(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20230905BHJP
C08K 7/24 20060101ALI20230905BHJP
H01L 21/00 20060101ALI20230905BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K7/24
H01L21/00
H05K1/03 610L
(21)【出願番号】P 2022007094
(22)【出願日】2022-01-20
(62)【分割の表示】P 2018217421の分割
【原出願日】2018-11-20
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真俊
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-173841(JP,A)
【文献】特開2002-087831(JP,A)
【文献】特開平04-268340(JP,A)
【文献】特開2002-088198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00-63/10
C08K 7/24
H05K 1/03
H01L 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)中空無機粒子を含み、
(B)硬化剤が、活性エステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤からなる群より選ばれる1又は2以上を含み、
(C)中空無機粒子が、下記の要件(c1)及び要件(c2)の
両方を満たす、樹脂組成物。
(c1):(C)中空無機粒子が、無機複合酸化物で形成されている。
(c2):(C)中空無機粒子の空孔率が25体積%以上であり、且つ、(C)中空無機粒子の平均粒径が5.0μm以下である。
【請求項2】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)中空無機粒子を含み、
(B)硬化剤が、活性エステル系硬化
剤を含み、
(C)中空無機粒子が、下記の要件(c1)及び要件(c2)の少なくとも一方を満たす、樹脂組成物
(但し、中空無機粒子と溶融シリカを含み、中空無機粒子と溶融シリカの合計含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、50~70質量%である樹脂組成物を除く)。
(c1):(C)中空無機粒子が、
ケイ素と、ケイ素以外の金属原子及び半金属原子からなる群より選ばれる1種以上の原子との組み合わせを含む酸化物で形成されている。
(c2):(C)中空無機粒子の空孔率が
40体積%以上であり、且つ、(C)中空無機粒子の平均粒径が5.0μm以下である。
【請求項3】
要件(c1)において、(C)中空無機粒子が、ケイ素と、ケイ素以外の金属原子及び半金属原子からなる群より選ばれる1種以上の原子との組み合わせを含む酸化物で形成されている、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(C)中空無機粒子の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、50質量%以下である、請求項1
~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(C)中空無機粒子が、アルミノシリケートで形成されている、請求項1
~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
要件(c2)において、(C)中空無機粒子の平均粒径が2.5μm以下である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
20℃で液状の成分を、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、3質量%以上含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(B)硬化剤が、活性エステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤及びベンゾオキサジン系硬化剤からなる群より選ばれる1又は2以上を含む、請求項1
、3~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(B)硬化剤が、活性エステル系硬化剤を含む、請求項1
、3~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
導体層を形成するための絶縁層形成用である、請求項1~
9のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
支持体と、
支持体上に設けられた、請求項1~
10のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
【請求項12】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
【請求項13】
請求項
12に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらには、本発明は、当該樹脂組成物を含む樹脂シート;並びに、樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を含有する、プリント配線板、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、信号の高速化、及び、配線の高密度化が求められている。また、最近では、電気信号ロスの低減の要求が高まっており、この要求に伴って、低誘電率化、及び、低熱膨張率化が求められている。これらの要求を満たすために、特許文献1では、中空シリカ及び溶融シリカ含む樹脂組成物を用いた絶縁層が検討されている。
また、特許文献2には、中空アルミノシリケート粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-173841号公報
【文献】特開2016-121026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プリント配線板の絶縁層上には、導体層が形成されることがある。ところが、このように絶縁層上に形成された導体層を備えるプリント配線板では、リフロー時にブリスターが生じることがあった。ここで、ブリスターとは、リフロー時に導体層が盛り上がって膨れる現象をいう。
【0005】
また、中空シリカ等の中空粒子を含む樹脂組成物は、プロセス耐性が低く、絶縁層が得られるまでの過程で中空粒子が割れることがあった。ここで、プロセス耐性とは、樹脂組成物の作製工程を経て当該樹脂組成物を硬化させて絶縁層を得るまでの過程において、中空粒子の割れを抑制できる性質をいう。
【0006】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、リフロー時のブリスターを抑制できる絶縁層を得ることができ、且つ、プロセス耐性に優れる樹脂組成物;前記の樹脂組成物を含む樹脂組成物層を備えた樹脂シート;並びに、前記の樹脂組成物の硬化物を含むプリント配線板及び半導体装置;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)中空無機粒子を組み合わせて含む樹脂組成物において、(C)中空無機粒子が所定の要件を満たす場合に、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0008】
〔1〕 (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)中空無機粒子を含み、
(C)中空無機粒子が、下記の要件(c1)及び要件(c2)の少なくとも一方を満たす、樹脂組成物。
(c1):(C)中空無機粒子が、無機複合酸化物で形成されている。
(c2):(C)中空無機粒子の空孔率が25体積%以上であり、且つ、(C)中空無機粒子の平均粒径が5.0μm以下である。
〔2〕 (C)中空無機粒子の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、50質量%以下である、〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕 (C)中空無機粒子が、アルミノシリケートで形成されている、〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕 要件(c2)において、(C)中空無機粒子の平均粒径が2.5μm以下である、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔5〕 20℃で液状の成分を、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、3質量%以上含む、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔6〕 導体層を形成するための絶縁層形成用である、〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔7〕 支持体と、
支持体上に設けられた、〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
〔8〕 〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
〔9〕 〔8〕記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リフロー時のブリスターを抑制できる絶縁層を得ることができ、且つ、プロセス耐性に優れる樹脂組成物;前記の樹脂組成物を含む樹脂組成物層を備えた樹脂シート;並びに、前記の樹脂組成物の硬化物を含むプリント配線板及び半導体装置;を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態及び例示物を示して、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に挙げる実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0011】
[1.樹脂組成物の概要]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)中空無機粒子を含む。(C)中空無機粒子とは、無機材料で形成された中空粒子を表す。また、中空粒子とは、内部に空孔を有する粒子を表す。
さらに、この樹脂組成物の(C)中空無機粒子は、下記の要件(c1)及び要件(c2)の少なくとも一方を満たす。
(c1):(C)中空無機粒子が、無機複合酸化物で形成されている。
(c2):(C)中空無機粒子の空孔率が25体積%以上であり、且つ、(C)中空無機粒子の平均粒径が5.0μm以下である。
【0012】
この樹脂組成物を用いることにより、リフロー時のブリスターを抑制できる絶縁層を得ることができる。以下、このようにリフロー時のブリスターを抑制できる絶縁層の性質を「ブリスター耐性」ということがある。さらに、この樹脂組成物は、プロセス耐性に優れる。
【0013】
[2.(A)成分:エポキシ樹脂]
(A)成分としてのエポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。(A)エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(A)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0015】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよいが、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含むことが好ましい。(A)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いることで、樹脂組成物の可撓性を向上させたり、樹脂組成物の硬化物の破断強度を向上させたりできる。
【0016】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する芳香族系の液状エポキシ樹脂がより好ましい。ここで、「芳香族系」のエポキシ樹脂とは、その分子内に芳香環を有するエポキシ樹脂を意味する。
【0017】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びシクロヘキサン型エポキシ樹脂がより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びシクロヘキサン型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0018】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0020】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂及びビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0021】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」及び「YX7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
(A)エポキシ樹脂として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:1~1:20、より好ましくは1:1.5~1:15、特に好ましくは1:2~1:13である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が斯かる範囲にある場合、プロセス耐性及びブリスター耐性を効果的に高めることができる。また、通常は、樹脂シートの形態で使用する場合に、適度な粘着性及び十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する。さらに、通常は、十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる。
【0023】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。エポキシ当量がこの範囲にある場合、樹脂組成物の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0024】
(A)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、プロセス耐性及びブリスター耐性を効果的に高める観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。
【0025】
樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。具体的には、重量平均分子量は、測定装置として島津製作所社製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度を40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0026】
樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂の量は、良好な機械強度及び絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、プロセス耐性及びブリスター耐性を効果的に高める観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
【0027】
[3.(B)成分:硬化剤]
樹脂組成物は、(B)硬化剤を含む。(B)硬化剤は、通常、(A)エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有する。
【0028】
(B)成分としての硬化剤としては、例えば、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤などが挙げられる。また、(B)硬化剤は1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を併用してもよい。
【0029】
活性エステル系硬化剤としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する化合物を用いることができる。中でも、活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。
【0030】
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0031】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0032】
活性エステル系硬化剤の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0033】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000」、「HPC-8000H」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65TM」、「EXB-8150-65T」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤として「EXB9416-70BK」、「EXB-8150-65T」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
【0034】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。
【0035】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;新日鉄住金化学社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN-495V」「SN375」、「SN-395」;DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」;等が挙げられる。
【0036】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」が挙げられる。
【0037】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BADCy」(ビスフェノールAジシアネート)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0038】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V-03」、「V-07」等が挙げられる。
【0039】
アミン系硬化剤としては、1分子内中に1個以上のアミノ基を有する硬化剤が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられる。中でも、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0040】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられる。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」等が挙げられる。
【0041】
上述した中でも、(B)硬化剤としては、プロセス耐性及びブリスター耐性を効果的に高める観点から、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤及びカルボジイミド系硬化剤が好ましく、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤及びカルボジイミド系硬化剤が更に好ましく、活性エステル系硬化剤が特に好ましい。活性エステル系硬化剤を用いる場合、(B)硬化剤100質量%に対する活性エステル系硬化剤の含有率は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、通常100質量%以下、好ましくは98質量%以下、より好ましくは96質量%以下、さらに好ましくは94質量%以下である。
【0042】
樹脂組成物における(B)硬化剤の量は、プロセス耐性及びブリスター耐性を効果的に高める観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0043】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、(B)硬化剤の活性基数は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上であり、好ましくは3以下、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.6以下である。ここで、「(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する(A)エポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「(B)硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する(B)硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合の(B)硬化剤の活性基数が前記範囲にあることにより、プロセス耐性及びブリスター耐性を効果的に高めることができ、更に通常は、樹脂組成物の硬化物の耐熱性がより向上する。
【0044】
[4.(C)成分:中空無機粒子]
樹脂組成物は、(C)成分として、要件(c1)及び要件(c2)の少なくとも一方を満たす中空無機粒子を含む。この(C)中空無機粒子を用いることにより、優れたプロセス耐性及びブリスター耐性を達成できる。また、通常は、樹脂組成物の硬化物の誘電率及び線熱膨張係数を小さくできる。
以下、要件(c1)及び要件(c2)それぞれについて詳細に説明する。
【0045】
まず、要件(c1)について説明する。要件(c1)を満たす(C)中空無機粒子は、無機複合酸化物で形成される。無機複合酸化物とは、金属原子及び半金属原子からなる群より選ばれる2種類以上の原子を含む酸化物を表す。このような無機複合酸化物としては、ケイ素と、ケイ素以外の金属原子及び半金属原子からなる群より選ばれる1種類以上の原子との組み合わせを含む酸化物が好ましい。ケイ素と組み合わせる金属原子としては、アルミニウム、鉛、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、ジルコニウム、鉄、リチウム、マグネシウム、バリウム、カリウム、カルシウム、チタン、ホウ素、ナトリウム等が挙げられ、中でも、アルミニウムが特に好ましい。よって、無機複合酸化物としては、ケイ素及びアルミニウムを含む酸化物が好ましく、アルミノシリケートが特に好ましい。
【0046】
アルミノシリケートの構造組成において、SiO2の含有量は、好ましくは70質量%~90質量%、より好ましくは75質量%~85質量%であり、約80質量%が特に好ましい。また、Al2O3の含有量は、好ましくは10質量%~30質量%、より好ましくは15質量%~25質量%であり、特に好ましくは約20質量%である。このような組成を有するアルミノシリケートを用いた場合、プロセス耐性及びブリスター耐性を効果的に高めることができる。
【0047】
前記のアルミノシリケートは、その構造組成において、Fe2O3を含んでいてもよい。ただし、Fe2O3の含有量は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.6質量%以下であり、Fe2O3を含まないことが特に好ましい。Fe2O3がこのように少ないアルミノシリケートを用いた場合、プロセス耐性及びブリスター耐性を効果的に高めることができる。
【0048】
さらに、前記のアルミノシリケートは、その構造組成において、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を含んでいてもよい。ただし、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の含有量は、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を含まないことが特に好ましい。アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物がこのように少ないアルミノシリケートを用いた場合、プロセス耐性及びブリスター耐性を効果的に高めることができる。
【0049】
要件(c1)を満たす(C)中空無機粒子の空孔率は、任意であり、例えば、5体積%以上、10体積%以上、15体積%以上、20体積%以上などでありうる。中でも、プロセス耐性及びブリスター耐性を効果的に高める観点では、要件(c1)を満たす(C)中空無機粒子の空孔率は、要件(c2)において説明する範囲にあることが好ましい。
【0050】
前記の空孔率とは、(C)中空無機粒子における中空部の体積割合を表す。この空孔率は、中空無機粒子の密度から計算により求めることができる。具体的な測定方法は、下記の通りでありうる。中空無機粒子の密度を、真密度測定装置を用いて測定する。この測定は、窒素を測定ガスとして用いる。真密度測定装置としては、例えば、QUANTACHROME社製のULTRAPYCNOMETER1000を用いうる。その後、測定された密度と、中空無機粒子を形成する無機材料の物質密度とを用いて、下記の式(X)に従い、空孔率を計算できる。
空孔率(体積%)={1-(測定した密度[g/cm3]/無機材料の物質密度[g/cm3])}×100 (X)
【0051】
要件(c1)を満たす(C)中空無機粒子の平均粒径は、任意であり、例えば、10μm以下、5μm以下、などでありうる。中でも、プロセス耐性及びブリスター耐性を効果的に高める観点では、要件(c1)を満たす(C)中空無機粒子の平均粒径は、要件(c2)において説明する範囲にあることが好ましい。
【0052】
(C)中空無機粒子の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定できる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、(C)中空無機粒子の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定できる。測定サンプルは、(C)中空無機粒子を超音波によりメチルエチルケトン中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒径分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA-960」を使用できる。このレーザー回折散乱式粒径分布測定装置を使用する場合、使用光源波長を青色および赤色とし、フローセル方式で測定することが可能である。
【0053】
前記のような要件(c1)を満たす(C)中空無機粒子の製造方法は、任意である。例えば、要件(c1)を満たす(C)中空無機粒子は、特開2016-121026号公報に記載の方法によって製造できる。
【0054】
次に、要件(c2)について説明する。要件(c2)を満たす(C)中空無機粒子は、25体積%以上の空孔率を有し、且つ、5.0μm以下の平均粒径を有する。
【0055】
詳しくは、要件(c2)を満たす(C)中空無機粒子の空孔率は、通常25体積%以上、好ましくは30体積%以上、より好ましくは40体積%以上、更に好ましくは50体積%以上であり、好ましくは90体積%以下、より好ましくは85体積%以下、特に好ましくは80体積%以下である。(C)中空無機粒子がこのような範囲の空孔率を有する場合、プロセス耐性及びブリスター耐性を効果的に高めることができる。さらに、通常は、樹脂組成物の硬化物の誘電率及び線熱膨張係数を小さくできる。
【0056】
また、要件(c2)を満たす(C)中空無機粒子の平均粒径は、通常5.0μm以下、好ましくは3.0μm以下、より好ましくは2.5μm以下、更に好ましくは2.0μm以下、特に好ましくは1.6μm以下である。(C)中空無機粒子がこのような範囲の平均粒径を有する場合、プロセス耐性及びブリスター耐性を効果的に高めることができる。さらに、通常は、樹脂組成物の硬化物の誘電率及び線熱膨張係数を小さくできる。平均粒径の下限は、任意であり、例えば、0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上などでありうる。
【0057】
要件(c2)を満たす(C)中空無機粒子の材料としては、任意の無機材料を用いうる。この無機材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸タングステン酸ジルコニウム、アルミノシリケート等が挙げられる。また、特にシリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。中でも要件(c2)を満たす(C)中空無機粒子の材料としては、要件(c1)で説明した無機複合酸化物が好ましい。
【0058】
前記のような要件(c2)を満たす(C)中空無機粒子の製造方法は、任意である。例えば、要件(c2)を満たす(C)中空無機粒子は、特開2016-121026号公報、特開2015-155373号公報に記載の方法によって製造できる。
【0059】
(C)中空無機粒子は、上述した要件(c1)及び要件(c2)の一方のみを満たしていてもよいが、その両方を満たすことが好ましい。要件(c1)及び要件(c2)の両方を満たす(C)中空無機粒子を用いることにより、プロセス耐性及びブリスター耐性を特に効果的に高めることができる。
【0060】
(C)中空無機粒子は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
(C)中空無機粒子は、一般に、当該粒子内に形成された中空部と、この中空部を囲む無機材料で形成された外殻部とを有する。通常、中空部は、外殻部によって粒子外部から区画されている。この際、中空部は、粒子外部とは連通していないことが望ましい。よって、外殻部は、中空部と粒子外部とを連通する孔を有さない無気孔の殻であることが望ましい。このような(C)中空無機粒子を用いることにより、プロセス耐性及びブリスター耐性を効果的に高めることができる。外殻部が無気孔であることは、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより確認できる。このような(C)中空無機粒子は、特開2016-121026号公報に記載の方法によって製造でき、また、太平洋セメント社製の中空アルミノシリケート粒子「MG-005」として入手できる。
【0062】
(C)中空無機粒子の比表面積は、好ましくは60m2/g以下、より好ましくは40m2/g以下、特に好ましくは15m2/g以下である。(C)中空無機粒子が前記範囲の比表面積を有する場合、プロセス耐性及びブリスター耐性を効果的に高めることができる。さらに、通常は、樹脂組成物の硬化物の誘電率及び線熱膨張係数を小さくできる。(C)中空無機粒子の比表面積の下限は、特段の制限は無く、例えば1m2/gでありうる。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製「Macsorb HM-1210」)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出することで得られる。
【0063】
(C)中空無機粒子は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0064】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0065】
表面処理剤による表面処理の程度は、(C)中空無機粒子の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、(C)中空無機粒子100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0066】
表面処理剤による表面処理の程度は、(C)中空無機粒子の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。(C)中空無機粒子の単位表面積当たりのカーボン量は、(C)中空無機粒子の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
【0067】
中空無機粒子の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の中空無機粒子を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された中空無機粒子に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて中空無機粒子の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0068】
樹脂組成物における(C)中空無機粒子の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、特に好ましくは25質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。(C)中空無機粒子の量が前記の範囲にある場合、プロセス耐性及びブリスター耐性を効果的に高めることができる。さらに、通常は、樹脂組成物の硬化物の誘電率及び線熱膨張係数を小さくしたり、硬化物の機械強度を高めたりできる。
【0069】
樹脂組成物中の不揮発成分の質量Mt、(C)中空無機粒子の質量Mc、及び、(C)中空無機粒子の空孔率Rp[%]を用いて、下記式(c3)で表される軽減比率R(c3)[%]を定義する。この軽減比率R(c3)において、「{Rp/(100-Rp)}×Mc」は、ある(C)中空無機粒子の中空部の体積とその(C)中空無機粒子を形成する無機材料の物質密度との積に相当し、よってその(C)中空無機粒子の中空部の体積分の無機材料の質量を表す。また、「Σ(Rp/(100-Rp)×Mc)」は、樹脂組成物に含まれる全ての(C)中空無機粒子の中空部の体積分の無機材料の質量の合計を表す。したがって、式(c3)の右辺の大かっこ内の第二項の分母は、中空部に(C)中空無機粒子の無機材料が充填されていたと仮定した場合の樹脂組成物の不揮発成分の質量を表す。よって、軽減比率R(c3)は、中空部の無い無機粒子を含む樹脂組成物(即ち、中空部に無機材料が充填されていること以外は本実施形態に係る樹脂組成物と同じ組成を有する樹脂組成物)に比較して、(C)中空無機粒子を含む本実施形態に係る樹脂組成物が、中空部によってどれだけ質量を軽減できているかを表す。プロセス耐性及びブリスター耐性を効果的に高める観点から、本実施形態に係る樹脂組成物の軽減比率R(c3)は、好ましくは7%以上、より好ましくは10%以上、特に好ましくは15%以上であり、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、特に好ましくは50%以下である。
【0070】
【0071】
[5.(D)成分:熱可塑性樹脂]
樹脂組成物は、上述した成分の他に、更に任意の成分を含んでいてもよい。例えば、樹脂組成物は、任意の成分として(D)熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
【0072】
(D)成分としての熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。中でも、プロセス耐性及びブリスター耐性を効果的に高める観点、並びに、表面粗さが小さく導体層との密着性に特に優れる絶縁層を得る観点から、フェノキシ樹脂が好ましい。また、熱可塑性樹脂は、1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」;等が挙げられる。
【0074】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」;積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
【0075】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0076】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0077】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0078】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE-2St 1200」等が挙げられる。
【0079】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0080】
(D)熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは70,000以下、より好ましくは60,000以下、特に好ましくは50,000以下である。(D)熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)が前記範囲にある場合、プロセス耐性及びブリスター耐性を効果的に高めることができる。さらに、通常は、樹脂組成物の硬化物の誘電率及び線熱膨張係数を小さくしたり、硬化物の機械強度を高めたりできる。
【0081】
(D)熱可塑性樹脂を使用する場合、樹脂組成物における(D)熱可塑性樹脂の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。(D)熱可塑性樹脂の量が前記範囲にある場合、プロセス耐性及びブリスター耐性を効果的に高めることができる。さらに、通常は、樹脂組成物の硬化物の誘電率及び線熱膨張係数を小さくしたり、硬化物の機械強度を高めたりできる。
【0082】
[6.(E)成分:硬化促進剤]
樹脂組成物は、上述した成分の他に、更に任意の成分として(E)硬化促進剤を含んでいてもよい。
【0083】
(E)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0085】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0086】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0087】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0088】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0089】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0090】
(E)硬化促進剤を使用する場合、樹脂組成物における(E)硬化促進剤の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。(E)硬化促進剤の量が前記範囲にある場合、プロセス耐性及びブリスター耐性を効果的に高めることができる。さらに、通常は、樹脂組成物の硬化物の誘電率及び線熱膨張係数を小さくしたり、硬化物の機械強度を高めたりできる。
【0091】
[7.(F)成分:マレイミド化合物]
樹脂組成物は、上述した成分の他に、更に任意の成分として(F)マレイミド化合物を含んでいてもよい。(F)マレイミド化合物は、下記式(F1)で表されるマレイミド基を分子中に含有する化合物である。(F)マレイミド化合物を用いることにより、樹脂組成物の硬化物の耐熱性を高めることが出来る。
【0092】
【0093】
(F)マレイミド化合物としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド、フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼンなどが挙げられる。
【0094】
(F)マレイミド化合物の具体例としては、大和化成工業社製「BMI-1000」、ケイ・アイ化成社製「BMI」(4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド);大和化成工業社製「BMI-2000」(ポリフェニルメタンマレイミド);大和化成工業社製「BMI-3000」(m-フェニレンビスマレイミド);大和化成工業社製「BMI4000」、ケイ・アイ化成社製「BMI-80」(ビスフェノール A ジフェニルエーテルビスマレイミド);大和化成工業社製「BMI5100」、ケイ・アイ化成社製「BMI-70」(3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド);大和化成工業社製「BMI-7000」(4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド);大和化成工業社製「BMI-TMH」(1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン);大和化成工業社製「BMI-6000」(4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド);大和化成工業社製「BMI-8000」(4,4’-ジフェニルスルフォンビスマレイミド);大和化成工業社製の1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン;大和化成工業社製の1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン;三井化学ファイン社製「ANILIX-MI」;等が挙げられる。(F)マレイミド化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
樹脂組成物における(F)マレイミド化合物の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。(F)マレイミド化合物の量が前記の範囲にあることにより、樹脂組成物の硬化物の耐熱性を高めることが出来る。
【0096】
[8.(G)成分:フォスファゼン化合物]
樹脂組成物は、上述した成分の他に、更に任意の成分として(G)フォスファゼン化合物を含んでいてもよい。フォスファゼン化合物は、-P=N-で表される構造単位を含む化合物をいう。(G)フォスファゼン化合物としては、例えば、-P=N-で表される構造単位からなる環状構造を有するシクロフォスファゼン化合物、-P=N-で表される構造単位からなる鎖状構造を有するポリフォスファゼン化合物等が挙げられる。中でも、シクロフォスファゼン化合物が好ましく、フェノール性水酸基を有するシクロフォスファゼン化合物が特に好ましい。(G)フォスファゼン化合物を用いることにより、樹脂組成物の硬化物の弾性率を低くして、絶縁層の機械的強度を向上させることができる。また、(G)フォスファゼン化合物を用いることにより、通常は、絶縁層の難燃性を向上させることができる。
【0097】
(G)フォスファゼン化合物の具体例としては、例えば、大塚化学社製の「SPH-100」、「SPS-100」、「SPB-100」「SPE-100」;伏見製薬所社製の「FP-100」、「FP-110」、「FP-300」、「FP-390」、「FP-400」等が挙げられる。(G)フォスファゼン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
樹脂組成物における(G)フォスファゼン化合物の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。(G)フォスファゼン化合物の量が前記の範囲にあることにより、樹脂組成物の硬化物の弾性率を効果的に低くできる。
【0099】
[9.(H)成分:ラジカル重合性化合物]
樹脂組成物は、上述した成分の他に、更に任意の成分として(H)ラジカル重合性化合物を含んでいてもよい。(H)ラジカル重合性化合物は、通常、エチレン性二重結合を有する。そして、例えば活性エネルギー線の照射によって重合反応を生じることができる。(H)ラジカル重合性化合物を用いることにより、樹脂組成物の硬化物の弾性率を低くして、絶縁層の機械的強度を向上させることができる。さらに、通常は、樹脂組成物の硬化物の誘電正接を低くできる。
【0100】
(H)ラジカル重合性化合物は、通常、エチレン性二重結合を含むラジカル重合性不飽和基を分子中に含む。このラジカル重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、ビニルフェニル基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基、マレイミド基、フマロイル基、マレオイル基が挙げられる。(H)ラジカル重合性化合物は、1分子あたり2個以上のラジカル重合性不飽和基を有することが好ましい。また、(H)ラジカル重合性化合物は、脂環式構造及び芳香環構造等の環状構造を分子中に含むことが好ましい。
【0101】
(H)ラジカル重合性化合物としては、例えば、下記に示す化合物が挙げられる。
【0102】
【0103】
(n1及びm1は、0~300の整数を表す。但し、n1及びm1の一方が0である場合を除く。n1及びm1としては、1~100の整数を表すことが好ましく、1~50の整数を表すことがより好ましく、1~10の整数を表すことがさらに好ましい。n1及びm1は同じであってもよく、異なっていてもよい。)
【0104】
(H)ラジカル重合性化合物の具体例としては、三菱ガス化学社製の「OPE-2St」、「OPE-2St 1200」、新中村化学工業社製の「A-DOG」、共栄社化学社製の「DCP-A」等が挙げられる。(H)ラジカル重合性化合物は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0105】
(H)ラジカル重合性化合物の数平均分子量は、好ましくは3000以下、より好ましくは2500以下、さらに好ましくは2000以下、1500以下である。下限は、好ましくは100以上、より好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上、1000以上である。数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0106】
樹脂組成物における(H)ラジカル重合性化合物の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。(H)ラジカル重合性化合物の量が前記の範囲にあることにより、樹脂組成物の硬化物の弾性率を効果的に低くできる。
【0107】
[10.(I)成分:重合開始剤]
樹脂組成物は、上述した成分の他に、更に任意の成分として(I)重合開始剤を含んでいてもよい。(I)重合開始剤は、(H)ラジカル重合性化合物の重合を促進させる機能を有する。
【0108】
(I)重合開始剤としては、例えば、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、α,α’-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートt-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物が挙げられる。
【0109】
(I)重合開始剤の具体例としては、日油社製の「パーブチルC」、「パーブチルA」、「パーブチルP」、「パーブチルL」、「パーブチルO」、「パーブチルND」、「パーブチルZ」、「パークミルP」、「パークミルD」等が挙げられる。(I)重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0110】
樹脂組成物における(I)重合開始剤の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0111】
[11.(J)成分:(C)中空無機粒子以外の無機充填材]
樹脂組成物は、上述した成分の他に、更に任意の成分として(J)無機充填材を含んでいてもよい。ただし、この(J)無機充填材には、上述した(C)中空無機粒子を含めない。
【0112】
(J)無機充填材としては、無機材料で形成した任意の粒子を用いうる。無機材料の例としては、例えば、(C)中空無機粒子の材料として例示した無機材料を任意に用いうる。また、(J)無機充填材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
(J)無機充填材の平均粒径は、特段の制限は無い。具体的な平均粒径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは1μm以下である。(J)無機充填材の平均粒径は、(C)中空無機粒子の平均粒径と同様の方法によって測定できる。
【0114】
(J)無機充填材の比表面積は、(C)中空無機粒子の比表面積と同じ範囲にありうる。(J)無機充填材の比表面積は、(C)中空無機粒子の比表面積と同様の方法で測定できる。
【0115】
(J)無機充填材は、(C)中空無機粒子と同じく、表面処理剤で処理されていてもよい。表面処理剤の例、及び、表面処理の程度は、(C)中空無機粒子と同様でありうる。
【0116】
樹脂組成物における(J)無機充填材の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、特に好ましくは35質量%以下である。
【0117】
[12.(K)成分:有機充填材]
樹脂組成物は、上述した成分の他に、更に任意の成分として(K)有機充填材を含んでいてもよい。(K)有機充填材の種類に制限は無い。また、(K)有機充填材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0118】
(K)有機充填材としては、樹脂組成物の反りを抑制する観点では、ゴム粒子が好ましい。ゴム粒子は、樹脂組成物を調製する際の有機溶剤に溶解せず、樹脂組成物中の樹脂成分とも相溶せず、樹脂組成物のワニス中では分散状態で存在するものが好ましい。樹脂組成物の樹脂成分とは、樹脂組成物に含まれる不揮発成分のうち、(C)中空無機粒子及び(J)無機充填材以外の成分をいう。このようなゴム粒子としては、例えば、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子、架橋スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。中でも、硬化物の反りの抑制、及び現像性を向上させる観点から、コアシェル型ゴム粒子が好ましい。
【0119】
コアシェル型ゴム粒子は、当該粒子の表面にあるシェル層と、そのシェル層の内部にあるコア層とを含むゴム粒子であり、シェル層とコア層との間に中間層を含んでいてもよい。コアシェル型ゴム粒子としては、例えば、ガラス状ポリマーで形成されたシェル層と、ゴム状ポリマーで形成されるコア層とを含むコアシェル型ゴム粒子;ガラス状ポリマーで形成されたシェル層と、ゴム状ポリマーで形成された中間層と、ガラス状ポリマーで形成されたコア層とを含むコアシェル型ゴム粒子;等が挙げられる。ガラス状ポリマーとしては、例えば、メタクリル酸メチルの重合物等が挙げられ、ゴム状ポリマーとしては、例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)等が挙げられる。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、アイカ工業社製のスタフィロイド「AC3832」、「AC3816N」、三菱ケミカル社製の「メタブレンKW-4426」等が挙げられる。
【0120】
(K)有機充填材の平均粒径は、(J)無機充填材の平均粒径と同様の範囲にありうる。また、(K)有機充填材の平均粒径は、(C)中空無機粒子の平均粒径と同じ方法で測定できる。
【0121】
樹脂組成物における(K)有機充填材の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0122】
[13.(L)成分:難燃剤]
樹脂組成物は、上述した成分の他に、更に任意の成分として(L)難燃剤を含んでいてもよい。ただし、この(L)難燃剤には、上述した(G)フォスファゼン化合物を含めない。(L)難燃剤を用いることにより、樹脂組成物の硬化物の難燃性を高めることができる。
【0123】
(L)難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。(L)難燃剤の具体例としては、三光社製の「HCA-HQ」、大八化学工業社製の「PX-200」等が挙げられる。また、難燃剤としては、加水分解しにくいものが好ましく、例えば、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド等が好ましい。(L)難燃剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0124】
樹脂組成物における(L)難燃剤の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0125】
[14.(M)成分:その他の任意成分]
樹脂組成物は、上述した成分の他に、更に任意の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物;増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、着色剤、界面活性剤等の樹脂添加剤;などが挙げられる。これらの添加剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0126】
[15.効果を特に有効活用できる組成の条件]
樹脂組成物に含まれる液状成分の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは3質量%以上、より好ましくは6質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。前記の「液状成分」とは、樹脂組成物中の不揮発成分のうち、常圧下20℃において液状の成分をいう。本発明者の検討によれば、従来の樹脂組成物は、液状成分を多く含むほど、その樹脂組成物から製造される絶縁層はブリスターを生じ易いことが判明している。これに対し、上述した樹脂組成物は、そのようにブリスターが生じ易い組成を有していても、ブリスターの発生を抑制できる。よって、ブリスター耐性を向上させられるとの効果を有効に活用する観点では、本実施形態に係る樹脂組成物は従来ブリスターが生じ易かった組成を有することが好ましく、具体的には、前記の量の液状成分を含むことが好ましい。液状成分の量の上限は、特段の制限は無く、例えば、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下などでありうる。
【0127】
[16.樹脂組成物の製造方法]
上述した樹脂組成物は、例えば、配合成分を、回転ミキサーなどの撹拌装置を用いて撹拌し、均一に分散させることにより製造できる。撹拌は、樹脂組成物が有機溶剤を含む状態で行ってもよい。上述した樹脂組成物によれば、このような撹拌による(C)中空無機粒子の割れを抑制できる。
【0128】
[17.樹脂組成物の特性]
上述した樹脂組成物は、プロセス耐性に優れる。よって、この樹脂組成物は、当該樹脂組成物を製造する過程において(C)中空無機粒子の割れを抑制できる。したがって、樹脂組成物は、割れた(C)中空無機粒子の割合を少なくでき、好ましくは割れた(C)中空無機粒子を含まない。
【0129】
さらに、上述した樹脂組成物は、プロセス耐性に優れるので、当該樹脂組成物を用いて絶縁層を製造するまでの過程において、(C)中空無機粒子の割れを抑制できる。したがって、この樹脂組成物の硬化物で形成される絶縁層は、割れた(C)中空無機粒子の割合を少なくでき、好ましくは割れた(C)中空無機粒子を含まない。
【0130】
一実施形態において、上述した樹脂組成物を、ホモミキサー(プライミクス社製「T.K. Agi-Homo-Mixer」)中で撹拌する。この撹拌は、ホモミキサーを7000rpmで30分間回転させて行う。こうして撹拌した樹脂組成物を、基材上に塗布し、乾燥させ樹脂フィルムとし、その後、200℃で90分間加熱して硬化させて、硬化物を得る。この硬化物において、割れた(C)中空無機粒子を無くすことができる。割れた(C)中空無機粒子の有無は、FIB-SEM複合装置を用いて、断面観察(観察幅30μm、観察倍率9,000倍)を行うことで確認できる。前記のプロセス耐性の評価の具体的な操作は、実施例の[中空粒子のプロセス耐性評価]に記載の方法を採用できる。
【0131】
上述した樹脂組成物は、ブリスター耐性に優れる。よって、この樹脂組成物を用いることにより、リフロー時のブリスターを抑制できる絶縁層を得ることができる。
【0132】
一実施形態において、内層基板上に、樹脂組成物を含む樹脂組成物層を形成する。その後、樹脂組成物層を180℃で30分加熱して硬化させて、硬化物で形成された絶縁層を得る。この絶縁層の表面に、膨潤液に60℃で5分間浸漬すること、粗化液に80℃で15分間浸漬すること、及び、中和液に40℃で5分間浸漬することを含む粗化処理を行う。その後、絶縁層の表面に、セミアディティブ工法によってメッキ導体層を形成して、評価用基板を得る。この評価用基板を、ピーク温度260℃の半田リフロー温度を再現するリフロー装置(日本アントム社製「HAS-6116」)に5回通す試験を行う(リフロー温度プロファイルは、IPC/JEDEC J-STD-020Cに準拠)。このような試験を行った場合に、導体層のふくれを抑制できる。例えば、前記の試験を5つの絶縁層のサンプルについて行った場合に、膨れが発生するサンプルの数を、好ましくは2以下、より好ましくはゼロにできる。前記のブリスター耐性の評価の具体的な操作は、実施例の[ブリスター耐性の評価]に記載の方法を採用できる。
【0133】
上述した樹脂組成物が優れたブリスター耐性及びプロセス耐性を達成できる仕組みは、下記の通りであると、本発明者は推察する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記の仕組みに制限されない。
【0134】
樹脂組成物が(C)中空無機粒子を含むことにより、樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層内には、中空部が形成される。この中空部は、熱の伝わりを抑制できるので、リフロー時の熱の侵入を抑制できる。よって、絶縁層に侵入する熱による樹脂の分解を抑制できるので、絶縁層からのガスの発生を抑制できる。したがって、このガスによって絶縁層上の導体層が押し上げられることを抑制できるので、ブリスターを抑制できる。
【0135】
ところが、一般に、中空部を有する中空粒子は、ミキサー等の分散装置によって分散させられる工程において衝撃を受け、割れ易い。そのため、中空粒子を含む従来の樹脂組成物は、プロセス耐性が低かったので、ブリスター耐性及びプロセス耐性の両方を良好にすることが困難であった。
【0136】
これに対し、要件(c1)を満たす(C)中空無機粒子の材料としての無機複合酸化物は、一般に、高い機械的強度を有する。よって、衝撃を受けても、破損し難い。他方、要件(c2)を満たす(C)中空無機粒子は、その粒子形状が小さいため、衝撃を受けた場合に、その径方向に対して交差する方向(表面方向等)に衝撃力を逃がすことができる。よって、径方向に伝わる衝撃力を小さくできる。一般に、中空粒子の外殻部は、径方向への衝撃力で割れ易く、径方向に対して交差する方向への衝撃力では割れ難い。したがって、(C)中空無機粒子は、衝撃力を受けても破損し難い。そのため、本実施形態に係る樹脂組成物では、(C)中空無機粒子の割れを抑制できるので、ブリスター耐性及びプロセス耐性の両方を良好にすることが可能である。
【0137】
上述した樹脂組成物の硬化物は、通常、誘電率を低くできる。よって、上述した樹脂組成物を用いることにより、誘電率の低い絶縁層を得ることができる。
一実施形態において、樹脂組成物を、乾燥させ、200℃で90分間加熱して硬化させて、硬化物を得る。この硬化物の比誘電率を、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.9以下、更に好ましくは2.8以下、特に好ましくは2.6以下にできる。
硬化物の比誘電率は、長さ80mm、幅2mm、厚み40μmの硬化物からなる評価サンプルについて、分析装置(アジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies)社製「HP8362B」)を用いた空洞共振摂動法により、測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて、測定できる。前記の樹脂組成物の硬化物の比誘電率を測定する具体的な操作は、実施例の[比誘電率Dkの測定]に記載の方法を採用できる。
【0138】
上述した樹脂組成物の硬化物は、通常、線熱膨張係数を小さくできる。よって、上述した樹脂組成物を用いることにより、反りを生じ難い絶縁層を得ることができる。
一実施形態において、樹脂組成物を、乾燥させ、200℃で90分間加熱して硬化させて、硬化物を得る。この硬化物の25℃から150℃までの平均の線熱膨張整数を、好ましくは45ppm/℃以下、より好ましくは40ppm/℃以下、特に好ましくは38ppm/℃以下にできる。
硬化物の線熱膨張係数は、長さ約15mm、幅約5mm、厚み40μmの試験片について、熱機械分析装置(リガク社製「Thermo Plus TMA8310」)を使用して、引張加重法で熱機械分析を行うことにより、測定できる。この測定は、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて行いうる。前記の樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数を測定する具体的な操作は、実施例の[線熱膨張係数CTEの評価]に記載の方法を採用できる。
【0139】
[18.樹脂組成物の用途]
上述した樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層形成用の樹脂組成物)として好適に使用することができる。特に、ブリスター耐性に優れることを有効に活用する観点から、上述した樹脂組成物は、絶縁層上に導体層(再配線層を含む。)を形成するための当該絶縁層を形成するための樹脂組成物(導体層を形成するための絶縁層形成用の樹脂組成物)として用いることが望ましい。
【0140】
また、上述した樹脂組成物は、多層プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(多層プリント配線板の絶縁層形成用の樹脂組成物)、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の層間絶縁層形成用の樹脂組成物)として好適に使用することができる。
【0141】
[19.樹脂シート]
本発明の一実施形態に係る樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた、上述した樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む。
【0142】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化の観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、例えば、5μm以上、10μm以上等とし得る。
【0143】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0144】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(以下「PMMA」と略称することがある。)等のアクリルポリマー、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(以下「TAC」と略称することがある。)、ポリエーテルサルファイド(以下「PES」と略称することがある。)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0145】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0146】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面に、マット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の処理が施されていてもよい。
【0147】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種類以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」;東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」;等が挙げられる。
【0148】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚みが上記範囲であることが好ましい。
【0149】
樹脂シートは、必要に応じて、支持体及び樹脂組成物層以外の任意の層を含んでいてもよい。斯かる任意の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0150】
樹脂シートは、例えば、有機溶剤及び樹脂組成物を含む樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等の塗布装置を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより、製造することができる。
【0151】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤;等を挙げることができる。有機溶剤は、1種類単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0152】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の方法により実施してよい。乾燥条件は、特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0153】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、通常は、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0154】
[20.プリント配線板]
本発明の一実施形態に係るプリント配線板は、上述した樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む。このプリント配線板の絶縁層が、前記の樹脂組成物の硬化物で形成されているので、(C)中空無機粒子の割れによる製品ロット毎の品質のバラツキを抑制でき、リフロー時の導体層の膨れを抑制できる。
【0155】
プリント配線板の製造方法に制限は無い。プリント配線板は、例えば、上述の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂組成物層が内層基板と接合するように、樹脂シートを積層する工程。
(II)樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する工程。
【0156】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材である。内層基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。内層基板は、その片面又は両面に、導体層を有していてもよい。この導体層は、例えば回路として機能させるために、パターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に回路として導体層が形成された内層基板は、「内層回路基板」ということがある。また、プリント配線板を製造する際に更に絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も、「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0157】
内層基板と樹脂シートとの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより、内層基板に樹脂組成物層を貼り合わせることで、行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ということがある。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0158】
内層基板と樹脂シートとの積層は、例えば、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0159】
積層の後に、常圧下(大気圧下)で、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0160】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0161】
工程(I)の後で、工程(II)を行う。工程(II)においては、樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する。樹脂組成物層の熱硬化条件は、特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して採用される条件を任意に使用してよい。
【0162】
樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なりうる。硬化温度は、好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~200℃でありうる。硬化時間は、好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~90分間でありうる。
【0163】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間)予備加熱してもよい。
【0164】
プリント配線板の製造方法は、更に、下記の工程(III)、工程(IV)及び工程(V)を含んでいてもよい。
(III)絶縁層に穴あけする工程。
(IV)絶縁層に粗化処理を施す工程。
(V)導体層を形成する工程。
【0165】
なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間のいずれの時点で実施してよい。中でも、抉れ部の発生をより抑制する観点から、絶縁層に穴あけする工程(III)の後に、支持体を除去することが好ましい。例えば、レーザー光の照射によって絶縁層に穴あけした後に支持体を剥離すると、良好な形状のホールを形成し易い。
【0166】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法及び形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0167】
工程(IV)は、絶縁層に粗化処理を施す工程である。工程(IV)では、通常、スミアの除去も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されない。例えば、膨潤液による膨潤処理、粗化液としての酸化剤による粗化処理、及び、中和液による中和処理をこの順に実施して、絶縁層を粗化処理することができる。また、プラズマ処理等の乾式処理、サンドブラスト等の機械処理によっても粗化処理を行うことが出来る。
【0168】
膨潤液としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液が挙げられる。該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。また、膨潤液は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0169】
酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、酸化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~80℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は、5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトP」、「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0170】
中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。また、中和液は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0171】
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上等でありうる。また、粗化処理後の絶縁層表面の二乗平均平方根粗さ(Rq)は、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上等でありうる。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)及び二乗平均平方根粗さ(Rq)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0172】
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は、特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種類以上の金属を含む。導体層は、単金属層であってもよく、合金層であってもよい。合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種類以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層;又は、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層;が好ましい。さらには、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層;又はニッケル・クロム合金の合金層;がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0173】
導体層は、単層構造であってもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層を2層以上含む複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0174】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0175】
導体層は、メッキにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の技術により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。中でも、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。
【0176】
以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。まず、絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0177】
また、必要に応じて、工程(I)~工程(V)による絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層プリント配線板を製造してもよい。
【0178】
[21.半導体装置]
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、前記のプリント配線板を含む。この半導体装置は、プリント配線板を用いて製造することができる。
【0179】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0180】
半導体装置は、例えば、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは、半導体を材料とする電気回路素子を任意に用いることができる。
【0181】
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されない。実装方法の例としては、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例】
【0182】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無い。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示の無い限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧の環境で行った。
【0183】
[無機粒子の平均粒径の測定方法]
無機粒子の平均粒径は、下記の方法で測定した。
無機粒子100mg、及びメチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散した。レーザー回折式粒径分布測定装置(堀場製作所社製「LA-960」)を使用して、使用光源波長を青色および赤色とし、フローセル方式で無機粒子の粒径分布を体積基準で測定した。得られた粒径分布から、メディアン径として、無機粒子の平均粒径を算出した。
【0184】
[無機粒子の空孔率の測定方法]
無機粒子の空孔率は、下記の方法で測定した。
無機粒子の密度を、真密度測定装置(QUANTACHROME社製「ULTRAPYCNOMETER1000」)を用いて測定した。この測定では、窒素を測定ガスとして用いた。その後、測定された密度と、無機粒子を形成する無機材料(アルミノシリケート又はシリカ)の物質密度とを用いて、前記の式(X)に従い、無機粒子の空孔率を測定した。式(X)において、無機材料としてのシリカの物質密度は2.2g/cm3、実施例および比較例で用いたアルミノシリケートの物質密度は2.5g・cm3とした。
空孔率(体積%)={1-(測定した密度[g/cm3]/無機材料の物質密度[g/cm3])}×100 (X)
【0185】
[合成例1.中空シリカ粒子1の製造]
特許第5940188号公報の記載に従い、中空シリカ粒子1を合成した。得られた中空シリカ粒子1の平均粒径は3μm、空孔率は20体積%であった。
【0186】
[合成例2.中空シリカ粒子2の製造]
前記合成例1と同様にして、中空シリカ粒子2を合成した。得られた中空シリカ粒子2の平均粒径は2.7μm、空孔率は10体積%であった。
【0187】
[実施例1]
ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269)7部、液状1,4-グリシジルシクロヘキサン(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX1658」、エポキシ当量約135)7部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX4000H」、エポキシ当量約185)10部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)60部、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、水酸基当量約151、不揮発成分50%の2-メトキシプロパノール溶液)3部、フェノキシ樹脂(三菱化学社製「YX7553BH30」、不揮発成分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)8部、カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216、不揮発成分50質量%のトルエン溶液)10部、中空アルミノシリケート粒子(太平洋セメント社製「MG-005」、平均粒径1.6μm、空孔率80体積%、比表面積6.1m2/g)20部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、不揮発成分5質量%のMEK溶液)5部、メチルエチルケトン15部、及び、シクロヘキサノン10部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。
【0188】
支持体として、離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この支持体の離型面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが30μmとなるように樹脂ワニスを均一に塗布し、80℃~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、樹脂シートを作製した。
【0189】
[実施例2]
樹脂ワニスの材料に、有機充填材としてのゴム粒子(ガンツ化成社製「スタフィロイドAC3816N」)1部を追加した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0190】
[実施例3]
樹脂ワニスの材料に、リン系難燃剤(三光社製「HCA-HQ」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド)2部を追加した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0191】
[実施例4]
樹脂ワニスの材料に、フォスファゼン化合物(大塚化学社製「SPS-100」の不揮発成分50%シクロヘキサノン溶液)4部を追加した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0192】
[実施例5]
活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)の量を、60部から55部に変更した。また、樹脂ワニスの材料に、ベンゾオキサジン系硬化剤(四国化成社製のベンゾオキサジンモノマー「P-d」、活性基当量217、不揮発成分60質量%のMEK溶液)5部を追加した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0193】
[実施例6]
硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、不揮発成分5質量%のMEK溶液)の量を、5部から3部に変更した。また、樹脂ワニスの材料に、硬化促進剤(四国化成社製「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)0.1部を追加した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0194】
[実施例7]
中空アルミノシリケート粒子(太平洋セメント社製「MG-005」、平均粒径1.6μm、空孔率80体積%)20部を、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された中空アルミノシリケート粒子(太平洋セメント社製「MG-005」、平均粒径1.6μm、空孔率80体積%)20部に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0195】
[実施例8]
ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269)10部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX4000H」、エポキシ当量約185)10部、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YL7760」、エポキシ当量約238)10部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「828EL」、エポキシ当量約180)10部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)50部、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、水酸基当量約151、不揮発成分50%の2-メトキシプロパノール溶液)3部、フェノキシ樹脂(三菱化学社製「YX7553BH30」、不揮発成分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)8部、カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216、不揮発成分50質量%のトルエン溶液)5部、オリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂(三菱ガス化学社製「OPE-2St 1200」、不揮発成分72質量%のトルエン溶液)10部、ジクミルパーオキサイド(日油社製「パークミル D」)0.2部、硬化促進剤(四国化成工業社製の2-フェニル-4-メチルイミダゾール(2P4MZ)、不揮発成分5質量%のMEK溶液)5部、中空アルミノシリケート粒子(太平洋セメント社製「MG-005」、平均粒径1.6μm、空孔率80体積%)20部、メチルエチルケトン15部、及び、シクロヘキサノン10部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。
【0196】
支持体として、離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この離型面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが30μmとなるように樹脂ワニスを均一に塗布し、80℃~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、樹脂シートを作製した。
【0197】
[実施例9]
ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX4000H」、エポキシ当量約185)10部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「828EL」、エポキシ当量約180)20部、ナフタレン型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN475V」、エポキシ当量約332)10部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-6000」、エポキシ当量250)20部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)30部、フェノキシ樹脂(三菱化学社製「YX7553BH30」、不揮発成分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)8部、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(ケイ・アイ化成社製「BMI-70」)12部、中空アルミノシリケート粒子(太平洋セメント社製「MG-005」、平均粒径1.6μm、空孔率80体積%)8部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、空孔率0体積%、アドマテックス社製「SO-C2」)50部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、不揮発成分5質量%のMEK溶液)5部、メチルエチルケトン15部、及び、シクロヘキサノン10部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。
【0198】
支持体として、離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この離型面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが30μmとなるように樹脂ワニスを均一に塗布し、80℃~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、樹脂シートを作製した。
【0199】
[実施例10]
ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX4000H」、エポキシ当量約185)10部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「828EL」、エポキシ当量約180)20部、ナフタレン型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN475V」、エポキシ当量約332)10部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-6000」、エポキシ当量250)20部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)20部、フェノキシ樹脂(三菱化学社製「YX7553BH30」、不揮発成分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)8部、ビスフェノールAジシアネート(ロンザジャパン社製「Primaset BADCy」、シアネート当量約139)10部、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン社製「Primaset BA230S75」、シアネート当量約232、不揮発成分75質量%のMEK溶液)10部、中空アルミノシリケート粒子(太平洋セメント社製「MG-005」、平均粒径1.6μm、空孔率80体積%)85部、コバルト(III)アセチルアセトナート(東京化成社製、Co(III)AcAcの不揮発成分1質量%のMEK溶液)5部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、不揮発成分5質量%のMEK溶液)3部、メチルエチルケトン60部、及び、シクロヘキサノン40部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。
【0200】
支持体として、離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この離型面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが30μmとなるように樹脂ワニスを均一に塗布し、80℃~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、樹脂シートを作製した。
【0201】
[比較例1]
中空アルミノシリケート粒子(太平洋セメント社製「MG-005」、平均粒径1.6μm、空孔率80体積%)20部を、合成例1で製造した中空シリカ粒子1(平均粒径3μm、空孔率20体積%)60部に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0202】
[比較例2]
中空アルミノシリケート粒子(太平洋セメント社製「MG-005」、平均粒径1.6μm、空孔率80体積%)20部を、合成例2で製造した中空シリカ粒子2(平均粒径2.7μm、空孔率10体積%)70部に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0203】
[比較例3]
中空アルミノシリケート粒子(太平洋セメント社製「MG-005」、平均粒径1.6μm、空孔率80体積%)20部を、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、空孔率0体積%、アドマテックス社製「SO-C2」)75部に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0204】
[比較例4]
中空アルミノシリケート粒子(太平洋セメント社製「MG-005」、平均粒径1.6μm、空孔率80体積%)20部を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子(ダイキン工業社製「ルブロンL-2」、平均粒子径3μm)25部、及び、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、空孔率0体積%、アドマテックス社製「SO-C2」)50部の組み合わせに変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0205】
[評価用硬化物の作製]
離型剤処理されたPETフィルム(リンテック社製「501010」、厚み38μm、240mm角)の離型剤未処理面に、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(パナソニック社製「R5715ES」、厚み0.7mm、255mm角)を重ね、四辺をポリイミド接着テープ(幅10mm)で固定した。このPETフィルムを、以下、「固定PETフィルム」ということがある。
【0206】
実施例及び比較例で得た樹脂ワニスを、上記の固定PETフィルムの離型処理面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるようにダイコーターを用いて塗布し、80℃~120℃(平均100℃)で10分間乾燥して、樹脂シートを得た。
【0207】
次いで、この樹脂シートを200℃のオーブンに投入し、その後90分間加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させた。
【0208】
熱硬化後、ポリイミド接着テープを剥がし、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板を剥がし、更にPETフィルム(リンテック社製「501010」)を剥がして、シート状の硬化物を得た。得られた硬化物を「評価用硬化物」という。
【0209】
[比誘電率Dkの測定]
評価用硬化物を切断して、長さ80mm、幅2mmの評価サンプルを得た。この評価サンプルについて、分析装置(アジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies)社製「HP8362B」)を用いた空洞共振摂動法により、測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて、比誘電率を測定した。2つ試験片について測定を行い、その平均値を算出した。
【0210】
[線熱膨張係数CTEの評価]
評価用硬化物を切断して、長さ約15mm、幅約5mmの試験片を得た。この試験片について、熱機械分析装置(リガク社製「Thermo Plus TMA8310」)を使用して、引張加重法で熱機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定において、25℃から150℃までの平均の線熱膨張率を算出した。
【0211】
[弾性率YMの評価]
評価用硬化物をダンベル状1号形に切り出し、試験片を得た。該試験片を、オリエンテック社製引張試験機「RTC-1250A」を用いて引張強度測定を行い、25℃における弾性率を求めた。測定は、JIS K7127に準拠して実施した。この操作を3回行い、その平均値を算出した(単位:GPa)。
【0212】
[中空粒子のプロセス耐性評価]
実施例および比較例で得た樹脂ワニスを、ホモミキサー(プライミクス社製「T.K. Agi-Homo-Mixer」)中に投入した。このホモミキサーを7000rpmで30分間回転させ、プロセス耐性評価用の試料ワニスを得た。
【0213】
こうして得られた試料ワニスを樹脂ワニスの代わりに用いること以外は、前記[評価用硬化物の作製]と同様の操作を行って、評価用硬化物を作製した。この評価用硬化物について、FIB-SEM複合装置(SIIナノテクノロジー社製「SMI3050SE」)を用いて、断面観察を行った。詳細には、評価用硬化物の表面に垂直な方向における断面をFIB(集束イオンビーム)により削り出し、断面SEM画像(観察幅30μm、観察倍率9,000倍)を取得した。また、前記の断面観察では、各評価用硬化物につき、無作為に選んだ5箇所の断面SEM画像を取得した。取得した断面SEM画像において、粒子の割れが見られるもののプロセス耐性を「×」、見られないもののプロセス耐性を「〇」と判定した。
【0214】
[ブリスター耐性の評価]
(1)樹脂シートのラミネート:
実施例及び比較例で得た樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機社製「MVLP-500」)を用いて、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(パナソニック社製「R5715ES」、厚み0.7mm、255mm角)の両面に樹脂組成物層が接するようにラミネートした。このラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaでプレスすることにより行った。
【0215】
(2)樹脂組成物層の硬化:
ラミネートされた樹脂シートから、支持体を剥離した。その後、180℃、30分の硬化条件で樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成した。これにより、絶縁層、積層板及び絶縁層をこの順に備える「積層基板A」を得た。
【0216】
(3)粗化処理:
作製した積層基板Aの絶縁層の表面を、膨潤液(アトテックジャパン社製のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスエリングディップ・セキュリガンドP)に60℃で5分間浸漬し、次に粗化液(アトテックジャパン社製のコンセントレート・コンパクトP(KMnO4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液))に80℃で15分間浸漬し、その後、中和液(アトテックジャパン社製のリダクションショリューシン・セキュリガントP)に40℃で5分間浸漬して、「粗化基板B」を得た。
【0217】
(4)セミアディティブ工法によるメッキ:
絶縁層の表面に回路を形成するために、粗化基板Bを、PdCl2を含む無電解メッキ用溶液に浸漬し、次に無電解銅メッキ液に浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成を行った。その後、硫酸銅電解メッキを行い、30±5μmの厚さで導体層を形成した。次に、アニール処理を180℃にて60分間行った。これにより、絶縁層上に導体層を備える回路基板としての「評価用基板C」を得た。
【0218】
(5)リフロー工程でのふくれ評価:
評価用基板Cを切断して、100mm×50mmの小片を得た。この小片を、ピーク温度260℃の半田リフロー温度を再現するリフロー装置(日本アントム社製「HAS-6116」)に5回通す試験を行った(リフロー温度プロファイルは、IPC/JEDEC J-STD-020Cに準拠)。前記の試験を5つの小片で行い、試験後の小片を目視観察した。目視観察の結果、3つ以上の小片において導体層にふくれ等の異常があるもののブリスター耐性を「×」と判定した。また、1~2つの小片で導体層にふくれ等の異常があるもののブリスター耐性を「△」と判定した。さらに、全ての小片で全く異常のないもののブリスター耐性を「○」と判定した。
【0219】
[結果]
実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。下記の表において「液状成分割合」とは、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対する液状成分の質量割合を表す。前記の実施例及び比較例で使用された樹脂ワニスの不揮発成分のうち、液状成分は、液状1,4-グリシジルシクロヘキサン(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX1658」)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「828EL」)及び硬化促進剤(四国化成社製「1B2PZ」)が該当する。また、下記の表において、樹脂組成物の調製に用いた成分の欄の数値は、各成分の配合量(不揮発分換算)を表す。
【0220】
【0221】
【0222】
実施例において、(D)成分~(L)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。