IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナノコ 2ディー マテリアルズ リミテッドの特許一覧

特許7343216高輝度発光を示すポリオキソメタレート化合物及びその製造方法
<>
  • 特許-高輝度発光を示すポリオキソメタレート化合物及びその製造方法 図1
  • 特許-高輝度発光を示すポリオキソメタレート化合物及びその製造方法 図2
  • 特許-高輝度発光を示すポリオキソメタレート化合物及びその製造方法 図3
  • 特許-高輝度発光を示すポリオキソメタレート化合物及びその製造方法 図4
  • 特許-高輝度発光を示すポリオキソメタレート化合物及びその製造方法 図5
  • 特許-高輝度発光を示すポリオキソメタレート化合物及びその製造方法 図6
  • 特許-高輝度発光を示すポリオキソメタレート化合物及びその製造方法 図7
  • 特許-高輝度発光を示すポリオキソメタレート化合物及びその製造方法 図8
  • 特許-高輝度発光を示すポリオキソメタレート化合物及びその製造方法 図9
  • 特許-高輝度発光を示すポリオキソメタレート化合物及びその製造方法 図10
  • 特許-高輝度発光を示すポリオキソメタレート化合物及びその製造方法 図11
  • 特許-高輝度発光を示すポリオキソメタレート化合物及びその製造方法 図12
  • 特許-高輝度発光を示すポリオキソメタレート化合物及びその製造方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】高輝度発光を示すポリオキソメタレート化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/08 20060101AFI20230905BHJP
   C09K 11/68 20060101ALI20230905BHJP
   C09K 11/69 20060101ALI20230905BHJP
   C07F 11/00 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
C09K11/08 A
C09K11/68
C09K11/69
C07F11/00 B
C07F11/00 C
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021507978
(86)(22)【出願日】2019-08-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 GB2019052265
(87)【国際公開番号】W WO2020035670
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】62/764,890
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517438033
【氏名又は名称】ナノコ 2ディー マテリアルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NANOCO 2D MATERIALS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダニエルス,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ピケット,ナイジェル エル.
(72)【発明者】
【氏名】サビアニ,ニッキー プラブダス
(72)【発明者】
【氏名】ガフリリユク,バージル
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/143562(WO,A1)
【文献】特開2008-207156(JP,A)
【文献】特表2016-509622(JP,A)
【文献】Yan-Qiu Zhang,RSC Advances,2015年,00,1-3,DOI: 10.1039/x0xx00000x
【文献】Takaru Ito,Chemistry Letters,2013年,42,1400-1402,DOI: 10.1246/cl.130683
【文献】JIN-XIN YE; ET AL,ALKYLIMIDAZOLIUM/ALKYLPYRIDINIUM OCTAMOLYBDATES CATALYZED OXIDATION OF SULFIDES 以下備考,CATALYSIS COMMUNICATIONS,NL,2016年06月,VOL.81,P1-3,https://dx.doi.org/10.1016/j.catcom.2016.03.020,TO SULFOXIDES/SULFONES WITH HYDROGEN PEROXIDE
【文献】P. Roman,Preparation, structural, and spectroscopic study of tetrakis(4-methylpyridinium) β-octamolybdate,Journal of Crystallographic and Spectroscopic Research,1987年,17,109-119
【文献】E. M. MCCARRON; ET AL,PYRIDINIUM MOLYBDATES. SYNTHESIS AND STRUCTURE OF AN OCTAMOLYBDATE CONTAINING 以下備考,INORGANIC CHEMISTRY,米国,1984年10月10日,VOL.23, NO.21,P3275-3280,https://dx.doi.org/10.1021/ic00189a001,COORDINATELY BOUND PYRIDINE: [(C5H5N)2MO8O26]4-
【文献】Lingli Ni,Chemical Communication,2009年,2171-2173,DOI: 10.1039/b821987g
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
C04B
C07F
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式A [POM]である発光性ポリオキソメタレート化合物を製造する方法であって、
Aはプロトン化C -C 20 アルキルアミンであり、
Bは以下の式を有するピリジニウムイオンであり、
【化24】
はアルキル基であり、
及びR は、H、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、ニトリル基、ハロゲン基、アシル基、又はチオール基であり、
は、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、ニトリル基、ハロゲン基、アシル基、又はチオール基であり、
POMは、[Mo 26 4- クラスター又は[W 26 4- クラスターであり、
モリブデン含有前駆体又はタングステン含有前駆体を有機塩と高温の溶媒中で反応させて、発光性ポリオキソメタレート化合物を形成する工程と、
発光性ポリオキソメタレート化合物を溶媒から分離する工程と、
発光性ポリオキソメタレート化合物を結晶化させる工程と、
を含む方法。
【請求項2】
リブデン含有前駆体は、高温の溶媒中で有機塩と反応して発光性ポリオキソメタレート化合物を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
モリブデン含有前駆体は、MoO、MoO・HO、Mo(CO)、HMoO、LiMoO、NaMoO、NaMoO・2HO、KMoO、(NHMoO、(NHMo24・4HO、ZnMoO、FeMoO、PbMoO、及びBiMo12からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ングステン含有前駆体は、高温の溶媒中で有機塩と反応して発光性ポリオキソメタレート化合物を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
タングステン含有前駆体は、W(CO)、WO、WO・HO、CaWO、LiWO、NaWO・2HO、3NaWO・9WO、KWO、BaWO、CdWO、MgWO、(NH1240・xHO、(NH10(W、及びHWOからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
高温60℃乃至50℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
溶媒はホルムアミドである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ポリオキソメタレート化合物はポリオキソモリブデート化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ポリオキソメタレート化合物はポリオキソタングステート化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ポリオキソメタレート化合物は、電磁スペクトルの青色領域においてPL極大(PLmax)を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ポリオキソメタレート化合物は、電磁スペクトルの紫色領域においてPL極大(PLmax)を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
発光性結晶ポリオキソメタレート化合物であって、
式A [POM]を有しており、
Aはプロトン化 -C 20 アルキルアミンであり、
Bは以下の式を有するピリジニウムイオンであり、
【化25】
はアルキル基であり、
及びR は、H、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、ニトリル基、ハロゲン基、アシル基、又はチオール基であり、
は、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、ニトリル基、ハロゲン基、アシル基、又はチオール基であり、
POMは、[Mo 26 4- クラスター又は[W 26 4- クラスターである、化合物。
【請求項13】
POMは[Mo264-クラスターである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
Aは1-ヘキシルアンモニウムイオンでありBは1-ヘキシル,2-ペンチル,4,6-ジメチルピリジニウムイオンであ、請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
最大で92%のフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)を示す、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
00nm乃至35nmのPLmaxを示す、請求項12に記載の化合物。
【請求項17】
BはN-ヘキシル-2,4,6-トリメチルピリジニウムイオンである、請求項13に記載の化合物。
【請求項18】
Bは1,2,4,6-テトラメチルピリジニウムイオンである、請求項13に記載の化合物。
【請求項19】
POMは[W 26 4- クラスターである、請求項12に記載の化合物。
【請求項20】
BはN-ヘキシル-2,4,6-トリメチルピリジニウムイオンである、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
Bは1,2,4,6-テトラメチルピリジニウムイオンである、請求項19に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の参照>
本出願は、2018年8月17日に出願された米国仮出願第62/764,890号の利益を主張し、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
<連邦政府資金による研究開発の記載>
該当せず。
【0003】
<技術分野>
本発明は、ポリオキソメタレート化合物の合成及び特性に関する。より詳細には、本発明は、高輝度(bright)発光特性を示すポリオキソメタレートクラスターの合成に関する。
【背景技術】
【0004】
ポリオキソメタレート(POM)は、アニオン性分子状金属酸化物クラスターの一種である。POMは、有機基で誘導体化されてPOM「ハイブリッド」を形成することができ、その触媒特性、電子特性、及び磁気特性について広く研究されてきた。アニオン[Mo264-を含んでいるオクタモリブデートはPOMのサブクラスであって、これまでのところ、8つの異性体の形態で調製されている。α、β、γ、δ、ε、ζ、η及びθの異性体のうち、α及びβの異性体が最も一般的である。オクタモリブデートクラスターからの発光の報告は乏しく、それら報告の大半は、オクタモリブデートアニオンに配位した金属含有基を採用している。このような化合物では、追加の金属(即ち、Moではない)と有機リガンドとの間における金属からリガンド又はリガンドから金属への電荷移動からフォトルミネセンスが生じる可能性が提案されている。強発光性POM、例えばオクタモリブデート化合物は、例えば、センシング、生物イメージング及び光電子デバイスにおいて、多くの用途を有する可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明では、ポリオキソモリブデート、ポリオキソタングステート、ポリオキソクロメート及びポリオキソバナデートのような、高輝度ルミネッセンス特性を示すポリオキソメタレート化合物が合成される。概して、本開示の様々な態様に従って作られるポリオキソメタレート化合物は、ポリオキソメタレートクラスターと、溶媒分子と、有機塩の少なくともカチオン部とを含む結晶性材料である。ポリオキソメタレート化合物は、驚くほど高い(幾つかの実施形態では1に近い)フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)を示す。
【0006】
幾つかの実施形態では、ポリオキソメタレート化合物は、モリブデン前駆体をアルキルアミンの存在下で一定時間ある温度で撹拌することによって調製されてよい。合成中におけるカルコゲン含有化合物の添加は、ポリオキソメタレート化合物のPLQYの増加を助ける可能性がある。幾つかの実施形態では、ポリオキソメタレート化合物が水に抽出されて、水溶性生成物が得られてよい。幾つかの実施形態では、ポリオキソメタレート化合物が芳香族アミン、例えばピリジンで処理されて、固体材料が得られてよい。幾つかの実施形態では、金属前駆体又は非発光性ポリオキソメタレート化合物を溶媒の存在下で有機塩と反応させることで、発光性ポリオキソメタレート化合物を形成することができる。
【0007】
少なくとも1つの実施形態では、本開示の様々な態様に従って作られたポリオキソメタレート化合物のPL極大(PLmax)は、電磁スペクトルの青色領域にある。幾つかの実施形態では、ポリオキソメタレート化合物のPLQYは、30%より大きくてよい。幾つかの実施形態では、ポリオキソメタレート化合物のPLQYは、40%より大きくてよい。幾つかの実施形態では、ポリオキソメタレート化合物のPLQYは、50%より大きくてよい。幾つかの実施形態では、ポリオキソメタレート化合物のPLQYは60%より大きくてよい。幾つかの実施形態では、ポリオキソメタレート化合物のPLQYは70%より大きくてよい。幾つかの実施形態では、ポリオキソメタレート化合物のPLQYは、80%より大きくてよい。幾つかの実施形態では、ポリオキソメタレート化合物のPLQYは90%より大きくてよい。
【0008】
幾つかの実施形態では、本開示に従うポリオキソメタレート化合物は、A4-x4-y[POM]の形態を取ってよい。ここで、x,y≦4、x+y=4であって、Aは、プロトン化アルキルアミンであり、Bは、例えばピリジニウムイオン又はイミダゾリウムイオンのような有機塩のカチオン部であり、POMは、ポリオキソメタレートクラスターである。幾つかの実施形態では、x及びyは夫々2に等しい。幾つかの実施形態では、xは4に等しく、yは0に等しい。本開示に従うポリオキソメタレート化合物がプロトン化アルキルアミン(A基)を含む実施形態では、プロトン化アルキルアミンの1又は複数の水素は、水素結合を介してポリオキソメタレートクラスターの酸素に配位してよい。幾つかの実施形態では、プロトン化アルキルアミン(A基)の大きさは、隣接するポリオキソメタレートクラスター間の距離に影響を与えてよい。xが4に等しい幾つかの実施形態では、有機塩のカチオン部(B基)は、隣接するポリオキソメタレートクラスター間の距離に影響を与えてよい。ポリオキソメタレート化合物がA基及びB基の両方を含むような幾つかの実施形態では、A基及びB基は、隣接するポリオキソメタレートクラスター間の距離に相乗的に影響を与えてよい。幾つかの実施形態では、ポリオキソメタレートクラスターは、ポリオキソモリブデートクラスターである。他の実施形態では、ポリオキソメタレートクラスターは、ポリオキソタングステートクラスターである。更に他の実施形態では、ポリオキソメタレートクラスターは、ポリオキソクロメート又はポリオキソバナデートクラスターである。
【0009】
少なくとも1つの実施形態において、ポリオキソモリブデートクラスターは、[β-Mo264-クラスターである。少なくとも1つの実施形態において、ポリオキソモリブデート化合物は、(C(C11)CHCH(CH)CHCH(CH)N(C13))(C13NH[β-Mo26]である。
【0010】
高輝度発光に起因して、本開示に従って製造されたポリオキソメタレート化合物には、例えば、光電子デバイス、センサー及び生物イメージングにおける用途を見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1はPL等値線図であって、実施例1に従って水に抽出されたポリオキソモリブデート化合物について、励起波長(y軸)に対するPL発光(x軸)をマッピングしている。
【0012】
図2図2はPL等値線図であって、実施例1に従ってピリジンで処理されたポリオキソモリブデート化合物について、励起波長(y軸)に対するPL発光(x軸)をマッピングしている。
【0013】
図3図3は、実施例1のピリジン処理ポリオキソモリブデート化合物から成長させた単結晶のX線回折(XRD)パターンであって、当該分野の他のポリオキソモリブデート化合物と比較したものである。
【0014】
図4図4はPL等値線図であって、実施例3に従って形成された別のポリオキソモリブデート化合物について、励起波長(y軸)に対するPL発光(x軸)をマッピングしている。
【0015】
図5図5はPL等値線図であって、実施例4の反応1(表2の1行目)に従って形成されたポリオキソモリブデート化合物について、励起波長(y軸)に対するPL発光(x軸)をマッピングしている。
【0016】
図6図6はPL等値線図であって、実施例4の反応2(表2、第2行目)に従って形成されたポリオキソモリブデート化合物について、励起波長(y軸)に対するPL発光(x軸)をマッピングしている。
【0017】
図7図7はPL等値線図であって、実施例4の反応3(表2、第3行目)に従って形成されたポリオキソモリブデート化合物について、励起波長(y軸)に対するPL発光(x軸)をマッピングしている。
【0018】
図8図8はPL等値線図であって、実施例4の反応9(表2、第9行目)に従って形成されたポリオキソモリブデート化合物について、励起波長(y軸)に対するPL発光(x軸)をマッピングしている。
【0019】
図9図9はPL等値線図であって、実施例4の反応11(表2、第11行目)に従って形成されたポリオキソタングステート化合物について、励起波長(y軸)に対するPL発光(x軸)をマッピングしている。
【0020】
図10図10はPL等値線図であって、実施例4の反応13(表2の13行目)に従ったポリオキソタングステート化合物について、励起波長(y軸)に対するPL発光(x軸)をマッピングしている。
【0021】
図11図11は、本開示の様々な態様に従って調製されるポリオキソモリブデート化合物の単結晶の単位セルの視覚的表現である。
【0022】
図12図12は、本開示の様々な態様に従って調製される図11のユニットセルを含むポリオキソモリブデート化合物の2次元結晶構造の視覚的表現である。
【0023】
図13図13は、図12に描かれたポリオキソモリブデート化合物の3次元結晶構造の視覚的表現である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の実施形態の説明は、単に例示的なものであって、本開示の主題、その用途、又は使用を限定することを全く意図していない。
【0025】
全体を通して使用されているように、範囲は、範囲内のあらゆる値を記述するための略記として使用されている。範囲内の任意の値は、範囲の境界として選択することができる。別段の定めがない限り、本明細書のどこかで表示されている全ての割合及び量は、重量パーセントを示すものと理解されるべきである。
【0026】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のために、別段の定めがない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される量、割合又は比を表す全ての数値及びその他の数値は、全ての場合において用語「約」によって修飾されているとして理解されるべきである。「約」という用語の使用は、明示されているか否かに拘わらず、全ての数値に適用される。この用語は概して、記載された数値に対するずれの合理的な量であると当業者が考えるであろう(即ち、同等な機能又は結果を有する)数値の範囲を指す。例えば、この用語は、そのようなずれが値の最終的な機能又は結果を変化させないことを条件に、与えられた数値の±10パーセント、或いは±5パーセント、或いは±1パーセントのずれを含むものと解釈され得る。従って、反対のことが示されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは近似値であって、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。
【0027】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「ある」及び「その」は、明示的に且つ明白に1つの対象に限定されない限り、複数の参照対象を含むことに留意のこと。本明細書で使用されるように、用語「含む」及びその文法的異形は、リスト内の項目の記載が非限定的であって、リスト内の項目に置換又は追加され得る他の類似の項目を排除するものではないことが意図される。例えば、本明細書とそれに続く特許請求の範囲とで使用されるように、用語「備える」(「備えている」などのその変化形、派生語又はバリエーションも同様)、「含む」(「含んでいる」などのその変化形、派生語又はバリエーションも同様)及び「有する」(「有している」などのその変化形、派生語又はバリエーションも同様)は、包括的(即ち、オープンエンド)であり、追加の要素又は工程を除外しないことが意図される。従って、これらの用語は、引用されている要素又は工程をカバーするだけでなく、明示的に引用されていない他の要素又は工程を含んでもよいことが意図されている。更に、本明細書で使用されるように、要素と一緒に使用される場合の用語「ある」の使用は、「1つ」を意味する場合があるが、「1又は複数」、「少なくとも1つ」、及び「1つ以上」の意味にも沿っている。従って、「ある」が前に付く要素は、更なる制約なしに、追加の同一要素の存在を排除しない。
【0028】
本明細書には、ポリオキソモリブデート化合物及びポリオキソタングステート化合物のような、高輝度フォトルミネッセンス特性を示すポリオキソメタレート化合物が開示されており、それらの合成のための方法が記載されている。これらの化合物は、出願人の知る限りでは、先行技術における類似の化合物ではこれまでに報告されたことのない、驚くほど高い(幾つかの実施例では1に近い)PLQYを示す。
【0029】
幾つかの実施形態では、ポリオキソモリブデート化合物は、モリブデン前駆体をアルキルアミンの存在下で室温又は高温で一定時間撹拌することによって調製されてよい。モリブデン前駆体反応物は、MoO、Mo(CO)、HMoO、LiMoO、NaMoO、NaMoO・2HO、KMoO、(NHMoO、(NHMo24・4HO、ZnMoO、FeMoO、PbMoO、及びBiMo12のうちの任意の1つであってよい。幾つかの実施形態では、反応は酸性条件下で行われる。幾つかの実施形態では、酸性条件は、HClのような強酸を用いて達成される。
【0030】
アルキルアミンは、C-C20のアルキルアミン、又はそれらのアルキルアミンの組合せであってよい。少なくとも1つの実施形態では、アルキルアミンはプロピルアミンである。少なくとも1つの実施形態では、アルキルアミンはヘキシルアミンである。少なくとも1つの実施形態では、アルキルアミンはオクチルアミンである。少なくとも1つの実施形態では、アルキルアミンはドデシルアミンである。少なくとも1つの実施形態では、アルキルアミンはヘキサデシルアミンである。少なくとも1つの実施形態では、アルキルアミンはオクタデシルアミンである。幾つかの実施形態では、アルキルアミンは第二級アミンであってよい。幾つかの実施形態では、C-C20アルキルアミンは第三級アミンであってよい。幾つかの実施形態では、アルキルアミンの代わりに、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、スルホキソニウム化合物、又はホスホニウム化合物のうちの任意の1つを使用してよい。
【0031】
アルキルアミンの存在下でモリブデン前駆体を撹拌する持続時間は、モリブデン前駆体及びアルキルアミンを撹拌する温度に依存する。例えば、モリブデン前駆体及びアルキルアミンを低い温度で長時間撹拌することは、より高い温度でより短時間撹拌することと同じ効果を有し得る。撹拌温度及び持続時間は、オクタモリブデート化合物の収率に影響を与え得る。モリブデン前駆体及びアルキルアミンは、様々な温度で様々な持続時間で撹拌されてよい。例えば、モリブデン前駆体及びアルキルアミンは、第1の温度で第1の持続時間攪拌され、その後、第2の温度で第2の持続時間攪拌されてよい。ある実施例では、モリブデン前駆体及びアルキルアミンは、最初に250℃の温度で2時間撹拌され、続いて、室温で6週間撹拌される。他の実施形態では、モリブデン前駆体及びアルキルアミンは、45℃の温度で24時間攪拌される。一般に、第1の温度は、約35℃乃至約300℃の範囲であってよく、第1の温度での撹拌時間は、約30分乃至約48時間の範囲であってよい。第2の温度は、約室温乃至約80℃の範囲であってよい。第2の持続時間は、約2時間乃至約12週間、或いは約1日乃至約11週間、或いは約3日乃至約10週間、或いは約1週間乃至約9週間、或いは約2週間乃至約8週間、或いは約4週間乃至約8週間の範囲であってよい。
【0032】
モリブデン前駆体対アミンのモル比は、約1:10乃至約1:1000の範囲であってよく、或いは約1:20乃至約1:500の範囲であってよく、より具体的には約1:50乃至約1:200の範囲であってよい。
【0033】
驚くべきことに、合成中におけるカルコゲン含有化合物の添加は、オクタモリブデート化合物のPLQYを増加させることに役立つ可能性があることが分かっている。カルコゲン含有化合物は、硫黄含有化合物又はセレン含有化合物であってよい。カルコゲン含有化合物は、アルキルチオールなどのチオール(R-S-H)であってよく、アルキルセレノールなどのセレノール(R-Se-H)であってよい。例えば、カルコゲン含有化合物はC-C18チオールであってよい。幾つかの実施例では、カルコゲン含有化合物は、より具体的にはC-C12チオールであってよい。特定の実施例では、カルコゲン含有化合物は1-ドデカンチオールである。他の実施形態では、カルコゲン含有化合物は、1-ブタンチオール、1-デカンチオール、1-ヘプタンチオール、1-ヘキサデカンチオール、1-ヘキサンチオール、1-ノナンチオール、1-オクタデカンチオール、1-オクタンチオール、1-ペンタデカンチオール、1-ペンタンチオール、1-プロパンチオール、1-テトラデカンチオール、1-ウンデカンチオール、2-エチルヘキシルチオール、2-メチル-1-プロパンチオール、2-メチル-2-プロパンチオール、3-メチル-1-ブタンチオール、tert-ドデシルメルカプタン、tert-ノニルメルカプタン、1,1’,4’,1’’-ベンゼンジメタンチオール、1-アダマンタンチオール、1-ナフタレンチオール、2-フェニルエタンチオール、9-フルオレニルメチルチオール、9-メルカプトフルオレン、ビフェニル-4-チオール、シクロヘキサンチオール、シクロペンタンチオール、又はチオフェノールのうちの何れか1つである。他の実施形態では、カルコゲン含有化合物は、ベンゼンセレノール、オクタンセレノール、ドデカンセレノール、フェニルメタンセレノール、2-メチルベンゼンセレノール、3-メチルベンゼンセレノール、4-メチルベンゼンセレノール、2-メチルプロパン-2-セレノール、メタンセレノール、エタンセレノール、及びプロパン-2-セレノールのうちの何れか1つである。
【0034】
幾つかの実施形態では、カルコゲン含有化合物は、フェニルスルフィド又はフェニルセレニドであってよい。幾つかの実施形態では、フェニルスルフィドはジフェニルジスルフィドである。他の実施形態では、フェニルスルフィドは、ジフェニルスルフィド、メチルp-トリルスルフィド、エチルフェニルスルフィド、クロロメチルフェニルスルフィド、2-クロロエチルフェニルスルフィド、1,2-ベンゾジフェニレンスルフィド、シクロプロピルフェニルスルフィド、フェニルビニルスルフィド、アリルフェニルスルフィド、メトキシメチルフェニルスルフィド、ベンジルフェニルスルフィド、メチルフェニルスルフィド、ジベンゾチオフェン、9-アントラセニルメチルp-トリルスルフィド、9-アントラセニルメチルヘキシルスルフィド、9-アントラセニルメチルメチルスルフィド、9-アントラセニルメチルフェニルスルフィド、アリルp-トリルスルフィド、プロピルp-トリルスルフィド、エチルp-トリルスルフィド、ブチルp-トリルスルフィド、イソアミルp-トリルスルフィド、フェニルp-トリルスルフィド、1,3-ブタジエン-2-イルフェニルスルフィド2-メチルアリルフェニルスルフィド、2-メチルアリルo-トリルスルフィド、4-ビフェニリルフェニルスルフィド、4-メチルベンジルフェニルスルフィド、4-tert-ブチルフェニルメチルスルフィド、α,α-ジメチルベンジルフェニルスルフィド、クロチルo-トリルスルフィド、クロチルフェニルスルフィド、フェネチルフェニルスルフィド、フェニル1-フェニルプロピルスルフィド、フェニル3-フェニルプロピルスルフィド、フェニルスチリルスルフィド、スチリルo-トリルスルフィド、スチリルm-トリルスルフィド、2-ノルボルニルp-トリルスルフィド、又はフェニルテトラデシルスルフィドのうちの任意の1つであってよい。幾つかの実施形態では、フェニルセレニドはジフェニルジセレニドである。他の実施形態では、フェニルセレニドは、ジフェニルセレニド、p-トリルセレニド、メチルフェニルセレニド、フェニルtert-ブチルセレニド、及びアリルフェニルセレニドのうちの任意の1つであってよい。
【0035】
幾つかの実施形態では、カルコゲン含有化合物は、アルキルスルフィド又はアルキルセレニドであってよい。幾つかの実施形態では、アルキルスルフィドはドデシルスルフィドである。他の実施形態では、アルキルスルフィドは、ドデシルメチルスルフィド、ブチルドデシルスルフィド、tert-ドデシルスルフィド、ベンジルメチルスルフィド、ブチルスルフィド、プロピレンスルフィド、ジエチルスルフィド、ジブチルスルフィド、アリルスルフィド、ジベンジルスルフィド、ジオクチルスルフィド、イソプロピルスルフィド、sec-ブチルスルフィド、エチルビニルスルフィド、ドデシルメチルスルフィド、エチルメチルスルフィド、アリルメチルスルフィド、ジメチルスルフィド、テトラヒドロチオフェン、2,2’-チオジエタンチオール、1-フェニルエチルスルフィド、2-エチルヘキシルスルフィド、アリルsec-ブチルスルフィド、ブチルsec-ブチルスルフィド、ブチルtert-ブチルスルフィド、ヘプチルスルフィド、ヘキサデシルスルフィド、イソペンチルスルフィド、メタリルスルフィド、ノニルスルフィド、メチルtert-オクチルスルフィド、オクタデシルスルフィド、テトラデシルスルフィド、ウンデシルスルフィド、アリルエチルスルフィド、アリルプロピルスルフィド、アミルメチルスルフィド、ベンジルシクロヘキシルスルフィド、ブチルドデシルスルフィド、ブチルイソブチルスルフィド、ブチルイソプロピルスルフィド、ブチルメチルスルフィド、ブチルプロピルスルフィド、デシルエチルスルフィド、デシルメチルスルフィド、エチルノニルスルフィド、エチルオクチルスルフィド、ヘプチルメチルスルフィド、イソアミルメチルスルフィド、イソブチルイソプロピルスルフィド、イソブチルプロピルスルフィド、メチル2-メチルアリルスルフィド、メチル2-ナフチルメチルスルフィド、sec-ブチルプロピルスルフィド、又はtert-ブチルイソプロピルスルフィドのうちの任意の1つであってよい。好適なアルキルセレニドとしては、ジメチルセレニド、ジエチルセレニド、ジ-tert-ブチルセレニド、ベンジルセレニド、ジ-n-デシルセレニド及びジメチルジセレニドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
幾つかの実施形態では、本開示の方法で製造されたポリオキソメタレート化合物が水に抽出されて、水溶性の生成物が得られてよい。
【0037】
特定の用途については、取り扱いを容易にするために固体生成物を得ることが望ましい場合がある。幾つかの実施形態では、本開示の様々な態様に従って製造されたポリオキソメタレート化合物が芳香族アミンで処理されて、固体材料が得られてよい。幾つかの実施形態では、芳香族アミンはピリジン又はその誘導体である。他の実施形態では、芳香族アミンは、アニリン、フェニレンジアミン、トルイジン、ジアミノトルエン、ナフチルアミン、アミノピリジン、キノリン、アミノキノリン、プリン、アミノプリン、ピリミジン、アミノピリミジン、ピラジン、ピリダジン、インドール、アクリジン、アミノアクリジン、ピロール、又はそれらの適切な誘導体のうちの任意のものであってよい。
【0038】
幾つかの実施形態では、本開示に基づくポリオキソメタレート化合物は、式A4-x4-y[POM]に従ってよい。ここで、x,y≦4、x+y=4であり、Aはプロトン化アルキルアミンであり、Bは、例えばピリジニウムイオン又はイミダゾリウムイオンのような有機塩のカチオン部であり、POMは、ポリオキソメタレートクラスターであってよい。幾つかの実施形態では、x及びyは夫々2に等しい。幾つかの実施形態では、xは4に等しく、yは0に等しい。本開示に基づくポリオキソメタレート化合物がプロトン化アルキルアミン(A基)を含む実施形態では、プロトン化アルキルアミンの1又は複数の水素は、水素結合を介してポリオキソメタレートクラスターの酸素に配位してよい。幾つかの実施形態では、プロトン化アルキルアミン(A基)の大きさは、隣接するポリオキソメタレートクラスター間の距離に影響を与えてよい。xが4に等しい幾つかの実施形態では、有機塩のカチオン部(B基)は、隣接するポリオキソメタレートクラスター間の距離に影響を与えてよい。ポリオキソメタレート化合物がA基及びB基の両方を含む幾つかの実施形態では、A基及びB基は、隣接するポリオキソメタレートクラスター間の距離に相乗的に影響を与えてよい。幾つかの実施形態では、ポリオキソメタレートクラスターはポリオキソモリブデートクラスターである。他の実施形態では、ポリオキソメタレートクラスターはポリオキソタングステートクラスターである。更に他の実施形態では、ポリオキソメタレートクラスターは、ポリオキソクロメートクラスター又はポリオキソバナデートクラスターである。
【0039】
少なくとも1つの実施形態では、ポリオキソモリブデートクラスターは、[β-Mo264-クラスターである。少なくとも1つの実施形態では、ポリオキソモリブデート化合物は、2つの1-ヘキシル,2-ペンチル,4,6-ジメチルピリジニウムリガンドと、2つのヘキシルアンモニウムリガンドとを含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、ポリオキソモリブデート化合物は、(C(C11)CHCH(CH)CHCH(CH)N(C13))(C13NH[β-Mo26]である。
【0040】
幾つかの実施形態では、非発光性ポリオキソモリブデート化合物は、非発光性ポリオキソモリブデート化合物を形成するために、アルキルアミンなどのルイス塩基の存在下である温度でモリブデン前駆体を最初に一定時間撹拌することによって調製されてよい。モリブデン前駆体反応物は、MoO、Mo(CO)、HMoO、LiMoO、NaMoO、NaMoO・2HO、KMoO、(NHMoO、(NHMo24・4HO、ZnMoO、FeMoO、PbMoO、及びBiMo12のうちの任意の1つであってよい。アルキルアミンは、C-C20アルキルアミン、又はそれらのアルキルアミンの組合せであってよい。少なくとも1つの実施形態では、アルキルアミンはプロピルアミンである。少なくとも1つの実施形態では、アルキルアミンはヘキシルアミンである。少なくとも1つの実施形態では、アルキルアミンはオクチルアミンである。少なくとも1つの実施形態では、アルキルアミンはドデシルアミンである。少なくとも1つの実施形態では、アルキルアミンはヘキサデシルアミンである。少なくとも1つの実施形態では、アルキルアミンはオクタデシルアミンである。幾つかの実施形態では、アルキルアミンは第二級アミンであってよい。幾つかの実施形態では、C-C20アルキルアミンは第三級アミンであってよい。幾つかの実施形態では、アルキルアミンは、例えば、2-プロペン-1-アミン、3-ブテン-1-アミン、2-メチル-3-ブチン-2-アミン、及びブチル-ブタ-2-イニル-アミンのような、1又は複数の炭素-炭素二重結合又は三重結合を含んでよい。幾つかの実施形態では、アルキルアミンは、芳香族環、単素環又は複素環を含んでよい。幾つかの実施形態では、アルキルアミンの代わりに、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、スルホキソニウム化合物、又はホスホニウム化合物の何れか1つを使用してよい。
【0041】
非発光性ポリオキソモリブデート化合物を作るための典型的な反応を、以下のスキーム(1)に示す。
【化1】
【0042】
一般的に、反応スキーム(1)は、HClなどの強酸を用いて酸性条件下で行われる。その後、非発光性ポリオキソモリブデート化合物を有機塩と反応させて、発光性ポリオキソモリブデート化合物を形成することができる。発光性ポリオキソモリブデート化合物を作るための典型的な反応を、以下のスキーム(2)に示す。
【化2】
【0043】
幾つかの実施形態では、発光性ポリオキソモリブデート化合物は、モリブデン前駆体を有機塩と直接反応させてよい。直接反応による発光性ポリオキソモリブデート化合物の形成ための典型的な反応を、以下のスキーム(3)に示す。
【化3】
【0044】
幾つかの実施形態では、反応スキーム(4)に示すように、例えばブチルアミン、プロピルアミン、又はプロピルアミンのようなアルキルアミン共溶媒を少量添加することで、反応スキーム(3)が変更されてよい。
【化4】
【0045】
幾つかの実施形態では、(主溶媒に対して)約1乃至約15vol%、或いは約2.5乃至約12.5vol%、或いは約5乃至約10vol%のアルキルアミン共溶媒を有する溶媒系が使用されてよい。幾つかの実施形態では、アルキルアミン共溶媒を使用することで、より低い温度で反応を進めさせること、そして、生成物の精製を容易にすることができる。
【0046】
反応スキーム(2)及び(3)では、ホルムアミドが溶媒として用いられており、反応温度は150℃よりも高い。反応スキーム(4)では、アセトニトリルが主溶媒として用いられており、反応温度は約80℃である。反応スキーム(2)乃至(5)の使用に適した溶媒としては、ホルムアミド、アセトニトリル(及びアルキル鎖がより長いニトリル)、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、n-ブタノール(並びに、直鎖がより長いアルコール及び分岐鎖がより長いアルコール)、テルピネオール、バレリアン酸、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール(そのエーテル及びエステルを含む)、ジプロピレングリコール(そのエーテル及びエステルを含む)、ジグリム、トリグリム、グリセロール(そのエーテル及びエステルを含む)、トリアセチン、n-メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、n-メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、n-メチルピロリジン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートが挙げられる。一般的に、溶媒は極性があって、水素結合の可能性がなければならない。
【0047】
反応スキーム(2)乃至(4)におけるモリブデン前駆体対有機塩のモル比は、約100:1乃至約1:100の範囲であってよく、或いは約20:1乃至約1:20の範囲であってよく、或いは約1:5乃至約5:1の範囲であってよい。
【0048】
スキーム(2)乃至(4)の反応温度は、約20℃乃至約250℃の範囲であってよく、或いは約60℃乃至約250℃の範囲であってよく、或いは約60℃乃至約150℃の範囲であってよく、或いは約80℃乃至約150℃の範囲であってよい。幾つかの実施形態では、反応時間は、約1分乃至約30日の範囲にあってよい。幾つかの実施形態では、反応時間は、約1時間乃至約7日であってよい。幾つかの実施形態では、反応時間は、約1時間乃至約3日であってよい。反応温度及び時間は、使用する溶媒の沸点、極性及び/又は水素結合能力にある程度基づいてよい。
【0049】
幾つかの実施形態では、反応スキーム(2)乃至(4)の有機塩は、ピリジニウム塩であってよい。典型的なピリジニウム塩としては、以下の化合物I-XIIに従った構造を有するものが挙げられる。
【化5】
【0050】
一般的に、好適なピリジニウム塩は、以下の構造を有するものとして定義できるが、これに限定されない。
【化6】
【0051】
ここで、Rは、置換又は非置換、直鎖又は分岐、飽和又は少なくとも部分的に不飽和のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、メチルエチルエーテル、メチルヘキシルエーテル、3-メチルペンタン、2-ヘプテン、1-オクテン、及び1-ペンテン)であり、
-Rは、夫々同じか又は異なっており、H、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、ニトリル基、ハロゲン基、アシル基、又はチオール基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、メチルエチルエーテル、メチルヘキシルエーテル、3-メチルペンタン、2-ヘプテン、1-オクテン、1-ペンテン、メトキシ、エトキシ、ペントキシ、フェノキシ、2-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、4-エチルモルホリン、2-プロペン-1-チオール、ピペリジン-4-チオール、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-チオール、1-オクタンチオール、1-ドデカンチオール、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、アセチル、ニトロビニル)が挙げられる。
【0052】
幾つかの実施形態では、反応スキーム(2)-(4)の有機塩は、キノリニウム塩であってよい。典型的なキノリニウム塩には、以下の化合物XIV-XXIIに従った構造を有するものが挙げられる。
【化7】
【0053】
一般的に、好適なキノリニウム塩は、以下の構造を有するものとして定義できるが、これに限定されない。
【化8】
【0054】
ここで、Rは、置換又は非置換、直鎖又は分岐、飽和又は少なくとも部分的に不飽和のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、メチルエチルエーテル、メチルヘキシルエーテル、3-メチルペンタン、2-ヘプテン、1-オクテン及び1-ペンテン)であり、
及びRは、夫々同じか又は異なっており、H、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、ニトリル基、ハロゲン基、アシル基、又はチオール基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、イソブチル、sec-ブチル、イソペンチル、メチルエチルエーテル、メチルヘキシルエーテル、3-メチルペンタン、2-ヘプテン、1-オクテン、1-ペンテン、メトキシ、エトキシ、ペントキシ、フェノキシ、2-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、4-エチルモルホリン、2-プロペン-1-チオール、ピペリジン-4-チオール、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-チオール、1-オクタンチオール、1-ドデカンチオール、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、アセチル、ニトロビニル)が挙げられる。
【0055】
幾つかの実施形態では、反応スキーム(2)-(4)の有機塩は、イソキノリニウム塩であってよい。典型的なイソキノリニウム塩としては、以下の化合物XXIV-XXIXに従った構造を有するものが挙げられる。
【化9】
【0056】
一般的に、好適なイソキノリニウム塩としては、以下の構造を有するものとして定義できるが、これに限定されない。
【化10】
【0057】
ここで、Rは、置換又は非置換、直鎖又は分岐、飽和又は少なくとも部分的に不飽和のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、メチルエチルエーテル、メチルヘキシルエーテル、3-メチルペンタン、2-ヘプテン、1-オクテン、及び1-ペンテン)であり、
-R10は、夫々同じか又は異なっており、H、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、ニトリル基、ハロゲン基、アシル基、又はチオール基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、メチルエチルエーテル、メチルヘキシルエーテル、3-メチルペンタン、2-ヘプテン、1-オクテン、1-ペンテン、メトキシ、エトキシ、ペントキシ、フェノキシ、2-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、4-エチルモルホリン、2-プロペン-1-チオール、ピペリジン-4-チオール、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-チオール、1-オクタンチオール、1-ドデカンチオール、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、アセチル、ニトロビニル)が挙げられる。
【0058】
幾つかの実施形態では、反応スキーム(2)-(4)の有機塩はピラジニウム塩であってよい。典型的なピラジニウム塩としては、以下の化合物XXXI-XXXVに従った構造を有するものが挙げられる。
【化11】
【0059】
一般的に、好適なピラジニウム塩は、以下の構造を有するものとして定義できるが、これに限定されない。
【化12】
【0060】
ここで、R11は、置換又は非置換、直鎖又は分岐、飽和又は少なくとも部分的に不飽和のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、メチルエチルエーテル、メチルヘキシルエーテル、3-メチルペンタン、2-ヘプテン、1-オクテン、及び1-ペンテン)であり、
12及びR13は、夫々同じか又は異なっており、H、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、ニトリル基、ハロゲン基、アシル基、又はチオール基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、メチルエチルエーテル、メチルヘキシルエーテル、3-メチルペンタン、2-ヘプテン、1-オクテン、1-ペンテン、メトキシ、エトキシ、ペントキシ、フェノキシ、2-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、4-エチルモルホリン、2-プロペン-1-チオール、ピペリジン-4-チオール、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-チオール、1-オクタンチオール、1-ドデカンチオール、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、アセチル、ニトロビニル)が挙げられる。
【0061】
幾つかの実施形態では、反応スキーム(2)-(4)の有機塩はピリミジニウム塩であってよい。典型的なピリミジニウム塩としては、以下の化合物XXXVII-XLIIに従った構造を有するものが挙げられる。
【化13】
【0062】
一般的に、好適なピリミジニウム塩は、以下の構造を有するものとして定義できるが、これに限定されない。
【化14】
【0063】
ここで、R14は、置換又は非置換、直鎖又は分岐、飽和又は少なくとも部分的に不飽和のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、メチルエチルエーテル、メチルヘキシルエーテル、3-メチルペンタン、2-ヘプテン、1-オクテン、及び1-ペンテン)であり、
15-R17は、夫々同じか又は異なっており、H、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、ニトリル基、ハロゲン基、アシル基、又はチオール基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、メチルエチルエーテル、メチルヘキシルエーテル、3-メチルペンタン、2-ヘプテン、1-オクテン、1-ペンテン、メトキシ、エトキシ、ペントキシ、フェノキシ、2-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、4-エチルモルホリン、2-プロペン-1-チオール、ピペリジン-4-チオール、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-チオール、1-オクタンチオール、1-ドデカンチオール、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、アセチル、ニトロビニル)が挙げられる。
【0064】
幾つかの実施形態では、反応スキーム(2)-(4)の有機塩は、インドリウム塩であってよい。典型的なインドリウム塩としては、以下の化合物XLIV-XLVIに従った構造を有するものが挙げられる。
【化15】
【0065】
幾つかの実施形態では、反応スキーム(2)-(4)の有機塩は、イミダゾリウム塩であってよい。典型的なイミダゾリウム塩としては、以下のような化合物XLVII-LVに従った構造を有するものが挙げられる。
【化16】
【0066】
幾つかの実施形態では、有機塩はベンゾオキサゾリウム塩であってよい。典型的なベンゾオキサゾリウム塩としては、以下のような化合物LVI-LVIIIに従った構造を有するものが挙げられる。
【0067】
【化17】
幾つかの実施形態では、反応スキーム(2)-(4)の有機塩は、ベンズイミダゾリウム塩であってよい。典型的なベンズイミダゾリウム塩としては、以下の化合物LVIX-LXIVに従った構造を有するものが挙げられる。
【化18】
【0068】
幾つかの実施形態では、反応スキーム(2)-(4)の有機塩は、チアゾリウム塩であってよい。典型的なチアゾリウム塩としては、以下のような化合物LXV-LXXIに従った構造を有するものが挙げられる。
【化19】
【0069】
幾つかの実施形態では、反応スキーム(2)-(4)の有機塩は、ベンゾチアゾリウム塩であってよい。典型的なベンゾチアゾリウム塩としては、以下の化合物LXXII-LXXVIIIに従った構造を有するものが挙げられる。
【化20】
【0070】
幾つかの実施形態では、反応スキーム(2)-(4)の有機塩は、ピリリウム塩又はチオピリリウム塩であってよい。典型的なピリリウム塩又はチオピリリウム塩としては、以下の化合物LXIX-LXXXIIIに従った構造を有するものが挙げられる。
【化21】
【0071】
上記の化合物I-LXXXIIIの各々では、対アニオンは、任意の適当なアニオン、例えば、F、Cl、Br、I、NO 、NO 、HSO 、ClO 、ClO 、OCl、OBr、CHSO 、CFSO 、CHSO 、BF 、PF 、SbF 、及びCHCOOなどであってよいが、これらに限定されない。本明細書に記載の有機塩は、Sigma Aldrich、Fisher Scientific、Strem、VWR、Acros、及びOrganics等の供給者から商業的に入手できる。
【0072】
上記の反応スキーム(1)-(4)及び以下の実施例のような本明細書に開示された方法は、ポリオキソタングステート、ポリオキソクロメートやポリオキソバナデートのようなPOMを合成し、そして、サイズが異なるMoユニットのクラスターを合成するように変更されてよい。好適なタングステン前駆体の例には、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:W(CO)、WO、CaWO、LiWO、NaWO・2HO、3NaWO・9WO、KWO、BaWO、CdWO、MgWO、(NH1240・xHO、(NH10(W、及びHWO。好適なクロム前駆体の例には、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:Cr(CO)、CrO、KCrO、NaCrO、NaCrO・4HO、BaCrO、AgCrO、CaCrO、(NHCrO、PbCrO、RbCrO、[(CSiO]CrO、KCr(C・3HO、及びCrOCl。好適なバナジウム前駆体の例には、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:NaVO、(PhSiO)VO、NHVO、AgVO、V、V、及びV。Moユニットの例には、x=1及びy=4、x=2及びy=7、x=3及びy=10、x=4及びy=13、x=5及びy=16、x=6及びy=19、x=7及びy=24、x=12及びy=40、x=16及びy=52、並びにx=18及びy=54の場合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
少なくとも1つの実施形態では、本開示の様々な態様に従って製造されたポリオキソメタレート化合物のPL極大(PLmax)は、電磁スペクトルの青色領域にある。少なくとも1つの実施形態では、本開示の様々な態様に従って製造されたポリオキソメタレート化合物のPLmaxは、電磁スペクトルの紫色領域にある。少なくとも1つの実施形態では、本開示の様々な態様に従って製造されたポリオキソメタレート化合物のPLmaxは、電磁スペクトルの青色及び紫色の領域に及ぶ。幾つかの実施形態では、本開示の様々な態様に従って製造されたポリオキソメタレート化合物のPLQYは、30%より大きくてよい。幾つかの実施形態では、本開示の様々な態様に従って製造されたポリオキソメタレート化合物のPLQYは、40%より大きくてよい。幾つかの実施形態では、本開示の様々な態様に従って製造されたポリオキソメタレート化合物のPLQYは、50%より大きくてよい。幾つかの実施形態では、本開示の様々な態様に従って製造されたポリオキソメタレート化合物のPLQYは、60%より大きくてよい。幾つかの実施形態では、本開示の様々な態様に従って製造されたポリオキソメタレート化合物のPLQYは、70%より大きくてよい。幾つかの実施形態では、本開示の様々な態様に従って製造されたポリオキソメタレート化合物のPLQYは、80%より大きくてよい。幾つかの実施形態では、本開示の様々な態様に従って製造されたポリオキソメタレート化合物のPLQYは、90%より大きくてよい。
【0074】
POMは、触媒、ガス吸着、磁性、電気伝導、及び光化学を含む様々な用途に提案されてきた。更に、本開示に従った方法を用いて形成されるオクタモリブデート化合物又は他のPOMは、例えば、光電子デバイス、センサー、及び生物イメージングにおける用途を見出すことができる。
【実施例
【0075】
以下の非限定的な実施例は、現在考えられている代表的な実施形態のより完全な理解を促進するために、例示を目的としてのみ提供される。これらの実施例は、本明細書に記載された代表的な実施形態を限定するものと解釈されるべきではない。
【0076】
<実施例1:435nm発光[Mo26]ポリオキソモリブデート化合物の合成>
1Lのフラスコ内にて、ヘキサデカン50mL及びヘキサデシルアミン5gを真空下で1時間、80℃にて加熱して溶液Aを作製した。200mLバイアル内にて、ヘキサデシルアミン10g及びヘキサデカン50mLを80℃で脱ガスして、溶液Bを作製した。250mL丸底フラスコ内にて、溶液Bを1.32gのMo(CO)に加えて、120℃にて撹拌して溶液Cを作製した。溶液Aを250℃に加熱し、そこに溶液Cの5mL部を、5分毎に1時間添加した。250℃に保ったまま1-ドデカンチオール7.5mLをシリンジポンプで1時間かけて添加し、その後、250℃で更に1時間撹拌し、60℃に冷却した。400mLのアセトンを加えた後に、遠心分離した(8000rpm、30分)。残留固体をヘキサン125mLに分散させた。
【0077】
ヘキシルアミン10mL及びプロピルアミン50mLを含むN充填1Lフラスコにヘキサン溶液を加えた。反応液を6週間撹拌した。溶液から溶媒を除去し、その後、約800mLの乾燥アセトニトリルに再分散し、3日間撹拌した。材料をカニューレ濾過した後に、溶媒を抽出した。材料を30mLのアセトニトリルに再分散させた。
【0078】
<HO抽出及び精製>
予め調製した溶液から真空蒸発によってアセトニトリルを除去した後、トルエン(30mL)に材料を再分散させた。そのトルエン溶液を分離漏斗に入れた。水(25mL)を分離漏斗に加え、混合物を20秒間振盪した後、沈殿させた。水抽出物を回収した。洗浄工程を繰り返して合計20回行った。トルエン(5mL)を各画分に添加した後、9000rpmで5分間遠心分離して、水相から濁ったトルエンの泡を分離した。全ての画分を組み合せて、分離漏斗を用いて分離することで、水相からトルエンアドレイヤーを分離した。水溶液を約30mLの体積に減らして、淡黄色の溶液として分離した。材料のPL等値線図は、図1に示されており、励起波長(y軸)に対するPL発光(x軸)をマッピングしている。PL等値線図は、PL強度が高い2つの領域を持つ明確なプロファイルを示している。一方では、励起波長は300nmを中心とし、他方では、励起波長は340nmを中心としている。PLmaxは約435nmである。水中の材料のPLQYは77%であった。
【0079】
<ピリジン処理と分離>
蒸留ヘッドを取り付けたコンデンサーに接続された100mL丸底フラスコに、発光水溶液を加えた。ピリジン(50mL)をフラスコに加えた後、反応温度を3時間105℃に設定した。HOの蒸発が起こるので、当初、反応液を96℃を超えて加熱しなかった。(蒸留ヘッドに集められた)凝縮HOを、HOが蒸発しなくなるまで、つまり、反応液の温度が約105°Cと測定されるまで除去した。この時点で溶液の色は、淡い黄色から濃い緑色に変化した。反応液を105℃で更に2時間攪拌したままにした。冷却した後、反応液中のピリジンを40℃の真空下で蒸発させると、濃緑色の固体が残った。この固体をアセトン(20mL)に溶解させ、ヘキサン100mLで沈殿させた後、遠心分離(8000rpm、5分間)を行い、濃緑色の固体を回収した。得られた緑色粉末を高真空下で72時間乾燥させた。その材料は、メタノール、アセトニトリル、及びアセトンに良好な溶解性を示した。アセトニトリルでは、PLQYは92%であった。材料のPL等値線図は図2に示されており、励起波長(y軸)に対するPL発光(x軸)をマップしている。ピリジンで処理する前の材料と同様に、PL等値線図は、高いPL強度の2つの領域の明確なプロファイルを示している。一方では、励起波長は300nmを中心としており、他方では、励起波長は340nmを中心としている。PLmaxは約435nmである。
【0080】
ピリジン処理後に、材料をアセトニトリルに溶解させ、その後アセトニトリル溶媒をゆっくりと蒸発させることで、単結晶を成長させた。単結晶X線回折により、材料は、複数のMo26中心を備える構造を有するポリオキソモリブデート化合物であって、各中心は、2つの1-ヘキシル,2-ペンチル,4,6-ジメチルピリジニウムリガンドと2つのヘキシルアンモニウムリガンドに配位している、ポリオキソモリブデート化合物、つまり、(C(C11)CHCH(CH)CHCH(CH)N(C13))(C13NH[β-Mo26]であることが明らかになった。
【化22】
【0081】
単結晶X線回折(XRD)パターンを図3に示す(下側パターン)。また、比較のためにMcCarronらにより調製された(CNH)[(CN)Mo26](Inorg.Chem.,1984,23,3275;中央パターン)と、Romanらにより調製された2-メチルピリジニウムβ-オクタモリブデート([CN][Mo26])(Acta Cryst.,1986,C42,956-958;上側パターン)のXRDパターンとを示す。表1は、(C(C11)CHCH(CH)CHCH(CH)N(C13))(C13NH[β-Mo26](実施例1)、(CNH)[(CN)Mo26](McCarron)、及び[CN][Mo26](Roman)のXRDデータを比較したものである。表1には、最も強度の高いピーク(a.u.=1.00)に対して少なくとも0.10の任意単位(a.u.)の強度を有する各XRDパターンのピークのみが載せられている。
【表1】
【0082】
<実施例2:非発光性[Mo26]ポリオキソモリブデート化合物における発光誘導>
分取手順を変更することにより、先行技術の非発光性材料に発光を誘導することができることが分かった。
【0083】
<実施例2A(従来技術)>
以前に文献で報告された合成方法[E.M.McCarron,III,J.F.Whitney and D.B.Chase,Inorg.Chem.,1984,23,3275]において、(CNH)[(CN)Mo26]を、三酸化モリブデン二水和物(100mg)を過剰ピリジン(5mL)中で45℃で24時間加熱することによって合成した。得られた白色粉末を濾過し、アセトンで洗浄し、その後、真空下で50℃で乾燥させた。得られた材料は、ジメチルスルホキシドとピリジンの混合物に溶解させると、フォトルミネッセンスを示さなかった。
【0084】
<実施例2B>
ピリジンをヘキシルアミンに置き換えて、実施例2Aの合成方法を再度行った。未反応/アミン不溶性の材料を濾過して分離し、アミンに溶解する黄色材料を残した。材料を乾燥するまで真空処理し、トルエンに溶解させ、その後水で抽出して、435nmで発光する材料を得た。材料のPLQYは、材料を窒素下で放置することで増加し、48時間後に33%に達した。
【0085】
<実施例3>
反応を、不活性なN雰囲気下で行った。乾燥アセトニトリル(1mL)をMo(CO)(0.1g)と16時間反応させた。乾燥ヘキシルアミン(1g)を60℃で加えて、16時間反応させた。次に、反応生成物を4つの同等の部に分けた。第1の部をアセトン(2mL)と反応させ、その後、約30分間空気に曝した。第2の部を30%H水溶液(2mL)と反応させ、その後、約30分間空気に曝した。第3の部をHO(2mL)と反応させ、その後、約30分間空気に曝した。第4の部を2-プロパノール(2mL)と反応させ、その後、約30分間空気に曝した。より大規模にバッチ合成が行われる同様の実験(例えば、反応生成物の重量が10グラム以上)では、空気曝露時間は約6時間までとされてよい。
【0086】
アセトンと反応させるだけで青色発光ポリオキソモリブデート化合物を形成させた。青色発光ポリオキソモリブデート化合物をトルエン(50mL)に溶解させ、水に抽出した。1回目の水洗で、青色発光ポリオキソモリブデート化合物は82%のPLQYを示した。2回目の水洗後、PLQYは43%に低下した。2回目の水洗液を水中で2日間放置すると、PLQYは52%に上昇した。PLQYを向上させるために、青色発光ポリオキソモリブデート化合物を真空抽出により精製した後、クロロホルム(50mL)に溶解させて水中に抽出した。
【0087】
図4は、PL等値線図であって、実施例4に従って形成されて水に抽出されたポリオキソモリブデート化合物について、励起波長(y軸)に対するPL発光(x軸)をマップしている。図4は、ポリオキソモリブデート化合物は435nmを中心としたPLmaxを示しており、約340nmの励起波長で最も強度が高いことを表している。また、実施例1で説明されたポリオキソモリブデート化合物について観察されたように(図1参照)、300nm未満の励起波長にて、PL強度が高い第2の領域が示唆されている。
【0088】
<実施例4>
本実施例では、青色発光ポリオキソメタレート化合物をモリブデン前駆体又はタングステン前駆体から直接合成した。
【0089】
<非発光性Mo26[C13NHの合成>
脱イオン水(DI HO)100mLに5g(24.2mmol)のNaMoOを加えて可溶化した。この溶液に1-ヘキシルアミン13.5mL(5 equiv.)を激しく撹拌しながら加えた。1M HClを用いて5に溶液のpHを調節した。1M HClを用いて溶液のpHを5に調節した。白色の沈殿物として形成された生成物を濾過し、冷水(1回)とMeOH(5回)とで洗浄し、高真空下で24時間乾燥させた。
【0090】
<非発光性Mo26[CNH(COH)の合成>
60mLのDI HOに、3g(14.5mmol)のNaMoOを加えて可溶化した。この溶液にCN(COH)(10g、62mmol、5 equiv.)を加え、1M HClを用いてpH値を4.0に調節した。形成された固体生成物を濾過し、冷水(1回)及びMeOH(5回)で洗浄した。
【0091】
<N-ヘキシル-2,4,6-トリメチルピリジニウムブロミドの合成>
2,4,6-トリメチルピリジン5mL(38mmol)に、1-ブロモヘキサン5.32mL(1 equiv.)を加えた。溶液を還流温度(約105℃)にして、72時間反応させた。そして、この溶液を室温(RT)まで冷却すると、固体生成物が形成された。この固体生成物を濾過し、ヘキサンで洗浄し(10回)、高真空下で乾燥させて白色粉末を得た。
【化23】
【0092】
<青色発光ポリオキソモリブデート又はポリオキソタングステート化合物の合成>
0.1gのMo又はW前駆体(表2、第1列)に0.03のピリジニウム塩(表2、第2列;約1 equiv.)を加え、次に溶媒(表2、第3列)2mLを加えた。反応液を150℃で72時間攪拌した。生成物溶液を室温まで冷却し、アセトニトリル(MeCN)30mLに分散させ、8000rpmで5分間遠心分離し、シリンジフィルターで濾過した。得られた溶液の揮発性溶媒画分を回転蒸発を用いて除去した。残留溶媒を100℃で高真空下で除去した。溶媒除去後、青色発光を有する結晶として生成物を昇華により分離した。
【表2】
【0093】
図5はPL等値線図であって、実施例4の反応1(表2、1行目)に従って形成されたポリオキソモリブデート化合物について、励起波長(y軸)に対するPL発光(x軸)をマッピングしている。図6はPL等値線図であって、実施例4の反応2(表2、2行目)に従って形成されたポリオキソモリブデート化合物について、励起波長(y軸)に対するPL発光(x軸)をマッピングしている。図7はPL等値線図であって、実施例4の反応3(表2、3行目)に従って形成されたポリオキソモリブデート化合物について、励起波長(y軸)に対するPL発光(x軸)をマッピングしている。図8はPL等値線図であって、実施例4の反応9(表2、9行目)に従って形成されたポリオキソモリブデート化合物について、励起波長(y軸)に対するPL発光(x軸)をマッピングしている。図9はPL等値線図であって、実施例4の反応11(表2、11行目)に従って形成されたポリオキソタングステート化合物について、励起波長(y軸)に対するPL発光(x軸)をマッピングしている。図10はPL等値線図であって、実施例4の反応13(表2、13行目)に従って形成されたポリオキソタングステート化合物について、PL発光(x軸)を励起波長(y軸)に対してマッピングしている。
【0094】
<実施例5.青色発光ポリオキソモリブデート化合物の合成及び結晶構造解析>
本実施例では、青色発光ポリオキソモリブデート化合物を合成し、その結晶構造を解析した。
【0095】
<非発光性Mo26[C13NHの合成>
脱イオン水(DI HO)100mLに5g(24.2mmol)のNaMoOを加えて可溶化させた。この溶液に1-ヘキシルアミン13.5mL(5 equiv.)を激しく撹拌しながら加えた。1M HClを用いて溶液のpHを5に調整した。白色の沈殿物として形成された生成物を濾過し、冷水(1回)とMeOH(5回)とで洗浄し、高真空下で24時間乾燥させた。
【0096】
<青色発光ポリオキソモリブデート化合物の合成>
0.1gのMo26[C13NHに1-ヘキシル,2-ペンチル,4,6-ジメチルピリジニウム0.03g(約1 equiv.)を加え、次にホルムアミド2mLを加えた。反応液を150℃で72時間撹拌し続けた。反応液を室温まで冷却し、30mLのMeCNに分散させ、8000rpmで5分間遠心分離し、シリンジフィルターで濾過した。得られた溶液の揮発性溶媒画分を回転蒸発で除去した。残留溶媒を100℃で高真空下で除去した。溶媒を除去した後、昇華によって、青色発光を示す(C(C11)CHCH(CH)CHCH(CH)N(C13))(C13NH[Mo26]の結晶として分離した。図11乃至13は、得られたポリオキソモリブデート化合物について、単結晶XRDによって得られた単位セル、2次元結晶構造、及び3次元結晶構造を示す。図示されているように、各1-ヘキシルアンモニウムイオンは、隣接する2つの[Mo264-クラスターに配位する一方で、1-ヘキシル,2-ペンチル,4,6-ジメチルピリジニウムイオンは、[Mo264-クラスターの平面の間に配置される。理解されるように、ポリオキソメタレート化合物の合成に使用される有機塩のプロトン化アルキルアミン及びカチオン部の各々のサイズ、形状及び組成は、同じ平面内で隣接するポリオキソメタレートクラスター間の距離、及び/又は、ポリオキソメタレートクラスターの隣接する平面間の距離に相乗的に影響を与える可能性がある。実施例4で調製された青色発光モリブデート又はタングステート化合物は、類似の度合いが様々な2次元及び3次元結晶構造を示すと考えられる。
【0097】
<開示事項の概要>
開示事項は、以下の通りである。
【0098】
事項1:発光性ポリオキソメタレート化合物を製造する方法であって、金属前駆体を有機塩と高温の溶媒中で反応させて、発光性ポリオキソメタレート化合物を形成する工程と、発光性ポリオキソメタレート化合物を溶媒から分離する工程と、発光性ポリオキソメタレート化合物を結晶化させる工程と、を含む方法。
【0099】
事項2:金属前駆体はモリブデン含有前駆体である、事項1に基づく方法。
【0100】
事項3:モリブデン含有前駆体は、MoO、MoO・HO、Mo(CO)、HMoO、LiMoO、NaMoO、NaMoO・2HO、KMoO、(NHMoO、(NHMo24・4HO、ZnMoO、FeMoO、PbMoO、及びBiMo12からなる群から選択される、事項2に基づく方法。
【0101】
事項4:金属前駆体はタングステン含有前駆体である、事項1に基づく方法。
【0102】
事項5:タングステン含有前駆体は、W(CO)、WO、WO・HO、CaWO、LiWO、NaWO・2HO、3NaWO・9WO、KWO、BaWO、CdWO、MgWO、(NH1240・xHO、(NH10(W、及びHWOからなる群から選択される、事項4に基づく方法。
【0103】
事項6:金属前駆体は、クロム含有前駆体である、事項1に基づく方法。
【0104】
事項7:クロム含有前駆体は、Cr(CO)、CrO、KCrO、NaCrO、NaCrO・4HO、BaCrO、AgCrO、CaCrO、(NHCrO、PbCrO、RbCrO、[(CSiO]CrO、KCr(C・3HO、及びCrOClからなる群から選択される、事項6に基づく方法。
【0105】
事項8:金属前駆体はバナジウム含有前駆体である、事項1に基づく方法。
【0106】
事項9:バナジウム含有前駆体は、NaVO、(PhSiO)VO、NHVO、AgVO、V、V、及びVからなる群から選択される、事項8に基づく方法。
【0107】
事項10:有機塩は、ピリジニウム塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、ピラジニウム塩、ピリミジニウム塩、インドリウム塩、ベンゾオキサゾリウム塩、ベンズイミダゾリウム塩、チアゾリウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、ピリリウム塩、又はチオピリリウム塩のうちの何れか1つである、事項1乃至9の何れかに基づく方法。
【0108】
事項11:有機塩は、有機カチオンと、F、Cl、Br、I、NO 、NO 、HSO 、ClO 、ClO 、OCl、OBr、CHSO 、CFSO 、CHSO 、BF 、PF 、SbF 、及びCHCOOからなる群から選択されるアニオンとを含む、事項1乃至10の何れかに基づく方法。
【0109】
事項12:高温は約60℃乃至約250℃である、事項1乃至11の何れかに基づく方法。
【0110】
事項13:溶媒はホルムアミドである、事項1乃至12の何れかに基づく方法。
【0111】
事項14:ポリオキソメタレート化合物はポリオキソモリブデート化合物である、事項1乃至3、10乃至13の何れかに基づく方法。
【0112】
事項15:ポリオキソメタレート化合物はポリオキソタングステート化合物である、事項1、4乃至5、10乃至13の何れかに基づく方法。
【0113】
事項16:ポリオキソメタレート化合物はポリオキソクロメート化合物である、事項1、6乃至7、10乃至13の何れかに基づく方法。
【0114】
事項17:ポリオキソメタレート化合物はポリオキソバナデート化合物である、事項1、8乃至13の何れかに基づく方法。
【0115】
事項18:ポリオキソメタレート化合物は、電磁スペクトルの青色領域においてPL極大(PLmax)を示す、事項1乃至17の何れかに基づく方法。
【0116】
事項19:ポリオキソメタレート化合物は、電磁スペクトルの紫色領域においてPL極大(PLmax)を示す、事項1乃至18の何れかに基づく方法。
【0117】
事項20:発光性ポリオキソメタレート化合物を作製する方法において、酸性条件下でルイス塩基を金属前駆体と反応させて、非発光性ポリオキソメタレート化合物を形成する工程と、非発光性ポリオキソメタレート化合物を有機塩と高温の溶媒中で反応させて、発光性ポリオキソメタレート化合物を形成する工程と、発光性ポリオキソメタレート化合物を溶媒から分離する工程と、発光性ポリオキソメタレート化合物を結晶化させる工程と、
を含む方法。
【0118】
事項21:金属前駆体はモリブデン含有前駆体である、事項20に基づく方法。
【0119】
事項22:モリブデン含有前駆体は、MoO、MoO・HO、Mo(CO)、HMoO、LiMoO、NaMoO、NaMoO・2HO、KMoO、(NHMoO、(NHMo24・4HO、ZnMoO、FeMoO、PbMoO、及びBiMo12からなる群から選択される、事項21に基づく方法。
【0120】
事項23:金属前駆体はタングステン含有前駆体である、事項20に基づく方法。
【0121】
事項24:タングステン含有前駆体は、W(CO)、WO、WO・HO、CaWO、LiWO、NaWO・2HO、3NaWO・9WO、KWO、BaWO、CdWO、MgWO、(NH1240・xHO、(NH10(W、及びHWOからなる群から選択される、事項23に基づく方法。
【0122】
事項25:金属前駆体は、クロム含有前駆体である、事項20に基づく方法。
【0123】
事項26:クロム含有前駆体は、Cr(CO)、CrO、KCrO、NaCrO、NaCrO・4HO、BaCrO、AgCrO、CaCrO、(NHCrO、PbCrO、RbCrO、[(CSiO]CrO、KCr(C・3HO、及びCrOClからなる群から選択される、事項25に基づく方法。
【0124】
事項27:金属前駆体はバナジウム含有前駆体である、事項20に基づく方法。
【0125】
事項28:バナジウム含有前駆体は、NaVO、(PhSiO)VO、NHVO、AgVO、V、V、及びVからなる群から選択される、事項27に基づく方法。
【0126】
事項29:有機塩は、ピリジニウム塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、ピラジニウム塩、ピリミジニウム塩、インドリウム塩、ベンゾオキサゾリウム塩、ベンズイミダゾリウム塩、チアゾリウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、ピリリウム塩、又はチオピリリウム塩のうちの何れか1つである、事項20乃至28の何れかに基づく方法。
【0127】
事項30:有機塩は、有機カチオンと、F、Cl、Br、I、NO 、NO 、HSO 、ClO 、ClO 、OCl、OBr、CHSO 、CFSO 、CHSO 、BF 、PF 、SbF 、及びCHCOOからなる群から選択されるアニオンとを含む、事項20乃至29の何れかに基づく方法。
【0128】
事項31:高温は約60℃乃至約250℃である、事項20乃至30の何れかに基づく方法。
【0129】
事項32:溶媒はホルムアミドである、事項20乃至31の何れかに基づく方法。
【0130】
事項33:ポリオキソメタレート化合物はポリオキソモリブデート化合物である、事項20乃至22、29乃至32の何れかに基づく方法。
【0131】
事項34:ポリオキソメタレート化合物はポリオキソタングステート化合物である、事項20、23乃至24、29乃至32の何れかに基づく方法。
【0132】
事項35:ポリオキソメタレート化合物はポリオキソクロメート化合物である、事項20、25乃至26、29乃至32の何れかに基づく方法。
【0133】
事項36:ポリオキソメタレート化合物はポリオキソバナデート化合物である、事項20、27乃至32の何れかに基づく方法。
【0134】
事項37:ポリオキソメタレート化合物は、電磁スペクトルの青色領域においてPL極大(PLmax)を示す、事項20乃至36の何れかに基づく方法。
【0135】
事項38:ポリオキソメタレート化合物は、電磁スペクトルの紫色領域においてPL極大(PLmax)を示す、事項20乃至37の何れかに基づく方法。
【0136】
事項39:酸性条件は強酸を用いて得られる、事項20乃至38の何れかに基づく方法。
【0137】
事項40:強酸はHClである、事項39に記載の方法。
【0138】
事項41:酸性条件はpHが5未満である、事項20乃至40の何れかに基づく方法。
【0139】
事項42:ルイス塩基は、第一級アルキルアミン、第二級アルキルアミン、第三級アルキルアミン、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、スルホキソニウム化合物、又はホスホニウム化合物である、事項20乃至41の何れかに基づく方法。
【0140】
事項43:発光性結晶ポリオキソメタレート化合物であって、
式A4-x4-y[POM]を有しており、
Aはプロトン化アルキルアミンであり、
Bは有機塩のカチオン部であり、
x,y≦4、x+y=4であり、
POMはポリオキソメタレートクラスターである、化合物。
【0141】
事項44:y=2である、事項43に基づく化合物。
【0142】
事項45:y=0である、事項43に基づく化合物。
【0143】
事項46:ポリオキソメタレートクラスターはポリオキソタングステートクラスターである、事項43乃至45の何れかに基づく化合物。
【0144】
事項47:ポリオキソメタレートクラスターは、ポリオキソクロメートクラスターである、事項43乃至45の何れかに基づく化合物。
【0145】
事項48:ポリオキソメタレートクラスターは、ポリオキソバナデートクラスターである、事項43乃至45の何れかに基づく化合物。
【0146】
事項49:ポリオキソメタレートクラスターはポリオキソモリブデートクラスターである、事項43乃至45の何れかに基づく化合物。
【0147】
事項50:ポリオキソモリブデートクラスターは[Mo264-クラスターである、事項49に基づく化合物。
【0148】
事項51:Aは1-ヘキシルアンモニウムイオンであり、x=2であり、Bは1-ヘキシル,2-ペンチル,4,6-ジメチルピリジニウムイオンであり、y=2である、事項43乃至50の何れかに基づく化合物。
【0149】
事項52:最大で92%のフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)を示す、事項43乃至51の何れかに基づく化合物。
【0150】
事項53:約435nmのPL極大(PLmax)を示す、事項43乃至52の何れかに基づく化合物。
【0151】
事項54:少なくとも29%であって最大で74%のPLQYを示す、事項43乃至51の何れかに基づく化合物。
【0152】
事項55:約400nm乃至約435nmのPLmaxを示す、事項43乃至52の何れかに基づく化合物。
【0153】
事項56:有機塩は、ピリジニウム塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、ピラジニウム塩、ピリミジニウム塩、インドリウム塩、ベンゾオキサゾリウム塩、ベンズイミダゾリウム塩、チアゾリウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、ピリリウム塩、又はチオピリリウム塩のうちの何れかである、事項43乃至55の何れかに基づく化合物。
【0154】
上記は、本発明の原理を具体化する特定の実施形態を示す。当業者は、本明細書に明示的に開示されていなくても、それらの原理を具体化すると共に本発明の範囲内にある代替例及び変形例を考え出すことができるであろう。本発明の特定の実施形態が示されて説明されているが、それらは、本特許の範囲を限定することを意図したものではない。当業者であれば、以下の特許請求の範囲によって文字上及び均等で保護されるようにして、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更及び改変が行われ得ることを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13