(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】生体情報測定装置及び生体情報測定システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/256 20210101AFI20230905BHJP
A61B 5/291 20210101ALI20230905BHJP
A61B 5/369 20210101ALI20230905BHJP
【FI】
A61B5/256 130
A61B5/291
A61B5/369
(21)【出願番号】P 2019163048
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2019010674
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】521110943
【氏名又は名称】株式会社Agama-X
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】馬場 基文
(72)【発明者】
【氏名】井戸 聞多
(72)【発明者】
【氏名】中尾 仁亮
(72)【発明者】
【氏名】得地 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】有川 樹一郎
(72)【発明者】
【氏名】須藤 正
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-021106(JP,A)
【文献】国際公開第2018/103861(WO,A1)
【文献】特開2018-158089(JP,A)
【文献】特開2018-186934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/25-5/297
A61B 5/369
A61B 5/00
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの外耳道に接触するように配置された第1電極と、
前記ユーザの耳甲介腔に接触するように配置された第2電極と、
前記第1電極が設けられ、前記外耳道に挿入される第1補助部と、
前記第2電極が設けられ、前記耳甲介腔に接触するように配置される第2補助部と、
を有し、
前記第1補助部と前記第2補助部とによって、前記ユーザに対する生体情報測定装置の移動が規制され、
前記第1補助部と前記第2補助部は弾性部材によって構成されており、
前記第1補助部の弾性係数と前記第2補助部の弾性係数は互いに異なる、
生体情報測定装置。
【請求項2】
前記第1補助部の弾性係数は前記第2補助部の弾性係数よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
前記第2補助部の弾性係数は前記第1補助部の弾性係数よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
前記第1補助部及び前記第2補助部の中の少なくとも1つは交換可能である、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうち何れか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項5】
前記第1電極及び前記第2電極によって測定された信号を外部装置に出力する出力手段を更に有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項
4のうち何れか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項6】
前記ユーザの右耳及び左耳の間で、生体情報測定装置が設置される耳が切り替えられた場合、切り替え前に測定された生体情報の感度と、切り替え後に測定された前記生体情報の感度との比較結果に応じた感度の測定モードに変更する制御手段を更に有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項
5のうち何れか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項7】
ユーザの一方の耳に設置された請求項1から請求項
6のうち何れか1項に記載の生体情報測定装置と、
前記ユーザの他方の耳に設置された請求項1から請求項
6のうち何れか1項に記載の生体情報測定装置と、
前記一方の耳に設置された生体情報測定装置と前記他方の耳に設置された生体情報測定装置とに含まれる電極群によって検出された電位に基づいて、前記ユーザの生体情報を測定する測定手段と、
を有する生体情報測定システム。
【請求項8】
ユーザの一方の耳に設置された請求項1から請求項
6のうち何れか1項に記載の生体情報測定装置と、
前記ユーザの他方の耳に設置された電極と、
前記一方の耳に設置された生体情報測定装置と前記他方の耳に設置された電極とに含まれる電極群によって検出された電位に基づいて、前記ユーザの生体情報を測定する測定手段と、
を有する生体情報測定システム。
【請求項9】
前記測定手段は、前記電極群の中から選択された電極を利用することで前記ユーザの生体情報を測定する、
ことを特徴とする請求項
7又は請求項
8に記載の生体情報測定システム。
【請求項10】
前記測定手段は、前記電極群に含まれる1つの電極を、前記ユーザの脳波を検出する電極として機能させ、前記電極群に含まれる別の電極を、検出された脳波と比較するためのリファレンス信号を検出する電極として機能させ、前記電極群に含まれる更に別の電極を、接地のために利用される電極として機能させることで、前記ユーザの生体情報を測定する、
ことを特徴とする請求項
7から請求項
9のうち何れか1項に記載の生体情報測定システム。
【請求項11】
前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置、及び、前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置の中の少なくとも1つの生体情報測定装置は、更に、
前記電極群によって測定された信号を処理する処理手段と、
前記処理手段によって処理された信号を外部装置に出力する出力手段と、
を有する、
ことを特徴とする請求項
7に記載の生体情報測定システム。
【請求項12】
前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置と、前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置は、それぞれ前記処理手段を有し、
生体情報測定装置毎に、前記処理手段によって処理された信号が前記出力手段によって
前記外部装置に出力される、
ことを特徴とする請求項
11に記載の生体情報測定システム。
【請求項13】
前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置は、前記処理手段を有しており、
前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置は、前記処理手段を有しておらず、
前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置の前記処理手段は、前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置によって測定された信号を処理する、
ことを特徴とする請求項
11に記載の生体情報測定システム。
【請求項14】
前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置の前記第1電極と、前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置の前記第1電極が、共に、前記ユーザの生体電位を検出する生体電位検出用電極として用いられ、
前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置の前記第2電極と、前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置の前記第2電極が、共に、接地のために利用されるグランド電極として用いられる、
ことを特徴とする請求項
11から請求項
13のうち何れか1項に記載の生体情報測定システム。
【請求項15】
前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置の前記第1電極が、前記ユーザの生体電位を検出する生体電位検出用電極として用いられ、
前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置の前記第1電極が、検出された生体電位と比較するためのリファレンス信号を検出する参照用電極として用いられ、
前記ユーザの一方の耳に接地された生体情報測定装置の前記第2電極、及び、前記ユーザの他方の耳に接地された生体情報測定装置の前記第2電極の中の少なくとも1つは、接地のために利用されるグランド電極として用いられる、
ことを特徴とする請求項
11から請求項
13のうち何れか1項に記載の生体情報測定システム。
【請求項16】
前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置の前記第1電極が、前記ユーザの生体電位を検出する生体電位検出用電極として用いられ、
前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置の前記第2電極が、接地のために利用されるグランド電極として用いられ、
前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置の前記第1電極及び前記第2電極の中の一方の電極が、検出された生体電位と比較するためのリファレンス信号を検出する参照用電極として用いられ、他方の電極が、グランド電極として用いられる、
ことを特徴とする請求項
11から請求項
13のうち何れか1項に記載の生体情報測定システム。
【請求項17】
前記電極群に含まれる各電極の検出感度及びノイズの中の少なくとも1つに応じて、前記電極群に含まれる、前記ユーザの生体電位を検出する生体電位検出用電極、検出された生体電位と比較するためのリファレンス信号を検出する参照用電極、及び、接地のために利用されるグランド電極の組み合わせを変える手段を更に有する、
ことを特徴とする請求項
11から請求項
13のうち何れか1項に記載の生体情報測定システム。
【請求項18】
前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置は、バッテリを有し、
前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置は、前記処理手段、前記出力手段、及び、制御手段を有する、
ことを特徴とする請求項
11から請求項
13のうち何れか1項に記載の生体情報測定システム。
【請求項19】
前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置は、前記ユーザの生体電位を検出する生体電位検出用電極を有する、
ことを特徴とする請求項
18に記載の生体情報測定システム。
【請求項20】
前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置は、更に、マイクと音量を調整するためのスイッチとを有する、
ことを特徴とする請求項
18又は請求項
19に記載の生体情報測定システム。
【請求項21】
前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置と、前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置は、ケーブルを介して電力及びデータの授受を行う、
ことを特徴とする請求項
11から請求項
20のうち何れか1項に記載の生体情報測定システム。
【請求項22】
前記ケーブルは、生体情報測定装置の移動を規制する規制部材の内部を通って設けられている、
ことを特徴とする請求項
21に記載の生体情報測定システム。
【請求項23】
ユーザの外耳道に接触するように配置された第1電極と、
前記ユーザの耳甲介腔に接触するように配置された第2電極と、
電源を収容する筐体と、
前記第1電極を支持する第1部材と、
を有し、
当該生体情報測定装置が前記ユーザの耳に設置されたときに前記筐体から前記ユーザの耳に向かう方向に対する、前記第1電極の前記外耳道に接触する面
が前記第1部材によって支持されている部分を軸として傾くように、前記第1電極は前記第1部材に支持されている、
ことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項24】
前記筐体から前記ユーザの耳に向かう方向に対する、前記第2電極の前記耳甲介腔の側面に接触する面の角度が、変更可能である、
ことを特徴とする請求項
23に記載の生体情報測定装置。
【請求項25】
前記筐体から前記ユーザの耳に向かう方向に対する、前記第2電極の前記耳甲介腔の底面に接触する面の角度が、変更可能である、
ことを特徴とする請求項
23に記載の生体情報測定装置。
【請求項26】
前記第2電極を支持する第2部材を更に有し、
前記第2電極は、前記第2電極が前記第2部材によって支持されている部分を軸として前記第2部材の方向へ、又は、前記第2部材から離れる方向へ、傾くように前記第2部材に支持されている、
ことを特徴とする請求項
24又は請求項
25に記載の生体情報測定装置。
【請求項27】
前記第1電極、前記第2電極及び前記筐体が、一体となっている、
ことを特徴とする請求項
23から請求項
26のうち何れか1項に記載の生体情報測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及び生体情報測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電極を用いて脳波等の生体情報を測定する技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、カナル型のイヤホンに導電性部材を設けて脳波を測定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ユーザの生体情報を安定して測定することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、ユーザの外耳道に接触するように配置された第1電極と、前記ユーザの耳甲介腔に接触するように配置された第2電極と、前記第1電極が設けられ、前記外耳道に挿入される第1補助部と、前記第2電極が設けられ、前記耳甲介腔に接触するように配置される第2補助部と、を有し、前記第1補助部と前記第2補助部とによって、前記ユーザに対する生体情報測定装置の移動が規制され、前記第1補助部と前記第2補助部は弾性部材によって構成されており、前記第1補助部の弾性係数と前記第2補助部の弾性係数は互いに異なる、生体情報測定装置である。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記第1補助部の弾性係数は前記第2補助部の弾性係数よりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定装置である。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記第2補助部の弾性係数は前記第1補助部の弾性係数よりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定装置である。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記第1補助部及び前記第2補助部の中の少なくとも1つは交換可能である、ことを特徴とする請求項1から請求項3のうち何れか1項に記載の生体情報測定装置である。
【0014】
請求項5に係る発明は、前記第1電極及び前記第2電極によって測定された信号を外部装置に出力する出力手段を更に有する、ことを特徴とする請求項1から請求項4のうち何れか1項に記載の生体情報測定装置である。
【0015】
請求項6に係る発明は、前記ユーザの右耳及び左耳の間で、生体情報測定装置が設置される耳が切り替えられた場合、切り替え前に測定された生体情報の感度と、切り替え後に測定された前記生体情報の感度との比較結果に応じた感度の測定モードに変更する制御手段を更に有する、ことを特徴とする請求項1から請求項5のうち何れか1項に記載の生体情報測定装置である。
【0016】
請求項7に係る発明は、ユーザの一方の耳に設置された請求項1から請求項6のうち何れか1項に記載の生体情報測定装置と、前記ユーザの他方の耳に設置された請求項1から請求項6のうち何れか1項に記載の生体情報測定装置と、前記一方の耳に設置された生体情報測定装置と前記他方の耳に設置された生体情報測定装置とに含まれる電極群によって検出された電位に基づいて、前記ユーザの生体情報を測定する測定手段と、を有する生体情報測定システムである。
【0017】
請求項8に係る発明は、ユーザの一方の耳に設置された請求項1から請求項6のうち何れか1項に記載の生体情報測定装置と、前記ユーザの他方の耳に設置された電極と、前記一方の耳に設置された生体情報測定装置と前記他方の耳に設置された電極とに含まれる電極群によって検出された電位に基づいて、前記ユーザの生体情報を測定する測定手段と、を有する生体情報測定システムである。
【0018】
請求項9に係る発明は、前記測定手段は、前記電極群の中から選択された電極を利用することで前記ユーザの生体情報を測定する、ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の生体情報測定システムである。
【0019】
請求項10に係る発明は、前記測定手段は、前記電極群に含まれる1つの電極を、前記ユーザの脳波を検出する電極として機能させ、前記電極群に含まれる別の電極を、検出された脳波と比較するためのリファレンス信号を検出する電極として機能させ、前記電極群に含まれる更に別の電極を、接地のために利用される電極として機能させることで、前記ユーザの生体情報を測定する、ことを特徴とする請求項7から請求項9のうち何れか1項に記載の生体情報測定システムである。
【0020】
請求項11に係る発明は、前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置、及び、前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置の中の少なくとも1つの生体情報測定装置は、更に、前記電極群によって測定された信号を処理する処理手段と、前記処理
手段によって処理された信号を外部装置に出力する出力手段と、を有する、ことを特徴とする請求項7に記載の生体情報測定システムである。
【0021】
請求項12に係る発明は、前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置と、前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置は、それぞれ前記処理手段を有し、生体情報測定装置毎に、前記処理手段によって処理された信号が前記出力手段によって前記外部装置に出力される、ことを特徴とする請求項11に記載の生体情報測定システムである。
【0022】
請求項13に係る発明は、前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置は、前記処理手段を有しており、前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置は、前記処理手段を有しておらず、前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置の前記処理手段は、前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置によって測定された信号を処理する、ことを特徴とする請求項11に記載の生体情報測定システムである。
【0023】
請求項14に係る発明は、前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置の前記第1電極と、前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置の前記第1電極が、共に、前記ユーザの生体電位を検出する生体電位検出用電極として用いられ、前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置の前記第2電極と、前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置の前記第2電極が、共に、接地のために利用されるグランド電極として用いられる、ことを特徴とする請求項11から請求項13のうち何れか1項に記載の生体情報測定システムである。
【0024】
請求項15に係る発明は、前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置の前記第1電極が、前記ユーザの生体電位を検出する生体電位検出用電極として用いられ、前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置の前記第1電極が、検出された生体電位
と比較するためのリファレンス信号を検出する参照用電極として用いられ、前記ユーザの一方の耳に接地された生体情報測定装置の前記第2電極、及び、前記ユーザの他方の耳に接地された生体情報測定装置の前記第2電極の中の少なくとも1つは、接地のために利用されるグランド電極として用いられる、ことを特徴とする請求項11から請求項13のうち何れか1項に記載の生体情報測定システムである。
【0025】
請求項16に係る発明は、前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置の前記第1電極が、前記ユーザの生体電位を検出する生体電位検出用電極として用いられ、前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置の前記第2電極が、接地のために利用されるグランド電極として用いられ、前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置の前記第1電極及び前記第2電極の中の一方の電極が、検出された生体電位と比較するためのリファレンス信号を検出する参照用電極として用いられ、他方の電極が、グランド電極として用いられる、ことを特徴とする請求項11から請求項13のうち何れか1項に記載の生体情報測定システムである。
【0026】
請求項17に係る発明は、前記電極群に含まれる各電極の検出感度及びノイズの中の少なくとも1つに応じて、前記電極群に含まれる、前記ユーザの生体電位を検出する生体電位検出用電極、検出された生体電位と比較するためのリファレンス信号を検出する参照用電極、及び、接地のために利用されるグランド電極の組み合わせを変える手段を更に有する、ことを特徴とする請求項11から請求項13のうち何れか1項に記載の生体情報測定システムである。
【0027】
請求項18に係る発明は、前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置は、バッテリを有し、前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置は、前記処理手段、前記出力手段、及び、制御手段を有する、ことを特徴とする請求項11から請求項13のうち何れか1項に記載の生体情報測定システムである。
【0028】
請求項19に係る発明は、前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置は、前記ユーザの生体電位を検出する生体電位検出用電極を有する、ことを特徴とする請求項18に記載の生体情報測定システムである。
【0029】
請求項20に係る発明は、前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置は、更に、マイクと音量を調整するためのスイッチとを有する、ことを特徴とする請求項18又は請求項19に記載の生体情報測定システムである
【0030】
請求項21に係る発明は、前記ユーザの一方の耳に設置された生体情報測定装置と、前記ユーザの他方の耳に設置された生体情報測定装置は、ケーブルを介して電力及びデータの授受を行う、ことを特徴とする請求項11から請求項20のうち何れか1項に記載の生体情報測定システムである。
【0031】
請求項22に係る発明は、前記ケーブルは、生体情報測定装置の移動を規制する規制部材の内部を通って設けられている、ことを特徴とする請求項21に記載の生体情報測定システムである。
【0032】
請求項23に係る発明は、ユーザの外耳道に接触するように配置された第1電極と、前記ユーザの耳甲介腔に接触するように配置された第2電極と、電源を収容する筐体と、を有し、当該生体情報測定装置が前記ユーザの耳に設置されたときに前記筐体から前記ユーザの耳に向かう方向に対する、前記第1電極の前記外耳道に接触する面の角度が、変更可能である、ことを特徴とする生体情報測定装置である。
【0033】
請求項23に係る発明は、前記第1電極を支持する第1部材を更に有し、前記第1電極は、前記第1電極が前記第1部材によって支持されている部分を軸として傾くように前記第1部材に支持されている、ことを特徴とする生体情報測定装置である。
【0034】
請求項24に係る発明は、前記筐体から前記ユーザの耳に向かう方向に対する、前記第2電極の前記耳甲介腔の側面に接触する面の角度が、変更可能である、ことを特徴とする請求項23に載の生体情報測定装置である。
【0035】
請求項25に係る発明は、前記筐体から前記ユーザの耳に向かう方向に対する、前記第2電極の前記耳甲介腔の底面に接触する面の角度が、変更可能である、ことを特徴とする請求項23に記載の生体情報測定装置である。
【0036】
請求項26に係る発明は、前記第2電極を支持する第2部材を更に有し、前記第2電極は、前記第2電極が前記第2部材によって支持されている部分を軸として前記第2部材の方向へ、又は、前記第2部材から離れる方向へ、傾くように前記第2部材に支持されている、ことを特徴とする請求項24又は請求項25に記載の生体情報測定装置である。
【0037】
請求項27に係る発明は、前記第1電極、前記第2電極及び前記筐体が、一体となっている、ことを特徴とする請求項23から請求項26のうち何れか1項に記載の生体情報測定装置である。
【発明の効果】
【0038】
請求項1,4,5,7,8,9,10に係る発明によれば、ユーザの生体情報を安定して測定することができる。
【0039】
請求項2,3に係る発明によれば、生体情報測定装置の移動や振動が吸収される。
【0040】
請求項6に係る発明によれば、生体情報測定装置が設置されている耳に応じた測定モードによって生体情報を測定することができる。
【0041】
請求項11,12,13に係る発明によれば、生体情報測定装置にて信号を処理することができる。
【0042】
請求項14,15,16に係る発明によれば、複数の電極の組み合わせによって脳波を測定することができる。
【0043】
請求項17に係る発明によれば、電極の検出感度やノイズを考慮して電極を選択することができる。
【0044】
請求項18,19に係る発明によれば、重さを2つの生体情報測定装置に分散することができる。
【0045】
請求項20に係る発明によれば、マイクと音量を調整するためのスイッチとを有する装置によって生体情報を測定することができる。
【0046】
請求項21,22に係る発明によれば、2つの生体情報測定装置の間で電力及びデータを授受することができる。
【0047】
請求項23に係る発明は、第1電極を外耳道に密着させることができる。
【0048】
請求項24,25,26に係る発明は、第2電極を耳甲介腔に密着させることができる。
【0049】
請求項27に係る発明によれば、電極と筐体とが一体化した装置によって生体情報を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本実施形態に係る生体情報測定システムを示すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係るイヤホン装置の全体の形状を示す斜視図である。
【
図6】イヤホン装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】人の耳の外観及び内部を模式的に示す図である。
【
図10】人の耳の外観及び内部を模式的に示す図である。
【
図12】電極位置と電位の安定性との関係を示す図である。
【
図13】本実施形態の変形例1に係る右側イヤホン部を示す斜視図である。
【
図14】人の耳の外観及び内部を模式的に示す図である。
【
図15】本実施形態の変形例2に係るイヤホン部を示す図である。
【
図16】本実施形態の変形例3に係るイヤホン装置の全体の形状を示す斜視図である。
【
図17】人の耳の外観及び内部を模式的に示す図である。
【
図19】右側イヤーピース及び支持部の断面図である。
【
図20】右側イヤーピース及び支持部の断面図である。
【
図21】右側イヤーピース及び支持部の断面図である。
【
図22】右側イヤーピース及び支持部の断面図である。
【
図23】右側イヤーピース及び支持部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の実施形態に係る生体情報測定システム及び生体情報測定装置について説明する。
【0052】
本実施形態に係る生体情報測定装置は、ユーザの耳に装着された状態で電位を測定することで当該ユーザの生体情報を測定する装置である。生体情報は、一例として脳波である。もちろん、脳波以外の生体情報(例えば、心電波形や筋電波形等)が生体情報測定装置によって測定されてもよい。以下では、一例として、生体情報測定装置は脳波測定装置として用いられ、生体情報測定装置によって脳波が測定されるものとする。生体情報測定装置は、いわゆるヒアラブルデバイスであってもよい。生体情報測定装置は、ユーザの一方の耳に装着されて脳波を測定してもよいし、両耳に装着されて脳波を測定してもよい。例えば、一方の耳に第1生体情報測定装置が装着され、他方の耳に第2生体情報測定装置が装着されて、第1生体情報測定装置と第2生体情報測定装置とによって、脳波が測定されてもよい。
【0053】
生体情報測定装置は、電位を検出する1又は複数の電極を含む。本実施形態では、複数の電極がユーザの耳に接触して設けられ、当該複数の電極の中の少なくとも2つの電極を用いてユーザの脳波が測定される。例えば、生体情報測定装置に複数の電極が含まれている場合、当該生体情報測定装置がユーザの片耳に設置されて、当該片耳に接触する当該複数の電極の中の少なくとも2つの電極を用いて脳波が測定される。別の例として、1又は複数の電極を含む生体情報測定装置が、ユーザの両耳に設置されて、少なくとも2つの電極を用いて脳波が測定されてもよい。すなわち、ユーザの片耳に設けられた複数の電極の中から選択された少なくとも2つの電極によって脳波が測定されてもよいし、両耳に設けられた複数の電極の中から選択された少なくとも2つの電極によって脳波が測定されてもよい。また、複数の電極の中から少なくとも3つの電極を用いて脳波が測定されてもよい。より多くの電極を用いることで、脳波の測定精度が向上する場合がある。また、複数の電極において、脳波測定に用いられる電極を切り替えてもよい。例えば、電位の検出感度やノイズ等の測定状況に応じて、脳波測定に用いられる電極が切り替えられる。例えば、複数の電極の中で、1つの電極は、ユーザの生体電位を検出する生体電位検出用電極(以下、「センサ電極」と称する)として用いられ、別の電極は、接地のために利用される電極(以下、「グランド電極」と称する)として用いられる。また、検出された生体電位と比較するためのリファレンス信号を検出する電極(以下、「参照用電極」と称する)が用いられてもよい。例えば、センサ電極は、脳波を検出するために用いられ、参照用電極は、その脳波と比較するためのリファレンス信号を検出するために用いられる。
【0054】
生体情報測定装置は、例えば、イヤホン、補聴器、ピアス、クリップ状の部材、眼鏡等のように耳に装着される部材や装置等に設けられてもよいし、そのような部材や装置等と兼用の装置であってもよい。以下では、一例として、生体情報測定装置がイヤホンに適用された場合について説明する。
【0055】
以下、
図1を参照して、本実施形態に係る生体情報測定装置を含む生体情報測定システムについて説明する。
図1は、本実施形態に係る生体情報測定システム10の構成を示すブロック図である。
【0056】
情報処理システムの一例としての生体情報測定システム10は、イヤホン装置12と端末装置14とを含む。イヤホン装置12と端末装置14とは通信経路を介して互いに通信する。その通信として、無線通信又は有線通信が用いられる。生体情報測定システム10には、サーバ等の装置が含まれていてもよい。
【0057】
イヤホン装置12は、例えばカナル型のイヤホンであり、耳の外耳道に差し込んで使用される。イヤホン装置12は、イヤホンの機能として、再生装置から出力された電気信号を、スピーカを用いて音波に変換する機能を有する。また、イヤホン装置12は、生体情報測定装置を含み、ユーザの頭部の皮膚電位の電位を測定し、その測定結果を示す情報(例えば測定された電位を示す信号や、その電位を解析することで生成された脳波信号等)を、脳波測定結果を示す情報として、端末装置14等の外部装置に出力するように構成されている。
【0058】
イヤホン装置12は、例えば無線通信機能を有する。通信方式は、例えば、近距離無線通信(例えばBluetooth(ブルートゥース)(登録商標)、RFID(Radio Frequency Identifier)等)、赤外線通信、可視光通信、Wi-Fi(登録商標)通信、等である。イヤホン装置12は、例えば、音声信号等の音信号を端末装置14から無線通信によって受信し、その信号に従って音を発生させる。また、イヤホン装置12は、脳波測定結果を示す情報を無線通信によって端末装置14に送信する。もちろん、イヤホン装置12は、音信号を有線通信によって受信し、脳波測定結果を示す情報を有線通信によって送信してもよい。
【0059】
端末装置14は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)や、モバイル端末(例えば、スマートホン、携帯電話、タブレットPC等)や、音楽プレイヤーや、動画再生装置等であり、情報処理装置の一例に相当する。端末装置14は、例えば無線通信機能を有する。端末装置14は、再生装置として機能することで、音楽を再生し、音信号を無線通信によってイヤホン装置12に送信してもよい。また、端末装置14は、脳波測定結果を示す情報を無線通信によってイヤホン装置12から受信し、脳波測定結果を解析することで脳波状態を評価する機能を有していてもよい。イヤホン装置12によって脳波測定結果が解析されて、その解析結果を示す情報が、イヤホン装置12から端末装置14に送信されてもよいし、端末装置14以外の装置に送信されてもよい。端末装置14は、音信号を有線通信によって送信し、脳波測定結果を示す情報を有線通信によって受信してもよい。また、端末装置14は、LAN(Local Area Network)等のネットワーク等の通信経路を介して他の装置と通信してもよいし、インターネットを介して情報の送受信を行ってもよい。
【0060】
以下、
図2から
図4を参照して、本実施形態に係るイヤホン装置12の形状について詳しく説明する。
図2は、イヤホン装置12の全体の形状を示す斜視図である。
図3及び
図4は、右側イヤホン部の形状を示す斜視図である。
【0061】
ここで、説明の便宜上、
図2に示すように、前後方向、上下方向及び左右方向を定義する。前方向は、ユーザの顔が向く方向であり、後方向は、その前方向とは逆の方向である。上方向は、ユーザの頭頂が向く方向であり、下方向は、その上方向とは逆の方向である。右方向は、ユーザの右手側の方向であり、左方向は、ユーザの左手側の方向である。前後方向、上下方向及び左右方向は互いに直交する。
【0062】
図2に示すように、イヤホン装置12は、大別して、ユーザの右耳に装着される右側イヤホン部16Rと、ユーザの左耳に装着される左側イヤホン部16Lと、右側イヤホン部16Rと左側イヤホン部16Lとを電気的に接続するケーブル18とを含む。右側イヤホン部16Rと左側イヤホン部16Lは、ケーブル18を介して電極及びデータの授受を行ってもよい。また、ケーブル18には、イヤホン装置12を操作するためのリモコン20が設けられている。もちろん、リモコン20はケーブル18に設けられていなくてもよい。
【0063】
右側イヤホン部16R又は左側イヤホン部16Lの何れか一方が、脳波を測定する生体情報測定装置として機能してもよいし、右側イヤホン部16R及び左側イヤホン部16Lの両方が、生体情報測定装置として機能してもよい。一方が生体情報測定装置として機能し、他方が、レファレンス信号を検出する装置、又は、接地として利用される装置として機能してもよい。
【0064】
右側イヤホン部16Rは、右側格納部22Rと、第1補助部として機能する右側イヤーピース24Rと、第2補助部として機能する右側補助部26Rと、規制部材として機能する右側耳掛け部28Rとを含む。なお、右側イヤホン部16Rとして、公知のカナル型イヤホンが用いられてもよい。なお、イヤーピースやイヤーパットと称される場合がある。ケーブル18は、規制部材として機能する右側補助部26Rを通って設けられてもよい。
【0065】
右側格納部22Rは、例えば、薄型の直方体状の形状を有し、処理装置として機能する基板等を格納する筐体である。右側格納部22Rにおいて、ユーザがイヤホン装置12を装着したときにユーザの右耳に対向する面に、右側イヤーピース24Rが設けられている。右側格納部22R内には、制御装置、スピーカ、通信装置(例えば通信チップ)、脳波測定電子回路、6軸センサ(例えば、加速度を検出する3軸センサと角速度を検出する3軸センサとを有するセンサ)、メモリ等が格納されている。通信装置は、例えばBluetooth等の無線通信機能を実現するための装置である。脳波測定電子回路は、検出された電位を解析することで脳波を生成する回路である。6軸センサによって、右側格納部22Rの移動方向、向き及び回転が検出される。脳波測定結果を示す情報は、メモリに記憶される。なお、端末装置14に脳波測定部が設けられている場合、脳波測定電子回路はイヤホン装置12に設けられていなくてもよい。
【0066】
右側イヤーピース24Rは、右側格納部22Rの側面から突出して設けられている。右側イヤーピース24R内には、音導管等が格納されており、スピーカによって発せられた音は、右側イヤーピース24R内を伝達して右側イヤーピース24Rから外部に発せられる。右側イヤーピース24Rの外表面(例えば側面等)には、電位を検出する電極が設けられている。その電極は、例えば、カーボン製の導電性ゴムによって構成されてもよい。
【0067】
右側補助部26Rは、右側格納部22Rと右側イヤーピース24Rとの間に設けられている。例えば、右側補助部26Rの外径は、右側イヤーピース24Rの外径よりも大きい。右側補助部26Rの外表面には、電位を検出する電極が設けられている。その電極は、例えば、カーボン製の導電性ゴムによって構成されてもよい。
【0068】
右側イヤーピース24R及び右側補助部26Rは、弾性部材によって構成されている。その弾性部材として、例えば、ゴム等の樹脂が用いられる。具体的には、Si系のゴム(例えば、NOK社製のS1734)やウレタン系のゴム等が、右側イヤーピース24R及び右側補助部26Rに用いられてもよい。また、右側イヤーピース24R及び右側補助部26Rのそれぞれの硬度(例えば、デュロメータタイプA(瞬時)の規格に従った硬度)は、例えば40~75である。一例として、硬度が70の樹脂が、右側イヤーピース24R及び右側補助部26Rに用いられてもよい。
【0069】
後述するように、右側イヤーピース24Rは、右耳の外耳道に挿入されて外耳道に接触するように右耳に配置され、右側補助部26Rは、右耳の耳甲介腔に接触するように右耳に配置される。
【0070】
右側耳掛け部28Rは、全体として湾曲した形状を有し、ユーザがイヤホン装置12を装着したときにユーザの右耳の耳輪に掛けられる部材である。右側耳掛け部28Rの一方の端部は、右側格納部22Rの前方側の部分に接続されており、右側耳掛け部28Rは、その接続部分から右側格納部22Rの後方側にかけて湾曲した形状を有しており、その部分が湾曲部を構成する。その湾曲部が、右耳の耳輪に掛けられる。右側耳掛け部28Rの他方の部分は、ケーブル18の一方の端部に接続されている。
【0071】
右側イヤーピース24R及び右側補助部26Rは、交換可能な部材である。例えば、形状や大きさの異なる複数種類(例えば3~5種類等)の右側イヤーピース24Rと右側補助部26Rが予め用意されており、ユーザの耳の形状(例えば、外耳道や耳甲介腔やその他の部位)に合わせて、右側イヤーピース24Rと右側補助部26Rを交換することができる。
【0072】
左側イヤホン部16Lは、左側格納部22Lと、第1補助部として機能する左側イヤーピース24Lと、第2補助部として機能する左側補助部26Lと、規制部材として機能する左側耳掛け部28Lとを含む。なお、左側イヤホン部16Lとして、公知のカナル型イヤホンが用いられてもよい。ケーブル18は、規制部材として機能する左側補助部26Lを通って設けられてもよい。
【0073】
左側格納部22Lは、例えば、薄型の直方体状の形状を有する筐体である。左側格納部22Lにおいて、ユーザがイヤホン装置12を装着したときにユーザの左耳に対向する面に、左側イヤーピース24Lが設けられている。左側格納部22L内には、スピーカ、バッテリ等が格納されている。バッテリからの電力が、右側イヤホン部16R及び左側イヤホン部16Lに供給され、これにより、右側イヤホン部16R及び左側イヤホン部16Lが駆動する。例えば、バッテリからの電力が、右側格納部22R内に格納されたスピーカや各装置や各回路等、及び、左側格納部22L内に格納されたスピーカに供給される。また、バッテリからの電極がリモコン20に供給されることで、リモコン20による操作が可能となる。
【0074】
左側イヤーピース24Lは、左側格納部22Lの側面から突出して設けられている。左側イヤーピース24L内には、音導管等が格納されており、スピーカによって発せられた音は、左側イヤーピース24L内を伝達して左側イヤーピース24Lから外部に発せられる。左側イヤーピース24Lの外表面(例えば側面等)には、電位を検出する電極が設けられている。その電極は、例えば、カーボン製の導電性ゴムによって構成されてもよい。
【0075】
左側補助部26Lは、左側格納部22Lと左側イヤーピース24Lとの間に設けられている。例えば、左側補助部26Lの外径は、左側イヤーピース24Lの外径よりも大きい。
【0076】
左側イヤーピース24L及び左側補助部26Lは、弾性部材によって構成されている。その弾性部材として、例えば、ゴム等の樹脂が用いられる。具体的には、Si系のゴム(例えば、NOK社製のS1734)やウレタン系のゴム等が、左側イヤーピース24L及び左側補助部26Lに用いられてもよい。また、左側イヤーピース24L及び左側補助部26Lのそれぞれの硬度(例えば、デュロメータタイプA(瞬時)の規格に従った硬度)は、例えば40~75である。一例として、硬度が70の樹脂が、左側イヤーピース24L及び左側補助部26Lに用いられてもよい。
【0077】
後述するように、左側イヤーピース24Lは、左耳の外耳道に挿入されて外耳道に接触するように左耳に配置され、左側補助部26Lは、左耳の耳甲介腔に接触するように左耳に配置される。
【0078】
左側耳掛け部28Lは、全体として湾曲した形状を有し、ユーザがイヤホン装置12を装着したときにユーザの左耳の耳輪に掛けられる部材である。左側耳掛け部28Lの一方の端部は、左側格納部22Lの前方側の部分に接続されており、左側耳掛け部28Lは、その接続部分から左側格納部22Lの後方側にかけて湾曲した形状を有しており、その部分が湾曲部を構成する。その湾曲部が、左耳の耳輪に掛けられる。左側耳掛け部28Lの他方の部分は、ケーブル18の他方の端部に接続されている。
【0079】
左側イヤーピース24L及び左側補助部26Lは、交換可能な部材である。例えば、形状や大きさの異なる複数種類(例えば3~5種類等)の左側イヤーピース24Lと左側補助部26Lが予め用意されており、ユーザの耳の形状(例えば、外耳道や耳甲介腔やその他の部位)に合わせて、左側イヤーピース24Lと左側補助部26Lを交換することができる。
【0080】
なお、左側補助部26Lの外表面には、電位を検出する電極は設けられていない。これは一例に過ぎず、左側補助部26Lの外表面に、電極が設けられてもよい。その電極は、例えば、カーボン製の導電性ゴムによって構成されてもよい。
【0081】
また、左側格納部22L内に、制御装置、通信装置(例えば通信チップ)、脳波測定電子回路、6軸センサ、メモリ等が格納されてもよい。この場合、制御装置、通信装置、脳波測定電子回路、6軸センサ、メモリ等は、右側格納部22R内に格納されていなくてもよい。もちろん、右側格納部22R及び左側格納部22Lの両方に、これらの部品が格納されてもよい。また、右側格納部22Rにバッテリが格納され、左側格納部22Lにバッテリが格納されていなくてもよい。この場合、そのバッテリから右側イヤホン部16Rと左側イヤホン部16Lに電力が供給される。もちろん、右側格納部22R及び左側格納部22Lの両方にバッテリが格納されて、両方のバッテリ又は何れか一方のバッテリからの電力が、右側イヤホン部16R及び左側イヤホン部16Lに供給されてもよい。
【0082】
リモコン20には、例えば、電源ボタンと音量変更ボタンが設けられている。電源ボタンは、イヤホン装置12の電源をオン又はオフするためのボタンである。また、電源ボタンを操作することで、イヤホン装置12と端末装置14との間のペアリングの実行が指示されてもよい。例えば、電源ボタンが予め定められた時間以上にわたって押された場合(例えば長押しされた場合)、ペアリングが実行されてもよい。また、電源ボタンを操作することで、脳波測定の実行又は停止が制御されてもよい。例えば、予め定められた操作手順に従って電源ボタンが操作された場合、脳波測定が実行され、別の操作手順に従って電源ボタンが操作された場合、脳波測定が停止させられる。音量変更ボタンを操作することで、音楽の再生のスキップ等が実行されてもよい。
【0083】
ここで、
図5を参照して、右側格納部22R内に格納されている各部品について説明する。
図5は、右側格納部22Rの内部を示す斜視図である。
【0084】
右側格納部22R内には、基板30が格納されており、その基板30上に電子回路やメモリ等の各部品が搭載されている。例えば、通信チップ32、脳波測定電子回路34、及び、6軸センサ36等が、基板30上に搭載されている。その他、図示されていないが、メモリや制御装置用のチップ等が基板30上に搭載されている。
【0085】
以下、
図6を参照して、イヤホン装置12の機能について詳しく説明する。
図6は、イヤホン装置12の機能を示すブロック図である。
【0086】
上述したように、イヤホン装置12は、右側イヤホン部16Rと、左側イヤホン部16Lと、ケーブル18とを含む。右側イヤホン部16Rと左側イヤホン部16Lは、ケーブル18によって物理的に接続されており、ケーブル18を解して互いにデータを送受信する。
【0087】
右側イヤホン部16Rは、右側スピーカ38と、通信部40と、第1右側電極42と、第2右側電極44と、脳波測定部46と、記憶部48と、制御部50とを含む。左側イヤホン部16Lは、左側スピーカ52と、バッテリ54と、第1左側電極56とを含む。
【0088】
右側スピーカ38から発せられた音は、右側イヤーピース24Rから外部に発せられる。左側スピーカ52から発せられた音は、左側イヤーピース24Lから外部に発せられる。
【0089】
通信部40は通信インターフェース(例えば通信チップ)であり、他の装置にデータを送信する機能、及び、他の装置からデータを受信する機能を有する。通信部40は、上記の通信チップ32によって実現される。通信部40は、例えば無線通信機能を有する。その通信方式として、上述したように、Bluetooth等の近距離無線通信、赤外線通信、可視光通信、Wi-Fi通信等が用いられる。
【0090】
通信部40は、イヤホン装置12から発せられる音を表す信号を外部装置(例えば端末装置14)から受信する。例えば、通信部40は、右側スピーカ38から発せられる音を表す信号(以下、「右側用音信号」と称する)と、左側スピーカ52から発せられる音を表す信号(以下、「左側用音信号」と称する)とを外部装置から受信する。右側スピーカ38は、通信部40によって受信された右側用音信号に従って音を発生させる。左側用音信号は、ケーブル18を介して右側イヤホン部16Rから左側イヤホン部16Lに送信される。左側スピーカ52は、その左側用音信号に従って音を発生させる。もちろん、左側イヤホン部16Lに通信部が設けられ、その通信部が左側用音信号を外部装置から受信し、左側スピーカ52は、その左側音信号に従って音を発生させてもよい。
【0091】
また、通信部40は、脳波測定結果を示す情報を外部装置(例えば端末装置14)に送信してもよい。なお、通信部40は、出力手段の一例に相当する。
【0092】
第1右側電極42は、右側イヤーピース24Rの外表面に設けられている電極である。第2右側電極44は、右側補助部26Rの外表面に設けられている電極である。第1右側電極42及び第2右側電極44のそれぞれによって検出された電位を示す信号は、脳波測定部46に出力される。
【0093】
第1左側電極56は、左側イヤーピース24Lの外表面に設けられている電極である。第1左側電極56によって検出された電位を示す信号は、ケーブル18を介して左側イヤホン部16Lから右側イヤホン部16Rの脳波測定部46に出力される。
【0094】
脳波測定部46は、第1右側電極42、第2右側電極44及び第1左側電極56のそれぞれによって検出された電位に基づいて、脳波を演算するように構成されている。脳波測定部46は、上述した脳波測定電子回路34によって実現される。なお、脳波測定部46が測定手段又は処理手段の一例に相当する。
【0095】
脳波測定部46は、第1右側電極42、第2右側電極44及び第1左側電極56を含む電極群の中から選択された2つの電極によって検出された電位に基づいて、脳波を演算してもよい。
【0096】
例えば、第1右側電極42が、脳波を検出するセンサ電極として用いられ、第2右側電極44が、接地のために利用されるグランド電極として用いられ、第1左側電極56が、検出された脳波と比較するためのリファレンス信号を検出する参照用電極として用いられる。例えば、脳波測定部46は、グランド電極である第2右側電極44によって検出された電位を、基準電位であるグランド電位として定義し、その上で、センサ電極である第1右側電極42によって検出された脳波の電位と、参照用電極である第1左側電極56によって検出されたリファレンス電位との電位差を、脳波測定結果として演算する。脳波測定部46は、その電位差に対して周知の統計処理を適用し、その適用結果を脳波測定結果として採用してもよい。その脳波測定結果を示す情報は、例えば記憶部48に一時的に記憶され、その後、通信部40によって、イヤホン装置12から端末装置14に送信される。もちろん、演算前の各電位を示す信号や、統計処理が適用される前の電位差を示す信号が、イヤホン装置12から端末装置14に送信されて、端末装置14にて、電位差が演算されたり、統計処理が実行されたりしてもよい。この場合、演算前の各電位を示す情報や、統計処理が適用される前の電位差を示す情報が、脳波測定結果を示す情報に該当する。
【0097】
脳波測定部46は、各電極によって検出された電位に対して上述した以外の演算方法(例えば周知の演算方法)を適用することで、脳波を示す信号を演算してもよい。
【0098】
記憶部48は例えばメモリによって構成されており、第1右側電極42、第2右側電極44及び第1左側電極56のそれぞれによって検出された電位を示す信号や、脳波測定部46によって演算された脳波を示す信号を記憶する。
【0099】
バッテリ54は、左側イヤホン部16Lの各部に電力を供給すると共に、ケーブル18を介して右側イヤホン部16Rの各部に電力を供給する。右側イヤホン部16R及び左側イヤホン部16Lの各部は、バッテリ54から供給された電力によって駆動する。バッテリ54として、例えば、充放電可能なバッテリが用いられる。もちろん、充電不可能なバッテリが用いられてもよい。なお、バッテリ54や充電に関わる部品の周囲に電磁波防止用のシールド部材が設けられてもよい。シールド部材を設けることで、充電中に発する電磁波に起因するノイズを軽減して脳波測定の精度を高めることができる。
【0100】
制御部50は、右側イヤホン部16R及び左側イヤホン部16Lの各部の動作を制御するように構成されている。制御部50は、例えば、通信部40による通信を制御したり、バッテリ54の動作を制御したり、リモコン20の操作に従った制御を行ったりする。また、制御部50は、イヤホン装置12の各部の故障を検出してもよい。制御部50は、例えば、マイクロプロセッサ等によって実現される。
【0101】
なお、左側イヤホン部16Lにも、通信部40や脳波測定部46や記憶部48や制御部50等が設けられてもよいし、右側イヤホン部16Rにもバッテリ54が設けられてもよい。これらの部品が、右側イヤホン部16R又は左側イヤホン部16Lの何れかに設けられてもよい。
【0102】
なお、右側イヤホン部16Rと左側イヤホン部16Lとがケーブル18を介して接続されているが、イヤホン装置12は、ケーブル18を含んでいなくてもよい。この場合、左側イヤホン部16L内にも通信部が設けられ、右側イヤホン部16Rと左側イヤホン部16Lとが互いに通信することで、これらの間でデータの送受信が行われる。
【0103】
右側イヤホン部16Rには、マイクと、イヤホン装置12の音量を調整するためのスイッチとが設けられてもよい。マイクとスイッチは、左側イヤホン部16Lに設けられてもよい。
【0104】
以下、
図7を参照して、端末装置14の機能について詳しく説明する。
図7は、端末装置14の機能を示すブロック図である。
【0105】
通信部58は通信インターフェースであり、他の装置にデータを送信する機能、及び、他の装置からデータを受信する機能を有する。通信部58は、例えば無線通信機能を有する。その通信方式として、Bluetooth等の近距離無線通信、赤外線通信、可視光通信、Wi-Fi通信、等が用いられる。もちろん、通信部58は、有線通信機能を有していてもよい。
【0106】
通信部58は、例えば近距離無線通信によって、イヤホン装置12の通信部40との間で通信する。例えば、通信部58は、音信号をイヤホン装置12に送信し、また、脳波測定結果を示す信号をイヤホン装置12から受信する。
【0107】
通信部58は、Wi-Fi等の無線通信機能又は有線通信機能によって、インターネット等の通信経路を介して他の装置と通信してもよい。
【0108】
記憶部60はハードディスクドライブやメモリ等の記憶装置である。記憶部60には、例えば、各種のデータや各種のプログラムが記憶される。例えば、イヤホン装置12によって測定された脳波測定結果を示す信号が、記憶部60に記憶される。
【0109】
UI部62はユーザインターフェースであり、例えば表示部と操作部とを含む。表示部は、例えば液晶ディスプレイやELディスプレイ等の表示装置である。操作部は、例えば、タッチパネル、ボタン、キーボード、マウス等の入力装置である。表示部と操作部とを兼ねたユーザインターフェース(例えばタッチ式のディスプレイや、ディスプレイ上に電子的なキーボード等を表示する装置等)が、UI部62として用いられてもよい。
【0110】
制御部64は、端末装置14の各部の動作を制御するように構成されている。
【0111】
なお、端末装置14に脳波測定部46が設けられて、端末装置14によって、イヤホン装置12に設けられている各電極によって検出された電位が解析されることで、脳波を示す信号が演算されてもよい。この場合、脳波測定部46は、イヤホン装置12に設けられていなくてもよい。
【0112】
以下、
図8から
図11を参照して、ユーザの耳にイヤホン装置12を装着したときのイヤホン装置12と耳との接触の状態について詳しく説明する。
図8及び
図11は、人の耳の外観を模式的に示す図である。
図9及び
図10は、人の耳の外観及び内部を模式的に示す図である。
図8から
図11には、右耳が示されている。
【0113】
図8及び
図9を参照して、人の耳について説明する。耳66は、外耳道94に繋がる外耳孔68、外耳孔68の周囲の部位である耳甲介腔70、耳輪72、耳甲介艇74、三角窩76、舟状窩78、対輪脚80、対輪82、耳輪脚84、耳珠86、対珠88、珠間切痕90及び耳垂92を含む。
【0114】
図10には、ユーザの右耳(例えば耳66)に装着された右側イヤホン部16Rが示されている。
図11には、右側イヤホン部16Rが右耳(例えば耳66)に接触する部分(例えば符号96,98,100が示す部分)が示されている。
【0115】
右側耳掛け部28Rが耳輪72に掛けられ、その状態で、右側イヤーピース24Rが外耳道94に挿入される。このとき、右側イヤーピース24Rの外表面が外耳道94の表面(すなわち皮膚)に接触する。右側イヤーピース24Rは弾性部材によって構成されているため、外耳道94の形状に従って右側イヤーピース24Rの形状が変形し、これにより、右側イヤーピース24Rの外表面が外耳道94の表面に密着する。これにより、右側イヤーピース24Rの外表面に設けられている電極(例えば第1右側電極42)が、外耳道94の表面に密着する。
【0116】
また、右側補助部26Rが、耳甲介腔70に接触する。右側補助部26Rは弾性部材によって構成されているため、耳甲介腔70の形状に沿って右側補助部26Rの形状が変形し、これにより、右側補助部26Rが耳甲介腔70に密着する。これにより、右側補助部26Rの外表面に設けられている電極(例えば第2右側電極44)が、耳甲介腔70に密着する。
【0117】
上記の構成を有する右側イヤホン部16Rによれば、耳66に装着された右側イヤホン部16Rの移動が規制される。以下、この点について詳しく説明する。
【0118】
右側耳掛け部28Rの下部と右側補助部26Rの上部との間に耳66(例えば、耳66の付け根)が配置され、これにより、右側耳掛け部28Rと右側補助部26Rとによって耳66(例えば、耳66の付け根)が上下方向から挟み込まれる。これにより、右側イヤホン部16Rの上下方向の移動が規制される。
【0119】
また、右側耳掛け部28Rの右側部分が、ユーザの右耳の耳輪頭部側に接触し、また、右側イヤーピース24Rの外表面と外耳道94との間に摩擦力が発生することで、右側イヤホン部16Rの左右方向の移動が規制される。
【0120】
また、右側耳掛け部28Rにおいて耳66の裏側に接触する部分(例えば、破線で示されている後方の部分)と右側補助部26Rの後方の部分とによって、耳66(例えば、耳66の付け根)が前後後方から挟み込まれる。これにより、右側イヤホン部16Rの前後方向の移動が規制される。
【0121】
上記のように、右側イヤホン部16Rの移動が規制されるので、右側イヤホン部16Rに設けられている電極(例えば、第1右側電極42と第2右側電極44)と皮膚との間の接触が維持され、その接触が不安定になることを抑制又は防止することができる。その結果、その接触の不安定に起因して脳波に混入するノイズの発生を抑制又は防止することができ、脳波の測定精度を向上させることができる。例えば、ユーザが移動した場合であっても、右側イヤホン部16Rの移動が規制されるので、ノイズの発生を抑制又は防止することができる。
【0122】
なお、ユーザの耳や頭部の形状によっては、右側耳掛け部28Rの下部と右側イヤーピース24Rの上部とによって耳66(例えば、耳の付け根)が挟み込まれ、これによって、右側イヤホン部16Rの上下方向の移動が規制される場合がある。また、右側耳掛け部28Rにおいて耳66の裏側に接触する部分(例えば、破線で示されている後方の部分)と右側イヤーピース24Rの後方の部分とによって、耳66(例えば、耳の付け根)が挟み込まれ、これによって、右側イヤホン部16Rの前後方向の移動が規制される場合がある。
【0123】
上記のように、右側イヤーピース24R、右側補助部26R及び右側耳掛け部28Rは、右側イヤホン部16Rの位置決め、つまり、皮膚に接触する電極の位置決めを行うための補助部や規制部として機能する。
【0124】
左側イヤホン部16Lについても同様である。なお、左側イヤホン部16Lにおいては、左側イヤーピース24Lが左耳の外耳道に挿入され、左側イヤーピース24Lに設けられた電極(例えば第1左側電極56)が、外耳道の表面に接触する。
【0125】
本実施形態に係るイヤホン装置12によれば、頭部(例えば頭皮や額)に複数の電極を設置して脳波を測定する従来の脳波測定装置と比較して、実生活における支障が少ない。つまり、頭皮や額に複数の電極を設置して脳波を測定する従来の脳波測定装置は、人が動くことを想定して構成された装置ではないため、複数の電極を頭皮や額に設置した状態では人は動き難いし、人が動くことは現実的ではない。これに対して、本実施形態に係るイヤホン装置12はヒアラブルデバイスに相当し、また、イヤホン装置12の移動が規制されるので、イヤホン装置12を装着した状態であっても人は動き易い。それ故、人が体を動かしているときであっても、脳波を高精度で測定することができる。例えば、仕事中、散歩中、ジョギング中等の状況下で、脳波を高精度で測定することができる。
【0126】
また、ユーザに応じて耳の形状が異なる場合があるが、右側イヤーピース24R、右側補助部26R、左側イヤーピース24L、及び、左側補助部26Lのそれぞれを、大きさや形状の異なる部材に交換することができるので、ユーザの個体差に対応することができる。
【0127】
また、右側格納部22R内に制御装置や通信装置や脳波測定電子回路等を格納し、左側格納部22L内にバッテリを格納することで、両格納部の重さのバランスを保つことができる。
【0128】
本実施形態に係るイヤホン装置12においては、制御部50が、右側イヤーピース24Rに設けられた電極(例えば第1右側電極42)を、脳波を検出するセンサ電極として機能させ、右側補助部26Rに設けられた電極(例えば第2右側電極44)を、グランド電極として機能させ、左側イヤーピース24Lに設けられた電極(例えば第1左側電極56)を、リファレンス信号を検出するための参照用電極として機能させる。脳波測定部46は、これらの電極によって検出された電位に基づいて脳波を測定する。なお、制御部50による制御が、端末装置14の制御部64によって行われてもよい。
【0129】
制御部50は、上記の各電極の機能(すなわち役割)を変更してもよい。例えば、制御部50は、第1左側電極56をセンサ電極として機能させ、第1右側電極42を参照用電極として機能させ、第2右側電極44をグランド電極として機能させてもよい。これら以外の組み合わせが採用されてもよい。
【0130】
制御部50は、例えば、検出された各電位の強度や安定度等に基づいて、各電極の機能を変更してもよい。例えば、制御部50は、強度が最も高い電位や最も安定した電位を検出する電極をセンサ電極として機能させ、強度が2番目に高い電位や2番目に安定した電位を検出する電極を参照用電極として機能させ、残りの電極をグランド電極として機能させる。
【0131】
上記の例では3つの電極が用いられているが、2つの電極が用いられてもよい。例えば、制御部50は、第1右側電極42をセンサ電極として機能させ、第2右側電極44をグランド電極として機能させ、第1左側電極56を機能させない。この場合、脳波測定部46は、第1左側電極56によって検出された電位を用いずに、第1右側電極42によって検出された電位と第2右側電極44によって検出された電位とを用いて脳波を測定する。第1右側電極42がグランド電極として用いられ、第2右側電極44がセンサ電極として用いられてもよい。更に別の例として、第1左側電極56が、センサ電極やグランド電極として用いられてもよい。
【0132】
また、4つ以上の電極が用いられてもよい。例えば、左側補助部26Lに第2左側電極が設けられてもよい。この場合、制御部50は、第1右側電極42、第2右側電極44、第1左側電極56、及び、第2左側電極の中から複数の電極を選択し、脳波測定部46は、当該複数の電極によって検出された電位に基づいて脳波を測定する。制御部50は、検出された各電位の強度や安定度に基づいて、当該複数の電極を選択してもよい。
【0133】
例えば、右側イヤホン部16Rの第1右側電極42と、左側イヤホン部16Lの第1左側電極56が、共に、ユーザの脳波を検出するためのセンサ電極として用いられ、右側イヤホン部16Rの第2右側電極44と、左側イヤホン部16Lの第2左側電極が、共に、グランド電極として用いられてもよい。この場合、参照用電極は用いられなくてもよい。例えば、第1右側電極42によって検出された電位と第2右側電極44によって検出された電位とに基づいて脳波が測定され、更に、第1左側電極56によって検出された電位と第2左側電極によって検出された電位とに基づいて脳波が測定されてもよい。測定された脳波の平均等が算出されてもよい。別の例として、第1右側電極42によって検出された電位と第2左側電極によって検出された電位とに基づいて脳波が測定され、第1左側電極56によって検出された電位と第2右側電極44によって検出された電位とに基づいて脳波が測定されてもよい。
【0134】
第1右側電極42がセンサ電極として用いられ、第1左側電極56が参照用電極として用いられ、第2右側電極44及び第2左側電極の中の少なくとも1つが、グランド電極として用いられてもよい。
【0135】
第1右側電極42がセンサ電極として用いられ、第2右側電極44がグランド電極として用いられ、第1左側電極56及び第2左側電極の中の一方の電極が、参照用電極として用いられ、他方の電極が、グランド電極として用いられてもよい。
【0136】
また、制御部50は、各電極の検出感度及びノイズの中の少なくとも1つに応じて、センサ電極、参照用電極及びグランド電極の組み合わせを変えてもよい。例えば、制御部50は、上述した4つの電極の中で、検出感度が最も高い電極をセンサ電極として用い、検出感度が2番目に高い電極を参照用電極として用い、これら以外の電極をグランド電極として用いてもよい。制御部50は、上述した4つの電極の中で、ノイズが最も少ない電極をセンサ電極として用い、ノイズが2番目に少ない電極を参照用電極として用い、これら以外の電極をグランド電極として用いてもよい。
【0137】
また、一方のイヤホン部に3つ以上の電極が設けられて、当該3つ以上の電極によって脳波が測定されてもよい。例えば、右側イヤホン部16Rにおいて、右側イヤーピース24Rに第1右側電極42が設けられ、右側補助部26Rに第2右側電極44が設けられ、右側耳掛け部28Rに第3右側電極が設けられてもよい。この場合、制御部50は、第1右側電極42、第2右側電極44及び第3右側電極のそれぞれを、センサ電極、参照用電極又はグランド電極として機能させる。このように、1つのイヤホン部に設けられた3つ以上の電極によって検出された電位に基づいて脳波が測定されてもよい。左側イヤホン部16Lについても同様である。
【0138】
上記の例では、耳甲介腔70に電極(例えば第2右側電極44や第2左側電極)が接触するように、当該電極が補助部(例えば右側補助部26Rや左側補助部26L)に設けられているが、耳甲介腔70以外の部位に電極が接触するように当該電極が設けられてもよい。例えば、耳甲介艇74に電極が接触するように、補助部や格納部に当該電極が設けられてもよい。また、耳輪72に電極が接触するように、耳掛け部(例えば右側耳掛け部28Rや左側耳掛け部28L)に電極が設けられてもよい。例えば、右側耳掛け部28Rや左側耳掛け部28Lに電極が設けられ、当該電極の役割(例えば、センサ電極、参照用電極、グランド電極)が切り替えられてもよい。これら以外の部位に電極が接触するように当該電極が設けられてもよい。例えば、センサ電極と参照用電極との間の距離がより長くなる位置に、センサ電極と参照用電極を設けてもよい。
【0139】
上記のように、耳甲介腔70以外の部位に電極を設けてもよいが、耳甲介腔70に設けられた電極によって測定された電位は、他の部位に設けられた電極によって測定された電位よりも安定する傾向にある。
図12を参照して、この点について説明する。
図12は、各部に設けられた電極によって測定された電位の安定性の評価結果が示されている。
図12に示す例では、耳輪の裏、耳甲介艇、及び、耳甲介腔のそれぞれに電極が設けられ、各電極によって電位が測定されている。ここでは、一例として、第2右側電極44が各部に設けられている。
図12には、耳の写真と模式図とが示されている。耳の模式図は、
図10等に示されている図と同じである。また、矢印が指し示す部分に、第2右側電極44が設けられている。
【0140】
部位毎に複数の被験者を対象として、導通が得られた人数をカウントし、その人数に基づいて電位の安定性を評価した。
【0141】
電極の位置が耳輪の裏である場合、導通が得られた人数は10人であった。その数の割合は、全被験者数の50%未満である。その理由として、電極と耳輪との間に髪の毛が挟まったり、電極が皮膚から浮いてしまったりしたことが考えられる。
【0142】
電極の位置が耳甲介艇である場合、電極としてピン形状を有する電極が用いられた。導通が得られた人数は10人であった。その数の割合は、全被験者数の50%未満である。その理由として、半数以上の被験者においては、電極と皮膚との接触がピン先の点接触となり、測定された信号が脆弱であることが考えられる。また、耳甲介艇の形状は、人によって大分異なり、その形状のばらつきが大きい。それ故、各被験者に対応可能な形状を有する電極を用意するのが難しい。例えば、耳が小さい場合、ピンが耳に収まらずに飛び出してしまう。耳が大き過ぎると、ピンの長さが不足する。従って、特定の大きさを有するピンを用いた場合、被験者に応じて、電位が安定したり、不安定になったりする。その結果、導通が得られた人数が10人になったと考えられる。また、交換可能なピンを用いることも考えられるが、各被験者の耳の大きさに対応するためには、多種類のピンを用意する必要がある。
【0143】
電極の位置が耳甲介腔である場合、被験者の耳の大きさに応じて電極のサイズを変えることで、ほぼ全員の35人の被験者にて導通が得られた。その数の割合は、全被験者数のほぼ100%である。なお、ここでは、電極のサイズとして、3種類のサイズを用意し、被験者の耳のサイズに応じた電極が用いられた。
【0144】
以上のように、耳甲介腔に設けられた電極によって測定された電位は、耳輪の裏や耳甲介艇に設けられた電極によって測定された電位よりも安定する。この理由として、電極の接触面積や装着性等が起因していると考えられる。もちろん、耳輪の裏や耳甲介艇に電極を設けた場合であっても、電位を測定することができるので、耳輪の裏や耳甲介艇に電極を設けてもよい。
【0145】
本実施形態においては、右側イヤーピース24Rを構成する弾性部材の弾性係数と、右側補助部26Rを構成する弾性部材の弾性係数とは、互いに同じ値であってもよいし、互いに異なる値であってもよい。例えば、右側イヤーピース24Rの弾性係数は、右側補助部26Rの弾性係数よりも大きくてもよい。それとは逆に、右側補助部26Rの弾性係数は、右側イヤーピース24Rの弾性係数よりも大きくてもよい。これらの弾性係数を調整することで、ユーザの移動に伴う右側イヤホン部16Rの移動が、右側イヤーピース24R及び右側補助部26Rによって吸収され、その結果、右側イヤホン部16Rの位置ずれを抑制又は防止することができる。左側イヤホン部16Lについても同様である。
【0146】
本実施形態に係るイヤホン装置12は、脳波測定装置以外の他の生体情報測定装置と連携してもよい。他の生体情報測定装置として、例えば、心電計や筋電計等が用いられてもよい。例えば、イヤホン装置12に設けられている参照用電極やグランド電極によって検出された電位が、心電計や筋電計のリファレンス信号やグランド電位として用いられてもよい。
【0147】
図6に示す例では、通信部40及び脳波測定部46は、生体情報測定装置の一例である右側イヤホン部16Rに設けられているが、これは一例に過ぎない。通信部40及び脳波測定部46は、右側イヤホン部16R及び左側イヤホン部16Lの中の少なくとも1つに設けられていればよい。
【0148】
例えば、右側イヤホン部16Rと左側イヤホン部16Lはそれぞれ脳波測定部46を有してもよい。この場合、右側イヤホン部16Rの脳波測定部46は、右側イヤホン部16Rに設けられている電極群によって検出された電位に基づいて脳波を測定し、左側イヤホン部16Lの脳波測定部46は、左側イヤホン部16Lに設けられている電極群によって検出された電位に基づいて脳波を測定する。
【0149】
また、右側イヤホン部16R及び左側イヤホン部16Lはそれぞれ通信部40を有してもよい。この場合、右側イヤホン部16Rの通信部40は、右側イヤホン部16Rの脳波測定部46によって測定された脳波を、端末装置14等の外部装置に送信し、左側イヤホン部16Lの通信部40は、左側イヤホン部16Lの脳波測定部46によって測定された脳波を、端末装置14等の外部装置に送信する。
【0150】
また、電極によって検出された電位を処理する処理部(例えば、ノイズ等を除去する回路等)が、右側イヤホン部16Rと左側イヤホン部16Lのそれぞれに設けられてもよい。この場合、右側イヤホン部16Rの処理部は、右側イヤホン部16Rに設けられている電極群によって検出された電位を処理し、左側イヤホン部16Lの処理部は、左側イヤホン部16Lに設けられている電極群によって検出された電位を処理する。
【0151】
また、左側イヤホン部16Lに、通信部40及び脳波測定部46が設けられ、右側イヤホン部16Rに、通信部40及び脳波測定部46が設けられていなくてもよい。この場合、左側イヤホン部16Lの脳波測定部46は、左側イヤホン部16Lに設けられている電極群によって検出された電位と右側イヤホン部16Rに設けられている電極群によって検出された電位とに基づいて脳波を測定する。もちろん、
図6に示すように、通信部40及び脳波測定部46は、右側イヤホン部16Rのみに設けられてもよい。
【0152】
(変形例1)
以下、
図13及び
図14を参照して、本実施形態に係るイヤホン装置の変形例1について説明する。
図13は、変形例1に係る右側イヤホン部を示す斜視図である。
図14は、人の耳の外観及び内部を模式的に示す図である。変形例1に係る右側イヤホン部102Rは、上記の右側イヤホン部16Rと異なり、右側耳掛け部28Rを有していない。それ以外の構成は右側イヤホン部16Rの構成と同じである。左側イヤホン部も、右側イヤホン部102Rと同様に、左側耳掛け部28Lを有しておらず、それ以外の構成は、左側イヤホン部16Lの構成と同じである。
【0153】
図14には、ユーザの右耳(例えば耳66)に装着された右側イヤホン部102Rが示されている。右側イヤーピース24R及び右側補助部26Rと皮膚との接触の状態は、上記の右側イヤホン部16Rを用いた場合の接触状態と同じである。
【0154】
変形例に係る右側イヤホン部102Rによれば、耳66に装着された右側イヤホン部102Rの移動が規制される。以下、この点について詳しく説明する。
【0155】
右側イヤーピース24Rが外耳道94の表面に接触し、右側補助部26Rが耳甲介腔70に上下方向にて接触することで、右側イヤホン部102Rの上下方向の移動が規制される。
【0156】
また、右側イヤーピース24Rの外表面と外耳道94の表面との間の摩擦力によって、右側イヤホン部102Rの左右方向の移動が規制される。
【0157】
また、右側イヤーピース24Rが外耳道94の表面に接触し、右側補助部26Rが耳甲介腔70に前後方向にて接触することで、右側イヤホン部102Rの前後方向の移動が規制される。
【0158】
上記のように、右側イヤホン部102Rの移動が規制されるので、右側イヤホン部102Rに設けられている電極(例えば第1右側電極42と第2右側電極44)と皮膚との間の接触が維持され、その結果、接触の不安定に起因して脳波に混入するノイズの発生を抑制又は防止することができる。変形例1に係る左側イヤホン部についても同様である。
【0159】
(変形例2)
以下、
図15を参照して、本実施形態に係るイヤホン装置の変形例2について説明する。
図15は、変形例2に係るイヤホン部を示す図であって、イヤホン部をイヤーピース側から見た状態を表す図である。
【0160】
変形例2においては、規制部材としての耳掛け部が移動可能な部材として用いられる。具体的には、格納部に対する耳掛け部の設置位置を変えることで、イヤホン部を右側イヤホン部又は左側イヤホン部の何れかに切り替えて用いることができる。また、その切り替えに応じて、生体情報の測定モードが切り替えられてもよい。以下、変形例2について詳しく説明する。
【0161】
図15に示されているイヤホン部16は、上述した右側イヤホン部16R及び左側イヤホン部16Lと同様に、格納部22と、第1補助部として機能するイヤーピース24と、第2補助部として機能する補助部26と、規制部材として機能する耳掛け部28とを含み、イヤーピース24及び補助部26のそれぞれの外表面に電極が設けられている。もちろん、耳掛け部28に電極が用いられてもよいし、各電極の役割が切り替えられてもよい。
【0162】
格納部22内には、例えば、制御装置、スピーカ、通信装置(例えば通信チップ)、脳波測定電子回路、6軸センサ、メモリ、バッテリ等が格納されている。
【0163】
耳掛け部28は、格納部22に対して着脱可能な部材である。例えば、格納部22の上面104(すなわち、イヤホン部16がユーザの耳に装着されたときに上方を向く面)と下面106(すなわち、上面104の反対側の面)とに、耳掛け部28を格納部22に取り付けるための接続部(例えば孔等)が設けられている。耳掛け部28の一方端部がその接続部に接続されることで(例えば、一方端部が接続部としての孔に嵌め込まれることで)、耳掛け部28が格納部22に取り付けられる。この接続によって、耳掛け部28内の配線と格納部22内の基板とが電気的に接続される。
【0164】
また、補助部26は、矢印108で示す上下方向に傾斜させることができるように格納部22に設けられている。例えば、補助部26の一部(例えばイヤーピース24が設けられている部分)が格納部22の側面に取り付けられ、その一部が回転軸となって、補助部26を上下方向に傾斜させることができる。
【0165】
イヤホン部16を右側イヤホン部として用いる場合、
図15中に実線で示すように、耳掛け部28が格納部22の上面104に取り付けられ、補助部26が上方向(すなわち上面104側)へ傾けられる。この状態で、イヤホン部16が、ユーザの右耳に装着される。具体的には、耳掛け部28が右耳の耳輪に掛けられ、イヤーピース24が右耳の外耳道に挿入され、補助部26が右耳の耳甲介腔に接触する。これにより、右耳に装着されたイヤホン部16によって電位が測定される。
【0166】
イヤホン部16を左側イヤホン部として用いる場合、
図15中に破線で示すように、耳掛け部28が格納部22の下面106に取り付けられ、補助部26が下方向(すなわち下面106側)へ傾けられる。この状態で、イヤホン部16が、ユーザの左耳に装着される。具体的には、耳掛け部28が左耳の耳輪に掛けられ、イヤーピース24が左耳の外耳道に挿入され、補助部26が左耳の耳甲介腔に接触する。これにより、左耳に装着されたイヤホン部16によって電位が測定される。
【0167】
以上のように、変形例2に係るイヤホン部16は、左右兼用のイヤホン部として用いることができる。つまり、イヤホン部16を用いることで、ユーザの右耳及び左耳の間で、生体情報測定装置としてのイヤホン部16が設置される耳を切り替えることができる。
【0168】
また、イヤホン部16が設置される耳が切り替えられた場合、イヤホン部16に設けられている制御部(例えば制御部50)は、生体情報としての脳波の測定モードを変更してもよい。以下、この処理について説明する。
【0169】
右耳は右脳に近く、左耳は左脳に近いため、右耳に設けられたイヤホン部16と左耳に設けられたイヤホン部16とでは、測定される脳波の感度や波形が異なる場合がある。このように、左右の耳によって、測定される脳波の感度や波形が異なる場合があるため、これに対応するために、測定モードが切り替えられる。
【0170】
例えば、イヤホン部16が設置される耳が切り替えられた場合(例えば、右耳に設置されていたイヤホン部16が左耳に設置された場合)、制御部50は、6軸センサ等を用いることでその切り替えを検出する。そして、制御部50は、切り替え前に測定された脳波の感度や波形と、切り替え後に測定された脳波の感度や波形とを比較し、その比較結果に応じた測定モードによって脳波を測定する。例えば、切り替え前に比べて感度が低下している場合、制御部50は、測定感度をより高くする測定モードを実行する。具体例を挙げて説明すると、切り替え前では右耳にイヤホン部16が装着されて脳波が測定されており、切り替え後では左耳にイヤホン部16が装着されて脳波が測定されているものとする。右耳に装着されたイヤホン部16によって測定された脳波の感度よりも、左耳に装着されたイヤホン部16によって測定された脳波の感度が低い場合、制御部50は、測定感度をより高くする測定モードを実行する。なお、切り替え前に比べて感度が高くなっている場合、制御部50は、切り替え前の感度と同じ又は同程度の感度が得られる測定モードを実行してもよいし、測定モードを変えなくてもよい。
【0171】
以上のように、イヤホン部16が装着される耳が変えられた場合に測定モードを切り替えることで、イヤホン部16が装着されている耳に応じた脳波測定を実現することができる。
【0172】
なお、脳波の波形を整形するモードを切り替えてもよいし、その他の信号処理を実行するモードを切り替えてもよい。
【0173】
(変形例3)
以下、
図16及び
図17を参照して、本実施形態に係るイヤホン装置の変形例3について説明する。
図16は、変形例3に係るイヤホン装置12Aの全体の形状を示す斜視図である。
図17は、人の耳の外観及び内部を模式的に示す図である。
図17には、右耳(例えば耳66)に装着された右側イヤホン部が示されている。
【0174】
変形例3に係るイヤホン装置12Aは、右側イヤホン部16R及び左側イヤホン部16Lの代わりに、右側イヤホン部16RA及び左側イヤホン部16LAを有する。イヤホン装置12Aには、右側耳掛け部28R及び左側耳掛け部28Lが設けられていない。
図17に示すように、右側イヤホン部16RAが右耳(例えば耳66)に装着されたときに、ケーブル18が右耳(例えば耳輪72)に掛けられてもよい。同様に、左側イヤホン部16LAが左耳に装着されたときに、ケーブル18が左耳に掛けられてもよい。
【0175】
変形例3においても、変形例1と同様に、右側イヤホン部16RA及び左側イヤホン部16LAの移動が規制されるので、右側イヤホン部16RA及び左側イヤホン部16LAのそれぞれに設けられている電極と皮膚との間の接触が維持される。
【0176】
(変形例4)
右側イヤホン部16Rがユーザの右耳に設置されたときに、筐体の一例である右側格納部22Rから当該ユーザの右耳に向かう方向に対する、第1右側電極42の外耳道に接触する面の角度が、変更可能であってもよい。例えば、第1右側電極42が設けられている右側イヤーピース24Rが、傾いたり揺動したりするように設けられていてもよい。
【0177】
同様に、左側イヤホン部16Lがユーザの左耳に設置されたときに、筐体の一例である左側格納部22Lから当該ユーザの左耳に向かう方向に対する、第1左側電極56の外耳道に接触する面の角度が、変更可能であってもよい。例えば、第1左側電極56が設けられている左側イヤーピース24Lが、傾いたり揺動したりするように設けられていてもよい。
【0178】
また、右側イヤホン部16Rがユーザの右耳に設置されたときに、右側格納部22Rから当該ユーザの右耳に向かう方向に対する、第2右側電極44の耳甲介腔の側面に接触する面の角度が、変更可能であってもよい。また、第2右側電極44の耳甲介腔の底面に接触する面の角度が、変更可能であってもよい。例えば、第2右側電極44が設けられている右側補助部26Rが、右側格納部22Rの方向へ、又は、右側格納部22Rから離れる方向へ、傾くように設けられていてもよいし、揺動するように設けられてもよい。
【0179】
同様に、左側イヤホン部16Lがユーザの左耳に設置されたときに、左側格納部22Lから当該ユーザの左耳に向かう方向に対する、第2左側電極の耳甲介腔の側面に接触する面の角度が、変更可能であってもよい。また、第2左側電極の耳甲介腔の底面に接触する面の角度が、変更可能であってもよい。例えば、第2左側電極が設けられている左側補助部26Lが、左側格納部22Lの方向へ、又は、左側格納部22Lから離れる方向へ、傾くように設けられていてもよいし、揺動するように設けられてもよい。
【0180】
以下、図を参照して、変形例4について詳しく説明する。
【0181】
図18は、右側イヤホン部16Rの断面図である。
図18には、右側イヤホン部16Rの構成が示されているが、左側イヤホン部16Lも同様の構成を有する。
【0182】
右側イヤホン部16Rは、例えば、右側格納部22Rと、右側格納部22Rから突出し、右側補助部26Rが取り付けられて右側補助部26Rを支持する支持部110Rと、支持部110Rから突出し、右側イヤーピース24Rが取り付けられて右側イヤーピース24Rを支持する支持部112Rとを有する。支持部110Rは、第2部材の一例に相当する。支持部112Rは、第1部材の一例に相当する。
【0183】
右側補助部26Rは、支持部110Rの周囲に取り付けられて支持部110Rによって支持される。例えば、右側補助部26Rは、支持部110Rの外側から支持部110Rを挟み込むように支持部110Rに取り付けられる。こうすることで、右側補助部26Rの表面に設けられている第2右側電極44が、右側補助部26Rを介して支持部110Rによって支持される。
【0184】
支持部112Rは、例えば、音導管等を兼ねた部材である。右側イヤーピース24Rは、支持部112Rの周囲に取り付けられて支持部112Rによって支持される。例えば、右側イヤーピース24R内に支持部112Rの一部が挿入されることで、右側イヤーピース24Rが支持部112Rによって支持される。こうすることで、右側イヤーピース24Rの表面に設けられている第1右側電極42が、右側イヤーピース24Rを介して支持部112Rによって支持される。
【0185】
例えば、右側イヤーピース24Rは、右側イヤーピース24Rが支持部112Rによって支持されている部分を軸として傾くように支持部112Rに支持されている。こうすることで、右側格納部22Rからユーザの右耳に向かう方向に対する、つまり、
図18中の矢印114が指し示す方向に対する、第1右側電極42の外耳道に接触する面の角度が、変更可能となる。矢印114が指し示す方向は、換言すると、右側格納部22Rから支持部110Rが突出する方向である。右側イヤーピース24Rは、支持部112Rによって支持されている部分を軸として揺動可能に支持部112Rに支持されてもよい。
【0186】
また、右側補助部26Rは、右側補助部26Rが支持部110Rによって支持されている部分を軸として、支持部110Rの方向へ、又は、支持部110Rから離れる方向へ、傾くように支持部110Rに支持されている。こうすることで、矢印114が指し示す方向に対する、第2右側電極44の耳甲介腔の側面及び底面に接触する面の角度が、変更可能となる。
【0187】
図18に示す例では、右側イヤーピース24Rと、右側補助部26Rと、右側格納部22Rが一体となって1つの装置を構成している。
【0188】
以下、右側イヤーピース24Rを支持する構成について詳しく説明する。なお、以下では、右側イヤーピース24Rを支持する構成について説明するが、左側イヤーピース24Lを支持する構成も、右側イヤーピース24Rを支持する構成と同じである。
【0189】
図19には、右側イヤーピース24Rを支持する第1構成が示されている。
図19は、右側イヤーピース24R及び支持部112Rの断面図である。右側イヤーピース24R内には貫通孔116Rが形成されており、支持部112Rの先端が貫通孔116Rに挿入されることで、右側イヤーピース24Rが支持部112Rによって支持されている。貫通孔116Rに支持部112Rが挿入された状態で、右側イヤーピース24Rが、支持部112Rによって支持されている部分を軸として傾くことができる程度に、支持部112Rが貫通孔116Rに挿入される。例えば、支持部112Rの先端のみが貫通孔116Rに挿入される。支持部112Rの先端のみが貫通孔116Rに挿入されることで、右側イヤーピース24Rは、支持部112Rによって支持されている部分を軸として傾くことができる。例えば、右側イヤーピース24Rは、矢印118が指し示す方向に対して揺動可能に支持部112Rによって支持される。貫通孔116Rに挿入された支持部112Rの部分の長さが短いほど、右側イヤーピース24Rを柔軟に傾けることができるため、その傾き量が多くなる。つまり、右側イヤーピース24Rの揺動の範囲が広くなる。右側イヤーピース24Rを傾けることができるため、右側イヤーピース24Rに設けられている第1右側電極42の外耳道に接触する面の角度を、変更することができる。こうすることで、第1右側電極42を外耳道に密着させることができ、第1右側電極42の検出感度を高めることができる。ユーザによって耳の形状が異なるが、右側イヤーピース24Rを右耳に挿入したときに、右側イヤーピース24Rが、支持部112Rによって支持されている部分を軸として傾くため、第1右側電極42が外耳道に接触し易くなる。つまり、耳の形状に個人差がある場合であっても、第1右側電極42を外耳道に密着させることができる。
【0190】
なお、右側イヤーピース24Rの傾き量と、支持部112Rによる支持力との兼ね合いによるが、支持部112Rは、貫通孔116Rが延びる方向の中央付近まで貫通孔116Rに挿入されてもよい。
【0191】
図20には、右側イヤーピース24Rを支持する第2構成が示されている。
図20は、右側イヤーピース24R及び支持部112Rの断面図である。第2構成においては、右側イヤーピース24Rと支持部112Rとが、貫通孔が形成された中間部材120Rを間にして接続されており、右側イヤーピース24Rは、中間部材120Rを介して支持部112Rに支持されている。なお、中間部材120Rは支持部112Rの一部を構成する部材であってもよい。右側イヤーピース24Rの貫通孔116Rには、中間部材120Rの一部のみが挿入されており、中間部材120Rの貫通孔には支持部112Rの先端が挿入されている。右側イヤーピース24Rは、中間部材120Rによって支持されている部分を軸として傾くことができる。これにより、ユーザの耳の形状に個人差がある場合であっても、第1構成と同様に、第1右側電極42を外耳道に密着させることができる。
【0192】
図21には、右側イヤーピース24Rを支持する第3構成が示されている。
図21は、右側イヤーピース24R及び支持部112Rの断面図である。第3構成においては、支持部112Rの周囲に、弾性部材の一例である、支持部112Rが延びる方向に伸縮するバネ122Rが設けられている。そのバネ122Rの弾性力によって、右側イヤーピース24Rは、支持部112Rが延びる方向に移動することができる。例えば、右側イヤーピース24Rには、貫通孔116Rに通じる開口124Rが形成されている。開口124Rの幅は、貫通孔116Rの幅よりも狭い。その開口124Rを介して、支持部112Rが貫通孔116Rに挿入される。支持部112Rの先端は、貫通孔116Rに挿入されている。支持部112Rの先端には、支持部112Rの側面から外側に突出する突出部126Rが設けられている。突出部126Rは、開口124Rの幅よりも広い位置まで突出しているため、支持部112Rは貫通孔116Rから抜けないようになっている。また、支持部112Rの先端と支持部110Rとの間には、支持部112Rの側面から外側に突出する突出部128Rが設けられている。その突出部128Rと右側イヤーピース24Rとの間に、バネ122Rが挟まるようにして配置されている。
【0193】
右側イヤーピース24R側から突出部128R側へ右側イヤーピース24Rを押し込むと、つまり、右側イヤーピース24R側から突出部128R側へ働く力を右側イヤーピース24Rに加えると、バネ122Rが縮み、右側イヤーピース24Rは、突出部128R側へ移動する。その力を右側イヤーピース24Rに加えないと、バネ122Rは伸びて、そのバネ122Rの力によって、右側イヤーピース24Rは、突出部128Rから離れる方向に移動する。つまり、右側イヤーピース24Rは、矢印130が指し示す方向(つまり、支持部112Rが延びる方向)に移動することができる。
【0194】
第3構成によれば、第1構成と同様に、右側イヤーピース24Rを傾けることができるので、第1右側電極42を外耳道に密着させることができる。また、右側イヤーピース24Rを支持部112Rが延びる方向に移動させることができるため、その方向に対する耳の形状の個人差にも対応することができる。
【0195】
図22には、右側イヤーピース24Rを支持する第4構成が示されている。
図22は、右側イヤーピース24R及び支持部112Rの断面図である。第4構成では、
図21に示されているバネ122Rが、右側イヤーピース24Rの貫通孔116R内に挿入されている。第4構成によれば、第3構成と同じ効果を奏することができる。
【0196】
図23には、右側イヤーピース24Rを支持する第5構成が示されている。
図23は、右側イヤーピース24R及び支持部112Rの断面図である。第5構成においては、支持部112Rの先端が、右側イヤーピース24Rの貫通孔116Rを塞ぐ固定部材132Rによって固定されている。第5構成によれば、第1構成と同じ効果を奏することができる。
【0197】
以下、右側補助部26Rを支持する構成について詳しく説明する。なお、以下では、右側補助部26Rを支持する構成について説明するが、左側補助部26Lを支持する構成も、右側補助部26Rを支持する構成と同じである。
【0198】
図24には、右側補助部26Rを支持する第6構成が示されている。
図24は、右側補助部26R及び支持部110Rの断面図である。右側補助部26Rは、支持部110Rの外側を囲むように支持部110Rに取り付けられている。右側補助部26Rにおいて支持部110Rに対向する面には、右側補助部26Rから支持部110Rに向けて突出する突出部134Rが設けられている。突出部134Rは、支持部110Rに接触している。突出部134Rが支持部110Rに接触し、右側補助部26Rが支持部110Rの外側から支持部110Rを締め付けるように配置されることで、右側補助部26Rが支持部110Rに支持される。また、右側補助部26Rと支持部110Rとの間において、突出部134Rが設けられていない部分には、隙間136Rが形成されている。この隙間136Rが形成されているため、矢印138が指し示すように、右側補助部26Rは、突出部134Rを軸として、支持部110Rの方向へ、又は、支持部110Rから離れる方向へ傾くことができる。右側補助部26Rを傾けることができるため、右側補助部26Rに設けられている第2右側電極44の耳甲介腔の側面及び底面に接触する面の角度を、変更することができる。こうすることで、第2右側電極44を耳甲介腔に密着させることができ、第2右側電極44の検出感度を高めることができる。
【0199】
図25には、右側補助部26Rを支持する第7構成が示されている。
図25は、右側補助部26R及び支持部110Rの断面図である。第7構成においては、右側補助部26Rと支持部110Rとの間にて、弾性部材の一例であるバネ140Rが、支持部110Rの側面に沿って設けられている。そのバネ140Rの弾性力によって、右側補助部26Rは、支持部110Rが突出する方向に移動することができる。例えば、右側補助部26Rと支持部110Rとの間に、支持部110Rに沿って隙間が形成されており、その隙間にバネ140Rが配置されている。右側補助部26Rにおいては、支持部110Rに対向する面に突出部が設けられており、その突出部が支持部110Rに接触し、右側補助部26Rが支持部110Rの外側から支持部110Rを締め付けるように配置されることで、右側補助部26Rは支持部110Rに支持される。
【0200】
支持部110Rの側面に沿った力を右側補助部26Rに加えると、バネ140Rが収縮し、右側補助部26Rは、支持部110Rの側面に沿った方向に移動する。その力を右側補助部26Rに加えないと、バネ140Rが伸びて、右側補助部26Rは、支持部110Rの側面に沿って、力が加えられているときの方向とは反対の方向に移動する。つまり、矢印142が指し示す方向に、右側補助部26Rを移動させることができる。
【0201】
第7構成によれば、第6構成と同様に、右側補助部26Rを傾けることができるので、第2右側電極44を、耳甲介腔に密着させることができる。また、右側補助部26Rを、支持部110Rの側面に沿った方向に移動させることができるため、その方向に対する耳の形状の個人差に対応することができる。
【0202】
図26には、右側補助部26Rを支持する第8構成が示されている。
図26は、右側補助部26R及び支持部110Rの断面図である。第8構成においては、右側補助部26Rから支持部110Rの側面に向かって突出している突出部144Rが、支持部110Rの側面に固定されている。右側補助部26Rと支持部110Rとの間において、突出部144Rが設けられていない部分には、隙間146Rが形成されている。このような隙間146Rが形成されているため、第8構成によれば、第6構成と同じ効果を奏することができる。
【0203】
上述した各構成は一例に過ぎない。例えば、支持部112Rが、ボールジョイントによって、支持部110Rに支持されてもよい。ボールジョイントによって、支持部112Rに支持されている右側イヤーピース24Rを任意の方向に回転させることができる。同様に、支持部110Rが、ボールジョイントによって、右側格納部22Rに支持されてもよい。ボールジョイントによって、支持部110Rに支持されている右側補助部26Rを任意の方向に回転させることができる。
【0204】
別の例として、支持部112Rが、磁石によって支持部110Rに取り付けられてもよい。例えば、磁石からなる球体のコネクタが支持部112Rの端部に設けられ、磁石からなり、当該球体を受ける曲面の形状を有するマウント部材が、支持部110Rに設けられている。支持部112Rに設けられている球体のコネクタが、磁石の磁力によって、支持部110Rに設けられている曲面のマウント部材に取り付ける。コネクタとマウント部材が曲面を有しているため、支持部112Rに支持されている右側イヤーピース24Rを任意の方向に回転させることができる。同様の構成を有する磁石によって、支持部110Rが、右側格納部22Rに取り付けられてもよい。この場合も、支持部110Rに支持されている右側補助部26Rを任意の方向に回転させることができる。
【0205】
別の例として、支持部112Rと支持部110Rとの接続に、ユニバーサルジョイントやフリージョイントが用いられてもよい。同様に、支持部110Rが、ユニバーサルジョイントやフリージョイントによって、右側格納部22Rに取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0206】
10 生体情報測定システム、12 イヤホン装置、14 端末装置、16R 右側イヤホン部、16L 左側イヤホン部、24R 右側イヤーピース、24L 左側イヤーピース、26R 右側補助部、26L 左側補助部、28R 右側耳掛け部、28L 左側耳掛け部。