(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】理美容用椅子
(51)【国際特許分類】
A61G 5/10 20060101AFI20230905BHJP
A47C 1/06 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
A61G5/10 703
A47C1/06
(21)【出願番号】P 2019149367
(22)【出願日】2019-08-16
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】519298835
【氏名又は名称】株式会社ビーフェル
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】米崎 康正
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-151168(JP,A)
【文献】米国特許第06793232(US,B1)
【文献】特開平08-182561(JP,A)
【文献】実開昭53-108065(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 1/04-1/06
A61G 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リクライニング可能な背もたれ部および座面部を有する座椅子部と、
車輪を有し、前記座椅子部と分離可能に連結される台車部とを備え、
前記座椅子部が、前記台車部と当接する底面を有する複数の当接部材を備え、
前記台車部が、前記複数の当接部材の底面にそれぞれ当接する天面を有する複数の支持部材と、前記複数の支持部材を昇降可能とする昇降機構とを備え
、
前記座椅子部が、略鉛直方向に凹んだ、または、略鉛直方向に突出した第1係合部を有し、
前記台車部が、略鉛直方向に突出した、または、略鉛直方向に凹んでおり、前記第1係合部と係合する第2係合部を有し、
前記座椅子部は、上方向に持ち上げることで、前記台車部から分離可能であり、
前記座椅子部と前記台車部とを連結した場合に、前記当接部材の底面と前記支持部材の天面が当接するとともに、前記第1係合部と前記第2係合部とが係合する、理美容用椅子。
【請求項2】
前記座椅子部が、前記座面部の左右下側に設けられ、前記座面部を支持する一対のフレーム部材をさらに有し、
前記当接部材は、前記一対のフレーム部材の下側に配置され、前記一対のフレームの端部と接合している、請求項1に記載の理美容用椅子。
【請求項3】
前記第1係合部および前記第2係合部のうち一方は、テーパー形状を有しており、
前記第1係合部および前記第2係合部のうち他方は、前記テーパー形状を収容する凹形状を有している、請求項1または2に記載の理美容用椅子。
【請求項4】
前記座椅子部の前記当接部材と前記台車部の前記支持部材との当接面が、水平方向に対して後方に傾いている、請求項1
ないし3のいずれかにに記載の理美容用椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サービス利用者を座らせたまま、理容サービスを提供するための理美容用椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自力で歩行できない患者や高齢者に対して洗髪サービスを提供するために、座面および背もたれを洗髪に適した高さとなるまで昇降することが可能な洗髪用の理美容用椅子が知られている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
訪問型の洗髪サービスを提供する場合、洗髪用の理美容用椅子を車両に搭載して訪問先まで移動し、また、訪問先に到着したら車両から理美容用椅子を降ろす作業が必要となる。しかしながら、洗髪用などの理美容用椅子は、シートを上下に昇降させる昇降機構などを有するため、通常の車椅子よりも重量があり、サービス提供者が理美容用椅子を車両に搭載、あるいは、車両から降ろす際の負担が大きくなってしまうという問題があった。特に、理美容サービス業界は、サービス提供者として女性従事者の割合が比較的高く、この問題を解決することが希求されていた。
【0005】
本発明の目的は、サービス提供者が理美容用椅子を車両などに搭載、あるいは、車両などから降ろす際の負担を軽減することができる、理美容用椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る理美容用椅子は、リクライニング可能な背もたれ部および座面部を有する座椅子部と、車輪を有し、前記座椅子部と分離可能に連結される台車部とを備え、前記座椅子部が、前記台車部と当接する底面を有する複数の当接部材を備え、前記台車部が、前記複数の当接部材の底面にそれぞれ当接する天面を有する複数の支持部材と、前記複数の支持部材を昇降可能とする昇降機構とを備え、前記座椅子部が、略鉛直方向に凹んだ、または、略鉛直方向に突出した第1係合部を有し、前記台車部が、略鉛直方向に突出した、または、略鉛直方向に凹んでおり、前記第1係合部と係合する第2係合部を有し、前記座椅子部は、上方向に持ち上げることで、前記台車部から分離可能であり、前記座椅子部と前記台車部とを連結した場合に、前記当接部材の底面と前記支持部材の天面が当接するとともに、前記第1係合部と前記第2係合部とが係合する。
上記理美容用椅子において、前記座椅子部が、前記座面部の左右下側に設けられ、前記座面部を支持する一対のフレーム部材をさらに有し、前記当接部材は、前記一対のフレーム部材の下側に配置され、前記一対のフレームの端部と接合しているように構成することができる。
上記理美容用椅子において、前記第1係合部および前記第2係合部のうち一方は、テーパー形状を有しており、前記第1係合部および前記第2係合部のうち他方は、前記テーパー形状を収容する凹形状を有しているように構成することができる。
上記理美容用椅子において、前記座椅子部の前記当接部材と前記台車部の前記支持部材との当接面が、水平方向に対して後方に傾いているように構成することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、サービス提供者が理美容用椅子を車両などに搭載、あるいは、車両などから降ろす際の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る理美容用椅子の斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る理美容用椅子の洗髪時の使用状態を示す斜視図である。
【
図3】座椅子部と台車部とを分離した状態を示す図である。
【
図4】座椅子部と台車部との当接部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る理美容用椅子の実施形態を、図に基づいて説明する。本実施形態では、サービス利用者(洗髪などのサービスを受ける者)が理美容用椅子に座ったまま洗髪サービスを受けるための洗髪用の理美容用椅子を例示して、本発明に係る理美容用椅子を説明するが、本発明に係る理美容用椅子は洗髪用の理美容用椅子に限定されず、サービス利用者が椅子に座ったまま散髪サービス、身体マッサージサービス、フェイシャルマッサージサービス、あるいはネイルサービスを受けるための理美容用椅子に適用することもできる。なお、以下においては、サービス利用者が理美容用椅子に座った場合に、サービス利用者の正面となる側を前方(前方側)ともいい、サービス利用者の背面となる側を後方(後方側)ともいう。
【0010】
図1は、本実施形態に係る理美容用椅子1の斜視図であり、
図2は、本実施形態に係る理美容用椅子1の洗髪時の使用状態を示す斜視図である。また、
図3は、座椅子部と台車部とを分離した状態を示す図である。
図1~
図3に示すように、本実施形態に係る理美容用椅子1は、座椅子部10と台車部20とを有している。また、
図3に示すように、本実施形態に係る理美容用椅子1では、座椅子部10と台車部20とが互いに分離可能となっている。以下に、座椅子部10および台車部20の各構成について説明する。
【0011】
座椅子部10は、
図1~
図3に示すように、サービス利用者が理美容用椅子1に座った場合にサービス利用者の身体が接触するシート部材11と、シート部材11の下側に設けられた一対のフレーム部材12と、一対のフレーム部材12の下側に配置された一対の当接部材13と、各当接部材13の前後両端にそれぞれ設けられた第1係合部14と、当接部材13の側面に設けられた留め具15と、を有する。
【0012】
シート部材11は、
図1に示すように、サービス利用者が座る座面部111と、背もたれ部112と、フットレスト113とを有する。背もたれ部112およびフットレスト113は座面部111との連結箇所を中心に回動可能となっており、座面部111に対する背もたれ部112およびフットレスト113の傾きを調節することができる。たとえば、サービス提供者は、洗髪サービスを提供する場合に、背もたれ部112およびフットレスト113を略水平となるように傾きを調節することで、座面部111、背もたれ部112およびフットレスト113を略水平とすることができる。
【0013】
座面部111の左右下側には、一対のフレーム部材12および一対の当接部材13が設けられている。一対のフレーム部材12および一対の当接部材13は、座面部111(シート部材11)を支持する部材であり、
図1および
図2に示すように、前後方向に延伸している。また、一対のフレーム部材12は、
図1および
図2に示すように、アーチ状となっており、その両端は下方へと延伸して当接部材13と接合している。
【0014】
図4は、座椅子部10と台車部20との当接部分を拡大した拡大図である。当接部材13は、
図4に示すように、略水平方向に延在する部材である。当接部材13は、下側に平らな底面を有し、後述する台車部20の支持部材23の天面と面で当接することで、座椅子部10を台車部20の上に安定して配置する。
【0015】
また、当接部材13の両端には、凹部材である第1係合部14が設けられている。座椅子部10と台車部20とが連結する場合、第1係合部14の凹部には、台車部20の支持部材23の両端に設けられた第2係合部24の凸部が挿入され、第1係合部14と第2係合部24とが係合する。これにより、座椅子部10と台車部20とを安定して連結することができる。
【0016】
なお、一対のフレーム部材12、一対の当接部材13、および、シート部材11の骨格部分を構成する材料は特に限定されないが、アルミニウム、ステンレス、鉄などの金属材料から構成することができる。特に、座椅子部10の積み下ろしにおける負担をより軽減するために、一対のフレーム部材12、一対の当接部材13、または、シート部材11の骨格部材を、アルミニウムで構成することが好ましい。また、座椅子部10の積み下ろしにおけるサービス提供者の負担をより軽減するために、座椅子部10のヘッドレストや肘掛けを、シート部材11から取り外し可能とすることもできる。
【0017】
次いで、台車部20について説明する。
図5は、本実施形態に係る台車部20を示す斜視図である。台車部20は、
図5に示すように、前方車輪21と、後方車輪22と、台車部20の左右両端に設けられた一対の支持部材23と、各支持部材23の両端にそれぞれ設けられた第2係合部24と、支持部材23の側面に設けられた留め具25と、昇降機構26とを有する。
【0018】
前方車輪21は理美容用椅子1の前方側に設けられた車輪であり、後方車輪22は理美容用椅子1の後方側に設けられた車輪である。理美容用椅子1が車輪21,22を有することで、サービス提供者は、理美容用椅子1を持ち上げることなく、理美容用椅子1を移動させることができる。また、前方車輪21は、後方車輪22よりも径が大きく構成されており、理美容用椅子1が段差を乗り越え易くすることができる。また、台車部20は、車輪21,22を前方に固定し、理美容用椅子1を安定して前進させる第1態様と、車輪21,22を自在に回転可能として理美容用椅子1を小回り可能とする第2態様とを切り替える、切り替え機構(不図示)を備える構成とすることができる。
【0019】
台車部20は、
図5に示すように、左右両端に一対の支持部材23を有している。支持部材23の天面(上面)は、平面となっており、座椅子部10の当接部材13の底面と面で当接することで、座椅子部10を支持し、座椅子部10を台車部20の上に安定して搭載することができる。
【0020】
また、各支持部材23の前後両端には、第2係合部24が設けられている。第2係合部24は、座椅子部10と台車部20とを連結する場合に、当接部材13の第1係合部14とそれぞれ係合し、座椅子部10と台車部20とを安定して連結させることができる。また、第2係合部24は、先端ほど細いテーパー形状を有しており、凹部材である第1係合部14を係合させ易くなっている。
【0021】
昇降機構26は、一対の支持部材23を上下に昇降させるための機構である。本実施形態では、
図5に示すように、昇降機構26としてパンタグラフ構造を有するジャッキ機構を例示している。昇降機構26は、ジャッキ機構に限定されず、油圧シリンダなどのシリンダ機構や、ネジ機構なども用いることもできる。また、
図5に示す例では、ジャッキ機構としてネジ式ジャッキを例示しているが、これに限定されず、油圧式ジャッキなどを用いることもできる。
【0022】
当接部材13の側面および支持部材23の側面には、留め具15,25がそれぞれ設けられている。
図4に示すように、留め具15,25を互いに掛け合せることで座椅子部10が台車部20から外れないようにロックすることができる。また、留め具15,25を外し、座椅子部10を上に持ち上げることで、座椅子部10を台車部20から取り外すことができる。
【0023】
次に、理美容用椅子1の使用方法について説明する。具体的には、理美容用椅子1を車両に搭載してサービス提供先まで移動し、サービス提供先において車両から理美容用椅子1を降ろし、理美容用椅子1にサービス利用者を乗せて、洗髪などのサービスを提供する方法について説明する。
【0024】
まず、理美容用椅子1を車両に搭載してサービス提供先まで移動する場合、サービス提供者は、留め具15,25を外し、座椅子部10を上に持ち上げて、座椅子部10を台車部20から取り外す。そして、座椅子部10と台車部20とをそれぞれ個別に車両に搭載する。これにより、サービス提供者が理美容用椅子1を一度に持ち上げることを防止することができるため、サービス提供者の負担を軽減することができる。同様に、サービス提供先に到着した場合には、サービス提供者は、座椅子部10と台車部20とをそれぞれ個別に車両から降ろすことができる。
【0025】
また、サービス提供者は、サービス提供先において、座椅子部10の第1係合部14と台車部20の第2係合部24とを係合させ、当接部材13の底面と支持部材23の天面とが面で当接するように、座椅子部10を台車部20の上に搭載する。そして、サービス提供者は、留め具15,25を掛け合せることで、座椅子部10と台車部20とを安定して連結し、理美容用椅子1を構成する。これにより、サービス提供者は、サービス利用者を理美容用椅子1に乗せることができ、理美容用椅子1に乗せたサービス利用者を、
図2に示すように、洗面台の位置まで移動させることができる。
【0026】
次いで、サービス提供者は、
図2に示すように、サービス利用者の洗髪を行うために、背もたれ部112およびフットレスト113の傾き(リクライニング)を調節する。また、台車部20は、昇降機構26を有しており、サービス提供者は、昇降機構26により支持部材23を上下に昇降させ、これにより、当接部材13およびフレーム部材12を上下に昇降させて、シート部材11を上下に昇降させることができる。サービス提供者は、このように昇降機構26を操作することで、サービス利用者の頭部の位置を洗面台の高さに合わせる。これにより、サービス提供者は、サービス利用者に洗髪サービスを提供することができる。
【0027】
洗髪サービスが終了した場合には、サービス提供者は、理美容用椅子1のリクライニングを戻し(背もたれ部112およびフットレスト113の傾きを
図1に示す状態に戻し)、サービス利用者を理美容用椅子1から降ろした後、理美容用椅子1を座椅子部10と台車部20とに分離する。そして、サービス提供者は、分離した座椅子部10と台車部20とをそれぞれ個別に車両に搭載することができる。
【0028】
以上のように、本実施形態に係る理美容用椅子1は、リクライニング可能な背もたれおよび座面を有する座椅子部10と、座椅子部10と分離可能に連結される台車部20とを備えているため、たとえば車両に理美容用椅子1を搭載し、また、車両から理美容用椅子1を降ろす場合に、座椅子部10と台車部20と分離して別々に積み下ろしすることができ、サービス提供者の負担を軽減することができる。たとえば、従来の理美容用椅子では重量が30kg程度であったのに対して、本実施形態に係る理美容用椅子1では、座椅子部10を14kg未満、より好ましくは10kg未満とすることができ、台車部20の重量を15kg未満、より好ましくは12kg未満とすることができる。加えて、座椅子部10は、ヘッドレストや肘掛けを取り外すことで、さらに軽量化を図ることができる。また、本実施形態に係る理美容用椅子1では、座椅子部10と台車部20とを分離でき、さらに、座椅子部10は座面部111およびフットレスト113をコンパクトに折りたたむことができるため、持ち運びが容易になるという効果を奏することもできる。
【0029】
また、本実施形態に係る理美容用椅子1では、座椅子部10と台車部20とを連結している場合には、座椅子部10が有する複数の当接部材13(左右一対の当接部材13)の底面と、台車部20が有する複数の支持部材23(左右一対の支持部材23)の天面とが面で当接するため、理美容用椅子1を安定して使用することができる。
さらに、本実地形態に係る理美容用椅子1では、座椅子部10は凹部材である第1係合部14を有し、台車部20は凸部材である第2係合部24を有し、座椅子部10と台車部20とを連結した場合に、当接部材13の底面と支持部材23の天面とが当接すると同時に、第1係合部14と第2係合部24とが係合する。これにより、座椅子部10と台車部20とを連結する場合に、理美容用椅子1をより安定化することができる。さらに、第1係合部14は凹部材であり、第2係合部24はテーパー形状の凸部材であるため、第2係合部24を第1係合部14に係合させることが容易となっている。
【0030】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0031】
たとえば、上述した実施形態では、座椅子部10の第1係合部14を凹部材とし、台車部20の第2係合部24を凸部材とする構成を例示したが、この構成に限定されず、第1係合部14を凸部材とし、第2係合部24を凹部材とする構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0032】
1…理美容用椅子
10…座椅子部
11…シート部材
111…座面部
112…背もたれ部
113…フットレスト
12…フレーム部材
13…当接部材
14…第1係合部
15…留め具
20…台車部
21…前方車輪
22…後方車輪
23…支持部材
24…第2係合部
25…留め具
26…昇降機構