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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】磁場発生機構および異物検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/83 20060101AFI20230905BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
G01N27/83
G01R33/02 V
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019067921
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165868
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591074736
【氏名又は名称】宮城県
(73)【特許権者】
【識別番号】509293785
【氏名又は名称】引地精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100180817
【弁理士】
【氏名又は名称】平瀬 実
(72)【発明者】
【氏名】中居 倫夫
(72)【発明者】
【氏名】澤田 勝行
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-146323(JP,A)
【文献】特開2014-159984(JP,A)
【文献】国際公開第2014/129457(WO,A1)
【文献】特開昭56-042303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72 - G01N 27/9093
G01R 33/00 - G01R 33/26
G01V 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する所定面積の2つの表面を有する軟磁性板と、
前記軟磁性板よりも小さな面積を有し、前記軟磁性板の一表面側に配置され、前記軟磁性板を介して前記軟磁性板の他の表面側に磁場を印加する磁場発生装置と、
前記軟磁性板の前記他の表面側に配置され、前記軟磁性板の前記他の表面の接線方向に検出指向性を有する磁気センサと、
少なくとも1つの他の磁場発生装置と、
前記軟磁性板の前記一表面側に配置され、前記磁場発生装置及び前記他の磁場発生装置を所定の位置に固定する、軟磁性体で構成される固定板と、を備え、
前記磁場発生装置で発生された磁場は前記軟磁性板の前記他の表面側で実質的に均一化された磁場領域を有し、前記磁気センサは前記実質的に均一化された磁場領域内に配置され、
前記他の磁場発生装置は、前記軟磁性板の前記一表面側に、当該一表面に対して所定の間隔を置いて配置されると共に、前記磁場発生装置は前記軟磁性板に接するように配置され、
前記固定板は、前記磁場発生装置及び前記他の磁場発生装置に対応して設けられ、前記磁場発生装置及び前記他の磁場発生装置は、自身の磁力で、対応する前記固定板に吸着している、ことを特徴とする磁場発生機構ユニット。
【請求項2】
前記少なくとも1つの他の磁場発生装置は前記磁場発生装置を挟んで前記磁場発生装置に対して対称となるように配置された2つの他の磁場発生装置であり、前記2つの他の磁場発生装置は前記軟磁性板の一表面から所定の間隔を置いて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の磁場発生機構ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の磁場発生機構ユニットを2つ備え、当該2つの磁場発生機構ユニットの発生磁場が互いに異極となるように配置し、且つ、当該2つの磁場発生機構ユニットを所定の距離をおいて対向配置したことを特徴とする、磁場発生機構組立体。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の磁場発生機構ユニット又は請求項3に記載の磁場発生機構組立体を外周する軟磁性体よりなる閉磁路を配し、前記閉磁路の内側の領域を検査領域とすることを特徴とする、磁場発生機構組立体。
【請求項5】
請求項4に記載の磁場発生機構組立体において、前記閉磁路を形成する前記軟磁性体には、スリットが設けられていることを特徴とする、磁場発生機構組立体。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の磁場発生機構ユニット又は請求項3~5の何れか一項に記載の磁場発生機構組立体に配置された前記軟磁性板の端部に軟磁性材料からなる拡張板を接続し、前記軟磁性板の実質的な面積を拡大し、前記磁場発生機構ユニットが配される側の前記面積を拡大した部位に、間隔をあけて前記磁場発生機構ユニットを追加配置することを特徴とする、請求項3~5の何れか一項に記載の磁場発生機構組立体。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の磁場発生機構ユニット又は請求項3~5の何れか一項に記載の磁場発生機構組立体によって、非磁性体の表面または内部に混入する磁性異物を検出することを特徴とする異物検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非磁性の物品、粒状体、粉体、液体等に混入している、磁性を有する異物の検出に好適な磁場発生機構および異物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非磁性の物品、粒状体、粉体、液体等において、磁性を有する不純物、設備の金属部品、微小な金属片、摩耗粉などの磁性異物が表面や内部に混入しているか否かを検査するために、異物検査装置が用いられる。
【0003】
このような磁性を有する異物の検査装置として、特許文献1には、磁界検出方向に指向性を有する磁界検出手段と、磁界検出手段の磁界検出方向に対して垂直方向から磁界検出手段へ向けて磁界を印加する垂直磁界印加手段と、磁界検出手段の磁界検出範囲に検査対象物を投入して磁界検出手段により検出された信号に基づき、検査対象物における磁性異物の存在を判定する判定手段とを具備する磁性異物検査装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、磁場発生手段、板状の軟磁性部材、磁界検出方向に指向性を有する磁気センサを備え、磁場発生手段は被検査物が存在する検査領域に磁場を印加し、軟磁性部材は一方の主面を磁場発生手段に接して配置し、磁気センサは軟磁性部材の他方の主面の側に配するとともに、他方の主面の接線方向に指向性を有するよう構成した、異物検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-159984号公報
【文献】特開2018-146323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているような、磁性を有する異物を検査する装置では、高感度の検出手段を備える必要があり、そのような検出手段として薄膜磁気センサを用いる場合がある。薄膜磁気センサを用いた磁性異物検査装置では、永久磁石などの磁場発生手段からの磁界に、軟磁性部材を介して表面接線方向に薄膜磁気センサの検出指向性を合わせて配置することで、被検査物中の微小な磁性異物を検出することができる。
【0007】
また、特許文献2に記載されているような、薄膜磁気センサと磁場発生手段の間に軟磁性部材を配置して、薄膜磁気センサを軟磁性部材の表面接線方向に検出指向性を有するように構成した装置では、磁気シールドが不要で、製造工程でコンベヤ等を流れる製品の全数検査が可能であり、磁気センサから被検査物まで距離のある大型部品等の内部に包含される磁性異物であっても高感度に検出できる特徴を備える。
【0008】
磁性異物検査装置の被検査物として、非磁性金属板や電気配線等の導電体を含有する部材に混入する磁性異物を検出する場合がある。しかしながら、導電体を含有する部材が非磁性であっても、被検査物が磁場発生手段の磁界中を通過すると、渦電流が生じて磁気ノイズが発生し、著しい検出感度の低下の原因となり得るという課題がある。特に、検出感度を高めるために磁場発生手段の磁場強度を高めると、渦電流による磁気ノイズの作用がより大きくなるという課題がある。
【0009】
また、被検査物の大きさや、検査時の搬送速度が大きく異なる場合、同一構成の検査装置において高精度に検査可能な条件範囲に限界があることから、別の構成の検査装置を準備しなければならないという課題がある。
【0010】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、渦電流の発生を防ぎながら、より強い磁場を被検査物に印加して異物の検出感度を向上させることが可能な磁場機構および異物検査装置の提供を目的とする。さらに、被検査物の大きさや搬送速度に応じて強磁場を印加する検査領域の大きさを、適宜調節可能として、製造工程の製品種類や搬送速度に応じた異物検査に適応可能な磁場機構および異物検査装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、互いに対向する所定面積の2つの表面を有する軟磁性板と、前記軟磁性板よりも小さな面積を有し、前記軟磁性板の一表面側に配置され、前記軟磁性板を介して前記軟磁性板の他の表面側に磁場を印加する磁場発生装置と、前記軟磁性板の前記他の表面側に配置され、前記軟磁性板の前記他の表面の接線方向に検出指向性を有する磁気センサと、少なくとも1つの他の磁場発生装置と、前記軟磁性板の前記一表面側に配置され、前記磁場発生装置及び前記他の磁場発生装置を所定の位置に固定する、軟磁性体で構成される固定板と、を備え、前記磁場発生装置で発生された磁場は前記軟磁性板の前記他の表面側で実質的に均一化された磁場領域を有し、前記磁気センサは前記実質的に均一化された磁場領域内に配置され、前記他の磁場発生装置は、前記軟磁性板の前記一表面側に、当該一表面に対して所定の間隔を置いて配置されると共に、前記磁場発生装置は前記軟磁性板に接するように配置され、前記固定板は、前記磁場発生装置及び前記他の磁場発生装置に対応して設けられ、前記磁場発生装置及び前記他の磁場発生装置は、自身の磁力で、対応する前記固定板に吸着している、ことを特徴とする磁場発生機構ユニットが得られる。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、前記少なくとも1つの他の磁場発生装置は前記磁場発生装置を挟んで前記磁場発生装置に対して対称となるように配置された2つの他の磁場発生装置であり、前記2つの他の磁場発生装置は前記軟磁性板の一表面から所定の間隔を置いて配置されていることを特徴とする第1の態様に記載の磁場発生機構ユニットが得られる。
【0013】
本発明の第3の態様によれば、第1又は2の態様に記載の磁場発生機構ユニットを2つ備え、当該2つの磁場発生機構ユニットの発生磁場が互いに異極となるように配置し、且つ、当該2つの磁場発生機構ユニットを所定の距離をおいて対向配置したことを特徴とする、磁場発生機構組立体が得られる。
【0014】
本発明の第4の態様によれば、第1又は2の態様に記載の磁場発生機構ユニット又は第3の態様に記載の磁場発生機構組立体を外周する軟磁性体よりなる閉磁路を配し、前記閉磁路の内側の領域を検査領域とすることを特徴とする、磁場発生機構組立体が得られる。
【0015】
本発明の第5の態様によれば、第4の態様に記載の磁場発生機構組立体において、前記閉磁路を形成する前記軟磁性体には、スリットが設けられていることを特徴とする、磁場発生機構組立体が得られる。
【0016】
本発明の第6の態様によれば、第1又は2の態様に記載の磁場発生機構ユニット又は第3~5の態様の何れか一項に記載の磁場発生機構組立体に配置された前記軟磁性板の端部に軟磁性材料からなる拡張板を接続し、前記軟磁性板の実質的な面積を拡大し、前記磁場発生機構ユニットが配される側の前記面積を拡大した部位に、間隔をあけて前記磁場発生機構ユニットを追加配置することを特徴とする、第3~5の態様の何れか一項に記載の磁場発生機構組立体が得られる。本発明の第7の態様によれば、第1又は2の態様に記載の磁場発生機構ユニット又は第3~5の態様の何れか一項に記載の磁場発生機構組立体によって、非磁性体の表面または内部に混入する磁性異物を検出することを特徴とする異物検査装置が得られる。
【0020】
従来の異物検査装置において、被検査物に含有される導電性部材に渦電流が発生する原因は、被検査物が検査領域に搬送されて来る際の移動速度と検査領域に印加される磁場の空間磁場分布の兼ね合いから導電性部材に磁束の時間変化(dΦ/dt)が発生してこれが渦電流を発生させるものである。ここで、Φは導電体を貫く磁束(Φ[Wb]=B[T]×S[m])、tは時間である。
【0021】
この起電力(dΦ/dt)の原因になる磁束密度Bの空間分布が発生する最も大きな原因は、検査領域に局部的な強磁場を印加するという先願発明の検出原理に起因するものと、検査領域に強磁場を印加する磁場生成構造に起因する部分的な空間的磁束ムラの2点が主要な原因として考えられる。
【0022】
前者の原因である、検査領域に局部的な強磁場を印加することに起因する問題については、被検査物の大きさより広い均一磁場領域を形成してこの内部に被検査物が完全に入ったタイミングで異物検出を実施できるように、均一磁場範囲の大きな検出機構にすることで解決できる。また、後者の原因である、検査領域に印加された強磁場の空間的ムラに関しては、前者の解決方法でもある広い均一磁場領域を実現する磁場発生機構でムラのない均一磁場が実現することにより解決する。
【0023】
本発明は、異物検査装置を設置する製造工程の被検査物のサイズに応じて適した大きさを持つ検査領域の内部に均一な磁場を形成する磁場発生機構を提案するものである。本発明の均一な磁場を発生する機構は、被検査物のサイズに応じて磁場印加領域の拡大縮小の変更が容易な構造である。
【0024】
本発明の均一な磁場を発生する機構には、異物の磁場を検出する磁気センサの種類によって、センサ感度を確保するためにセンサの検出方向に所定の定常バイアス磁場を印加する、あるいはバイアス磁場がゼロになるよう調整するというバイアス磁場調整の必要がある。このバイアス磁場を上記の均一磁場発生機構により発生させることが出来れば、磁場発生コイルを追加したり、これに電流を通電する電流制御回路を追加することが不要になるという利点がある。
【0025】
特許文献2では、このバイアス磁場を最適に調整するために、磁気センサを、検出指向性方向と一致している磁場均一化用の軟磁性板の接線方向にスライドさせてバイアス点を調整する方法が示されている。この調整方法が有効に機能するためには、磁気センサの設置部である軟磁性板上部において、接線方向磁場がゆるく変化した磁場構造を形成する必要がある。
【0026】
磁気センサとして、薄膜磁気インピーダンスセンサや薄膜MRセンサを用いる場合は、おおよそ5~20[Oe]の範囲でバイアス磁場を制御できることが求められ、本発明はこの必要条件を満たしながら検査領域に均一磁場を形成する構造である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の磁場発生機構および異物検査装置によれば、渦電流の発生を防ぎながら、より強い磁場を被検査物に印加して異物の検出感度を向上させることが可能な磁場機構および異物検査装置の提供を目的とする。さらに、被検査物の大きさや搬送速度に応じて強磁場を印加する検査領域の大きさを、適宜調節可能として、製造工程の製品種類や搬送速度に応じた異物検査に適応可能な磁場機構および異物検査装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る均一法線磁場発生機構の一例を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図2】本発明に係る均一法線磁場発生機構の他の例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図3図1の磁場発生機構が生成する磁場ベクトル図(横方向から見た図)である。
図4図1の磁場発生機構が生成する磁場ベクトル図(正面方向から見た図)である。
図5図2の磁場発生機構が生成する磁場ベクトル図(横方向から見た図)である。
図6】図の磁場発生機構が生成する磁場ベクトル図(正面方向から見た図)である。
図7本発明の一実施例に係る磁場発生機構組立体を示す側面図である。
図8本発明の他の実施例に係る磁場発生機構組立体を示す側面図である。
図9図7に示された磁場発生機構組立体が生成する磁場ベクトル図(横方向から見た図)である。
図10図7に示された磁場発生機構組立体が生成する磁場ベクトル図(正面方向から見た図)である。
図11図8に示された磁場発生機構組立体が生成する磁場ベクトル図(横方向から見た図)である。
図12図8に示された磁場発生機構組立体が生成する磁場ベクトル図(正面方向から見た図)である。
図13本発明の更に他の実施例に係る磁場発生機構を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図14本発明のより他の実施例に係る磁場発生機構を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図15本発明の別の実施例に係る磁場発生機構を示す側面図である。
図16本発明の更に別の実施例に係る磁場発生機構を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図17本発明の異なる実施例に係る磁場発生機構を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図18本発明の更に異なる実施例に係る磁場発生組立体を示す図である。
図19本発明の更に異なる実施例に係る磁場発生機構ユニットを示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図20本発明の別の実施例に係る磁場発生組立体を示す斜視図である。
図21本発明の他の実施例に係る磁場発生組立体を示す正面図である。
図22本発明の更に他の実施例に係る磁場発生組立体を示す正面図である。
図23図22における閉磁路の形成を示す磁場強度分布図(左図)と磁場ベクトル図(右図)である。
図24】閉磁路を形成する端部軟磁性板にスリットを導入した磁場発生機構のセンサバイアス点調整原理を示す模式図(矢印がセンサ位置調整範囲)である。
図25】磁気センサのスライド位置に対するセンサバイアス磁界強度の関係を示すグラフである。
図26】本発明の更に別の実施例に係る磁場発生組立体を示し、ここでは、均一な法線磁場を形成するための軟磁性体拡張板配置と磁場発生機構群の配置例を示している
図27】本発明の具体的な実施例に係る磁場発生組立体を示す斜視図であり、ここでは、均一な法線磁場を形成するための軟磁性体拡張板と磁場発生機構群を配置した磁場発生機構群の構造を示す斜視図である。
図28】本発明の実施例における測定方法を説明する図である。
図29】本発明の実施例における測定方法をより詳細に説明する図である。
図30】測定した磁場分布結果を示す図であり、(a)は条件X=0、(b)は条件X=100、(c)はX=200、(d)はX=300である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本発明の磁場発生機構の基本構造を示す。図1図2に示された磁場発生機構は、検査領域である均一磁場領域より若干大きめに作製した軟磁性板2を主構造にしたものであり、当該軟磁性板2上に配置された磁気センサ3及び磁場発生装置1と組み合わせることにより、特許文献2に示された異物検査装置を構成することができる。ここで、磁場発生装置1は永久磁石或いは電磁石によって構成されても良く、磁気センサ3は単一の磁気センサ或いは複数の磁気センサを含むセンサアレイであっても良い。ここでは、磁気センサ及びセンサアレイを集合的に磁気センサとして説明する。また、軟磁性板2は磁場発生装置1によって発生される磁場を均一化する構造体として動作する。
具体的に説明すると、図示された磁場発生機構は、所定の面積と互いに対向する2つの表面を有する軟磁性板2と、軟磁性板2の一表面(図1(b)の下側表面)側に配置された軟磁性板2よりも小さな面積を有する磁場発生装置1と、軟磁性板2の他の表面(図1(b)の上側表面)側に配置され、軟磁性板2の他の表面の接線方向に検出指向性を有する磁気センサ3と、を有している。磁場発生装置1で発生された磁場は軟磁性板2の他の表面側で実質的に均一化された磁場領域を形成し、磁気センサ3は実質的に均一化された磁場領域内に配置される構成を備えている。ここで、単一の軟磁性板2と磁場発生装置1とは、単一の磁場発生機構ユニットを形成している。
図示された軟磁性板2は他の表面上の中央線近傍に磁気センサ3を配置して異物の発生する磁場を検出する。この実施例では、磁気センサ3設置部の反対側の軟磁性板2面(一表面)上に磁場発生装置1が接触して配置されている。この例では、磁場発生装置1は、他の表面側に設置された磁気センサ3配置軸とほぼ一致した軸を有している。磁場発生装置の形状は、一体構造(図1)、あるいは、間隔をあけて複数の磁場発生装置を配置(図2)してもよい。図2では、単一の軟磁性板2上の一表面側に、磁気センサ軸方向に間隔を置いて3つの磁場発生装置1が配置されている。
以下では、単一又は複数の磁場発生装置1と軟磁性板2の組み合わせによって構成される磁場発生機構を説明の都合上、磁場発生機構ユニットと呼ぶものとし、複数の磁場発生機構ユニットを含む磁場発生機構を磁場発生組立体と呼ぶものとする。また、本明細書では磁場発生機構又は磁場発生構造の用語は磁場発生機構ユニット及び磁場発生組立体を含む一般的な概念として使用する。
【0030】
図1図2の磁場発生機構が発生する磁場の磁場ベクトル図を図3から図6に示す。具体的に説明すると、図3及び図4はそれぞれ図1に示された磁場発生機構ユニットで生成された磁場ベクトルを側面及び正面方向から見た図である。図5図6はそれぞれ図2に示された磁場発生機構ユニットで生成された磁場ベクトルを側面及び正面方向から見た図である
いずれの場合も、軟磁性板2から略垂直方向に磁力線が発生していることがわかる。特に、磁場発生装置1を配置した軟磁性板2の他の表面上の磁力線は垂直方向に延びており、この磁場領域に図1及び図2に示した磁気センサ3を配置すれば、被検査物に渦電流の生じない異物検査装置を構成できる
図7には、図1に示された構造体を2体、即ち、磁場発生機構ユニット2つを一対にした本発明の実施例に係る磁場発生機構が示されている。図7では、磁気センサ3の設置部を互いに対向させて配置させた構造の磁場発生機構が示されている。ここでは、対向した各々の磁気センサ3設置面の磁極は互いに異極であることから、図10に示されるように磁力線は上面から下面に向かってベクトル成分を有する。しかも、磁気センサ3設置面側において、磁場発生装置1が接触設置している部分から弱く広がる方向ベクトル成分を有し、且つ法線方向に強くて均一性の良い磁場分布となる。この弱く広がる磁場ベクトル分布は、上記磁気センサ3のバイアス磁場制御に有効な磁場構造である。この領域内で磁気センサ3を軟磁性板2の表面接線方向に移動させることでバイアス点の最適点を設定することができる。図7の構造は、広い均一磁場領域を実現して、且つ、センサバイアス点の制御も可能な磁場分布をも実現する構造である。
【0031】
しかしながら、図7の構造では、2つの主構造(即ち、磁場発生機構ユニット)の間の空間に発生する磁場の強度を強くすることができない。磁場発生装置1から発生した磁力線は、磁場均一化の効果を有する軟磁性板2で均一に広げられてから対向面に放出される。このため、軟磁性板の面積を広くして磁場領域を広げようとすると、対向面の面積におおよそ反比例して弱まった磁場強度になる。
【0032】
これを防ぐために、磁場発生装置1を軟磁性板2全面に広く配置すると、磁場強度は増加するものの、バイアス磁場調整用の弱く広がった磁場構造が消失してしまう。これは図3に示すように、小型の磁場発生装置1を軟磁性板2全面に複数個配置した場合も同じである。更に、上記のように単純に、磁場発生装置1を大面積化したり個数を増やしたりした場合、特に強力な磁石等を磁場発生装置1に用いる場合などにおいては、磁石を脱着したり配置変更したりする際に磁石間に非常に大きな磁力が発生するため、構造体が変形したり、作業者に危険が生じたりする。本発明の好ましい実施例では、大型軟磁性板2を磁場均一化構造に用いた場合に、バイアス磁場調整が可能で、且つ、強い磁場を発生させ、更に、構造変更が容易な磁場発生機構を提供するものである。
【0033】
図8に本発明の好ましい実施例に係る磁場発生構造を示す。2つの磁場発生機構ユニットを有する主構造は図7と同じものであるが、磁場強度を増加させるために配置する付加的な磁場発生装置1は軟磁性板2から所定の距離を離して配置している。具体的には、図8に示された磁場発生構造、即ち、機構は、軟磁性板2の中央部に、当該軟磁性板2に接するように設けた磁場発生装置1を備えた磁場発生機構ユニットを互いに対向させた構成を備えている。各磁場発生機構ユニットは、中央部に配置された磁場発生装置1の両側に配置された2つの他の磁場発生装置(即ち、付加的磁場発生装置)1を備えている。2つの付加的磁場発生装置1は軟磁性板1の一表面側に、当該一表面に対して所定の間隔を置いて配置されると共に、磁場発生装置1を挟んで当該磁場発生装置1に対して対称となるように配置されている。更に、2つの付加的磁場発生装置1は前記軟磁性板1の一表面から所定の間隔を置いて配置されている。
即ち、これら付加的磁場発生装置1は軟磁性板に接触していないものの、その効果は軟磁性板2に接触したものと同様であり、ここから発生した磁力線は軟磁性板2に吸い込まれ均一化されてから検査領域である対向空間に放出される。このため、この付加的な磁場発生装置1の大きさや個数に応じて検査領域の磁場を強くすることができる。
【0034】
図7及び図8に構造を示した磁場発生機構が発生する磁力線ベクトルを図9図12に示す。図9及び図10図7の構造に係る磁場発生構造の側面方向及び正面方向の磁場ベクトルの分布をそれぞれ示している。また、図11図8の構造に係る磁場発生構造の側面方向の磁場ベクトルの分布を示している
図7に示す磁場発生機構の構造では、開口部の中心で100[Oe]程度の磁場(図9参照)であったものが、図8の構造にすることで約3倍の300[Oe]程度の磁場(図11参照)まで増加させ得ることが分かる。
【0035】
図8に示す磁場発生機構の構造において、軟磁性板2に接触した主構造の磁場発生装置1と付加的磁場発生装置1は軟磁性板2側に磁極の同極を配置する。この場合、軟磁性板2と付加的磁場発生装置1との間の磁力は、20mm程度の距離をあけることで、互いに弱く反発し合うようになるため、付加的磁場発生手段1を脱着することが容易になる。
【0036】
また、この距離の効果で、図7で形成された磁気センサ設置ラインの前後にバイアス点制御が可能な接線方向の弱い磁場分布が図8の構造でも消えずに残る。この効果は以下のように説明できる。磁気センサの設置ラインの裏側には軟磁性板に接した磁場発生装置1が有り、一方で、これ以外の部位の磁場発生手段1は軟磁性板2に接しないで所定の距離をあけて設置されている。このことは、磁気センサ設置部近傍に周りより強い起磁力があることに相当するため、ここから生じる磁力線には図7より効果が弱まるものであるが類似の構造を有する。すなわち、センサ設置面側において接触配置された磁場発生手段1の設置部から弱く広がる方向ベクトル成分を有した軟磁性板2から略法線方向に主成分が向いた磁場ベクトルを有した磁場分布になるものである。
【0037】
図8では、均一磁場効果を有する一枚の軟磁性板2に対して3群の磁場発生装置1を配置して1組として、これを2組対向させたものであるが、この際に使う図13にように各群の磁場発生装置1は、一体型の大きな磁石を用いても良いし、各群の磁場発生装置1は、図14のように分割された小型の磁場発生装置(ここでは、3つの小型の磁場発生装置1)を組み合わせて構成しても良い。
また、一枚の軟磁性板2に対して配置する磁場発生装置1は、3群に限られるものではなく、図15図16のように5群またはそれ以上にすることも可能であり、磁場発生装置1群を密に配置すれば、より強力な均一磁場の形成が可能にもなり、軟磁性板2を広くして磁場発生装置1群を疎に配置すればより広い検査領域で均一磁場が形成できる。
【0038】
なお、各シミュレーションの条件は以下の通りである。磁場発生装置1としての磁石寸法は、短辺100mm、厚さ10mm、軟磁性板2の寸法は短辺450mm、長辺700mm、図の磁石長は200mmで、50mm間隔で3個配置する。図10図12の軟磁性板2の上下間隔は215mm、図11の磁石間の間隔は50mm、上下のずれは25mmである。この条件での各部の磁場強度は、図4の軟磁性板2直上で65[G]、200mm離間すると27[G]であり、図6の軟磁性板2直上で60[G]、200mm離間すると24[G]である。図10の軟磁性板2直上で170[G]、軟磁性板2の上下間隔215mmの中央である107mmでは130[G]であり、図12の軟磁性板直上で290[G]、軟磁性板2上下の中央である107mmでは280[G]である。
【0039】
本発明の構造である図8図15において、磁場発生装置1を大型の一体構造にする場合と小型のものを複数使い一群の磁場発生装置1とする場合のいずれでも可能であることを図13図14に示した。ここで、図14のように小型複数の磁場発生手段1を使用する場合には、装置の組上げや磁場発生装置1の脱着の際に部材の個数分の手間がかかる。磁場発生装置1に強力磁石を使用した場合には、磁石の吸引力や反発力を考慮して個々の磁石を組上げなければいけないため設計、作製の手間が非常に大きくなる。
【0040】
この問題を解決するために、図17に示すような磁場発生装置1群に対して固定板4を活用することが有効である。この固定板4は鉄鋼等の軟磁性体で構成されることが望ましく、この場合、磁場発生装置1は自身の磁力でこの軟磁性固定板に吸着する。この吸着効果を利用することで個々の磁場発生装置1を所定の設置位置に固定することが容易になるとともに、固定用の構造を別に設計する必要が無くなる。図18には、磁場発生装置1群の各磁場発生装置1に対して個々に固定板4を使用した場合が示されている。当該実施例では、図8の磁場発生装置1群の3つの磁場発生装置1に対してそれぞれ固定板4が吸着されている。図の構造においては、磁気センサの設置方向に平行に配置されている磁場発生装置1群の組に対して軟磁性固定板4を設置している。この構造において、磁場均一効果を目的とする軟磁性体2と固定板4に固定された磁石1群が直接に接触していないものは、この間には強力な吸引力が生じない。このため、この磁石1群ユニットを一体として装置から脱着することが可能となり装置の組付け、ユニット取り外しの作業性が大きく改善する。
【0041】
図20には、本発明の他の実施例に係る磁場発生組立体が示されており、図の上下に、磁場発生機構ユニットが設けられている。各磁場発生機構ユニットは、磁場発生装置1、軟磁性板2、及び磁気センサ3を含み、各磁場発生装置1には、軟磁性固定板4が設けられ、各磁場発生装置の左右両側には端部板5が設けられている。更に、両側の端部板5は連結部材6によって連結されている。この実施例は、端部板が付加された構造を有しており、この構造は一磁場発生装置1の磁場強度を大きくするのに有効である。この端部板5は前に示した固定板4(図19)構造と併せて使うことが有効である。この原理としては、上下の磁場発生機構の間に形成された異物の検査領域を通過した均一磁場の磁力線の戻り側の磁路を閉磁路構造にして磁気効率を向上させたことにある(図21)。即ち、図示された磁場発生機構組立体は外周に軟磁性体よりなる閉磁路を有し、閉磁路の内側の領域を検査領域を規定している。原理的には端部板の材質は鉄鋼材等の軟磁性体であることが望ましい。戻り側の磁力線の経路は、磁場発生機構⇒軟磁性固定板4⇒端部板5⇒対向側の軟磁性固定板4⇒対向側の磁場発生機構となる。この端部板には縦方向あるいは横方向のスリットを導入して軽量化したり、上下分離可能な構造にして被検査物の通過する領域の高さを可変にしたりすることもできる(図22)。このようにスリットを設けた端部板5がある場合にも磁力線が閉磁路構造になっている模式図を図23に示す。
【0042】
図24図25図22に示すスリット入り軟磁性端部板を有して閉磁路構造を構成した本発明の磁場発生機構におけるセンサバイアス点の調整原理を示す。先に述べたように、センサ設置ライン直近に配置した磁場発生機構以外の磁場発生機構群は、軟磁性磁場均一化板(即ち、軟磁性板2)から離れた配置になっていることに起因して、軟磁性磁場均一化板(軟磁性板2)の接線方向に検出指向性を有している薄膜磁気センサの動作点を決める目的で行われるバイアス磁場調整を、図24の矢印方向に磁気センサ3 の位置をスライドさせることで調整できる。これは、磁場発生機構の固定板と端部板を有した構造でも有効である。図25磁気センサをスライドさせた位置(横軸)に対するセンサの磁場検出方向のバイアス磁場強度(縦軸)の関係を示す。本実施例では、一般的な薄膜磁気インピーダンスセンサのバイアス点である7[Oe]に調整するために、磁気センサは中央位置から約12mmずらすことでバイアス調整が可能であれことが本図から分かる。この場合、磁気センサの特性に応じてバイアス点を適宜調整することが可能であり、この磁場発生機構の場合には、0~20[Oe]程度の範囲であればセンサ設置位置を調整することでバイアス点調整が可能である。
【0043】
磁気センサの使い方によっては,センサ特性の対称性からバイアス点を-7[Oe]に調整して使うこともあるため、この場合にはセンサ設置位置を図25の横軸72mmとすることも可能である。磁気センサを配置する際に、+7[Oe]の位置(横軸48mmのセンサ設置位置1)と-7[Oe](横軸72mmのセンサ設置位置2)の位置を交互に配置することで磁気センサ3間の距離を離すことで電磁的な干渉を抑えたり、これらセンサを差動化することで外乱ノイズの影響を低減化したり差動センサの不感領域を無くすることができる。
【0044】
図26及び図27は、磁場均一化機能を有する軟磁性板のサイズを拡張する本発明の他の実施例に係る磁場発生構造であり、ここでは、磁場発生組立体を示している。本発明の均一磁場発生組立体では、異物検査を行う検査領域を包含する大きさの軟磁性均一化板(即ち、軟磁性板2)を設置している。この実施例に係る磁場発生組立体は、図の上下に間隔を置いて配置された軟磁性板2に対して、5群の磁場発生装置1を図13と同様に配置している。更に、図示された磁場発生装置の上下の軟磁性板2の両側には、軟磁性の拡張板7が連結されている。また、図26には示されていないが、各磁場発生装置1は固定板4上に固定されており、当該固定板4は連結部材6に接続されている。更に、固定板4及び連結部材6は端子板5(図27参照)に連結されている。
これに所定の配置方法で、磁場発生装置1の反対側に磁気センサ3を設置することによって異物検査装置を構成することができる。本発明の配置方法は、磁気センサ3を設置するラインの裏面側に軟磁性板2に接触させた状態で磁場発生手段1を設置し、これ以外の磁場発生手段1は、磁場均一化用軟磁性板2から任意の距離をおいて配置した構造である。この構造では、磁気センサ(即ち、センサアレイ)3の設置位置が均一磁場領域の中央にあり、この均一磁場領域内部に被検査物があるときに渦電流の影響が発生しない状態で異物検査ができる。ここで製造工程が変更されて被検査物のサイズが大きくなった場合には、均一磁場領域の容積をこれに合わせて拡大しなければならない。
【0045】
本発明の磁場発生機構即ち構造では、この容積拡張が容易に可能である。図26に示すように、軟磁性均一化板(軟磁性板2)を拡張可能である。即ち、接触している磁場発生装置1と、当該磁場発生装置1の両側に、磁場発生手段1と軟磁性均一化板(軟磁性板2)が離れている複数の磁場発生機構ユニットを上下に2組設けた磁場発生組立体が構成できる。この構成によれば、磁力による応力がかからず、軟磁性均一化板(即ち、軟磁性板2)が磁力で変形することが無い。更に、磁場発生手段1の取り付け数を追加して、軟磁性均一化板(軟磁性板2)の拡張(軟磁性板7)に伴う磁場の低下を補う際にも、磁場発生手段1と拡張した軟磁性均一化板(軟磁性板7)が離れていることから、固定板上に配置した一体の磁場発生機構群という一組になったユニットで随時追加取り付けが可能であるため拡張が容易である。
【0046】
逆に、拡張した均一磁場領域を縮小する場合も、上記で付加した磁場発生手段1群と軟磁性均一化板(軟磁性板2)の拡張部分を取り外せばよいために、容易にサイズ変更が可能なメリットがある。
【0047】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0048】
本発明の具体的実施例に係る磁場発生機構、即ち、均一磁場発生構造について説明する。磁石は、ネオジム磁石で寸法100×100×t20mmであり板の厚さ方向の上下面にN極・S極を持つ磁石枚を図17類似の磁石枚数を増やした構造とした磁場発生機構ユニット群を1組として利用した。固定板4には厚さ10mmの軟鋼板(S45C)を用いて上記磁石を固定板4の中央部に20mm間隔で吸着させて磁場発生装置1群として、これを下側3組、上側3組で図20に示された均一磁場発生組立体を構成した。
【0049】
磁場を均一化させる軟磁性板(S45C)は幅740mm×奥行き450mm×厚さ10mmとした。図18の軟磁性板から離れた両側の磁場発生装置1群は、軟磁性板2からの距離を25mmとした。磁場発生装置1群間の磁石間隔は45mmであった。
【0050】
この構造を均一磁場発生構造(磁場発生機構ユニット)の磁極が逆になるようにして2ユニット作製して磁場均一化の軟磁性板が対向するように配置した。上下ユニットの軟磁性板2の間隔は225mmとした。装置にはスリットの入った端部板5を設置して閉磁路を形成させた。この端部板5を用いた3連磁石構造の均一磁場発生装置が作り出す磁場分布を実施例として示す。
【0051】
磁場はホールセンサ式ガウスメータで測定した。ホールセンサの測定方向を鉛直方向(Z方向)に向け、装置開口面の中央をX=0、右側を+、左側を-方向とする。ホールセンサのX、Z座標を固定した状態で端部板5に平行な方向をY方向として、ホールセンサをY方向に一定速度で走査して装置内の磁場分布を測定した。この走査方向は、実際の被測定物が装置内を通過する方向に一致する。
【0052】
以下の実施例ではセンサが移動するY方向を送り方向と呼ぶ。本実施例の測定は、磁場分布の均一性を実証するものである。測定は、X方向で、-300mm、-200mm、-100mm、0、+100mm、+200mm、+300mm。Z方向では下側の均一化軟磁性板2の表面をZ=0として、Zが+38mm、+65.5mm、+93mm、+120mm、+148mm、+174mmとした。
【0053】
図30(a)~(d)に測定した磁場分布の結果を示す。図30(a)は条件X=0、図30(b)は条件X=100、図30(c)はX=200、図30(d)はX=300である。装置構造の対称性から、Xが-の側はこれら+側と対称な結果になる。これら実測図から開口面中央のX=0から200mmの範囲でZ位置にも均一な磁場分布が得られていることが分かる。均一軟磁性板2のX方向幅が740mm、送り方向長さ(Y)が450mmであることを考慮すると、均一板上面領域でZ方向に均一度が高い磁場分布が形成されていることが分かる。均一磁場領域は、磁場発生装置1群の組の数、その幅、そして磁場均一化軟磁性板2の面積を対象に合わせて設計することで必要な容積の均一磁場領域を作り出すことができるため、本発明は設計自由度の高い均一磁場発生機構を得ることができる
【0054】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の変更や修正が可能である。すなわち、当業者であればなし得るであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 磁場発生装置
2 軟磁性板
3 磁気センサ
4 固定板
5 端部板
6 連結部材
7 拡張板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図26
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図28
図29
図30