092】
第2実施形態に係る水処理システム100は、制御装置10が濃縮装置20の上流側に配置される点で第1実施形態と相違する。その他の構成、機能、効果、及び変形例などについては、第1実施形態と同様であり、対応する説明が第2実施形態に係る水処理システム100においても当てはまる。以下では、第1実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0093】
第2実施形態では、制御装置10は濃縮装置20の上流側に配置される。上流から下流に向けて、制御装置10、濃縮装置20、除去装置30、及び測定装置40の順に各装置が配置される。制御装置10のセンサ部11は、濃縮装置20により濃縮液として精製される前の試料水に含まれる阻害物質を検出する。例えば、センサ部11は、試料水供給口6において採水された試料水の少なくとも一部をサンプルとして検出対象とする。
【0094】
図5は、本開示の第2実施形態に係る水処理方法を説明するためのフローチャートである。図5を参照しながら、図4の水処理システム100を用いて実行される第2実施形態に係る水処理方法について主に説明する。
【0095】
ステップS200では、試料水供給口6において採水された試料水に含まれる阻害物質を検出する検出ステップが制御装置10により実行される。
【0096】
ステップS201では、ステップS200の検出ステップにおける検出結果に基づいて除去ステップを実行するか否かを判定する判定ステップが制御装置10により実行される。水処理システム100は、ステップS201において除去ステップを実行すると判定するとステップS203の処理を実行する。水処理システム100は、ステップS201において除去ステップを実行しないと判定するとステップS202の処理を実行する。
【0097】
ステップS202では、ステップS201において除去ステップを実行しないと判定すると、ステップS200において採水された試料水中の微生物を濃縮して濃縮液を精製する濃縮ステップが濃縮装置20により実行される。
【0098】
ステップS203では、ステップS201において除去ステップを実行すると判定すると、ステップS200において採水された試料水中の微生物を濃縮して濃縮液を精製する濃縮ステップが濃縮装置20により実行される。
【0099】
ステップS204では、ステップS201の判定ステップにおいて実行すると判定すると濃縮液から阻害物質を除去する除去ステップが除去装置30により実行される。
【0100】
ステップS205では、ステップS201の判定ステップ、より具体的にはステップS202の濃縮ステップ又はステップS204の除去ステップの後に実行され、濃縮液に含まれる微生物を測定する測定ステップが測定装置40により実行される。
【0101】
第2実施形態に係る水処理方法では、制御装置10による検出ステップは、濃縮装置20による濃縮ステップの前に実行される。すなわち、検出ステップにおいて、試料水供給口6において採水された試料水に含まれる阻害物質が検出される。
【0102】
以上のような第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。一方で、水処理システム100は、濃縮ステップの前に検出ステップを実行することで、微生物濃縮前のサンプルを阻害物質の検出に用いることができる。これにより、水処理システム100は、サンプル量を潤沢に確保でき、多量のサンプルが必要となる阻害物質の検出方法を実行することもできる。
【0103】
加えて、水処理システム100は、微生物濃縮前に阻害物質の指標値を算出することも可能であるため、算出された阻害物質の指標値に応じて濃縮ステップにおける微生物の濃縮率を変更することもできる。例えば、水処理システム100は、阻害物質の指標値が阻害物質の量以外である場合であって、阻害物質の指標値と阻害物質の量との相関が高いときに、阻害物質の指標値に応じて濃縮ステップにおける微生物の濃縮率を低下させた際に阻害物質の量が微生物の測定に与える影響を推定することもできる。これにより、水処理システム100は、このような影響を軽減するために、濃縮ステップにおける微生物の濃縮率を調整することができる。例えば、水処理システム100は、阻害物質の指標値が阻害物質の量以外である場合であって、阻害物質の指標値と微生物の量との相関が高いときに、阻害物質の指標値に応じて濃縮ステップにおける微生物の濃縮率を低下させた際に微生物の量が微生物測定の検出下限を下回らないか推定することもできる。これにより、水処理システム100は、微生物の量がこのような検出下限を下回らないように、濃縮ステップにおける微生物の濃縮率を調整することができる。
【0104】
図6は、図4の水処理システム100の変形例を示す概略構成図である。上記第2実施形態では、試料水は、試料水供給口6において採水されると説明したが、これに限定されない。制御装置10による検出ステップにおいて用いられるサンプルの採水点は、試料水供給口6よりも水処理インフラにおける水処理プロセスの上流に位置してもよい。例えば、制御装置10による検出ステップにおいて用いられるサンプルの採水点は、水処理インフラにおける水処理プロセスの最上流に位置してもよい。一方で、水処理インフラにおける下流の水処理プロセスの各工程に微生物の測定ステップに用いるためのサンプルの採水点が位置してもよい。
【0105】
水処理インフラにおける水処理プロセスの最上流の採水点での阻害物質の指標値に基づいて水処理プロセスの各工程の阻害物質の指標値が推定されてもよい。各工程又は全体の処理前後の阻害物質の指標値に基づいて、阻害物質の除去ステップの要否の判定処理又は除去方法の最適化処理が実行されてもよい。
【0106】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び改変を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成又は各ステップに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成又はステップを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0107】
例えば、本開示は、上述した水処理システム100の各機能を実現する処理内容を記述したプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得る。本開示の範囲には、これらも包含されると理解されたい。
【0108】
例えば、上述した各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0109】
例えば、上記実施形態では、図8に示すとおり、設備1は、配管5e側で流体を引き込むためにアスピレータ3を有すると説明したが、これに限定されない。設備1は、アスピレータ3に代えて、又は加えて、配管5e側で流体を引き込むために任意の送液ポンプ及び吸引ビンの少なくとも一方を有してもよい。一方で、設備1は、配管5f側で流体を引き込むために吸引ビン4を有すると説明したが、これに限定されない。設備1は、吸引ビン4に代えて、又は加えて、配管5f側で流体を引き込むために任意の送液ポンプ及びアスピレータの少なくとも一方を有してもよい。
【0110】
例えば、上記実施形態では、設備1は、減圧状態を作り出すことで陰電荷膜2に流体を供給すると説明したが、これに限定されない。例えば、設備1は、任意の送液ポンプにより加圧状態を作り出すことで陰電荷膜2に流体を供給してもよい。このとき、陰電荷膜2に供給された流体が流れる配管を選択的にするために、配管5e及び5fの両方に付加的に弁が設けられてもよい。
【0111】
例えば、上記実施形態では、演算部12が阻害物質の指標値を算出し、制御部13が濃縮液から阻害物質を除去するか否かを判定すると説明したが、これに限定されない。演算部12がこれらの処理をまとめて実行してもよい。逆に、制御部13がこれらの処理をまとめて実行してもよい。このとき、制御装置10は、演算部12を有さなくてもよい。
【0112】
例えば、水処理システム100は、上記第1実施形態及び第2実施形態において説明した水処理方法のうちいずれか一方のみを実行してもよいし、互いに組み合わせて実行してもよい。
【0113】
本開示の一実施形態に係る水処理方法では、水処理インフラなどのアプリケーションに応じて、阻害物質の検出点が複数個所に設置されてもよい。本開示の一実施形態に係る水処理方法は、水処理インフラにおける水処理プロセスの各工程又は全体の処理前後を採水点として実行可能である。
【0114】
阻害物質の指標値について、例えば河川引き込みなどにおいては天候などにより突発的な変動が起こることが知られている。したがって、水処理システム100は、定常的に阻害物質を検出しながら、後段の微生物の測定ステップへの影響を評価してもよい。制御装置10は、少なくとも1つの阻害物質の指標値を演算処理により常時算出してもよい。
【0115】
図7は、本開示の一実施形態に係る水処理システム100の濃縮装置20の変形例を示す概略構成図である。上記第1実施形態及び第2実施形態では、濃縮装置20による濃縮ステップは単一ステップであると説明したが、これに限定されない。濃縮装置20による濃縮ステップは、一次濃縮ステップと、一次濃縮ステップの後に実行される二次濃縮ステップと、を含んでもよい。これにより、大容量の試料水に対しても微生物を濃縮して濃縮液を精製することができる。
【0116】
このとき、設備1では、図8に示す構成が二段にわたって組み合わされてもよい。例えば一次濃縮ステップにより精製された一次濃縮液は、設備1のスターラー1bに回収されてもよい。このとき、スターラー1bは、二次濃縮側のアスピレータ3が減圧状態を作り出すことによって減圧状態となり、一次濃縮側のアルカリ性の水溶液を陰電荷膜2に供給して流体を引き込む。スターラー1bに回収された一次濃縮液は、二次濃縮側のアスピレータ3が減圧状態を作り出すことによって二次濃縮側に引き込まれる。例えば二次濃縮ステップにより精製された二次濃縮液は、設備1の濃縮液回収容器1aに回収されてもよい。
【0117】
一次濃縮側のアルカリ性の水溶液は、二次濃縮側のアスピレータ3を駆動することでスターラー1bに供給されると説明したが、これに限定されない。一次濃縮側のアルカリ性の水溶液は、例えば一次濃縮側の配管5fに付加的に配置された任意の送液ポンプの駆動に基づいてスターラー1bに供給されてもよい。このとき、スターラー1bへの一次濃縮液の回収が終了した後に、二次濃縮側のアスピレータ3が駆動されてもよい。
【0118】
制御装置10による検出ステップは、濃縮装置20による一次濃縮ステップの後に実行されてもよい。このとき、制御装置10による検出ステップにおいて、例えばスターラー1bに回収された一次濃縮液に含まれる阻害物質が検出されてもよい。除去装置30による除去ステップは、スターラー1bに回収された一次濃縮液及び濃縮液回収容器1aに回収された二次濃縮液の少なくとも一方に対して必要に応じて実行されてもよい。以上により、水処理システム100は、容量が希少となった二次濃縮後のサンプルをロスすることなく、阻害物質の検出ステップを実行して、阻害物質の除去ステップの要否を判定することができる。
【0119】
制御装置10による検出ステップは、濃縮装置20による二次濃縮ステップの後に実行されてもよい。このとき、制御装置10による検出ステップにおいて、例えば濃縮液回収容器1aに回収された二次濃縮液に含まれる阻害物質が検出されてもよい。これにより、水処理システム100は、後段の微生物の測定ステップにおいて用いられる二次濃縮液に対して直接的に阻害物質の有無又は指標値を判定することができる。水処理システム100は、後段の微生物の測定ステップにおいて用いられる二次濃縮液の阻害物質の状態を直接的に反映したサンプルに基づいて、上述した制御装置10による判定ステップを実行することができる。
【0120】
例えば、水処理システム100は、制御装置10による上記2つの検出ステップのうちいずれか一方のみを実行してもよいし、互いに組み合わせて実行してもよい。
【0121】
例えば、上述した一実施形態に係る水処理システム100において、阻害物質の除去ステップが実行されないままサンプルに対して微生物の測定ステップが実行されてもよい。そして、阻害物質の検出結果を後に確認して阻害物質が検出された場合に保管されていた当該サンプルに対して阻害物質の除去ステップが実行され、微生物の測定ステップが再度実行されてもよい。
【0122】
例えば、上述した一実施形態に係る水処理システム100に基づいて、微生物の生死に関わらず、その存在個体数に基づいて汚染状況及び除去実態が把握されてもよい。
【0123】
上述した水処理システム100は、多様な分野及び用途に用いることができる。例えば、水処理システム100は、浄水場、下水処理場、水再生施設、及び海水淡水化施設などを含む水処理インフラの水質管理及び処理性能を把握するために用いることができる。水処理システム100は、水処理インフラを構成する、凝集槽、沈殿槽、砂ろ過、精密ろ過膜、限外ろ過膜、逆浸透膜、オゾン接触槽、活性炭ろ過槽、UV照射槽、及び塩素剤を用いた消毒槽などの処理性能を把握するために用いることができる。水処理システム100は、例えば、河川、海洋、及び親水域などの環境調査における動態を把握するために、微粒子、コロイド分散系、及び微生物などの水質の検査に用いることができる。水処理システム100は、例えば、水域及び環境インフラを網羅する都市の微生物感染リスクを把握するために、微粒子、コロイド分散系、及び微生物などの水質の検査に用いることができる。水処理システム100は、飲料用又は加工食品の製造に使用される液体の質的リスク、安全把握、及び品質管理などを目的として、リスクを定量化したり、安全と判定できる閾値との比較検証を行ったりするために、微粒子、コロイド分散系、及び微生物などの水質の検査に用いることができる。水処理システム100は、医薬品の製造の品質管理に用いることができる。
【0124】
水処理システム100では、水道、食品、及び飲料水などを含む上記の様々な分野への応用を可能とするために、試料水の採水時間は可変であってもよい。採水のための採水ポートの形状は可変であってよく、着脱式の採水ポートが採用されてもよい。
【符号の説明】
【0125】
1 設備
1a 濃縮液回収容器
1b スターラー
2 陰電荷膜
3 アスピレータ
4 吸引ビン
5 配管
5a 第1配管
5b 第2配管
5c 第3配管
5d 配管
5e 配管
5f 配管
6 試料水供給口
7 酸性溶液収容タンク
8 アルカリ性溶液収容タンク
9a 弁
9b 弁
9c 弁
10 制御装置
11 センサ部
12 演算部
13 制御部
20 濃縮装置
30 除去装置
40 測定装置
100 水処理システム
100a 第1経路
100b 第2経路
100c 第1電磁弁
100d 第2電磁弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11