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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】エレベータのかご室
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/02 20060101AFI20230905BHJP
【FI】
B66B11/02 N
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022044115
(22)【出願日】2022-03-18
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176016
【弁理士】
【氏名又は名称】森 優
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100199761
【弁理士】
【氏名又は名称】福屋 好泰
(74)【代理人】
【識別番号】100182121
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 紘子
(72)【発明者】
【氏名】武田 佳祐
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-016937(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147248(WO,A1)
【文献】特開2013-212905(JP,A)
【文献】特開2002-348069(JP,A)
【文献】特開2017-121994(JP,A)
【文献】特開2008-37507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入口の側方に設けられた袖壁を含む、エレベータのかご室であって、
水平方向に開閉され、前記出入口を開放したり閉鎖したりするかご戸を有し、
前記袖壁は、
全開状態の前記かご戸よりも室内側に立設された固定パネルと、
前記固定パネルに対し、垂直の回転軸を中心として回転し開閉可能に設けられたスイングパネルと、
前記スイングパネルを閉じた状態にロックするロック機構と、
を含み、
前記スイングパネルが閉じられた状態では、当該スイングパネルと前記固定パネルとで中空柱が形成され、
前記ロック機構は、前記中空柱内部に収納されており、
前記ロック機構によるロックを解除するための解除キーの差し込み口が、前記中空柱の、かご室の乗客から目視できない位置に設けられていて、
前記位置が、前記かご戸が全開された状態において、前記中空柱の当該かご戸との隙間に面する位置であることを特徴とするエレベータのかご室。
【請求項2】
前記ロック機構は、
前記固定パネルと前記スイングパネルの一方に設けられたフックと、
前記固定パネルと前記スイングパネルの他方に設けられ、前記フックと係合する係合することで前記ロックの状態となる係合部材と、
を含み、
前記差し込み口は、前記固定パネルと前記スイングパネルとの間で上下方向に形成されるスリットであり、
前記隙間から前記スリットを経て前記中空柱内に進入された前記解除キーの一部で、前記係合部材の一部が引掛けられ、当該引掛けられた前記係合部材の前記一部が上下方向に移動されることにより、前記ロックが解除される構成とされていることを特徴とする請求項に記載のエレベータのかご室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのかご室に関し、特に、かご室を構成する袖壁の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、かご室内側から見て、出入り口の左右両側の各々に袖壁が設けられており、両袖壁の一方または両方には、かご操作盤等が取り付けられている。
【0003】
かご操作盤が取り付けられている袖壁は、立設された固定パネルと当該固定パネルに蝶番等を介して水平方向に開閉自在に連結されたスイングパネルを含む(特許文献1-4)。スイングパネルが閉じられた状態(使用状態)において、袖壁は全体的に中空の角柱状をしており、スイングパネルの表面から、かご操作盤の構成要素である操作ボタン装置(行先階ボタン装置、戸開閉ボタン装置等)の操作ボタンが突出し、スイングパネルの裏面には、前記操作ボタン装置や、運行管理または保守点検のために必要な各種スイッチ、当該操作ボタン装置、当該各種スイッチが実装されたプリント基板が取り付けられている。
【0004】
そして、スイングパネルを開いて、袖壁内部に収納されている上記プリント基板等の保守点検をし、保守点検が終わるとスイングパネルを閉じるといったように用いられる。
【0005】
上記のような袖壁においては、いたずらで、スイングパネルを開けられないよう、その内部にロック機構が設けられている。
【0006】
特許文献1、2に記載のロック機構において、袖壁外部からロックの解除を可能とするため、前記ロック機構の一部を露出させた穴が袖壁の側面や正面に開設されている。また、特許文献3に記載のロック機構では、袖壁において通常は面一となっているスイングパネルとキックプレート(幅木)の間に段差を設け、当該段差により生じた隙間から上記解除のための六角レンチを挿入する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-079616号公報
【文献】特開2009-242076号公報
【文献】特開平7―309561号公報
【文献】特許第4158353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2のように、袖壁の表面に操作ボタン等の乗客の利用に供する物以外のために開設された穴は、袖壁の意匠性を損ねてしまうおそれがある。また、特許文献3でも、上記隙間が袖壁の意匠性を損ねてしまうおそれがある。
【0009】
上記した課題に鑑み、本発明は、意匠性を損ねることなく、ロック機構によるロックの解除を可能とする袖壁を備えたエレベータのかご室を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明に係る、エレベータのかご室は、出入口の側方に設けられた袖壁を含む、エレベータのかご室であって、水平方向に開閉され、前記出入口を開放したり閉鎖したりするかご戸を有し、前記袖壁は、全開状態の前記かご戸よりも室内側に立設された固定パネルと、前記固定パネルに対し、垂直の回転軸を中心として回転し開閉可能に設けられたスイングパネルと、前記スイングパネルを閉じた状態にロックするロック機構と、を含み、前記スイングパネルが閉じられた状態では、当該スイングパネルと前記固定パネルとで中空柱が形成され、前記ロック機構は、前記中空柱内部に収納されており、前記ロック機構によるロックを解除するための解除キーの差し込み口が、前記中空柱の、かご室の乗客から目視できない位置に設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、前記差し込み口は、前記かご戸が全開された状態において、前記中空柱の当該かご戸との隙間に面する位置に設けられていることを特徴とする。
【0012】
さらに、前記ロック機構は、前記固定パネルと前記スイングパネルの一方に設けられたフックと、前記固定パネルと前記スイングパネルの他方に設けられ、前記フックと係合する係合することで前記ロックの状態となる係合部材と、を含み、前記差し込み口は、前記固定パネルと前記スイングパネルとの間で上下方向に形成されるスリットであり、前記隙間から前記スリットを経て前記中空柱内に進入された前記解除キーの一部で、前記係合部材の一部が引掛けられ、当該引掛けられた前記係合部材の前記一部が上下方向に移動されることにより、前記ロックが解除される構成とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記の構成を有する本発明に係る、エレベータのかご室によれば、スイングパネルを閉じた状態にロックするロック機構によるロックを解除するための解除キーの差し込み口が、閉じられた状態のスイングパネルと固定パネルとで形成される中空柱の、かご室の乗客から目視できない位置に設けられているため、袖壁の意匠性を損ねることがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る、エレベータのかご室の内部を、正面壁(図には現れていない)を背後にして、出入口の方向に見た図である。
図2】(a)は、上記かご室が有する袖壁の概略構成を示す斜視図であり、固定パネルに対しスイングパネルを開いた状態を示す図である。(b)は、(a)におけるA部の拡大図、(c)は、(a)におけるB部の拡大図である。
図3】(a)は、上記固定パネルに対し上記スイングパネルが閉じられた状態で、袖壁を図2(a)に示す仮想平面Cで切断した図である。(b)は、上記スイングパネルが閉じられた状態にロックするロック機構によるロックを解除するための解除キーを示す図である。
図4】(a)は上記ロック機構の一部の斜視図を、(b)は(a)を背面から視た斜視図を、(c)は前記一部を(a)に示す矢印Gの向き((b)示す矢印Hの向き)に視た側面図である。
図5】上記袖壁の有する二つのロック機構各々に含まれる係合ユニット同士が、連結部材であるリンクで連結されていることを示す図である。
図6】(a)は、上記スイングパネルが閉じられた図3(a)に示す状態において、袖壁内に上記解除キーの一部が進入した状態を示す図である。(b)は(a)に示す状態を矢印Rの向きに視た図である。
図7】(a)、(b)の各々は、図6(a)、図6(b)に示す状態から、上記ロック機構によるロックが解除された状態をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る、エレベータのかご室の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る、エレベータのかご室10の内部を、正面壁(図には現れていない)を背後にして、出入口DWの方向に見た図である。
【0016】
かご室10は、出入口DWの上方に幕板12を有しており、幕板12の下方(出入口DW)には、かご戸14、16が水平方向に開閉自在に設けられている。かご戸14、16が開かれると出入口DWが開放され、かご戸14、16が閉じられると出入口DWが閉鎖される。
【0017】
出入口DWの左右側方の各々には、袖壁18、20が設けられている。本例では、一方の袖壁18にかご操作盤22、スピーカ24、標識類26等が設けられている。なお、他方の袖壁20にかご操作盤22等を設ける構成としても、袖壁18、20の両方に操作盤22等を設ける構成としても構わない。
【0018】
袖壁18、20の側方には、側壁28、30が、床32面に対しそれぞれ立設されている。また、床32と対向して天井34が設けられている。
【0019】
図2(a)は、袖壁18の概略構成を示す斜視図であり、後述する固定パネル36に対しスイングパネル38を開いた状態を示している。図2(b)は、図2(a)におけるA部の拡大図を、図2(c)は、図2(a)におけるB部の拡大図をそれぞれ示している。
【0020】
図3(a)は、固定パネル36に対しスイングパネル38が閉じられた状態で、袖壁18を仮想平面C(図2(a))の位置で切断した図である。なお、図3(a)において現れるべき後述の係合ユニット102(図4図5)については、その全体は図示せず、係合部材120の係合部120bの断面のみを図示している。
【0021】
袖壁18は、固定パネル36とスイングパネル38を有する。スイングパネル38に、上記したかご操作盤22、スピーカ24、標識類26等(図1)が取り付けられているのであるが、図2図3(a)、図6(a)、図7(a)において、これらの図示は省略する。固定パネル36は床32面(図1)に対して立設されている。
【0022】
スイングパネル38と固定パネル36とは、上下2箇所で、第1連結ユニット40および第2連結ユニット42で連結されている。第1連結ユニット40、第2連結ユニット42の詳細については後述する。
【0023】
固定パネル36は、図3(a)に示すように、二点鎖線で示す全開状態のかご戸14よりも室内側に立設されている。固定パネル36は、金属板のプレス加工品である本体44を含む。本体44は、全体的に縦長の箱形をしており、略長方形をした底部44aの長辺部がL字状に折り返されてなる側部44b、44cを有している。側部44b、44c各々において、図3(a)に示すように、第1折返し部を44b1、44c1、第2折返し部を44b2、44c2とする。
【0024】
固定パネル36は、また、側部44bと平行に設けられたC型チャンネル材46を含む。図3(a)に示すように、C型チャンネル材46は、その底部46aが本体44の底部44aに、一方の側壁部46bが本体44の第1折返し部44b1にそれぞれスポット溶接等により接合されている。
【0025】
スイングパネル38は、金属版のプレス加工品である本体48を含む。本体48の一端部部分は、図3(a)に示すように、「コ」字状に曲げられて屈曲部が形成されている。この屈曲部の内、符号48aで指し示す部分を第1折返し部、符号48bで指し示す部分を第2折返し部、符号48cで指し示す部分を第3折返し部とする。スイングパネル38は、また、本体48を補強するL型アングル材50を含む。L型アングル材50は、図3(a)に示すように本体48に密着させた状態で、本体48に接合されている。
【0026】
上記の構成を含む固定パネル36とスイングパネル38は、上記したように、第1連結ユニット40と第2連結ユニット42を介して連結されており(図2(a))、スイングパネル38は、固定パネル36に対し開閉可能に設けられている。
【0027】
スイングパネル38が閉じられた状態では、図3(a)と図2(a)から分かるように、スイングパネル38と固定パネル36とで、中空柱HCが形成される。スイングパネル38が閉じられた図3(a)に示す状態において、固定パネル36(の本体44の側部44c)とスイングパネル38(の本体48の第3折返し部48c)との間には、上下方向に延びるスリットSLが形成される。すなわち、中空柱HCにスリットSLが形成される。スリットSLは、かご室10内から見て、袖壁18(中空柱HC)の背面側に形成されるため、かご室10内に居る乗客からは目視することができない。スリットSLを設けた目的については後述する。
【0028】
続いて、第1連結ユニット40、第2連結ユニット42の構成について簡単に説明する。第1連結ユニット40と第2連結ユニット42とは、基本的に同じ構成なので、第1連結ユニット40を代表に説明し、第2連結ユニット42の説明については省略することとする。
【0029】
図3(a)に示すように、第1連結ユニット40は、直交する二つの短冊片部52a、52bからなるアングル部材52を有する。一方の短冊片部52aは、ボルト・ナット54によって、C型チャンネル材46の側壁部46cに接合されている。
【0030】
他方の短冊片部52bには、蝶番56の一方の羽根56aが、六角穴付きボルト・ナット58で接合されている。蝶番56のもう一方の羽根56bは、スイングパネル38(のL型アングル材50)に接合された蝶番取付プレート60に、六角穴付きボルト62によって接合されている。蝶番取付プレート60は、その厚み方向に形成された不図示の雌ネジを有する。羽根56bは、その通し穴(不図示)に挿入され、前記雌ネジに螺合した六角穴付きボルト62によって、蝶番取付プレート60に接合されている。
【0031】
上記のように、第1連結ユニット40、および第2連結ユニット42で、固定パネル36に連結されたスイングパネル38は、固定パネル36に対し、垂直の回転軸である、蝶番56の芯棒56cを中心として回転し、開閉可能となっている。また、蝶番56の芯棒56cには、スイングパネル38が開く向きに羽根56a、56bを付勢する不図示のねじりコイルばねが設けられている。
【0032】
袖壁18は、前記ねじりコイルばねの付勢力に抗して、スイングパネル38を固定パネル36に対し閉じた状態にロックする二つのロック機構100、ロック機構200を有する。なお、一つの袖壁18に備えるロック機構の台数は、本例の2台に限らず、1台でも、3台以上でも構わない。
【0033】
ロック機構100とロック機構200とは、基本的に同じ構成であるので、ロック機構100を代表に説明する。そして、ロック機構200の構成要素に付す符号の下2桁(および、これに続くアルファベット)に、ロック機構100で対応する構成要素の下2桁(およびこれに続くアルファベット)を付して、ロック機構200の説明については省略する。
【0034】
図4(a)は、ロック機構100の一部の斜視図を、図4(b)は、図4(a)を背面から視た斜視図を、図4(c)は、同一部を図4(a)の矢印Gの向き(図4(b)の矢印Hの向き)に視た側面図である。なお、図4(c)において、後述するブラケット104の側板部108の背後に在る構成部材を現すため、側板部108は一点鎖線で描いている。
【0035】
ロック機構100は、固定パネル36の本体44の側部44c(図2(b))に、後述のようにして取り付けられた係合ユニット102を有する。係合ユニット102は、金属板の三方が折り返されてなるブラケット104を含む。ここで、ブラケット104の各部に関し、図4に示すように、基板部106、側板部108、底板部110、天板部112とする。天板部112は、さらに上方に折り返された折返し部112aを有する。
【0036】
ブラケット104の基板部106には、2個の小ねじ114とその各々に螺合したナット116によって、蝶番118の一方の羽根118aが固定されている。蝶番118のもう一方の羽根118bには、係合部材120が固定されている。係合部材120は、全体的に方形をした金属板が、図4(c)に示すように、側面視で「7」字状に屈曲されてなるものである。係合部材120の各部に関し、図4に示すように、上端部の略正方形の部分を解除部120a、解除部120aの一辺から下方へ延出された部分を係合部120bと称することとする。解除部120a、係合部120bの役割については後述する。
【0037】
係合部材120の解除部120aには、解除補助部材122が重ねられた状態で設けられている。解除補助部材122は、金属板が曲げ加工されてなるものであり、略正方形をした基板部122aと基板部122aの一辺部が下方に折り返されてなる爪部122bと、基板部122aの他の一辺部から上方へ折り返された連結部122cを含む。爪部122b、連結部122cの役割については後述する。
【0038】
蝶番118の羽根118b、係合部材120の解除部120a、および解除補助部材122の基板部122aが重ねられた状態で、2個の小ねじ124とその各々に螺合したナット126によって、羽根118bに、解除部120a、基板部122aが固定されている。
【0039】
ブラケット104の底板部110には方形の窓110aが開設されており、係合部材120の係合部120bは、その一部が窓110aに進入した姿勢で蝶番118に保持されている。
【0040】
蝶番118の芯棒118cには、不図示のねじりコイルばねが取り付けられている(前記ねじりコイルばねのコイル部分に芯棒118cが挿入されている)。前記ねじりコイルばねは、芯棒118cを中心に、図4(c)の矢印M、矢印Nで示す向きに、羽根118aと羽根118cとを付勢している。
【0041】
上記の構成において、解除補助部材122、ひいては係合部材120の解除部120aを、図4(c)に示すように、矢印Pの向き(本例では、上向き)に押し上げると、係合部材120は、上記ねじりコイルばね(不図示)の付勢力に抗して、芯棒118cを中心に矢印Qの向き(時計方向)に回転する。上記の押し上げを止めると、係合部材120は、係合部120bの一部がブラケット104の基板部106に当接するまで、反時計方向に回転して止まる。係合部材120、解除補助部材122の役割については後述する。
【0042】
係合ユニット102は、固定パネル36の本体44の側部44c(図2(b))に取り付けられている。ブラケット104の天板部112の折返し部112aに、ねじ挿通孔112bが開設されている。折返し部112aには、ねじ挿通孔112aと連通する雌ネジを有するブラインドナット128が設けられている(ブラインドナット128のフランジ部分は不図示)。ブラケット104の側板部108にも、ねじ挿通孔108aが2個、開設されている。
【0043】
ブラケット104は、固定パネル36の本体44の側部44cの第1折返し部44c1に開設されたねじ挿通孔44h1(図2(b))に挿通され、ブラインドナット128に螺合する小ねじ(不図示)によって、天板部112が側部44cに固定されている。また、側部44cの第2折返し部44c2に開設された2個のねじ挿通孔44h2(図2(b))の各々、およびブラケット104の側板部108aに開設されたねじ挿通孔108aの各々に挿入された不図示のボルトと当該ボルトに螺合した不図示のナットにより、側板部108が側部44cに固定されている。なお、側板部108の側部44cへの固定は上記に限らず、上記不図示のナットに替えて、2個のねじ挿通孔44h2の各々と連通する雌ネジを有するブラインドナット(不図示)をそれぞれ第2折返し部44c2に設けても構わない。
【0044】
図5は、係合ユニット102と係合ユニット202の関係を示す図である。図5に示すように、係合ユニット102の解除補助部材122の連結部122cと係合ユニット202の解除補助部材222の連結部222cとは、連結部材であるリンク300で連結されている。これにより、解除補助部材122の基板部122aと解除補助部材222の基板部222aのいずれか一方を上向きに押し上げると、当該押し上げる力がリンク300によって伝達され、他方の基板部も上向きに押し上げられることとなる。
【0045】
図3(a)に戻り、ロック機構100は、また、スイングパネル38に取り付けられたフック130を有している。フック130は、短冊状をした金属板がL字状に曲げ加工されてなるものである。屈曲部を境にした一方の短冊片部(不図示)がスイングパネル38に固定され、他方の短冊片部が、図3(a)に示すように、鉤状に形成されてなるものである。フック130において、前記他方の短冊片部を鉤状部132と称し、符号132aで指し示す部分は案内部と称することとする。案内部132aの役割については後述する。
【0046】
フック130は、鉤状部132が、係合ユニット102の係合部材120の係合部120bに対応する高さ位置に取り付けられている。スイングパネル38が固定パネル36に対し閉じられた状態では、係合部120bが、図3(a)に示すように、フック130の鉤状部132に係合している。これにより、スイングパネル38が、第1連結ユニット40、第2連結ユニット42が有する前記ねじりコイルばね(不図示)の付勢力によって開くのを阻止している。換言すると、スイングパネル38を閉じた状態にロックしている。
【0047】
図3(b)は、ロック機構100によるロックを解除するための解除キー302を示している。解除キー302は、例えば、鋼線が曲げ加工されてなるものである。解除キー302は、一端部部分がリング状に曲げられてなる持ち手部302aを有する。他端部部分は、直角に曲げられて、引掛け部302bを構成している。持ち手部302aと引掛け部302bの間は曲げ加工が施されていないストレート部302cである。
【0048】
解除キー302を用いた、ロック機構100によるロック解除作業について、図6図7を参照しながら説明する。図6(a)は、スイングパネル38が閉じられた図3(a)に示す状態において、袖壁18内(中空柱HC内)に、解除キー302の一部が進入した状態を示す図である。図6(b)は、図6(a)に示す状態を、矢印Rの向きに視た図である。なお、図6(b)では、スイングパネル38およびフック130の図示は省略している。図7(a)、図7(b)の各々は、図6(a)、図6(b)に示す状態から、ロック機構100によるロックが解除された状態をそれぞれ示している。
【0049】
かご操作盤22、スピーカ24、標識類26等の保守点検作業は、いずれかの階にかご室10を停止させ、かご戸14、16を全開にし、かご室10内に乗客が居ない状態で行われる。
【0050】
作業者は、持ち手部302aを握って解除キー302を使う。作業者は、引掛け部302bの長手方向を上下方向に向けた状態で、引掛け部302bを先頭にして、スイングパネル38(の本体48)とかご戸14の隙間に解除キー302を進入させる。この場合、解除キー302は、係合ユニット102よりも少し下方の位置に進入させる。係合ユニット102の位置は、例えば、スイングパネル38の本体48の符号48bで指し示す位置にマークとなるシール等(不図示)を貼付することにより確認できる。
【0051】
そして、引掛け部302bをスリットSLの位置まで進入させる。スリットSLは、かご室10の床32(図1)と乗り場の床(不図示)に跨った作業員が目視により確認できる。もっとも、上述したように、スリットSLは、かご室10内の乗客からは視認できず、また、エレベータ運行中に乗客が乗り場からかご室10に乗り込む際でも、乗客は気に留めないため、袖壁18の意匠上の問題はない。
【0052】
なお、スリットSL(および第1連結ユニット40)を、作業員による目視が困難な程、奥まった位置に設けたとしても、以下の方法により、作業者は、引掛け部302bがスリットSLの位置まで進入したことを認識できる。すなわち、引掛け部302bを少し傾け、その先端を第2折返し部48bに当接させた状態で、引掛け部302bを進入させる。そうすると、前記先端がスリットSLに到達すると、当該前端がスリットSLに嵌るため、その感触で、引掛け部302bがスリットSLの位置まで進入したと認識できるのである。
【0053】
引掛け部302bがスリットSLに到達したところで、持ち手部302aをストレート部302cの軸心周りに、リング状をした持ち手部302aが水平姿勢になるまで、回転させる。これにより、引掛け部302bもその長手方向が水平となる。
【0054】
次に、解除キー302を上方へ移動させて、図6(b)に示すように、引掛け部302bを係合ユニット102の係合部材120の解除部120aに、解除補助部材122の基板部122aを介して引掛ける。そして、その状態で、引掛け部302bを上方へ押し上げる。そうすると、上述したように、係合部材120は、蝶番118の芯棒118cの軸心を中心に図6(b)に示す矢印Qの向きに回転する(図7(b))。その結果、係合部材120の係合部120bがフック130から離間し、ロック機構100によるロックが解除される。この際、上述したように、係合ユニット102とリンク300で連結された係合ユニット202とフック230とで構成されるロック機構200によるロックも同時に解除される。
【0055】
ロックが解除されると、スイングパネル38は、蝶番56の芯棒56cに設けたねじりコイルばね(不図示)の付勢力により、芯棒56cの軸心周りに回転して、図7(a)に示すように、固定パネル36に対して開く。また、解除キー302を係合ユニット102(の係合部材120)から外すと、係合部材120は、蝶番118に設けたねじりコイルばね(不図示)の復元力により図7(a)に、一点鎖線で示す位置に復帰する。
【0056】
図7(a)に示す状態から、作業者は、さらに手動で、図2(a)に示す点検作業に必要な分までスイングパネル38を回転させる。
【0057】
以上説明したように、実施形態に係るエレベータのかご室10によれば、スイングパネル38を閉じた状態にロックするロック機構100、200のロックを解除するための解除キー302の差し込み口となるスリットSLが、閉じられた状態のスイングパネル38と固定パネル36とで形成される中空柱HCの、かご室10内の乗客から目視できない位置に設けられているため、袖壁28の意匠性を損ねることがない。
【0058】
スイングパネル38を閉じるときは、スイングパネル38を手で固定パネル36に向かって押して回転させる。この際、フック130の案内部132aに案内されて、係合部材120(の係合部120b)が、図7(a)に一点鎖線で示す状態から実線で示す状態に移動する。そして、案内部132aが、係合部120bを通過すると、係合部材120(の係合部120b)が、蝶番118に設けたねじりコイルばね(不図示)の復元力により図7(a)に一点鎖線で示す位置(図3(a)の状態)に復帰し、フック130と係合してスイングパネル38が閉じられた状態にロックされる。
【0059】
以上、本発明に係る、エレベータのかご室を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態とすることもできる。
(1)上記実施形態では、図6(a)に示すように、かご戸14が全開された状態において、中空柱HCのかご戸14との隙間に面する位置にスリットSL(差し込み口)を設けたが、これに限らず、スリットSL(差し込み口)は、かご戸が全開にされた状態において、かご戸14に面しない位置(図6(a)において、図示のスリットSLよりも紙面に向かって少し左側の位置)、すなわち、中空柱HC(袖壁18)のかご室10とは反対側の面であってかご戸14に面しない位置に設けても構わない。このような位置でも、スリット(差し込み口)は、かご室10の乗客から目視できないためである。
【0060】
(2)上記実施形態では、固定パネル36に係合ユニット102、202(係合部材120、220)を設け、スイングパネル38にフック130、230を設けたが、これに限らず、固定パネルにフックを設け、スイングパネルに係合ユニット(係合部材)を設けることとしても構わない。
【0061】
(3)上記実施形態では、係合部材120、220における解除部120a、220aの補助として、解除補助部材122、222を係合部材120、220に設けたが(図5)、ロック機構102、202の構成上、解除補助部材122、222は必須の構成要素ではない。
【0062】
解除補助部材122、222を設けると、(解除補助部材122、222を介して)係合部材120、220の解除部120a、220aに引掛けられた解除キー302の一部である引掛け部302bが、係合部材120、220から外れにくくなるものの、解除補助部材122、222を設けなくても、解除キー302の引掛け部302bで係合部材201、220の解除部120a、220aを引掛けて、係合部材120、220を上述したように回転させることは可能だからである。
【0063】
(4)係合ユニット102、202を、上記実施形態とは上下逆向きに取り付けることとしても構わない。上記実施形態では、(解除補助部材122、222を介して)係合部材120、220の解除部120a、220aに引掛けた解除キー302の引掛け部302bを上向きに押す(すなわち、上方向に移動させる)ことによりロックが解除されたが、係合ユニットを上記実施形態とは上下逆向きに取り付けた場合は、(解除補助部材を介して)係合部材の解除部に引掛けた解除キー302の引掛け部302bを下向きに押す(すなわち、下方向に移動させる)ことによりロックが解除されることとなる。
【0064】
(5)上記実施形態では、第1連結ユニット40および第2連結ユニット42の構成部材である蝶番56(の芯棒56c)に不図示のねじりコイルばねを設けたが、当該ねじりコイルばねは無くても構わない。ねじりコイルばねを設けない場合でも、当然のことながら、ロック機構100,ロック機構200は、固定パネル36に対しスイングパネル38を閉じた状態にロックする。また、上記と同様にロックを解除した場合には、作業者は、閉じた状態から図2(a)に示す点検作業に必要な分までスイングパネル38を手動で回転させる。スイングパネル38を閉じて、ロックする場合は、上記実施形態と同じ作業となる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係るエレベーのかご室は、例えば、固定パネルに対してスイングパネルを閉じた状態にロックするロック機構を含む袖壁を有するかご室に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 かご室
14 かご戸
18 袖壁
36 固定パネル
38 スイングパネル
100、200 ロック機構
HC 中空柱
SL スリット(差し込み口)
【要約】
【課題】意匠性を損ねることなく、ロック機構によるロックの解除を可能とする袖壁を備えた、エレベータのかご室を提供する。
【解決手段】袖壁28を、全開状態のかご戸14よりも室内側に立設された固定パネル36と、固定パネル36に対し、垂直の回転軸である蝶番56の芯棒56cを中心として回転し開閉可能に設けられたスイングパネル38と、スイングパネル38を閉じた状態にロックするロック機構100とを含み、スイングパネル38が閉じられた状態では、スイングパネル38と固定パネル36とで中空柱HCが形成され、ロック機構100は、中空柱HC内部に収納されており、ロック機構100によるロックを解除するための解除キー302の差し込み口が、中空柱HCの、かご室の乗客から目視できない位置に設けられている構成とした。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7