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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】レールボンド
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/64 20060101AFI20230905BHJP
   E01B 11/54 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
H01R4/64 G
E01B11/54
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019150670
(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公開番号】P2021034164
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000190172
【氏名又は名称】信号器材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】北田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】岩田 紘明
(72)【発明者】
【氏名】中井 実
(72)【発明者】
【氏名】吉橋 めぐみ
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】実公昭13-005849(JP,Y1)
【文献】実公昭07-005123(JP,Y1)
【文献】実公昭10-010086(JP,Y1)
【文献】特開2001-210397(JP,A)
【文献】特許第153200(JP,C2)
【文献】実公昭09-011723(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/02,4/64
H01R 43/00
E01B 5/00,11/54,31/02
B60M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールの継ぎ目に取り付けられ、レール間を電気的に接続する導電体と、
前記レールに対して所定の間隔をもって対峙する外壁部と、前記外壁部の左右の両端に形成された側壁部と、レールとの間に形成される空間部とを備える取付け部と、
前記取付け部の下底部に形成された、前記導電体の各端部が装着される筒体部と、
を備え、
前記空間部に形成される合金蝋で、前記レールの表面と電気的に接続される端子部材とを備えたレールボンドであって、
前記導電体は、
前記端子部材に形成された筒体部に挿入されて接続される第1部位と、
前記第1部位に続いて、レールの下首部もしくはレールの底部上面に至る長さを有する第2部位と、
前記第2部位に対して直角に折り曲げられ、前記レールの下首部もしくはレールの底部上面に沿ってレールの長手方向に接した状態で配置される第3部位と、
を備え、
前記導電体の第1部位が挿入されて接続される前記筒体部の軸心が、端子部材の開放面に沿って形成され、
端子部材の開放面に沿った前記筒体部の長さ寸法が、端子部材の開放面に沿った端子部材の長さ寸法より短く形成され、
前記導電体の第1部位が、前記第2部位に対してほぼ直角に折り曲げられた状態で、前記筒体部に接続され、
前記導電体の第1部位と第2部位の間の折り曲げ点と、第2部位と第3部位の間の折り曲げ点が、端子部材の下方領域に位置していることを特徴とするレールボンド。
【請求項2】
前記端子部材は、レールの側面部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のレールボンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールの継ぎ目に取り付けられ、レール間を電気的に接続する導電体と、この導電体の端部に装着されて、導電体とレールとを電気的に接続する端子部材(レールボンド端子)とを備えたレールボンドに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道レール間の電気的な接続を良好にするために、レールの継目には周知のとおりレールボンドが取り付けられる。すなわち、前記レールは鉄道車両を走行させる軌道としての役割のみならず、運行表示の切り替えやポイントの切り替えを行うための各種の信号電流あるいは帰線電流を伝達する役割も担っている。
しかしながら、直射日光等を受けることによるレールの熱膨張を吸収するために、レール同士の継ぎ目には隙間が設けられており、この隙間によってレール間が電気的に分離される。そこで、この継ぎ目部分に導電性のレールボンドを取り付けることで、レール同士の電気的な接続を確保している。
【0003】
このレールボンドは、一般に数十本程度の細径の軟銅を集合させたより線による導電体と、この導電体の両端部に取り付けられ、前記導電体とレールとを電気的に接続する端子部材(レールボンド端子)が備えられる。
この種のレールボンドとその取り付け手段については、本出願人において過去に幾つかの提案がなされており、レールの側面部に対して端子部材(レールボンド端子)を、合金蝋を利用して溶接により取り付ける手段を採用したものとして、特許文献1を挙げることができる。
【0004】
図14および図15は、特許文献1に開示されたレールボンド11について示しており、このレールボンド11は、レール5同士を電気的に接続する導電体21と、この導電体21の各端部に取り付けられて、導電体21とレール5とを電気的に接続する端子部材(レールボンド端子)31とを備えている。なお図14および図15は、一方の端子部材31について示している。
またレール5は、図15に示すように、その上部すなわち車輪に接する部分を頭部5aと呼び、まくらぎ等に接する部分を底部5bと呼んでいる。さらに頭部5aと底部5bを接続する中央部を側面部もしくは腹部5cと呼んでおり、側面部5cと底部5bを接続する曲面部を下首部5dと呼んでいる。
【0005】
端子部材31は、図14に示すように銅素材により帯板状に成形されたレール5への取り付け部31Aと、この取り付け部31Aの端部に前記取り付け部31Aと一体成形された筒体部31Bとにより構成されている。
レール5への取り付け部31Aは、一方の面を円弧の凸面状に湾曲させて、レール5への溶接面31aを構成している。
そして、他方の凹面状に湾曲された面31bに沿って、筒状に形成された筒体部31Bが、レール5への取り付け部31Aと一体に形成されており、前記筒体部31Bには軟銅を集合させたより線による導電体21の端部が挿入される。そして、筒体部31Bは外側からかしめられることで、端子部材(レールボンド端子)31に導電体21が接続される。
【0006】
図15は、端子部材31をレール5の側面部(腹部)5cに対して溶接により取り付けた状態を、レール5の長手方向に直交する断面図で示している。
端子部材31を溶接しようとするレール5の側面部5cには、予めレールの地肌を露出させる等の研磨処理が施され、これに合金蝋によるメッキ処理が施される。
端子部材31には図14に示したとおり、凸面状に湾曲させた溶接面31aが形成されており、この溶接面31aを図15に示すように、前処理が施されたレール5の側面部5cに対して、図示せぬ治具等を用いて仮固定する。
【0007】
この状態でレール5の側面部5cと、端子部材31の溶接面31aとの間の隙間空間に、バーナの火炎を当てつつ合金蝋を流し込むことで、レール5と端子部材31の対向する上下の隙間空間に、合金蝋41を盛り込むことができる。
これにより、端子部材31の溶接面31aは、レール5の側面部5cに対して、合金蝋41を介して溶接をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-169571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に記載されたレールボンドにおいては、レールボンド端子がレールの側面部に取り付けられるために、レールボンド端子間の導電体は、レール間において宙吊り状態となる。
このために、鉄道車両の通過によりレールに対して前記導電体が相対的に振動し、これが長期間に亘って繰り返されることで、レールボンド端子に対する導電体の取り付け部分において亀裂が生じ、あるいはまたレールボンド端子とレールとの間の溶接部分に剥離が生ずる等の問題が発生する。
この様な事態は、鉄道の運行に即座に支障を来たすことから、前記した導電体の振動に基づく前記した亀裂や剥離の発生の問題に対しては、万全の対策を施す必要がある。
【0010】
この発明は、前記した技術的な観点に基づいてなされたものであり、鉄道車両の通過に基づいて、レールボンド端子間の導電体がレールに対して相対的に振動するのを効果的に抑制し、レールボンド端子の一部やレールとの間に生ずる亀裂や剥離の進行を、効果的に抑えることができるレールボンドを提供することを主要な目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した技術的課題を解決するためになされたこの発明にかかるレールボンドは、レールの継ぎ目に取り付けられ、レール間を電気的に接続する導電体と、前記レールに対して所定の間隔をもって対峙する外壁部と、前記外壁部の左右の両端に形成された側壁部と、レールとの間に形成される空間部とを備える取付け部と、前記取付け部の下底部に形成された、前記導電体の各端部が装着される筒体部と、を備え、前記空間部に形成される合金蝋で、前記レールの表面と電気的に接続される端子部材とを備えたレールボンドであって、前記導電体は、前記端子部材に形成された筒体部に挿入されて接続される第1部位と、前記第1部位に続いて、レールの下首部もしくはレールの底部上面に至る長さを有する第2部位と、前記第2部位に対して直角に折り曲げられ、前記レールの下首部もしくはレールの底部上面に沿ってレールの長手方向に接した状態で配置される第3部位と、を備え、前記導電体の第1部位が挿入されて接続される前記筒体部の軸心が、端子部材の開放面に沿って形成され、端子部材の開放面に沿った前記筒体部の長さ寸法が、端子部材の開放面に沿った端子部材の長さ寸法より短く形成され、前記導電体の第1部位が、前記第2部位に対してほぼ直角に折り曲げられた状態で、前記筒体部に接続され、前記導電体の第1部位と第2部位の間の折り曲げ点と、第2部位と第3部位の間の折り曲げ点が、端子部材の下方領域に位置していることを特徴とする。
【0012】
特に、前記導電体の第1部位が挿入されて接続される前記筒体部の軸心が、端子部材の開放面に沿って形成され、前記導電体の第1部位が、前記第2部位に対してほぼ直角に折り曲げられた状態で、前記筒体部に接続されていることに特徴がある。
【0013】
また、端子部材の開放面に沿った前記筒体部の長さ寸法が、端子部材の開放面に沿った端子部材の長さ寸法より短く形成されていることに特徴がある。
更に、前記導電体の第1部位と第2部位の間の折り曲げ点と、第2部位と第3部位の間の折り曲げ点が、端子部材の下方領域に位置していることに特徴がある。
【0015】
ここで、前記端子部材は、合金蝋を利用した溶接により、レールの側面部に対して取り付けられることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係るレールボンドによると、レールの継ぎ目部分にそれぞれ取り付けられたレールボンド端子間を接続する導電体は、一つの形態としてレールの側面部と底部上面との間の下首部に沿って、レールの長手方向に接した状態で配置される。
また、レールボンド端子間を接続する前記導電体は、他の一つの形態としてレールの底部上面に沿って、レールの長手方向に接した状態で配置される。
【0017】
したがって、レールボンド端子間の導電体は、レールの継ぎ目部分を間にして宙吊り状態となるのを避けることができる。これにより、鉄道車両の通過に伴いレールに対して前記導電体が相対的に振動するのを効果的に抑制することができる。
それ故、レールボンド端子に対する導電体の取り付け部分において亀裂が生ずる事態、或いはレールボンド端子とレールとの間の溶接部分に剥離を招くなどの事態を避けることができ、長期に亘って電気的な特性を維持することができる耐久性と信頼性の高いレールボンドを提供することに寄与できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明に係るレールボンドの第1実施例を示した上面図である。
図2】同じく第1実施例の正面図である。
図3】同じく第1実施例における端子部材の左側面図である。
図4】同じく第1実施例における端子部材のレールへの取り付け状態を示した模式図である。
図5】この発明に係るレールボンドの第2実施例を示した上面図である。
図6】同じく第2実施例の正面図である。
図7】同じく第2実施例における端子部材のレールへの取り付け状態を示した模式図である。
図8】この発明に係るレールボンドの第3実施例を示した上面図である。
図9】同じく第3実施例の正面図である。
図10】この発明に係るレールボンドの第4実施例を示した上面図である。
図11】同じく第4実施例の正面図である。
図12】この発明に係るレールボンドの第5実施例を示した上面図である。
図13】同じく第5実施例の正面図である。
図14】従来のレールボンドの一例を示した斜視図である。
図15図14に示すレールボンドのレールへの取り付け状態を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明に係るレールボンドについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
なお、以下に示す各図においては、レールボンドにおける一方の端子部材(レールボンド端子)と、これに接続される導電体の一端部側の形態について記載し、他方の端子部材と、これに接続される導電体の他端部側の形態は、左右対称であるため図示を省略する。
【0020】
図1図4は、この発明に係る第1実施例のレールボンドについて示しており、このレールボンド1は、この明細書の冒頭に記述したとおり、数十本程度の細径の軟銅を集合させたより線による導電体2と、この導電体2の両端部にそれぞれ取り付けられて、レール5の継ぎ目において前記導電体2と各レール5とを電気的に接続する端子部材3が備えられる。
【0021】
端子部材3は全体が銅素材により構成されており、この端子部材3には、端子部材3が取り付けられるレール5の側面部5cに対して所定の間隔をもって対峙する外壁部3aと、前記外壁部3aの左右の両端部に形成された第1の側壁部3b、および第2の側壁部3cとが備えられる。
前記外壁部3aと左右の側壁部3b,3cとにより、レール5の側面部5cとの間で、空間部3dを有するレールへの溶接による取り付け部3Aが構成されており、この取り付け部3Aの上部に開放部(開放面)3eが形成されている。
この開放部3eを利用して(開放面を介して)後述する合金蝋が、前記空間部3d内に盛り込まれ、図4に示すように端子部材3がレール5の側面部5cに溶接により取り付けられる。
【0022】
また、前記取り付け部3Aの下底部には、前記開放部(開放面)3eに沿って(平行に)前記した導電体2が挿入されて接続される筒体部3Bが、取り付け部3Aと一体に形成されている。この筒体部3Bの上面側の側面が前記した空間部3dの下底部を構成している。
そして、端子部材3は図2に示すように、取り付け部3Aの下底部から上部の開放部(開放面)3eに向かって、左右の側壁部3b,3cの間隔が拡大する台形形状を構成している。
すなわち、この実施の形態においては、端子部材3の筒体部3B側を下底とし、上部の開放部(開放面)3e側を上底にすると共に、側壁部3b,3cを左右の脚とした、等脚台形形状に構成されている。
【0023】
さらに図2に示すように、第1の側壁部3bに平行するようにして4本の第1リブ部材3fが外壁部3aの内面に形成されると共に、前記第2の側壁部3cに平行するようにして4本の第2リブ部材3gが外壁部3aの内面に形成されている。
すなわち、群をなす第1リブ部材3fと第2リブ部材3gとは、空間部3dの下底部から上端の開放部3eに向かって、それぞれ両外側に開くように配列されている。
加えて、図1に示されているように、レール5の側面部5cに接する側壁部3b,3cの外壁部3aからの立ち上がり寸法に対して、各リブ部材3f,3gにおける外壁部3aからの高さ寸法は若干低く設定されている。
【0024】
一方、前記した筒体部3Bは加工前の初期状態においては、その内周面は円筒状に成形されており、円筒内周面の軸心3h(図2参照)は、開放部(開放面)3eに沿って(平行に形成されている。即ち、端子部材3をレール5に取り付けた状態において、円筒内周面の軸心3hは、レール5の長手方向に沿うように形成されている。
【0025】
そして、筒体部3B内に導電体2を接続するには、筒体部3B内に導電体2の端部を挿入し、図示せぬ治具を用いて筒体部3Bに対して外壁部3aの面に直交する方向に、圧縮変形(プレス加工)を与える。これにより、端子部材3に対して導電体2を機械的および電気的に接続することができる。図3は、筒体部3Bが圧縮変形を受けて若干偏平状になされた例を示している。
【0026】
なお、筒体部3Bに導電体2の端部を接続するにあたっては、導電体2に対して図1図4に示したように、予め屈曲成形した加工を施しておくことが望ましい。
この導電体2は、筒体部3Bに挿入されて接続される導電体2の第1部位2aと、前記第1部位2aに続いてレール5の下首部5dに至る長さ(長さ寸法)を有する第2部位2bと、前記第2部位2bに対して直角に折り曲げられ、レール5の下首部5dに沿ってレールの長手方向に接した状態で配置される第3部位2cとが形成されている。
加えて、導電体2の前記第1部位2aが挿入される筒体部3Bの軸心3hが、レールの長手方向に形成されている第1実施例の場合には、導電体2の第1部位2aが、前記第2部位2bに対してほぼ直角に折り曲げられた加工も施される。
【0027】
また、端子部材3の開放部(開放面)3eに沿った前記筒体部Bの長さ寸法L1は、端子部材3の開放部(開放面)3eに沿った端子部材3の長さ寸法L2より短く形成されている。
そして、導電体の第1部位2aと第2部位2bの間のほぼ直角に折り曲げられた折り曲げ点と、第2部位2bと第3部位2cの間のほぼ直角に折り曲げられた折り曲げ点が、端子部材3の下方領域に位置している(端子部材3の長さ寸法L2内に位置している)。
【0028】
前記した第1部位2aと第2部位2bの間の折り曲げ点と、第2部位2bと第3部位2cの間の折り曲げ点が、端子部材3の下方領域から離れた、レール5の長手方向に位置している場合には、レールボンド端子間を接続する導電体2の一部がいわゆる宙吊り状態となり、導電体2の振動の抑制効果が少ない。
そのため、上記したように、導電体2の第1部位2aと第2部位2bの間のほぼ直角に折り曲げられた折り曲げ点と、第2部位2bと第3部位2cの間のほぼ直角に折り曲げられた折り曲げ点が、端子部材3の下方領域に位置している場合には、いわゆる宙吊り状態の導電体2の部分が少ないため、導電体2の振動の抑制効果が大きく、より好ましい。
【0029】
斯くして、前記した屈曲加工が予め施された導電体2を接続した端子部材(レールボンド端子)3は、図4に示すようにレール5の側面部5cに、溶接により取り付けられる。 なお、端子部材3をレール5に溶接するに際しては、レール5の側面部5cに対して、予めレールの地肌を露出させる等の研磨処理が施され、これにフラックス等を用いて合金蝋をメッキする等の前処理がなされる。
そして端子部材3は、図示せぬボンド溶接工具等を用いて、レール5の側面部5cに仮固定される。
【0030】
前処理が施されたレール5の腹部5cに仮固定されたレールボンド端子(端子部材)3には、棒状の合金蝋が端子部材3の空間部3d内に投入され、端子部材3にバーナの火炎が当てられることで、前記合金蝋が溶かされる。加えて浸透棒等を併用することで、溶接面の酸化皮膜の取り除きと気泡抜きを行うなどの処理がなされる。
このとき、端子部材3の側壁部3b,3cは台形形状に形成されているため、空間部3dの下底部(側壁部3b,3cの下端部)に位置する気泡を容易に抜くことができる。
そして、溶融した合金蝋の冷却を待って、防錆のためにレールボンド端子3と、その溶接面などに防錆用塗料を塗布することで、レールボンド端子3のレール5への溶接が完了する。
【0031】
前記したレールボンド端子3によると、合金蝋が盛り込まれる取り付け部3Aの空間部3d内には、それぞれ複数の第1と第2のリブ部材3f,3gが備えられ、しかも、台形形状を構成した左右の側壁部3b,3cにそれぞれ平行するようにして配置される。
したがって、各リブ部材3f,3gは互いに非平行状態に配列されることで、各リブ部材3f,3gと合金蝋との間の結合強度を一層向上させることができ、また各リブ部材の存在は、端子部材3の機械的強度を確保することにも寄与できる。
【0032】
前記した溶接工程の説明は一例であり、これによりレール5に装着されたレールボンド1によると、図4に示すようにレールボンド端子3を結ぶ導電体2は、導電体2の前記した第3部位2cが、レール5の側面部5cと底部上面5dとの間の下首部5dに沿って、レール5の長手方向に接した状態で配置される。
したがって、列車の通過に伴う振動等を受けても、レール5に対して前記導電体2が相対的に振動するのを抑制することができる。
これにより、レールボンド端子と導電体との間に生ずる亀裂や、レールボンド端子とレールとの間の溶接部分の剥離等の発生を、長期に亘って防ぐことができる等、前記した発明の効果の欄に記載した作用効果を得ることが可能となる。
【0033】
図5図7は、この発明に係る第2実施例のレールボンド1について示しており、これに用いられる端子部材(レールボンド端子)3は、図1図4に示した第1実施例と同一である。したがって、それぞれ相当する部分を同一符号で示し、端子部材3についての詳細な説明は省略する。
第2実施例のレールボンド1については、端子部材3に接続された導電体2の第2部位2bが図7に示すように、レール5の下首部5dから底部上面5dの端部付近まで伸ばすことができる長さ寸法を有している点に特徴がある。
【0034】
即ち、この第2実施例の導電体2は、端子部材3の筒体部3Bに挿入されて接続される第1部位2aと、前記第1部位2aに続いてレールの底部上面5bに至る第2部位2bと、前記第2部位2bに対して直角に折り曲げられ、前記レールの底部上面5bに沿ってレール5の長手方向に接した状態で配置される第3部位2cとを備えている。
そして、導電体2の第1部位2aが挿入される筒体部の軸芯3hが、レールの長手方向に形成されている第2の実施例の場合には、導電体2の第1部位2aが、前記第2部位2bに対してほぼ直角に折り曲げられた加工も施されている。
【0035】
なお、この第2実施例のレールボンド1においても、導電体2の第1部位2aを、端子部材3の筒体部3Bに挿入し、筒体部3Bの一部を適宜圧縮変形させることで、端子部材3に対して導電体2を接続することができる。
そして、端子部材3をレール5の側壁部5cに取り付ける場合においても、合金蝋を用いた第1実施例と同様の溶接手段を採用することができる。
【0036】
前記した第2実施例のレールボンド1によると、レールの底部上面5bの端部付近にまで至る導電体2の第2部位2bは、レール5の底部上面5dに沿って接した状態で配置される。さらに、導電体2の前記した第3部位2cも、レールの底部上面5bに沿ってレール5の長手方向に接した状態で配置される。
したがって、この第2実施例においても列車の通過に伴う振動等を受けても、レール5に対して前記導電体2が相対的に振動するのを効果的に抑制することができるので、すでに説明した第1実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
図8および図9は、この発明に係る第3実施例のレールボンド1について示している。この第3実施例における端子部材(レールボンド端子)3については、導電体2の前記第1部位2aが挿入される筒体部3Bは、端子部材3の長さ寸法L2の中央(端子部材3の中央部)に形成されている。
また、前記筒体部の軸芯3hは、端子部材3の開放部(開放面)3eと交わる方向に形成され、前記導電体2の第1部位2a及び前記第2部位2bは、端子部材3の開放部(開放面)3eと交わる方向に沿って配置される。
【0038】
即ち、この端子部材3をレール5の側面部5cに取り付けた状態において、導電体2の端部が接続される筒体部3Bにおける円筒内周面の軸心3h(図9参照)は、レール5の高さ方向(垂直方向)に沿って形成されている。
また、前記筒体部3Bは外壁部3aの背面中央部において、取り付け部3Aの下底部から上部の開放部(開放面)3eに向かう垂直方向に沿って、取り付け部3Aと一体に形成されている。
なお、第3実施例の端子部材3におけるその他の構成は、図1図4に示した第1実施例の端子部材3、および図5図7に示した第2実施例の端子部材3と同一である。
したがって、端子部材3において同一の機能を果たす部分を同一符号で示しており、その詳細な説明は省略する。
【0039】
一方、第3実施例における導電体2は、筒体部3Bに挿入されて接続される第1部位2aを除いて、図5図7に示した第2実施例と同様になる。
すなわち、第3実施例における導電体2は、レール5の高さ方向に沿って形成された筒体部3Bに挿入されて接続される第1部位2aは、レール5の高さ方向に向かって垂直方向に形成されている。
【0040】
そして、第1部位2aに続いてレールの底部上面5bに至る長さ寸法を有する第2部位2bと、第2部位2bに対して直角に折り曲げられ、レールの底部上面5bに沿ってレールの長手方向に接した状態で配置される第3部位2cが備えられる点は、図5図7に示した第2実施例と同様となる。
【0041】
また、前記導電体の第2部位と第3部位の間の折り曲げ点が、端子部材の下方領域に位置している(端子部材3の長さ寸法L2内に位置している)。
このように、筒体部の軸芯3hを、端子部材3の開放部(開放面)3eと交わる方向に形成した結果、導電体の第2部位と第3部位の間の折り曲げ点を、端子部材の下方領域に位置させることができ、導電体の宙吊り状態の部分を少なくすることができる。
【0042】
なお、この第3実施例のレールボンド1においても、導電体2の第1部位2aを、端子部材3の筒体部3Bに挿入し、筒体部3Bの一部を適宜圧縮変形させることで、端子部材3に対して導電体2を接続することができる。
そして、端子部材3をレール5の側壁部5cに取り付ける場合においても、合金蝋を用いた第1実施例と同様の溶接手段を採用することができる。
【0043】
したがって、この第3実施例のレールボンド1によると、導電体2の第1部位2aと第2部位2bとの間は大きく屈曲されることなく、レール5の高さ方向に沿って成形することができる。
また、第3実施例のレールボンド1においても、レールの底部上面5bの端部付近まで至る長さを有する導電体2の第2部位2bは、レール5の底部上面5dに沿って接した状態で配置され、さらに導電体2の前記した第3部位2cも、レールの底部上面5bに沿ってレール5の長手方向に接した状態で配置される。
したがって、列車の通過に伴う振動等を受けても、レール5に対して導電体2が相対的に振動するのを効果的に抑制することができるので、第1および第2実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【0044】
なお、この第3実施例において、第2部位2bは、レールの底部上面5bの端部付近まで至る長さとしたが、レールの下首部に至る長さとしてもよい。このとき、第3部位2cは、第2部位に対して直角に折り曲げられ、前記レールの下首部に沿ってレールの長手方向に接した状態で配置される。
【0045】
図10および図11は、この発明に係る第4実施例のレールボンド1について示している。この第4実施例のレールボンド1に用いられる端子部材(レールボンド端子)3は、すでに説明した第1~第3実施例における端子部材3に比較して、より簡素な構成が採用されている。
すなわち、端子部材3のレールへの取り付け部3Aは、矩形状のプレートにより構成されており、その一方の平坦な面がレールへの溶接面3iを構成している。この溶接面3iには、予め合金蝋によるメッキ処理等を施すことで、レールへの溶接を容易にすることができる。また溶接面3iに凹状の切り込み等を適宜施すことで、レールに対する溶接による接合強度を増加させることが可能となる。
【0046】
一方、前記溶接面3iの背面には、取り付け部3Aの長手方向に沿って、導電体2の端部が挿入接続される筒体部3Bが形成されている。そして、筒体部3Bにおける円筒内周面の軸心3hは、端子部材3をレール5の側面部5cに取り付けた状態において、レール5の長手方向に沿うように構成されている。
なお、第4実施例のレールボンド1においても、導電体2の端部を、端子部材3の筒体部3Bに挿入し、筒体部3Bの一部を適宜圧縮変形させることで、端子部材3に対して導電体2を接続することができる。
【0047】
この第4実施例における導電体2は、図1図4に示した第1実施例に示した導電体とほぼ同様の構成にされている。したがって、レールボンド端子3を結ぶ導電体2は、導電体2の前記した第3部位2cが、レール5の側面部5cと底部上面5dとの間の下首部5dに沿って、レール5の長手方向に接した状態で配置される。
したがって、列車の通過に伴う振動等を受けても、レール5に対して導電体2が相対的に振動するのを効果的に抑制することができるので、この第4実施例におけるレールボンド1においても、すでに説明した各実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【0048】
図12および図13は、この発明に係る第5実施例のレールボンド1について示している。この第5実施例のレールボンド1に用いられる端子部材(レールボンド端子)3は、図10および図11に示した第4実施例における端子部材3と基本構成は同一である。
したがって、端子部材3について同一の機能を果たす部分を同一符号で示しており、その詳細な説明は省略する。
【0049】
ただし、この実施例における端子部材3における筒体部3Bは、取り付け部3Aの長手方向と直交する方向に形成されている。
即ち、この端子部材3をレール5の側面部5cに取り付けた状態において、その筒体部3Bにおける円筒内周面の軸心3h(図13参照)は、レール5の高さ方向(垂直方向)に沿って形成されている。
そして、第5実施例のレールボンド1においても、導電体2の端部を、端子部材3の筒体部3Bに挿入し、筒体部3Bの一部を適宜圧縮変形させることで、端子部材3に対して導電体2を接続することができる。
【0050】
この第5実施例に用いる導電体2は、図8および図9に示した第3実施例に示した導電体2と同一の構成を採用することができる。
これによると、導電体2の第1部位2aと第2部位2bとの間は大きく屈曲させることなく、レール5の高さ方向に沿って成形することができる。
【0051】
加えて、第5実施例における導電体2によると、例えば図7に示したようにレール5の下首部5dからレールの底部上面5bの端部付近まで至る長さを有する、導電体2の第2部位2bは、レール5の底部上面5dに沿って接した状態で配置される。
さらに導電体2の第3部位2cも、レールの底部上面5bに沿ってレール5の長手方向に接した状態で配置される。
したがって、列車の通過に伴う振動等を受けても、レール5に対して導電体2が相対的に振動するのを効果的に抑制することができるので、この第5実施例におけるレールボンド1においても、すでに説明した各実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 レールボンド
2 導電体
2a 第1部位
2b 第2部位
2c 第3部位
3 端子部材(レールボンド端子)
3A 取り付け部
3B 筒体部
3a 外壁部
3b 第1側壁部
3c 第2側壁部
3d 空間部
3e 開放部(開放面)
3f 第1リブ部材
3g 第2リブ部材
3h 筒体部軸心
3i 溶接面
5 レール
5a 頭部
5b 底部
5c 側面部(腹部)
5d 下首部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15