IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 石田 昌樹の特許一覧

<>
  • 特許-弦楽器および弦楽器用振動板 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】弦楽器および弦楽器用振動板
(51)【国際特許分類】
   G10H 3/18 20060101AFI20230905BHJP
   G10D 1/08 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
G10H3/18 C
G10H3/18 E
G10D1/08 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023064711
(22)【出願日】2023-04-12
【審査請求日】2023-04-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304023411
【氏名又は名称】石田 昌樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093115
【弁理士】
【氏名又は名称】佐渡 昇
(72)【発明者】
【氏名】石田 昌樹
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-38323(JP,U)
【文献】実開昭53-26924(JP,U)
【文献】特開2014-137419(JP,A)
【文献】特開2014-137418(JP,A)
【文献】特開2000-214855(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0219093(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00,3/18
G10D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弦楽器本体(10)と、
この弦楽器本体(10)に張られた高透磁率素材からなる弦(20)と、
この弦(20)と弦楽器本体(10)との間において弦(20)に隣接して弦楽器本体(10)に設けられ、弦(20)の振動を電気信号に変換するピックアップ(30)と、
を備えた弦楽器であって、
前記ピックアップ(30)に対し前記弦(20)と反対側においてピックアップ(30)と接触することなくピックアップ(30)に隣接して弦楽器本体(10)に設けられ、弦楽器本体(10)と共に振動して該振動を前記ピックアップ(30)にて電気信号に変換させる高透磁率素材からなる振動板(40)を備えたことを特徴とする弦楽器。
【請求項2】
請求項1において、
前記振動板(40)は、振動伝達スペーサ(50)を介して弦楽器本体(10)に設けられていることを特徴とする弦楽器。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記弦楽器は弦楽器本体(10)としての木製のボディ(11)とネック(12)とを有するエレキギターであることを特徴とする弦楽器。
【請求項4】
弦楽器本体(10)と、
この弦楽器本体(10)に張られた高透磁率素材からなる弦(20)と、
この弦(20)と弦楽器本体(10)との間において弦(20)に隣接して弦楽器本体(10)に設けられ、弦(20)の振動を電気信号に変換するピックアップ(30)と、
を備えた弦楽器に取り付けられる振動板(40)であって、
前記ピックアップ(30)に対し前記弦(20)と反対側においてピックアップ(30)と接触することなくピックアップ(30)に隣接して弦楽器本体(10)に設けられ、弦楽器本体(10)と共に振動して該振動を前記ピックアップ(30)にて電気信号に変換させる高透磁率素材からなることを特徴とする弦楽器用振動板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弦楽器および弦楽器用振動板に関するものである。より詳しくは、例えばエレキギターにおいて、楽器本体であるボディ・ネックの振動を振動板に伝達し、既存の収音機(ピックアップ)で弦の音と振動板の音とを混合させて出力する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に見られるように、従来の弦楽器として、
弦楽器本体と、
この弦楽器本体に張られた高透磁率素材(例えば鉄)からなる弦と、
この弦と弦楽器本体との間において弦に隣接して弦楽器本体に設けられ、弦の振動を電気信号に変換するピックアップ(21)と、
を備えた弦楽器が知られている。
【0003】
この弦楽器によれば、周知のように、弦の振動をピックアップ(21)で電気信号に変換し、該電気信号をアンプで増幅して音として出力することができる。
【0004】
しかし、この弦楽器では、弦の振動はピックアップで電気信号に変換されるものの、弦楽器本体の振動は電気信号に変換されない。
そのため、弦楽器本体が有している固有の音響特性が音に反映されないという難点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-123404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、弦の振動だけでなく弦楽器本体が有している固有の音響特性も音に反映さることができる弦楽器および弦楽器用振動板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の弦楽器は、
弦楽器本体と、
この弦楽器本体に張られた高透磁率素材からなる弦と、
この弦と弦楽器本体との間において弦に隣接して弦楽器本体に設けられ、弦の振動を電気信号に変換するピックアップと、
を備えた弦楽器であって、
前記ピックアップに対し前記弦と反対側においてピックアップと接触することなくピックアップに隣接して弦楽器本体に設けられ、弦楽器本体と共に振動して該振動を前記ピックアップにて電気信号に変換させる高透磁率素材からなる振動板を備えたことを特徴とする。
【0008】
上記の構成となっているので、この弦楽器によれば次のような作用効果が得られる。
弦楽器本体と共に振動して該振動を前記ピックアップにて電気信号に変換させる高透磁率素材からなる振動板が、ピックアップに対し前記弦と反対側においてピックアップと接触することなくピックアップに隣接して弦楽器本体に設けられているので、この振動板は弦の振動を妨げることなく弦楽器本体と共に振動して該振動を前記ピックアップにて電気信号に変換させることができる。
したがって、この弦楽器によれば、弦の振動だけでなく弦楽器本体が有している固有の音響特性も音に反映さることができる。
【0009】
この弦楽器および弦楽器用振動板においては、
前記振動板は、振動伝達スペーサを介して弦楽器本体に設けられている構成とすることができる。
このように構成すると、振動板が弦楽器本体に対して振動伝達スペーサを介して浮いた状態で設けられるので、振動板が弦楽器本体と共に振動しやすくなる。
したがって、弦楽器本体が有している固有の音響特性をより良好に音に反映さることができる。
また、振動伝達スペーサの高さを変え、あるいは高さの異なる複数の振動スペーサを用意して適宜の振動伝達スペーサを適宜選択的に用いることで振動板振動特性を変え、かつピックアップとの隙間を適宜調整することによって、ユーザーの好みの音に調整することが可能となる。
【0010】
この発明は、弦楽器が弦楽器本体としての木製のボディとネックとを有するエレキギターである場合に特に有効である。
エレキギターの木製のボディとネックは、硬さや水分量、形状の違いで、それぞれに固有の音響特性を有しており、本発明によってその固有の音楽特性が反映されるからである。
【0011】
上記課題を解決するために本発明の弦楽器用振動板は、
弦楽器本体と、
この弦楽器本体に張られた高透磁率素材からなる弦と、
この弦と弦楽器本体との間において弦に隣接して弦楽器本体に設けられ、弦の振動を電気信号に変換するピックアップと、
を備えた弦楽器に取り付けられる振動板であって、
前記ピックアップに対し前記弦と反対側においてピックアップと接触することなくピックアップに隣接して弦楽器本体に設けられ、弦楽器本体と共に振動して該振動を前記ピックアップにて電気信号に変換させる高透磁率素材からなることを特徴とする。
【0012】
上記の構成となっているので、この弦楽器用振動板は、ピックアップに対し前記弦と反対側においてピックアップと接触することなくピックアップに隣接して弦楽器本体に設けられ、次のような作用効果が得られる。
高透磁率素材からなる振動板が弦楽器本体と共に振動して該振動を前記ピックアップにて電気信号に変換させるので、弦の振動だけでなく弦楽器本体が有している固有の音響特性も音に反映さることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る弦楽器ないし弦楽器用振動板の実施の形態を示す図で、(a)は弦楽器の一例の部分平面図、(b)は図(a)の部分拡大図、(c)は図(b)におけるc-c断面図、(d)は図(c)におけるd-d断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る弦楽器ないし弦楽器用振動板の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、同一部分ないし相当する部分には、同一の符号を付してある。
【0015】
図1に示すように、この実施の形態の弦楽器1は、
弦楽器本体10と、
この弦楽器本体10に張られた高透磁率素材からなる弦20と、
この弦20と弦楽器本体10との間において弦20に隣接して弦楽器本体10に設けられ、弦20の振動を電気信号に変換するピックアップ30と、
を備えた弦楽器であって、
ピックアップ30に対し弦20と反対側(図1(c)(d)において下側)においてピックアップ30と接触することなくピックアップ30に隣接して弦楽器本体10に設けられ、弦楽器本体10と共に振動して該振動をピックアップ30にて電気信号に変換させる高透磁率素材からなる振動板40を備えている。
【0016】
上記の構成となっているので、この弦楽器1によれば次のような作用効果が得られる。
弦楽器本体10と共に振動して該振動をピックアップ30にて電気信号に変換させる高透磁率素材からなる振動板40が、ピックアップ30に対し弦20と反対側においてピックアップ30と接触することなくピックアップ30に隣接して弦楽器本体10に設けられているので、この振動板40は弦20の振動を妨げることなく弦楽器本体10と共に振動して該振動をピックアップ30にて電気信号に変換させる。
【0017】
したがって、この弦楽器1によれば、弦20の振動だけでなく弦楽器本体10が有している固有の音響特性も音に反映さることができる。
【0018】
振動板40は、振動伝達スペーサ50を介して弦楽器本体10に設けられている。
このように構成すると、振動板40が弦楽器本体10に対して振動伝達スペーサ50を介して浮いた状態で設けられるので、振動板40が弦楽器本体10と共に振動しやすくなる。
したがって、弦楽器本体10が有している固有の音響特性をより良好に音に反映さることができる。
【0019】
また、振動伝達スペーサ50の高さH1(図1(c)(d))を変え、あるいは高さの異なる複数の振動スペーサを用意して適宜の振動伝達スペーサ50を適宜選択的に用いることで振動板40の振動特性を変え、かつピックアップ30との隙間C1(図1(d)を適宜調整することによって、ユーザーの好みの音に調整することが可能となる。
【0020】
この実施の形態の弦楽器1は弦楽器本体10としての木製のボディ11とネック12とを有するエレキギターである。
エレキギターの木製のボディ11とネック12は、硬さや水分量、形状の違いで、それぞれに固有の音響特性を有しており、その固有の音響特性が振動板40によって反映されるので、この発明はエレキギターに適用する場合に特に有効である。
【0021】
上述したように、この実施の形態の弦楽器用振動板40は、
弦楽器本体10と、
この弦楽器本体10に張られた高透磁率素材からなる弦20と、
この弦20と弦楽器本体10との間において弦20に隣接して弦楽器本体10に設けられ、弦20の振動を電気信号に変換するピックアップ30と、
を備えた弦楽器1に取り付けられる振動板40であって、
ピックアップ30に対し弦20と反対側においてピックアップ30と接触することなくピックアップ30に隣接して弦楽器本体10に設けられ、弦楽器本体10と共に振動して該振動をピックアップ30にて電気信号に変換させる高透磁率素材からなる振動板である。
【0022】
上述したように、この弦楽器用振動板40によれば、弦20の振動だけでなく弦楽器本体10が有している固有の音響特性も音に反映さることができる。
【0023】
以下、さらに詳しく説明する。
【0024】
弦楽器本体10は公知の適宜の材料、例えば木材、合成樹脂等で構成することができる。
【0025】
弦20は、公知の高透磁率素材、例えば鉄製やニッケル製の弦で構成することができる。
図示のものは、6本の弦20が張られているが、弦20の本数は任意である。
【0026】
ピックアップ30は、弦20と弦楽器本体10との間において弦20に隣接して弦楽器本体10に設けることができ、弦20の振動を電気信号に変換することができるものであれば、公知の種々のピックアップを用いることができる。
【0027】
ピックアップ30は、公知の適宜の手段で弦楽器本体10に取り付けることが可能である。
この実施の形態では、ピックアップ30がフランジ部31を有するものであるので、フランジ部31を、コイルスプリング(圧縮ばね)33を介し木ねじ32で弦楽器本体10に締め付け固定することで取り付けている。
これにより、振動板40とピックアップ30との隙間C1(図1(d))が微調整可能となっている。
【0028】
振動板40は、ピックアップ30に対し弦20と反対側においてピックアップ30と接触することなくピックアップ30に隣接して弦楽器本体10に設けることができ、弦楽器本体10と共に振動して該振動をピックアップ30にて電気信号に変換させる高透磁率素材からなるものであれば公知の素材で構成することができる。例えば、鉄、ニッケルで構成することができる。
【0029】
図示のもののように弦楽器本体10にピックアップ30を収納するための凹所13が設けられている場合には、振動板40は、凹所13に入る大きさとする。
振動板40の厚さT(図1(c))は、弦楽器本体10と共に振動できる厚さであればよいが、望ましくは、0.5mm~5mmの範囲で適宜設定する。厚さを変え、あるいは、厚さの異なる複数の振動板を用意しておき、適宜選択することでユーザーの好みの音に調整することが可能となる。
【0030】
振動板40は、公知の適宜の手段で弦楽器本体10に取り付けることが可能である。
この実施の形態では、振動伝達スペーサ50を介し、木ねじ41で弦楽器本体10に締め付け固定している。
【0031】
振動伝達スペーサ50は、振動伝達に適した適宜の材料、例えば木材、金属、合成樹脂で構成することができる。
振動伝達スペーサ50を筒状とする場合、その内径、外径、長さ(高さ)は適宜設定することができる。
これらの寸法および材質を適宜選定することでユーザーの好みの音に調整することが可能となる。
【0032】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能である。例えば、
【0033】
弦楽器1は、弦楽器本体10と、この弦楽器本体10に張られた高率素材からなる弦20と、この弦20と弦楽器本体10との間において弦20に隣接して弦楽器本体10に設けられ、弦20の振動を電気信号に変換するピックアップ30と、を備えた弦楽器であればエレキギターに限らず適宜の楽器(例えばアコースティックギター、ウクレレ、ベース、チェロ等々)に本発明は適用可能である。
【0034】
【符号の説明】
【0035】
1: 弦楽器
10: 弦楽器本体
20: 弦
30: ピックアップ
40: 振動板
50: 振動伝達スペーサ
【要約】
【課題】弦の振動だけでなく弦楽器本体が有している固有の音響特性も音に反映さることができる弦楽器および弦楽器用振動板を提供する。
【解決手段】弦楽器本体10に張られた高透磁率素材からなる弦20と、弦20と弦楽器本体10との間において弦20に隣接して弦楽器本体10に設けられ、弦20の振動を電気信号に変換するピックアップ30とを備え、ピックアップ30に対し弦20と反対側においてピックアップ30と接触することなくピックアップ30に隣接して弦楽器本体10に設けられ、弦楽器本体10と共に振動して該振動をピックアップ30にて電気信号に変換させる高透磁率素材からなる振動板40を備えている。
【選択図】図1
図1