(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/38 20060101AFI20230905BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20230905BHJP
H01Q 21/08 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
H01Q1/38
H01Q13/08
H01Q21/08
(21)【出願番号】P 2021574509
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2020046241
(87)【国際公開番号】W WO2021153035
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2020013710
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郷地 直樹
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-216361(JP,A)
【文献】特開2006-080609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/38
H01Q 13/08
H01Q 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向を偏波方向とする電波を放射する板状の第1放射素子と、
前記第1放射素子が形成される誘電体基板とを備え、
前記第1放射素子における前記第1方向の端部を通り、かつ前記第1方向と直交する平面を第1境界面とし、前記第1放射素子における前記第1方向と直交する第2方向の端部を通り、かつ前記第2方向と直交する平面を第2境界面としたとき、
前記誘電体基板において、
前記第1放射素子に対して前記第1境界面の外側かつ前記第2境界面の外側の領域である調整領域には、前記調整領域以外の領域である非調整領域の実効誘電率とは異なる実効誘電率を有する特定領域が含まれる、アンテナ装置。
【請求項2】
前記特定領域の実効誘電率は、前記非調整領域の実効誘電率よりも小さい、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記特定領域の誘電体の厚さは、前記非調整領域の誘電体の厚さよりも小さい、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記特定領域の誘電体の厚さは、前記非調整領域の誘電体の厚さよりも大きい、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記アンテナ装置は、前記誘電体基板に、前記第1放射素子に対して所定間隔を隔てて並べて配置される第2放射素子を備え、
前記特定領域は、前記第1放射素子の前記調整領域と、前記第2放射素子の前記調整領域とが重なる部分に配置される、請求項1~4のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記特定領域の誘電体は、前記非調整領域の誘電体よりも前記誘電体基板の面内方向に突出する突出部を有する、請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記アンテナ装置は、前記特定領域の誘電体における前記突出部に配置される部品をさらに備える、請求項6に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記特定領域の誘電体における前記突出部は、曲げられた状態で他の誘電体基板に接続される、請求項6に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記他の誘電体基板には、第3放射素子が配置される、請求項8に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記特定領域ではない領域の誘電体は、前記特定領域の誘電体よりも前記誘電体基板の面内方向に突出する突出部を有する、請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記アンテナ装置は、前記特定領域ではない領域の誘電体における前記突出部に配置される部品をさらに備える、請求項10に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
前記特定領域ではない領域の誘電体における前記突出部は、曲げられた状態で他の誘電体基板に接続される、請求項10に記載のアンテナ装置。
【請求項13】
前記他の誘電体基板には、第3放射素子が配置される、請求項12に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射素子と、接地電極と、放射素子および接地電極が形成される誘電体基板とを備えるアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2016/067969号公報(特許文献1)には、各々が板状の形状を有する複数の放射素子と、接地電極と、複数の放射素子および接地電極が形成される誘電体基板とを備えるアンテナが開示されている。このアンテナにおいては、複数の放射素子が誘電体基板に所定間隔を隔てて並べて配列されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、アンテナから放射される電波には、出力目標となる周波数である基本周波数を有する基本波に加えて、基本周波数の整数倍に近い周波数を有する高調波が含まれている。アンテナから電波を放射する際には、基本波の特性を維持しつつ、高調波が周囲に与える影響を極力抑えたいというニーズがある。しかしながら、国際公開第2016/067969号公報には、そのようなニーズを満たす構成について何ら言及されていない。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、アンテナの基本波の特性を維持しつつ高調波の特性を調整することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によるアンテナ装置は、第1方向を偏波方向とする電波を放射する板状の第1放射素子と、第1放射素子が形成される誘電体基板とを備える。第1放射素子における第1方向の端部を通り、かつ第1方向と直交する平面を第1境界面とし、第1放射素子における第1方向と直交する第2方向の端部を通り、かつ第2方向と直交する平面を第2境界面としたとき、誘電体基板において、第1放射素子に対して第1境界面の外側かつ第2境界面の外側の領域である調整領域には、調整領域以外の領域である非調整領域の実効誘電率とは異なる実効誘電率を有する特定領域が含まれる。
【0007】
本開示による他のアンテナ装置は、第1方向を偏波方向とする電波を放射する板状の第1放射素子と、第1放射素子が形成される誘電体基板とを備える。第1放射素子における第1方向の端部を通り、かつ第1方向と直交する平面を第1境界面とし、第1放射素子における第1方向と直交する第2方向の端部を通り、かつ第2方向と直交する平面を第2境界面としたとき、誘電体基板において、第1放射素子に対して第1境界面の外側かつ第2境界面の外側の領域である調整領域には、調整領域以外の領域である非調整領域の誘電体の厚さよりも小さい厚さを有する特定領域が含まれる。
【0008】
本開示による他のアンテナ装置は、板状の放射素子と、放射素子が形成される誘電体基板とを備える。放射素子は、放射素子の面中心からオフセットした位置に配置される給電点を有する。放射素子の面中心と給電点とを結ぶ仮想線に沿う方向を第1方向とし、放射素子における第1方向の端部を通り、かつ第1方向と直交する平面を第1境界面とし、放射素子における第1方向と直交する第2方向の端部を通り、かつ第2方向と直交する平面を第2境界面としたとき、誘電体基板において、放射素子に対して第1境界面の外側かつ第2境界面の外側の領域である調整領域には、調整領域以外の領域である非調整領域の実効誘電率とは異なる実効誘電率を有する特定領域が含まれる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、アンテナの基本波の特性を維持しつつ高調波の特性を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】アンテナ装置が適用される通信装置のブロック図の一例である。
【
図8】高調波のピークゲインおよび-3dB角度を示す図である。
【
図11】比較例1によるアンテナ装置の斜視図である。
【
図12】比較例2によるアンテナ装置の斜視図である。
【
図14】基本波のピークゲイン、ピーク角度および-3dB角度を示す図(その1)である。
【
図15】基本波のピークゲイン、ピーク角度および-3dB角度を示す図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
(通信装置の基本構成)
図1は、本実施の形態に係るアンテナ装置120が適用される通信装置10のブロック図の一例である。通信装置10は、たとえば、携帯電話、スマートフォンあるいはタブレットなどの携帯端末や、通信機能を備えたパーソナルコンピュータなどである。本実施の形態に係るアンテナモジュール100に用いられる電波の周波数帯域の一例は、たとえば28GHz、39GHzおよび60GHzなどを中心周波数とするミリ波帯の電波であるが、上記以外の周波数帯域の電波についても適用可能である。
【0013】
図1を参照して、通信装置10は、アンテナモジュール100と、ベースバンド信号処理回路を構成するBBIC200とを備える。アンテナモジュール100は、給電部品の一例であるRFIC110と、アンテナ装置120とを備える。通信装置10は、BBIC200からアンテナモジュール100へ伝達された信号を高周波信号にアップコンバートしてアンテナ装置120から放射するとともに、アンテナ装置120で受信した高周波信号をダウンコンバートしてBBIC200にて信号を処理する。
【0014】
図1では、説明を容易にするために、アンテナ装置120を構成する複数の放射素子121のうち、4つの放射素子121に対応する構成のみ示され、同様の構成を有する他の放射素子121に対応する構成については省略されている。なお、
図1においては、アンテナ装置120が二次元のアレイ状に配置された複数の放射素子121で形成される例を示しているが、放射素子121は必ずしも複数である必要はなく、1つの放射素子121でアンテナ装置120が形成される場合であってもよい。また、複数の放射素子121が一列に配置された一次元アレイであってもよい。本実施の形態においては、放射素子121は、略正方形の平板状を有するパッチアンテナである。
【0015】
RFIC110は、スイッチ111A~111D,113A~113D,117と、パワーアンプ112AT~112DTと、ローノイズアンプ112AR~112DRと、減衰器114A~114Dと、移相器115A~115Dと、信号合成/分波器116と、ミキサ118と、増幅回路119とを備える。
【0016】
高周波信号を送信する場合には、スイッチ111A~111D,113A~113Dがパワーアンプ112AT~112DT側へ切換えられるとともに、スイッチ117が増幅回路119の送信側アンプに接続される。高周波信号を受信する場合には、スイッチ111A~111D,113A~113Dがローノイズアンプ112AR~112DR側へ切換えられるとともに、スイッチ117が増幅回路119の受信側アンプに接続される。
【0017】
BBIC200から伝達された信号は、増幅回路119で増幅され、ミキサ118でアップコンバートされる。アップコンバートされた高周波信号である送信信号は、信号合成/分波器116で4分波され、4つの信号経路を通過して、それぞれ異なる放射素子121に給電される。このとき、各信号経路に配置された移相器115A~115Dの移相度が個別に調整されることにより、アンテナ装置120の指向性を調整することができる。
【0018】
各放射素子121で受信された高周波信号である受信信号は、それぞれ、異なる4つの信号経路を経由し、信号合成/分波器116で合波される。合波された受信信号は、ミキサ118でダウンコンバートされ、増幅回路119で増幅されてBBIC200へ伝達される。
【0019】
RFIC110は、例えば、上記回路構成を含む1チップの集積回路部品として形成される。あるいは、RFIC110における各放射素子121に対応する機器(スイッチ、パワーアンプ、ローノイズアンプ、減衰器、移相器)については、対応する放射素子121毎に1チップの集積回路部品として形成されてもよい。
【0020】
(アンテナ装置の構成)
図2は、アンテナ装置120の平面図である。
図3は、アンテナ装置120の
図2におけるIII-III断面図である。
図4は、アンテナ装置120の斜視図である。
【0021】
図2~
図4を参照して、本実施の形態におけるアンテナ装置120の構成の詳細を説明する。なお、以下では、アンテナ装置120が1つの放射素子121を備える例について説明する。
【0022】
アンテナ装置120は、放射素子121と、接地電極GNDと、放射素子121および接地電極GNDが形成される誘電体基板130とを有する。
【0023】
誘電体基板130は、放射素子121が配置される第1主表面130aと、接地電極GNDが配置される第2主表面130bとを有する。なお、放射素子121および接地電極GNDは、必ずしも誘電体基板130の表面に配置されることに限定されず、誘電体基板130の内部の層に所定間隔を隔てて積層されてもよい。また、接地電極GNDが誘電体基板130とは別の基板に配置され、接地電極GNDが配置された別の基板がはんだ実装あるいは接着によって誘電体基板130に接続されるようにしてもよい。
【0024】
以下では、誘電体基板130の厚さ方向(第1主表面130aの法線方向)を「Z軸方向」、Z軸方向に垂直であってかつ互いに垂直な方向をそれぞれ「X軸方向」および「Y軸方向」とも称する。
【0025】
誘電体基板130は、たとえば、低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)多層基板、エポキシ、ポリイミドなどの樹脂から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、より低い誘電率を有する液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、フッ素系樹脂から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、あるいは、LTCC以外のセラミックス多層基板である。なお、誘電体基板130は必ずしも多層構造でなくてもよく、単層の基板であってもよい。
【0026】
放射素子121は、Z軸方向から視た場合に、X軸方向と平行な2辺と、X軸方向と直交する2辺とに囲まれた矩形形状を有する。放射素子121は、RFIC110に接続される給電点SPを有する。給電点SPは、放射素子121の面中心からX軸の負方向にオフセットした位置に配置されている。言い換えれば、X軸方向は、放射素子121の面中心と給電点SPとを結ぶ仮想線(
図1に一点鎖線で示す線)に沿う方向である。放射素子121の給電点SPにRFIC110から高周波信号が供給されることによって、放射素子121からは、X軸方向を偏波方向とする電波がZ軸正方向に放射される。
【0027】
接地電極GNDは、誘電体基板130の第2主表面130bに配置され、平板状に延在する。Z軸方向から視た接地電極GNDのサイズ(面積)は、放射素子121のサイズ(面積)よりも大きい。
【0028】
上述したように、一般的に、アンテナから電波を放射する際には、基本波の特性を維持しつつ、高調波が周囲に与える影響を極力抑えたいというニーズがある。本実施の形態によるアンテナ装置120には、以下に説明するように、このニーズを満たすための工夫が施されている。
【0029】
以下では、放射素子121におけるX軸方向(偏波方向)の端部を通り、かつX軸方向と直交する平面を「第1境界面L1」と定義する。さらに、放射素子121におけるY軸方向(偏波方向と直交する方向)の端部を通り、かつ第1境界面L1およびY軸方向と直交する平面を「第2境界面L2」と定義する。第1境界面L1には、
図2に示すように、放射素子121におけるX軸負方向の端部を通る第1境界面L1aと、放射素子121におけるX軸正方向の端部を通る第1境界面L1bとが含まれる。また、第2境界面L2には、
図2に示すように、放射素子121におけるY軸負方向の端部を通る第2境界面L2aと、放射素子121におけるY軸正方向の端部を通る第2境界面L2bとが含まれる。
【0030】
さらに、以下では、誘電体基板130において、放射素子121に対して第1境界面L1の外側かつ第2境界面L2の外側の領域を「調整領域A」と定義し、調整領域A以外の領域を「非調整領域B」と定義する。調整領域Aには、
図2に示すように、第1境界面L1aの外側かつ第2境界面L2aの外側の「調整領域A1」と、第1境界面L1bの外側かつ第2境界面L2aの外側の「調整領域A2」と、第1境界面L1aの外側かつ第2境界面L2bの外側の「調整領域A3」と、第1境界面L1bの外側かつ第2境界面L2bの外側の「調整領域A4」とが含まれる。
【0031】
なお、X軸方向を偏波方向とする放射素子121から電波が放射される際には、主に、第1境界面L1の内側領域(第1境界面L1aと第1境界面L1bとの間の領域)に磁界が生じ、第2境界面L2の内側領域(第2境界面L2aと第2境界面L2bとの間の領域)に電界が生じる。したがって、上述の調整領域A1~A4は、放射素子121から電波が放射される際の電界および磁界の影響が少ない領域であることが想定される。
【0032】
本実施の形態による誘電体基板130においては、4つの調整領域A1~A4のうちの調整領域A1,A2の誘電体の厚さが、非調整領域Bの誘電体の厚さよりも小さくなるようにトリミングされている。具体的には、調整領域A1,A2において、誘電体の一部(斜線で示す部分)がトリミングされている。以下では、4つの調整領域A1~A4のうちの、誘電体の一部がトリミングされている調整領域A1,A2を、他の調整領域A3,A4とは区別して「特定領域A1,A2」とも称する。また、誘電体基板130における特定領域A1,A2の部分を「特定部131」とも称し、誘電体基板130における特定部131以外の部分を「基部135」とも称する。
【0033】
本実施の形態による誘電体基板130においては、特定領域A1,A2の特定部131の厚さが、非調整領域Bを含む基部135の厚さよりも小さくなるように、特定領域A1,A2の誘電体がトリミングされている。これにより、特定領域A1,A2の実効誘電率は、非調整領域Bの実効誘電率とは異なる値となる。より具体的には、特定領域A1,A2の実効誘電率は、非調整領域Bの実効誘電率よりも小さくなる。
【0034】
本明細書において、実効誘電率とは、接地電極GNDが配置される高さレベルから、放射素子121が配置される高さレベルまでのトータルの誘電率を意味する。したがって、本実施の形態において、特定領域A1,A2の実効誘電率は、特定領域A1,A2における特定部131とトリミングされた空間部分(
図3の斜線で示す部分)とを合わせた誘電率であり、非調整領域Bの実効誘電率とは、非調整領域Bにおける基部135の誘電率である。また、接地電極GNDが誘電体基板130とは別の基板に配置される場合には、各領域の実効誘電率は、別の基板の接地電極GNDが配置される高さレベルから、誘電体基板130の放射素子121が配置される高さレベルまでのトータルの誘電率である。
【0035】
なお、
図2に示すように、特定領域A1,A2をZ軸方向から平面視した場合、特定領域A1,A2の一部が接地電極GNDと重複する。このように、特定領域A1,A2をZ軸方向から平面視した場合において、特定領域A1,A2が必ずしも接地電極GNDに包含されている必要はなく、特定領域A1,A2の少なくとも一部が接地電極GNDと重複していればよい。特定領域A1,A2の実効誘電率を下げるという目的に鑑みて、特定領域A1,A2を接地電極GNDに包含させるようにしてもよい。
【0036】
このように、本実施の形態によるアンテナ装置120は、調整領域A1~A4の一部である特定領域A1,A2の実効誘電率を非調整領域Bの実効誘電率よりも小さくすることによって、特定領域A1,A2を有しない従来相当のアンテナ装置に比べて、アンテナの基本波の特性を維持しつつ、高調波が周囲に与える影響を抑えるように高調波の特性を調整している。
【0037】
以下、本実施の形態によるアンテナ装置120の高調波特性および基本波特性について順番に説明する。以下では、出力目標である基本波の周波数(基本周波数)を「28GHz」とする例について説明する。
【0038】
(高調波特性)
まず、アンテナ装置120の高調波特性について説明する。
【0039】
図5は、放射素子121から放射される電波に含まれる高調波のゲインを3次元的に示す図である。
図5においては、X軸からのZ軸周りの傾斜角が「φ」で示され、Z軸からのX軸周りの傾斜角が「θ」で示される。
図5に示されるように、高調波のゲインは、Z軸周りの傾斜角φが90°となる部分に2つのピークを有している。
【0040】
図6は、Z軸周りの傾斜角φが90°である場合の高調波のゲインを、X軸周りの傾斜角θをパラメータとして示す図である。本実施の形態においては、
図6に示す高調波のゲインの最大値を高調波の「ピークゲイン」とし、高調波のゲインがピークゲインから3dB低下する傾斜角θの幅を高調波の「-3dB角度」としている。後述の
図8においては、高調波の「-3dB角度」を高調波の特性として用いている。高調波の「-3dB角度」は、高調波の放射角度に相当する。
【0041】
図7は、高調波の反射特性を示す図である。
図7において、横軸は周波数(GHz)を示し、縦軸は反射損失を減衰量(dB)として示す。反射損失とは、入力レベルに対する反射レベルの比をデシベル(dB)で表わしたものである。したがって、反射損失が小さいほど(0に近いほど)、入力レベルに対する反射レベルの割合が大きく、高調波が放射され難いことを意味する。なお、
図7では、基本周波数28GHzの2倍の周波数56GHzが60GHzを中心周波数とするミリ波帯に含まれることに鑑み、50GHz~90GHzの帯域の反射損失を計測した結果が示されている。
【0042】
図7において、実線は、特定領域A1,A2を有する本開示によるアンテナ装置120の高調波特性を示す。破線は、特定領域A1,A2を有しない従来相当の比較例によるアンテナ装置(従来相当のアンテナ装置)の高周波特性を示す。
【0043】
図7を参照すると、本開示によるアンテナ装置120は、比較例によるアンテナ装置と同様、反射損失が小さい値に維持されており、高調波が放射され難い特性を有することが分かる。なお、WiGig(Wireless Gigabit)の通信規格では57GHzから66GHzの周波数帯域が利用され得るが、本開示によるアンテナ装置120においては、57GHzから66GHzの周波数帯域においても高調波が放射され難くWiGigへの影響が抑えられている。
【0044】
また、
図7を参照すると、本開示によるアンテナ装置120においては、52GHzおよび66GHzで高調波の反射損失が極大となり高調波が放射され易いことが分かる。そこで、本実施の形態においては、高調波が放射され易い52GHzおよび66GHzを周波数F0とし、この周波数F0の高調波の-3dB角度を計測した。
【0045】
図8は、高調波が放射され易い周波数F0(52GHzおよび66GHz)における、高調波のピークゲインおよび-3dB角度を示す図である。52GHzおよび66GHzのどちらの周波数においても、本開示によるアンテナ装置120は、従来相当の比較例に比べて、-3dB角度が小さくなっていることがわかる。すなわち、本開示によるアンテナ装置120は、従来相当のアンテナ装置に比べて、高調波の放射角度が狭いため、高調波が周囲に与える影響を抑えることができる。
【0046】
(基本波特性)
次に、アンテナ装置120の基本波特性について説明する。上述したように、基本波の周波数を「28GHz」とする例を説明する。
【0047】
図9は、放射素子121から放射される電波に含まれる基本波のゲインを3次元的に示す図である。
図9においても、
図5と同様に、X軸からのZ軸周りの傾斜角が「φ」で示され、Z軸からのX軸周りの傾斜角が「θ」で示される。
図9に示されるように、基本波のゲインはZ軸正方向においてピークとなる。
【0048】
図10は、Z軸周りの傾斜角φが90°である場合の基本波のゲインを、X軸周りの傾斜角θをパラメータとして示す図である。本実施の形態においては、
図10に示す基本波のゲインの最大値を基本波の「ピークゲイン」とし、基本波のゲインがピークゲインから3dB低下する傾斜角θの幅を基本波の「-3dB角度」としている。基本波の「-3dB角度」は、基本波の放射角度に相当する。
【0049】
なお、基本波特性では、従来相当の比較例によるアンテナ装置に加えて、比較例1、比較例2によるアンテナ装置についても合わせて評価した。
図11は、比較例1によるアンテナ装置の斜視図である。比較例1によるアンテナ装置は、従来相当の比較例によるアンテナ装置に対して、調整領域A1と調整領域A2との間の領域B1の誘電体をトリミングして薄くしたものである。
図12は、比較例2によるアンテナ装置の斜視図である。比較例2によるアンテナ装置は、従来相当の比較例によるアンテナ装置に対して、調整領域A1と調整領域A3との間の領域B2の誘電体をトリミングして薄くしたものである。
【0050】
図13は、基本波の反射特性を示す図である。
図13においても、上述の
図7と同様、横軸は周波数(GHz)を示し、縦軸は反射損失を減衰量(dB)として示す。反射損失が大きいほど(0から遠いほど)、入力レベルに対する反射レベルの割合が小さく、基本波が放射され易いことを意味する。
【0051】
図13において、実線は本開示によるアンテナ装置120の基本波特性を示す。破線は従来相当の比較例によるアンテナ装置の基本波特性を示し、一点鎖線は比較例1によるアンテナ装置の基本波特性を示し、二点鎖線は比較例2によるアンテナ装置の基本波特性を示す。なお、
図13には、各放射素子に同じ高周波信号を入力した場合の特性が示されている。
【0052】
図13に示されるように、本開示(実線)においては、基本波の反射損失が極大となる周波数f0が、従来相当(破線)と同じ28GHzに維持されている。すなわち、本開示によるアンテナ装置120においては、基本波の周波数特性が従来相当に維持されている。
【0053】
これに対し、比較例1(一点鎖線)においては、基本波の反射損失が極大となる周波数f0が28GHzよりも大きい値に変動している。さらに、比較例2(二点鎖線)においては、基本波の反射損失が極大となる周波数f0が28GHzよりも大幅に変動して29GHzを超えている。すなわち、比較例1および比較例2の構成では、基本波特性を維持できないことが分かる。
【0054】
図14は、基本波のピークゲイン、ピーク角度および-3dB角度を示す図である。上述したように、本開示においては、基本波の反射損失が極大となる周波数f0の変動はなく、基本周波数を従来相当と同じ28GHzに維持することができる。これに対し、比較例1および比較例2においては、周波数f0の変動があり、基本周波数を28GHzに維持できないことが分かる。
【0055】
さらに、本開示においては、-3dB角度も従来相当と同じ値から変化しておらず、基本波の放射角度を維持できている。これに対し、比較例1および比較例2においては、-3dB角度が従来相当よりも小さい値に変動しており、基本波の放射角度が狭くなって基本波特性が劣化してしまうことが理解できる。
【0056】
なお、比較例1および比較例2においては、電磁界の影響が大きい領域(
図11に示す領域B1、
図12に示す領域B2)の実効誘電率がトリミングによって低下した影響で、基本波のピークゲインが増加し、その結果として-3dB角度が変動したと推測される。
【0057】
図15は、基本波の反射損失が極大となる周波数f0が28GHzが統一されるように比較例1,2の放射素子のサイズを調整した場合における、基本波のピークゲイン、ピーク角度および-3dB角度を示す図である。
図15に示すように、周波数f0が28GHzとなるように比較例1,2の放射素子のサイズを調整したとしても、比較例1,2では-3dB角度が狭くなっており、基本波特性が劣化してしまうことが理解できる。
【0058】
以上のように、本実施の形態によるアンテナ装置120は、X軸方向を偏波方向とする電波を放射する板状の放射素子121と、放射素子121が形成される誘電体基板130とを備える。この誘電体基板130においては、放射素子121に対して第1境界面L1の外側かつ第2境界面L2の外側の調整領域A1~A4のうちの一部である特定領域A1,A2の誘電体の厚さが、非調整領域Bの誘電体の厚さよりも小さくされる。これにより、特定領域A1,A2の実効誘電率が非調整領域Bの実効誘電率よりも小さくされる。その結果、本実施の形態によるアンテナ装置120は、特定領域A1,A2を有さない従来相当のアンテナ装置に比べて、基本波の特性を維持しつつ、高調波の特性を調整して高調波が周囲に与える影響を抑えることができる。
【0059】
なお、本実施の形態の「放射素子121」、「接地電極GND」および「誘電体基板130」は、本開示の「第1放射素子」、「接地電極」および「誘電体基板」にそれぞれ対応し得る。また、本実施の形態の「第1境界面L1」および「第2境界面L2」は、本開示の「第1境界面」および「第2境界面」にそれぞれ対応し得る。また、本実施の形態の「調整領域A1~A4」および「非調整領域B」は、本開示の「調整領域」および「非調整領域」にそれぞれ対応し得る。また、本実施の形態の「特定領域A1,A2」は、本開示の「特定領域」に対応し得る。
【0060】
[変形例]
以下、アンテナ装置120のバリエーション(変形例)について説明する。
【0061】
(変形例1)
上述の実施の形態においては、4つの調整領域A1~A4のうちの、2つの調整領域A1,A2を、非調整領域Bの実効誘電率よりも小さい「特定領域」にする例について説明した。しかしながら、特定領域の数および組合せは、これに限定されない。たとえば、4つの調整領域A1~A4のうちのいずれか1つの領域のみを特定領域としてもよいし、4つの調整領域A1~A4のうちのいずれか3つの領域を特定領域としてもよいし、4つの調整領域A1~A4のすべてを特定領域としてもよい。
【0062】
また、上述の実施の形態においては、調整領域A1,A2の誘電体の厚さを非調整領域Bの誘電体の厚さよりも薄くする(小さくする)ことによって、調整領域A1,A2を、非調整領域Bよりも実効誘電率の小さい「特定領域」にする例について説明した。しかしながら、調整領域A1,A2を「特定領域」にする手法は、これに限定されない。たとえば、調整領域A1,A2の誘電体をすべてカットするようにしてもよい。また、調整領域A1,A2の誘電体の厚さに段差を設けることによって、調整領域A1,A2の実効誘電率をより細かく調整するようにしてもよい。また、調整領域A1,A2のトリミング部分に特定部131の誘電率よりも誘電率の低い低誘電率材料を充填することによって、調整領域A1,A2の実効誘電率を非調整領域Bの実効誘電率と異ならせるようにしてもよい。
【0063】
(変形例2)
図16は、本変形例2によるアンテナ装置120Aの平面図である。アンテナ装置120Aは、上述の
図2に示すアンテナ装置120の放射素子121を、放射素子121aに変更したものである。
【0064】
放射素子121aは、Z軸方向から視た場合に、X軸方向と交差する4辺に囲まれた矩形形状を有する。放射素子121をこのように変形してもよい。また、放射素子121aの形状は、矩形形状に限られず、五角形以上の多角形状であってもよい。
【0065】
図17は、本変形例2による他のアンテナ装置120Bの平面図である。アンテナ装置120Bは、上述の
図2に示すアンテナ装置120の放射素子121を、略円形状の放射素子121bに変更したものである。放射素子121をこのように変形してもよい。また、放射素子121bの形状は、円形状に限られず、楕円形状であってもよい。
【0066】
(変形例3)
図18は、本変形例3によるアンテナ装置120Cの平面図である。
図19は、本変形例3によるアンテナ装置120CをY軸方向から視た側面図である。アンテナ装置120Cは、上述の
図2に示すアンテナ装置120に対し、放射素子121を複数備える。すなわち、本変形例3によるアンテナ装置120Cは、誘電体基板130Cに複数の放射素子121が所定間隔を隔ててX軸方向に並べて配置されるアレイアンテナである。アンテナ装置120Cにおいても、非調整領域とは実効誘電率が異なる特定領域A(斜線部分)を設けることで、上述の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0067】
隣り合う放射素子121を第1放射素子および第2放射素子とするとき、第1放射素子と第2放射素子との間に設けられる特定領域Aは、第1放射素子の調整領域と、第2放射素子の調整領域とが重なる部分に配置される。
【0068】
なお、本変形例3の隣り合う2つの放射素子121は、本開示の「第1放射素子」および「第2放射素子」にそれぞれ対応し得る。
【0069】
(変形例4)
図20は、本変形例4によるアンテナ装置120Dの平面図である。アンテナ装置120Dは、上述の
図18に示す変形例3によるアンテナ装置120Cに対し、特定領域(斜線部分)の誘電体である特定部131が非調整領域の誘電体よりもY軸負方向(誘電体の面内方向)に突出する突出部131aを有する点が異なる。このように変形しても、上述の実施の形態と同様の効果を奏することができる。さらに、突出部131aの一部に、アンテナ装置120Dと他の部品とを接続させるためのコネクタCを配置するようにしてもよい。
【0070】
なお、本変形例4の「突出部131a」および「コネクタC」は、本開示の「突出部」および「突出部に配置される部品」に対応し得る。
【0071】
(変形例5)
図21は、本変形例5によるアンテナ装置120Eの斜視図である。アンテナ装置120Eは、複数の放射素子121が配置される誘電体基板130Eを備える。誘電体基板130Eは、略L字形状に形成され、円弧状に切除された特定領域Aを有する第1基部135Eと、第2基部136Eと、屈曲部131Eとを有する。屈曲部131Eは、第1基部135Eの特定領域AからY軸負方向に突出し、屈曲した状態で第2基部136Eに接続される。このようなアンテナ装置120Eにおいても、非調整領域とは実効誘電率が異なる特定領域Aが設けられることで、上述の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0072】
なお、本変形例4の「第1基部135E」、「第2基部136E」、「屈曲部131E」、および「特定領域A」は、本開示の「誘電体基板」、「他の誘電体基板」、「突出部」、および「特定領域」にそれぞれ対応し得る。
【0073】
(変形例6)
図22は、本変形例6によるアンテナ装置120Fの斜視図である。アンテナ装置120Fは、略L字形状に形成される誘電体基板130Fを備える。誘電体基板130Fは、複数の放射素子121が配置される第1基部135Fと、複数の放射素子121が配置される第2基部136Fと、屈曲部131Fとを有する。第1基部135Fは、円弧状に切除された特定領域Aを有する。第2基部136Fも、円弧状に切除された特定領域Aを有する。屈曲部131Fは、第1基部135Fの特定領域AからY軸負方向に突出し、屈曲した状態で第2基部136Fの特定領域Aに接続される。このようなアンテナ装置120Fにおいても、上述の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0074】
なお、本変形例6の「第1基部135F」、「第2基部136F」、「屈曲部131F」、および「特定領域A」は、本開示の「誘電体基板」、「他の誘電体基板」、「突出部」、および「特定領域」にそれぞれ対応し得る。
【0075】
(変形例7)
上述の実施の形態においては、調整領域A1,A2の誘電体の厚さを非調整領域Bの誘電体の厚さよりも小さくすることによって、高調波の特性を調整する例について説明した。
【0076】
しかしながら、調整領域A1,A2の誘電体の厚さを非調整領域Bの誘電体の厚さよりも大きくすることによって、高調波の特性を調整するようにしてもよい。
【0077】
図23は、本変形例7によるアンテナ装置120Gの平面図である。
図24は、アンテナ装置120Gの
図23におけるXXIV-XXIV断面図である。
【0078】
アンテナ装置120Gは、上述のアンテナ装置120の誘電体基板130を、誘電体基板130Gに変更したものである。誘電体基板130Gは、上述の誘電体基板130の特定部131を、特定部131Gに変更したものである。
【0079】
本変形例7によるアンテナ装置120Gにおいては、特定部131Gの誘電体の厚さが、非調整領域Bの誘電体の厚さよりも大きくなるように構成されている。より具体的には、アンテナ装置120Gにおいては、調整領域A1,A2において、非調整領域Bの誘電体の高さの誘電体131cの上に、他の誘電体131b(
図23、
図24の斜線で示す部分)が積層されることによって特定部131Gが構成される。これにより、特定部131Gの誘電体の厚さが非調整領域Bの誘電体の厚さよりも大きくなる。その結果、特定部131Gの実効誘電率は、非調整領域Bの実効誘電率とは異なる値に調整される。
【0080】
このように、調整領域A1,A2の誘電体の厚さを非調整領域Bの誘電体の厚さよりも大きくすることによって、高調波の特性を調整するようにしてもよい。
【0081】
なお、非調整領域Bの実効誘電率とは異なる領域は、Z軸方向から視て矩形状でなくてもよいし、基板端のみに配置されてもよい。
【0082】
(変形例8)
上述の実施の形態においては、調整領域A1,A2において、非調整領域Bの実効誘電率とは異なる領域が誘電体の上層に配置される例について説明した。
【0083】
しかしながら、調整領域A1,A2において非調整領域Bの実効誘電率とは異なる領域は、誘電体の上層に配置されることに限定されるものではなく、誘電体の内層あるいは下層に配置されてもよい。
【0084】
図25は、本変形例8によるアンテナ装置120Hの断面図である。アンテナ装置120Hは、上述のアンテナ装置120の誘電体基板130を、誘電体基板130Hに変更したものである。誘電体基板130Hは、上述の誘電体基板130の特定部131を、特定部131Hに変更したものである。アンテナ装置120Hの特定部131Hにおいては、非調整領域Bの実効誘電率とは異なる領域(
図25の斜線で示す領域)が誘電体の内層(中間層)に配置される。
【0085】
図26は、本変形例8による他のアンテナ装置120Iの断面図である。アンテナ装置120Iは、上述のアンテナ装置120の誘電体基板130を、誘電体基板130Iに変更したものである。誘電体基板130Iは、上述の誘電体基板130の特定部131を、特定部131Iに変更したものである。アンテナ装置120Iの特定部131Iにおいては、非調整領域Bの実効誘電率とは異なる領域(
図26の斜線で示す領域)が誘電体の下層に配置される。
【0086】
このように、調整領域A1,A2において非調整領域Bの実効誘電率とは異なる領域を誘電体の内層あるいは下層に配置するようにしてもよい。
【0087】
(変形例9)
上述の実施の形態においては、放射素子121と接地電極GNDとが1つの同じ誘電体基板130に配置される例について説明した。
【0088】
しかしながら、放射素子121と接地電極GNDとが別々の誘電体基板にそれぞれ配置されるようにしてもよい。
【0089】
図27は、本変形例9によるアンテナ装置120Jの断面図である。アンテナ装置120Jは、上述のアンテナ装置120の誘電体基板130を、誘電体基板130Jに変更したものである。誘電体基板130Jは、放射素子121が配置される基板と、接地電極GNDが配置される基板とを、それぞれ別々にしたものである。誘電体基板130Jの特定部131Jにおいては、非調整領域Bの実効誘電率とは異なる領域(
図27の斜線で示す領域)は、放射素子121が配置される基板と、接地電極GNDが配置される基板の一部とに配置される。
【0090】
図28は、本変形例9による他のアンテナ装置120Kの断面図である。アンテナ装置120Kは、上述のアンテナ装置120の誘電体基板130を、誘電体基板130Kに変更したものである。誘電体基板130Kは、放射素子121が配置される基板と、接地電極GNDが配置される基板とを、それぞれ別々にしたものである。誘電体基板130Kの特定部131Kにおいて、非調整領域Bの実効誘電率とは異なる領域(
図28の斜線で示す領域)は、放射素子121が配置される基板には配置されず、接地電極GNDが配置される基板の一部にのみ配置される。
【0091】
図29は、本変形例9によるアンテナ装置120Lの断面図である。アンテナ装置120Lは、上述のアンテナ装置120の誘電体基板130を、誘電体基板130Lに変更したものである。誘電体基板130Lは、放射素子121が配置される基板と、接地電極GNDが配置される基板とを、それぞれ別々にしたものである。誘電体基板130Lの特定部131Lにおいて、非調整領域Bの実効誘電率とは異なる領域(
図29の斜線で示す領域)は、放射素子121が配置される基板にのみ配置され、接地電極GNDが配置される基板には配置されない。
【0092】
これらのように、放射素子121と接地電極GNDとが別々の誘電体基板にそれぞれ配置されるようにしてもよい。
【0093】
(変形例10)
上述の変形例4によるアンテナ装置120D(
図20参照)においては、特定部131にY軸負方向に突出する突出部131aの一部にコネクタCが配置される。
【0094】
しかしながら、コネクタCは必ずしも突出部131aに配置されることに限定されず、特定部131に配置されてもよい。
【0095】
図30は、本変形例10によるアンテナ装置120Mの斜視図である。アンテナ装置120Mは、上述のアンテナ装置120の特定部131の一部にコネクタC1を追加したものである。このようにすることで、誘電体がトリミングされた空間を活用してコネクタC1を配置できるとともに、特定部131の高調波特性を調整する効果も期待できる。
【0096】
(変形例11)
図31は、本変形例11によるアンテナ装置120Nの斜視図である。アンテナ装置120Nは、略L字形状に形成される誘電体基板130Nを備える。誘電体基板130Nは、複数の放射素子121が配置される第1基部135Nと、複数の放射素子121が配置される第2基部136Nと、屈曲部131Nとを有する。第1基部135Nは、円弧状に切除された特定領域Aを有する。第2基部136Nも、円弧状に切除された特定領域Aを有する。
【0097】
屈曲部131Nは、第1基部135Nにおける特定領域Aではない領域から、特定領域Aの誘電体よりもY軸負方向(誘電体の面内方向)に突出し、屈曲した状態で第2基部136Nにおける特定領域Aではない領域に接続される。このように、第1基部135Nから突出する屈曲部131Nが、第1基部135Nにおける特定領域Aではない領域に設けられてもよい。このようなアンテナ装置120Nにおいても、上述の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0098】
(変形例12)
図32は、本変形例12によるアンテナ装置120Pの斜視図である。アンテナ装置120Pは、上述の
図30に示す変形例10によるアンテナ装置120Mに対し、特定領域ではない非調整領域の誘電体が特定領域の誘電体である特定部131よりもY軸負方向(誘電体の面内方向)に突出する突出部135Pを有する点、およびコネクタC1が特定部131ではなく突出部135Pに配置される点が異なる。このように、特定領域ではない領域の誘電体における突出部135Pに、コネクタC1が配置されるようにしてもよい。
【0099】
上述の実施の形態および変形例1-10における特徴は、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0100】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0101】
10 通信装置、100 アンテナモジュール、111A~111D,113A~113D,117 スイッチ、112AR~112DR ローノイズアンプ、112AT~112DT パワーアンプ、114A~114D 減衰器、115A~115D 移相器、116 分波器、118 ミキサ、119 増幅回路、120,120A~120M,120P アンテナ装置、121,121a,121b 放射素子、130,130C,130E~130L 誘電体基板、130a 第1主表面、130b 第2主表面、131 特定部、131E,131F 屈曲部、131a,135P 突出部、131b,131c 誘電体、135 基部、135E,135F 第1基部、136E,136F 第2基部、A,A1~A4 調整領域、B 非調整領域、C コネクタ、GND 接地電極、L1 第1境界面、L2 第2境界面、SP 給電点。