(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物、半導体装置、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20230905BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20230905BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20230905BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
C08L63/00
H01L21/56 T
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2020563260
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2019050401
(87)【国際公開番号】W WO2020137989
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2020-11-19
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2018244444
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】河村 信哉
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】海老原 えい子
【審判官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-43649(JP,A)
【文献】特開2006-307162(JP,A)
【文献】特開2019-182891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、
(B)硬化剤、及び、
(C)充填材
を含有する、基板上に搭載された半導体素子を封止する封止用樹脂組成物であって、
エポキシ樹脂(A)は、下記一般式(NE)で表されるナフチルエーテル骨格を有するエポキシ樹脂(A-1)とエポキシ樹脂(A-1)以外のエポキシ樹脂(A-2)とを含み、
前記封止用樹脂組成物の硬化物の
下記条件1で測定されたガラス転移温度をTg(℃)、
下記条件1で測定された190℃~230℃における線膨張係数をα
2(ppm/℃)、
下記条件2で測定された260℃における熱時弾性率をE
2(MPa)とし、
以下の方法により測定された、前記封止用樹脂組成物の175℃における矩形圧をη
2(MPa)としたとき、
下記式(1)を満足する封止用樹脂組成物(ただし、環状アミノ基で置換されたピリジンが含まれる場合を除く)。
式(1) E
2×(α
2×10
-6)×(175-Tg)×η
2≦0.3
(方法)
低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度170℃、注入流量177mm
3/秒の条件にて、幅15mm、厚さ1mm、長さ175mmの矩形状の流路に、前記封止用樹脂組成物を注入し、流路の上流先端から25mmの位置に埋設した圧力センサーにて圧力の経時変化を測定し、前記封止用樹脂組成物の流動時における最低圧力(MPa)を測定し、これを矩形圧とする。
【化1】
(前記一般式(NE)中、R
1は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して、ナフチレン基又はフェニレン基を示し、両基はそれぞれ炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基を置換基として有してもよい。R
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基を示し、p及びqは、それぞれ独立して、0~4の整数であり、ただし、pとqの何れか一方は1以上であり、R
3は、それぞれ独立して、水素原子を示す。)
(条件1)
トランスファー成形機を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間3分で前記封止用樹脂組成物を注入成形し、15mm×4mm×4mmの試験片を得る。次いで、得られた試験片を175℃、4時間で後硬化した後、熱機械分析装置(セイコー電子工業(株)製、TMA100)を用いて、測定温度範囲0℃~320℃、昇温速度5℃/分の条件下で測定を行う。この測定結果から、ガラス転移温度Tg(℃)、190℃~230℃における線膨張係数(α
2
)を算出する。
(条件2)
低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製「KTS-15」)を用いて金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で前記封止用樹脂組成物を注入成形し、10mm×4mm×4mmの試験片を得る。次いで、この試験片をDMA測定装置(セイコーインスツルメンツ社製)を用いた3点曲げ法により、測定温度範囲0℃~300℃,5℃/minで昇温測定し、260℃での硬化物の熱時弾性率を測定する。
【請求項2】
ナフチルエーテル骨格を有するエポキシ樹脂(A-1)は、エポキシ樹脂(A)100質量部に対し、30質量部以上60質量部以下の量で含まれる、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
充填材(C)は、前記封止用樹脂組成物100質量部に対し、65質量部%以上98質量部%以下の量で含まれる、請求項1または2に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
硬化剤(B)は、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、及び、メルカプタン系硬化剤から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項5】
硬化剤(B)は、エポキシ樹脂(A)100質量部に対し、30~70質量部の量で含まれる、請求項1~4のいずれか一項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の封止用樹脂組成物を硬化することにより形成された封止樹脂を備える半導体装置。
【請求項7】
基板上に半導体素子を搭載する工程と、
請求項1~5のいずれか一項に記載の封止用樹脂組成物を用いて、前記半導体素子を封止する封止工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記封止工程の後に、リフロー工程を有する、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記リフロー工程におけるリフロー温度が200℃以上である請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物、半導体装置、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージ等の封止用樹脂組成物として様々な技術が開発されている。また、半導体パッケージ等の電子部品は様々な線膨張係数を有する部材で構成されており、その製造過程において、後硬化やリフロー等の加熱を伴う工程を経ることで、反りが発生する問題が生じている。そこで、例えば、特許文献1には、特定のジヒドロアントラセン骨格含有エポキシ樹脂を30~100質量%含有するエポキシ樹脂、フェノール硬化剤、無機充填剤、およびステアリン酸ワックスを含有する、反りが小さく、かつ室温~リフロー温度における反りの温度変化が小さい封止用樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、半導体パッケージ等を樹脂封止する際、封止用の樹脂の流動中に、半導体チップに接続しているボンディングワイヤーが変形して、断線や接触等を起こすという問題があった。
本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載の封止用樹脂組成物を用いた場合、該封止用樹脂組成物を用いて封止する際のワイヤー流れと、該封止用樹脂組成物を用いて封止した半導体装置の後硬化やリフロー時に発生する反りとを、同時に抑制することが困難であることが判明した。本発明は、樹脂封止する際のワイヤー流れの発生が少なく、かつ、封止用樹脂組成物を用いて封止した半導体装置の後硬化時等に発生する反りが少ない封止用樹脂組成物の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、
(A)エポキシ樹脂、
(B)硬化剤、及び、
(C)充填材
を含有する、
基板上に搭載された半導体素子を封止する封止用樹脂組成物であって、
エポキシ樹脂(A)は、下記一般式(NE)で表されるナフチルエーテル骨格を有するエポキシ樹脂(A-1)とエポキシ樹脂(A-1)以外のエポキシ樹脂(A-2)とを含み、
前記封止用樹脂組成物の硬化物の
ガラス転移温度をTg(℃)、
190℃~230℃における線膨張係数をα
2(ppm/℃)、
260℃における熱時弾性率をE
2(MPa)とし、
以下の方法により測定された、前記封止用樹脂組成物の175℃における矩形圧をη
2(MPa)としたとき、
下記式(1)を満足する封止用樹脂組成物
(ただし、環状アミノ基で置換されたピリジンが含まれる場合を除く)。
式(1) E
2×(α
2×10
-6)×(175-Tg)×η
2≦0.3
(方法)
低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度170℃、注入流量177mm
3/秒の条件にて、幅15mm、厚さ1mm、長さ175mmの矩形状の流路に、前記封止用樹脂組成物を注入し、流路の上流先端から25mmの位置に埋設した圧力センサーにて圧力の経時変化を測定し、前記封止用樹脂組成物の流動時における最低圧力(MPa)を測定し、これを矩形圧とする。
【化1】
(前記一般式(NE)中、R
1は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して、ナフチレン基又はフェニレン基を示し、両基はそれぞれ炭素数1~4のアルキル基又はフェニ
ル基を置換基として有してもよい。R
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル
基を示し、p及びqは、それぞれ独立して、0~4の整数であり、ただし、pとqの何れか一方は1以上であり、R
3は、それぞれ独立して、水素原
子を示す。)
【0006】
また、本発明によれば、上記封止用樹脂組成物を硬化することにより形成された封止樹脂を備える半導体装置が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、基板上に半導体素子を搭載する工程と、
上記封止用樹脂組成物を用いて、半導体素子を封止する封止工程と、
を備える半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、樹脂封止する際のワイヤー流れの発生が少なく、かつ、封止用樹脂組成物を用いて封止した半導体装置の後硬化時等に発生する反りが少ない封止用樹脂組成物、該封止用樹脂組成物を硬化することにより形成された封止樹脂を備える半導体装置、該半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0010】
【
図1】実施形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図2】実施形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」の意である。
本明細書における「電子装置」の語は、半導体チップ、半導体素子、プリント配線基板、電気回路ディスプレイ装置、情報通信端末、発光ダイオード、物理電池、化学電池など、電子工学の技術が適用された素子、デバイス、最終製品等を包含する意味で用いられる。
尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0012】
<封止用樹脂組成物>
まず、本実施形態に係る封止用樹脂組成物について説明する。
本実施形態の封止用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び、(C)充填材を含む。
そして、本実施形態に係る封止用樹脂組成物は、かかる封止用樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度をTg(℃)、
190℃~230℃における線膨張係数をα2(ppm/℃)、
260℃における熱時弾性率をE2(MPa)とし、
以下の方法により測定された、前記封止用樹脂組成物の175℃における矩形圧をη2(MPa)としたとき、下記式(1)を満足する。
式(1) E2×(α2×10-6)×(175-Tg)×η2≦0.3
(方法)
低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度170℃、注入流量177mm3/秒の条件にて、幅15mm、厚さ1mm、長さ175mmの矩形状の流路に、前記封止用樹脂組成物を注入し、流路の上流先端から25mmの位置に埋設した圧力センサーにて圧力の経時変化を測定し、前記封止用樹脂組成物の流動時における最低圧力(MPa)を測定し、これを矩形圧とする。
【0013】
半導体パッケージ等の電子部品は様々な線膨張係数を有する部材で構成されており、その製造過程において、加熱を伴う工程を経ると、様々な部材は、収縮量、膨張量が異なるため、結果として反りが発生する。大きな反りの発生は接合不良による信頼性の悪化や、パッケージ個片化における切断の難化に繋がるため、低温から高温までの広範囲な反りの抑制は重要な課題になっている。また、一方で、半導体パッケージ等を樹脂封止する際、封止用樹脂の充填中に、半導体チップに接続しているボンディングワイヤーが変形して、断線や接触等を起こすという問題があった。しかしながら、ワイヤー流れの抑制と反りの抑制を同時に達成することは困難であった。
本発明者らは、ワイヤー流れの抑制と反りの抑制を同時に達成するために、鋭意検討を行い、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び、(C)充填材を含む封止用樹脂組成物において、ガラス転移温度Tg、線膨張係数α2、熱時弾性率E2、及び、矩形圧η2とが、特定の関係、すなわち式(1)を満たす構成とすることで、上記2つの課題を同時に達成することができる封止用樹脂組成物となることを見出し、本発明を成し得たものである。
【0014】
封止用樹脂組成物が上述した成分を有するとともに、封止用樹脂組成物が、上述した式(1)を満たすことにより、ワイヤー流れの抑制と反りの抑制を同時に達成することができる理由は必ずしも明らかではないが、以下の点が推察される。
上記式(1)における「E2×(α2×10-6)×(175-Tg)」は、ガラス転移温度以上における熱時弾性率と、ガラス転移温度以上における線膨張係数と、硬化温度とガラス転移温度との差分との積であり、高温時の残留応力S2を示す。また、矩形圧η2は高温時における溶融粘度を示す。本実施形態に係る樹脂組成物によれば、残留応力S2と、高温時における溶融粘度を示す矩形圧η2との積が、特定の条件を満たすことにより、高温時に蓄積される内部応力と、高温時における流動性を最適なバランスとすることができ、充填時のワイヤー流れの抑制と該樹脂組成物の硬化物の、熱履歴を経た後の反りの抑制との両立を図ることができるものと考えられる。
また、以上のような特性は、本実施形態の封止用樹脂組成物を構成する各成分の種類、配合量を適切に調整することで達成することができる。
【0015】
式(1)で表される「E2×(α2×10-6)×(175-Tg)×η2」は、0.3以下であり、0.28以下であることが好ましく、0.25以下であること特に好ましい。「E2×(α2×10-6)×(175-Tg)×η2」の下限は特に制限されないが、例えば0.01以上とすることができる。
【0016】
熱時弾性率E2(MPa)は、例えば、JISK-6911に準じて以下の方法で測定することができる。まず、低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製「KTS-15」)を用いて金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で封止用樹脂組成物を注入成形し、10mm×4mm×4mmの試験片を得る。次いで、この試験片をDMA測定装置(セイコーインスツルメンツ社製)を用いた3点曲げ法により、測定温度範囲0℃~300℃、5℃/minで昇温測定し、260℃での硬化物の熱時弾性率を測定した。なお、熱時弾性率E2の単位はMPaである。
【0017】
熱時弾性率E2は、その他のパラメーターとの関係において、上記式(1)を満たせば特に制限されないが、硬化物の強度を高める観点から、好ましくは100MPa以上であり、より好ましくは500MPa以上、さらに好ましくは1000MPa以上である。また、応力緩和特性に優れた硬化物を実現する観点から、上記熱時弾性率E2は、好ましくは10000MPa以下であり、好ましくは8000MPa以下であり、より好ましくは6000MPa以下である。
【0018】
熱時弾性率E2と同様の方法でDMAにより測定される封止用樹脂組成物の硬化物の25℃における常温時弾性率E1は、硬化物の強度を高める観点から、好ましくは1000Pa以上であり、より好ましくは3000MPa以上、さらに好ましくは5000MPa以上である。
また、応力緩和特性に優れた硬化物を実現する観点から、上記25℃における貯蔵弾性率E1は、好ましくは40000MPa以下であり、より好ましくは30000MPa以下、さらに好ましくは25000MPa以下である。
【0019】
ガラス転移温度Tg(℃)、線膨張係数α2(ppm/℃)は、例えば、以下の方法で測定することができる。まず、トランスファー成形機を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間3分で半導体封止用樹脂組成物を注入成形し、15mm×4mm×4mmの試験片を得る。次いで、得られた試験片を175℃、4時間で後硬化した後、熱機械分析装置(セイコー電子工業(株)製、TMA100)を用いて、測定温度範囲0℃~320℃、昇温速度5℃/分の条件下で測定を行う。この測定結果から、ガラス転移温度Tg(℃)、ガラス転移温度以上における線膨張係数(α2)を算出する。なお、本実施形において、190℃~230℃における線膨張係数をα2(ppm/℃)とした。なお、線膨張係数α2の単位はppm/℃であり、ガラス転移温度の単位は℃である。
【0020】
線膨張係数α2は、その他のパラメーターとの関係において、上記式(1)を満たせば特に制限されないが、熱履歴時における線膨張係数を低くし、たとえば半導体パッケージを構成する他の材料との膨張量・収縮量差を抑制する観点から、好ましくは75ppm/℃以下であり、より好ましくは70ppm/℃以下であり、さらに好ましくは65ppm/℃以下である。上記平均線膨張係数α2の下限値は限定されないが、たとえば10ppm/℃以上としてもよい。
【0021】
また、硬化物のガラス転移温度は、その他のパラメーターとの関係において、上記式(1)を満たせば制限されないが、100℃以上であることが好ましく、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上、さらには125℃より大きいことが特に好ましい。
また、硬化物のガラス転移温度の上限に制限はないが、硬化物の靭性を向上させる観点から、たとえば300℃以下であり、175℃未満であることがより好ましく、140℃以下であってもよい。
【0022】
線膨張係数α2と同様の方法で求められる硬化物の40℃~80℃における線膨張係数α1は、たとえば半導体パッケージを構成する他の材料との膨張量・収縮量差を抑制する観点から、好ましくは50ppm/℃以下であり、より好ましくは45ppm/℃以下であり、さらに好ましく40/℃以下である。上記平均線膨張係数α1の下限値は限定されないが、たとえば1ppm/℃以上としてもよい。
【0023】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物の矩形圧(矩形状の空間内への注入圧)は、その他のパラメーターとの関係において、上記式(1)を満たせば特に制限されないが、その上限値は、例えば、2.0MPa以下であることが好ましく、1.0MPa以下であることがより好ましく、0.3MPa以下であることがさらにより好ましく、0.2MPa以下であることがとくに好ましい。これにより、半導体封止用樹脂組成物を基板と半導体素子との間に充填する際の充填性をより効果的に向上させることができる。また、上記矩形圧の下限値は、0.03MPa以上であることが好ましく、0.04MPa以上であることがより好ましく、0.05MPa以上であることがとくに好ましい。これにより成形時における金型隙間からの樹脂漏れを防ぐことができる。
【0024】
本実施形態に係る封止用樹脂組成物は、該封止用樹脂組成物の硬化物の、
ガラス転移温度をTg(℃)、
40℃~80℃における線膨張係数をα1(ppm/℃)、
25℃における常温時弾性率をE1(MPa)としたとき、
下記式(2)で表される残留応力S1(MPa)が、10MPa以上90MPa以下であることが好ましく、20MPa以上、80MPa以下であることがより好ましく、30MPa以上70MPa以下であることが特に好ましい。
式(2) 残留応力S1=E1×(α1×10-6)×(Tg-(-40))
【0025】
本実施形態において、封止用樹脂組成物のゲルタイムは、封止用樹脂組成物の成形性の向上を図りつつ成形サイクルを速くする観点から、好ましくは10秒以上であり、より好ましくは20秒以上である。
また、硬化性に優れた硬化物を実現する観点から、封止用樹脂組成物のゲルタイムは、好ましくは100秒以下であり、より好ましくは80秒以下、さらに好ましくは70秒以下である。
ゲルタイムの測定は、175℃に加熱した熱板上で封止用樹脂組成物を溶融した後、へらで練りながら硬化するまでの時間(ゲルタイム)を測定することによりおこなうことができる。
【0026】
本実施形態において、封止用樹脂組成物のスパイラルフロー流動長は、封止用樹脂組成物を成形する際の充填性をより効果的に向上させる観点から、好ましくは40cm以上であり、より好ましくは50cm、さらに好ましくは60cmである。また、スパイラルフロー流動長の上限値は、限定されないが、たとえば200cmとすることができる。
【0027】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物において、175℃、2分で熱処理した際の収縮率S1は、例えば、0.05%以上、2%以下とすることができ、0.1%以上0.5%以下がより好ましい。また、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物において、175℃、4時間で熱処理した際の収縮率S2は、例えば、0.05%以上、2%以下とすることができ、0.1%以上0.5%以下がより好ましい。このように半導体封止用樹脂組成物の成形時における収縮率を特定の範囲とすることによって、有機基板等の基板の収縮量と樹脂組成物の硬化時の収縮量との整合がとれて半導体パッケージの反りが抑制された形状に安定させることができる。
【0028】
本実施形態に係る封止用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び、(C)充填材を含む。
【0029】
(エポキシ樹脂(A))
本実施形態に係る封止用樹脂組成物において、エポキシ樹脂(A)は、ナフチルエーテル骨格を有するエポキシ樹脂(A-1)を含む。
【0030】
本実施形態に係る封止用樹脂組成物は、ナフチルエーテル骨格を有するエポキシ樹脂(A-1)を含み、該ナフタレン骨格を含む構造単位に起因する剛直性を有し、架橋密度が高くなりすぎることがないため、溶融時の粘度特性と、硬化物となった際の収縮率、弾性率とのバランスに優れた封止用樹脂組成物が得られるものと推測される。
【0031】
本実施形態に係る封止用樹脂組成物は、ナフチルエーテル骨格を有するエポキシ樹脂(A-1)として、下記一般式(NE)で表される、エポキシ樹脂を少なくとも1種含むことができる。
【化1】
【0032】
上記式(NE)中、R1は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、Ar1及びAr2は、それぞれ独立して、ナフチレン基又はフェニレン基を示し、両基はそれぞれ炭素数1~4のアルキル基又はフェニレン基を置換基として有してもよい。R2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又はアラルキル基を示し、p及びqは、それぞれ独立して、0~4の整数であり、ただし、pとqの何れか一方は1以上であり、R3は、それぞれ独立して、水素原子、アラルキル基又はエポキシ基含有芳香族炭化水素基を示す。
【0033】
式(NE)中、R2がアラルキル基である場合、該アラルキル基は、下記式(A)で表すことができる。
また、式(NE)中、R3がアラルキル基である場合、該アラルキル基は、下記式(A)で表すことができる。
【0034】
【0035】
式(A)中、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、Ar3はフェニレン基、1~3の水素原子が炭素数1~4のアルキル基で核置換されたフェニレン基、若しくはナフチレン基、又は1~3の水素原子が炭素数1~4のアルキル基で核置換されたナフチレン基を表す。rは、平均で0.1~4の数である。
【0036】
式(NE)中、R3がエポキシ基含有芳香族炭化水素基である場合、該エポキシ基含有芳香族炭化水素基は、下記式(E)で表すことができる。
【0037】
【0038】
式(E)中、R6は、水素原子又はメチル基を示し、Ar4は、ナフチレン基、又は、炭素原子数1~4のアルキル基、アラルキル基若しくはフェニレン基を置換基として有するナフチレン基を示し、sは1又は2の整数である。
【0039】
本実施形態に係る封止用樹脂組成物は、上記態様のナフチルエーテル骨格を有するエポキシ樹脂(A-1)を含むことにより、溶融時の粘度特性と、硬化物となった際の収縮率、弾性率とのバランスに優れた封止用樹脂組成物となるものと考えられる。
【0040】
本実施形態に係る封止用樹脂組成物において、エポキシ樹脂(A)は、上述のナフチルエーテル骨格を有するエポキシ樹脂(A-1)以外に、エポキシ樹脂(A-2)を含むことが好ましい。
エポキシ樹脂(A-2)は、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂から選択される一種類または二種類以上を含むものである。
【0041】
これらのうち、耐湿信頼性と成形性のバランスを向上させる観点からは、エポキシ樹脂(A-2)は、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、およびトリフェノールメタン型エポキシ樹脂のうちの少なくとも一つを含むことがより好ましい。また、半導体装置の反りを抑制する観点からは、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂およびノボラック型エポキシ樹脂のうちの少なくとも一つを含むことがとくに好ましい。さらに流動性を向上させるためにはビフェニル型エポキシ樹脂がとくに好ましく、高温の弾性率を制御するためにはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂がとくに好ましい。
【0042】
エポキシ樹脂(A-2)としては、たとえば下記式(1)で表されるエポキシ樹脂、下記式(2)で表されるエポキシ樹脂、下記式(3)で表されるエポキシ樹脂、下記式(4)で表されるエポキシ樹脂、および下記式(5)で表されるエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含有するものを用いることができる。
【0043】
【0044】
上記式(1)中、Ar1はフェニレン基またはナフチレン基を表し、Ar1がナフチレン基の場合、グリシジルエーテル基はα位、β位のいずれに結合していてもよい。Ar2はフェニレン基、ビフェニレン基またはナフチレン基のうちのいずれか1つの基を表す。RaおよびRbは、それぞれ独立に炭素数1~10の炭化水素基を表す。gは0~5の整数であり、hは0~8の整数である。n3は重合度を表し、その平均値は1~3である。
【0045】
【0046】
式(2)中、複数存在するRcは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~4の炭化水素基を表す。n5は重合度を表し、その平均値は0~4である。
【0047】
【0048】
式(3)中、複数存在するRdおよびReは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基を表す。n6は重合度を表し、その平均値は0~4である。
【0049】
【0050】
式(4)中、複数存在するRfは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基を表す。n7は重合度を表し、その平均値は0~4である。
【0051】
【0052】
式(5)中、複数存在するRgは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基を表す。n8は重合度を表し、その平均値は0~4である。
上記の中でも、エポキシ樹脂(A-2)として、上記式(5)で表されるエポキシ樹脂を含むものがより好ましい態様の一つとして挙げられる。
【0053】
本実施形態において、ナフチルエーテル骨格を有するエポキシ樹脂(A-1)を含むエポキシ樹脂(A)の全量を100質量部としたとき、またはナフチルエーテル骨格を有するエポキシ樹脂(A-1)、及び、エポキシ樹脂(A-1)以外のエポキシ樹脂(A-2)を併せた、エポキシ樹脂(A)の全量を100質量部としたとき、エポキシ樹脂(A-1)は、1質量部以上70質量部以下であることが好ましく、10質量部以上、65質量部以下であることがより好ましく、30質量部以上、60質量部以下であることが特に好ましい。
【0054】
(硬化剤(B))
本実施形態における硬化剤(B)は、半導体封止用樹脂組成物に一般に使用されているものであれば特に制限はないが、例えば、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、及び、メルカプタン系硬化剤が挙げられ、これらから選択される少なくとも1種を含むことができる。これらの中でも、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスの点からフェノール系硬化剤を含むことが好ましい。
【0055】
<フェノール系硬化剤>
フェノール系硬化剤としては、半導体封止用樹脂組成物に一般に使用されているものであれば特に制限はないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール、α-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール類とホルムアルデヒドやケトン類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂、上記したフェノール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂などのフェノールアラルキル樹脂、トリスフェニルメタン骨格を有するフェノール樹脂、などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
<アミン系硬化剤>
アミン系硬化剤としては、ジエチレントリアミン(DETA)やトリエチレンテトラミン(TETA)やメタキシリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)やm-フェニレンジアミン(MPDA)やジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)や有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
<酸無水物系硬化剤>
酸無水物系硬化剤としては、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)やメチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)や無水マレイン酸などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)や無水ピロメリット酸(PMDA)やベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)、無水フタル酸などの芳香族酸無水物などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
<メルカプタン系硬化剤>
メルカプタン系硬化剤としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
<その他硬化剤>
その他の硬化剤としては、イソシアネートプレポリマーやブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物、カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記のうち異なる系の硬化剤の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
封止用樹脂組成物は、硬化剤(B)を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0061】
本実施形態において、硬化剤(B)は、エポキシ樹脂(A)100質量部に対し、30~70質量部含まれることが好ましく、35~65質量部含まれることがより好ましく、40~60質量部含まれることが特に好ましい。
【0062】
また、硬化剤(B)の含有量は、例えば、封止用樹脂組成物の全固形分100質量%に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、1.5質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、成形時に優れた流動性となり、充填性や成形性の向上が図られる。
硬化剤(B)の含有量の上限値は特に無いが、例えば、封止用樹脂組成物の全固形分100質量%に対して9質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることがさらに好ましい。
これにより、電子装置としての耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させることができる。また、基材の反りの一層の抑制に寄与しうる。
【0063】
(充填材(C))
本実施形態の封止用樹脂組成物は、充填材(C)を含む。
充填材(C)として具体的には、シリカ、アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、マイカ、ガラス繊維等の無機充填剤が挙げられる。
【0064】
充填材(C)は、シリカを含むことが好ましい。シリカとしては、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ等を挙げることができる。これらの中でも特に溶融球状シリカが好ましい。
【0065】
充填材(C)は、通常、粒子である。粒子の形状は、略真球状であることが好ましい。
充填材(C)の平均粒径は、特に限定されないが、典型的には1~100μm、好ましくは1~50μm、より好ましくは1~20μmである。平均粒径が適当であることにより、硬化時の適度な流動性を確保すること等ができる。なお、平均粒径を比較的小さくする(例えば1~20μm)ことで、例えば、最先端のウエハーレベルパッケージにおける狭いギャップ部分への充填性を高めることも考えられる。
充填材(C)の平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製の湿式粒度分布測定機LA-950)により体積基準の粒子径分布のデータを取得し、そのデータを処理することで求めることができる。測定は、通常、湿式で行われる。
【0066】
シリカ等の充填材(C)には、シランカップリング剤などのカップリング剤による表面修飾が行われていてもよい。これにより、充填材(C)の凝集が抑制され、より良好な流動性を得ることができる。また、充填材(C)と他の成分との親和性が高まり、充填材(C)の分散性が向上する。このことは、硬化物の機械的強度の向上や、マイクロクラックの発生抑制などに寄与すると考えられる。
表面修飾のためのカップリング剤としては、後述のカップリング剤(E)として挙げているもの等を用いることができる
【0067】
封止用樹脂組成物は、充填材(C)を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
充填材(C)の含有量は特に制限が無いが、例えば、封止用樹脂組成物の全固形分100質量%に対して65質量部%以上98質量部%以下含まれることが好ましく、68質量部%以上95質量部%以下含まれることがより好ましく、70質量部%以上93質量部%以下含まれることが特に好ましい。充填材(C)の含有量を適度に多くすることにより、低吸湿性などを向上させ、電子装置の耐湿信頼性や耐リフロー性をより効果的に向上させることができる。特に、充填材(C)を適度に多くして、相対的に樹脂成分(エポキシ樹脂(A)や硬化剤(B)など)を少なくすれば、理論上は硬化収縮が少なくなるため、反りを一層低減しうる。充填材(C)の含有量を適度に少なくすることにより、成形時の流動性の低下にともなう成形性の低下等を抑制することが可能となる。本実施形態の樹脂組成物によれば、充填材(C)を適度に多くしても、成形時の流動性の低下等を抑制することが可能となる。
【0068】
(硬化促進剤)
本実施形態の封止用樹脂組成物は、硬化促進剤を含むことができる。硬化促進剤は、熱硬化性樹脂の硬化を促進させるものであればよく、熱硬化性樹脂の種類に応じて選択される。
本実施形態において、硬化促進剤は、たとえば有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(EMI24)、2-フェニル-4-メチルイミダゾール(2P4MZ)、2-フェニルイミダゾール(2PZ)、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール(2P4MHZ)、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(1B2PZ)などのイミダゾール化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン等が例示されるアミジンや3級アミン、上記アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物からなる群から選択される1種類または2種類以上を含む。封止用樹脂組成物の硬化性を向上する観点および封止材と金属との密着性を向上する観点から、硬化促進剤は好ましくはイミダゾール化合物を含む。
【0069】
封止用樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物の硬化性を効果的に向上させる観点から、封止用樹脂組成物全体に対して好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。
また、封止用樹脂組成物のハンドリングを向上させる観点から、封止用樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0070】
(カップリング剤)
本実施形態の封止用樹脂組成物は、カップリング剤を含むことができる。封止用樹脂組成物がカップリング剤を含むことにより、例えば、基材との密着性の更なる向上や、組成物中での充填材の分散性の向上などを図ることができる。充填材の分散性が向上すると、最終的に得られる硬化物の均質性が向上する。これは硬化物の機械的強度の向上などに寄与しうる。
【0071】
カップリング剤としては、例えば、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、メタクリルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を用いることができる。
より具体的には、以下を例示することができる。
【0072】
・シラン系カップリング剤
ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-[ビス(β-ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(β-アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N-(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミンの加水分解物等。
【0073】
・チタネート系カップリング剤
イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等。
【0074】
封止用樹脂組成物がカップリング剤を含む場合、カップリング剤を1種のみ含んでもよいし、2種以上のカップリング剤を含んでもよい。
カップリング剤の含有量の下限は特にないが、例えば、封止用樹脂組成物の全体に対して0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。カップリング剤の含有量をこれら下限値以上とすることにより、カップリング剤を添加することによる効果を十分に得やすくなる。
カップリング剤の含有量の上限は特にないが、封止用樹脂組成物の全体に対して2.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましい。カップリング剤の含有量をこれら上限値以下とすることにより、封止成形時における封止用樹脂組成物の流動性が適当となり、良好な充填性や成形性が得られる。
【0075】
(その他の成分)
本実施形態の封止用樹脂組成物は、さらに必要に応じて、pH調整剤、イオン捕捉剤、難燃剤、着色剤、離型剤、低応力剤、酸化防止剤、重金属不活性化剤等の各種添加剤を含んでもよい。
【0076】
pH調整剤としては、例えば、ハイドロタルサイトを用いることができる。ハイドロタルサイトは、組成物中のpHを中性付近に保持し、その結果としてCl-などのイオンを生じにくくすると言われている。
イオン捕捉剤(イオンキャッチャー、イオントラップ剤などとも呼ばれる)としては、例えば、ビスマス酸化物やイットリウム酸化物などを用いることができる。
pH調整剤および/またはイオン捕捉剤を用いる場合、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
pH調整剤および/またはイオン捕捉剤を用いる場合、その量は、封止用樹脂組成物の全体に対して例えば0.05~0.3質量%、好ましくは0.1~0.2質量%である。
【0077】
難燃材としては、無機系難燃剤(例えば水酸化アルミニウム等の水和金属系化合物、住友化学株式会社等から入手可能)、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、有機金属塩系難燃剤などを挙げることができる。
難燃剤を用いる場合、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
難燃材を用いる場合、含有量に特に制限はないが、封止用樹脂組成物の全体に対して例えば10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。これら上限値以下とすることにより、パッケージの電気信頼性を保持することができる。
【0078】
着色剤としては、具体的には、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン等が挙げられる。
着色剤を用いる場合、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
着色剤を用いる場合、その量は、封止用樹脂組成物の全体に対して例えば0.1~0.5質量%、好ましくは0.2~0.4質量%である。
【0079】
離型剤としては、天然ワックス、モンタン酸エステル等の合成ワックス、高級脂肪酸もしくはその金属塩類、パラフィン、酸化ポリエチレン等が挙げられる。
離型剤を用いる場合、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
離型剤を用いる場合、その量は、封止用樹脂組成物の全体に対して例えば0.1~0.5質量%、好ましくは0.2~0.3質量%である。
【0080】
低応力剤としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、ポリイソプレン、1,2-ポリブタジエン、1,4-ポリブタジエン等のポリブタジエン、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール、ポリ-ε-カプロラクトン等の熱可塑性エラストマー、ポリスルフィドゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。
低応力剤を用いる場合、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
低応力剤を用いる場合、その量は、封止用樹脂組成物の全体に対して例えば0.05~1.0質量%とすることができる。
【0081】
次に、封止用樹脂組成物の製造方法を説明する。
本実施形態の封止用樹脂組成物は、たとえば前述の各成分を、公知の手段で混合し、さらにロール、ニーダーまたは押出機等の混練機で溶融混練し、冷却した後に粉砕することで得ることができる。さらには、これらをタブレット状に打錠成形したものを封止用樹脂組成物として用いることもできる。これにより、顆粒状またはタブレット状の封止用樹脂組成物を得ることができる。
このような打錠成形した組成物とすることにより、トランスファー成形、射出成形、および圧縮成形等の公知の成型方法を用いて封止成形することが容易となる。
【0082】
本実施形態の封止用樹脂組成物は、一般的な半導体素子やパワー半導体などの半導体素子封止用樹脂組成物、ウェハ封止用樹脂組成物、疑似ウェハ形成用樹脂組成物、車載用電子制御ユニット形成用封止用樹脂組成物、配線基板形成用封止用樹脂組成物、ローター固定部材用封止用樹脂組成物などの各種の用途に用いることができる。
以下、半導体装置について説明する。
【0083】
<半導体装置>
本実施形態における半導体装置は、本実施形態における封止用樹脂組成物を硬化することにより形成された封止樹脂を備える半導体装置である。
図1は、本実施形態に係る半導体装置100の構成を示す断面図である。
図1に示した半導体装置100は、基板30上に搭載された半導体素子20と、半導体素子20を封止してなる封止材50と、を備えている。
封止材50は、本実施形態における封止用樹脂組成物を硬化して得られる硬化物により構成されている。
【0084】
また、
図1には、基板30が回路基板である場合が例示されている。この場合、
図1に示すように、基板30のうちの半導体素子20を搭載する一面とは反対側の他面には、たとえば複数の半田ボール60が形成される。半導体素子20は、基板30上に搭載され、かつワイヤ40を介して基板30と電気的に接続される。一方で、半導体素子20は、基板30に対してフリップチップ実装されていてもよい。ここで、ワイヤ40は、たとえば銅で構成される。
【0085】
封止材50は、たとえば半導体素子20のうちの基板30と対向する一面とは反対側の他面を覆うように半導体素子20を封止する。
図1に示す例においては、半導体素子20の上記他面と側面を覆うように封止材50が形成されている。封止材50は、たとえば封止用樹脂組成物をトランスファー成形法または圧縮成形法等の公知の方法を用いて封止成形することにより形成することができる。
【0086】
上記半導体装置100の製造方法としては、例えば、
基板30上に半導体素子20を搭載する工程と、
本実施形態に係る封止用樹脂組成物を用いて、前記半導体素子を封止する封止工程と、
を含む製造方法が挙げられる。
【0087】
また、半導体装置100をさらに、他の基板と電気的に接合した半導体装置を得るための製造方法として、上記封止工程の後に、リフロー工程を有する半導体装置の製造方法が挙げられる。本実施形態に係る製造方法においては、前記リフロー工程におけるリフロー温度を例えば、200℃以上とすることができ、230℃以上とすることもでき、特には260℃以上とすることも可能である。本実施形態においては、封止材50が前述した本実施形態における封止用樹脂組成物を用いて形成されているため、このような高温のリフローを経ても、反りの発生を抑制することができる。このため、半導体装置100の信頼性を向上させることが可能となる。
【0088】
図2は、本実施形態に係る半導体装置100の構成を示す断面図であって、
図1とは異なる例を示すものである。
図2に示す半導体装置100は、基板30としてリードフレームを使用している。この場合、半導体素子20は、たとえば基板30のうちのダイパッド32上に搭載され、かつワイヤ40を介してアウターリード34へ電気的に接続される。また、封止材50は、
図1に示す例と同様にして、本実施形態に係る封止用樹脂組成物を用いて形成される。
【0089】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0090】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0091】
<実施例1~9、比較例1(封止用樹脂組成物の製造)>
まず、表1に記載の配合量(質量部)の各成分を、常温でミキサーを用いて混合して混合物を得た。
次に、その混合物を、70℃以上100℃以下の温度で加熱混練した。
そして、常温まで冷却し、その後粉砕して、封止用樹脂組成物を得た。
【0092】
表1に記載の各原料成分の詳細は以下のとおりである。
(エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂1:前記式(NE)で表されるナフチルエーテル骨格を有するエポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂(DIC社製、品番:HP6000L)
・エポキシ樹脂2:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、品番:NC3000)
・エポキシ樹脂3:前記式(5)で表されるトリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂(JER(株)製、品番:YL6677)
・エポキシ樹脂4:前記式(2)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学社製、品番:YX-4000K)
・エポキシ樹脂5:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製、品番:HP-7200L)
【0093】
(硬化剤)
・硬化剤1:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型樹脂(日本化薬社製、品番:GPH-65)
・硬化剤2:トリスフェニルメタン型フェノール樹脂(エアー・ウォーター株式会社、HE910-20)
・硬化剤3:ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(明和化成社製、品番:MEH-7851H)
・硬化剤4:ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂(明和化成社製、品番:MEH-7851SS)
・硬化剤5:ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(明和化成社製、品番:SH-002-02)
【0094】
(無機充填材)
・無機充填材1:溶融球状シリカ(東海ミネラル社製、ESシリーズ)
・無機充填材2:溶融球状シリカ(マイクロン社製、TSシリーズ)
・無機充填材3:平均粒径0.6μm、比表面積6.4m2/g、上限カット45μmの溶融球状シリカ(アドマテックス社製、品番:SC-2500-SQ)
・無機充填材4:平均粒径1.6μm、比表面積4.4m2/g、上限カット45μmの溶融球状シリカ(アドマテックス社製、品番:SC-5500-SQ)
・無機充填材5:溶融球状シリカ(アドマテックス社製、品番:FEB24S5)
・無機充填材6:溶融球状シリカ(アドマテックス社製、品番:SD2500-SQ)
・無機充填材7:溶融球状シリカ(アドマテックス社製、品番:SD5500-SQ)
・無機充填材8:溶融球状シリカ(デンカ社製、品番:FB-950)
・無機充填材9:溶融球状シリカ(デンカ社製、品番:FB-105)
【0095】
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:テトラフェニルホスホニウム-4,4'-スルフォニルジフェノラート(住友ベークライト(株)製)
・硬化促進剤2:テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート(住友ベークライト(株)製)
【0096】
(カップリング剤)
・カップリング剤1:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社、CF4083)
【0097】
(イオン捕捉剤)
・イオン捕捉剤1:マグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート・ハイドレート(協和化学工業社製、品番:DHT-4H)
【0098】
(離型剤)
・離型剤1:酸化ポリエチレンワックス(クラリアント・ジャパン社製、品番:リコワックス PED191)
・離型剤2:カルナバワックス(東亜化成社製、品番:TOWAX-132)
【0099】
(着色剤)
・着色剤1:カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社、カーボン♯5)
【0100】
(低応力剤)
・低応力剤1:カルボキシル基末端ブタジエン・アクリロニトリル共重合体(宇部興産社製、品番:CTBN1008SP)
・低応力剤2:ジメチルシロキサン-アルキルカルボン酸-4,4'-(1-メチルエチリデン)ビスフェノールジグリシジルエーテル共重合体(特許5157473号公報段落0068記載の溶融反応物A)
・低応力剤3:シリコーンレジン(信越化学工業社製、KR-480)
【0101】
(難燃剤)
・難燃剤1:水酸化アルミニウム(住友化学(株)製、商品名CL303)
【0102】
【0103】
[評価項目]
(流動性(スパイラルフロー))
低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製KTS-15)を用いて、ANSI/ASTM D 3123-72に準じたスパイラルフロー測定用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件にて、上記で得られた半導体封止用樹脂組成物を注入し、流動長を測定した。スパイラルフローは、流動性のパラメーターであり、数値が大きい方が、流動性が良好である。単位はcmである。
【0104】
(ゲルタイム)
175℃としたホットプレート上に各実施例・比較例の封止用エポキシ樹脂組成物からなる試料を置き、試料が溶融後、へらで練りながら硬化するまでの時間を測定した。この時間が短いほど、硬化速度が速いことを示す。
結果を表2に示す。
【0105】
(成形収縮率)
実施例および比較例のそれぞれの封止用エポキシ樹脂組成物について、樹脂封止(ASM:as Mold)を行った後、本硬化させて樹脂封止基板を作製することを想定した加熱条件(PMC:Post Mold Cure)で収縮率を評価した。まず、円盤状の金型の室温における寸法を4箇所測定し、その平均値を算出した。続けて、金型に封止用エポキシ樹脂組成物を投入して円盤状の硬化物を得、得られた硬化物に熱処理を施した後の室温における直径を、当該金型で測定した箇所に対応する4箇所で測定し、その平均値を算出した。次に、得られた平均値を、次式:〔(室温における金型寸法-熱処理後の硬化物の室温における寸法)/室温における金型寸法〕×100(%)に当てはめて、硬化物の収縮率Sn(%)を算出した。
結果を表2に示す。樹脂封止を想定した温度条件は、175℃、120秒、本硬化を想定した温度条件は175℃、4時間とした。
【0106】
(常温時弾性率・熱時弾性率)
硬化物の熱時弾性率は、JISK-6911に準じて以下の方法で測定した。まず、低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製「KTS-15」)を用いて金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で封止用樹脂組成物を注入成形し、10mm×4mm×4mmの試験片を得た。次いで、この試験片をDMA測定装置(セイコーインスツルメンツ社製)を用いた3点曲げ法により、測定温度範囲0℃~300℃,5℃/minで昇温測定し、25℃での硬化物の常温時弾性率、及び、260℃での硬化物の熱時弾性率を測定した。なお、単位は、MPaである。
【0107】
(溶融粘度(矩形圧))
低圧トランスファー成形機(日本電気(株)製40tマニュアルプレス)を用いて、金型温度170℃、注入流量177mm3/秒の条件にて、幅15mm、厚さ1mm、長さ175mmの矩形状の流路に、上記で得られた半導体封止用樹脂組成物を注入し、流路の上流先端から25mmの位置に埋設した圧力センサーにて圧力の経時変化を測定し、半導体封止用樹脂組成物の流動時における最低圧力を測定した。矩形圧は、溶融粘度のパラメータであり、数値が小さい方が、溶融粘度が低いことを示す。
【0108】
(ガラス転移温度、線膨張係数(α1、α2))
各実施例および各比較例について、得られた半導体封止用樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度および線膨張係数を、次のように測定した。まず、トランスファー成形機を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間3分で半導体封止用樹脂組成物を注入成形し、15mm×4mm×4mmの試験片を得た。次いで、得られた試験片を175℃、4時間で後硬化した後、熱機械分析装置(セイコー電子工業(株)製、TMA100)を用いて、測定温度範囲0℃~320℃、昇温速度5℃/分の条件下で測定を行った。この測定結果から、ガラス転移温度Tg(℃)、ガラス転移温度以下における線膨張係数(α1)、ガラス転移温度以上における線膨張係数(α2)を算出した。α1は、40℃~80℃における線膨張係数、α2は、190℃~230℃における線膨張係数とした。結果を表2に示す。表2中、α1とα2の単位はppm/℃であり、ガラス転移温度の単位は℃である。
【0109】
(パッケージ反り)
低圧トランスファー成形機を用い、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間2分で実施例・比較例の封止用樹脂組成物を用いて封止成形し、半導体パッケージを作製した。この半導体装置は、ボールグリッドアレイ(BGA)パッケージ(樹脂封止部分サイズ:35mm×35mm×厚み1.2mm)であり、チップサイズは7mm×7mmである。また、ワイヤーは金線であり、ワイヤー径が20μm、平均ワイヤー長さが5mmである。得られた半導体装置各4パッケージを175℃、4時間で後硬化し、室温に冷却後、パッケージのゲートから対角線方向に、表面粗さ計を用いて高さ方向の変異を測定し、変異差の最も大きい値を反り量とし、4パッケージの反り量の平均値が150μm未満を○、150μm以上を×と判定した。
また、実施例の封止用樹脂組成物を用いた半導体パッケージについて、さらに260℃、10分の条件でリフロー処理を実施したところ、リフロー処理後の4パッケージの反り量の平均値は150μm未満であることを確認した。
【0110】
(ワイヤー流れ)
パッケージ反り量の評価で成形したBGAパッケージを軟X線透過装置で観察した。ワイヤー流れ量の計算方法としては、1個のパッケージの中で最も流れた(変形した)ワイヤーの流れ量を(F)、そのワイヤーの長さを(L)として、流れ量=F/L×100(%)を算出し、4パッケージの平均値が5%未満を○、5%以上を×と判定した。
【0111】
【0112】
この出願は、2018年12月27日に出願された日本出願特願2018-244444号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。