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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】手切れ可能な包装材料
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20230905BHJP
   B65D 75/58 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D75/58
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018145469
(22)【出願日】2018-08-01
(65)【公開番号】P2020019546
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000237787
【氏名又は名称】富士特殊紙業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100198797
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 裕
(72)【発明者】
【氏名】水谷 礼士
(72)【発明者】
【氏名】日比野 恵里
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴史
(72)【発明者】
【氏名】天野 弘造
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05985384(US,A)
【文献】特開昭60-123368(JP,A)
【文献】特公昭47-043238(JP,B1)
【文献】特開2000-103437(JP,A)
【文献】特開2002-179091(JP,A)
【文献】実開平02-097259(JP,U)
【文献】特公昭47-43238(JP,B1)
【文献】特開2000-327021(JP,A)
【文献】米国特許第5878549(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B65D 75/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の合成樹脂フィルムを積層し、2層以上積層して製造される包装材料において、脆性の高い合成樹脂であるUV硬化型樹脂又は熱硬化性樹脂を、包装材料に使用する延伸プラスチックフィルムの裏面に12μm~20μm塗布することにより、積層フィルムの引張り伸び率を低減して手切れ可能な構成となることを特徴とする包装材料。
【請求項2】
前記の脆性の高い合成樹脂を印刷用インキとして用いることを特徴とする請求項1に記載の包装材料。
【請求項3】
前記脆性の高い合成樹脂をラミネート用の接着剤として用いることを特徴とする請求項1に記載の包装材料。
【請求項4】
前記脆性の高い合成樹脂を包装体の開封部に塗布することを特徴とする請求項1に記載の包装材料。
【請求項5】
前記脆性の高い合成樹脂を合成樹脂フィルムや金属箔を用いてラミネートすることにより、積層フィルムそのものに脆性を付与させることを特徴とする請求項1に記載の包装材料。
【請求項6】
フィルムを円曲させてこの両端の内面をお互いに合わせ、この合わせた部分をヒートシールした所謂合掌貼り方式で背貼りが行われた合掌袋において、この合掌袋の側端部に設けた開封部と開封線上に当たる背貼りシール部を開封方向に押し倒し、この倒し部分に前記の脆性の高い合成樹脂を塗布して成ることを特徴とする請求項1に記載の包装材料。
【請求項7】
2枚のフィルムがシーラント面を対向させて配置された状態で両側端部および上下のどちらかにヒートシールが成された三方袋において両側端部に設けた開封部に前記の脆性の高い合成樹脂を塗布して成ることを特徴とする請求項に1記載の包装材料。
【請求項8】
開封部に前記脆性の高い合成樹脂を塗布するとともに、その開封部に開封用の切り込みもしくは、傷付け加工を施して成ることを特徴とする請求項4又は請求項6又は請求項7に記載の包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂フィルムと他の合成樹脂フィルム、もしくはアルミ等の金属箔を積層して製造された包装材料に関するもので、ハサミやカッター等の道具を用いることなく、手で容易に開封部から背貼りシール部を介して引裂くことを可能にした包装材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品等を包装する包装材料において、包装を開封するために包装材料の端部に切り込み加工を施す、または、包装材料の最表層にあたる合成樹脂フィルムに傷付け加工を施すことにより、手切れのキッカケを作ることが一般的に知られている。
【0003】
しかし、包装材料の中で最も汎用性の高い合掌袋において、包装材料の寸法が小さい場合、切り込み加工、もしくはフィルムへの傷付け加工を行うためには、一般的に使用される製袋機、充填包装機および傷付け加工機では機械の構造上対応できないため、新たに専用の設備を増設しなければならない。加えて、特殊な加工を行うため、包装材料のコストも増加してしまうという問題点があった。また、傷付け加工は、フィルムを貫通させて孔を開けるため、包装する内容物を酸素や水蒸気等の外的要因から保護することができなくなる。そのため、金属箔等のバリア材を積層し、包装材料の材質構成を3層以上としなければならず、構成が限定され、汎用性に劣る問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
専用の加工設備を増設することなく、包装材料に開封機能を付与させることができるより簡便な製造技術が求められる。
【0005】
また、切り込みおよび傷付け加工を施していない包装材料において、ハサミ等の道具を使用せずに容易に手で合成樹脂製のフィルムを引裂いて包装を開封するためには、包装材料自体の物性を考慮および改良する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、包装材料において、複数の合成樹脂フィルムを積層し、2層以上積層して製造される包装材料において、脆性の高い合成樹脂であるUV硬化型樹脂又は熱硬化性樹脂を包装材料に使用する延伸プラスチックフィルムの裏面に12μm~20μm塗布することにより、積層フィルムの引張り伸び率を低減して手切れ可能な構成となることを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の包装材料において、前記脆性の高い合成樹脂を印刷用インキとして用いることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の包装材料において、前記脆性の高い合成樹脂をラミネート用の接着剤として用いることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の包装材料において、前記脆性の高い合成樹脂を包装体の開封部に塗布することを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の包装材料において、前記脆性の高い合成樹脂を合成樹脂フィルムや金属箔を用いてラミネートすることにより、積層フィルムそのものに脆性を付与させることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の包装材料において、フィルムを円曲させてこの両端の内面をお互いに合わせ、この合わせた部分をヒートシールした所謂合掌貼り方式で背貼りが行われた合掌袋において、この合掌袋の側端部に設けた開封部と開封線上に当たる背貼りシール部を開封方向に押し倒し、この倒し部分に前記の脆性の高い合成樹脂を塗布して成ることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の包装材料において、2枚のフィルムがシーラント面を対向させて配置された状態で両側端部および上下のどちらかにヒートシールが成された三方袋において両側端部に設けた開封部に前記脆性の高い合成樹脂を塗布して成ることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項8に記載の発明は、請求項4又は請求項6又は請求項7に記載の包装材料において、開封部に前記脆性の高い合成樹脂を塗布するとともに、その開封部に開封用の切り込みもしくは、傷付け加工を施して成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明は、脆性の高い合成樹脂を導入することにより脆性が高くなるため、フィルムを引裂き易くなるものである。
【0015】
使用する脆性の高い合成樹脂には、例えばウレタンアクリレート等のUV硬化型樹脂、もしくは例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いる
【0016】
ここで、脆性のある合成樹脂は、積層フィルム内に組み込むことが包装材料の易開封性を発現させる上で重要な要因である。なぜなら、包装材料を手で引裂こうとする際に脆性のある合成樹脂が積層フィルム内に固定されていない状態にあると、力が分散し、脆性のある合成樹脂は割れて、フィルムは伸びてしまい、手で引裂くことが難しくなるからである。ここに記載する脆性とは、物の脆さをあらわした物性である。また、包装材料を手で引裂いて開封することができる性質を手切れ性と呼ぶ。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の合成樹脂を一般的な包装材料の製造工程である包装材料のデザインや一括表示等を形成する印刷工程に使用する印刷用インキとして使用することにより、既存の設備にて該包装材料が製造可能となるものである。
【0018】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の合成樹脂を合成樹脂フィルムや金属箔を積層させる、ラミネート工程に使用するラミネート用接着剤に使用することにより、請求項2に記載の発明と同様に既存の設備にて該包装材料が製造可能となるものである。
【0019】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2、もしくは請求項3に記載の加工が成された包装材料において、請求項1に記載の合成樹脂を使用することにより生じる、包装材料のコストアップ、物性の劣化および加工適性の悪化などの諸問題を開封部のみに限定して使用することにより、解決することができるものである。
【0020】
また、請求項5に記載の発明は、請求項2、もしくは請求項3に記載の加工を行うことによって、請求項1に記載の合成樹脂が基材フィルムと金属箔やシーラントフィルムに挟み込まれ、特定の箇所に固定されるため、脆性が付与されるものである。
【0021】
また、請求項6に記載の発明は、フィルムを円曲させてこの両端の内面をお互いに合わせ、この合わせた部分をヒートシールした所謂合掌貼り方式で背貼りが行われた合掌袋において、図1に示すように合掌袋の側端部に設けた開封部2aと開封線上に当たる背貼りシール倒し部分2bに請求項1に記載の合成樹脂を請求項2、もしくは請求項3に記載の加工を行い、請求項1に記載の合成樹脂が積層フィルム内に導入されることによって、合掌袋をハサミやカッター等の道具を使用することなく手で開封することができるものである。
【0022】
また、請求項7に記載の発明は、2枚のフィルムがシーラント面を対向させて配置された状態で両側端部および上下のどちらかにヒートシールが成された三方袋において、図2に示すように両端部に設けた開封部2aに請求項2、もしくは請求項3に記載の加工を行い、請求項1に記載の合成樹脂が積層フィルム内に導入されることによって、三方袋をハサミやカッター等の道具を使用することなく手で開封することができるものである。
【0023】
また、請求項8に記載の発明は、請求項4又は請求項7に記載の包装材料において、袋の開封に要する力をより低減させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1の説明図である。
図2】包装材料の説明図である。
図3】アルミニウム箔フィルムを積層した実施例の説明図である。
図4】PETフィルムを積層した実施例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0025】
包装袋の形状は、最も一般的な合掌袋を想定した。印刷基材フィルムであるポリエチレンテレフタレート(以後、PETと言う。)12μmに脆性の高いUV硬化型インク用いてインクジェット印刷方式にて包装袋の開封部に当たる位置および合掌袋の背貼りシール倒し面(図1を参照)に印刷を施した。UV硬化型インクの塗布量は、1μmから30μmとし、易開封機能の発現性およびラミネート強度の観点から10μmから20μmの塗布量がより好ましい。
【0026】
層構成は、図3に示すように、前記印刷済みフィルムへの積層フィルムとして、バリア材であるアルミニウム箔7μmと、シーラントフィルムである低密度ポリエチレン(以後、LDPEと言う。)30μmを用いた。積層の方式は、エクストリュージョンラミネート方式を採用した。印刷物とアルミニウム箔の接着は、LDPE15μmを接着樹脂として挟み込み、シーラントフィルムは、アルミニウム箔へ直接押出した。
【0027】
前記の積層フィルムを用いて寸法が巾30mm、高さ120mmの合掌袋を作製したところ、ハサミやカッター等の道具を使用せずに合掌袋の側端部に設けた開封部2aより手で容易に開封することができた。
【実施例2】
【0028】
実施例2は、図4に示すようにPETフィルム12μm、もしくはナイロンフィルム15μmを印刷基材として使用し、シーラントフィルム(LDPEフィルムが好ましい)をドライラミネート方式にて積層したアルミニウム箔を使用しない透明な包装材料である。実施例1と同様に脆性のあるUV硬化型インクを印刷インキとして用いることで、該積層フィルムを手で引裂くことを可能とした。
【0029】
実施例1記載の合掌袋においてUV硬化型インクの塗布量による手切れ性を確認するため、UV硬化型インクの塗布量が異なる袋サンプルを作製し、手切れ性の官能評価を行った。尚、評価用の袋サンプルは、印刷インキとして使用したUV硬化型インクの塗布量を最も実用性の高い10μm、12μm、14μm、16μm、18μmおよび20μmの6種類と定め、UV硬化型インクの塗布量を制御しつつ印刷を行うことで作製した。
【0030】
袋の手切れ性の官能評価結果を表1に記す。
【表1】
【0031】
表1の袋の手切れ性官能評価結果によれば、印刷インキに使用するUV硬化型インクの塗布量は、18~20μmにて多くのパネラーが容易に開封することができると回答したため、妥当であると思われる。
【0032】
袋の手切れ性の官能評価結果を元に開封性を数値化するために株式会社島津製作所製の万能引張り試験機を用いて前記袋サンプルの引張り破断伸び率を測定した。
【0033】
引張り破断伸び率の測定条件を記す。引張り破断伸び率の測定は、JIS-K-7127を参考にして行った。UV硬化型インクを用いて前記塗布量に調整されたベタ印刷を施した包装材料において、フィルム流れ方向におけるベタ印刷部分を10mm巾にカットした包装材料を測定サンプルとする。この測定サンプルを50mmのチャック間隔にてチャッキングし、200mm/分の引張り速度にて引き伸ばした時の包装材料破断時の伸び率(%)を測定した。
【0034】
包装材料の引張り破断伸び率測定結果を表2に記す。
【表2】
【0035】
表1および表2の結果より、袋の手切れ性の官能評価および包装材料引張り破断伸び率には相関性があることが確認された。また、包装材料の引張り破断伸び率が20%未満であれば開封が容易であるといえる。UV硬化型インクの塗布量が20μmを超えても、包装材料の引張り破断伸び率が大きく下がることは無かった。よって、包装材料のコストおよび加工や使用時の適性を考慮すると、UV硬化型インクの塗布量は、10μmから20μmが好ましいといえる。
【符号の説明】
【0036】
1 合掌袋(裏面からの図)
2 UVインク塗布部
2a 袋の開封開始部分
2b 合掌袋の背貼り倒し部分
3 袋頭ヒートシール
4 袋尻ヒートシール
5 袋背貼りヒートシール
6 PETフィルム(印刷基材)
7 LDPEフィルム(接着層)
8 アルミニウム箔(バリア層)
9 LDPEフィルム(シーラント層)
10 印刷基材フィルム
11 接着剤
12 シーラントフィルム
13 両側端部ヒートシール
14 下ヒートシール
図1
図2
図3
図4