(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
A63F 5/04 20060101AFI20230905BHJP
【FI】
A63F5/04 601B
A63F5/04 699
(21)【出願番号】P 2019122546
(22)【出願日】2019-06-29
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390026620
【氏名又は名称】山佐株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西原 八州夫
【審査官】高木 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-217648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 5/04
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御基板を基板ケースに透視可能に収容した基板ユニットを備える遊技機であって、
前記基板ユニットは、少なくとも1つの透明部材を備え、
前記透明部材には、識別情報を表示する識別情報表示部が配設され、
前記透明部材には、前記識別情報表示部の
鏡像文字となる側に、不透明なシールが貼着され、
前記シールは、前記基板ケースの開放時に痕跡が残るよう構成された封印シールであることを特徴とする遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御基板を基板ケースに透視可能に収容した基板ユニットを備える遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
遊技機用の制御基板は、基板ケースに収容されて、基板ユニットとして遊技機に装着される。制御基板の不正改造を防止するために、基板ケースは、一部又は全部が透明部材で構成されて、透明部材を透して制御基板を外部から透視可能にしている。また、基板ユニットは、基板ケースを開放する時に、構成部材に痕跡が残るよう構成されており、各構成部材について痕跡の有無を確認することで、基板ケースが許可なく開放されていないかを確認可能となっている。
【0003】
こうした基板ユニットに対して、基板ケースを不正開放した際に、痕跡が残った部材を別の部材と取り替えることにより、痕跡を残さずに基板ケースを開放する不正行為が報告されている。そして、こうした不正行為の対策として、基板ケースの構成部材に識別情報を付しておき、当該識別情報に基づいて、当該基板ケースの構成部材が非正規部品と取り替えられていないかを確認している(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、従来の基板ユニットの構成部材には識別情報が付されているが、透明部材に付される識別情報は、透明部材に映り込んだ像に邪魔されて、視認しづらいことがある。
本発明は、かかる現状に鑑みて為されたものであり、基板ユニットを構成する透明部材に付される識別情報の視認性を向上させ得る遊技機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、制御基板を基板ケースに透視可能に収容した基板ユニットを備える遊技機であって、前記基板ユニットは、少なくとも1つの透明部材を備え、前記透明部材には、識別情報を表示する識別情報表示部が配設され、前記透明部材には、前記識別情報表示部の鏡像文字となる側に、不透明なシールが貼着され、前記シールは、前記基板ケースの開放時に痕跡が残るよう構成された封印シールであることを特徴とする遊技機である。
【0007】
かかる構成にあっては、識別情報表示部の裏側に不透明なシールが貼着されることにより、識別情報を視認する際に、透明部材に映り込む像が低減される。したがって、かかる構成によれば、透明部材に付される識別情報の視認性を、従来構成よりも高めることが可能となる。
【0008】
本発明にあって、前記シールの貼着面側は明色と暗色の一方の色で配色され、前記識別情報は明色と暗色の他方の色で配色されていることが提案される。
【0009】
かかる構成にあっては、識別情報表示部の裏側に貼着されたシールによって、識別情報を視認する際の背景を、識別情報と明暗のコントラストの高い色にできるため、透明部材に付される識別情報の視認性を、一層高めることが可能となる。
【0010】
また、本発明にあって、前記シールの貼着面側の色と、前記識別情報の色は、補色関係であることも提案される。
【0011】
かかる構成とした場合には、識別情報表示部の裏側に貼着されたシールによって、識別情報を視認する際の背景を、識別情報の色を際立たせる色にできるため、透明部材に付される識別情報の視認性を、一層高めることが可能となる。
【0012】
また、本発明にあって、前記シールは、前記基板ケースの開放時に痕跡が残るよう構成された封印シールであることが提案される。
【0013】
すなわち、かかる構成にあっては、識別情報表示部の裏側に封印シールが貼着される。封印シールは、識別情報と同様に、制御基板の視認性を阻害しないよう、基板ケースの外周部に貼着されるのが一般的である。このため、かかる構成のように、封印シールと識別情報表示部が重なり合うように配置すれば、基板ケースの外周部のスペースを有効活用して、基板ケースを大型化することなく、識別情報表示部の面積を広く確保可能となる。したがって、かかる構成によれば、従来構成に比べて、識別情報を大きく印字して、その視認性を高めることが可能となる。また、かかる構成では、封印シールを貼着する際に、識別情報を目印にできるため、従来構成に比べて封印シールを迅速かつ容易に貼着できるという利点がある。
【0014】
また、本発明にあって、前記識別情報は、左右反転した鏡像として前記識別情報表示部に印字され、前記透明部材を透して視認するよう構成されたものであり、前記シールは、前記識別情報の印字面を覆うように前記透明部材に貼着されていることが提案される。
【0015】
かかる構成にあっては、識別情報の印字面に貼着されたシールによって、識別情報を保護できるため、識別情報の改ざんが困難となる。
【0016】
また、本発明にあって、前記識別情報は、レーザマーキングにより前記識別情報表示部に印字されたものであることが提案される。
【0017】
レーザマーキングによる印字は、透明樹脂そのものを変色させるため、除去や改ざんが困難であるという長所があるが、一方で、インクジェット印刷等による印字に比べて発色が不十分になり易いという短所がある。これに対して、本発明により識別情報の視認性を高めれば、レーザマーキングのかかる短所を補うことができるため、レーザマーキングの長所を活かすことが可能となる。
【0018】
また、本発明にあって、前扉によって開閉される筐体を備え、前記基板ユニットは前記筐体の内部に取り付けられていることが提案される。
【0019】
筐体の内部は外部照明が入り難いため、筐体内部に取り付けられる基板ユニットについては、比較的暗い状況下で識別情報を視認しなくてはならないが、本発明により識別情報の視認性を高めれば、筐体内部の基板ユニットについても、識別情報を比較的容易に視認可能となる。
【0020】
また、本発明にあって、前記基板ケースは、所定の取付部に軸支されて、前記取付部に近接する装着位置と、前記取付部から離間する方向に傾倒する離間位置とに回動可能に配設されており、前記基板ケースを前記装着位置に保持する保持状態と、前記装着位置に保持しない解除状態とに切替操作可能な保持手段を備え、前記基板ケースは、前記保持手段の解除状態で、前記装着位置から前記離間位置に傾倒可能となり、前記基板ケースの前記装着位置では、前記識別情報表示部の表側が前記取付部の方向を向き、前記基板ケースの前記離間位置では、前記識別情報表示部の表側が上向きになることが提案される。
【0021】
かかる構成にあっては、基板ケースの離間位置において、上向きになった識別情報表示部に対して、より多くの天井照明を当てることが可能となるため、識別情報を比較的容易に視認可能となる。
【0022】
また、本発明にあって、正面側の開口部を前扉によって開閉される筐体を備え、前記基板ケースは、前記筐体の背板に近接する装着位置と、前記背板から離間する離間位置とに回動可能に配設されており、前記基板ケースを前記装着位置に保持する保持状態と、前記装着位置に保持しない解除状態とに切替操作可能な保持手段を備え、前記基板ケースは、前記保持手段の解除状態で、前記装着位置から前記離間位置に回動可能となり、前記基板ケースの前記装着位置では、前記識別情報表示部の表側が前記背板の方向を向き、前記基板ケースを前記装着位置から前記離間位置に回動させると、前記識別情報表示部が正面側に回動して、前記装着位置よりも正面側で前記識別情報を視認可能となることが提案される。
【0023】
すなわち、かかる構成にあっては、基板ケースを離間位置とすることで、装着位置よりも開口部近くに識別情報表示部が配置されるから、識別情報を比較的容易に視認可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】基板ユニット6を分離して示す、筐体開放状態のスロットマシン1の斜視図である。
【
図3】基板ケース7を装着位置に保持した状態の基板ユニット6の斜視図である。
【
図4】基板ケース7を離間位置に傾倒させた状態の基板ユニット6の斜視図である。
【
図5】基板ケース7を装着位置に保持した状態のスロットマシン1の斜視図である。
【
図6】基板ケース7を離間位置に傾倒させた状態のスロットマシン1の斜視図である。
【
図8】基板ケース7及び制御基板8の分解斜視図である。
【
図9】正面側から見た基板ケース7の分解斜視図である。
【
図10】背面側から見た基板ケース7の斜視図である。
【
図11】背面側から見た基板ケース7の分解斜視図である。
【
図12】基板ケース7を離間位置に傾倒させた状態の基板ユニット6の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態を、本発明をスロットマシンに適用した実施例に従って説明する。なお、下記実施例において、本発明に係る透明部材は、カバー部材10又はベース部材11に相当する。また、本発明に係るシールは、封印シール30に相当する。また、本発明に係る取付部は、基板ホルダ9に相当する。
【0026】
図1は、本実施例のスロットマシン1の斜視図である。
図1に示すように、スロットマシン1の筐体2は正面側が開放しており、筐体2に装着された前扉3によって、正面側の開口部2aを開閉し得るよう構成されている。
図1,2に示すように、筐体2の内部には、中央部にリール4が配設され、リール4の上方に、本発明に係る基板ユニット6が配設される。リール4及び基板ユニット6は、筐体2の背面側を形成する背板2bに螺子で固定されている。
【0027】
図3,4に示すように、基板ユニット6は、筐体2の背板2bに固定される基板ホルダ9や、制御基板8を透視可能に収容した基板ケース7等を組み付けてユニット化したものである。基板ケース7は、基板ホルダ9の正面側に下端部を軸支されて、起立して背板2bや基板ホルダ9に沿うように近接する装着位置(
図3参照)と、装着位置から手前側に傾倒して背板2bや基板ホルダ9から離間する離間位置(
図4参照)との間を回動可能に配設されている。
図5,6に示すように、筐体2の内部は、基板ユニット7の手前側が空隙となっており、基板ユニット6を筐体2の背板2bに取り付けた状態でも、基板ケース7は、筐体2の内部で装着位置から離間位置まで回動可能となっている。基板ケース7は、遊技中や運搬時に回動しないように、後述する保持手段によって装着位置に保持された状態で筐体2に収容される。そして、制御基板8の背面側を点検する場合など、必要になった時にだけ離間位置に変換される。なお、以下では、装着位置における基板ケース7の正面側と背面側を、基板ケース7の正面側と背面側として説明する。
【0028】
図7に示すように、基板ホルダ9は矩形板状の樹脂部材であり、筐体2の背板2b(
図2参照)の上部に螺子止めされる。基板ホルダ9の両側下部には軸受14a,14bが配設されており、当該軸受14a,14bに、基板ケース7の両側下部の支軸15a,15bが軸支される。基板ホルダ9の正面左側部には、制御基板8と、他の制御基板(図示省略)との通信を中継する中継基板13が係止される。また、基板ユニット6には、基板ケース7を装着位置に保持する保持手段が配設される。保持手段は、基板ケース7の右上部の貫通孔26に取り付けられたスナップラッチ27と、基板ホルダ9の右上部に形成された係合孔28とにより構成される。具体的には、基板ケース7の装着位置において、スナップラッチ27の先端部が係合孔28に挿入され、かかる状態で、スナップラッチ27の基端側のツマミを押し込むと、スナップラッチ27の先端部が拡開して係合孔28と係合することにより、基板ケース7が装着位置に保持される。スナップラッチ27と係合孔28の係合状態は、スナップラッチ27の基端側のツマミを引っ張って、先端側を縮径させることで解除でき、これにより、基板ケース7を装着位置から離間位置まで回動可能となる。すなわち、スナップラッチ27が係合孔28と係合した状態が本発明に係る保持状態に、スナップラッチ27が係合孔28に係合しない状態が本発明に係る解除状態に相当する。このように、かかる保持手段によれば、スナップラッチ27を係合孔28に係脱する操作を行うことで、基板ケース7を装着位置に保持する状態と、装着位置に保持しない状態とに切り替えることができる。
【0029】
図7,8に示すように、基板ケース7は、透明なカバー部材10とベース部材11とを具備してなる。カバー部材10は、背面側が開放された矩形箱状の樹脂部材であり、ベース部材11は、正面側が開放された矩形箱状の樹脂部材である。そして、カバー部材10とベース部材11を前後に組み付けた時に形成される内部空隙に、制御基板8が収容される。基板ケース7に制御基板8を収容した状態では、制御基板8の正面側に実装されたコネクタ17のみが外部に露出し、制御基板8の、コネクタ17を除く部分は、カバー部材10及びベース部材11によって覆われる。カバー部材10とベース部材11は、正面側から螺子(図示省略)で相互に締結されるとともに、両部材10,11の上部両側に形成された係合部12a,12bにおいて係合する。係合部12a,12bは、「Aかしめ」と呼ばれる、基板ケース7の封印構造を構成するものであり、係合部12a,12bの配設部位でカバー部材10又はベース部材11を破壊しなければ、両部材10,11の係合を解除できないよう構成される。すなわち、本実施例の基板ユニット6では、基板ケース7を開放した時に、カバー部材10はベース部材11の係合部12a,12bに、破壊の痕跡が残ることとなる。カバー部材10とベース部材11は透明部材であるから、相互に組み付けた状態でも、内部の制御基板8を視認できるし、係合部12a,12bの痕跡の有無を確認できる。
【0030】
また、
図7に示すように、基板ケース7を基板ホルダ9に装着した状態で、基板ケース7の右下部の支軸15aに、ロックピン16が嵌着される。かかるロックピン16の嵌着によって、基板ケース7は開放困難に係止されるとともに、右下部の支軸15aを基板ホルダ9の軸受14aから脱落させ得ないよう係止される。また、
図5に示すように、ロックピン16により基板ケース7を係止した状態で、基板ホルダ9の右側部に、支軸15aからロックピン16を抜き取り得ないように覆うピン被覆部材18が螺子止めされる。そして、ピン被覆部材18を基板ホルダ9に螺子止めする螺子固定部19には、螺子止めした後に封印部材20aが嵌着される。かかる封印部材20aは、螺子固定部19に対して脱落不能に係合しており、螺子固定部19又は封印部材20aを破壊しなければ、基板ホルダ9からピン被覆部材18を取り外し得ないよう構成される。すなわち、かかる構成によれば、ピン被覆部材18を基板ホルダ9から取り外す時に、螺子固定部19又は封印部材20aに痕跡が残ることとなる。
【0031】
また、
図7,8に示すように、基板ケース7の正面側には、基板ケース7を覆う保護部材22が螺子止めされる。そして、保護部材22を基板ケース7に螺子止めする螺子固定部23には、螺子止めした後に封印部材20bが嵌着される。かかる封印部材20bは、螺子固定部23に対して脱落不能に係合しており、螺子固定部23又は封印部材20bを破壊しなければ、基板ケース7から保護部材22を取り外し得ないよう構成される。すなわち、かかる構成によれば、保護部材22を基板ケース7から取り外す時に、螺子固定部23又は封印部材20bに痕跡が残ることとなる。
【0032】
また、
図7,8に示すように、基板ケース7の正面左側部には、矩形状の封印シール30が貼着される。封印シール30は、基板ケース7の開放時に痕跡が残るよう構成されたものである。具体的には、封印シール30は、カバー部材10とベース部材11を組み付けて、基板ケース7に制御基板8を収容した状態で、カバー部材10とベース部材11に跨がるシール貼着部31a,31bに貼着される。なお、シール貼着部31a,31bは、基板ケース7の正面視において、不透明な封印シール30が制御基板8の視認性を阻害しないように、制御基板8と重ならない基板ケース7の外周部に配設される。
【0033】
図9に示すように、封印シール30は、不透明な紙製シートからなる。封印シール30の一面は、紙基材にホログラム印刷34等の偽造防止印刷を施してなる表示面30aとなっており、封印シール30の他面は、シール貼着部31a,31bと接合する貼着面30bとなっている(
図11参照)。貼着面30bは、紙基材の地色により、全面が光沢度の低い白色をなしており、その表面には、透明な粘着剤が塗布されている。封印シール30は、外周部に形成された多数の切込み33により極めて破れ易くなっており、一度、シール貼着部31a,31bに貼着すると、封印シール30を破損させずにシール貼着部31a,31bから剥離するのは困難となる。
【0034】
カバー部材10側のシール貼着部31aには、カバー部材10をベース部材11に螺子止めするための、螺子挿通孔32が形成されており、封印シール30は、カバー部材10を螺子挿通孔32でベース部材11に螺子止めした後に、当該螺子挿通孔32を塞ぐようにシール貼着部31a,31bに貼着される。基板ケース7を開放するためには、少なくとも、螺子挿通孔32での螺子止め解除して、カバー部材10とベース部材11を分離する必要があるが、このように、破れやすい封印シール30がカバー部材10とベース部材11を跨いで、螺子挿通孔32を塞ぐように貼着されているため、封印シール30を破損させなければ、基板ケース7を開放し得ないよう構成されている。すなわち、かかる構成によれば、基板ケース7を開放する際に、封印シール30に痕跡が残ることとなる。
【0035】
このように、かかる基板ユニット6では、カバー部材10やベース部材11、保護部材22が透明であるため、基板ケース7の装着位置では、保護部材22やカバー部材10を透して制御基板8の正面側を視認でき、また、基板ケース7の離間位置では、ベース部材11を透して制御基板8の背面側を視認できる。また、同様に、かかる基板ユニット6では、封印部材20a,20bや封印シール30などの、基板ケース7を開放する際に痕跡が残る部材についても、透明なカバー部材10や保護部材22などを透して、痕跡の有無を確認することができる。なお、
図1~9では、カバー部材10やベース部材11、保護部材22を、便宜上、不透明に示しているが、実際には、カバー部材10やベース部材11、保護部材22は透明であり、それらの裏側を透かし見ることができる。
【0036】
以下に本発明の要部に係る構成について説明する。
図10に示すように、基板ケース7の左側部には、背面側に識別情報35a,35bを表示する2つの識別情報表示部36a,36bが、左右に対をなすように配設される。各識別情報表示部36a,36bに表示される識別情報35a,35bは、スラッシュで分割された9桁のシリアル番号である。このシリアル番号は、基板ユニット6ごとに割り当てられる固有の値であり、2つの識別情報表示部36a,36bは、同じシリアル番号を表示している。すなわち、
図10に示される識別情報35a,35b(「1234/56789」)は、当該基板ユニット6だけに付された固有のシリアル番号であり、他の基板ユニット6の識別情報表示部36a,36bには、夫々異なるシリアル番号が表示される。
【0037】
図11に示すように、2つの識別情報表示部36a,36bの一方はカバー部材10に配設され、他方はベース部材11に配設される。各識別情報表示部36a,36bの識別情報35a,35bは、各識別情報表示部36a,36bの正面側(裏側)に印字される。すなわち、
図9に示すように、識別情報35a,35bは、識別情報表示部36a,36bの正面側に、左右反転させた黒色の鏡像文字として印字され、印字された識別情報35a,35bを、カバー部材10やベース部材11を透して、背面側に正しい数字として表示するよう構成される。なお、カバー部材10側の識別情報表示部36aには、背面側にベース部材11が重なるため、カバー部材10に印字された識別情報35aは、カバー部材10及びベース部材11を透して視認される。また、識別情報35a,35bの印字は、改ざん困難なレーザマーキングにより行われる。かかる構成によれば、カバー部材10とベース部材11が、同じ基板ユニット6に属するものであることを、各識別情報表示部36a,36bに表示された2つの識別情報35a,35bが一致するか否かによって確認できる。したがって、かかる基板ユニット6では、カバー部材10とベース部材11の一方が、不正行為者によって他の基板ユニット6のものと交換された場合に、識別情報35a,35bに基づいて容易に見破ることができる。
【0038】
また、本実施例では、
図10,11に示すように、識別情報表示部36a,36bは、シール貼着部31a,31bと前後に重なる位置に配設される。具体的には、カバー部材10側の識別情報表示部36aは、カバー部材10側のシール貼着部31aに重なる位置に配設され、ベース部材11側の識別情報表示部36bは、ベース部材11側のシール貼着部31bに重なる位置に配設される。すなわち、本実施例では、
図7,8に示すように、各識別情報表示部36a,36bの裏側に、不透明な封印シール30が貼着される。このため、基板ケース7の正面視においては、識別情報表示部36a,36bは、封印シール30に覆われて目視不能となる。一方、シール貼着部31a,31bは、制御基板8と重ならない位置に配設されているため、基板ケース7の背面側から識別情報表示部36a,36bを目視した際に、識別情報表示部36a,36bの裏側(正面側)に貼着された封印シール30が、識別情報35a,35bの背景として表れることとなる。この時、背景となるのは、封印シール30の表示面30aでなく、白色の貼着面30bである。このように、かかる基板ケース7では、背面側から識別情報表示部36a,36bを視認する際に、識別情報35a,35bの裏側に、白色の貼着面30bが表れるため、黒色の識別情報35a,35bと、白色の貼着面30bとの明暗のコントラストにより、識別情報35a,35bを容易に視認可能となる。なお、上述のように、識別情報35a,35bは、各識別情報表示部36a,36bの裏側に印字されるため、封印シール30は、識別情報35a,35bを各識別情報表示部36a,36bに印字した後に貼着される。なお、本実施例では、封印シール30の切込み33によって、識別情報35a,35bの視認性が損なわれないように、切込み33の形成部位と、識別情報表示部36a,36bが、前後に重ならないよう配設される。
【0039】
本実施例では、基板ケース7が、遊技中や運搬時に回動しないように、装着位置に保持された状態で筐体2に収容されるため、前扉3を開けて、開放した開口部2aから基板ケース7を覗くだけでは、基板ケース7の識別情報35a,35bを視認できない。
図2,5に示すように、基板ケース7の装着位置では、識別情報表示部36a,36bの表側(背面側)が基板ホルダ9や背板2bの方向を向いているため、正面側の開口部2aからは、封印シール30に遮られて、識別情報35a,35bを目視できないためである。仮に、封印シール30が貼着されていなければ、識別情報表示部36a,36bの裏側(正面側)から識別情報35a,35bを目視できるが、識別情報表示部36a,36bの裏側から目視される識別情報35a,35bは、左右反転した鏡像文字であるため、封印シール30が貼着されていなくても、基板ケース7が装着位置にある状態で、識別情報35a,35bのシリアル番号を読み取るのは困難である。
【0040】
本実施例では、上述のように、前扉3を開けるだけでは、識別情報35a,35bを視認できないが、前扉3の開放後に、
図6,12に示すように、基板ケース7を装着位置から離間位置に回動させれば、識別情報35a,35bを視認可能となる。基板ケース7が手前側(正面側)へ傾倒するのに伴って、識別情報表示部36a,36bの表側(背面側)が、基板ホルダ9や背板2bから離間して、上向きになるためである。かかる状態では、
図12に示すように、識別情報表示部36a,36bの表側から、識別情報35a,35bを、鏡像文字でない正しい数字として目視できるため、識別情報35a,35bを正確かつ容易に読み取ることができる。
【0041】
以上のように、本実施例では、カバー部材10及びベース部材11には、識別情報表示部36a,36bの裏側に不透明な封印シール30が貼着される。かかる構成によれば、識別情報表示部36a,36bの裏側に接合する封印シール30の貼着面30bによって、識別情報表示部36a,36bの裏面側での映り込みが低減されるため、封印シール30が貼着されていない構成に比べて、識別情報35a,35bの視認性を高めることができる。特に、本実施例では、封印シール30の貼着面30bは、光沢度が低いため、識別情報表示部36a,36bの裏面側での映り込みを大きく低減させることができる。
【0042】
また、本実施例では、封印シール30の貼着面が、黒色の識別情報35a,35bとコントラストの高い白色で配色されているため、識別情報表示部36a,36bを背面側から目視した時に、背景となる貼着面との明暗のコントラストにより、識別情報35a,35bを一層容易に視認できるという利点がある。
【0043】
また、本実施例では、基板ケース7を装着位置から手前側(正面側)の離間位置に傾倒させた状態で、識別情報表示部36a,36bを目視するよう構成される。かかる構成によれば、識別情報表示部36a,36bは、基板ケース7の離間位置において、装着位置よりも筐体2の開口部2aに近づくため、識別情報35a,35bを比較的近くで視認できるという利点がある。また、基板ケース7の離間位置では、識別情報表示部36a,36bが上向きになるため、基板ケース7が起立して、識別情報表示部36a,36bが横向きとなる装着位置に比べて、識別情報表示部36a,36bに、遊技場の天井照明を比較的多く当てることが可能となる。このように、本実施例では、基板ケース7を装着位置から離間位置に傾倒させれば、識別情報表示部36a,36bを比較的明るい照明下で大きく目視できるため、識別情報35a,35bを容易に視認可能となる。
【0044】
このように、本実施例では、識別情報表示部36a,36bの裏側に封印シール30が貼着され、また、基板ケース7を離間位置に傾倒した状態で識別情報表示部36a,36bを目視するよう構成されているため、比較的光の入り難い筐体2の奥に基板ユニット6が取り付けられていても、識別情報表示部36a,36bの識別情報35a,35bを確実に読み取ることができる。また、透明な樹脂部材へのレーザマーキングは、発色が不十分になり易いが、本実施例では、封印シール30等によって識別情報35a,35bを高めることで、レーザマーキングされた識別情報35a,35bの発色不足を補うことができるため、レーザマーキングの改ざん防止効果などの長所を活かすことができる。
【0045】
また、封印シール30は、本来は、基板ケース7の不正開放を確認する目的で基板ケース7に貼着されるものであるから、本実施例のように、封印シール30の貼着部位に重なるように識別情報表示部36a,36bを配設すれば、既存の封印シール30を利用して、識別情報35a,35bの視認性を低コストで高めることができる。また、封印シール30や識別情報表示部36a,36bは、制御基板8の視認性を阻害しないよう、基板ケース7の外周部に設けられるものであるため、本実施例のように、シール貼着部31a,31bと、識別情報表示部36a,36bを重複させれば、基板ケース7の外周部のスペースを有効に活用でき、これにより、基板ケース7を大型化せずに、識別情報表示部36a,36bの面積を広く確保可能となる。したがって、本実施例では、シール貼着部31a,31bと識別情報表示部36a,36bが重複しない構成に比べて、識別情報35a,35bを大きく印字して、その視認性を高めることが可能となる。また、本実施例では、識別情報表示部36a,36bとシール貼着部31a,31bが重複しているため、封印シール30を貼着する際に、識別情報35a,35bを目印にすることで、封印シール30を迅速かつ容易に貼着できるという利点がある。
【0046】
また、本実施例では、封印シール30が貼着される識別情報表示部36a,36bの裏側(基板ケース7の正面側)に識別情報35a,35bが印字されるため、識別情報35a,35bの一部又は全部を印字面から削り取ったり、印字面に追加印字したりするなどして、識別情報35a,35bを改ざんする行為を、印字面を覆う封印シール30により防止できる。
【0047】
また、本実施例では、前扉3を開いて筐体2の開口部2aを開放しただけでは、基板ケース7の識別情報35a,35bを視認困難となっている。このため、本実施例では、遊技中にスロットマシン1に不具合が生じ、復旧のために筐体2を開放したとしても、基板ケース7の識別情報35a,35bを遊技者に紛れた不正行為者に盗み見られるおそれはない。このように、本実施例では、識別情報表示部36a,36bの識別情報35a,35bが、第三者に漏洩し難いため、識別情報35a,35bが付された部品を、不正行為者に偽造され難いという利点がある。
【0048】
以上に本発明の実施例を説明したが、本発明の遊技機は、上記実施例の形態に限らず本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、上記実施例では、スロットマシン1のメイン制御基板8に係る基板ユニット6に本発明が適用されているが、メイン制御基板8に係る基板ユニット6に替えて、または加えて、他の制御基板に係る基板ユニット6に本発明を適用してもよい。例えば、上記実施例のスロットマシン1には、
図1,2に示すように、筐体2の側板2cの上部内側面に、サブ制御基板を基板ケース7aに収容してなる基板ユニット6aが配設され、また、前扉3の背面上部に、画像制御基板を基板ケース7bに収容してなる基板ユニット6bが配設される。本発明は、これらの基板ユニット6a,6bに対しても適用可能である。また、本発明は、スロットマシンに限らず、類似の基板ユニットを具備する他の遊技機(パチンコ機等)にも適用可能である。
【0049】
また、上記実施例では、基板ケース7の開放時に痕跡が残るよう構成された封印シール30が、識別情報表示部36a,36bの裏側に貼着されているが、本発明にあって、識別情報表示部の裏側に貼着されるシールは、封印シールに限られない。具体的には、基板ケースの真正性を示すために貼着されるホログラムシールであってもよいし、識別情報の視認性を向上させるためだけに貼着される専用のシールであってもよい。また、本発明に係るシールは、矩形状に限られず、三角形や円形などでもよい。また、本発明に係るシールは、識別情報表示部と重ならない位置に開口部が形成されていてもよい。また、本発明に係るシールは、到着面に粘着剤が予め塗布されたものに限らず、貼着する際に、シールの貼着面や基板ケースのシール貼着部に粘着剤や接着剤を別途塗布して貼着するものを含む。
【0050】
また、上記実施例では、識別情報35a,35bがレーザマーキングで印字されていたが、本発明に係る識別情報は、レーザマーキング以外の刻印や、シルク印刷、インクジェット印刷などにより印字されていてもよい。
【0051】
また、基板ユニット6に配設される識別情報表示部36a,36bの位置および数も、上記実施例から適宜変更可能である。例えば、上記実施例では、制御基板8の視認性を確保するために、制御基板8を避けるように識別情報表示部36a,36bが基板ケース7の外周部に配設されているが、本発明は、識別情報表示部が、制御基板と重なるように配置される構成を除外するものではない。また、上記実施例では、カバー部材10とベース部材11が本発明に係る透明部材に相当しているが、これらの部材に替えて、透明な保護部材22に識別情報表示部を配設して、本発明に係る透明部材とすることも可能である。また、識別情報表示部が複数配設される場合、本発明に係るシールは、少なくとも1つの識別情報表示部の裏側に貼着されていればよい。
【0052】
また、上記実施例にあって、識別情報表示部36a,36bに表示される識別情報35a,35bは、基板ユニット7に固有のシリアル番号であったが、本発明に係る識別情報は、個々の基板ユニットに固有のものに限られず、ロット番号や、製造者の識別番号などであってもよい。また、上記実施例に係る識別情報35a,35bは、カバー部材10とベース部材11に配設されており、両者を照合することにより、両部材10,11が同一の基板ユニット6に由来するものであるかを確認可能となっているが、本発明に係る識別情報は、単独で識別情報を表示するものであってもよい。また、上記実施例では、識別情報が9桁の数字(アラビア数字)で表されているが、識別情報は、数字に限らず、文字やその他の記号、又はそれらの組合せで構成されるものでもよい。
【0053】
また、上記実施例では、識別情報35a,35bを黒色で印字し、封印シール30の貼着面30bを白色とすることで、識別情報35a,35bと背景のコントラストを高めているが、識別情報35a,35bを白色系統の色で印字し、封印シール30の貼着面30bを黒色系統の色にしてもよい。また、識別情報の色と、封印シールの貼着面の色は、黒色系統と白色系統の組合せに限らず、一方を明色で、他方を暗色で配色する組合せであれば、明暗のコントラストによって、識別情報の視認性を同様に高めることが可能である。また、上記実施例の配色に替えて、識別情報35a,35bの色と、封印シール30の貼着面30bの色とを、補色関係とすることも提案される。かかる構成とした場合にも、背景となる貼着面30bの色によって、識別情報35a,35bの色を際立たせて、識別情報35a,35bの視認性を高めることができる。
【0054】
また、上記実施例では、本発明に係る保持手段が、スナップラッチ27と係合孔28により構成されているが、本発明に係る保持手段は、磁力やフック等によって基板ケース7を装着位置に保持するものであってもよい。
【0055】
また、上記実施例では、基板ケース7が基板ホルダ9に軸支されているが、筐体2や前扉3に金具を取り付けて、基板ケース7を筐体2や前扉3に直接軸支するようにしてもよい。すなわち、本発明に係る取付部は、筐体や前扉によって構成することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 スロットマシン(遊技機)
2 筐体
2a 開口部
2b 背板
3 前扉
6,6a,6b 基板ユニット
7,7a,7b 基板ケース
8 制御基板
9 基板ホルダ(取付部)
10 カバー部材(透明部材)
11 ベース部材(透明部材)
22 保護部材
26 貫通孔
27 スナップラッチ
28 係合孔
30 封印シール(シール)
30b 貼着面
31a,31b シール貼着部
35a,35b 識別情報
36a,36b 識別情報表示部