(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】労働生産性損失コスト算出システム、労働生産性損失コスト算出方法、および労働生産性損失コスト算出プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0639 20230101AFI20230905BHJP
【FI】
G06Q10/0639
(21)【出願番号】P 2020080639
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】396026569
【氏名又は名称】勤次郎株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】加村 稔
(72)【発明者】
【氏名】加村 建史
(72)【発明者】
【氏名】國井 達哉
(72)【発明者】
【氏名】中村 敬
【審査官】宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-185416(JP,A)
【文献】業界初の新機能『プレゼンティーズム分析レポート』を、ストレスチェックシステムに標準搭載,[online],株式会社ヒューマネージ,2019年02月08日,https://www.hrpro.co.jp/press_detail.php?ccd=00753&press_no=5,[検索日 2021.06.16]
【文献】「健康経営」の枠組みに基づいた保険者・事業主のコラボヘルスによる健康課題の可視化,[online],東京海上日動健康保険組合,2015年03月31日,pp.1-56,https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/houkoku12.pdf
【文献】松本 一郎,IoTで「幸福感」も可視化 健康経営は高リターン,テレコミュニケーション,株式会社リックテレコム,2020年04月25日,Vol.37 No.5,pp.7-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
従業員ごとに割り当てられた従業員コードに関連付けて前記従業員ごとの就業情報に関する複数の項目データを記憶する就業情報記憶部と、
前記従業員コードに関連付けて前記従業員ごとの健康診断に関する複数の項目データを記憶する健康診断結果記憶部と、
前記従業員コードに関連付けて前記従業員ごとのストレスチェックに関する複数の項目データを記憶するストレスチェック結果記憶部と、
労働生産性損失コストを算出するために設定される設定データを記憶する設定データ記憶部と、
前記就業情報記憶部が記憶する項目データと、前記健康診断結果記憶部が記憶する項目データと、前記ストレスチェック結果記憶部が記憶する項目データとから、労働生産性損失コストを算出する労働生産性損失コスト算出部と、
前記労働生産性損失コスト算出部から算出された労働生産性損失コストを表形式、またはグラフ形式によって画面、またはファイルに出力する出力部とを備え
、
前記労働生産性損失コスト算出部は、
前記就業情報記憶部が記憶する項目データに基づいてアブセンティーイズム損失コストを算出するアブセンティーイズム損失コスト算出部と、
前記就業情報記憶部が記憶する項目データに基づいて残業時間損失コストを算出する残業時間損失コスト算出部と、
プレゼンティーイズム損失率を特定するための標本として前記健康診断結果記憶部が記憶する項目データと前記ストレスチェック結果記憶部が記憶する項目データとを用いてプレゼンティーイズム損失コストを算出するプレゼンティーイズム損失コスト算出部と、を備え、
前記労働生産性損失コスト算出部は、労働生産性損失コストとして、前記アブセンティーイズム損失コスト算出部が算出した前記アブセンティーイズム損失コスト、前記プレゼンティーイズム損失コスト算出部が算出したプレゼンティーイズム損失コスト、および、前記残業時間損失コスト算出部が算出した前記残業時間損失コストの加算値を算出する
労働生産性損失コスト算出システム。
【請求項2】
従業員ごとに割り当てられた従業員コードに関連付けて前記従業員ごとの就業情報に関する複数の項目データを記憶する就業情報記憶部と、
前記従業員コードに関連付けて前記従業員ごとの健康診断に関する複数の項目データを記憶する健康診断結果記憶部と、
前記従業員コードに関連付けて前記従業員ごとのストレスチェックに関する複数の項目データを記憶するストレスチェック結果記憶部と、
労働生産性損失コストを算出するために設定される設定データを記憶する設定データ記憶部と、
前記就業情報記憶部が記憶する項目データと、前記健康診断結果記憶部が記憶する項目データと、前記ストレスチェック結果記憶部が記憶する項目データとから、労働生産性損失コストを算出する労働生産性損失コスト算出部と、
前記労働生産性損失コスト算出部から算出された労働生産性損失コストを表形式、またはグラフ形式によって画面、またはファイルに出力する出力部とを備え
、
前記労働生産性損失コスト算出部は、
前記就業情報記憶部が記憶する項目データに基づいてアブセンティーイズム損失コストを算出するアブセンティーイズム損失コスト算出部と、
前記就業情報記憶部が記憶する項目データに基づいて残業時間損失コストを算出する残業時間損失コスト算出部と、
前記健康診断結果記憶部が記憶する項目データに基づいて生活習慣病損失コストを算出する生活習慣病損失コスト算出部と、
前記ストレスチェック結果記憶部が記憶する項目データに基づいてストレス損失コストを算出するストレス損失コスト算出部とを備え、
前記労働生産性損失コスト算出部は、下記式1および式2を用いて労働生産性損失コストを算出する
プレゼンティーイズム損失コスト=生活習慣病損失コスト+ストレス損失コスト・・・(式1)
労働生産性損失コスト=アブセンティーイズム損失コスト+プレゼンティーイズム損失コスト+残業時間損失コスト・・・(式2)
労働生産性損失コスト算出システム。
【請求項3】
前記ストレス損失コスト算出部は、
前記ストレスチェック結果記憶部が記憶する項目データに基づいて各従業員のストレス値を算出し、
前記設定データに含まれるストレス上限境界値より大きい前記ストレス値を有する従業員を高ストレス該当者としたとき、
高ストレス者該当者の人数である高ストレス該当者数と、
前記設定データ記憶部に記憶されるストレス損失率と、従業員1人あたりに支払う給与の1カ月あたりの平均額である個人平均月額単価と労働生産性損失コスト算出月数に基づいて、下記式3を用いてストレス損失コストを算出する
ストレス損失コスト=高ストレス該当者数×算出月数×個人平均月額単価×ストレス損失率・・・(式3)
請求項
2に記載の労働生産性損失コスト算出システム。
【請求項4】
前記生活習慣病損失コスト算出部は、
前記健康診断結果記憶部が記憶する項目データと健診項目ごとの判定基準テーブルとに基づいて生活習慣病であると判定された従業員を生活習慣病該当者としたとき、
前記生活習慣病該当者の人数である生活習慣病該当者数と、
前記設定データ記憶部に記憶される生活習慣病損失率と、従業員1人あたりに支払う給与の1カ月あたりの平均額である個人平均月額単価と、労働生産性損失コスト算出月数とに基づいて、下記式4を用いて生活習慣病損失コストを算出する
生活習慣病損失コスト=生活習慣病該当者数×算出月数×個人平均月額単価×生活習慣病損失率・・・(式4)
請求項
2または3に記載の労働生産性損失コスト算出システム。
【請求項5】
前記アブセンティーイズム損失コスト算出部は、
前記就業情報記憶部から取得した従業員の体調不良を理由とする有給休暇日数、及び欠勤日数と、
前記設定データに含まれる、1日当たりに従業員1人に支払われる給与の平均額である個人平均日額単価とに基づいて、下記式5を用いてアブセンティーイズム損失コストを算出する
アブセンティーイズム損失コスト=(欠勤日数+体調不良による有給休暇)×個人平均日額単価・・・(式5)
請求項2から
4のいずれか一項に記載の労働生産性損失コスト算出システム。
【請求項6】
前記残業時間損失コスト算出部は、前記就業情報記憶部から取得した従業員の時間外労働と法内残業を含めた残業時間に基づいて下記式6を用いて残業時間損失コストを算出する
残業時間損失コスト=算出期間の全従業員の残業時間×個人平均時間単価・・・(式6)
請求項2から
5のいずれか一項に記載の労働生産性損失コスト算出システム。
【請求項7】
労働生産性損失コスト算出システムが、
従業員ごとに割り当てられた従業員コードに関連付けて前記従業員ごとの就業情報に関する複数の項目データと、前記従業員コードに関連付けて前記従業員ごとの健康診断に関する複数の項目データと、前記従業員コードに関連付けて前記従業員ごとのストレスチェックに関する複数の項目データと、労働生産性損失コストを算出するために設定される設定データとを用いて、労働生産性損失コスト算出部が労働生産性損失コストを算出すること、および、
算出された前記労働生産性損失コストを表形式、またはグラフ形式によって画面、またはファイルに出力部が出力すること、を含
み、
前記就業情報に関する複数の項目データに基づいてアブセンティーイズム損失コストを算出することと、
前記就業情報に関する複数の項目データに基づいて残業時間損失コストを算出することと、
プレゼンティーイズム損失率を特定するための標本として前記健康診断に関する複数の項目データと前記ストレスチェックに関する複数の項目データとを用いてプレゼンティーイズム損失コストを算出することと、をさらに含み、
前記労働生産性損失コストとして、前記アブセンティーイズム損失コスト、前記プレゼンティーイズム損失コスト、および、前記残業時間損失コストの加算値を算出する
労働生産性損失コスト算出方法。
【請求項8】
労働生産性損失コスト算出システムが、
従業員ごとに割り当てられた従業員コードに関連付けて前記従業員ごとの就業情報に関する複数の項目データと、前記従業員コードに関連付けて前記従業員ごとの健康診断に関する複数の項目データと、前記従業員コードに関連付けて前記従業員ごとのストレスチェックに関する複数の項目データと、労働生産性損失コストを算出するために設定される設定データとを用いて、労働生産性損失コスト算出部が労働生産性損失コストを算出すること、および、
算出された前記労働生産性損失コストを表形式、またはグラフ形式によって画面、またはファイルに出力部が出力すること、を含
み、
前記就業情報に関する複数の項目データに基づいてアブセンティーイズム損失コストを算出することと、
前記就業情報に関する複数の項目データに基づいて残業時間損失コストを算出することと、
前記健康診断に関する複数の項目データに基づいて生活習慣病損失コストを算出することと、
前記ストレスチェックに関する複数の項目データに基づいてストレス損失コストを算出することと、をさらに含み、
前記労働生産性損失コスト算出部は、下記式1および式2を用いて労働生産性損失コストを算出する
プレゼンティーイズム損失コスト=生活習慣病損失コスト+ストレス損失コスト・・・(式1)
労働生産性損失コスト=アブセンティーイズム損失コスト+プレゼンティーイズム損失コスト+残業時間損失コスト・・・(式2)
労働生産性損失コスト算出方法。
【請求項9】
コンピュータを、
従業員ごとに割り当てられた従業員コードに関連付けて前記従業員ごとの就業情報に関する複数の項目データを記憶する就業情報記憶部と、
前記従業員コードに関連付けて前記従業員ごとの健康診断に関する複数の項目データを記憶する健康診断結果記憶部と、
前記従業員コードに関連付けて前記従業員ごとのストレスチェックに関する複数の項目データを記憶するストレスチェック結果記憶部と、
労働生産性損失コストを算出するために設定される設定データを記憶する設定データ記憶部と、
前記就業情報記憶部が記憶する項目データと、前記健康診断結果記憶部が記憶する項目データと、前記ストレスチェック結果記憶部が記憶する項目データとから、労働生産性損失コストを算出する労働生産性損失コスト算出部と、
前記労働生産性損失コスト算出部によって出力された労働生産性損失コストを表形式、またはグラフ形式によって画面、またはファイルに出力する出力部として機能させ
、
前記労働生産性損失コスト算出部は、
前記就業情報記憶部が記憶する項目データに基づいてアブセンティーイズム損失コストを算出するアブセンティーイズム損失コスト算出部と、
前記就業情報記憶部が記憶する項目データに基づいて残業時間損失コストを算出する残業時間損失コスト算出部と、
プレゼンティーイズム損失率を特定するための標本として前記健康診断結果記憶部が記憶する項目データと前記ストレスチェック結果記憶部が記憶する項目データとを用いてプレゼンティーイズム損失コストを算出するプレゼンティーイズム損失コスト算出部と、を備え、
前記労働生産性損失コスト算出部は、労働生産性損失コストとして、前記アブセンティーイズム損失コスト算出部が算出した前記アブセンティーイズム損失コスト、前記プレゼンティーイズム損失コスト算出部が算出したプレゼンティーイズム損失コスト、および、前記残業時間損失コスト算出部が算出した前記残業時間損失コストの加算値を算出する
労働生産性損失コスト算出プログラム。
【請求項10】
コンピュータを、
従業員ごとに割り当てられた従業員コードに関連付けて前記従業員ごとの就業情報に関する複数の項目データを記憶する就業情報記憶部と、
前記従業員コードに関連付けて前記従業員ごとの健康診断に関する複数の項目データを記憶する健康診断結果記憶部と、
前記従業員コードに関連付けて前記従業員ごとのストレスチェックに関する複数の項目データを記憶するストレスチェック結果記憶部と、
労働生産性損失コストを算出するために設定される設定データを記憶する設定データ記憶部と、
前記就業情報記憶部が記憶する項目データと、前記健康診断結果記憶部が記憶する項目データと、前記ストレスチェック結果記憶部が記憶する項目データとから、労働生産性損失コストを算出する労働生産性損失コスト算出部と、
前記労働生産性損失コスト算出部によって出力された労働生産性損失コストを表形式、またはグラフ形式によって画面、またはファイルに出力する出力部として機能させ
、
前記労働生産性損失コスト算出部は、
前記就業情報記憶部が記憶する項目データに基づいてアブセンティーイズム損失コストを算出するアブセンティーイズム損失コスト算出部と、
前記就業情報記憶部が記憶する項目データに基づいて残業時間損失コストを算出する残業時間損失コスト算出部と、
前記健康診断結果記憶部が記憶する項目データに基づいて生活習慣病損失コストを算出する生活習慣病損失コスト算出部と、
前記ストレスチェック結果記憶部が記憶する項目データに基づいてストレス損失コストを算出するストレス損失コスト算出部とを備え、
前記労働生産性損失コスト算出部は、下記式1および式2を用いて労働生産性損失コストを算出する
プレゼンティーイズム損失コスト=生活習慣病損失コスト+ストレス損失コスト・・・(式1)
労働生産性損失コスト=アブセンティーイズム損失コスト+プレゼンティーイズム損失コスト+残業時間損失コスト・・・(式2)
労働生産性損失コスト算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、労働生産性損失コスト算出システム、労働生産性損失コスト算出方法、および労働生産性損失コスト算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従業員の健康管理を経営課題とした経営への取り組みが促進されることを目的に、経済産業省において「健康経営優良法人認定制度」が実施されている。組織の健康と健全な経営を維持するためには、健康関連コストの大きさを知ることが求められる。健康関連コストは、医療費、障害に対する傷病手当金や労災給付金、アブセンティーイズム損失コスト、およびプレゼンティーイズム損失コストから構成される(例えば、非特許文献1を参照)。
【0003】
一方、勤怠に関する項目データ、健康診断の結果に関する項目データ、およびストレスチェックの結果に関する項目データを集計するシステムが知られている(例えば、特許文献1を参照)。システムを構成する管理サーバは、勤怠に関する項目データ、健康診断に関する項目データ、およびストレスチェックに関する項目データを管理する。なお、ストレスチェックに関する項目データは、一般に、厚生労働省の推奨する調査票「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」に準じる(例えば、非特許文献2を参照)。「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」に準じたストレス値の算出方法には、単純合計点(例えば、非特許文献3を参照)や、素点換算表を使う標準化得点が知られている。また、モチベーションが低い従業員、およびメンタルが良好でない従業員と、当該従業員のストレスチェックの点数傾向とがより合致するように、ストレスチェックに関する各項目データに重みづけをして点数化する方法も知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
ここで、健康関連コストのうち、傷病手当金、医療費、および労災給付金は、健康保険組合、または企業が保持するデータによって明確であるが、アブセンティーイズム損失コストとプレゼンティーイズム損失コストとは、何らかの方法によって算出する必要がある。非特許文献4には、「アブセンティーイズム損失コスト=1年間の病休(欠勤)日数×賃金(円)」、「プレゼンティーイズム損失コスト=プレゼンティーイズム損失割合×賃金(円)」を用いて算出することが例示されている。プレゼンティーイズム損失割合は、「WHO-HPQスケール」を用いて算出されている。非特許文献5には、アブセンティーイズムの病休(欠勤)日数をアンケートによって取得している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-068831号公報
【文献】特開2017-102673号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】“Healthy Workforce 2010 and Beyond,2009”,[online],2009年11月30日,Patnership for Prevention and U.S. Chamber of Commerce,[2019年11月26日検索]、インターネット<URL:https://www.uschamber.com/sites/default/files/documents/files/HealthyWorkforce2010FINALElectronicVersion111709.pdf>
【文献】“職業性ストレス簡易調査票(57項目)”,[online],厚生労働省,[2019年11月26日検索]、インターネット<URL:https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/dl/stresscheck_j.pdf>
【文献】“労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル”,[online],2019年7月改訂,厚生労働省,[2019年11月26日検索],インターネット<URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000533925.pdf>
【文献】“「健康経営」の枠組みに基づいた保険者・事業主のコラボヘルスによる健康課題の可視化”,[online],2015年3月31日,東京海上日動健康保険組合,[2019年11月26日検索],インターネット<URL:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/houkoku12.pdf>
【文献】“健康経営の枠組みによる健康課題の見える化”,[online],大学病院医療情報ネットワークセンター,[2019年11月26日検索],インターネット<URL:http://square.umin.ac.jp/hpm/hpmmethod.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従業員の健康管理を経営課題とした経営では、モチベーションの低下やメンタルの不調などの要因を早期に発見して適切な対策を実施するための健康関連コストを把握することが重要である。しかし、従来の方法やシステムでは、健康関連コストを構成するアブセンティーイズム損失コストやプレゼンティーイズム損失コストを数値化する方法として従業員を対象としたアンケート手法を用いる。従業員の不確かな記憶と、個人の判断基準に依存した曖昧な評価とにのみ基づいて算出された損失コストでは、生産性に関わる要因の実情が反映されているとは言い難い。
【0008】
本発明の目的は、労働生産性損失コストの算出精度を向上可能にした労働生産性損失コスト算出方法、労働生産性損失コスト算出プログラム、および労働生産性損失コスト算出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための労働生産性損失コスト算出システムは、従業員ごとに割り当てられた従業員コードに関連付けて前記従業員ごとの就業情報に関する複数の項目データを記憶する就業情報記憶部と、前記従業員コードに関連付けて前記従業員ごとの健康診断に関する複数の項目データを記憶する健康診断結果記憶部と、前記従業員コードに関連付けて前記従業員ごとのストレスチェックに関する複数の項目データを記憶するストレスチェック結果記憶部と、労働生産性損失コストを算出するために設定される設定データを記憶する設定データ記憶部と、前記就業情報記憶部が記憶する項目データと、前記健康診断結果記憶部が記憶する項目データと、前記ストレスチェック結果記憶部が記憶する項目データとから、労働生産性損失コストを算出する労働生産性損失コスト算出部と、前記労働生産性損失コスト算出部から算出された労働生産性損失コストを表形式、またはグラフ形式によって画面、またはファイルに出力する出力部とを備える。
【0010】
上記課題を解決するための労働生産性損失コスト算出方法は、従業員ごとに割り当てられた従業員コードに関連付けて前記従業員ごとの就業情報に関する複数の項目データと、前記従業員コードに関連付けて前記従業員ごとの健康診断に関する複数の項目データと、前記従業員コードに関連付けて前記従業員ごとのストレスチェックに関する複数の項目データと、労働生産性損失コストを算出するために設定される設定データとを用いて、労働生産性損失コスト算出部が労働生産性損失コストを算出すること、および、算出された前記労働生産性損失コストを表形式、またはグラフ形式によって画面、またはファイルに出力部が出力すること、を含む。
【0011】
上記課題を解決するための労働生産性損失コスト算出プログラムは、コンピュータを、従業員ごとに割り当てられた従業員コードに関連付けて前記従業員ごとの就業情報に関する複数の項目データを記憶する就業情報記憶部と、前記従業員コードに関連付けて前記従業員ごとの健康診断に関する複数の項目データを記憶する健康診断結果記憶部と、前記従業員コードに関連付けて前記従業員ごとのストレスチェックに関する複数の項目データを記憶するストレスチェック結果記憶部と、労働生産性損失コストを算出するために設定される設定データを記憶する設定データ記憶部と、前記就業情報記憶部が記憶する項目データと、前記健康診断結果記憶部が記憶する項目データと、前記ストレスチェック結果記憶部が記憶する項目データとから、労働生産性損失コストを算出する労働生産性損失コスト算出部と、前記労働生産性損失コスト算出部によって出力された労働生産性損失コストを表形式、またはグラフ形式によって画面、またはファイルに出力する出力部として機能させる。
【0012】
上記各構成によれば、例えば、残業時間損失コストは就業情報記憶部が記憶する従業員の残業時間数、及び時間単価とから算出できる。また、例えば、アブセンティーイズム損失コストは、就業情報記憶部が記憶する病気による有給休暇と欠勤、および設定データに含まれる個人平均日額単価から算出できる。また、例えば、プレゼンティーイズム損失コストは、健康診断結果とストレスチェック結果、および設定データに含まれる個人平均月額単価から算出できる。そのため、従業員の不確かな記憶や個人の判断基準に依存した曖昧な評価に基づく誤差を低減させて、労働生産性損失コストの算出精度を高めることができる。
【0013】
上記労働生産性損失コスト算出システムにおいて、前記労働生産性損失コスト算出部は、前記就業情報記憶部が記憶する項目データに基づいてアブセンティーイズム損失コストを算出するアブセンティーイズム損失コスト算出部と、前記就業情報記憶部が記憶する項目データに基づいて残業時間損失コストを算出する残業時間損失コスト算出部と、プレゼンティーイズム損失率を特定するための標本として前記健康診断結果記憶部が記憶する項目データと前記ストレスチェック結果記憶部が記憶する項目データとを用いてプレゼンティーイズム損失コストを算出するプレゼンティーイズム損失コスト算出部と、を備え、前記労働生産性損失コスト算出部は、労働生産性損失コストとして、前記アブセンティーイズム損失コスト算出部が算出した前記アブセンティーイズム損失コスト、前記プレゼンティーイズム損失コスト算出部が算出したプレゼンティーイズム損失コスト、および、前記残業時間損失コスト算出部が算出した前記残業時間損失コストの加算値を算出してもよい。
【0014】
上記労働生産性損失コスト算出システムにおいて、前記労働生産性損失コスト算出部は、前記就業情報記憶部が記憶する項目データに基づいてアブセンティーイズム損失コストを算出するアブセンティーイズム損失コスト算出部と、前記就業情報記憶部が記憶する項目データに基づいて残業時間損失コストを算出する残業時間損失コスト算出部と、前記健康診断結果記憶部が記憶する項目データに基づいて生活習慣病損失コストを算出する生活習慣病損失コスト算出部と、前記ストレスチェック結果記憶部が記憶する項目データに基づいてストレス損失コストを算出するストレス損失コスト算出部と、前記就業情報記憶部が記憶する項目データに基づいて残業時間損失コストを算出する残業時間損失コスト算出部とを備え、前記労働生産性損失コスト算出部は、下記式1および式2を用いて労働生産性損失コストを算出してもよい。
【0015】
プレゼンティーイズム損失コスト=生活習慣病損失コスト+ストレス損失コスト・・・(式1)
労働生産性損失コスト=アブセンティーイズム損失コスト+プレゼンティーイズム損失コスト+残業時間損失コスト・・・(式2)
これらの構成によれば、従業員の身体面の不調を原因とする労働生産性の低下に加えて、精神面の不調を原因とする労働生産性の低下を考慮して労働生産性損失コストを算出することができる。
【0016】
上記労働生産性損失コスト算出システムにおいて、前記ストレス損失コスト算出部は、前記ストレスチェック結果記憶部が記憶する項目データに基づいて各従業員のストレス値を算出し、前記設定データに含まれるストレス上限境界値より大きい前記ストレス値を有する従業員を高ストレス該当者としたとき、高ストレス者該当者の人数である高ストレス該当者数と、前記設定データ記憶部に記憶されるストレス損失率と、従業員1人あたりに支払う給与の1カ月あたりの平均額である個人平均月額単価と労働生産性損失コスト算出月数に基づいて、下記式3を用いてストレス損失コストを算出してもよい。
【0017】
ストレス損失コスト=高ストレス該当者数×算出月数×個人平均月額単価×ストレス損失率・・・(式3)
この構成によれば、各従業員のストレス値の合計の大きさに応じたストレス損失コストを算出することができる。
【0018】
上記労働生産性損失コスト算出システムにおいて、前記生活習慣病損失コスト算出部は、前記健康診断結果記憶部が記憶する項目データと健診項目ごとの判定基準テーブルとに基づいて生活習慣病であると判定された従業員を生活習慣病該当者としたとき、前記生活習慣病該当者の人数である生活習慣病該当者数と、前記設定データ記憶部に記憶される生活習慣病損失率と、従業員1人あたりに支払う給与の1カ月あたりの平均額である個人平均月額単価と、労働生産性損失コスト算出月数とに基づいて、下記式4を用いて生活習慣病損失コストを算出してもよい。
【0019】
生活習慣病損失コスト=生活習慣病該当者数×算出月数×個人平均月額単価×生活習慣病損失率・・・(式4)
この構成によれば、会社合計生活習慣病値の大きさに応じた生活習慣病損失コストを算出することができる。
【0020】
上記労働生産性損失コスト算出システムにおいて、前記アブセンティーイズム損失コスト算出部は、前記就業情報記憶部から取得した従業員の体調不良を理由とする有給休暇日数、及び欠勤日数と、前記設定データに含まれる、1日当たりに従業員1人に支払われる給与の平均額である個人平均日額単価とに基づいて、下記式5を用いてアブセンティーイズム損失コストを算出してもよい。
【0021】
アブセンティーイズム損失コスト=(欠勤日数+体調不良による有給休暇)×個人平均日額単価・・・(式5)
この構成によれば、アブセンティーイズム損失コストを算出するために追加のアンケートを行うことなく労働生産性損失コストを算出することができる。
【0022】
上記労働生産性損失コスト算出システムにおいて、前記残業時間損失コスト算出部は、前記就業情報記憶部から取得した従業員の時間外労働と法内残業を含めた残業時間に基づいて下記式6を用いて残業時間損失コストを算出してもよい。
【0023】
残業時間損失コスト=算出期間の全従業員の残業時間×個人平均時間単価・・・(式6)
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、労働生産性損失コストの算出精度を向上することができる。例えば、会社全体、部署別、従業員別の労働生産性損失コストを算出し、提示することが可能となる。これによって、経営者、人事労務担当、部門長、産業医、健康経営アドバイザがそれぞれの視点で、労働環境の改善対策と改善実施への取組みと、従業員の生活習慣病やメンタル不調の改善への取組みを行うことができる。その結果、労働生産性の向上が期待でき、企業収益の向上に繋がる。また、残業時間過多、体調不良者の増加、当日欠勤者の増加等を検出し、各種対策による労働意欲向上、生活習慣病やメンタル不調の増減を計測することができるため、労働生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】労働生産性損失コスト算出システムの第1の実施形態の構成を示すブロック図。
【
図2】同実施形態における就業情報レコードの構成を示す構成図。
【
図3】同実施形態における健診結果レコードの構成を示す構成図。
【
図4】同実施形態におけるストレスチェック結果レコードの構成を示す構成図。
【
図5】同実施形態における規格値を算出する処理を示すフローチャート。
【
図6】同実施形態における健診数値を算出する処置を示すフローチャート。
【
図7】同実施形態において判定基準レコードで行われるデータの読み込み、および書き込みの流れを示す説明図。
【
図8】同実施形態におけるストレス損失コストを算出する処理を示すフローチャート。
【
図9】同実施形態における生活習慣病損失コストを算出する処理を示すフローチャート。
【
図10】同実施形態におけるアブセンティーイズム損失コストを算出する処理を示すフローチャート。
【
図11】労働生産性損失コスト算出システムの第2の実施形態の構成を示すブロック図。
【
図12】(a),(b)は、同実施形態における業務遂行能率のアンケート結果を示す模式図。
【
図13】(a)~(c)は、同実施形態における業務遂行能率のアンケートの例を示す模式図。
【
図14】同実施形態におけるプレゼンティーイズム損失率を算出する処理を示すフローチャート。
【
図15】同実施形態の変更例におけるプレゼンティーイズム損失コストを算出する処理を示すフローチャート。
【
図16】労働生産性損失コスト算出システムの第4の実施形態の構成を示すブロック図。
【
図17】同実施形態におけるプレゼンティーイズム損失率定義表を示す模式図。
【
図18】(a)同実施形態おけるプレゼンティーイズム損失判定項目に関する判定結果を示す模式図。(b)は同実施形態においてプレゼンティーイズム損失判定項目に該当した人数をカウントした結果を示す模式図。
【
図19】同実施形態におけるプレゼンティーイズム損失コストを算出する処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1の実施形態)
図1から
図10を参照して、労働生産性損失コスト算出システム、労働生産性損失コスト算出プログラム、および労働生産性損失コスト算出方法の第1の実施形態を説明する。
【0027】
図1に示すように、労働生産性損失コスト算出システムは、管理サーバ10を備える。管理サーバ10は、複数の利用者端末1とネットワーク2を介して接続されている。管理サーバ10は、労働生産性損失コスト算出プログラムを記憶し、労働生産性損失コスト算出プログラムを実行することによって、労働生産性損失コストを算出する。
【0028】
利用者端末1は、例えば、企業の労務管理担当者によって利用されるデスクトップ型、ノート型またはタブレット型のコンピュータ端末であり、出力部や入力部を備えている。出力部は、各種情報を出力する機能を有して、ディスプレイやプリンタなどによって構成される。入力部は、各種情報を入力する機能を有して、キーボードやポインティングデバイス、通信インターフェースなどによって構成される。利用者端末1は、管理サーバ10や管理サーバ10以外の他のサーバ上に保存されて共有設定されたファイルなどを閲覧可能に構成されている。利用者端末1は、管理サーバ10や管理サーバ10以外の他のサーバ上に保存されて共有設定されたファイルをダウンロードして保存可能に構成されている。
【0029】
管理サーバ10は、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどのハードウェアによって構成されたコンピュータシステムである。管理サーバ10は、データベース20と設定データ記憶部300と、労働生産性損失コスト算出部40と、サーバ側出力部50とを備えている。
【0030】
データベース20は、就業情報記憶部21、健康診断結果記憶部22、およびストレスチェック結果記憶部23を備える。就業情報記憶部21は、各従業員の就業情報が記憶される。健康診断結果記憶部22は、各従業員の健康診断の結果に関する情報が記憶される。ストレスチェック結果記憶部23は、各従業員のストレスチェックの結果に関する情報が記憶される。
【0031】
設定データ記憶部300は、労働生産性損失コストを算出するための条件となる数値や、算出に用いられる数値などの各種の設定である設定データを記憶する。設定データは、労働生産性損失コストを算出するために、労働生産性損失コスト算出システムの使用者によって予め設定されるデータである。設定データは、健診項目ごとの判定基準テーブル301と、個人平均日額単価302と、個人平均月額単価303と、ストレス損失率304と、生活習慣病損失率305と、ストレス境界上限値306と、労働生産性損失コスト算出月数307と、対象とする休暇理由308と、を含む。
【0032】
各判定基準テーブル301は、例えば、
図7の収縮期血圧判定基準テーブル301a1に示すように、健診項目である収縮期血圧について、検査値を「A」「B」「C」「D」の4段階で判定するための検査値範囲を各検査値に対応づけて記憶している。
【0033】
個人平均日額単価302は、財務諸表に基づいて算出された全ての従業員における1日当たりの平均人件費である。個人平均月額単価303は、財務諸表に基づいて算出された全ての従業員における1ヶ月あたりの平均人件費である。ストレス損失率304、生活習慣病損失率305、およびストレス境界上限値306は、システム固定、又は利用者が利用者端末1から設定する値であって、各種研究成果に基づいて適切であると考えられる任意の値である。労働生産性損失コスト算出月数307は、労働生産性損失コストの算出対象となる期間の月数であって、ストレスチェックや健康診断が実施された時期に応じて使用者によって設定されるか、又はシステム固定である。
【0034】
対象とする休暇理由308は、従業員が取得した休暇のなかで、アブセンティーイズム損失コストを算出するために用いる休暇を識別するために用いる。労働生産性損失コスト算出部40は、従業員が休暇を取得した日数のなかで、対象とする休暇理由308を休暇の理由とした日数を、アブセンティーイズム損失コストを算出するために用いる。例えば、休暇理由は、産休、育休、病気治療入院による休暇、忌引きなどのような想定される休暇を含み、対象とする休暇理由308は、風邪などの急な病気、職場の人間関係、過労、燃え尽き症候群などによる体調不良のような想定されない休暇である。
【0035】
労働生産性損失コスト算出部40は、規格値算出部41と、健診数値算出部42と、ストレス損失コスト算出部43と、生活習慣病損失コスト算出部44と、アブセンティーイズム損失コスト算出部45と、残業時間損失コスト算出部46を備える。規格値算出部41は、健診項目ごとの規格値を算出する。健診数値算出部42は、健診項目ごとの健診数値を算出する。ストレス損失コスト算出部43は、プレゼンティーイズム損失コストを構成するストレス損失コストを算出する。生活習慣病損失コスト算出部44は、プレゼンティーイズム損失コストを構成する生活習慣病損失コストを算出する。アブセンティーイズム損失コスト算出部45は、アブセンティーイズム損失コストを算出する。
【0036】
規格値算出部41は、労働生産性損失コストを算出する前に、健診項目ごとの判定基準テーブル301を用いて、各健診項目の規格値を算出する。規格値算出部41が算出した規格値は、当該規格値の健診項目に該当する判定基準テーブル301に記憶される。
【0037】
健診数値算出部42は、健診結果レコード22aと、健診項目ごとの判定基準テーブル301とを用いて、各健診項目の健診数値を算出する。健診数値算出部42が算出した健診数値は、健康診断結果記憶部22に記憶される。健診数値算出部42が算出した健診数値は、生活習慣病損失コストの算出に用いられる。
【0038】
ストレス損失コスト算出部43は、ストレスチェック結果レコード23aと、ストレス損失率304と、個人平均月額単価303とを用いて、ストレス損失コストを算出する。
生活習慣病損失コスト算出部44は、健診結果レコード22aと、生活習慣病損失率305と、個人平均月額単価303とを用いて、生活習慣病損失コストを算出する。
【0039】
アブセンティーイズム損失コスト算出部45は、就業情報レコード21aと、個人平均日額単価302と、対象とする休暇理由308とを用いて、アブセンティーイズム損失コストを算出する。
【0040】
残業時間損失コスト算出部46は、就業情報レコード21aと、個人平均日額単価302から導出される個人平均時間単価とを下記式6に適用して、残業時間損失コストを算出する。
【0041】
残業時間損失コスト=算出期間の全従業員の残業時間×個人平均時間単価・・・(式6)
サーバ側出力部50は、画面出力部51と、帳票出力部52とを備える。画面出力部51は、労働生産性損失コスト算出部40が算出したアブセンティーイズム損失コスト、およびプレゼンティーイズム損失コストを含むデータを外部の画面に出力する。画面出力部51は、アブセンティーイズム損失コスト、およびプレゼンティーイズム損失コストを利用者端末1に出力する。アブセンティーイズム損失コスト、およびプレゼンティーイズム損失コストを出力された利用者端末1は、ディスプレイに表形式、またはグラフ形式で表示する。帳票出力部52は、労働生産性損失コスト算出部40が算出したアブセンティーイズム損失コスト、およびプレゼンティーイズム損失コストを含むデータを帳票に出力する。帳票出力部52は、ネットワーク2を介して図示しないプリンタを通じてアブセンティーイズム損失コスト、およびプレゼンティーイズム損失コストを表形式、またはグラフ形式で印刷することで、帳票に出力する。
【0042】
(データベース)
次に、
図2から
図4を参照して、データベース20に含まれる就業情報記憶部21、健康診断結果記憶部22、およびストレスチェック結果記憶部23について説明する。
【0043】
図2に示すように、就業情報記憶部21は、就業情報レコード21aを記憶している。就業情報レコード21aは、各従業員の就業状況に関する項目のデータである項目データを含む。就業情報レコード21aは、従業員ごとに割り当てられたコードである従業員コードに関連付けられている。就業情報レコード21aには、当該就業情報レコード21aを割り当てられた従業員の就業情報の項目データとして、残業時間、有休休暇取得日数、遅刻回数、残業時間、欠勤日数、深夜勤務時間、総労働時間などが記憶される。各従業員の就業状況に関する項目データは、会社が利用する勤怠管理システムから入力される。各従業員の就業状況に関する項目データは、会社の労務管理担当者によって利用者端末1からネットワーク2を介して入力されてもよい。
【0044】
図3に示すように、健康診断結果記憶部22は、健診結果レコード22aを記憶している。健診結果レコード22aは、各従業員の健康診断に関する項目のデータである項目データを含む。健診結果レコード22aは、従業員コードに関連付けられている。健診結果レコード22aは、健康診断の項目ごとの検査値、および判定結果を項目データとして含む。各従業員の健康診断に関する項目の項目データは、健康診断を実施した健診センターから取得したデジタルデータを加工して取り込まれるか、もしくは紙媒体に印字されたデータを会社の担当者により手作業で入力される。
【0045】
健診結果レコード22aは、健診結果として、腹囲、BMI値、収縮期血圧、拡張期血圧、尿酸などの健診項目の検査値を含む。健診結果レコード22aは、空腹時血糖(FPG)検査値、HbA1c(NGSP)検査値、LDLコレステロール検査値、HDLコレステロール値、中性脂肪検査値、GOT(AST)検査値、GPT(ALT)検査値、γ-GTP検査値などの血液検査値を含む。
【0046】
健診結果レコード22aは、判定基準テーブル301に基づいて各検査値を「A」「B」「C」「D」の4段階で判定した収縮期血圧判定結果、拡張期血圧判定結果、空腹時血糖値判定結果、HbA1c判定結果、HDLコレステロール判定結果、中性脂肪判定結果、GOT判定結果、GPT判定結果などを含む。なお、判定結果「E」は検査値に関わらず、その項目に関して治療中であることを示す。各検査値の判定結果は、「A」が良好であることを示し、「D」に近いほど不良であることを示す。
【0047】
健診結果レコード22aは、生活習慣病に該当することの可能性を、判定結果、あるいは検査値に基づいて、「A」「B」「C」「D」の4段階で判定したメタボリックシンドローム判定結果、糖尿病判定結果、高血圧判定結果、高尿酸血症判定結果、脂質異常症判定結果、および肝機能障害判定結果を含む。なお、判定結果「E」は検査値に関わらず、その項目に関して治療中であることを示す。生活習慣病の判定結果は、「A」が生活習慣病に該当する可能性が低いことを示し、「D」に近いほど生活習慣病に該当する可能性が高いことを示す。なお、メタボリックシンドロームは、厳密には、生活習慣病ではないが、本実施形態においては、生活習慣病に準じるものとして扱う。
【0048】
図4に示すように、ストレスチェック結果記憶部23は、ストレスチェック結果レコード23aを記憶している。ストレスチェック結果レコード23aは、従業員コードに関連付けられている。ストレスチェック結果レコード23aは、各従業員のストレスチェックに関する項目のデータである項目データを含む。ストレスチェック結果レコード23aは、仕事の負担判定、職場環境判定、仕事の質的負担、身体的負担、職場での対人関係、職場環境、抑うつ感、仕事満足度などの結果を含む。また、ストレスチェック結果レコード23aは、5段階や2段階の総合評価を含む。総合評価は、ストレスチェック結果レコード23aに含まれる各結果に基づいて、心身のストレス反応や、仕事のストレス要因などの合計点を計算し、高ストレス者か否か、メンタル不調者か否か、メンタル休職者か否かの判定結果である。また、ストレスチェック結果レコード23aは、ストレス値の結果を含む。ストレス値は、特許文献2に記載の公知の算出方法を用いて算出される。ストレスチェックに関する項目データは、ストレスチェックを実施した産業医などによって入力される。
【0049】
(算出処理)
次に、
図5から
図9を参照して、労働生産性損失コスト算出システムによる、アブセンティーイズム損失コスト、およびプレゼンティーイズム損失コストの算出と、画面、またはファイルへの結果の出力とを含む一連の手順を説明する。
【0050】
労務管理担当者は、利用者端末1を操作して、労働生産性損失コストの算出指示を管理サーバ10に送信する。算出指示を受信した管理サーバ10は、労働生産性損失コスト算出部において、労働生産性損失コストを算出する。
【0051】
(規格値算出処理)
図5に示すように、規格値算出部41は、労働生産性コストを算出する前に、健診数値の算出処理に使用する規格値を算出する。規格値は、健診数値を算出するための規格化係数であって、健診項目の検査値が取り得る上限値と下限値との差を「50」と見なすための係数である。
【0052】
ステップS11では、規格値算出部41は、各健診項目について規格値の算出処理を開始する。ステップS12では、規格値算出部41は、指定された健診項目の判定基準テーブル301を参照し、指定された健診項目の検査値が取り得る下限値を取得する。指定された健診項目の検査値が取り得る下限値は、指定された健診項目の判定基準テーブル301において、早急に治療を要することに相当する数値である。例えば、指定された健診項目が収縮期血圧である場合、規格値算出部41は、
図7に示される収縮期血圧判定基準テーブル301a1を参照し、D判定の欄に記載された値である160を取得する。
【0053】
ステップS13では、規格値算出部41は、指定された健診項目の判定基準テーブル301を参照し、指定された健診項目の検査値が取り得る上限値を取得する。指定された健診項目の検査値が取り得る上限値は、指定された健診項目の判定基準テーブル301において、異常がないことに相当する数値である。例えば、指定された健診項目が収縮期血圧である場合、規格値算出部41は、
図7に示される収縮期血圧判定基準テーブル301a1を参照し、A判定の欄に記載された値である129を取得する。
【0054】
ステップS14では、規格値算出部41は、指定された健診項目の規格値を算出する。規格値の算出例として、ステップS12、およびステップS13で取得した値を用い、下記式7によって規格値を算出する。
【0055】
規格値=(下限値-上限値)/50・・・(式7)
ここで、「50」は、100点を満点としたときの中間の値として用いている。例えば、式7によって算出される収縮期血圧の規格値は、次のように算出される。
【0056】
(160-129)/50=0.62
ステップS15では、規格値算出部41は、算出された規格値を、当該規格値に対応する健診項目の収縮期血圧判定基準テーブル301b1に記憶する。ステップS16では、規格値の算出処理が終了していない健診項目が残っている場合に、規格値算出部41は、ステップS11に移行して、次の健診項目について規格値の算出処理を開始する。
【0057】
例えば、次に指定された健診項目が拡張期血圧である場合、規格値算出部41は、
図7に示す拡張期血圧判定基準テーブル301a2を用い、D判定の欄に記載された値である100を、健診数値の下限値として取得する(ステップS12)。そして、規格値算出部41は、A判定の欄に記載された値である84を、健診数値の上限値として取得する(ステップS13)。次いで、規格値算出部41は、拡張期血圧の基準値を次のように算出する(ステップS14)。
【0058】
(100-84)/50=0.32
規格値算出部41は、算出した基準値を拡張期血圧判定基準テーブル301b2の基準値項目に記憶する(ステップS15)。そして、全ての健診項目について規格値の算出処理が終了した場合に、規格値算出部41は、規格値の算出処理を終了する。
【0059】
(健診数値算出処理)
図6に示すように、健診数値算出部42は、労働生産性損失コストの算出対象となる全ての従業員を対象として、全ての対象健診項目の健診数値を算出する。ここで、対象健診項目は、腹囲、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪、空腹時血糖、HbA1c、尿酸、GOT、GPT、およびγ-GTPである。
【0060】
ステップS21において、健診数値算出部42は、従業員ごとに健診数値の算出処理を開始する。ステップS22において、健診数値算出部42は、各従業員について健診項目ごとに健診数値の算出処理を開始する。
【0061】
ステップS23では、健診数値算出部42は、健診項目ごとの判定基準テーブル301を参照し、先に算出された対象健診項目の規格値を取得する。例えば、対象健診項目が収縮期血圧である場合、健診数値算出部42は、収縮期血圧判定基準テーブル301b1の規格値を参照し、収縮期血圧の規格値として0.62を取得する。
【0062】
ステップS24では、健診数値算出部42は、健診項目ごとの判定基準テーブル301を参照し、対象健診項目のB判定とC判定の境界値を取得する。例えば、対象健診項目が収縮期血圧である場合、健診数値算出部42は、収縮期血圧判定基準テーブル301b1を用い、B判定とC判定の境界値である139を取得する。
【0063】
ステップS25では、健診数値算出部42は、健康診断結果記憶部22から、算出対象者に該当する従業員の対象健診項目の検査値を取得し、下記式8によって健診数値を算出する。
【0064】
健診数値=100+(B判定とC判定の境界値-検査値)/規格値・・・(式8)
すなわち、健診数値は、B判定とC判定との境界値から検査値が離れている大きさを、下限値と上限値との差を50と見なして示す数値である。健診数値は、100よりも値が大きいほど良好であることを示し、100よりも値が小さいほど良好でないことを示す。
【0065】
例えば、健診項目が収縮期血圧であって、健康診断での検査値が160である場合、上記式8を用いて、健診数値として次の値が算出される(小数点第2位で四捨五入)。
100+(139-160)/0.62=66.13
ステップS26では、健診数値算出部42は、算出された健診数値を健康診断結果記憶部22に記憶する。ステップS27では、健診数値算出部42は、各健診項目の健診数値算出処理を終了する。各従業員について、健診数値の算出処理が終了していない健診項目が残っている場合、健診数値算出部42は、ステップS22に移行して、次の健診項目における健診数値の算出処理を開始する。
【0066】
例えば、次に指定された健診項目が拡張期血圧である場合、健診数値算出部42は、拡張期血圧判定基準テーブル301b2を参照し、拡張期血圧の規格値として0.32の値を取得する(ステップS23)。続いて、健診数値算出部42は、拡張期血圧判定基準テーブル301b2を参照し、拡張期血圧についてのB判定とC判定の境界値として89の値を取得する(ステップS24)。健診数値算出部42は、拡張期血圧の検査値が95であるたとき、拡張期血圧の健診数値を次のように算出する(小数点第2位で四捨五入)(ステップS25)。
【0067】
100+(89-95)/0.32=84.38
健診数値算出部42は、算出した健診数値を健康診断結果記憶部22に記憶する(ステップS26)。また、ステップS27において、各従業員において全ての健診項目に対する健診数値の算出処理が終了した場合、健診数値算出部42は、各従業員における健診数値の算出処理を終了する。健診数値の算出処理が終了していない従業員が残っている場合、健診数値算出部42は、ステップS21に移行して、次の従業員について健診数値の算出処理を開始する。
【0068】
労働生産性損失コストの算出対象となる全ての従業員について健診数値の算出処理が終了した場合、健診数値算出部42は健診数値の算出処理を終了する。
(ストレス損失コスト算出処理)
図8に示すように、ストレス損失コスト算出部43は、労働生産性損失コストの算出対象となる全ての従業員のストレス値からストレス損失コストを算出する。ステップS301では、ストレス損失コスト算出部43は、設定データ記憶部300からストレス境界上限値306を取得する。ステップS302では、ストレス損失コスト算出部43は、従業員ごとのストレス損失コストの算出処理を開始する。
【0069】
ステップS303では、ストレス損失コスト算出部43は、ストレスチェック結果記憶部23から従業員のストレス値を取り出す。ステップS304では、ストレス損失コスト算出部43は、従業員のストレス値がストレス境界上限値306を超えているか否かを判断する。
【0070】
従業員のストレス値がストレス境界上限値306を超えている場合(ステップS304でYES)、ステップS306では、プログラム変数の高ストレス該当者数に1を加える。すなわち、ストレス境界上限値306を超えるストレス値を有した従業員を高ストレス該当者としたとき、社内における高ストレス該当者の人数が高ストレス該当者数である。
【0071】
ステップS307では、ストレス値の判定が終了した従業員が残っている場合、ストレス損失コスト算出部43は、ステップS302に移行して、残りの従業員についてストレス値の判定を行う。労働生産性損失コストの算出対象となる全ての従業員についてストレス値の判定を終了した場合、ストレス損失コスト算出部43はステップS308に移行する。
【0072】
ステップS308では、ストレス損失コスト算出部43は、設定データ記憶部300から個人平均月額単価303を取得する。ステップS309では、ストレス損失コスト算出部43は、設定データ記憶部300から労働生産性損失コスト算出月数307を取得する。ステップS310では、ストレス損失コスト算出部43は、設定データ記憶部300からストレス損失率304を取得する。ステップS311では、ストレス損失コスト算出部43は、下式3を用いて、ストレス損失コストを算出する。
【0073】
ストレス損失コスト=高ストレス該当者数×労働生産性損失コスト算出月数×個人平均月額単価×ストレス損失率・・・(式3)
(生活習慣病損失コスト算出処理)
図9に示すように、生活習慣病損失コスト算出部44は、労働生産性損失コストの算出対象となる全ての従業員に対して、健診結果として提供されるメタボリックシンドローム判定、および生活習慣病判定を行い、生活習慣病損失コストを算出する。
【0074】
ステップS401からS412では、生活習慣病損失コスト算出部44は、従業員ごとの生活習慣病判定項目、具体的にはメタボリックシンドローム判定結果、糖尿病判定結果、高血圧判定結果、高尿酸血症判定結果、脂質異常症判定結果、肝機能障害判定結果に基づき、各従業員が生活習慣病該当者か否かの判定を行い、会社全体の生活習慣病損失コストを算出する。
【0075】
ステップS401では、生活習慣病該当者数を0に設定する。ステップS402では、各従業員について生活習慣病該当者か否かの判定を開始する。ステップS403では、一人の従業員に対して複数の前記生活習慣病判定項目がそれぞれC~E判定に該当するか否かの判定を行う。
【0076】
ステップS404では、健康診断結果記憶部22から、生活習慣病判定項目、具体的にはメタボリックシンドローム判定結果、糖尿病判定結果、高血圧判定結果、高尿酸血症判定結果、脂質異常症判定結果、及び肝機能障害判定結果を順次取得する。
【0077】
ステップS405では、生活習慣病判定項目の判定結果が「C」から「E」であるか否かを判定する。従業員のメタボリックシンドローム判定結果、糖尿病判定結果、高血圧判定結果、高尿酸血症判定結果、脂質異常症判定結果、または肝機能障害判定結果が、C判定、D判定、またはE判定である場合(ステップS405でYES)、ステップS407に移行する。また、従業員のメタボリックシンドローム判定結果、糖尿病判定結果、高血圧判定結果、高尿酸血症判定結果、脂質異常症判定結果、または肝機能障害判定結果が、C判定、D判定、またはE判定でない場合(ステップS405でNO)、ステップS406に移行する。
【0078】
ステップS407では、生活習慣病該当者数に1を加える。すなわち、生活習慣病判定が「C」から「E」である生活習慣病を有する従業員を生活習慣病該当者としたとき、社内における生活習慣病該当者の人数が生活習慣病該当者数である。その後、生活習慣病損失コスト算出部44はステップS408に移行する。
【0079】
ステップS406では、判定結果のチェックを行っていない生活習慣病判定項目が残っている場合、生活習慣病損失コスト算出部44はステップS403に移行して、残りの生活習慣病判定項目についてチェックを開始する。全ての生活習慣病判定項目についてチェックが終了した場合、生活習慣病損失コスト算出部44はステップS408に移行する。
【0080】
ステップS408では、生活習慣病該当者か否かの判定が終了していない従業員が残っている場合、生活習慣病損失コスト算出部44はステップS402に移行して、残りの従業員について生活習慣病該当者か否かの判定を開始する。労働生産性損失コストの算出対象となる全ての従業員について生活習慣病該当者か否かの判定が終了した場合、生活習慣病損失コスト算出部44は、ステップS409に移行する。
【0081】
ステップS409では、設定データ記憶部300から個人平均月額単価303を取得する。ステップS410では、設定データ記憶部300から労働生産性損失コスト算出月数307を取得する。ステップS411では、設定データ記憶部300から生活習慣病損失率305を取得する。ステップS412では、下記式4を用いて、生活習慣病損失コストを算出する。
【0082】
生活習慣病損失コスト=生活習慣病該当者数×個人平均月額単価×労働生産性損失コスト算出月数×生活習慣病損失率・・・(式4)
(アブセンティーイズム損失コスト算出処理)
図10に示すように、アブセンティーイズム損失コスト算出部45は、アブセンティーイズム損失コストを算出する。ステップS51からステップS58は、労働生産性損失コストの算出対象となる全ての従業員に対して実施する。
【0083】
ステップS51では、設定データ記憶部300から対象とする休暇理由308を取得する。ステップS52では、アブセンティーイズム損失コスト算出部45は、労働生産性損失コストの算出の対象とする期間における、各従業員の休暇日数の算出処理を開始する。ステップS53では、就業情報記憶部21を参照し、当該従業員における、欠勤日数を取得する。ステップS54では、就業情報記憶部21を参照し、当該従業員における、対象とする休暇理由308に該当する休暇理由による有給休暇取得日数を取得する。ステップS55ではステップS53で取得した欠勤日数、およびステップS54で取得した有給休暇取得日数を、プログラム変数の会社合計対象休暇日数に加算する。
【0084】
ステップS56では、休暇日数の算出処理が終了していない従業員が残っている場合、アブセンティーイズム損失コスト算出部45は、ステップS52に移行して、次の従業員について休暇日数の算出処理を開始する。労働生産性損失コストの算出対象となる全ての従業員について休暇日数の算出処理が終了した場合、アブセンティーイズム損失コスト算出部45はステップS57に移行する。
【0085】
ステップS57では、設定データ記憶部300から個人平均日額単価302を取得する。ステップS58では、次の式を用いてアブセンティーイズム損失コストを算出する。
アブセンティーイズム損失コスト=会社合計対象休暇日数×個人平均日額単価
最後に、労働生産性損失コスト算出部40は、下記式1および式2を用いて、労働生産性損失コストを算出する。この際、就業情報レコード21aを参照して、算出期間における全従業員の残業時間を取得し、また、個人平均日額単価302から個人平均時間単価を算出して、残業時間損失コストを算出する。
【0086】
プレゼンティーイズム損失コスト=生活習慣病損失コスト+ストレス損失コスト・・・(式1)
労働生産性損失コスト=アブセンティーイズム損失コスト+プレゼンティーイズム損失コスト+残業時間損失コスト・・・(式2)
管理サーバ10は、算出した労働生産性損失コストを含むデータを、画面出力部51からネットワーク2を介して利用者端末1に出力する。労働生産性損失コストを含むデータは、例えば、1年ごとの労働生産性損失コストの履歴を記憶した表形式、または、1年ごとの労働生産性損失コストの変化をグラフ形式で表現したデータである。利用者端末1は画面出力部51から出力された労働生産性損失コストを含むデータを、利用者端末1が備える出力部によって出力する。例えば、利用者端末1は、表形式、またはグラフ形式のデータをディスプレイに表示することで労働生産性損失コストを出力する。
【0087】
また、管理サーバ10は、算出した労働生産性損失コストを含むデータを、帳票出力部52からネットワーク2を介して図示しないプリンタに出力する。プリンタは出力された労働生産性損失コストを含むデータを印刷して、帳票として出力する。
【0088】
以上、上述した実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)労働生産性損失コスト算出システムは、健康診断結果記憶部22に記憶される健診結果レコード22aの項目データと、ストレスチェック結果記憶部23に記憶されるストレスチェック結果レコード23aの項目データとからプレゼンティーイズム損失コストを算出する。そのため、疾患や症状を抱えながら出勤しているか否かなどのアンケートの回答に含まれる従業員の不確かな記憶や、個人の判断基準に依存した曖昧な評価などに誤差が含まれるとしても、こうした誤差による影響は、健診結果などの正確なデータの加味によって軽減される。結果として、労働生産性損失コストの算出精度を高めることができる。
【0089】
(2)労働生産性損失コスト算出システムが上記式1および式2を用いて労働生産性損失コストを算出するため、従業員の身体面の不調を原因とする労働生産性の低下に加えて、精神面の不調を原因とする労働生産性の低下を考慮して労働生産性損失コストを算出することができる。
【0090】
(3)労働生産性損失コスト算出システムが上記式3を用いてストレス損失コストを算出するため、高ストレス該当者数に応じたストレス損失コストを算出することができる。
(4)労働生産性損失コスト算出システムが上記式4を用いて生活習慣病損失コストを算出するため、生活習慣病該当者数に応じた生活習慣病損失コストを算出することができる。
【0091】
(5)労働生産性損失コスト算出システムが上記式5を用いてアブセンティーイズム損失コストを算出するため、アブセンティーイズム損失コストを算出するために追加のアンケートを行うことなく労働生産性損失コストを算出することができる。
【0092】
(第2の実施形態)
続いて、
図11から
図14を参照して、労働生産性損失コスト算出システム、労働生産性損失コスト算出プログラム、および労働生産性損失コスト算出方法の第2の実施形態を説明する。第2の実施形態の労働生産性損失コスト算出システムは、第1の実施形態と比べて、業務遂行能率のアンケート結果を記憶している点が異なる。
【0093】
図11に示すように、設定データ記憶部300はアンケートによる業務遂行能率309をさらに記憶する。また、労働生産性損失コスト算出部40は、アンケートによる業務遂行能率算出部47をさらに備える。
【0094】
図12(a)に示すように、アンケートによる各従業員の業務遂行能率309は、産業医または保健師によるアンケート質問に対して各従業員が回答した業務遂行能率データを、従業員コード及び回答日に関連付けて保存している。業務遂行能率は、何らかの疾患や症状が生じる前の業務遂行能力や生産性を100パーセントとし、これと比較し、定められた期間の業務遂行能力、生産性の効率を各従業員が回答したものになる。また、アンケートによる業務遂行能率309は、各従業員が回答した業務遂行能率データに加え、高ストレス判定結果及び生活習慣病該当項目数を合わせて保存する。生活習慣病該当項目数は、各従業員において、生活習慣病判定項目のうちC~E判定に該当した生活習慣病判定項目の数である。
【0095】
上述した第1の実施形態においては、ストレス損失率と生活習慣病損失率をシステム固定、又は利用者が利用者端末1から設定した。一方、第2の実施形態においては、ストレス損失率と生活習慣病損失率は、産業医又は保健師による面接指導又は保健指導時における従業員へのアンケート結果から算出し、ストレス損失コスト及び生活習慣病損失コストを算出する際に使用する。
【0096】
当該アンケートは、産業医又は保健師が、面接指導又は保健指導時に従業員に対して実施し、アンケート結果は管理サーバ10の提供するアンケート結果入力画面を介して利用者端末1から入力され、各従業員の従業員コードに関連付けてアンケートによる業務遂行能率309に格納される。
【0097】
また、当該アンケートは、
図13の(a)、(b)、又は(c)といった設問を内容とする。例えば、
図13(a)では、病気やけががないときに発揮できる仕事の出来を100%とし、面接指導又は保健指導時における過去4週間の仕事の出来具合を0%、20%、40%、60%、80%、100%の6つの区分から選択させる。
【0098】
また、例えば
図13(b)は、東大1項目版プレゼンティーイズムアンケートと呼ばれる形式であり、
図13(a)とほぼ同じ内容の設問が対象者に与えられる。
図13(a)との違いは、業務遂行能率を1~100%の間で自己評価してもらうことであり、これを用いても構わない。
【0099】
さらに、例えば
図13(c)は、WHO HPQ Short Form(「世界保健機関(WHO)健康と仕事のパフォーマンスに関する調査票」短縮版)と呼ばれるものの設問B10とB11であり、これをアンケートとして用いても構わない。このときの個人の業務遂行能率は
図13の(c)の設問1と設問2の比率を採用することができる。
【0100】
図14に示すように、アンケートによる業務遂行能率算出部47は、アンケートによる業務遂行能率309を取得し、アンケートによる業務遂行能率309から、ストレス損失率と生活習慣病損失率とに適用する同一の値としてプレゼンティーイズム損失率を算出する。ステップS61からステップS66は、指定された期間に回答されたアンケート結果全てに対して実施する。
【0101】
ステップS61からS66では、アンケートによる業務遂行能率算出部47は、指定された期間に回答されたアンケート結果に基づき、プレゼンティーイズム損失率を算出する。
【0102】
ステップS61では、業務遂行能率累積値、及びアンケート回答数を0に設定する。ステップS62では、指定された期間に回答されたアンケート結果の業務遂行能率の集計を開始する。ステップS63では、業務遂行能率累積値に、取得したアンケート結果から得られる業務遂行能率の値を加える。ステップS64では、アンケート回答数に1を加える。
【0103】
ステップS65では、指定された期間に回答されたアンケート結果のうち、業務遂行能率の加算が終了していないアンケート結果が残っている場合、アンケートによる業務遂行能率算出部47はステップS62に移行して、アンケート結果の集計を継続する。アンケート結果の集計が終了した場合、アンケートによる業務遂行能率算出部47は、ステップS66に移行する。
【0104】
ステップS66では、100%から、業務遂行能率累積値をアンケート回答数で割った数値を差し引いたものとして、プレゼンティーイズム損失率を算出する。すなわち、プレゼンティーイズム損失率は、以下の式8で表される。
プレゼンティーイズム損失率=100%-業務遂行能率累積値/アンケート回答数・・・(式8)
労働生産性損失コスト算出部40は、ここで得られたプレゼンティーイズム損失率をストレス損失率304、及び生活習慣病損失率305に格納する。労働生産性損失コスト算出部40は、格納されたストレス損失率304、および生活習慣病損失率305を用いて、労働生産性損失コストを算出する。
【0105】
(第3の実施形態)
続いて、
図11~
図13、および
図15を参照して、第2の実施形態の変更例である第3の実施形態について説明する。第3の実施形態の労働生産性損失コスト算出システムは、第2の実施形態と比較して、労働生産性損失コスト算出部40がプレゼンティーイズム損失コスト算出部48を備えることが異なる。また、アンケートに回答した従業員のストレス値、及び生活習慣病判定項目の結果によりアンケート結果の業務遂行能率を分類し、それを基に、プレゼンティーイズム損失コスト算出部48が従業員のストレス値、及び生活習慣病判定項目の結果に応じた労働生産性損失コストを算出することが異なる。
【0106】
図12(b)に示すように、アンケートによる業務遂行能率309は、高ストレス判定の結果と生活習慣病該当項目数との組み合わせごとに、業務遂行能率の平均値およびプレゼンティーイズム損失率を関連付けた組合せ表をさらに含む。
【0107】
高ストレス判定の結果と生活習慣病該当項目数との組み合わせに関連付けられた業務遂行能率の平均値は、
図12(a)に示すアンケート結果のうち、高ストレス判定の結果と生活習慣病該当項目数とが合致するアンケート結果を抽出したときの、抽出されたアンケート結果における業務遂行能率の平均値である。また、高ストレス判定の結果と生活習慣病該当項目数との組み合わせに関連付けられたプレゼンティーイズム損失率は、100%から業務遂行能率の平均値を差し引いた数値である。
【0108】
プレゼンティーイズム損失コスト算出部48は、この組合せ表を基にプレゼンティーイズム損失コストを算出する。この場合のプレゼンティーイズム損失コストは前記式(8)ではなく、
図15に示す処理で算出される。
【0109】
プレゼンティーイズム損失コスト算出部48は、ステップS701~S717により、会社全体のプレゼンティーイズム損失コストを算出する。
ステップS701では、会社全体のプレゼンティーイズム損失コストを0に設定する。ステップS702では、設定データ記憶部300から個人平均月額単価303を取得する。ステップS703では、設定データ記憶部300から労働生産性損失コスト算出月数307を取得する。
【0110】
ステップS704では、従業員ごとのプレゼンティーイズム損失コスト、及び会社全体のプレゼンティーイズム損失コストの算出処理を開始する。ステップS705では、生活習慣病該当項目数を0に設定する。ステップS706では、一人の従業員に対して前記生活習慣病判定結果が特定の判定結果に該当するか否かの判定を行う。
【0111】
ステップS707では、健康診断結果記憶部22から、生活習慣病判定項目、具体的にはメタボリックシンドローム判定結果、糖尿病判定結果、高血圧判定結果、高尿酸血症判定結果、脂質異常症判定結果、及び肝機能障害判定結果を順次取得する。ステップS708では、生活習慣病判定項目の値が「C」から「E」であるか否かを判定する。従業員のメタボリックシンドローム判定結果、糖尿病判定結果、高血圧判定結果、高尿酸血症判定結果、脂質異常症判定結果、または肝機能障害判定結果が、C判定、D判定、またはE判定である場合、ステップS709に移行する。
【0112】
ステップS709では、生活習慣病該当項目数に1を加える。ステップS710では、生活習慣病判定結果のチェックを行っていない生活習慣病判定項目が残っている場合、ステップS706に移行して、残りの生活習慣病判定項目についてチェックを開始する。全ての生活習慣病判定項目についてチェックが終了した場合、ステップS711に移行する。
【0113】
ステップS711では、ストレスチェック結果記憶部23から従業員のストレス値を取り出す。ステップS712では、従業員のストレス値がストレス境界上限値306を超えているか否かを判断する。
【0114】
従業員のストレス値がストレス境界上限値306を超えている場合(ステップS712でYES)、ステップS713に移行する。ステップS713では、従業員の高ストレス判定の結果を「はい」として、ステップS715に移行する。一方、従業員のストレス値がストレス境界上限値306以下の場合(ステップS712でNO)、ステップS714に移行する。ステップS714では、従業員の高ストレス判定の結果を「いいえ」として、ステップS715に移行する。
【0115】
ステップS715では、
図12(b)のテーブルから、高ストレス判定の結果と、前記生活習慣病該当項目数とが合致する行のプレゼンティーイズム損失率を取得する。ステップS716では、下記式9を用いて、個人プレゼンティーイズム損失コストを算出する。
【0116】
個人プレゼンティーイズム損失コスト=プレゼンティーイズム損失率×労働生産性損失コスト算出月数×個人平均月額単価・・・(式9)
ステップS716では、前記個人プレゼンティーイズム損失コストを会社全体のプレゼンティーイズム損失コストに加算する。つまり、会社全体のプレゼンティーイズム損失コストは全従業員の個人プレゼンティーイズム損失コストの総計になる。
【0117】
ステップS717では、個人のプレゼンティーイズム損失コスト算出が終了していない従業員が残っている場合、ステップS704に移行して、残りの従業員について個人のプレゼンティーイズム損失コスト算出を開始する。労働生産性損失コストの算出対象となる全ての従業員について個人のプレゼンティーイズム損失コスト算出が終了した場合、プレゼンティーイズム損失コスト算出部48は処理を終了する。
【0118】
(第4の実施形態)
続いて、
図16~
図19を参照して、第3の実施形態の変更例である第4の実施形態について説明する。第4の実施形態の労働生産性損失コスト算出システムは、
図11を用いて説明したストレス損失率304、ストレス損失コスト算出部43、生活習慣病損失率305、及び生活習慣病損失コスト算出部44を用いず、ストレス損失と生活習慣病損失とを同類のものとして取り扱う。そして、第4の実施形態の労働生産性損失コスト算出システムでは、ストレス損失と生活習慣病損失とが同類のものであることを基にプレゼンティーイズム損失コスト算出部48がプレゼンティーイズム損失コストを算出する。
【0119】
なお、設定データ記憶部300は、ストレス損失率304および生活習慣病損失率305を記憶していてもよく、記憶していなくともよい。また、労働生産性損失コスト算出部40は、ストレス損失コスト算出部43および生活習慣病損失コスト算出部44を備えていてもよく、備えていなくともよい。
【0120】
図17に示すように、設定データ記憶部300は、プレゼンティーイズム損失率定義表310を記憶する。プレゼンティーイズム損失率定義表310は、プレゼンティーイズム判定項目のうち基準に該当した項目の数であるプレゼンティーイズム損失該当項目数と、プレゼンティーイズム損失率と、を関連付けた組み合せ表である。
【0121】
プレゼンティーイズム判定項目は、プレゼンティーイズム損失コストを発生させているか否かを社員ごとに判定するための項目であり、例えば、メタボリックシンドロームの判定結果、各生活習慣病の判定結果、および高ストレス判定結果である。メタボリックシンドロームの判定結果と各生活習慣病の判定結果とは、判定結果がC~Eであることを基準として、当該基準に合致したとき、プレゼンティーイズム損失該当項目数としてカウントされる。高ストレス判定結果は、ストレス値がストレス上限境界値を超えていることを基準として、当該基準に合致したとき、プレゼンティーイズム損失該当項目数としてカウントされる。
【0122】
プレゼンティーイズム損失率定義表310は、プレゼンティーイズム損失率として、会社が予め設定したプレゼンティーイズム損失率を記憶してもよいし、
図13,14に示すアンケートを使った手順で算出されたプレゼンティーイズム損失率を記憶してもよい。
【0123】
アンケートによるプレゼンティーイズム損失率が用いられる形態では、
図12(b)の「高ストレス判定」が「はい」の場合に、「生活習慣病該当項目数」に1が加えられ、「いいえ」の場合に、「生活習慣病該当項目数」に1は加えられない。例えば、
図12(b)で「高ストレス判定」が「はい」、かつ、「生活習慣病該当項目数」が「2」場合のプレゼンティーイズム損失率が15%と定められている。この「15%」は、
図18(a)においてプレゼンティーイズム損失該当項目数が「3(=2+1)」であるときのプレゼンティーイズム損失率として用いられる。
【0124】
プレゼンティーイズム損失コスト算出部48は、全従業員を対象に、健康診断結果記憶部22、及びストレスチェック結果記憶部23のデータから、各従業員のプレゼンティーイズム損失判定項目のうちから、基準に該当したプレゼンティーイズム損失該当項目数をチェックする。
【0125】
例えば、
図18(a)に示すように、各従業員のプレゼンティーイズム損失判定項目の内訳が一例として構成されている。健康診断結果記憶部22、及びストレスチェック結果記憶部23からの社員コード「0010001」のデータ検索結果は、メタボリックシンドローム判定結果がA、高血圧判定結果がB、脂質異常症判定結果がC、糖尿病判定結果がA、肝機能障害判定結果がD、高尿酸血症判定結果がE、ストレス判定結果が「いいえ」であるため、社員コード「0010001」の従業員のプレゼンティーイズム損失判定項目のうちプレゼンティーイズム損失該当項目数は3となる。
【0126】
プレゼンティーイズム損失コスト算出部48は、各プレゼンティーイズム損失該当項目数に対応する損失率を
図17の組合せ表から読み出す。そして、プレゼンティーイズム損失コスト算出部48は、各プレゼンティーイズム損失該当項目数に対する人数、当該プレゼンティーイズム損失該当項目数に対応する損失率、算出月数、および個人平均月額単価を用いて、従業員全体におけるプレゼンティーイズム損失コストを算出する。
【0127】
この場合のプレゼンティーイズム損失コストは、式1、式3、及び式4ではなく、次の式10を使用する。
・・・(式10)
プレゼンティーイズム損失該当項目数の最小値は0であり、最大値はプレゼンティーイズム判定項目数と同じである。本実施形態においてはプレゼンティーイズム損失判定数が0の従業員のプレゼンティーイズム損失コストは0であるため除外し、プレゼンティーイズム損失判定項目数1~7の該当人数でプレゼンティーイズム損失コストを算出する。
【0128】
式10を用いた算出について
図19を参照して説明する。プレゼンティーイズム損失コスト算出部48は、
図19のステップS801~S817により、会社全体のプレゼンティーイズム損失コストを算出する。
【0129】
ステップS801では、プレゼンティーイズム損失該当項目数が0~7に該当する人数をそれぞれ0に初期化設定する。ステップS802では、全従業員のプレゼンティーイズム損失該当項目数を決定させる処理を開始する。ステップS803では、プレゼンティーイズム損失該当項目数を0に設定する。ステップS804では、一人の従業員に対する、プレゼンティーイズム損失該当項目数の算出処理を開始する。
【0130】
ステップS805では、健康診断結果記憶部22、及びストレスチェック結果記憶部23のデータから、一人の従業員のプレゼンティーイズム損失判定項目の判定結果の一つを取得する。
【0131】
ステップS806では、取得したプレゼンティーイズム損失判定項目の判定結果が基準に該当するかどうかの判定を行う。健康診断結果記憶部22から取得した、メタボリンクシンドローム判定結果、および各生活習慣病判定結果については、判定結果がC~Eであることを基準とする。ストレスチェック結果記憶部23から取得した高ストレス判定の結果については、ストレス値がストレス上限境界値を超えていることを基準とする。プレゼンティーイズム損失判定項目が基準に合致した場合(ステップS806で「はい」の場合)、ステップS807に移行する。プレゼンティーイズム損失判定項目が基準に合致しなかった場合(ステップS806で「いいえ」の場合)は、ステップS808に移行する。
【0132】
ステップS807では、従業員のプレゼンティーイズム損失該当項目数に1を加える。そして、ステップS808に移行する。ステップS808では、判定すべきプレゼンティーイズム判定項目が残っていればステップS804に移行する、残っていなければステップS809に移行する。
【0133】
ステップS809では、プレゼンティーイズム損失該当項目数に該当する人数を1増やす。例えば社員コード0010001の場合、プレゼンティーイズム損失該当項目数が3であるため、プレゼンティーイズム損失該当項目数が3に該当する人数を1増やす。
【0134】
ステップS810では、個人のプレゼンティーイズム損失該当項目数の決定が終了していない従業員が残っている場合、ステップS802に移行して、残りの従業員について個人のプレゼンティーイズム損失該当項目数を決定する処理を開始する。労働生産性損失コストの算出対象となる全ての従業員について個人のプレゼンティーイズム損失該当項目数の決定が終了した場合、ステップS811に移行する。このとき、
図18(b)に示すように、各プレゼンティーイズム損失該当項目数に対する人数を示すデータが作成されて、労働生産性損失コストの算出に用いられてもよい。
【0135】
ステップS811では、設定データ記憶部300から個人平均月額単価303を取得する。ステップS812では、設定データ記憶部300から労働生産性損失コスト算出月数307を取得する。
【0136】
ステップS813では、プレゼンティーイズム損失判定項目のうちのプレゼンティーイズム損失該当項目数ごとにプレゼンティーイズム損失コストを算出する。つまり、プレゼンティーイズム損失該当項目数が1である従業員のプレゼンティーイズム損失コストを算出することから開始し、次にプレゼンティーイズム損失該当項目数が2である従業員のプレゼンティーイズム損失コストを算出し、さらにプレゼンティーイズム損失該当項目数が3である従業員のプレゼンティーイズム損失コスト、と続け、最後にプレゼンティーイズム損失コストが7である従業員のプレゼンティーイズム損失コストを算出して終了となる。このプレゼンティーイズム損失該当項目数をiとする。
【0137】
ステップS814では、
図17のプレゼンティーイズム損失率の組み合わせ表からプレゼンティーイズム損失該当項目数iのプレゼンティーイズム損失率を取得する。例えばiが1の場合、プレゼンティーイズム損失該当項目数が1のプレゼンティーイズム損失率である10%が取得される。ステップS815では、次の式によりプレゼンティーイズム損失該当項目数iのプレゼンティーイズム損失コストを算出する。
【0138】
プレゼンティーイズム損失該当項目数iのプレゼンティーイズム損失コスト
=プレゼンティーイズム損失該当項目数iのプレゼンティーイズム損失率×プレゼンティーイズム損失該当項目数iに該当する人数×算出月数×個人平均月額単価・・・(式11)
ステップS816では、iを1増やす。ステップS817では、プレゼンティーイズム損失コストを算出する次のプレゼンティーイズム損失該当項目数が残っている場合、つまりiが7以下の場合、ステップS813に移行する。一方、プレゼンティーイズム損失コストを算出する次のプレゼンティーイズム損失該当項目数が存在しない場合、つまりiが7より大きい場合、ステップS813~ステップS817の繰り返し処理を終了し、ステップS818に移行する。
【0139】
ステップS818では、前記ステップまでに算出したプレゼンティーイズム損失該当項目数ごとのプレゼンティーイズム損失コストを合計して、会社全体のプレゼンティーイズム損失コストを算出する。そして、プレゼンティーイズム損失コスト算出部48は処理を終了する。
【0140】
なお、上記実施形態は以下のように変更して実施することができる。
・上述した実施形態において、高ストレス判定結果は、各従業員のストレス値がストレス上限境界値を超えたかどうかによって判定した。一方、設定データ記憶部300は、ストレス上限境界値に代えて、ストレス値を段階的に評価する基準を記憶してもよい。このとき、高ストレス判定結果は、例えば、ストレス値を段階的に評価する基準によって、最もストレスが低いとされるA判定から最もストレスが高いとされるE判定までの5段階の判定が行われる。
【0141】
・上述した実施形態において、アブセンティーイズム損失コスト算出部45は、対象とする休暇理由308に合致する理由による欠勤日数と有給休暇取得日数とを取得した。アブセンティーイズム損失コスト算出部45は、アブセンティーイズム損失コストの算出に際して、前記欠勤日数と有給休暇取得日数に加え、休職日数や遅刻早退時間を取得してもよい。
【0142】
・上述した実施形態において、労働生産性損失コスト算出システムは、一つの会社内における全ての従業員を対象として労働生産性損失コストを算出した。一方、労働生産性損失コスト算出システムは、会社内における部署ごとに労働生産性損失コストを算出してもよい。また、複数の会社を対象として労働生産性損失コストを算出してもよい。
【0143】
・上述した実施形態において、労働生産性算出コスト算出システムは、会社内における従業員を対象として労働生産性損失コストを算出した。一方、労働生産性損失コスト算出システムは、非営利法人や公法人を含む法人、または個人事業主の集まりなど、労働に従事する者を構成員とする団体であれば、労働生産性損失コストを算出することができる。
【0144】
・上述した実施形態において、ストレス値がストレス上限境界値を超えた従業員の人数を用いてストレス損失コストを算出し、また、生活習慣病判定が「C」から「E」であった従業員の人数を用いて生活習慣病損失コストを算出した。一方、労働生産性損失コスト算出システムは、ストレスチェックの結果が不調であり、かつ、健康診断の結果が不調である従業員をプレゼンティーイズム損失コスト算出対象者として、プレゼンティーイズム損失コスト算出対象者数と会社が設定したプレゼンティーイズム損失率とに基づいてプレゼンティーイズム損失コストを算出してもよい。
【0145】
・ストレスチェックの結果が不調であるか否かの判定は、従業員のストレス値がストレス上限境界値を超えたか否かにより行い、健康診断の結果が不調であるか否かの判定は、C~E判定を受けた生活習慣病があるか否かによって行う。上述した構成によれば、日本人間ドック学会が定めた基準に基づいてプレゼンティーイズム算出対象者を抽出し、プレゼンティーイズム損失コストを算出することができる。
【0146】
・また、ストレスチェックの結果が不調であるか否かの判定は、従業員のストレス値がストレス値の全国平均値を超えたか否かによって行い、健康診断の結果が不調であるか否かの判定は、従業員の健診数値の合計値が全国平均値を超えたか否かによって行ってもよい。上述した構成によれば、国内の就労環境の変化に応じてプレゼンティーイズム算出対象者を抽出し、プレゼンティーイズム損失コストを算出することができる。
【0147】
・ストレス値が社内における全ての従業員のストレス値の平均値を超えたか否かによって行い、健康診断の結果が不調であるか否かの判定は、従業員の健診数値の合計値が社内における全ての従業員の健診数値の合計値の平均値を超えたか否かによって行ってもよい。上述した構成によれば、業界や業種ごとの就労環境の差に応じて、プレゼンティーイズム算出対象者を適切に抽出し、プレゼンティーイズム損失コストを算出することができる。
【符号の説明】
【0148】
1…利用者端末
2…ネットワーク
10…管理サーバ
20…データベース
21…就業情報記憶部
22…健康診断結果記憶部
23…ストレスチェック結果記憶部
300…設定データ記憶部
301…判定基準テーブル
302…個人平均日額単価
303…個人平均月額単価
304…ストレス損失率
305…生活習慣病損失率
306…ストレス境界上限値
307…労働生産性損失コスト算出月数
308…対象とする休暇理由
40…労働生産性損失コスト算出部
41…規格値算出部
42…健診数値算出部
43…ストレス損失コスト算出部
44…生活習慣病損失コスト算出部
45…アブセンティーイズム損失コスト算出部
50…サーバ側出力部
51…画面出力部
52…帳票出力部