(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】補助錠
(51)【国際特許分類】
E05B 65/06 20060101AFI20230905BHJP
E05C 1/04 20060101ALI20230905BHJP
E05B 65/10 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
E05B65/06 J
E05C1/04 G
E05B65/10 K
(21)【出願番号】P 2019192777
(22)【出願日】2019-10-23
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】501176059
【氏名又は名称】株式会社ガードロック
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】南 完治
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-039929(JP,A)
【文献】特開2016-075134(JP,A)
【文献】特開2005-042327(JP,A)
【文献】特開2005-098062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 65/06
E05C 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内開き式の開き戸に、外方向に突出する施錠部材保持片を取付部を介して取り付け、該施錠部材保持片の先端側に施錠部材を装着し、該施錠部材を戸枠側に当接させることにより施錠を行う
ようにするとともに、取付部を施錠部材保持片
から室内側で分離可能に構成して、施錠部材が施錠状態のときに、
取付部を施錠部材保持片
から室内側で分離して解錠することができるようにした
補助錠であって、前記取付部に配設したナットに螺合するねじボルトの先端に挟持片を取り付け、該挟持片と施錠部材保持片とで開き戸を挟持するようにして、施錠部材保持片を開き戸に取り付けるようにするとともに、前記取付部にカムをばねの付勢力に抗して引き操作可能に配設し、該カムの係止部を施錠部材保持片の基端側に形成した係止孔に係合させることにより、施錠部材保持片に取付部を一体化させるようにするとともに、カムをばねの付勢力に抗して
カムに取り付けたリング部材を引き操作することにより、カムの係止部と、施錠部材保持片の基端側に形成した係止孔との係合を解除することにより、施錠部材保持片と取付部とを室内側で分離可能にしたことを特徴とする補助錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、マンション等の開き戸(扉)に後付けの補助錠として使用する補助錠に関し、特に、施錠時の室内からの緊急脱出を可能にした補助錠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ピッキングによる盗難対策として、マンション等の開き戸に後付けの補助錠が設置される機会が多くなっている。
この補助錠としては、開き戸の戸枠側に、開き戸の開き方向に突出する施錠部材保持片を取り付け、この施錠部材保持片に施錠部材を装着し、この施錠部材を開き戸に外側から当接させることにより施錠を行う補助錠が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、特許文献1に記載の補助錠は、外開き式の開き戸用のもので、内開き式の開き戸には適用できないということに加え、以下の使用形態において、補助錠の施錠時に室内からの緊急脱出ができないという問題があった。
【0004】
すなわち、不動産業、ビル管理会社等(本明細書において、「管理者」という。)の管理物件(本明細書において、「空き部屋」という。)の場合、空き部屋の内開き式の開き戸の錠前の鍵は防犯上管理者が管理し、空き部屋は錠前を開けた状態で、管理者や工事業者等は、空き部屋に管理錠として補助錠を取り付け、入居者が決まった時点で空き部屋も補助錠を外し、管理者が管理している鍵を入居者に渡す。
【0005】
このような補助錠の使用形態において、例えば、空き部屋の隣の入居中の物件において火災が発生し、かつ、玄関から逃げることができない状況が生じた場合、ベランダから遮蔽壁を蹴り破り、空き部屋を通って避難することになるが、補助錠の施錠時には、室内から解錠することができないため、緊急脱出ができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の補助錠の有する問題点に鑑み、内開き式の開き戸の後付けの補助錠として使用でき、かつ、施錠時の室内からの緊急脱出を可能にした補助錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の補助錠は、内開き式の開き戸に、外方向に突出する施錠部材保持片を取付部を介して取り付け、該施錠部材保持片の先端側に施錠部材を装着し、該施錠部材を戸枠側に当接させることにより施錠を行う補助錠であって、前記施錠部材保持片と取付部とを室内側で分離可能に構成して、施錠部材が施錠状態のときに、施錠部材保持片と取付部とを室内側で分離して解錠することができるようにしたことを特徴とする。
【0009】
この場合において、前記取付部にカムをばねの付勢力に抗して引き操作可能に配設し、該カムの係止部を施錠部材保持片の基端側に形成した係止孔に係合させることにより、施錠部材保持片に取付部を一体化させるようにするとともに、カムをばねの付勢力に抗して引き操作することにより、カムの係止部と、施錠部材保持片の基端側に形成した係止孔との係合を解除することにより、施錠部材保持片と取付部とを室内側で分離可能にすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の補助錠によれば、内開き式の開き戸に、外方向に突出する施錠部材保持片を取付部を介して取り付け、該施錠部材保持片の先端側に施錠部材を装着し、該施錠部材を戸枠側に当接させることにより施錠を行う補助錠の前記施錠部材保持片と取付部とを室内側で分離可能に構成して、施錠部材が施錠状態のときに、施錠部材保持片と取付部とを室内側で分離して解錠することができるようにすることにより、内開き式の開き戸の後付けの補助錠として使用でき、かつ、施錠時の室内からの緊急脱出を可能にすることができるため、安全性の高い補助錠とすることができる。
【0011】
また、前記取付部にカムをばねの付勢力に抗して引き操作可能に配設し、該カムの係止部を施錠部材保持片の基端側に形成した係止孔に係合させることにより、施錠部材保持片に取付部を一体化させるようにするとともに、カムをばねの付勢力に抗して引き操作することにより、カムの係止部と、施錠部材保持片の基端側に形成した係止孔との係合を解除することにより、施錠部材保持片と取付部とを室内側で分離可能にすることにより、引き操作という簡易な操作によって、施錠時の室内からの緊急脱出を可能にすることができるため、安全性を一層向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の補助錠の一実施例を示す施錠時の全体断面図である。
【
図4】同補助錠の説明図で、(a)は左側面図、(b)は平面図、(c)は右側面図、(d)及び(e)は斜視図である。
【
図5】同補助錠の分解図で、(a)は平面図、(b)は右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の補助錠の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1~
図6に、本発明の補助錠の一実施例を示す。
この補助錠は、内開き式の開き戸1に、外方向に突出する施錠部材保持片3を取付部4を介して取り付け、この施錠部材保持片3の先端側に施錠部材5を装着し、この施錠部材5を戸枠2側に当接させることにより施錠を行うように構成されている。
【0015】
取付部4は、取付部本体41に配設したナット42bに螺合するねじボルト42aの先端に挟持片43を取り付け、これにより、ねじボルト42aを回転操作することにより軸方向に出没させることで挟持片43を移動させ、挟持片43と施錠部材保持片3とで、開き戸1を挟持し、補助錠を開き戸1に固定することができるようにしている。
なお、挟持片43は、本体部43aとゴムパッキン43bとで構成するようにしている。
【0016】
ところで、本実施例の補助錠は、施錠部材保持片3と取付部4とを室内側で分離可能に構成することにより、施錠部材5が施錠状態のときに、施錠部材保持片3と取付部4とを室内側で分離して解錠することができるようにしている。
【0017】
施錠部材保持片3と取付部4とを室内側で分離可能にする機構として、具体的には、取付部4にカム44をばね45の付勢力に抗して引き操作可能に配設し、
図3(a)に示すよう、カム44の係止部44aを施錠部材保持片3の基端側に形成した係止孔32に係合させることにより、施錠部材保持片3に取付部4を一体化させるようにするとともに、
図3(b)に示すよう、カム44をばね45の付勢力に抗して引き操作することにより、カム44の係止部44aと、施錠部材保持片3の基端側に形成した係止孔32との係合を解除し、この状態でドアノブ6を持って開き戸1を引き操作することにより、施錠部材保持片3と取付部4とを室内側で分離することができるようにしている。
【0018】
この場合、カム44の引き操作は、リング部材46によって行うようにするとともに、施錠部材保持片3には、操作方法(例えば、「非常脱出機能付 リングを蝶番側に引き扉を開く」等)を記載した指示シール47を貼付するようにしている。
【0019】
また、取付部4の取付部本体41は、カバー41aで覆うことにより組み立てるようにする。
【0020】
一方、施錠部材5は、
図3に示すように、直方体状の本体50に、錠機構として、シリンダ錠51と、シリンダ錠51と反対側に形成され、施錠部材保持片3が挿入されるスリット状の穴52とを有し、シリンダ錠51に鍵54を差し込んで回すことにより、スリット状の穴52の奥に出没可能に設けられたラッチボール(図示省略)を突出状態で固定するように構成されている。
そして、スリット状の穴52に挿入された施錠部材保持片3の透孔31を、ラッチボールで係止することにより、施錠部材保持片3に施錠できるように構成されている。
このように、施錠部材5に施錠部材保持片3が挿入されるスリット状の穴52を形成し、スリット状の穴52の奥に出没可能に設けられたラッチボールを突出状態で固定するようにしているので、ラッチボールが外部に露出せず、このため、不正開錠がされにくいという利点がある。
【0021】
ここで、施錠部材5には、施錠部材5を施錠部材保持片3に施錠したときに、施錠部材5が戸枠2側に当接させることにより施錠を行うようにするために、戸枠当接片53を配設するようにする。
戸枠当接片53には、施錠時の戸枠当接片53と戸枠2との隙間をなくすように調整する隙間調整部材53aを配設するとともに、開き戸1の表面に当接する扉当接片53bを形成するようにする。
ここで、隙間調整部材53aを配設することにより、施錠時の開き戸1のがたつきを防止することができる。
また、扉当接片53bを形成することにより、施錠部材5を施錠した施錠部材保持片3の先端部を蝶番側に折り曲げにくくすることで、施錠部材保持片3の先端部を折り曲げて施錠部材5の戸枠2側への当接状態を解除する不正解錠を防止することができる。
【0022】
この補助錠は、施錠部材5が施錠状態のときに、施錠部材保持片3と取付部4を室内側で分離して解錠することができ、これにより、内開き式の開き戸1の後付けの補助錠として使用でき、かつ、施錠時の室内からの緊急脱出を可能にすることができるため、安全性の高い補助錠とすることができる。
そして、特に、引き操作という簡易な操作によって、施錠部材保持片3と取付部4を室内側で分離して解錠することができ、施錠時の室内からの緊急脱出を可能にすることができるため、安全性を一層向上することができる。
【0023】
以上、本発明の補助錠について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、施錠部材保持片3と取付部4とを室内側で分離可能にする機構として、例えば、引き抜きピンによる連結構造を採用するようにする等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の補助錠は、内開き式の開き戸の後付けの補助錠として使用でき、かつ、施錠時の室内からの緊急脱出を可能にしたものであることから、空き部屋の管理錠としての用途に好適に用いることができるほか、内開き式の開き戸の補助錠としての用途に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 開き戸(扉)
2 戸枠
3 施錠部材保持片
31 透孔
32 係止孔
4 取付部(取付部)
41 取付部本体
42a ねじボルト
42b ナット
43 挟持片
44 カム
44a 係止部
45 ばね
46 リング部材
47 指示シール
5 施錠部材
50 本体
51 シリンダ錠(錠機構)
52 スリット状の穴
53 戸枠当接片
54 鍵