(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】遮熱用粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20230905BHJP
C09J 7/22 20180101ALI20230905BHJP
C09J 7/24 20180101ALI20230905BHJP
C09J 7/25 20180101ALI20230905BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20230905BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230905BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230905BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/22
C09J7/24
C09J7/25
C09J7/29
C09J11/04
C09J11/06
C09J201/00
(21)【出願番号】P 2022084344
(22)【出願日】2022-05-24
【審査請求日】2023-05-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226091
【氏名又は名称】日榮新化株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517261796
【氏名又は名称】東洋ファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野上 忠豊
(72)【発明者】
【氏名】志方 健司
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-234028(JP,A)
【文献】特開2003-298284(JP,A)
【文献】特開2004-182936(JP,A)
【文献】特開2011-093958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂からなる基材と、
前記基材の第1の面に形成され、赤外線吸収剤を含む第1の粘着剤層と、
前記第1の粘着剤層の前記基材と反対側の面に形成され、紫外線吸収剤を含む第2の粘着剤層とを備えている、遮熱用粘着フィルム。
【請求項2】
前記基材の前記第1の面と反対側の第2の面に形成されたハードコート層をさらに備えている、請求項1に記載の遮熱用粘着フィルム。
【請求項3】
前記基材は、ポリエステルフィルム、熱可塑性エラストマーフィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリフェニレンサルファイド系樹脂フィルム、ポリエーテルサルフォン系樹脂フィルム、ポリエチレンサルファイド系樹脂フィルム、ポリフェニレンエーテル系樹脂フィルム、スチレン系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、ポリイミド系樹脂フィルム及びセルロース系樹脂フィルムから選ばれた1つ又は2つ以上からなる積層体である、請求項1に記載の遮熱用粘着フィルム。
【請求項4】
可視光線透過率が70%以上であり、日射透過率(赤外線透過率)は80%以下であり、紫外線透過率は5%以下である、請求項1に記載の遮熱用粘着フィルム。
【請求項5】
前記第1の粘着剤層を構成する樹脂成分と、前記第2の粘着剤層を構成する樹脂成分とは同一である、請求項1に記載の遮熱用粘着フィルム。
【請求項6】
前記赤外線吸収剤は、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、インジウム含有酸化スズ(ITO)及び複合タングステン酸化物から選ばれた少なくとも1種を含む微粒子である、請求項1に記載の遮熱用粘着フィルム。
【請求項7】
前記第2の粘着剤層は、前記赤外線吸収剤の含有量が検出限界以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の遮熱用粘着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遮熱用粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物や自動車等の窓から入射する赤外線は、室内や車内の温度上昇の大きな要因である。また、窓から入射する紫外線は室内や車内におかれた様々なものを劣化させる原因となり、近年では癌を誘発する原因となることも指摘されている。このため、窓から入射する赤外線及び紫外線を低減することが求められている。
【0003】
窓の機能を向上させるために、窓に種々の機能を有する粘着フィルムを貼り付けることが行われている。紫外線及び赤外線を吸収する機能を有する粘着フィルムを窓に貼り付けることにより、窓から入射する赤外線及び紫外線の両方を低減することができる。紫外線及び赤外線を吸収する機能を有する粘着フィルムとして、赤外線吸収剤及び紫外線吸収剤を、コート層又は粘着剤層に添加した、遮熱フィルムが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、赤外線吸収剤をコート層に添加した遮熱フィルムは、フィルム基体とコート層との密着性が悪く、剥離やひび割れが生じるおそれがある。一方、赤外線吸収剤を粘着剤層に添加した遮熱フィルムは、透明性が低下するおそれがあることを本願発明者らは見いだした。
【0006】
粘着フィルムを窓に貼り付ける際には、皺や気泡の発生を抑えるために、被着面及び粘着剤層を水で濡らした状態で施工するいわゆる水貼りが一般に行われる。しかし、赤外線吸収剤を粘着剤層に添加すると、水貼りの際に赤外線吸収剤が水分を吸収して透明性が低下してしまうことが明らかとなった。
【0007】
本発明の課題は、紫外線と赤外線の両方の入射を抑え、良好な光学特性を示す遮熱用粘着フィルムを実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の遮熱用粘着フィルムの一態様は、樹脂からなる基材と、基材の第1の面に形成され、赤外線吸収剤を含む第1の粘着剤層と、第1の粘着剤層の基材と反対側の面に形成され、紫外線吸収剤を含む第2の粘着剤層とを備えている。
【0009】
遮熱用粘着フィルムの一態様は、赤外線吸収剤を含む第1の粘着剤層は、紫外線吸収剤を含む第2の粘着剤層と基材との間に形成されているため、赤外線吸収剤が貼り付けの際の水分の影響を受けにくい。このため、赤外線吸収剤が水分を吸収することによる白化を抑えることができる。また、第1の粘着剤層は、コート層と異なり厚くしても基材との密着性を確保することができるので、赤外線吸収能力の高い層を形成することができる。
【0010】
遮熱用粘着フィルムの一態様は、基材の第1の面と反対側の第2の面に形成されたハードコート層をさらに備えていてもよい。このような構成とすることにより、遮熱用粘着フィルムが傷つきにくく良好な光学特性を維持することができる。
【0011】
遮熱用粘着フィルムの一態様において、基材は、ポリエステルフィルム、熱可塑性エラストマーフィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリフェニレンサルファイド系樹脂フィルム、ポリエーテルサルフォン系樹脂フィルム、ポリエチレンサルファイド系樹脂フィルム、ポリフェニレンエーテル系樹脂フィルム、スチレン系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、ポリイミド系樹脂フィルム及びセルロース系樹脂フィルムから選ばれた1つ又は2つ以上からなる積層体とすることができる。
【0012】
遮熱用粘着フィルムの一態様において、可視光線透過率が70%以上であり、日射透過率(赤外線透過率)は80%以下であり、紫外線透過率は5%以下とすることができる。
【0013】
遮熱用粘着フィルムの一態様において、第1の粘着剤層を構成する樹脂成分と、第2の粘着剤層を構成する樹脂成分とは、同一とすることができる。
【0014】
遮熱用粘着フィルムの一態様において、赤外線吸収剤は、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、インジウム含有酸化スズ(ITO)及び複合タングステン酸化物から選ばれた少なくとも1種を含む微粒子とすることができる。
【0015】
遮熱用粘着フィルムの一態様において、第2の粘着剤層は、赤外線吸収剤の含有量が検出限界以下とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の遮熱用粘着フィルムによれば、紫外線と赤外線の両方の入射を抑え、良好な光学特性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係る遮熱用粘着フィルムを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
一実施形態の遮熱用粘着フィルム100は、シート状の樹脂からなる基材101と、基材101の第1の面に形成された、第1の粘着剤層103と、第1の粘着剤層103の基材101とは反対側の面に積層された第2の粘着剤層104と、基材101の第2の面に形成されたハードコート層105とを備えている。第1の粘着剤層103は、赤外線吸収剤を含む層であり、第2の粘着剤層104は、紫外線吸収剤を含む層である。ハードコート層105は、基材101及び被着体であるガラス等を保護するために形成されており、必要に応じて形成すればよく、形成しなくてもよい。
【0019】
第2の粘着剤層104の第1の粘着剤層103と反対側の面には、剥離ライナー107が設けられているが、これは、運搬時や施工時の取り扱いを容易にするためのものであり、ガラス等の被着体に貼り付ける際に剥離される。
【0020】
コート層の様な比較的硬質の層は、あまり厚く形成しないのが一般的である。一方、赤外線吸収能力は層の厚さに大きく影響を受けるため、薄い層において十分な赤外線吸収機能を発揮させるためには、大量の赤外線吸収剤を添加する必要が生じる。このため、赤外線吸収剤の分散ムラが生じて透明性が低下したり、樹脂の物性に影響を与えたりするおそれがある。本実施形態の遮熱用粘着フィルム100は、第1の粘着剤層103に赤外線吸収剤を添加している。コート層よりも厚く形成されることが多い粘着剤層であるため、赤外線吸収剤の含有濃度が低くても十分な赤外線吸収効果を得やすくなっている。粘着剤層であるため、基材101との密着性を確保することも容易である。
【0021】
赤外線吸収剤を含む第1の粘着剤層103は、基材101と反対側の面が第2の粘着剤層104により覆われている。このため、遮熱用粘着フィルム100をガラス等の被着体に貼り付ける際に、粘着剤層及び被着体の表面を水でぬらして行う水貼りを行っても第1の粘着剤層103に含まれる赤外線吸収剤が水分を吸収しにくく、赤外線吸収剤が水分を吸収することによる白化を抑えることができる。
【0022】
第1の粘着剤層103に含まれる赤外線吸収剤は、公知の有機系赤外線吸収剤及び無機系赤外線吸収剤を使用できる。中でも、無機系微粒子からなる赤外線吸収剤は耐候性に優れるので好ましい。無機系微粒子からなる赤外線吸収剤は、例えばアンチモン含有酸化スズ(ATO)、インジウム含有酸化スズ(ITO)及び複合タングステン酸化物から選ばれた少なくとも1種を含む微粒子とすることができる。
【0023】
第1の粘着剤層103を構成する第1の樹脂成分は、特に限定されず、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、及びゴム系等から選択することができる。また、溶剤型、水系、エマルション系、及び無溶剤型等のいずれの構成を用いることもできる。
【0024】
赤外線吸収剤の第1の粘着剤層103の樹脂固形分当たりの含有量は、第1の粘着剤層103の厚さにもよるが、赤外線吸収機能を発揮させるために、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、よりさらに好ましくは50質量%以上である。赤外線吸収剤を均一に分散させる観点及び可視光線透過率を確保する観点から、好ましくは100質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0025】
第1の粘着剤層103の厚さは、赤外線吸収剤の含有量にもよるが、日射透過率(IR透過率)を小さくする観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μ以上、さらに好ましくは10μ以上であり、可視光線透過率を確保する観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。
【0026】
第1の粘着剤層103は、赤外線吸収剤以外に、架橋剤、分散剤、反応促進剤、及び遅延剤等を含んでいてもよい。架橋剤として、公知のイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、及びキレート系架橋剤から選ばれた1種又は2種以上の混合物を使用できる。赤外線吸収剤が無機系微粒子である場合には、分散剤を添加することにより赤外線吸収剤を第1の粘着剤層103中における分散性を向上させて、透明性をより高くすることができる。分散剤の添加量は、種類にもよるが、分散性向上の観点から赤外線吸収剤に対して好ましくは0.5質量%以上、好ましくは10質量%以下である。
【0027】
第2の粘着剤層104を構成する樹脂成分は、特に限定されず、例えば、第1の粘着剤層103を構成する樹脂成分と同一のものを用いることができる。第1の粘着剤層103と第2の粘着剤層104とにおいて樹脂成分を一致させることにより、第1の粘着剤層103と第2の粘着剤層104との密着性を向上させることができる。なお、樹脂成分が同一とは、樹脂の主要な構成単位(モノマー)が同一であることであり、樹脂の分子量や副成分まで完全に同一であることを要求しない。また、樹脂成分以外の配合成分が異なっている場合も含まれる。なお、第1の粘着剤層103と第2の粘着剤層104とを異なる樹脂成分により形成することもできる。例えば、第1の粘着剤層103を構成する樹脂成分として、赤外線吸収剤の分散性が良好なものを選択し、第2の粘着剤層104を構成する樹脂成分として、より強力な粘着力を発揮するものを選択することができる。
【0028】
第2の粘着剤層104に含まれる紫外線吸収剤は、特に限定されず、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、及びトリアジン系等の紫外線を選択的に吸収する公知の紫外線吸収剤から選ばれた1種又はそれらの混合物を使用できる。中でも、トリアジン系紫外線吸収剤は、耐候性が良好で、280nm~350nmの波長の紫外線を吸収するので好ましい。
【0029】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えばBASF社製のTinuvin384-2を使用できる。シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えばBASF社製のユビナール3035、ユビナール3039、ユビナール3030FF等を使用できる。トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えばBASF社製のTinuvin1600等が使用できる。
【0030】
紫外線吸収剤の第2の粘着剤層104における含有量は、必要とする紫外線透過率に応じて調整することができる。なお、遮熱用粘着フィルム100の紫外線透過率は、好ましくは5%以下であり、より好ましくは2%以下である。
【0031】
第2の粘着剤層104の厚さは、ガラス等の被着体に対する十分な粘着力を発揮できると共に、十分な紫外線遮蔽効果を得られる範囲とすることができる。例えば5μm以上、50μm以下とすることができる。
【0032】
第2の粘着剤層104も、第1の粘着剤層103と同様に、紫外線吸収剤以外に、架橋剤、分散剤、反応促進剤、及び遅延剤等を含んでいてもよい。架橋剤として、公知のイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、及びキレート系架橋剤から選ばれた1種又は2種以上の混合物を使用できる。なお、白化を防ぐ観点からは、第2の粘着剤層104は、赤外線吸収剤を含まないことが好ましい。製造工程において微量の赤外線吸収剤が第2の粘着剤層に混入することがあり得るが、赤外線吸収剤の含有量は、痕跡量程度であることが好ましく、検出限界以下であることがより好ましい。
【0033】
基材101は、透明な樹脂フィルムであれば特に限定されないが、用途に適した特性を持つ材料を適宜選択することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4-メチルペンテン-1、及びポリブテン-1等からなるポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレンナフタレート等からなるポリエステル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリフェニレンサルファイド系樹脂フィルム、ポリエーテルサルフォン系樹脂フィルム、ポリエチレンサルファイド系樹脂フィルム、ポリフェニレンエーテル系樹脂フィルム、スチレン系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、ポリイミド系樹脂フィルム、セルロースアセテート等からなるセルロース系樹脂フィルム、並びにポリウレタン又はアクリルウレタン等の伸張性のある熱可塑性エラストマーからなるフィルムのいずれかを用いることができる。また、これらのフィルムを含む積層フィルムを用いることもできる。PETフィルムは耐久性や寸法安定性のバランスが良く、取り扱いが容易であるという利点を有する。熱可塑性エラストマーからなるフィルムを基材101とすることにより、遮熱用粘着フィルム100を水貼りする際にドライヤー等で加熱しなくても引き伸ばして容易に施工できるという利点が得られる。
【0034】
基材101の厚さは、10μm以上、500μm以下程度とすることができる。基材101の厚さを50μm以上、500μm以下程度と比較的厚くすることにより、遮熱用粘着フィルム100を建築物のガラス窓に貼り付けた際に、飛散防止効果や防犯効果を期待できる。一方、10μm以上、200μm以下程度とすることにより、自動車のガラス窓等、湾曲した窓に貼り付ける際に、曲面への追従性を向上させることができる。
【0035】
ハードコート層105は必要に応じて形成すればよいが、例えば鉛筆硬度が2H以上のハードコート層105を形成することにより、遮熱用粘着フィルム100の表面にキズが生じにくくすることができる。ハードコート層105の厚さは、2μm以上、10μm以下程度とすることができる。ハードコート層105は、紫外線吸収剤を含む構成とすることもできる。紫外線吸収剤を含むハードコート層105を形成することにより、遮熱用粘着フィルム100を窓の外側に貼り付けた場合に、遮熱用粘着フィルム100の劣化を生じにくくすることができる。
【0036】
遮熱用粘着フィルム100の全光線透過率及び可視光透過率は、例えば70%以上とすることできる。可視光線透過率が70%以上であれば、自動車のフロントガラスやサイドガラスに使用することができる。また、ヘイズ値は5%以下程度とすることができる。紫外線透過率は10%以下とすることが好ましい。日射透過率(IR透過率)は80%以下とすることが好ましい。100-日射透過率(%)-日射反射率(%)である日射吸収率(IR吸収率)は、室内に入射する赤外線を大きく低減する観点から10%以上とすることが好ましく、赤外線吸収による遮熱ウインドウフィルム自身の過熱を抑える観点から40%以下とすることが好ましい。
【0037】
本実施形態の遮熱用粘着フィルム100は、水分吸収による赤外線吸収剤の白化が生じにくいため、水貼りをすることができる。本実施形態の遮熱用粘着フィルム100を水貼りする場合には、まず、霧吹き等でフィルムを濡らし、水の表面張力を利用して窓に仮固定し、スクレーパーでスクイーズして気泡を抜く。その後、乾燥させることにより遮熱用粘着フィルム100が窓に貼りつけられる。遮熱用粘着フィルム100を窓の内側に貼り付けた場合には、紫外線吸収剤を含む第2の粘着剤層104が最も外側となる。このため、紫外線により劣化しやすいハードコート層105に入射する紫外線の量を低減して劣化を生じにくくすることができる。但し、遮熱用粘着フィルム100は、窓の外側に貼り付けることもできる。遮熱用粘着フィルム100は、赤外線吸収剤を含む層が露出していないので、窓の外側に貼る用途にも適している。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は例示であり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0039】
<光学特性の測定>
全光線透過率及びヘイズ値は、積分球付分光光度計(日本分光製、V-770/ILN-925)を用い、JIS K7361-1に準拠して測定した。可視光線透過率、紫外線透過率、日射透過率、日射反射率、日射吸収率及び遮蔽係数は、積分球付分光光度計(日本分光製、V-770/ILN-925)を用い、JIS A 5759(2008)に準拠して測定した。測定は、粘着フィルムを厚さ3mmのガラスに貼り合わせて、ガラス面側から光を入射させて行った。
【0040】
<密着性評価>
ガラス製の被着体に貼り合わせた遮熱用粘着フィルムを、剥離角度180°、剥離速度300mm/分で引き剥がした。基材と共に粘着剤層が剥離し、被着体に残存しなかった場合を良好、基材と粘着剤層との間で剥離が生じ、被着体の表面に粘着剤層が残存した場合を不良とした。
【0041】
<水貼り施工時の外観評価>
遮熱用粘着シートの粘着剤層の表面と、ガラス製の被着体とに霧吹きにより水を吹き付け、表面が濡れた状態の粘着剤層を被着体に貼り付け、粘着剤層と被着体との間の気泡を除去した。貼り付け後に、目視によりフィルムの白濁の有無を調べた。
【0042】
(実施例1)
ハードコート層を片面に有する厚さ100μmの二軸延伸PETフィルムを基材として準備した。第1の剥離ライナーの剥離面に、表1に示す組成物をコーターにより塗布した後乾燥して、赤外線吸収剤を含む厚さが10μmの第1の粘着剤層を形成した。第1の剥離ライナー上の第1の粘着剤層を、基材のハードコート層と反対側に面に貼り合わせた。第2の剥離ライナーの剥離面に、表2に示す組成物をコーターにより塗布した後乾燥して、紫外線吸収剤を含む厚さが15μmの第2の粘着剤層を形成した。第1の剥離ライナーを剥離した後、第2の剥離ライナー上の第2の粘着剤層を、第1の粘着剤層に貼り合わせて実施例1の遮熱用粘着フィルムを形成した。
【0043】
赤外線吸収剤は、アンチモン含有酸化スズ(ATO)微粒子を40質量%含む分散液を使用し、組成物の固形分に対してATO粒子が53.6質量%となるように加えた。
【0044】
【0045】
【0046】
実施例1の遮熱用粘着フィルムの全光線透過率は83.9%、ヘイズ値は0.7%、可視光線透過率は82.1%、紫外線透過率は1.8%、日射透過率は63.4%、日射反射率は6.7%、日射吸収率は29.8%、遮蔽係数は0.83であった。
【0047】
密着性の試験において、被着体の表面に粘着剤層は残存せず、基材と粘着剤層との密着性は良好であった。
【0048】
遮熱用粘着フィルムを水貼りした場合にも白濁等は認められず、貼り付け後の外観は良好であった。
【0049】
(比較例1)
実施例1と同じ基材のハードコート層と反対側の面に、表3に示す組成物をコーターにより塗布した後乾燥して、赤外線吸収剤を含む厚さが5μmのコート層を形成した。実施例1と同様にして、紫外線吸収剤を含む厚さが15μmの粘着剤層を形成し、コート層と貼り合わせて、比較例1の遮熱用粘着フィルムを形成した。
【0050】
赤外線吸収剤は、アンチモン含有酸化スズ(ATO)微粒子を40質量%含む分散液を使用し、組成物の固形分に対してATO粒子が250質量%となるように加えた。
【0051】
【0052】
比較例1の遮熱用粘着フィルムの全光線透過率は81.7%、ヘイズ値は0.4%、可視光線透過率は80.5%、紫外線透過率は1.6%、日射透過率は60.9%、日射反射率は6.6%、日射吸収率は32.6%、遮蔽係数は0.82であった。
【0053】
密着性の試験において、コート層と基材との間で剥離が生じ、被着体の表面に粘着剤層が残存し、密着性は不良であった。
【0054】
粘着剤層を形成する前のコート層に基材表面に至る切れ込みを入れ、1mm角の縦横100マスのブロックを形成した。ブロックの表面に市販のセロハンテープを貼り付けて剥がしたところ、100ブロック中95ブロックが基材から剥離した。
【0055】
遮熱用粘着フィルムを水貼りした場合にも白濁等は認められず、貼り付け後の外観は良好であった。
【0056】
(比較例2)
剥離ライナーの剥離面に、表4に示す組成物をコーターにより塗布した後乾燥して赤外線吸収剤及び紫外線吸収剤を含む厚さが15μmの混合粘着剤層を形成した。実施例1と同じ基材のハードコート層と反対側の面に、混合粘着剤層を貼り合わせて、比較例2の遮熱用粘着フィルムを形成した。
【0057】
赤外線吸収剤は、アンチモン含有酸化スズ(ATO)微粒子を40質量%含む分散液を使用し、組成物の固形分に対してATO粒子が53.6質量%となるように加えた。
【0058】
【0059】
比較例2の遮熱用粘着フィルムの全光線透過率は83.6%、ヘイズ値は0.9%、可視光線透過率は82.1%、紫外線透過率は2.0%、日射透過率は63.4%、日射反射率は6.8%、日射吸収率は29.8%、遮蔽係数は0.83であった。
【0060】
密着性の試験において、被着体の表面に粘着剤層は残存せず、基材と粘着剤層との密着性は良好であった。
【0061】
遮熱用粘着フィルムを水貼りした場合に白濁が認められ、貼り付け後の外観は不良であった。
【0062】
表5に実施例及び比較例の評価結果をまとめて示す。
【0063】
【産業上の利用可能性】
【0064】
本開示の遮熱用粘着フィルムは、紫外線と赤外線の両方の入射を抑え、良好な光学特性を実現でき、建物や車両の窓に貼り付ける遮熱用のフィルムとして有用である。
【符号の説明】
【0065】
100 遮熱用粘着フィルム
101 基材
103 第1の粘着剤層
104 第2の粘着剤層
105 ハードコート層
107 剥離ライナー
【要約】
【課題】紫外線と赤外線の両方の入射を抑え、良好な光学特性を有する遮熱用粘着フィルムを実現できるようにする。
【解決手段】遮熱用粘着フィルムは、樹脂からなる基材101と、基材101の第1の面に形成された第1の粘着剤層103と、第1の粘着剤層103の基材101と反対側の面に形成された第2の粘着剤層104とを備えている。第1の粘着剤層103は赤外線吸収剤を含み、第2の粘着剤層104は紫外線吸収剤を含む。
【選択図】
図1