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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】ひずみセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/16 20060101AFI20230905BHJP
【FI】
G01B7/16 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022010308
(22)【出願日】2022-01-26
(65)【公開番号】P2023108970
(43)【公開日】2023-08-07
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 貴志
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 基弘
(72)【発明者】
【氏名】太田 則一
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5086785(US,A)
【文献】国際公開第2012/073770(WO,A1)
【文献】特開2011-133455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1スリットを有しており、前記第1スリットが開く方向に弾性変形可能な絶縁性基板と、
前記第1スリットの一方側に配置される第1導電性部材と、
前記第1スリットの他方側に配置されており、前記第1スリットが閉じている状態で前記第1導電性部材と接触し、前記第1スリットが開いている状態で前記第1導電性部材と離間する第2導電性部材と、
前記第1スリットの互いに対向する一対の内面のそれぞれに配置されている第1導電性粒子層と、を備え、
前記第1導電性部材は、前記第1スリットが開いている状態で、前記第1導電性粒子層を介して前記第2導電性部材と電気的に接続される、ひずみセンサ。
【請求項2】
前記第1導電性粒子層は、繊維状の粒子を含む、請求項1に記載のひずみセンサ。
【請求項3】
前記第1スリットが閉じている状態で、前記一対の内面は、前記第1導電性粒子層を挟んで隙間無く配置されている、請求項1又は2に記載のひずみセンサ。
【請求項4】
前記絶縁性基板は、
さらに、第2スリットを有しており、
前記第2スリットが開く方向に弾性変形可能であり、
前記ひずみセンサは、さらに、
前記第2スリットの一方側に配置される第3導電性部材と、
前記第2スリットの他方側に配置されており、前記第2スリットが閉じている状態で前記第3導電性部材と直接的に接触し、前記第2スリットが開いている状態で前記第3導電性部材と離間する第4導電性部材と、
前記第2スリットの互いに対向する一対の内面のそれぞれに配置されている第2導電性粒子層と、を備え、
前記第1導電性部材と前記第2導電性部材とは、前記第3導電性部材と前記第4導電性部材と並列に接続されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のひずみセンサ。
【請求項5】
前記絶縁性基板は、
さらに、第3スリットを有しており、
前記第3スリットが開く方向に弾性変形可能であり、
前記ひずみセンサは、さらに、
前記第3スリットの一方側に配置される第5導電性部材と、
前記第3スリットの他方側に配置されており、前記第3スリットが閉じている状態で前記第5導電性部材と直接的に接触し、前記第3スリットが開いている状態で前記第5導電性部材と離間する第6導電性部材と、
前記第3スリットの互いに対向する一対の内面のそれぞれに配置されている第3導電性粒子層と、を備え、
前記第1導電性部材と前記第2導電性部材とは、前記第5導電性部材と前記第6導電性部材と直列に接続されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のひずみセンサ。
【請求項6】
前記絶縁性基板に配置されており、前記第1スリットと、前記第1導電性部材と、前記第2導電性部材と、を覆うカバーを、さらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のひずみセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、ひずみセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エポキシ樹脂に金属表面処理を施したカーボンナノフィラーを混合して成形することによって作製されるひずみセンサが開示されている。ひずみセンサは、ひずみセンサに加わる外力に応じて伸張する。ひずみセンサの伸張による抵抗値の変化によってひずみが検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-52864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ひずみセンサでは、ゲージ率が高く、かつ、抵抗値がひずみに応じて徐々に変化していくことが望ましい。本明細書では、ゲージ率が高く、かつ、抵抗値がひずみに応じて徐々に変化し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示されるひずみセンサは、第1スリットを有しており、前記第1スリットが開く方向に弾性変形可能な絶縁性基板と、前記第1スリットの一方側に配置される第1導電性部材と、前記第1スリットの他方側に配置されており、前記第1スリットが閉じている状態で前記第1導電性部材と接触し、前記第1スリットが開いている状態で前記第1導電性部材と離間する第2導電性部材と、前記第1スリットの互いに対向する一対の内面のそれぞれに配置されている第1導電性粒子層と、を備え、前記第1導電性部材は、前記第1スリットが開いている状態で、前記第1導電性粒子層を介して前記第2導電性部材と電気的に接続されていてもよい。
【0006】
この構成では、ひずみセンサに第1スリットが開く方向の外力が加わると、外力の大きさに応じて絶縁性基板が弾性変形する。絶縁性基板が変形されて第1スリットが開くと、第1導電性部材と第2導電性部材とが離間する。この結果、第1導電性部材と第2導電性部材とは、第1スリットの内面に配置されている第1導電性粒子層を介して電気的に接続される。これにより、第1導電性部材と第2導電性部材との間の電流経路が変化する。第1スリットが開いていくのに従って、第1スリットの一対の内面の距離が徐々に広がる。この結果、第1スリットの一対の内面うちの一方の内面に配置されている第1導電粒子層と、他方の内面に配置されている第1導電粒子層と、が接触する位置が、第1スリットの中央部から端部に徐々に移動していく。これにより、第1スリットの開き方、即ち、絶縁性基板の変形に応じて、第1導電性部材と第2導電性部材との間の電流経路が徐々に変化する。この結果、ひずみが徐々に大きくなるのに応じて、第1導電性部材と第2導電性部材との間の抵抗値を徐々に変化させることできる。また、第1スリットが閉じている状態と、第1スリットが開いている状態と、で、第1導電性部材と第2導電性部材との間の電流経路、即ち抵抗値を大きく変化させることができる。これにより、ゲージ率を高くすることができる。
【0007】
前記第1導電性粒子層は、繊維状の粒子を含んでいてもよい。
【0008】
この構成では、第1スリットが閉じている状態で、第1スリットの一対の内面うちの一方の内面に配置されている繊維状の粒子が他方の内面に配置されている繊維状の粒子間に入り込むことによって、互いに接触している。この構成によると、第1スリットが開いている状態で、第1スリットの一対の内面うちの一方の内面に配置されている繊維状の粒子が他方の内面に配置されている繊維状の粒子間に入り込むことによって、一方の内面に配置されている第1導電性粒子と他方の内面に配置されている第1導電性粒子とを、接触させることができる。この結果、第1のスリットが開くことによって第1のスリットの一対の内面の第1導電性粒子層が直ちに離間することを抑制することができる。これにより、第1導電性部材と第2導電性部材との間の抵抗値を徐々に変化させることできる。
【0009】
前記第1スリットが閉じている状態で、前記一対の内面は、前記第1導電性粒子層を挟んで隙間無く配置されていてもよい。
【0010】
この構成では、第1スリットが閉じている状態、即ち、ひずみセンサに外力が加わっていない状態で、第1スリットの一対の内面うちの一方の内面に配置されている導電性粒子層と他方の内面に配置されている導電性粒子層とを全面的に接触させることができる。この構成によると、ひずみに対する第1導電性部材と第2導電性部材との間の抵抗値の変化の範囲を大きくすることができる。
【0011】
前記絶縁性基板は、さらに、第2スリットを有しており、前記第2スリットが開く方向に弾性変形可能であってもよい。前記ひずみセンサは、さらに、前記第2スリットの一方側に配置される第3導電性部材と、前記第2スリットの他方側に配置されており、前記第2スリットが閉じている状態で前記第3導電性部材と直接的に接触し、前記第2スリットが開いている状態で前記第3導電性部材と離間する第4導電性部材と、前記第2スリットの互いに対向する一対の内面のそれぞれに配置されている第2導電性粒子層と、を備えていてもよい。前記第1導電性部材と前記第2導電性部材とは、前記第3導電性部材と前記第4導電性部材と並列に接続されていてもよい。
【0012】
第1スリット、第1導電性部材、第2導電性部材及び第1導電性粒子層の組み合わせと、第2スリット、第3導電性部材、第4導電性部材及び第2導電性粒子層の組み合わせと、のいずれかの組み合わせが適切に機能しない状況において、適切に機能する組み合わせによって、ひずみを検出することができる。
【0013】
前記絶縁性基板は、さらに、第3スリットを有しており、前記第3スリットが開く方向に弾性変形可能であってもよい。前記ひずみセンサは、さらに、前記第3スリットの一方側に配置される第5導電性部材と、前記第3スリットの他方側に配置されており、前記第3スリットが閉じている状態で前記第5導電性部材と直接的に接触し、前記第3スリットが開いている状態で前記第5導電性部材と離間する第6導電性部材と、前記第3スリットの互いに対向する一対の内面のそれぞれに配置されている第3導電性粒子層と、を備えていてもよい。前記第1導電性部材と前記第2導電性部材とは、前記第5導電性部材と前記第6導電性部材と直列に接続されていてもよい。
【0014】
例えば、スリット内の導電性粒子層に多くの導電性粒子が配置されてしまうと、スリットが開いても、一対の内面のそれぞれに配置されている導電性粒子層が互いに離間し難い。この結果、ひずみの変化に対するひずみに対する抵抗値の変化が小さくなる。第1スリット、第1導電性部材、第2導電性部材及び第1導電性粒子層の組み合わせと、第3スリット、第5導電性部材、第6導電性部材及び第3導電性粒子層の組み合わせと、を直列に配置することによって、上記の2個の組み合わせのうち、一方の組み合わせにおいて、ひずみの変化に対するひずみに対する抵抗値の変化が小さい場合であっても、他方の組み合わせにおいて、ひずみを検出することができる。
【0015】
前記ひずみセンサは、前記絶縁性基板に配置されており、前記第1スリットと、前記第1導電性部材と、前記第2導電性部材と、を覆うカバーを、さらに備えていてもよい。
【0016】
この構成によると、第1スリット、第1導電性部材及び第2導電性部材の少なくともいずれかが汚れるによって抵抗値が変化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施例のひずみセンサの平面図。
図2】ひずみセンサの変形を説明するためのスリット周辺の拡大平面図。
図3図2に続くひずみセンサの変形を説明するためのスリット周辺の拡大平面図。
図4図3に続くひずみセンサの変形を説明するためのスリット周辺の拡大平面図。
図5】ひずみセンサの製造方法を説明するための図。
図6図5に続くひずみセンサの製造方法を説明するための図。
図7図6に続くひずみセンサの製造方法を説明するための図。
図8図7に続くひずみセンサの製造方法を説明するための図。
図9図8に続くひずみセンサの製造方法を説明するための図。
図10】ひずみセンサの縦断面図。
図11】ひずみと抵抗値との関係を示す実験結果の一例。
図12】第2実施例のひずみセンサの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施例)
図1図11を参照して、本実施例のひずみセンサ10を説明する。ひずみセンサ10は、例えば繊維等の柔軟な物体に取り付けて、物体のひずみを検出するために用いられる。なお、ひずみセンサ10を取り付ける物体は、繊維等の柔軟な物体以外の物体であってもよい。図1に示すように、ひずみセンサ10は、基板12と、一対の導電性部材16、18と、スリット14と、導電性粒子層20、22(図3図4参照)と、を備える。なお、図10に示すように、ひずみセンサ10は、カバー30、32を備えるが、図1では図示省略されている。
【0019】
基板12は、ポリウレタン製の平板形状を有する。基板12は、長方形の平板形状を有する。なお、基板12の形状は、使用位置、状態等によって適切な形状を採用し得る。例えば、基板12は、長方形に限定されず、多角形、円形等であってもよく、平板形状でなくてもよい。また、基板12の材料は、ポリウレタンに限られず、ひずみセンサ10を適用する物体に想定されるひずみに応じた弾性かつ絶縁性を有する材料を採用してもよい。
【0020】
基板12の表面には、一対の導電性部材16、18が載置されている。一対の導電性部材16、18は、同一直線上に配置されている。一対の導電性部材16、18は、基板12の短手方向(即ち図1の上下方向)の中央に配置されている。一対の導電性部材16、18は、基板12の長手方向(即ち図1の左右方向)に平行に配置される。一対の導電性部材16、18は、互いに同一形状を有する。一対の導電性部材16、18は、連続的に配置されており、その境界において互いに接触している。一対の導電性部材16、18は、カーボンナノチューブを用いて作製されている。
【0021】
基板12には、一対の導電性部材16、18の境界に、スリット14が配置されている。スリット14は、基板12の表面から裏面まで貫通している。スリット14は、基板12の短手方向の中央に配置されている。基板12の短手方向において、スリット14の長さは、一対の導電性部材16、18の長さよりも長い。基板12の短手方向において、一対の導電性部材16、18は、スリット14の中央に配置されている。図3に示すように、スリット14の互いに対向する一対の内面14a、14bのそれぞれには、導電性粒子層20、22のそれぞれが配置されている。導電性粒子層20、22は、カーボンナノチューブ製の薄い層である。図3図4では、導電性粒子層20、22を構成するカーボンナノチューブが模式的に拡大して示されている。導電性粒子層20、22では、多数の繊維状のカーボンナノチューブが、一対の内面14a、14b上に配置されている。
【0022】
スリット14では、基板12が変形していない状態では、互いに対向する一対の内面14a、14bは、導電性粒子層20、22を挟んで配置されており、導電性粒子層20、22は、互いに全面的に接触している。このため、基板12が変形していない状態では、一対の内面14a、14bが完全に接触しているものではないが、基板12が変形していない状態でのスリット14の状態を、スリット14が閉じている状態と呼ぶ。
【0023】
導電性部材16には、導線52が電気的に接続されている。導電性部材18には、導線54が電気的に接続されている。導線52、54には、抵抗値測定装置50が接続されている。抵抗値測定装置50は、導線52に電圧を印加して、ひずみセンサ10の導電性部材16、18及びスリット14で構成される電流経路の抵抗値を測定する。抵抗値測定装置50は、測定済みの抵抗値を、図示省略した制御装置に供給する。制御装置は、抵抗値をひずみに変換するための演算を実行する。制御装置には、抵抗値をひずみに変換するための演算を実行するためのプログラム、テーブル等が予め格納されている。
【0024】
(ひずみセンサの変形態様)
図2図4を参照して、ひずみセンサ10の変形態様を説明する。ひずみセンサ10は、図1において矢印Fで示される方向(以下「方向F」と呼ぶ)の力が物体に付与されて、物体が変形する場合のひずみを検出するために用いられる。図2に示すように、基板12が変形していない状態では、スリット14は閉じている。この状態では、電流は、矢印100で示すように、導電性部材16、18を直線的に流れる。なお、矢印100は、単に電流の方向を表すものである。
【0025】
図3に示すように、物体のひずみが大きくなると、基板12が、スリット14が開く方向に弾性変形する。スリット14は、基板12の短手方向の中央において最も広く開いている。スリット14の開き具合は、基板12の短手方向の両端のそれぞれに向かって徐々に小さくなる。スリット14が開くことによって、導電性部材16と導電性部材18とが離間する。基板12の変形量が小さい場合、即ち、物体のひずみが小さい場合、一対の内面14a、14bの距離は小さい。この状態では、基板12の短手方向の両端のそれぞれにおいて、内面14a上の導電性粒子層20と内面14b上の導電性粒子層22とが互いに接触している。詳細には、導電性粒子層20の繊維状のカーボンナノチューブと、導電性粒子層22の繊維状のカーボンナノチューブと、が互いに接触している。この結果、図3の状態では、矢印102で示すように、電流は、導電性部材16から導電性粒子層20を通過し、スリット14の基板12の短手方向の途中の位置、即ち、導電性粒子層20と導電性粒子層22とが接触している位置において、導電性粒子層22に向かって流れる。
【0026】
スリット14が大きく開くほど、導電性粒子層20と導電性粒子層22とが接触している位置は、基板12の短手方向の端側に移動する。従って、スリット14が大きく開くほど、電流経路は延びて、ひずみセンサ10の抵抗値が上昇する。
【0027】
図4に示すように、図3の状態よりもさらに物体のひずみが大きくなると、スリット14の基板12の短手方向の途中の位置では、導電性粒子層20と導電性粒子層22とが離間している状態まで、スリット14が大きく開く。この状態では、矢印104で示すように、電流は、導電性部材16から導電性粒子層20を通過し、スリット14の基板12の短手方向の端から導電性粒子層22に向かって流れる。
【0028】
上述したように、物体のひずみが増加するのに従って、スリット14が徐々に開いていく。この構成では、電流経路が、スリット14が開いていくのに従って徐々にスリット14の端側に変動していく。この結果、スリット14が開いていくのに従って徐々に電流経路が長くなる。図11は、ひずみセンサ10を用いた実験結果を示す。本実験では、ひずみセンサ10に方向Fの力を加えて変形させている状態でのひずみと抵抗とが特定されている。図11の横軸はひずみを表し、縦軸は抵抗値Rを示す。
【0029】
ひずみセンサ10では、ひずみが所定値を超えると、ひずみが増加するのに従って、抵抗値Rを徐々に増加させることができる。ひずみが所定値を超える前の状態は、スリット14が閉じている状態であり、ひずみが所定値を超えた後の状態は、スリット14が開いている状態である。ひずみセンサ10によると、ひずみの増加を応じて連続的な抵抗値の変化を実現することができる。また、スリット14が閉じている状態と開いている状態では、電流経路が大きく異なる。この結果、スリット14が閉じている状態と開いている状態では、抵抗値が大きく変化する。この構成によると、ひずみに従って導電性部材が延びることによって電流経路が変化する構成と比較して、ひずみに対する感度を高めることができ、ゲージ率を高くすることができる。
【0030】
(ひずみセンサの製造方法)
図5図8を参照して、ひずみセンサ10の製造方法を説明する。最初に、図5に示すように、基板12を準備する。次いで、図6に示すように、基板12の表面に、導電性部材16、18の部分が開口したマスク200を配置して、カーボンナノチューブの分散液を矢印202の方向に塗布する。マスク200は、例えば耐熱性ポリイミド製のフィルムである。次いで、加熱処理によって分散液を乾燥させて、マスク200を取り除く。これにより、一対の導電性部材16、18が同時に形成される。
【0031】
次いで、図7に示すように、一対の導電性部材16、18の境界に、切り刃204を差し込むことによって、スリット14を形成する。次いで、図8に示すように、カーボンナノチューブの分散液を矢印206の方向に、スリット14に向けて滴下する。これにより、カーボンナノチューブがスリット14内に浸入して、一対の内面14a、14bに付着する。これにより、導電性粒子層20、22が形成される。分散液をふき取り後に乾燥させて、ひずみセンサ10が作製される。導電性粒子層20、22を形成するための分散液のカーボンナノチューブの濃度は、一対の導電性部材16、18を形成するための分散液のカーボンナノチューブの濃度よりも薄くてもよい。
【0032】
図9に示すように、ひずみセンサ10では、基板12の表裏面のそれぞれに、カバー30、32のそれぞれを配置してもよい。カバー30、32は、ポリウレタン製のフィルムである。カバー30、32は、その周端縁において、基板12に熱圧着によって接着される。
【0033】
図10は、カバー30、32が取り付けられたひずみセンサ10の基板12の短手方向の中央の断面を示す。図10に示すように、カバー30、32は、一対の導電性部材16、18及びスリット14の全体を覆っている。これにより、一対の導電性部材16、18及びスリット14に汚れが付着することを防止することができる。これにより、ひずみセンサ10の抵抗値が、汚れによって変動することを防止することができる。
【0034】
(第2実施例)
図12を参照して、第2実施例のひずみセンサ510を説明する。ひずみセンサ510は、基板512と、導電性部材516、518、520、522、524と、複数のスリット514aと、複数のスリット514bと、複数のスリット514cと、を備える。基板512は、基板12と同様の構成を有する。
【0035】
基板512の表面には、導電性部材516、518、520、522、524が載置されている。導電性部材516は、3本の導電性部材520、522、524に分岐している。導電性部材520、522、524は、並列に接続されている。導電性部材520、522、524は、それぞれ基板512の長手方向に平行に延びている。導電性部材520、522、524は、それぞれ、導電性部材518に接続されている。導電性部材516、518、520、522、524のそれぞれは、導電性部材16、18と同様に作製される。
【0036】
導電性部材520の中間位置には、複数のスリット514aが基板512の長手方向に互いに間隔を有して並んでいる。同様に、導電性部材522の中間位置には、複数のスリット514bが基板512の長手方向に互いに間隔を有して並んでおり、導電性部材524の中間位置には、複数のスリット514cが基板512の長手方向に互いに間隔を有して並んでいる。各スリット514a、514b、514cは、スリット14と同様の構成を有する。各スリット514a、514b、514cの一対の内面には、導電性粒子層20、22と同様の導電性粒子層が配置されている。
【0037】
基板512が変形していない状態では、導電性部材520は、複数のスリット514aを跨いで連結している。同様に、導電性部材522は、複数のスリット514bを跨いで連結しており、導電性部材524は、複数のスリット514cを跨いで連結している。
【0038】
導電性部材516は導線52に接続されており、導電性部材518は導線54に接続されている。
【0039】
以下では、複数のスリット514aのうち、導電性部材516側の端に配置されるスリット514aをスリット514a1と、スリット514a1の隣に配置されるスリット514をスリット514a2と、複数のスリット514bのうち、導電性部材516側の端に配置されるスリット514bをスリット514b1と、に注目して説明する。
【0040】
スリット514a1の両側のそれぞれには、導電性部材520の一部である導電性部材520a、520bのそれぞれが配置されている。スリット514a2の両側のそれぞれには、導電性部材520の一部である導電性部材520b、520cのそれぞれが配置されている。スリット516a1の両側のそれぞれには、導電性部材522の一部である導電性部材522a、522bのそれぞれが配置されている。
【0041】
導電性部材520a、520bは、導電性部材522a、522bと並列に接続されている。導電性部材520a、520b、520cは、互いに直列に接続されている。
【0042】
物体にひずみが発生して、ひずみセンサ510が変形されると、複数のスリット514a、複数のスリット514b、及び、複数のスリット514cの各スリットが開く。例えば、スリット514a1の内面に配置される導電性粒子層が不十分であり、スリット514a1が開くと導電性部材520a、520bが導通しなくなる場合がある。ひずみセンサ510によると、導電性部材520a、520bとスリット514a1の内面に配置される導電性粒子層と、の組み合わせが適切に機能しない状況においても、導電性部材520a、520bと並行に配置される導電性部材522a、522bを用いてひずみを検出することができる。
【0043】
また、例えば、スリット514a1の内面に配置される導電性粒子層が多い場合、スリット514a1が開いても、導電性部材520aから導電性部材520bまでの電流経路が大きく変化しない。ひずみセンサ510によると、導電性部材520a、520bとスリット514a1の内面に配置される導電性粒子層と、の組み合わせにおける抵抗値が大きく変化しない状況においても、導電性部材520a、520bと直列に配置される導電性部材520b、522c及びスリット514a1における抵抗値の変化を用いてひずみを検出することができる。
【0044】
(対応関係)
スリット514a1が「第1スリット」の一例であり、スリット514b1が「第2スリット」の一例であり、スリット514a2が「第3スリット」の一例である。導電性部材520aが「第1導電性部材」の一例であり、導電性部材520bが「第2導電性部材」の一例であり、導電性部材522aが「第3導電性部材」の一例であり、導電性部材522bが「第4導電性部材」の一例であり、導電性部材520bが「第5導電性部材」の一例であり、導電性部材520cが「第5導電性部材」の一例である。
【0045】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0046】
<変形例>
導電性部材16、18、516、518、520、522、524の少なくとも一部は、カーボンナノチューブ以外の導電性材料で作製されていてもよい。
【0047】
第2実施例における複数のスリット514a、514b、514cの個数に制限は無い。例えば、スリット514a、514b、514cのうちのいずれかは、1個のスリットのみを含んでいてもよい。あるいは、複数のスリット514a、複数のスリット514b、及び、複数のスリット514cのうちのいずれかは、配置されていなくてもよい。例えば、ひずみセンサ510は、複数のスリット514aを備える一方、複数のスリット514b、及び複数のスリット514cを備えていなくてもよい。この構成では、導電性部材520と並行に接続される導電性部材は配置されてなくてもよい。
【0048】
カバー30、32の少なくとも一方は、配置されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10:ひずみセンサ、12:基板、14:スリット、14a、14b:内面、16、18:導電性部材、20、22:導電性粒子層、30、32:カバー
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