(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】液化二酸化炭素供給装置および超臨界流体装置
(51)【国際特許分類】
G01N 30/26 20060101AFI20230905BHJP
G01N 30/02 20060101ALI20230905BHJP
B01D 15/16 20060101ALI20230905BHJP
B01D 15/40 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
G01N30/26 E
G01N30/02 N
B01D15/16
B01D15/40
(21)【出願番号】P 2021525453
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2019023156
(87)【国際公開番号】W WO2020250317
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼良 智尋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 剛志
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/049744(WO,A1)
【文献】特開2016-173343(JP,A)
【文献】特開2012-220030(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03318829(EP,A1)
【文献】特開2010-101875(JP,A)
【文献】特表2011-525594(JP,A)
【文献】特開平07-083891(JP,A)
【文献】特表2014-517179(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0190183(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/02,30/26,
F28D 7/00,
C01B 32/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離カラムを含む超臨界流体装置に液化二酸化炭素を供給する液化二酸化炭素供給装置であって、
第1の冷媒が流れる第1の流路部と、
ポンプ部の上流に設けられ、液化二酸化炭素が流れる第2の流路部と、
冷凍サイクルが繰り返されるように前記第1の流路部を通して前記第1の冷媒を循環するコンプレッサと、
前記ポンプ部の上流に設けられ、
板金により形成された側面部、上面部および底面部を有し、前記第1の流路部と前記第2の流路部との間で熱交換を行い、前記第2の流路部を流れる液化二酸化炭素を冷却する熱交換器と、
前記第2の流路部を流れる液化二酸化炭素を前記分離カラムに供給する前記ポンプ部とを備える、液化二酸化炭素供給装置。
【請求項2】
前記熱交換器は、
前記第1の流路部の一部および前記第2の流路部の一部を収容する内部空間を有するブロック部と、
前記第1の流路部と前記第2の流路部との隙間を埋めるように前記ブロック部の前記内部空間に充填される金属材料とを含む、請求項1記載の液化二酸化炭素供給装置。
【請求項3】
分離カラムを含む超臨界流体装置に液化二酸化炭素を供給する液化二酸化炭素供給装置であって、
第1の冷媒が流れる第1の流路部と、
ポンプ部の上流に設けられ、液化二酸化炭素が流れる第2の流路部と、
冷凍サイクルが繰り返されるように前記第1の流路部を通して前記第1の冷媒を循環するコンプレッサと、
前記ポンプ部の上流に設けられ、前記第1の流路部と前記第2の流路部との間で熱交換を行い、前記第2の流路部を流れる液化二酸化炭素を冷却する熱交換器と、
前記第2の流路部を流れる液化二酸化炭素を前記分離カラムに供給する前記ポンプ部と、
前記第2の流路部を加熱する第1の加熱部
とを備える
、液化二酸化炭素供給装置。
【請求項4】
前記熱交換器および前記第1の加熱部よりも下流において、前記第2の流路部に取り付けられ、前記第2の流路部の温度を検出する第1の温度センサをさらに備える、請求項3記載の液化二酸化炭素供給装置。
【請求項5】
分離カラムを含む超臨界流体装置に液化二酸化炭素を供給する液化二酸化炭素供給装置であって、
第1の冷媒が流れる第1の流路部と、
ポンプ部の上流に設けられ、液化二酸化炭素が流れる第2の流路部と、
冷凍サイクルが繰り返されるように前記第1の流路部を通して前記第1の冷媒を循環するコンプレッサと、
前記ポンプ部の上流に設けられ、前記第1の流路部と前記第2の流路部との間で熱交換を行い、前記第2の流路部を流れる液化二酸化炭素を冷却する熱交換器と、
前記第2の流路部を流れる液化二酸化炭素を前記分離カラムに供給する前記ポンプ部と、
第2の冷媒が循環する第3の流路部
とを備え、
前記熱交換器は、前記第1の流路部と前記第3の流路部との間でさらに熱交換を行い、
前記ポンプ部は、前記第3の流路部の一部が取り付けられたポンプヘッドを含む
、液化二酸化炭素供給装置。
【請求項6】
前記第3の流路部を加熱する第2の加熱部をさらに備える、請求項5記載の液化二酸化炭素供給装置。
【請求項7】
前記ポンプヘッドの温度を検出する第2の温度センサをさらに備える、請求項6記載の液化二酸化炭素供給装置。
【請求項8】
分離カラムと、
前記分離カラムに液化二酸化炭素を供給する請求項4記載の液化二酸化炭素供給装置と、
前記液化二酸化炭素供給装置の前記第1の温度センサにより検出される温度が予め設定された温度になるように前記第1の加熱部の動作を制御する制御部とを備える、超臨界流体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化二酸化炭素供給装置および超臨界流体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超臨界流体クロマトグラフ(SFC)または超臨界流体抽出装置(SFE)等の超臨界流体装置においては、移動相として超臨界流体を用いて試料の分析または分取が行われる。例えば、特許文献1に記載されたSFCにおいては、液化二酸化炭素が移動相として送液ポンプにより移動相流路に供給される。また、試料注入部により移動相流路に試料が注入される。
【0003】
移動相および試料は、移動相流路に配置された分離カラムを通過する。ここで、移動相が少なくとも分離カラム内では超臨界状態となるように、移動相流路内の圧力が背圧弁により維持され、分離カラムの温度がカラムオーブンにより維持されている。試料は、分離カラムを通過することにより試料成分ごとに分離され、検出器により検出される。
【文献】特開2016-173343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超臨界流体抽出装置においては、二酸化炭素を液相に維持するために、二酸化炭素の流路が冷却される。液化二酸化炭素の容量が大きい場合には、一般に、チラーが流路の冷却に用いられる。しかしながら、チラーは比較的大型であり、かつ床に据え付けられることが多い。そのため、チラーの据付スペースが大きくなることにより、超臨界流体装置が大型化する。また、水等の冷媒を用いて間接的に配管を冷却するので、液化二酸化炭素の温度を安定的に制御することができない。この場合、液化二酸化炭素の密度が不安定になることに伴い、液化二酸化炭素の流量が不安定になる。
【0005】
本発明の目的は、大型化を抑制しつつ液化二酸化炭素を安定的な流量で供給することが可能な液化二酸化炭素供給装置および超臨界流体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に従う態様は、分離カラムを含む超臨界流体装置に液化二酸化炭素を供給する液化二酸化炭素供給装置であって、第1の冷媒が流れる第1の流路部と、ポンプ部の上流に設けられ、液化二酸化炭素が流れる第2の流路部と、冷凍サイクルが繰り返されるように前記第1の流路部を通して前記第1の冷媒を循環するコンプレッサと、前記ポンプ部の上流に設けられ、板金により形成された側面部、上面部および底面部を有し、前記第1の流路部と前記第2の流路部との間で熱交換を行い、前記第2の流路部を流れる液化二酸化炭素を冷却する熱交換器と、前記第2の流路部を流れる液化二酸化炭素を前記分離カラムに供給する前記ポンプ部とを備える、液化二酸化炭素供給装置に関する。
本発明の他の局面に従う態様は、分離カラムを含む超臨界流体装置に液化二酸化炭素を供給する液化二酸化炭素供給装置であって、第1の冷媒が流れる第1の流路部と、ポンプ部の上流に設けられ、液化二酸化炭素が流れる第2の流路部と、冷凍サイクルが繰り返されるように前記第1の流路部を通して前記第1の冷媒を循環するコンプレッサと、前記ポンプ部の上流に設けられ、前記第1の流路部と前記第2の流路部との間で熱交換を行い、前記第2の流路部を流れる液化二酸化炭素を冷却する熱交換器と、前記第2の流路部を流れる液化二酸化炭素を前記分離カラムに供給する前記ポンプ部と、前記第2の流路部を加熱する第1の加熱部とを備える、液化二酸化炭素供給装置に関する。
本発明のさらに他の局面に従う態様は、分離カラムを含む超臨界流体装置に液化二酸化炭素を供給する液化二酸化炭素供給装置であって、第1の冷媒が流れる第1の流路部と、ポンプ部の上流に設けられ、液化二酸化炭素が流れる第2の流路部と、冷凍サイクルが繰り返されるように前記第1の流路部を通して前記第1の冷媒を循環するコンプレッサと、前記ポンプ部の上流に設けられ、前記第1の流路部と前記第2の流路部との間で熱交換を行い、前記第2の流路部を流れる液化二酸化炭素を冷却する熱交換器と、前記第2の流路部を流れる液化二酸化炭素を前記分離カラムに供給する前記ポンプ部と、第2の冷媒が循環する第3の流路部とを備え、前記熱交換器は、前記第1の流路部と前記第3の流路部との間でさらに熱交換を行い、前記ポンプ部は、前記第3の流路部の一部が取り付けられたポンプヘッドを含む、液化二酸化炭素供給装置に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液化二酸化炭素供給装置および超臨界流体装置の大型化を抑制しつつ液化二酸化炭素を安定的な流量で供給することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は本発明の一実施の形態に係る超臨界流体装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は
図1の液化二酸化炭素供給装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)超臨界流体装置の構成
以下、本発明の実施の形態に係る
液化二酸化炭素供給装置および超臨界流体装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る超臨界流体装置の構成を示す図である。
図1に示すように、超臨界流体装置200は、超臨界流体クロマトグラフ(SFC)であり、液化二酸化炭素供給装置100、モディファイア供給装置110、混合部120、試料供給部130、分離カラム140、検出器150、背圧弁160および制御部170を備える。
【0010】
超臨界流体装置200には、ボトル201,202が設けられる。ボトル201には、例えば約5℃に冷却された液化二酸化炭素が移動相として貯留される。液化二酸化炭素供給装置100は、ボトル201に貯留された液化二酸化炭素を冷却しつつ圧送する。液化二酸化炭素供給装置100の詳細については後述する。
【0011】
ボトル202には、有機溶媒等のモディファイアが移動相として貯留される。モディファイア供給装置110は、例えば送液ポンプであり、ボトル202に貯留されたモディファイアを圧送する。混合部120は、例えばグラジエントミキサであり、液化二酸化炭素供給装置100およびモディファイア供給装置110によりそれぞれ圧送された移動相を予め定められた比で混合しつつ供給する。
【0012】
試料供給部130は、例えばインジェクタであり、分析対象の試料を混合部120により供給された移動相とともに分離カラム140に導入する。分離カラム140は、図示しないカラム恒温槽の内部に収容され、導入された移動相中の液化二酸化炭素が超臨界状態となるように、所定の温度(本例では約40℃)に加熱される。分離カラム140は、導入された試料を化学的性質または組成の違いにより成分ごとに分離する。
【0013】
検出器150は、例えば吸光度検出器であり、分離カラム140により分離された試料の成分を検出する。検出器150による検出結果は、例えば各成分の保持時間と検出強度との関係を示す超臨界流体クロマトグラムの生成に用いられる。背圧弁160は、移動相中の液化二酸化炭素が少なくとも分離カラム140内で超臨界状態となるように、移動相の流路の圧力を二酸化炭素の臨界圧力以上(例えば8MPa)に維持する。
【0014】
制御部170は、CPU(中央演算処理装置)およびメモリ、またはマイクロコンピュータ等を含み、液化二酸化炭素供給装置100、モディファイア供給装置110、混合部120、試料供給部130、分離カラム140(カラム恒温槽)、検出器150および背圧弁160の各々の動作を制御する。また、背圧弁160の下流にフラクションコレクタ等の分取装置が設けられる場合には、制御部170は、検出器150による検出結果に基づいて分取装置の動作をさらに制御する。なお、制御部170は、背圧弁160に設けられてもよい。
【0015】
(2)液化二酸化炭素供給装置の構成
図2は、
図1の液化二酸化炭素供給装置100の構成を示す図である。
図2に示すように、液化二酸化炭素供給装置100は、冷却部10およびポンプ部20を備える。また、液化二酸化炭素供給装置100には、流路部1,2,3が設けられる。流路部1~3の各々は、例えば配管である。流路部1~3は、それぞれ第1~第3の流路部の例である。以下の説明では、流路部2,3において、液化二酸化炭素または冷媒が流れる方向を下流方向と定義し、その反対方向を上流方向と定義する。
【0016】
冷却部10は、熱交換器11、コンプレッサ12、貯留部13および送液部14を含む。熱交換器11は、ブロック部11aおよび金属材料11bを含む。ブロック部11aは、板金により形成された4つの側面部、上面部および底面部により構成され、直方体形状を有する。ブロック部11aの内部には、流路部1,2,3の各々の一部が収容される。金属材料11bは、例えば錫を含み、溶融された状態でブロック部11aの内部に充填される。これにより、ブロック部11a内において、流路部1,2,3間の隙間が金属材料11bにより埋められる。
【0017】
流路部1の両端部は、ブロック部11aから引き出され、コンプレッサ12に接続される。コンプレッサ12は、冷凍サイクルが繰り返されるように、フルオロカーボン407C(R-407C)等の冷媒を、流路部1を通して循環させる。これにより、ブロック部11a内が冷却される。なお、本例では、流路部1はブロック部11a内においてコイル状に巻回された状態で設けられる。そのため、十分に長い流路部1を用いる場合でも、ブロック部11aはコンパクトに維持される。したがって、十分に長い流路部1を用いることにより、ブロック部11a内を十分に冷却することができる。
【0018】
流路部2は、ボトル201と混合部120との間を接続する。流路部2には、上流から下流に向かって熱交換器11およびポンプ部20が介挿される。ブロック部11a内において、金属材料11bを介して流路部1と流路部2との間で熱交換が行われる。これにより、ボトル201から混合部120に供給される液化二酸化炭素が冷却される。なお、本例では、流路部2はブロック部11a内において蛇行するように設けられる。そのため、ブロック部11a内に設けられる流路部2の部分を長くすることができる。したがって、液化二酸化炭素を十分に冷却することができる。
【0019】
貯留部13には、例えばボトルであり、濃度60%のエチレングリコール等の冷媒が貯留される。送液部14は、例えばダイアフラムポンプであり、貯留部13に貯留された冷媒を、流路部3を通してポンプ部20に圧送する。送液部14とポンプ部20との間における流路部3の部分には、熱交換器11が介挿される。ブロック部11a内において、金属材料11bを介して流路部1と流路部3との間で熱交換が行われる。これにより、送液部14からポンプ部20に供給される冷媒が冷却される。ポンプ部20に供給された冷媒は、流路部3を通して貯留部13に戻される。
【0020】
本例では、ポンプ部20は並列プランジャ方式のポンプであり、2個のポンプヘッド21,22を含む。ポンプ部20において、流路部2は、主流路部2a,2bおよび分岐流路部2c,2dを含む。主流路部2a,2bは、冷却部10および混合部120にそれぞれ接続される。分岐流路部2c,2dは、主流路部2a,2b間を2つの流路に分岐するように並列に配置される。ポンプヘッド21,22は、分岐流路部2c,2dにそれぞれ介挿され、ボトル201に貯留された液化二酸化炭素を、冷却部10を通して混合部120に交互に圧送する。
【0021】
また、ポンプ部20において、流路部3は、主流路部3a,3bおよび分岐流路部3c,3dを含む。主流路部3a,3bは、冷却部10の熱交換器11および貯留部13にそれぞれ接続される。分岐流路部3c,3dは、主流路部3a,3b間を2つの流路に分岐するように並列に配置され、ポンプヘッド21,22の表面にそれぞれ取り付けられる。熱交換器11から主流路部3aを通して供給された冷媒は、分岐流路部3c,3dを流れる。これによりポンプヘッド21,22が冷却される。分岐流路部3c,3dを流れた冷媒は、主流路部3bを通して貯留部13に戻される。
【0022】
(3)制御部の動作
上記の冷却機構によれば、熱交換器11内において、流路部1が例えば約-30℃に冷却され、流路部2,3の各々が例えば約-10℃に冷却される。一方で、流路部2を流れる液化二酸化炭素の温度は、他の値(本例では約5℃)であることが好ましい。また、ポンプヘッド21,22の温度は、他の値(本例では約5℃)であることが好ましい。
【0023】
そこで、ブロック部11aから引き出された流路部2,3の下流部分にそれぞれ加熱部15,16が取り付けられる。加熱部15,16は、それぞれ第1および第2の加熱部の例である。また、加熱部15よりも下流において、流路部2の表面に温度センサ4が取り付けられる。さらに、ポンプヘッド21,22の表面に温度センサ5,6がそれぞれ取り付けられる。温度センサ4~6の各々は、例えばサーミスタを含む。温度センサ4は第1の温度センサの例であり、温度センサ5,6は第2の温度センサの例である。加熱部15,16の動作は、
図1の制御部170により独立して制御される。
【0024】
具体的には、加熱部15の動作は、温度センサ4により検出される温度が所望の温度になるように制御される。ここで、温度センサ4は、流路部2の表面に直接取り付けられるので、流路部2を流れる液化二酸化炭素の温度が流路部2の温度として正確に検出される。したがって、上記の制御により、流路部2を流れる液化二酸化炭素の温度を所望の温度に維持することができる。温度センサ4は、高い伝熱性を有する導電性テープまたは導電性接着剤により流路部2にそれぞれ固定されてもよい。この場合、流路部2の温度をより高い精度で検出することができる。
【0025】
同様に、加熱部16の動作は、温度センサ5,6により検出される温度が所望の温度になるように制御される。これにより、ポンプヘッド21,22の温度を所望の温度に維持することができる。なお、温度センサ5,6は、分岐流路部3c,3dの表面に直接取り付けられ、ポンプヘッド21,22の温度を分岐流路部3c,3dの温度としてそれぞれ検出してもよい。
【0026】
(4)効果
本実施の形態に係る超臨界流体装置200においては、流路部2を冷却するためにチラーを用いる必要がないので、液化二酸化炭素供給装置100の大型化が抑制される。この場合、液化二酸化炭素供給装置100を床に据え付けることなく、卓上に載置することが可能になる。したがって、超臨界流体装置200内に広いスペースを確保するとともに、省スペース化することができる。
【0027】
また、水等の冷媒を用いることなく流路部2を直接的に冷却することが可能になる。そのため、液化二酸化炭素の温度が安定になることにより、液化二酸化炭素の密度が安定になる。これらの結果、液化二酸化炭素供給装置100および超臨界流体装置200の大型化を抑制しつつ液化二酸化炭素を安定的な流量で供給することができる。
【0028】
また、温度センサ4により検出される温度に基づいて、加熱部15により流路部2が加熱される。ここで、温度センサ4は流路部2の表面に直接に取り付けられるので、流路部2の温度を、当該流路部2を流れる液化二酸化炭素の温度として高い精度で検出することが可能になる。そのため、液化二酸化炭素の温度を所望の温度に容易に調整することが可能になる。これにより、液化二酸化炭素をより安定的な流量で供給することができる。
【0029】
また、液化二酸化炭素の流量が小さい場合には、熱交換器11からポンプ部20までの流路部2の部分において、外気の影響により液化二酸化炭素の温度が変動しやすい。この場合でも、熱交換器11により流路部1と流路部3との間で熱交換が行われる。さらに、温度センサ5,6によりそれぞれ検出されるポンプヘッド21,22の温度に基づいて、流路部3の温度が所望の温度になるように加熱部16により調整される。これにより、流路部3を流れる冷媒を介してポンプヘッド21,22が所望の温度に冷却される。その結果、ポンプ部20により供給される液化二酸化炭素の温度をさらに安定にすることができる。
【0030】
(5)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、冷却部10はポンプ部20のポンプヘッド21,22を冷却可能に構成されるが、実施の形態はこれに限定されない。ポンプヘッド21,22の温度が十分に安定な場合、または他の温度調整装置によりポンプヘッド21,22の温度が調整される場合には、冷却部10はポンプ部20のポンプヘッド21,22を冷却可能に構成されなくてもよい。
【0031】
(b)上記実施の形態において、加熱部15はブロック部11aから引き出された流路部2の下流部分に取り付けられるが、実施の形態はこれに限定されない。加熱部15は、ブロック部11aから引き出された流路部2の上流部分に取り付けられてもよい。この場合でも、温度センサ4は、熱交換器11および加熱部15よりも下流において、流路部2に取り付けられる。
【0032】
同様に、加熱部16はブロック部11aから引き出された流路部3の下流部分に取り付けられるが、実施の形態はこれに限定されない。加熱部16は、ブロック部11aから引き出された流路部3の上流部分に取り付けられてもよい。
【0033】
また、熱交換器11により流路部2を流れる液化二酸化炭素が所望の温度に冷却される場合には、流路部2に加熱部15が取り付けられなくてもよい。熱交換器11によりポンプヘッド21,22が所望の温度に冷却される場合には、流路部3に加熱部16が取り付けられなくてもよい。
【0034】
(c)上記実施の形態において、超臨界流体装置200はSFCとして構成されるが、実施の形態はこれに限定されない。超臨界流体装置200は、超臨界流体抽出装置(SFE)として構成されてもよい。あるいは、超臨界流体装置200は、検出器150に代えて質量分析装置(MS)が設けられたSFC‐MSとして構成されてもよい。
【0035】
(6)態様
(第1項)一態様に係る液化二酸化炭素供給装置は、
分離カラムを含む超臨界流体装置に液化二酸化炭素を供給する液化二酸化炭素供給装置であって、
第1および第2の流路部と、
冷凍サイクルが繰り返されるように前記第1の流路部を通して第1の冷媒を循環するコンプレッサと、
前記第1の流路部と前記第2の流路部との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記第2の流路部を流れる液化二酸化炭素を前記分離カラムに供給するポンプ部とを備えてもよい。
【0036】
この液化二酸化炭素供給装置においては、冷凍サイクルが繰り返されるように第1の流路部を通して第1の冷媒がコンプレッサにより循環される。この場合、熱交換器において、第1の流路部と第2の流路部との間で熱交換が行われ、第2の流路部が冷却される。したがって、第2の流路部を流れる液化二酸化炭素が冷却される。第2の流路部において冷却された液化二酸化炭素は、ポンプ部により超臨界流体装置の分離カラムに供給される。
【0037】
この構成によれば、第2の流路部を冷却するためにチラーを用いる必要がないので、液化二酸化炭素供給装置の大型化が抑制される。また、水等の冷媒を用いることなく第2の流路部を直接的に冷却することが可能になる。そのため、液化二酸化炭素の温度が安定になることにより、液化二酸化炭素の密度が安定になる。これらの結果、液化二酸化炭素供給装置の大型化を抑制しつつ液化二酸化炭素を安定的な流量で供給することができる。
【0038】
(第2項)第1項に記載の液化二酸化炭素供給装置において、
前記熱交換器は、
前記第1の流路部の一部および前記第2の流路部の一部を収容する内部空間を有するブロック部と、
前記第1の流路部と前記第2の流路部との隙間を埋めるように前記ブロック部の前記内部空間に充填される金属材料とを含んでもよい。
【0039】
この場合、金属材料を介して第1の流路部と第2の流路部との間で効率よく熱交換を行うことができる。
【0040】
(第3項)第1または2項に記載の液化二酸化炭素供給装置において、
前記第2の流路部を加熱する第1の加熱部をさらに備えてもよい。
【0041】
この場合、第2の流路部を加熱することにより、第2の流路部の温度を容易に所望の温度に維持することができる。これにより、第2の流路部を流れる液化二酸化炭素の温度を所望の温度に維持することができる。
【0042】
(第4項)第3項に記載の液化二酸化炭素供給装置において、
前記熱交換器および前記第1の加熱部よりも下流において、前記第2の流路部に取り付けられ、前記第2の流路部の温度を検出する第1の温度センサをさらに備えてもよい。
【0043】
この場合、第1の温度センサは第2の流路部に取り付けられるので、第2の流路部の温度を、当該第2の流路部を流れる液化二酸化炭素の温度として高い精度で検出することが可能になる。そのため、検出された温度に基づいて、第2の流路部を流れる液化二酸化炭素の温度を第1の加熱部により容易に調整することが可能になる。これにより、液化二酸化炭素をより安定的な流量で供給することができる。
【0044】
(第5項)第1または2項に記載の液化二酸化炭素供給装置において、
第2の冷媒が循環する第3の流路部をさらに備え、
前記熱交換器は、前記第1の流路部と前記第3の流路部との間でさらに熱交換を行い、
前記ポンプ部は、前記第3の流路部の一部が取り付けられたポンプヘッドを含んでもよい。
【0045】
液化二酸化炭素の流量が小さい場合には、熱交換器からポンプ部までの第2の流路部の部分において、外気の影響により液化二酸化炭素の温度が変動しやすい。この場合でも、上記の構成によれば、第3の流路部によりポンプヘッドが冷却される。これにより、ポンプ部により供給される液化二酸化炭素の温度をさらに安定にすることができる。
【0046】
(第6項)第5項に記載の液化二酸化炭素供給装置において、
前記第3の流路部を加熱する第2の加熱部をさらに備えてもよい。
【0047】
この場合、第3の流路部を加熱することにより、第3の流路部の温度を容易に所望の温度に維持することができる。これにより、第3の流路部を流れる第2の冷媒を介してポンプヘッドの温度を所望の温度に維持することができる。その結果、ポンプ部により供給される液化二酸化炭素の温度を所望の温度に維持にすることができる。
【0048】
(第7項)第6項に記載の液化二酸化炭素供給装置において、
前記ポンプヘッドの温度を検出する第2の温度センサをさらに備えてもよい。
【0049】
この場合、第2の温度センサにより検出された温度に基づいて、第3の流路部の温度を第2の加熱部により容易に調整することができる。
【0050】
(第8項)他の態様に係る超臨界流体装置は、
分離カラムと、
前記分離カラムに液化二酸化炭素を供給する請求項4項に記載の液化二酸化炭素供給装置と、
前記液化二酸化炭素供給装置の前記第1の温度センサにより検出される温度が予め設定された温度になるように前記第1の加熱部の動作を制御する制御部とを備えてもよい。
【0051】
この超臨界流体装置においては、上記の液化二酸化炭素供給装置の第1の温度センサにより検出される温度が予め設定された温度になるように、第1の加熱部の動作が制御部により制御される。これにより、第2の流路部を流れる液化二酸化炭素の温度が所望の温度に維持される。この構成によれば、液化二酸化炭素供給装置の大型化を抑制しつつ液化二酸化炭素をより安定的な流量で分離カラムに供給することができる。