(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】収穫機
(51)【国際特許分類】
A01D 17/00 20060101AFI20230905BHJP
A01D 17/08 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
A01D17/00
A01D17/08
(21)【出願番号】P 2020046526
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000188009
【氏名又は名称】松山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】小畑 真人
(72)【発明者】
【氏名】湯原 光治
(72)【発明者】
【氏名】小林 信也
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-107828(JP,A)
【文献】特開2019-110774(JP,A)
【文献】特開2009-254326(JP,A)
【文献】特開2008-043272(JP,A)
【文献】特開2007-135502(JP,A)
【文献】実開昭55-178422(JP,U)
【文献】国際公開第2018/097216(WO,A1)
【文献】特開2010-081801(JP,A)
【文献】特開2011-103848(JP,A)
【文献】特開平06-014629(JP,A)
【文献】特開平05-168325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 17/00
A01D 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端側板部を有する収穫物搬送手段と、
前記前端側板部よりも前方に位置するゲージ輪を有するゲージ輪手段とを備え、
前記ゲージ輪は、位置変更可能な回動支点を中心として上下方向に回動可能であり、
前記回動支点の位置変更に基づく前記ゲージ輪の前後位置調整により、前記ゲージ輪と前記前端側板部との間の隙間が調整可能である
ことを特徴とする収穫機。
【請求項2】
回動支点は、複数のピン挿入孔の中から選択されたいずれか一のピン挿入孔に挿入された回動支点ピンである
ことを特徴とする請求項1記載の収穫機。
【請求項3】
ゲージ輪手段は、
収穫物搬送手段に取り付けられた取付体と、
位置変更可能な回動支点を介して前記取付体に取り付けられ、前記回動支点を中心として上下方向に回動可能な
伸縮しない支持回動体と、
前記支持回動体によって支持され、ゲージ輪を有するゲージ輪体と、
位置変更可能な連結回動支点を介して前記支持回動体に連結された伸縮可能な伸縮体とを有する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の収穫機。
【請求項4】
回動支点は、支持回動体に形成された複数のピン挿入孔の中から選択されたいずれか一のピン挿入孔に挿入された回動支点ピンであり、
連結回動支点は、伸縮体に形成された複数のピン挿入孔の中から選択されたいずれか一のピン挿入孔に挿入された連結回動支点ピンである
ことを特徴とする請求項3記載の収穫機。
【請求項5】
前端側板部を有する収穫物搬送手段と、
前記前端側板部よりも前方に位置するゲージ輪を有するゲージ輪手段とを備え、
前記ゲージ輪手段は、
前記収穫物搬送手段に取り付けられた取付体と、
位置変更可能な回動支点を介して前記取付体に取り付けられ、前記回動支点を中心として上下方向に回動可能な
伸縮しない支持回動体と、
前記支持回動体によって支持され、前記ゲージ輪を有するゲージ輪体と、
位置変更可能な連結回動支点を介して前記支持回動体に連結された伸縮可能な伸縮体とを有し、
前記回動支点及び前記連結回動支点の位置変更に基づく前記ゲージ輪の前後位置調整により、前記ゲージ輪と前記前端側板部との間の隙間が調整可能である
ことを特徴とする収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫物のこぼれ防止を図ることができる収穫機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された収穫機が知られており、この収穫機は、
図13に示すように、先金側板等の前端側板部1を有する収穫物搬送手段2と、この収穫物搬送手段2の前端側板部1よりも前方に位置するゲージ輪3を有するゲージ輪手段4とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の収穫機では、畝の土中から掘り取られた収穫物Wがゲージ輪3と前端側板部1との間の隙間から側方にこぼれるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、収穫物のこぼれ防止を図ることができる収穫機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の収穫機は、前端側板部を有する収穫物搬送手段と、前記前端側板部よりも前方に位置するゲージ輪を有するゲージ輪手段とを備え、前記ゲージ輪の前後位置調整により前記ゲージ輪と前記前端側板部との間の隙間が調整可能であるものである。
【0007】
請求項2記載の収穫機は、請求項1記載の収穫機において、ゲージ輪は、位置変更可能な回動支点を中心として上下方向に回動可能であるものである。
【0008】
請求項3記載の収穫機は、請求項2記載の収穫機において、回動支点は、複数のピン挿入孔の中から選択されたいずれか一のピン挿入孔に挿入された回動支点ピンであるものである。
【0009】
請求項4記載の収穫機は、請求項1ないし3のいずれか一記載の収穫機において、ゲージ輪手段は、収穫物搬送手段に取り付けられた取付体と、位置変更可能な回動支点を介して前記取付体に取り付けられ、前記回動支点を中心として上下方向に回動可能な支持回動体と、前記支持回動体によって支持され、ゲージ輪を有するゲージ輪体と、位置変更可能な連結回動支点を介して前記支持回動体に連結された伸縮可能な伸縮体とを有するものである。
【0010】
請求項5記載の収穫機は、請求項4記載の収穫機において、回動支点は、支持回動体に形成された複数のピン挿入孔の中から選択されたいずれか一のピン挿入孔に挿入された回動支点ピンであり、連結回動支点は、伸縮体に形成された複数のピン挿入孔の中から選択されたいずれか一のピン挿入孔に挿入された連結回動支点ピンであるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、収穫物のこぼれ防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る収穫機の側面図である。
【
図5】(a)ないし(c)は同上収穫機が備える安全体を示す図である。
【
図6】同上収穫機が備える振動手段を示す図である。
【
図9】同上収穫機の部分側面図(作業深さを深くした作業時)である。
【
図10】同上収穫機の部分側面図(搬送部の調整前)である。
【
図11】同上収穫機の部分側面図(搬送部の調整後)である。
【
図12】同上収穫機の部分側面図(搬送部の再調整後)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態について
図1ないし
図12を参照して説明する。
【0014】
図1ないし
図4において、11は農作業機である収穫機で、この収穫機11は、圃場の収穫物(農作物)Wの収穫作業を行うための小型の自走式収穫装置である。収穫対象である収穫物Wは、例えば圃場の土中に生育した略球形状の馬鈴薯である。なお、収穫物Wは、馬鈴薯以外に、例えば薩摩芋、玉葱、人参等でもよい。
【0015】
収穫機11は、機枠12に設置された駆動源であるエンジン13と、このエンジン13からの動力に基づいて作動する走行手段であるクローラ14と、同じくエンジン13からの動力に基づいて作動して収穫物Wを搬送可能な収穫物搬送手段であるコンベヤ15と、このコンベヤ15の搬送部16を上下方向に振動させるための振動手段17とを備えている。
【0016】
そして、コンベヤ15は、前側の第1搬送部分であるコンベヤ前側部分15aと、後側の第2搬送部分であるコンベヤ後側部分15bとを有し、コンベヤ前側部分15aがコンベヤ後側部分15bに対して上下方向に回動可能となっている。具体的には、回動部分であるコンベヤ前側部分15aは、駆動手段であるシリンダ21の伸縮(作動)に基づいて、回動支点(左右方向の回動中心軸)22を中心としてコンベヤ後側部分15bに対して上下方向に回動可能である。そして、コンベヤ前側部分15aは、シリンダ21の伸び動作に基づく上方回動により非作業状態(格納状態)となり、シリンダ21の縮み動作に基づく下方回動により作業状態となる。なお、コンベヤ前側部分15aの傾斜角度はシリンダ21によって調整可能である。
【0017】
また、収穫機11は、作業者が座る左右の座席26と、この各座席26の近傍に設けられたステップ27と、左側の座席26に座った作業者が操作可能な操作手段28と、コンテナ(収穫物Wが収納される容器)が載置される前コンテナ台29及び後コンテナ台30とを備えている。
【0018】
さらに、収穫機11は、コンベヤ後側部分15bに対するコンベヤ前側部分15aの上方回動時における作業者の安全を図るための左右の安全体71を備えている。そして、当該収穫機11では、シリンダ21の作動により所定位置(例えば上限位置である非作業位置)まで上方回動した非作業状態のコンベヤ前側部分15aの下方回動を安全体71によって規制可能な構成となっている。つまり、この安全体71は、シリンダ21の故障等による非作業状態のコンベヤ前側部分15aの落下(自重による下方回動)を防止する落下防止機能を兼ね備えたものである。
【0019】
ここで、安全体71は、
図5(a)ないし(c)にも示すように、コンベヤ前側部分15aの側板46(46a)に立設された取付部材(取付フレーム)72に連結ピン73を介して回動可能に連結された長手状の安全カバー部材76と、この安全カバー部材76をコンベヤ後側部分15bの側板46(46b)に対して固定(ロック)するための固定部材である着脱ピン77とを有している。
【0020】
安全カバー部材76は、作業者が前後の側板46(46a,46b)間で手等を挟まないようにコンベヤ15の両部分15a,15bの側板46(46a,46b)の上方部を同時に覆う断面コ字状の長手状部材である。この安全カバー部材76の後端部の上側には作業用孔(スライド用孔)78が形成され、その後端部の下側には固定用孔79が形成されている。
【0021】
着脱ピン77は、安全カバー部材76に対して着脱可能な頭付きピン部材である。この着脱ピン77は、丸軸状の軸部81と、この軸部81の基端に設けられた頭部82とを有している。軸部81の先端部には先端側孔83が形成され、軸部81の基端部には基端側孔84が形成されている。
【0022】
コンベヤ後側部分15bの側板46(46b)は、鉛直状の側板部86と、この側板部86の上端部から内側(搬送部16側)に向かって突出する上板部87と、この上板部87の内端部から下方に向かって突出する突出板部88とを有している。側板部86の内面の所定部分には補強部材(例えば補強座金等)90が溶接固定されている。これら補強部材90及び側板部86には、固定用孔91,92がそれぞれ形成されている。
【0023】
そして、
図5(a)及び(b)に示すように、作業時には、着脱ピン77は、安全カバー部材76の作業用孔78に挿入され、その後に基端側孔84に挿入されたRピン(抜止め用ピン)93によって当該作業用孔78から抜け出ない状態とされ、この状態で、当該着脱ピン77は、シリンダ21の作動に基づくコンベヤ前側部分15aの回動に応じてコンベヤ後側部分15bの側板46(46b)の上板部87の上面87a上をこの上面87aと線状に接触した状態で当該上面87aに沿ってスライドする。なおこのとき、例えば収穫物W、土、作業者の手等との当接によってRピン93が抜けることがないように、Rピン93は基端側孔84に挿入されて安全カバー部材76内に位置している。
【0024】
また、
図4及び
図5(c)に示すように、非作業時(格納時)には、着脱ピン77は、互いに対向したピン挿入孔である固定用孔79,91,92に挿入され、その後に先端側孔83に挿入されたRピン93によって当該固定用孔79,91,92から抜け出ない状態にされる。そして、この状態において、例えばシリンダ21の故障等が原因で非作業状態のコンベヤ前側部分15aが自重で下方回動しようとした場合でも、コンベヤ後側部分15bに対して固定された固定状態(ロック状態)の安全体71によって非作業状態のコンベヤ前側部分15aの下方回動が規制され、当該非作業状態が維持される。なおこのとき、Rピン93を着脱ピン77に対して容易に脱着できるように、Rピン93は先端側孔83に挿入されて安全カバー部材76外に位置している。
【0025】
また一方、コンベヤ15は、非作業時に前後の長さが短くできるように互いに回動可能に連結されたコンベヤ前側部分15a及びコンベヤ後側部分15bを有した折畳み可能なもので、圃場における畝の土中に植生した収穫物Wをその土中から掘り取って搬送する掘取搬送装置(収穫物搬送手段)である。
【0026】
そして、このコンベヤ15は、当該コンベヤ15上に収穫物Wとともに搬入された圃場の土を土落下開口(隣り合う搬送バー43間の間隙)20から落下させながら収穫物Wを斜め上後方(搬送方向)に向けて搬送する回行可能な無端状の搬送部16を有している。なお、搬送部16の前側部分はコンベヤ前側部分15aの一部であり、搬送部16の後側部分はコンベヤ後側部分15bの一部である。
【0027】
搬送部16は、前側の従動ローラ31及び後側の駆動ローラ32に巻き掛けられ、この駆動ローラ32の駆動回転により所定方向に回行する。この搬送部16は、複数の土落下開口20から土を落下させながら収穫物Wを搬送する往路面部33を上側に有し、この往路面部(往路面部のうちのベルト部分)33がローラ体(支持体)35と固定ガイド体36とによって下方から支持されている。
【0028】
また、搬送部16は、所定方向に回行する左右一対の帯状の無端部材である無端ベルト(ベルト部分)41と、これら両無端ベルト41間に架設され、当該無端ベルト41とともに回行して収穫物Wを搬送方向に搬送する左右方向長手状の複数本の搬送部材である搬送バー(コンベヤバー)43とを有している。搬送方向に互いに隣り合う搬送バー43間には、圃場に向けて土を落下させるための土落下開口20が存在する。
【0029】
複数本の搬送バー43は、例えば互いに形状等が異なって最下位置(振動ローラとの当接位置である下端位置)の高さがそれぞれ異なる3種類の搬送バー43a,43b,43cによって構成されており、そのうちの1種類の搬送バー43(43a)が立上りコンベヤバーである。つまり、当該搬送バー43(43a)は、他の搬送バー43(43b,43c)よりも上方に位置して収穫物Wの転がりを防止する上方突出状の転がり防止部(立上り部)44を有している。
【0030】
さらに、左右のローラ体35は、所定方向に従動回転しながら搬送部16の無端ベルト41の中間部分を下方から支持する中間従動ローラ体である。このローラ体35は、細長板状の固定部材(石避け板)51を含む固定手段50によって、コンベヤ後側部分15bの側板(コンベヤ側板)46の所定部分に固定されている。
【0031】
また一方、振動手段17は、土を振るい落とすためにコンベヤ15の搬送部16を上下方向に振動させるためのコンベヤ振動装置である。そして、この振動手段17は、少なくとも3つの状態、すなわち例えば搬送部16を第1振動強さ(振幅「20mm」及び振幅「9mm」を有する振動強さ)で振動させる第1振動入状態(振動「強」状態)と、搬送部16を第1振動強さよりも弱い第2振動強さ(振幅「8.2mm」を有する振動強さ)で振動させる第2振動入状態(振動「弱」状態)と、搬送部16に振動を付与しない振動切状態(振動「切」状態)とに選択的に切換可能となっている。
【0032】
ここで、
図6に示すように、振動手段17は、振動入状態時(第1振動入状態時、第2振動入状態時)に搬送部16の搬送バー43との当接に基づいて搬送部16に振動を付与する上下動可能な左右の振動付与体である振動ローラ101と、振動切状態時に振動ローラ101が搬送部16の搬送バー43に当接しないように搬送部16の無端ベルト41を摺動可能に支持する上下動可能な板状の左右の支持体である支持ガイド102とを有している。
【0033】
また、振動手段17は、この振動手段17の状態を3つの状態のうち選択したいずれか一の状態に切り換えるための回動可能な操作体である操作レバー103を有し、振動ローラ101及び支持ガイド102はその操作レバー103の回動操作に基づく上下動により振動手段17の状態に対応する所定位置に同時に設定される。すなわち、操作レバー103をロックピン104で第1振動入位置に固定することで振動手段17が第1振動入状態に切り換えられ、操作レバー103をロックピン104で第2振動入位置に固定することで振動手段17が第2振動入状態に切り換えられ、操作レバー103をロックピン104で振動切位置に固定することで振動手段17が振動切状態にそれぞれ切り換えられる。
【0034】
操作レバー103は、板状のレバー本体部106と、このレバー本体部106に固着されたコ字状枠部107とを有している。L字状のロックピン104は、レバー本体部106のピン用孔108及びコ字状枠部107のピン用孔109に挿入されている。また、ロックピン104のうちコ字状枠部107内に位置する部分には、切換プレート110の孔(第1振動入位置用孔111、第2振動入位置用孔112、振動切位置用孔113)に向けてロックピン104を付勢する付勢部材であるバネ115が装着されている。
【0035】
切換プレート110は、コンベヤ15の前側部分15aの左側の側板46に固着されている。切換プレート110の前後側には、操作レバー103との当接により当該操作レバー103の回動を規制するストッパ117,118が突設されている。それゆえ、操作レバー103の回動範囲は、前後のストッパ117,118によって制限されている。
【0036】
さらに、振動手段17は、互いに離間対向する左右の側板46間に回動可能に架設された回動軸121を有し、この回動軸121の左側の端部に操作レバー103のレバー本体部106の基端部が固着されている。また、左右の両側板(前コンベヤ枠)46は、連結パイプ120によって連結されている。
【0037】
回動軸121の2箇所には取付板122の基端側が固着され、この取付板122の先端側には円筒状の回転体である振動ローラ101がベアリング100を介して回転可能に取り付けられている。また、回動軸121のうち取付板122よりも外側に位置する部分には、回動体である支持ガイド(ベルト支持ガイド板)102を支持する支持板123が固着されている。それゆえ、操作レバー103の操作による回動軸121の回動に基づいて、振動ローラ101と支持ガイド102とが互いに連動して上下方向に回動する。
【0038】
支持ガイド102は、コンベヤ15の前側部分15aの側板46に固定された支軸部(回動支点)124を中心として後端側が昇降するように上下方向に回動可能となっている。換言すると、支持ガイド102は、前端側の回動支点を中心として上下方向に回動可能となっている。
【0039】
この支持ガイド102は、1箇所で曲がったへ字状をなす細長板状のガイド本体部126と、このガイド本体部126の前端部に設けられた取付部127と、ガイド本体部126の下面に突設された突出板部128とを有している。そして、取付部127が支軸部124に回動可能に取り付けられ、かつ、ガイド本体部126の下面が支持板123の湾曲状の上端部である支持部130で支持されている。
【0040】
なお、振動ローラ101及び支持ガイド102は、左右の側板46間でかつコンベヤ15の搬送部16の往路面及び復路面間の位置に配置されているが、操作レバー103は、作業者がコンベヤ15の側方から容易に操作できるように左側の側板46よりも外側の位置に配置されている。
【0041】
次いで、コンベヤ15の掘取部について説明すると、
図7ないし
図9等に示すように、このコンベヤ15のコンベヤ前側部分15aは、当該コンベヤ15の前端部(先端部)に位置する左右の前端側板部である先金側板131を有し、この先金側板131はコンベヤ前側部分15aの側板46(46a)の前端部に取り付けられている。
【0042】
先金側板131は、調整ボルト132の操作により側板46(46a)に対して前後位置調整可能である。そして、この先金側板131は、挿入ボルト133が挿入された長孔134を有し、この長孔134の分だけ移動可能で、この移動範囲内において前後位置調整できる。なお、調整ボルト132は、側板46(46a)に固定された突出状の固定板47のねじ孔(図示せず)と緩み止め用のナット48とに螺合されており、先金側板131の位置調整の際にはナット48を緩めて調整ボルト132を操作する。
【0043】
また、先金側板131には従動ローラ31が取り付けられており、この先金側板131の前後位置調整により無端ベルト41の張力を調整可能である。さらに、左右の両先金側板131間には掘取刃(先金)23が架設され、この掘取刃23の後端部には収穫物Wを搬送部16の搬送始端部に案内する複数の案内棒135が取り付けられている。そして、先金側板131よりも前方の位置には、先金側板131に対して上下位置調整可能(高さ位置調整可能)でかつ前後位置調整なゲージ輪(タイヤ)24が配置されている。
【0044】
ここで、左右一対のゲージ輪24を有するゲージ輪手段136は、コンベヤ前側部分15aの側板46(46a)に固定して取り付けられた取付体137と、取付位置変更可能(挿入位置変更可能)な第1支点としての回動支点である回動支点ピン141を介して取付体137に取り付けられ、その回動支点ピン141を中心として上下方向に回動可能な支持回動体138と、この支持回動体138によって支持された左右のゲージ輪体139と、取付位置変更可能(挿入位置変更可能)な第2支点としての連結回動支点(姿勢支持点)である連結回動支点ピン142を介して支持回動体138に回動可能に連結され、調整ハンドル25の操作により伸縮可能な上下位置調整用の伸縮体140とを有している。なお、両支点ピン141,142は、いずれも頭付きピン部材であり、Rピン(抜止め用ピン)143,144で抜止めされる。
【0045】
取付体137は、コンベヤ前側部分15aの側板46(46a)に固定して取り付けられた三角状の取付部材72と、これら左右の両取付部材72の上端部同士を連結する連結部材145とを有している。連結部材145は、左右方向長手状の連結棒部146を有し、この連結棒部146には1対の上方突出部147及び2対の下方突出部148が突設されている。下方突出部148にはピン挿入孔148aが形成されている。
【0046】
支持回動体138は、互いに平行な2本の回動アーム150と、これら両回動アーム150の前端部が連結固定された支持部材151とを有している。回動アーム150は、前後方向に並ぶ複数(例えば3つ)のピン挿入孔150aを後端側に有している。そして、複数のピン挿入孔150aの中から選択されたいずれか一のピン挿入孔150a及び下方突出部148のピン挿入孔148aに回動支点ピン141が脱着可能に挿入されている。また、支持部材151は、左右方向長手状で断面六角状の支持棒部156を有し、この支持棒部156には1対の上方突出部157が突設され、この上方突出部157にはピン挿入孔157aが形成されている。
【0047】
ゲージ輪体139は、支持部材151の支持棒部156に左右位置調整可能に取り付けられた2本のゲージ輪アーム152と、このゲージ輪アーム152の下端側に回転可能に設けられたゲージ輪24を有している。ゲージ輪アーム152は、支持棒部156の外周側に摺動可能に嵌合した嵌合筒部153を有し、この嵌合筒部153は左右位置調整後に固定ボルト154によって支持棒部156に対して固定される。なお、左右の両ゲージ輪24は、正面視逆ハ字状となって畝の裾部分を当該畝に沿って直進走行する(
図7参照)。
【0048】
伸縮体140は、取付体137の連結部材145の上方突出部147と支持回動体138の支持部材151の上方突出部157との間に架設されている。この伸縮体140は、雌ねじ部160を有する筒状部材161と、その雌ねじ部160に螺合した雄ねじ部162を有する回転操作部材163と、この回転操作部材163を回転可能に保持する保持部材164とを有し、この保持部材164は連結部材145の上方突出部147に支点ピン165を介して回動可能に取り付けられている。
【0049】
筒状部材161は、前後方向に並ぶ複数(例えば3つ)のピン挿入孔161aを前端側に有している。そして、複数のピン挿入孔161aの中から選択されたいずれか一のピン挿入孔161a及び上方突出部157のピン挿入孔157aに連結回動支点ピン142が脱着可能に挿入されている。また、回転操作部材163の雄ねじ部162は筒状のカバー部材166で覆われており、この回転操作部材163の後端部に調整ハンドル25が固着されている。そして、調整ハンドル25を持って回転操作部材163を回転操作して伸縮体140を伸縮させることで、ゲージ輪24の上下位置(高さ位置)を調整できる。
【0050】
ここで、
図8及び
図9において、Aは作業深さ(掘取深さ)、Bはゲージ輪24と先金側板131との間の隙間Sの寸法(側面視でのゲージ輪及び先金側板間の距離)、Cは側板46(46a)に対する先金側板131の突出量、Lは従動ローラ31の軸芯と固定板47との間の離間距離、αは水平方向に対するコンベヤ前側部分15aの傾斜角度である。
【0051】
そして、ゲージ輪手段136の伸縮体140の伸縮やコンベヤ15のシリンダ21の伸縮により収穫機11の作業深さAを調整できるが、作業深さAを深くすると隙間寸法Bが大きくなり、収穫物Wがその隙間Sから側方にこぼれるおそれがある。そこで、収穫物Wのこぼれ防止のために、支点ピン141,142の位置変更によりゲージ輪24の前後位置を調整して隙間寸法Bを小さく維持する。
【0052】
すなわち、例えば
図8は作業深さAが「50mm」であり、
図9は
図8よりも深く作業深さAが「100mm」で作業を行う場合であるが、それ以外の隙間寸法B、突出量C、離間距離L、傾斜角度αは、
図8と
図9で同じ(略同じを含む)である。そして、この
図9の場合でも、両支点ピン141,142の位置変更に基づくゲージ輪24の位置調整によって、
図8の場合と同様に隙間寸法Bは小さくなっているため(例えばB<100mm)、この作業時においても収穫物Wのこぼれを防止(抑制)できる。
【0053】
次いで、
図10はコンベヤ15の搬送部16が新品でかつ隙間寸法Bの調整前であり、この
図10の場合には、隙間寸法Bが「130mm」で大きいため、収穫物Wが隙間Sから側方にこぼれるおそれがある。なお、コンベヤ15の搬送部16が新品のときは、先金側板131は後の位置(初期位置)に固定されている。
【0054】
そこで、
図11に示すように、作業者は、回動支点ピン141を1番前のピン挿入孔150aに差し替え、かつ、連結回動支点ピン142を1番後のピン挿入孔161aに差し替えることで、ゲージ輪24の前後方向に関する位置を調整して隙間Sの調整を行う。その結果、隙間寸法Bが「80mm(<100mm)」となり、収穫物Wのこぼれを防止できる。
【0055】
しかし、使用によりコンベヤ15の無端ベルト41が徐々に伸び、その張力が低下した場合には、先金側板131の位置調整(位置変更)により無端ベルト41の張力を調整する必要がある。具体的には、無端ベルト41の張力が所定値になるように、調整ボルト132を操作して先金側板131を側板46(46a)に対して前方に移動させるが、この場合に、前方への移動量によっては先金側板131がゲージ輪24に対して接近し過ぎて干渉してしまう。
【0056】
そこで、当該干渉回避のために、
図12に示すように、作業者は、回動支点ピン141を1番後のピン挿入孔150aに差し替え、かつ、連結回動支点ピン142を1番前のピン挿入孔161aに差し替えることで、ゲージ輪24の前後方向に関する位置を調整して隙間Sの再調整を行う。その結果、隙間寸法Bが「60mm(<100mm)」となり、ゲージ輪24と先金側板131との干渉を回避できるとともに収穫物Wのこぼれを防止できる。なお、上記隙間寸法B等の各数値は、当該数値には限定されるものではなく、略同じ数値でもよい。
【0057】
次に、上述した収穫機11の作用等を説明する。
【0058】
圃場においてクローラ14の作動により左右のゲージ輪24が畝の裾部分を走行するように収穫機11を前方(
図1に示す進行方向)に移動させると、圃場の畝の土中の収穫物Wはコンベヤ前側部分15aの掘取刃23によってその畝の土中から掘り取られ、この掘り取られた収穫物Wは、コンベヤ前側部分15a及びコンベヤ後側部分15bに亘って位置する搬送部16によって搬送方向に向かって搬送され、この搬送途中で座席26に座った作業者の手作業によりコンテナ内に収納される。
【0059】
ここで、このような作業時において、
図8や
図9等に示すように、先金側板131に対するゲージ輪24の前後位置調整(前後方向に関する位置調整)によりゲージ輪24と先金側板131との間の隙間Sが小さく設定されているため、収穫物Wはその隙間Sから側方にこぼれ落ちにくく、収穫物Wのこぼれが防止される。
【0060】
また、例えば作業終了後には、
図4等に示すように、シリンダ21によりコンベヤ前側部分15aを所定位置まで上方回動させて非作業状態(格納状態)にした後、着脱ピン77を固定用孔79,91,92に挿入しかつRピン93を着脱ピン77の先端側孔83に挿入することにより、安全カバー部材76をコンベヤ後側部分15bの側板46(46b)に対して固定する。これにより、安全体71を用いて非作業状態のコンベヤ前側部分15aの下方回動を規制(防止)することが可能となる。また、この
図4に示す状態とした小型かつ軽量の収穫機11は、小型貨物車両である軽トラックの荷台に載せることが可能である。
【0061】
そして、このような収穫機11によれば、先金側板131に対するゲージ輪24の前後位置調整により、ゲージ輪24と先金側板131との間の隙間Sが調整可能であるため、収穫物Wのこぼれ防止を図ることができる。
【0062】
また、ゲージ輪24の前後位置調整により隙間Sの大きさを調整して収穫物Wが隙間Sから側方にこぼれるのを防止(抑制)できるため、例えばゲージ輪24とは別体の新たなこぼれ防止部材を用いる構成に比べて、その分部品点数の低減を図ることができ、よって軽量化やコスト削減等を図ることができる。
【0063】
さらに、シリンダ21の故障等により非作業状態のコンベヤ前側部分15aが自重でコンベヤ後側部分15bに対して下方回動しようとした場合でも、非作業状態のコンベヤ前側部分15aの下方回動(自重による落下)が固定状態の安全体71によって規制されるため、安全体71とは別体の落下防止部材が不要であり、その分部品点数の低減を図ることができ、よって軽量化やコスト削減等をより一層図ることができる。
【0064】
また、着脱ピン77を作業用孔78から固定用孔79,91,92に差し替えることで、安全カバー部材76をコンベヤ後側部分15bに対して容易かつ確実に固定でき、しかも、作業者は着脱ピン77の差し替えによって安全カバー部材76の固定を確認(意識)でき、固定のし忘れを防止できる。
【0065】
さらに、着脱ピン77は、その下端がコンベヤ後側部分15bの側板46(46b)の上板部87の上面87aと線状に接触した状態でスライドするため、例えば当該上面87aと面状に接触してスライドする構成等に比べて摩擦抵抗が少なくスムーズにスライドできる。なお、例えば着脱ピン77が回転しながら当該上面87a上を移動するようにしてもよい。
【0066】
なお、安全体の安全カバー部材は、作業用孔(作業時孔)及び固定用孔(非作業時孔)を有するものには限定されず、例えば共通の孔を有するものでもよい。
【0067】
また、例えば第1搬送部分が所定位置まで上方回動した際に、ピンが係合凹部に係合して安全体が第2搬送部分に対して自動的に固定(ロック)する構成等でもよい。
【0068】
さらに、回動アームや筒状部材に設けるピン挿入孔の数は、3つには限定されず、例えば4つ以上でもよく、また、伸縮量が大きな伸縮体であれば筒状部材のピン挿入孔の数は1つでもよい。
【符号の説明】
【0069】
11 収穫機
15 収穫物搬送手段であるコンベヤ
24 ゲージ輪
131 前端側板部である先金側板
136 ゲージ輪手段
137 取付体
138 支持回動体
139 ゲージ輪体
140 伸縮体
141 回動支点である回動支点ピン
142 連結回動支点である連結回動支点ピン
150a ピン挿入孔(支持回動体に形成されたピン挿入孔)
161a ピン挿入孔(伸縮体に形成されたピン挿入孔)
S 隙間