(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】X線撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20230905BHJP
【FI】
A61B6/00 330Z
A61B6/00 360Z
(21)【出願番号】P 2022027134
(22)【出願日】2022-02-24
(62)【分割の表示】P 2018032071の分割
【原出願日】2018-02-26
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100102037
【氏名又は名称】江口 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100149962
【氏名又は名称】阿久津 好二
(74)【代理人】
【識別番号】100170988
【氏名又は名称】妹尾 明展
(74)【代理人】
【識別番号】100189566
【氏名又は名称】岸本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴則
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0350925(US,A1)
【文献】特開2007-167647(JP,A)
【文献】特開2005-074095(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0028138(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が載置される天板と、
前記被検体にX線を照射するとともに前記被検体を透過したX線を検出してX線画像を複数撮影する撮影部と、
前記撮影部に対する前記天板の相対位置を変更可能な移動機構と、
前記撮影部に対する前記天板の相対位置に関する位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記移動機構による相対位置の変更に伴って撮影された前記X線画像を位置情報取得部において取得された位置情報に基づき繋ぎ合わせて長尺画像を生成する画像処理部と、
前記X線画像を位置情報に基づいて繋ぎ合わせて生成した後の前記長尺画像を表示する画像表示部と、
前記画像表示部が表示する前記長尺画像に対するフレームの設定操作を受け付ける受付部とを備え、
前記画像処理部は、
前記長尺画像において前記フレームが設定された部分の位置情報と少なくとも重複する位置情報を有する前記X線画像または前記X線画像を画像処理した処理画像を前記画像表示部に表示させ
、
前記画像表示部が表示する前記長尺画像に対し前記フレームを重畳表示させ、
前記フレームが重畳表示された前記長尺画像と、前記長尺画像において前記フレームが設定された部分の位置情報と少なくとも重複する位置情報を有する前記X線画像または前記処理画像とを同時に前記画像表示部に表示させ、
前記長尺画像に重畳表示された前記フレームの移動に基づいて、前記画像表示部に前記長尺画像と同時に表示させる前記X線画像または前記処理画像を順次変更するように構成されている、X線撮影装置。
【請求項2】
前記位置情報取得部は、前記長尺画像において移動後の前記フレームが重畳表示された部分の位置情報を取得し、
前記画像処理部は、前記位置情報取得部で取得した前記長尺画像において移動後の前記フレームが重畳表示された部分の位置情報に基づいて、前記画像表示部に前記長尺画像と同時に前記画像表示部に表示させる前記X線画像または前記処理画像を順次変更するように構成されている、請求項
1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記長尺画像において移動後の前記フレームが重畳表示された部分の位置情報および予め定められた条件に基づいて、前記画像表示部に前記長尺画像と同時に前記画像表示部に表示させる前記X線画像または前記処理画像を順次変更するように構成されている、請求項
2に記載のX線撮影装置。
【請求項4】
前記画像表示部を複数含み、
前記X線画像または前記処理画像と前記長尺画像とが、異なる前記画像表示部に表示されるように構成されている、請求項1~
3のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項5】
被検体が載置される天板と、
前記被検体にX線を照射するとともに前記被検体を透過したX線を検出してX線画像を複数撮影する撮影部と、
前記撮影部に対する前記天板の相対位置を変更可能な移動機構と、
前記撮影部に対する前記天板の相対位置に関する位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記移動機構による相対位置の変更に伴って撮影された前記X線画像を位置情報取得部において取得された位置情報に基づき繋ぎ合わせて長尺画像を生成する画像処理部と、
前記X線画像を位置情報に基づいて繋ぎ合わせて生成した後の前記長尺画像を表示する画像表示部と、
前記画像表示部が表示する前記長尺画像に対するフレームの設定操作を受け付ける受付部とを備え、
前記画像処理部は、
前記長尺画像において前記フレームが設定された部分の位置情報と少なくとも重複する位置情報を有する前記X線画像または前記X線画像を画像処理した処理画像を前記画像表示部に表示させ、
前記画像表示部が表示する前記長尺画像に対し前記フレームを重畳表示させ、
前記移動機構は、ユーザの操作により前記長尺画像に重畳表示された前記フレームが移動されたことに基づいて、前記撮影部に対する前記天板の相対位置を変更させるように構成されているX線撮影装置。
【請求項6】
被検体が載置される天板と、
前記被検体にX線を照射するとともに前記被検体を透過したX線を検出してX線画像を複数撮影する撮影部と、
前記撮影部に対する前記天板の相対位置を変更可能な移動機構と、
前記撮影部に対する前記天板の相対位置に関する位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記移動機構による相対位置の変更に伴って撮影された前記X線画像を位置情報取得部において取得された位置情報に基づき繋ぎ合わせて長尺画像を生成する画像処理部と、
前記X線画像を位置情報に基づいて繋ぎ合わせて生成した後の前記長尺画像を表示する画像表示部と、
前記画像表示部が表示する前記長尺画像に対するフレームの設定操作を受け付ける受付部とを備え、
前記画像処理部は、
前記長尺画像において前記フレームが設定された部分の位置情報と少なくとも重複する位置情報を有する前記X線画像または前記X線画像を画像処理した処理画像を前記画像表示部に表示させ、
前記画像表示部が表示する前記長尺画像に対し前記フレームを重畳表示させ、
前記フレームは、前記位置情報に基づいて前記撮影部の現在の撮影範囲を示すように構成され、
前記画像処理部は、前記移動機構により前記撮影部に対して前記天板の相対位置が変更されたことに基づいて、前記長尺画像に重畳表示された前記フレームを移動するように構成されているX線撮影装置。
【請求項7】
前記画像処理部は、前記撮影部の位置の変更による前記位置情報の変更、前記天板の高さ位置の変更による前記位置情報の変更、前記天板と前記撮影部とのなす角度の変更による前記位置情報の変更、または前記撮影部におけるX線照射野の変更に基づいて、前記長尺画像に重畳表示される前記フレームの形状または大きさを調節するように構成されている、請求項
6に記載のX線撮影装置。
【請求項8】
被検体が載置される天板と、
前記被検体にX線を照射するとともに前記被検体を透過したX線を検出してX線画像を複数撮影する撮影部と、
前記撮影部に対する前記天板の相対位置を変更可能な移動機構と、
前記撮影部に対する前記天板の相対位置に関する位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記移動機構による相対位置の変更に伴って撮影された前記X線画像を位置情報取得部において取得された位置情報に基づき繋ぎ合わせて長尺画像を生成する画像処理部と、
前記X線画像を位置情報に基づいて繋ぎ合わせて生成した後の前記長尺画像を表示する画像表示部と、
前記画像表示部が表示する前記長尺画像に対するフレームの設定操作を受け付ける受付部とを備え、
前記画像処理部は、
前記長尺画像において前記フレームが設定された部分の位置情報と少なくとも重複する位置情報を有する前記X線画像または前記X線画像を画像処理した処理画像を前記画像表示部に表示させ、
前記長尺画像において前記フレームが設定された部分の位置情報と少なくとも重複する位置情報を有する前記X線画像が複数存在する場合、当該複数のX線画像の位置情報と当該フレームの位置情報との重複量、または、当該複数のX線画像の撮影時刻に基づいて、前記画像表示部に表示する前記X線画像または前記X線画像を画像処理した処理画像を選択するX線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体を通過したX線を検出して被検体内部を画像化するX線撮影装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、被検体を支持する寝台と、被検体へ放射線を照射する放射線発生手段と、この放射線発生手段と対向配置され被検体を透過した放射線を検出する放射線検出手段と、放射線検出手段において検出された放射線に基づき透視画像を生成する画像生成手段と、寝台駆動機構とを備えたX線撮影装置が開示されている。上記特許文献1のX線撮影装置では、寝台駆動機構を制御し、寝台を移動させることにより放射線発生手段および放射線検出手段を被検体の長手方向に移動させる。そして、寝台が移動する間に、放射線発生手段から被検体に対して放射線を順次照射し、その都度被検体からの透過放射線を放射線検出手段によって検出して放射線透視像を透視画像として撮影(天板移動撮影)するように構成されている。
【0004】
上記特許文献1のようなX線撮影装置は、「天板移動撮影」によって取得したX線画像を、それぞれのX線画像の撮影時の位置情報に基づいて繋ぎ合わせる処理を行うことにより、1枚のX線画像よりも長尺な画像(長尺画像)を生成することが可能である。したがって、上記特許文献1のX線撮影装置は、下肢部を撮影する場合のように、診断の対象領域が1枚のX線画像には収まらない場合に利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載のX線撮影装置では、長尺画像を生成する元となるX線画像の撮影時に、被検体が動いた場合には、位置がずれたX線画像が生成されるため、繋ぎ合わせた長尺画像上にずれが生じる。このため、ずれが生じた長尺画像に基づいて治療や診断を行う場合に目的箇所の正確な位置や形状が把握できないおそれがあるという問題がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、長尺画像における目的箇所の正確な位置や形状を把握することが可能なX線撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるX線撮影装置は、被検体が載置される天板と、被検体にX線を照射するとともに被検体を透過したX線を検出してX線画像を複数撮影する撮影部と、撮影部に対する天板の相対位置を変更可能な移動機構と、撮影部に対する天板の相対位置に関する位置情報を取得する位置情報取得部と、移動機構による相対位置の変更に伴って撮影されたX線画像を位置情報取得部において取得された位置情報に基づき繋ぎ合わせて長尺画像を生成する画像処理部と、X線画像または1枚のX線画像を画像処理した処理画像と、長尺画像とを表示する画像表示部とを備え、画像処理部は、撮影部の撮影範囲を示すフレームが表示された長尺画像と、長尺画像においてフレームが表示された部分の位置情報と少なくとも重複する位置情報を有するX線画像または処理画像とを同時に画像表示部に表示させるように構成されている。
【0009】
この発明の一の局面によるX線撮影装置では、上記のように、撮影部の撮影範囲を示すフレームを表示する際にフレームが表示された部分の位置情報と少なくとも重複する位置情報を有するX線画像または処理画像とを同時に画像表示部に表示するように構成する。これにより、長尺画像に生じたずれを画像表示部に同時に表示されるX線画像または処理画像を視覚的に確認することにより補うことができるため、目的箇所の正確な位置や形状を把握することができる。また、正確に目的箇所を把握することが可能なX線画像または処理画像が画像表示部に表示されるとともに、撮影部の撮影範囲を示すフレームが長尺画像に表示されるため、被検体に追加のX線照射を行うことなく撮影場所を正確に把握することができる。
【0010】
上記一の局面によるX線撮影装置において、好ましくは、画像処理部は、長尺画像に表示されたフレームの移動に基づいて、画像表示部に長尺画像と同時に表示させるX線画像または処理画像を順次変更するように構成されている。このように構成すれば、長尺画像に表示されたフレームの移動に基づいて長尺画像と同時に表示させるX線画像または処理画像が順次切り替わるため、ユーザは、フレームの移動に応じて各目的箇所の正確な位置や形状を把握し続けることができる。
【0011】
この場合、好ましくは、位置情報取得部は、長尺画像において移動後のフレームが表示された部分の位置情報を取得し、画像処理部は、位置情報取得部で取得した長尺画像において移動後のフレームが表示された部分の位置情報に基づいて、画像表示部に長尺画像と同時に画像表示部に表示させるX線画像または処理画像を順次変更するように構成されている。このように構成すれば、フレームを移動させた場合に、長尺画像において移動後のフレームが表示された部分の位置情報に基づいて、長尺画像において移動後のフレームが表示された部分の位置情報と少なくとも重複する位置情報を有するX線画像または処理画像とが画像表示部に常に表示される。その結果、長尺画像に表示されたフレームに対応する位置情報を持ったX線画像または処理画像をより正確かつ確実に画像表示部に表示することができる。
【0012】
上記長尺画像において移動後のフレームが表示された部分の位置情報に基づいて、表示させるX線画像または処理画像を順次変更する構成において、好ましくは、画像処理部は、長尺画像において移動後のフレームが表示された部分の位置情報および予め定められた条件に基づいて、画像表示部に長尺画像と同時に画像表示部に表示させるX線画像または処理画像を順次変更するように構成されている。このように構成すれば、位置情報に加えて予め定められた条件に沿ったX線画像または処理画像を表示させることができる。その結果、同じ箇所を撮影した複数枚のX線画像のうち目的箇所の正確な位置や形状を把握できる画像を選択するような条件をユーザが設定するなど条件を適切に設定することなどにより、治療や診断に用いるためのより好ましいX線画像または処理画像を画像表示部に表示することができる。
【0013】
上記一の局面によるX線撮影装置において、好ましくは、移動機構は、ユーザの操作により長尺画像に表示されたフレームが移動されたことに基づいて、撮影部に対する天板の相対位置を変更させるように構成されている。このように構成すれば、ユーザの操作によりフレームを移動した場合に、撮影部に対する天板の相対位置が自動的に変更されるため、ユーザは天板を移動させる必要がなく、治療または診断から次の治療または診断のための撮影までをより容易に行うことができる。また、ユーザの操作によりフレームを移動した場合に、撮影部に対する天板の相対位置が自動的に変更されるため、追加のX線照射を行わなくとも、目的箇所に撮影部を移動させることができる。
【0014】
上記一の局面によるX線撮影装置において、好ましくは、フレームは、位置情報に基づいて撮影部の現在の撮影範囲を示すように構成され、画像処理部は、移動機構により撮影部に対して天板の相対位置が変更されたことに基づいて、長尺画像に表示されたフレームを移動するように構成されている。このように構成すれば、撮影部に対する天板の相対位置が変更された場合に、長尺画像に表示されたフレームが、変更後の撮影部の撮影範囲に対応する部分まで自動的に移動されるため、ユーザは、長尺画像のフレームを移動させる操作を行う必要がなくなる。また、ユーザは、所望の撮影位置となるように撮影部と天板の相対位置を変更する際に、長尺画像のフレームおよびX線画像または処理画像を確認しながら行うことができるため、より容易に位置決めを行うことができる。
【0015】
この場合、好ましくは、画像処理部は、撮影部の位置の変更による位置情報の変更、天板の高さ位置の変更による位置情報の変更、天板と撮影部とのなす角度の変更による位置情報の変更、または撮影部におけるX線照射野の変更に基づいて、長尺画像に表示されるフレームの形状または大きさを調節するように構成されている。このように構成すれば、長尺画像上に、天板の高さ位置の変更等を反映させたフレームを表示させることができる。その結果、ユーザは、長尺画像上に表示されるフレームの形状や大きさを調整する必要がない。また、ユーザは、長尺画像のフレームを確認しながら所望の撮影範囲となるように撮影部または天板を調整することができる。
【0016】
上記一の局面によるX線撮影装置において、好ましくは、画像表示部を複数含み、X線画像または処理画像と長尺画像とが、異なる画像表示部に表示されるように構成されている。このように構成すれば、長尺画像と、X線画像または処理画像とを同じ画面内に表示する場合よりも長尺画像と、X線画像または処理画像とを大きく表示することができるため、より明確に目的箇所の正確な位置や形状を把握することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、長尺画像における目的箇所の正確な位置や形状を把握することができるX線撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1(a)は、本発明の第1~第3実施形態によるX線撮影装置の全体構成を示す側面図である。
図1(b)は、本発明の第1~第3実施形態によるX線撮影装置の全体構成を示す正面図である。
【
図2】X線撮影装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図5】第1実施形態によるX線撮影装置における撮影部に対する天板の相対位置の移動を説明するための側面図である。
【
図6】第1実施形態によるX線撮影装置における画像表示部に表示される長尺画像およびX線画像を説明するための図である。
【
図7】第1実施形態によるX線撮影装置の操作手順を説明するための図である。
【
図8】第2実施形態による天板の移動を説明するための側面図である。
【
図9】第2実施形態による天板の移動に伴う長尺画像に表示されたフレームの移動を説明するための図である。
【
図10】第2実施形態による撮影部の位置の変更を説明するための図である。
【
図11】第2実施形態によるX線撮影装置における天板の高さ位置の変更を説明するための側面図である。
【
図12】第2実施形態によるX線撮影装置における撮影部の角度の変更を説明するための図である。
【
図13】第2実施形態によるX線撮影装置における天板の角度の変更を説明するための側面図である。
【
図14】第2実施形態によるX線撮影装置の操作手順を説明するための図である。
【
図15】第3実施形態による処理画像を説明するための図である。
【
図16】第3実施形態によるX線撮影装置における画像表示部に表示される長尺画像および処理画像を説明するための図である。
【
図17】長尺画像に表示されるフレームの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1~
図7を参照して、本発明の第1実施形態によるX線撮影装置100の構成について説明する。
【0021】
(X線撮影装置の構成)
図1(a)に示すように、第1実施形態のX線撮影装置100は、被検体Pを載置するための天板1と、X線管装置3およびX線受像器4を含む撮影部2とを備えている。
【0022】
天板1は、平面視において、長方形の平板状に形成されている。被検体Pは、被検体Pの頭足方向が長方形の長辺に沿う方向、かつ、被検体Pの左右方向が長方形の短辺に沿う方向となるように、天板1上に載置される。なお、本明細書において、被検体Pの頭足方向をX方向とし、被検体Pの左右方向をY方向とし、X方向およびY方向と直交する方向をZ方向とする。
【0023】
X線管装置3は、X線源を有しており、天板1の一方側に配置されている。X線管装置3は、図示しないX線管駆動部によって電圧が印加されることにより、X線を照射することが可能である。X線管装置3は、X線の照射範囲であるX線照射野を調節可能なコリメータ7を有している。また、X線管装置3は、
図1(b)に示すように、C字形状のアーム部6の一方側の先端に取り付けられている。
【0024】
X線受像器4は、アーム部6の他方側(X線管装置3とは反対側)の先端に取り付けられている。すなわち、X線受像器4は、天板1を挟んで、天板1の他方側(X線管装置3とは反対側)に配置することができる。また、X線受像器4は、FPD(フラットパネルディテクタ)を含み、X線を検出することができるように構成されている。これにより、X線撮影装置100は、天板1に被検体Pを載置した状態で、X線管装置3によりX線を照射して、被検体Pを透過したX線をX線受像器4で検出することによって、X線画像21(
図4参照)を撮影することができるように構成されている。また、X線受像器4は、アーム部6の先端に取り付けられたスライド部8により、スライド部8が延びる方向(
図1ではZ方向)にスライドさせることが可能に構成されている。
【0025】
図2に示すように、X線撮影装置100は、移動機構9と、制御部10と、画像表示部14と、記憶部15と、操作部16と、をさらに備えている。
【0026】
移動機構9は、天板1および撮影部2を、任意の方向に移動させることができるように構成されている。すわなち、天板1および撮影部2のいずれかまたは両方を、X方向、Y方向、およびZ方向のいずれかに移動させて、天板1と撮影部2との相対位置を変えることにより、被検体Pが撮影される位置(撮影位置、
図5参照)を変えることが可能である。また、移動機構9は、天板1およびアーム部6(ひいては撮影部2)を、X方向およびZ方向の平面(XZ平面)上、ならびに、Y方向およびZ方向の平面(YZ平面)上で回動させることが可能に構成されている。後述するように、天板1および撮影部2は、互いのなす角度を変更することができるように構成されている。さらに、移動機構9は、スライド部8をスライドさせることができるように構成されている。
【0027】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含んで構成されたコンピュータである。制御部10は、画像情報取得部11と、位置情報取得部12と、画像処理部13とを備えている。
【0028】
画像情報取得部11は、撮影部2によって撮影した画像情報をX線受像器4から取得するように構成されている。画像情報取得部11が取得した画像情報は、記憶部15に記憶され、画像処理部13によるX線画像21の生成に用いられる。
【0029】
位置情報取得部12は、移動機構9により移動された天板1および撮影部2の位置情報を取得するように構成されている。天板1および撮影部2の位置情報は、それぞれ、複数の位置の座標情報(X、Y、Z)が用いられる。また、撮影部2の位置情報は、X線管装置3およびX線受像器4の位置情報を含む。たとえば、天板1の位置情報は、天板1の四隅近傍の位置における、それぞれの座標情報(X、Y、Z)を用いる。また、撮影部2の位置情報は、たとえば、X線管装置3のいずれかの位置と、X線受像器4のいずれかの位置と、アーム部6のいずれか2箇所の位置との、合計4つの位置における座標情報(X、Y、Z)を用いる。このように、天板1および撮影部2における複数の位置の座標情報を、天板1および撮影部2の位置情報として用いることで、天板1および撮影部2のいずれかまたは両方がいずれの方向に移動した場合でも、天板1および撮影部2の位置を特定することが可能である。これにより、位置情報取得部12は、たとえば、天板1と撮影部2とのなす角度が変更された場合でも、複数の座標情報に基づいて、天板1および撮影部2の位置情報として扱うことができる。
【0030】
画像処理部13は、画像情報取得部11が取得した画像情報に基づいて、X線画像21を生成することができるように構成されている。そして、画像処理部13は、位置情報取得部12が取得した天板1および撮影部2の位置情報に基づいて、撮影部2により撮影されたX線画像21を繋ぎ合わせて、長尺画像22(
図4参照)を生成するように構成されている。
【0031】
画像表示部14は、たとえば、液晶ディスプレイとして構成されている。そして、画像表示部14は、撮影部2により撮影された画像情報に基づいて画像処理部13により生成されたX線画像21、画像処理部13において複数枚のX線画像21を繋ぎ合わせて生成された長尺画像22を表示できるように構成されている。
【0032】
記憶部15は、たとえば、不揮発メモリを含む。そして、記憶部15には、移動機構9や画像処理部13の処理に用いられるプログラムが記憶されているとともに、撮影部2により撮影された画像情報および位置情報取得部12により取得された天板1および撮影部2の位置情報、または、画像処理部13により生成された長尺画像22を記憶できるように構成されている。
【0033】
操作部16は、たとえば、マウスおよびキーボードを含む。操作部16は、ユーザからの入力操作を受け付けるように構成されている。そして、操作部16は、受け付けた入力操作を制御部10に伝達するように構成されている。
【0034】
(長尺画像の生成方法) 次に、
図3および
図4を参照して、第1実施形態における長尺画像22の生成方法を説明する。
【0035】
図3に示すように、本実施形態のX線撮影装置100では、移動機構9により、天板1および撮影部2のいずれかまたは両方を移動させながら、被検体Pの複数の位置をX線撮影できるように構成されている。
図3(b)では、被検体Pの下肢部分30における複数の位置をX線撮影した例を示している。
【0036】
具体的には、
図3(a)のように、撮影部2に対して、天板1をX方向およびY方向に移動させることにより、
図3(b)のように、複数の撮影位置でX線撮影を行うことができる。このとき、画像情報取得部11は、X線撮影された画像情報を取得するとともに、位置情報取得部12は、天板1および撮影部2の位置情報を取得する。なお、以下の説明では、撮影部2に対して、天板1をX方向およびY方向に移動させることにより、複数の撮影位置でのX線撮影を行うことを、「天板移動撮影」と呼ぶ場合がある。
【0037】
図4に示すように、画像処理部13は、X線撮影された画像情報から、複数の撮影位置でX線撮影されたX線画像21を生成する。なお、第1実施形態では、X軸方向に天板1を移動させることにより、被検体Pの腹部からつま先まで撮影する。そして、画像処理部13は、複数の撮影位置における天板1および撮影部2の位置情報に基づいて、X線画像21を繋ぎ合わせることにより、長尺画像22を生成する。
【0038】
上記のように、X線画像21を繋ぎ合わせることにより生成された長尺画像22は、X線画像21を生成するためのX線撮影時における天板1および撮影部2の位置情報(撮影時位置情報)が関連付けられており、これらの情報は、記憶部15に記憶されるように構成されている。
【0039】
図6に示すように、第1実施形態のX線撮影装置100では、長尺画像22上に、撮影部2の撮影範囲を示すフレーム20が重ね合わせて表示可能なように構成されている。この撮影範囲を示すフレーム20は、X線受像器4においてX線管装置3から照射されたX線が検出される範囲である。すなわち、フレーム20は、X線撮影またはX線透視した際に、X線画像21として生成される範囲に相当する。
【0040】
具体的には、画像処理部13は、長尺画像22に関連付けられた撮影時位置情報と、天板1および撮影部2の位置情報とを対応付けて、長尺画像22に撮影範囲を示すフレーム20を重畳させて表示させることが可能に構成されている。この際、フレーム20の位置情報は、長尺画像22に関連付けられた撮影時位置情報のうち、フレーム20が表示されている位置における位置情報になる。また、現在の撮影部2の撮影範囲を示す状態におい
て、フレーム20の位置情報は、天板1および撮影部2の位置の座標情報に対応している。
【0041】
ここで、第1実施形態では、
図6に示すように、画像処理部13は、撮影部2の撮影範囲を示すフレーム20が表示された長尺画像22と、X線画像21とを同時に画像表示部14に表示させるように構成されている。具体的には、画像表示部14では、長尺画像22とX線画像21とが画像表示部14の長手方向(
図6では横方向)に並べて同時に表示されている。
【0042】
なお、長尺画像22と同時に画像表示部14に表示されるX線画像21は、長尺画像22の作成に用いられたX線画像21のうち、フレーム20の位置情報と少なくとも重複する位置情報を有する画像である。つまり、長尺画像22の作成に用いられたX線画像21のうち、現在長尺画像22上に表示されるフレーム20の位置情報(撮影時位置情報)と少なくとも一部の位置情報が重複しているX線画像21が選択されて、長尺画像22と同時に画像表示部14に表示される。
【0043】
なお、フレーム20の位置情報と少なくとも重複する位置情報を有するX線画像21が複数存在する場合には、画像処理部13により、予め定められた条件に基づいて、複数のX線画像21のうちから1枚のX線画像21が選択されて表示される。予め定められた条件としては、たとえば、位置情報の重複量または時間などがある。たとえば、複数のX線画像21のうち、フレーム20の位置情報と最も重複する位置情報を有するX線画像21が画像処理部13により選択されてもよいし、複数のX線画像21のうち、最も新しい(後で撮影された)X線画像21が画像処理部13により選択されてもよい。また、造影剤の流れが遅い場合には、血管内に造影剤が充満するまで同じ個所の撮影を続ける可能性がある。このように同じ箇所を撮影したX線画像21であっても、後で撮影されたX線画像21がより鮮明に血管を撮影することが可能である。また、画像処理部13が、X線画像21を選択するための条件をユーザが予め設定できるように構成してもよい。
【0044】
また、第1実施形態では、画像処理部13は、長尺画像22に表示されたフレーム20の移動に基づいて、画像表示部14に長尺画像22と同時に表示させるX線画像21を順次変更するように構成されている。具体的には、画像処理部13は、フレーム20が移動された際に、位置情報取得部12で取得した長尺画像22において移動後のフレーム20が表示された部分の位置情報に基づいて、長尺画像22において移動後のフレーム20が表示された部分の位置情報と少なくとも一部の位置情報が重複しているX線画像21を選択する。そして、画像処理部13により、フレーム20の移動とともに、長尺画像22において移動後のフレーム20が表示された部分の位置情報に基づいてX線画像21が新たに順次選択されることによって、画像表示部14に長尺画像22と同時に画像表示部14に表示させるX線画像21が順次変更される。なお、この場合も、長尺画像22において移動後のフレーム20が表示された部分の位置情報と少なくとも重複する位置情報を有するX線画像21が複数存在する場合には、予め定められた条件に基づいて、複数のX線画像21のうちから1枚のX線画像21が画像処理部13により選択されて表示される。
【0045】
また、第1実施形態のX線撮影装置100では、長尺画像22中に表示された撮影範囲を示すフレーム20の移動に基づいて、撮影部2に対する天板1の相対位置を変更させるように構成されている。具体的には、
図6(a)に示す状態から、ユーザが、長尺画像22に表示されたフレーム20を、操作部16を用いて上方向に動かすことによって、
図6(b)に示す状態に移動させた場合には、画像処理部13は、天板1または撮影部2のいずれかを移動させて撮影部2に対する天板1の相対位置を変化させるように移動機構9を制御する。この際、制御部10は、長尺画像22において移動後のフレーム20が表示された部分の位置情報に対応するように、天板1の相対位置を変化させるように移動機構9を制御する。これにより、
図6(a)の状態から、撮影部2に対する天板1の相対位置が自動的に変化されて、
図6(b)の状態に自動的に変化される。
【0046】
なお、本実施形態のX線撮影装置100では、天板1に対する被検体Pの位置が変化して長尺画像22が不鮮明になったとしても、長尺画像22と同時に表示されるX線画像21を参照して、長尺画像22における目的箇所の正確な位置や形状を把握することが可能である。
【0047】
(フレームの移動に伴う天板の移動)
図7を参照して、フレーム20を移動させた場合の制御フローについて説明する。なお、フレーム20を移動させる前は、長尺画像22に表示されるフレーム20は、現在の天板1および撮影部2に基づく現在の撮影位置に対応している。
【0048】
ユーザにより、長尺画像22に表示されたフレーム20に対する入力操作が操作部16を用いて行われた際に、画像処理部13は、ステップS1において、ユーザの操作に合わせて、長尺画像22中のフレーム20を移動させる。
【0049】
次に、ステップS2において、位置情報取得部12は、移動後のフレーム20が表示された長尺画像22の部分に関連付けられた撮影時位置情報をフレーム20の位置情報として取得する。
【0050】
次に、ステップS3において、画像処理部13は、画像表示部14に表示された現在のフレーム20が表示された長尺画像22の部分の位置情報と少なくとも重複する位置情報を有するX線画像21を選択して、画像表示部14に長尺画像22と同時に表示するX線画像21を変更する。
【0051】
次に、ステップS4において、位置情報取得部12は、画像表示部14に現在表示されている移動後のフレーム20が表示された長尺画像22の部分の位置情報を移動機構9に送信する。
【0052】
次にステップS5において、制御部10は、移動機構9を制御することによって、受信した移動後のフレーム20の位置情報を基に、撮影部2に対する天板1の相対位置を、長尺画像22のフレーム20が表示された部分の位置と同じ位置になるように変更する。そして、本制御が終了される。(
図7参照)
【0053】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0054】
第1実施形態では、X線撮影装置100を、上記のように、撮影部2の撮影範囲を示すフレーム20を表示する際にフレーム20が表示された部分の位置情報と少なくとも重複する位置情報を有するX線画像21とを同時に画像表示部14に表示するように構成する。これにより、長尺画像22に生じたずれを画像表示部14に同時に表示されるX線画像21を視覚的に確認することにより補うことができるため、目的箇所の正確な位置や形状を把握することができる。また、撮影部2の撮影範囲を示すフレーム20が長尺画像22に表示されるとともに正確に目的箇所を把握することが可能なX線画像21が画像表示部14に表示されるとともに、撮影部2の撮影範囲を示すフレーム20が長尺画像22に表示されるため、被検体Pに追加のX線照射を行うことなく撮影場所を正確に把握することができる。
【0055】
第1実施形態では、X線撮影装置100において、画像処理部13は、長尺画像22に表示されたフレーム20の移動に基づいて、画像表示部14に長尺画像22と同時に表示させるX線画像21を順次変更するように構成されている。これにより、長尺画像22に表示されたフレーム20の移動に基づいて長尺画像22と同時に表示させるX線画像21が順次切り替わるため、ユーザは、フレーム20の移動に応じて各目的箇所の正確な位置や形状を把握し続けることができる。
【0056】
第1実施形態では、位置情報取得部12は、長尺画像22において移動後のフレーム20が表示された部分の位置情報を取得し、画像処理部13は、位置情報取得部12で取得した長尺画像22において移動後のフレーム20が表示された部分の位置情報に基づいて、画像表示部14に長尺画像22と同時に画像表示部14に表示させるX線画像21を順次変更するように構成されている。これにより、フレーム20を移動させた場合に、長尺画像22において移動後のフレーム20が表示された部分の位置情報に基づいて、長尺画像22において移動後のフレーム20が表示された部分の位置情報と少なくとも重複する位置情報を有するX線画像21とが画像表示部14に常に表示される。その結果、長尺画像22に表示されたフレーム20に対応する位置情報を持ったX線画像21をより正確かつ確実に画像表示部14に表示することができる。
【0057】
第1実施形態では、画像処理部13は、長尺画像22において移動後のフレーム20が表示された部分の位置情報および予め定められた条件に基づいて、画像表示部14に長尺画像22と同時に画像表示部14に表示させるX線画像21を順次変更するように構成されている。これにより、位置情報に加えて予め定められた条件に沿ったX線画像21を表示させることができる。その結果、同じ箇所を撮影した複数枚のX線画像21のうち目的箇所の正確な位置や形状を把握できる画像を選択するような条件を設定するなど条件をユーザが適切に設定することなどにより、治療や診断に用いるためのより好ましいX線画像21を画像表示部14に表示することができる。
【0058】
第1実施形態では、移動機構9は、ユーザの操作により長尺画像22に表示されたフレーム20が移動されたことに基づいて、撮影部2に対する天板1の相対位置を変更させるように構成されている。これにより、ユーザの操作によりフレーム20を移動した場合に、撮影部2に対する天板1の相対位置が自動的に変更されるため、ユーザは天板1を移動させる必要がなく、治療または診断から次の治療または診断のための撮影までをより容易に行うことができる。また、ユーザの操作によりフレーム20を移動した場合に、撮影部2に対する天板1の相対位置が自動的に変更されるため、追加のX線照射を行わなくとも、目的箇所に撮影部2を移動させることができる。
【0059】
[第2実施形態]
図1、
図2および
図8~
図14を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、第1実施形態と異なり、移動機構9による撮影部2に対する天板1の相対位置の変更と同時に、長尺画像22に表示されたフレーム223の位置が変更される例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成の部分には、同一の符号を付している。
【0060】
本発明の第2実施形態によるX線撮影装置200(
図1および
図2参照)では、フレーム223は、位置情報に基づいて撮影部2の現在の撮影範囲を示す。移動機構9による撮影部2に対する天板1の相対位置の変更に基づいて、長尺画像22に表示されたフレーム223の位置が移動されるように構成されている。具体的には、
図8(a)に示す状態から、移動機構9により天板1が移動されることによって、
図8(b)に示す状態になるように撮影部2に対する天板1の相対位置が変更されることに基づいて、画像処理部13は、天板1および撮影部2の位置情報に基づいて、
図9(a)に示す状態から
図9(b)に示す状態になるように、長尺画像22に表示されたフレーム223の表示位置を移動させるように構成されている。
【0061】
また、第2実施形態によるX線撮影装置200では、X線管装置3とX線受像器4との距離を変更することによって、長尺画像22上に表示されるフレーム223の大きさが変更されるように構成されている。
【0062】
具体的には、X線撮影装置200では、長尺画像22上に現在のフレーム223が表示された状態で、
図10に示すように、外部からの指示またはユーザの手動の操作により、移動機構9によりスライド部8をスライドさせて、X線管装置3とX線受像器4との距離が変更された際に、位置情報取得部12は、X線管装置3とX線受像器4との距離が変化する前後のX線管装置3とX線受像器4の位置情報を取得する。そして、画像処理部213は、
図10に示すように、位置情報取得部12で取得した位置情報に基づいて、長尺画像22上における現在のフレーム223の大きさを調節する。このように、X線管装置3とX線受像器4との距離を変更して、長尺画像22上に表示されるフレーム223を拡大縮小させることができる。
【0063】
図10では、
図10(a)に示す状態から
図10(b)に示す状態に変化させることにより、X線管装置3とX線受像器4との距離を大きくする場合を示している。この場合、フレーム223は、中心位置が変わらず、範囲が小さくなるように長尺画像22上に表示される。なお、X線管装置3とX線受像器4との距離を小さくした場合には、フレーム223は、中心位置が変わらず、範囲が大きくなるように長尺画像22上に表示される。
【0064】
また、第2実施形態によるX線撮影装置200では、天板1の高さ位置を変更することによって、長尺画像22上に表示されるフレーム223の大きさが変更されるように構成されている。
【0065】
具体的には、長尺画像22上に現在のフレーム223が表示された状態で、
図11に示すように、移動機構9により天板1を昇降させて、天板1の高さ位置を変更する。位置情報取得部12は、天板1の高さ位置が変化する前後の天板1の位置情報を取得する。そして、画像処理部213は、位置情報取得部12で取得した位置情報に基づいて、長尺画像22上における現在のフレーム223の大きさを調節する。このように、天板1の高さ位置を変更して、長尺画像22上に表示されるフレーム223を拡大縮小させることが容易にできる。
図11では、
図11(a)に示す状態から
図11(b)に示す状態に変化させることにより、天板1を低くして、天板1をX線受像器4から遠ざける場合を示している。この場合、フレーム223は、中心位置が変わらず、範囲が小さくなるように長尺画像22上に表示される。なお、天板1を高くして、天板1をX線受像器4から近づけた場合には、フレーム223は、中心位置が変わらず、範囲が大きくなるように長尺画像22上に表示される。
【0066】
また、第2実施形態によるX線撮影装置200では、天板1と撮影部2とのなす角度を変更することによって、長尺画像22上に表示されるフレーム223の形状が変更されるように構成されている。
【0067】
具体的には、
図12(a)に示すように、長尺画像22上に現在のフレーム223が表示された状態で、移動機構9によりアーム部6をX方向およびZ方向の平面上(XZ平面)で回動させて、天板1と撮影部2とのなす角度を変更する。位置情報取得部12は、天板1と撮影部2とのなす角度が変化する前後の天板1および撮影部2の位置情報を取得する。そして、画像処理部213は、
図12(b)に示すように、位置情報取得部12で取得した位置情報に基づいて、長尺画像22上における現在のフレーム223の形状を調節する。
図12では、天板1に対するX線照射方向がXZ平面において傾斜することにより、長尺画像22における現在のフレーム223がよりX方向に長い長方形状となっている。このように、天板1と撮影部2とのなす角度を変更して、長尺画像22上に様々な角度に対応するフレーム223を表示させることができる。
【0068】
また、第2実施形態によるX線撮影装置200では、天板1と撮影部2とのなす角度を変更することによって、長尺画像22上に表示されるフレーム223の形状が変更されるように構成されている。
【0069】
具体的には、長尺画像22上に現在のフレーム223が表示された状態で、
図13に示すように、移動機構9により天板1をX方向およびZ方向の平面上(XZ平面)で回動させて、天板1と撮影部2とのなす角度を変更する。位置情報取得部12は、天板1と撮影部2とのなす角度が変化する前後の天板1および撮影部2の位置情報を取得する。そして、画像処理部213は、位置情報取得部12で取得した位置情報に基づいて、
図12に示したように、長尺画像22上における現在のフレーム223の形状を調節する。このように、天板1と撮影部2とのなす角度を変更して、長尺画像22上に様々な角度に対応するフレーム223を表示させることができる。
【0070】
また、第2実施形態によるX線撮影装置200では、X線管装置3のX線照射野を変更することによって、長尺画像22上に表示されるフレーム223の大きさが変更されるように構成されている。
【0071】
具体的には、長尺画像22上に現在のフレーム223が表示された状態で、コリメータ7を制御して、X線管装置3のX線照射野を変更する。画像処理部213は、コリメータ7を制御する際の制御情報に基づいて、長尺画像22上における現在のフレーム223の大きさを調節する。たとえば、コリメータ7によりX線照射野を小さくする場合には、長尺画像22および長尺画像22上のフレーム223の位置情報に基づいて、フレーム223が大きくなるように長尺画像22上に表示される。なお、コリメータ7によりX線照射野を小さくする場合には、フレーム223が小さくなるように長尺画像22上に表示される。このように、X線管装置3のX線照射野を変更して、長尺画像22上に表示されるフレーム223を拡大縮小させることが容易にできる。
【0072】
なお、第2実施形態によるX線撮影装置200のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0073】
次に、
図14を参照して、本発明の第2実施形態による天板1の移動に伴って長尺画像22に表示されたフレーム223が変更される場合について説明する。
【0074】
ステップS21において、
図8に示すように、撮影部2に対する天板1の相対位置が移動される。なお、ステップS21は、外部からの指示などにより制御部10が自動的に行ってもよいし、ユーザが天板1を手動で移動させてもよい。
【0075】
その後、ステップS22において、位置情報取得部12は、現在の天板1および撮影部2の位置情報を取得する。
【0076】
次に、ステップS23において、画像処理部13は、天板1および撮影部2の位置情報に基づいて、長尺画像22に表示されたフレーム223を移動させる。画像処理部13は、長尺画像22に関連付けられた撮影時位置情報と、現在の天板1および撮影部2の位置情報とを対応付けることによって、長尺画像22に現在の天板1および撮影部2の位置に基づく撮影位置としてのフレーム223を画像表示部14に表示する。これに伴い、
図9に示すように、長尺画像22上に表示された現在のフレーム223は、撮影部2に対する天板1の相対位置の変化に応じた分だけ移動する。
【0077】
次に、ステップS24において画像処理部13は、フレーム223の位置情報と少なくとも重複する位置情報を有するX線画像21を選択して、画像表示部14に長尺画像22と同時に表示するX線画像21を変更する。次に、ステップS25において、画像処理部13は、X線管装置3とX線受像器4との距離が変更したことなどにより、フレーム223の形状または大きさを変更するか否かを判断する。フレーム223の形状または大きさを変更すると判断した場合には、ステップS26において、画像処理部13は、適宜、フレーム223の形状または大きさを変更する。そして、本制御が終了される。また、ステップS25において、フレーム223の形状または大きさを変更しないと判断した場合には、本制御が終了される。
【0078】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、フレーム223は、位置情報に基づいて撮影部2の現在の撮影範囲を示すように構成され、画像処理部13は、移動機構9により撮影部2に対して天板1の相対位置が変更されたことに基づいて、長尺画像22に表示されたフレーム223を移動するように構成されている。これにより、撮影部2に対する天板1の相対位置の変更と同時に、長尺画像22に表示されたフレーム223が、変更後の撮影部2の撮影範囲に対応する部分まで自動的に移動されるため、ユーザは、長尺画像22のフレーム223を移動させる操作を行う必要がなくなる。また、ユーザは、所望の撮影位置となるように撮影部2と天板1の相対位置を変更する際に、長尺画像22のフレーム223およびX線画像21を確認しながら行うことができるため、より容易に位置決めを行うことができる。
【0079】
第2実施形態では、画像処理部13は、撮影部2の位置の変更による位置情報の変更、天板1の高さ位置の変更による位置情報の変更、天板1と撮影部2とのなす角度の変更による位置情報の変更、または撮影部2におけるX線照射野の変更に基づいて、長尺画像22に表示されるフレーム223の形状または大きさを調節するように構成されている。これにより、長尺画像22上に、天板1の高さ位置の変更等を反映させたフレーム223を表示させることができる。その結果、ユーザは、長尺画像22上に表示されるフレーム223の形状や大きさを調整する必要がない。また、ユーザは、長尺画像22のフレーム223を確認しながら所望の撮影範囲となるように撮影部2または天板1を調整することができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0080】
[第3実施形態]
図1、
図2、
図15および
図16を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態のX線撮影装置300(
図1および
図2参照)では、第1実施形態および第2実施形態と異なり、X線画像21の代わりに、X線画像21が画像処理されることによって取得された処理画像21cを画像表示部14に表示する例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成の部分には、同一の符号を付している。
【0081】
処理画像21cとは、X線画像21を基に撮影目的箇所をより明確にするためなどに画像処理を行った画像をいう。たとえば、血管のX線画像21を撮影したい場合、ユーザは患者に造影剤を投与して撮影する。
図15(a)に示すように、取得されたX線画像21(21a)は、X線を吸収する骨も合わせて撮影される。
【0082】
図15(b)に示すように、同じ部位を撮影した造影剤なしのX線画像21(21b)では血管が撮影されず骨だけが撮影される。そこで、
図15(c)に示すように、造影剤を投与したX線画像21(21a)から造影剤の投与なしのX線画像21(21b)を用いて骨の部分を削除するような画像処理を行うことによって、血管だけが撮影された処理画像21cを取得できる。
【0083】
そして、画像処理部13は、
図16に示すように、撮影部2の撮影範囲を示すフレーム20が表示された長尺画像22と、現在長尺画像22上に表示されるフレーム20の位置情報(撮影時位置情報)と少なくとも一部の位置情報が重複している処理画像21cとを同時に画像表示部14に表示させるように構成されている。
【0084】
なお、第3実施形態によるX線撮影装置300のその他の構成は、上記第1および第2実施形態と同様である。
【0085】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態では、撮影部2の撮影範囲を示すフレーム20を表示する際にフレーム20の位置情報と少なくとも重複する位置情報を有する処理画像21cとを同時に画像表示部14に表示するように構成する。これにより、第1実施形態と同様に、目的箇所の正確な位置や形状を把握することができる。また、画像処理が行われた処理画像21cを長尺画像22と同時に画像表示部14に表示することにより、画像処理前のX線画像21を表示する場合と比べて、目的箇所の正確な位置や形状を一層確実に把握することができる。なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態および第2実施形態と同様である。
【0086】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0087】
たとえば、上記第1~第3実施形態では、天板移動撮影は、撮影部に対して、天板をX方向およびY方向に移動させることにより行うとしたが、本発明はこれに限られない。本発明では、天板移動撮影は、天板に対して、撮影部をX方向およびY方向に移動させて行うようにしてもよい。また、天板1および撮影部を、X方向またはY方向のいずれかの方向だけに移動させて行うようにしてもよい。また、天板移動撮影は、天板および撮影部のいずれかを、Z方向に移動させながら、X方向または(および)Y方向に移動させて行うようにしてもよい。
【0088】
また、上記第1~第3実施形態では、制御部が、画像情報取得部と、位置情報取得部と、画像処理部とを備えるとしたが、本発明はこれに限られない。本発明では、画像情報取得部と、位置情報取得部と、画像処理部とが、それぞれ、制御部とは別個に備えられるようにしてもよい。
【0089】
また、上記第1~第3実施形態では、位置情報取得部が取得する天板および撮影部の位置情報は、座標情報(X、Y,Z)が用いられるとしたが、本発明はこれに限られない。本発明では、天板および撮影部の位置情報として、座標情報(X、Y,Z)のような直交座標系に限らず、極座標系などの他の座標系が用いられるようにしてもよい。
【0090】
また、上記第2実施形態では、長尺画像上に撮影範囲を表示させる場合に、移動機構によりアーム部をX方向およびZ方向の平面上(XZ平面)で回動させて、天板と撮影部とのなす角度を変更するとしたが、本発明はこれに限られない。本発明では、長尺画像上に撮影範囲を表示させる場合に、移動機構によりアーム部をY方向およびZ方向の平面(YZ平面)上で回動させて、天板と撮影部とのなす角度を変更するようにしてもよい。
【0091】
また、上記第2実施形態では、長尺画像上に撮影範囲を表示させる場合に、移動機構により天板をX方向およびZ方向の平面上(XZ平面)で回動させて、天板と撮影部とのなす角度を変更するとしたが、本発明はこれに限られない。本発明では、長尺画像上に撮影範囲を表示させる場合に、移動機構により天板をY方向およびZ方向の平面(YZ平面)
上で回動させて、天板と撮影部とのなす角度を変更するようにしてもよい。
【0092】
また、上記第1~第3実施形態では、被検体Pの下肢部分をX線撮影する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、被検体Pの腕部または胴体部など下肢部分以外の部分をX線撮影してもよい。また、本発明では、人体に限らず、人体以外の動物の被検体を撮影するX線撮影装置を構成してもよい。
【0093】
また、上記第1~第3実施形態では、X線画像を選択する条件として時間を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、位置情報の重複量または時間以外に、造影剤の有無、画素値の大小などを条件にして、複数のX線画像から長尺画像と同時に表示するX線画像を選択しても良い。
【0094】
また、上記第1~第3実施形態は、それぞれ、独立した実施形態として説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、上記第1~第3実施形態のいずれかを組み合わせて構成してもよい。
【0095】
また、上記第1実施形態の
図6では、長尺画像22に表示されるフレーム223が1つである例を図で示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図17(a)に示す状態から、天板を移動させる際に、長尺画像22に、現在の照射位置を示すフレーム20(実線)と天板の移動先を示すフレーム20a(破線)を表示し、天板の移動が完了すると、
図17(b)に示すように2つのフレーム20および20aが重なるようにしてもよい。この場合、天板の移動が完了した際に、長尺画像22と同時に表示されるX線画像21が切り替えられてもよいし、天板の移動が完了する前(天板移動中)に、天板の移動に合わせて長尺画像22と同時に表示されるX線画像21が切り替えられてもよい。
【0096】
上記第1実施形態では、画像表示部に、長尺画像の全体が表示される例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、長尺画像の一部の表示範囲のみが画像表示部に表示される一方、長尺画像の表示範囲が時間経過に伴い変化するように動画で表示してもよい。この際、診断または治療の目的箇所が範囲内に含まれる長尺画像をユーザが選択することにより、長尺画像の移動が止まり、画像表示部に長尺画像の表示範囲が静止画で表示されるのがよい。
【0097】
また、上記第1~第3実施形態は、画像表示部を1個設けた例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、画像表示部を複数設けてもよい。この場合、長尺画像と、X線画像または処理画像を、異なる画像表示部に同時に表示するのが好ましい。これにより、長尺画像と、X線画像とを同じ画面内に表示する場合よりも、長尺画像とX線画像とを大きく表示することができるため、より明確に目的箇所の正確な位置や形状を把握することが可能である。
【0098】
上記第1実施形態では、画像処理部は、長尺画像に表示されたフレームの移動に基づいて、画像表示部に長尺画像と同時に表示させるX線画像を順次変更するように構成されている例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、画像表示部にフレームの位置を決める決定ボタンを表示し、ユーザにより決定ボタンが操作された場合に、画像表示部に長尺画像と同時に表示させるX線画像を変更するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 天板
2 撮影部
3 X線管装置(X線照射部)
4 X線受像器(X線検出部)
7 コリメータ(X線照射野調節部)
9 移動機構
12 位置情報取得部
13、213 画像処理部
14 画像表示部
20、223 フレーム
21 X線画像
21c 処理画像
22 長尺画像
100、200、300 X線撮影装置
P 被検体