(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】木造建築物の躯体構造の構築方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20230905BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
E04B1/58 505L
E04B1/26 E
(21)【出願番号】P 2023084440
(22)【出願日】2023-05-23
【審査請求日】2023-05-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591000757
【氏名又は名称】株式会社アクト
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 出
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特公昭56-053059(JP,B2)
【文献】特開2022-185737(JP,A)
【文献】特開2000-054490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38-1/61
E04B 1/26
E04C 3/00-3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直材と水平材における互い接合しあう接合部を組んで構成され、
垂直材および水平材が、同一厚さで同一幅の層部材が厚さ方向に3層以上積層一体化された積層構造材で構成され、
前記積層構造材の接合部に、他の前記積層構造材に接合するための凹凸部が形成され、
前記凹凸部のうちの、前記積層構造材を切り欠いた形状に形成される一部の凹凸部が、前記積層構造材における前記層部材を前記層部材の厚さ単位の長さで切り欠いた形状であり、
互いに接合しあう前記凹凸部が互いに補完しあう形に形成され
、
前記積層構造材の側面における接合部に接する位置に、接合される他の前記積層構造材の接合角度を直角に規制する直角三角形の直角矯正部材が固定された
木造建築物の躯体構造を構築する
、木造建築物の躯体構造の構築方法であって、
上下方向における下に位置する水平材としての前記積層構造材の接合部どうしを接合するとともに、前記積層構造材に固定されている前記直角矯正部材で互いの直角を出して下枠組み部を構成したのち、
垂直材としての前記積層構造材の下端における接合部を前記下枠組み部の接合部に接合するとともに、前記積層構造材に固定されている前記直角矯正部材で互いの直角を出して垂直支持部を構成し、
その後に、上下方向における上に位置する水平材としての前記積層構造材の接合部どうしを接合するとともに前記垂直支持部の上端の接合部に接合して、前記積層構造材に固定されている前記直角矯正部材で互いの直角を出して上枠組み部を構成する
木造建築物の躯体構造の構築方法。
【請求項2】
垂直材としての前記積層構造材における上下両端の接合部に接する位置に、接合されるすべての水平材である前記積層構造材に接する前記直角矯正部材が固定された
請求項
1に記載の
木造建築物の躯体構造の構築方法。
【請求項3】
請求項
1または請求項2に記載の
木造建築物の躯体構造の構築方法が、下から上へ繰り返し実行される
木造建築物の躯体構造の構築方法。
【請求項4】
前記層部材の横断面形状が長方形である
請求項1
または請求項2に記載の
木造建築物の躯体構造
の構築方法。
【請求項5】
前記積層構造材が3層構造である
請求項1または請求項2に記載の
木造建築物の躯体構造
の構築方法。
【請求項6】
前記積層構造材の横断面形状が正方形の4つの角を有する形である
請求項1または請求項2に記載の
木造建築物の躯体構造
の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木造建築物の躯体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木造建築物の構法のひとつに在来軸組み構法がある。これは、柱などの垂直材と土台や梁などの水平材を組んで躯体を構成するものである。
【0003】
垂直材と水平材の接合等には継手・仕口が利用されるが、その種類は豊富であるうえに、正確な加工が難しい。このため、接合金物を用いての継手・仕口の単純化が行われている(たとえば下記特許文献1など)。
【0004】
つまり、接合金物を用いることによって、複雑で精緻な木材加工を不要している。接合金物を用いると継手・仕口の単純化がはかれ、一定の接合強度が得られる。しかし、多様な接合金物に応じた木材加工は必要である。
【0005】
継手・仕口の単純化よりも進んで、仕口加工を省略できる技術が、下記特許文献2に開示されている。この構成は、一対の通し柱の間に横架材を挟み込んだ状態で横架材と通し柱とを相互に接合するというものである。通し柱は角材からなる複数本の単一柱で構成され、横架材は角材からなる複数本の単一梁で構成されている。
【0006】
このため、仕口加工は不要であるものの、それぞれ複数の角材らかなる横架材と通し柱とを相互に接合するために、多数のボルトナットが必要である。しかも、ボルト留めしなければ組んだ状態が得られないので、接続作業は容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第7089822号公報
【文献】特開平11-100899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、熟練性を要せずに躯体を構成可能にするため、接合金物に頼らずに簡素な構成で垂直材と水平材の接合部の単純化をはかることを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、この発明は下記の木造建築物の躯体構造の構築方法を提供する。
【0010】
すなわち、その木造建築物の躯体構造の構築方法における木造建築物の躯体構造は、垂直材と水平材における互い接合しあう接合部を組んで構成されるものであって、垂直材および水平材が、同一厚さで同一幅の層部材が厚さ方向に3層以上積層一体化された積層構造材で構成される。積層構造材の接合部には、他の積層構造材に接合するための凹凸部が形成され、凹凸部のうちの、積層構造材を切り欠いた形状に形成される一部の凹凸部は、積層構造材における層部材を層部材の厚さ単位の長さで切り欠いた形状である。そして、互いに接合しあう凹凸部は、互いに補完しあう形に形成されている。つまり、互い接合しあう凹凸部は、隙間なく、かつ過不足なく接合して、一定形状の中実な接合部分を構成する。積層構造材の側面における接合部に接する位置に、接合される他の積層構造材の接合角度を直角に規制する直角三角形の直角矯正部材が固定されている。そして、その構築方法は、上下方向における下に位置する水平材としての積層構造材の接合部どうしを接合するとともに、積層構造材に固定されている直角矯正部材で互いの直角を出して下枠組み部を構成したのち、垂直材としての積層構造材の下端における接合部を下枠組み部の接合部に接合するとともに、積層構造材に固定されている直角矯正部材で互いの直角を出して垂直支持部を構成し、その後に、上下方向における上に位置する水平材としての積層構造材の接合部どうしを接合するとともに垂直支持部の上端の接合部に接合して、積層構造材に固定されている直角矯正部材で互いの直角を出して上枠組み部を構成するというものである。
【0011】
この構成では、垂直材および水平材として躯体を構成する積層構造材の接合部が互いに接合しあうとき、それらの凹凸部は互いに補完しあい、組んだ状態が得られる。互いに組み合った凹凸部は、別体の釘やねじ、接合金物等で固定される。そして、凹凸部のうち、積層構造材を切り欠いた形状に形成される一部の凹凸部は、別の凹凸部との組み合わせで得られる部分を含めて、層部材を層部材の厚さと同じ長さを単位として切り欠かいた形状である。このため、互い補完し合う形状の凹凸部は接合態様に応じてパターン化され得る。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、積層構造材が同一厚さで同一幅の層部材を積層させた構成であり、その層部材の厚さを単位長さとして互い補完しあう凹凸部を形成した構成であるので、接合部は接合金物等で接合せずとも組んだ状態が得られる。しかも、比較的密な接合ができる。このため、前述のような接合部を有する積層構造材は、ボルト留めしなければ組んだ状態が得られないものとは異なり、接合作業がしやすい。
【0013】
そのうえ、接合部の接合状態は接合金物に頼らない構成である。つまり、接合金物を選ばないので、接合金物に応じた木材加工も不要である。この点でも、積層構造材の接合作業は容易である。
【0014】
そして、積層構造材を用いるとともに、それを構成する層部材の厚さを単位長さとして凹凸部を形成しているので、接合箇所に応じた凹凸部を規則的に得ることができ、積層構造材の規格化・部品化が可能である。
【0015】
加えて、接合部の凹凸部は互いに補完しあう形であるので、隙間なしにすべての積層構造材を層部材単位で接合でき、構成された躯体は、方形状をなす複数の環状部を有することになる。このため、躯体の強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図5】直角矯正部材の取付け態様を示す平面図と側面図。
【
図10】水平材と垂直材の接合の仕方を示す側面図。
【
図11】水平材と垂直材の接合の仕方を示す一部断面平面図。
【
図12】水平材と垂直材の接合の仕方を示す側面図。
【
図13】水平材と垂直材の接合の仕方を示す平面図。
【
図14】水平材と垂直材の接合の仕方を示す一部断面側面図。
【
図15】水平材と垂直材の接合の仕方を示す一部断面平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0018】
図1に、躯体構造11の1階部分の一例を斜視図で示す。なお、図面では、理解の便宜上、小さめに、言い換えれば、軸となる材料を太めに描いている。
【0019】
躯体構造11は、軸となる垂直材12と水平材13における互い接合しあう接合部14を組んで構成されている。
図1に例示の躯体は、2個の立方体の枠を連ねて一体にした形状である。
図2に、その躯体構造11の分解斜視図を示す。
【0020】
垂直材12と水平材13には積層構造材15が用いられる。積層構造材15は、
図3の(a)に示したように、同一厚さtで同一幅wの層部材51が厚さ方向に3層以上積層一体化された構成の材料である。図示例では、3層構造の積層構造材15を示す。すなわち、幅wで厚さtの層部材51が3層積層されている。たとえば、積層構造材15を90mm角のものとする場合には、厚さt×幅wが30mm×90mmの層部材51となる材料を3枚積層する。105mm角とする場合には35mm×105mmの材料を、120mm角とする場合には40mm×120mmの材料を、150mm角とする場合には50mm×150mmの材料を、180mm角とする場合には60mm×180mmの材料を積層する。
【0021】
図示例の積層構造材15は横断面形状が正方形の4つの角を有する形である。横断面形状は、典型的には正方形であり、積層方向の長さbは、層部材51の幅wと同じに設定されている。つまり、層部材51の横断面形状は長方形であり、その厚さtは、幅wの3分の1である。なお、横断面形状が長方形の層部材51を有する積層構造材15は、水平材13として使用される場合、積層方向を寝かした姿勢、言い換えれば、層部材51の幅方向を上下方向に向けた姿勢で使用されるのが好ましい。
【0022】
このような構造を基本とする積層構造材15の接合部14に、凹凸部14aが形成される。凹凸部14aは、他の積層構造材15に対して接合するための構成である。
【0023】
図1、
図2に示したように図示例の躯体構造11では、積層構造材15の両端部に接合部14が形成されているが、長手方向の中間部等に形成されてもよい。なお、接合部14とは積層構造材15どうしが互いに接合しあう部分であり、接合部14は、積層構造材15の長手方向およびそれに直交する方向において、接合される他の積層構造材15と重なり合う部分である。たとえばL字型の2方接続の場合、接合部14は、接合状態における端から積層構造材15が延びる2方に積層構造材15の幅と同じ長さ離れた位置までの領域となる。3本の積層構造材15をT字型に接続する3方接続の場合には、接合部14は、接合状態におけるI型をなす2本の積層構造材15に対して直交する1本の積層構造材15における長手方向と直交する方向の長さに対応する領域となる。2本の積層構造材15をI型に接続する2方接続の場合には、2本の積層構造材15が互いにかみあっている領域となる。
【0024】
凹凸部14aについて説明すると、凹凸部14aには大きく分けて2種類ある。一つは、前述した基本構造の横断面を露出した、
図3の(a)に示した態様である。このような凹凸部14aは、
図2に示したように、妻側に配設される水平材13に用いられる。
【0025】
凹凸部14aの他の種類は、積層構造材15を切り欠いた形状に形成されるものである。切り欠いた形状の凹凸部14aは、積層構造材15における層部材51を層部材51の厚さtを基準(単位長さ)として切り欠いた形状に構成される。ここで言う、層部材51の厚さtを基準(単位長さ)として切り欠いた形状とは、積層構造材15単位ではなく、組み合わされた状態での凹凸部14a単位でのことを指す。つまり、凹凸部14aにおける切欠きに相当する部分52の長さは、凹凸部14aどうしを組合せ状態における長さである。このため、凹凸部14aどうしを突き合わせたりして組み合わせて構成される態様の凹凸部14aの場合に、片方の凹凸部14aに着目すると、その切欠きに相当する部分52の長さが単位長さの半分や、1.5倍などとなることもある。このほか、凹凸部14aの端面についてみると、少なくともその一部が、縦横長さをtとする直角二等辺三角の両端をつなぐ角度の傾きを長手方向に対して有する面となることもある。
【0026】
一部を切り欠いた形状に形成される凹凸部14aの一例を、
図3の(b)~(h)に示す。
【0027】
図3(b)の凹凸部14aは、3層の層部材51のうち、外側に位置する2つの層部材51に、切欠きに相当する部分52を設けた形状である。すなわち、一方の層部材51の幅方向全体を、層部材51の厚さtを3倍した長さの範囲にわたって欠いた態様である。他方の層部材51については、その幅方向の全体を、層部材51の厚さtを2倍した長さの範囲にわたって欠いている。図中、厚さtとの区別を明確にするため、切欠き範囲を示す表示を、前者の場合なら〈3・t〉、後者の場合には〈2・t〉というように、「1」以上の数と「・」を用いるとともに、山括弧(〈 〉)で囲って示す。以下同じである。
図3(b)のような凹凸部14aは、水平材13における妻側に配設される水平材13との接合部14に用いられる。
【0028】
図3(c)の凹凸部14aは、3層の層部材51のうち、外側に位置する2つの層部材51の幅方向全体を、層部材51の厚さtを1.5倍した長さの範囲にわたって欠いた態様である。このような凹凸部14aは、水平材13における3方接続される接合部14の一方に用いられる。切欠きに相当する部分52の長さが整数倍でないのは、次の理由による。すなわち、I型(直線状)に当接しあう水平材13に対して水平材13を直角に接合するときに、I型に接続される水平材13どうしの当接位置と、直交する方向の水平材13における幅方向の中間位置とを合わせるためである。
【0029】
図3(d)の凹凸部14aは、(c)と同様に、3層の層部材51のうち、外側に位置する2つの層部材51の幅方向全体を欠いた態様である。ただ、この例では、一方の層部材51を層部材51の厚さtを0.5倍した長さの範囲にわたって欠いて、他方の層部材51を層部材51の厚さtを1.5倍した長さの範囲にわたって欠いている。このような凹凸部14aは、水平材13における3方接続される接合部14の他方に用いられる。切欠きに相当する部分52の長さが整数倍でないのは、(c)で述べたのと同じ理由である。
【0030】
図3(e)の凹凸部14aは、3層の層部材51のうち、外側に位置する1つの層部材51の幅方向全体を、層部材51の厚さtと同じ長さの範囲にわたって欠いた態様である。このような凹凸部14aは、水平材13における3方接続される水平材13のうちの、妻側に配設される水平材13と平行に設けられける水平材13の接合部14に用いられる。
【0031】
図3(f)の凹凸部14aは、3層の層部材51のうち、互いに隣り合う2つの層部材51の幅方向全体を、層部材51の厚さtを3倍した長さにわたって欠いた態様である。このような凹凸部14aは、垂直材12のうち、3方接続される水平材13に対して接合される垂直材12の接合部14に用いられる。
【0032】
図3(g)の凹凸部14aは、3層の層部材51のうち、互いに隣り合う2つの層部材51の幅方向全体を、層部材51の厚さtを3倍した長さにわたって欠くとともに、残る層部材51の幅方向の一側部を、層部材51の厚さtと同じ長さの範囲で欠いている。このような凹凸部14aは、垂直材12のうち、L字形に2方接続される水平材13に対して接合される垂直材12の接合部14に用いられる。
【0033】
図3(h)の凹凸部14aは、(g)に示した凹凸部14aと同じであり、凹凸部14a以外の横断面形状が正方形でない例を示している。すなわち、3層の層部材51における中間の層部材51における幅方向の両側を、層部材51の厚さtと同じ長さの範囲にわたって欠いて、積層構造材15の2つの側面に溝部15aを有している。このような溝部15aは、積層構造材15の軽量化をはかるとともに、別の部材の接続等に利用できる。
【0034】
これらのような凹凸部14aのうち互いに接合しあう凹凸部14aは、互いに補完しあう形に形成されている。すなわち、互い接合しあう凹凸部14aは、隙間なく、かつ過不足なく接合して、複数の積層構造材15からなる接合部14に一定形状の中実な接合部分A1,A2(
図1参照)を構成する。横断面形状が正方形をなす積層構造材15からなる接合部14では、立方体形状の接合部分A1,A2ができる。
【0035】
ここで、
図1に例示の躯体における下に位置する水平材13群を下枠組み部11aとする。また、これらの上に建て込まれる垂直材12群を垂直支持部11b、垂直支持部11bの上に位置する水平材13群を上枠組み部11cとして、各部を構成する積層構造材15の接合部14について説明する。
【0036】
下枠組み部11aと上枠組み部11cを構成する積層構造材15は、同一である。共に、妻側の2本の水平材(妻側水平材31)と、桁側の2本ずつ合計4本の水平材(桁側水平材32)と、桁側水平材32どうしの間を接合する、妻側水平材31と平行な水平材(内部水平材33)で構成されている。
【0037】
妻側水平材31の両端の接合部14には、
図3の(a)に示した凹凸部14aが形成されている。内部水平材33の両端の接合部14には、
図3の(e)に示した凹凸部14aが形成されている。桁側水平材32の一方、すなわち妻側水平材31に接合される接合部14には、
図3の(b)に示した凹凸部14aが、他方、すなわち桁側水平材32に接合される接合部14には
図3の(c)または(d)に示した凹凸部14aが形成されている。
【0038】
垂直支持部11bを構成する積層構造材15は、出隅部に配置される4本の垂直材(出隅部垂直材21)と、桁側の中間部に配置される2本の垂直材(中間部垂直材22)で構成されている。
【0039】
出隅部垂直材21の両端の接合部14には、
図3の(g)に示した凹凸部14aが形成されている。中間部垂直材22の両端の接合部14には、
図3の(f)に示した凹凸部14aが形成されている。
【0040】
接合部14に凹凸部14aを有する積層構造材15は、側面における接合部14に接する位置に、接合される他の積層構造材15の接合角度を直角に規制する直角三角形の直角矯正部材16を一体に有している。
【0041】
直角矯正部材16は、
図4に示したように、角材61と板材62を結合して構成されている。板材62は直角二等辺三角形状であり、この板材62の表裏両面における全周に角材61が固定され、板材62が角材61で挟まれた構造である。板材62の外周の端面と角材61の外側面は、主要な部分において面一である。主要な部分とは、直角をなす2辺x,yを有する面であり、たとえば45度をなす角において板材62の端が突出するのはかまわない。
【0042】
直角矯正部材16の直角をなす2辺x,yの長さは等しく、高さzは、積層構造材15の幅w(積層方向の長さb、
図3参照)に等しい。
【0043】
直角矯正部材16は、水平材13としての積層構造材15については、妻側水平材31と内部水平材33における両端の接合部14に接する位置に備えられている。直角矯正部材16が固定される面は、桁側水平材32が接続される側の面である。垂直材12としての積層構造材15については、すべての垂直材12、つまり出隅部垂直材21と中間部垂直材22における両端の接合部14に接する位置に備えられている。直角矯正部材16が固定される面は、妻側水平材31と桁側水平材32が接続される側の面である。中間部垂直材22には、内部水平材33が接続される側の面にも、直角矯正部材16を備えてもよい。
【0044】
接合部14に接する位置について、具体的に説明する。接合部14は、前述のように、積層構造材15どうしが互いに接合しあう部分であるので、直角矯正部材16は積層構造材15に対して、その接合部14との境界に接する部分に直角矯正部材16の90度をなす角を位置させて固定される。
図5にいくつかの例をあげる。
図5の(a)に示した妻側水平材31では、その端部における〈1・t〉の長さの範囲が接合部14である。図中、一点鎖線が接合部14との接合部14以外の部分の境界を示す線(境界線L)である。このため、直角矯正部材16は、直角をなす角が境界線Lに接するように固定される。同じく、(b)の内部水平材33では、その端部における〈1・t〉の長さの範囲が接合部14である。直角矯正部材16は、直角をなす角が境界線Lに接するように固定される。(c)の出隅部垂直材21では、その端部における〈3・t〉の長さの範囲が接合部14である。直角矯正部材16は、直角をなす角が境界線Lと同じ位置に位置するように固定される。
【0045】
以上のような構成の積層構造材15からなる躯体構造11の構築方法を、必要に応じて凹凸部14aの形状の説明をしながら、次に説明する。
【0046】
構築方法は、まず、下枠組み部11aを構成する。すなわち、上下方向における下に位置する水平材13としての積層構造材(妻側水平材31と桁側水平材32と内部水平材33)の接合部14どうしを接合する。このとき、積層構造材15に固定されている直角矯正部材16で互いの直角を出す。その後、垂直材12としての積層構造材15(出隅部垂直材21と中間部垂直材22)の下端における接合部14を下枠組み部11aの接合部14に接合して、垂直支持部11bを構成する。このとき、積層構造材15に固定されている直角矯正部材16で互いの直角を出して、垂直材12としての積層構造材15を真っすぐに立てる。つづいて、上下方向における上に位置する水平材13としての積層構造材(妻側水平材31と桁側水平材32と内部水平材33)の接合部14どうしを接合するとともに垂直支持部11bの上端の接合部14に接合して、上枠組み部11cを構成する。このときも、積層構造材15に固定されている直角矯正部材16で互いの直角を出す、というものである。
【0047】
図6は下枠組み部11aを構成した状態を示し、
図7は、垂直支持部11bの構成途中を示している。下枠組み部11aの接合に際しては、
図8に示したように基礎等の平らな設置面Gの上に、妻側水平材31と内部水平材33を平行に並べるとともに、それらの両端の接合部14に、桁側水平材32の両端の接合部14を接合する。
【0048】
妻側水平材31と桁側水平材32の接合については、
図8、
図9に示したように妻側水平材31の凹凸部14a(
図3(a))を、桁側水平材32の凹凸部14a(
図3(b))のうち〈3・t〉の長さの欠けを有する部分52aに突き合わせる。このとき、妻側水平材31の直角矯正部材16が桁側水平材32の側面に当接して、桁側水平材32の向きを妻側水平材31に対して直角にする。
【0049】
このようにして組み合わせた水平材13に対して、出隅部垂直材21を組み合わせるには、
図10に示したように出隅部垂直材21の下端の凹凸部14a(
図3(g))を水平材13の接合部14に向けて下ろして、凹凸部14aどうしを組み合わせる。すると、桁側水平材32の凹凸部14aのうち〈2・t〉の長さの欠けを有する部分52bに、出隅部垂直材21の突出した層部材51が嵌まり、その他の端面が水平材13の接合部14の上面に当接する。このとき、出隅部垂直材21に固定した直角矯正部材16が水平材13の上面に接して、出隅部垂直材21は起立する。
【0050】
図11は、妻側水平材31と桁側水平材32と出隅部垂直材21の凹凸部14aが組み合わされた状態における、出隅部垂直材21の接合部14との境界位置で切断した状態を示している。図中、仮想線が示すのは出隅部垂直材21の断面形状である。
【0051】
このように、3本の積層構造材15の接合部14からなる接合部分A1(
図1参照)は、立方体形状をなし、忠実な構造となる。
【0052】
桁側水平材32どうしと内部水平材33との接合では、同じく平らな設置面G上において、
図12に示したように、桁側水平材32と内部水平材33を置いて、凹凸部14aどうしを組み合わせる。
図13に示したように、2本の桁側水平材32における接合しあう凹凸部14aの形は、互いに異なる。一方の桁側水平材32の凹凸部14a(
図3(c))は積層方向の中間位置を軸に左右対称形状であって、他方の桁側水平材32の凹凸部14a(
図3(d))は、非対称である。これら凹凸部14aが合わさってできる凹凸部14aには、内部水平材33が接続される部分に層部材51の厚さtを2倍した長さの欠けを有する部分52c(〈2・t〉=(1.5・t+0.5・t)長さの凹所)が形成される。内部水平材33が接続される側とは反対側には、層部材51の厚さtを3倍した長さの欠けを有する部分52d(〈3・t〉=(1.5・t+1.5・t)長さの凹所)が形成される。
【0053】
突き合わされてできた桁側水平材32の凹凸部14aのうち、層部材51の厚さtを2倍した長さの欠けを有する部分52cに、内部水平材33の凹凸部14aにおける〈2・t〉厚の突出した部分が組み合わされる。このとき、内部水平材33の直角矯正部材16が、桁側水平材32の側面に当接して桁側水平材32の向きを内部水平材33に対して直角にする。
【0054】
このようにして組み合わせた桁側水平材32と内部水平材33に対して、中間部垂直材22を組み合わせるには、
図14に示したように中間部垂直材22の下端の凹凸部14a(
図3(g))を桁側水平材32と内部水平材33からなる接合部14に向けて下ろす。そして、お互いの凹凸部14aどうしを組み合わせる。すると、桁側水平材32の凹凸部14aのうち〈3・t〉の長さの欠けを有する部分52dに、中間部垂直材22の突出した層部材51が嵌まり、その他の端面が桁側水平材32と内部水平材33からなる接合部14の上面に当接する。このとき、中間部垂直材22に固定した直角矯正部材16が桁側水平材32の上面に接して、中間部垂直材22は起立する。
【0055】
図15は、桁側水平材32と内部水平材33と中間部垂直材22の凹凸部14aが組み合わされた状態における、中間部垂直材22の接合部14との境界位置で切断した状態を示している。図中、仮想線が示すのは、中間部垂直材22の断面形状である。
【0056】
このように、4本の積層構造材15の接合部14からなる接合部分A2(
図1参照)は、立方体形状をなし、忠実な構造となる。
【0057】
図16に、垂直支持部11bを構成した状態を示している。このように、下枠組み部11aの凹凸部14aに組み合わせた垂直材12は、凹凸部14aでかみあって互いに位置規制されるとともに、垂直材12の下端部に備えた直角矯正部材16の作用によって、下枠組み部11aの上に起立する。この状態は留め具なしに維持される。
【0058】
このあと、
図17に示したようにして上枠組み部11cを垂直支持部11bの上に組み立てて、接合部14の固定を行う。上枠組み部11cを構成する積層構造材15は、下枠組み部11aと同じ構成であるので、上枠組み部11cの接合作業は下枠組み部11aと同様に行える。接合部14の固定は、図示しない、ねじや釘、適宜の接合金物で行う。これによって、すべての接合部14を固定すると、軸材としての積層構造材15が互いに接合されて、躯体が完成する。
【0059】
このような構築方法は、いわゆるプラットフォーム工法であり、
図18に示したように、前述の躯体構造11の構築方法が下から上へ繰り返し実行されると、2階建て等の躯体も構成できる。
【0060】
以上のように構成される躯体構造11は、垂直材12および水平材13となる積層構造材15の接合部14に、接合しあうと互いに補完しあう形の凹凸部14aが形成されているので、積層構造材15は固定せずとも組んだ状態が得られる。特に、垂直材12と必要な水平材13には直角矯正部材16が一体に備えられており、積層構造材15どうしを組むことによって、お互いの位置を正しい状態に定めることになる。つまり、水平方向においても垂直方向においても正しく直角を出せるので、垂直に延びる垂直材12や、水平にまっすぐ延びる水平材13が容易に得られる。このため、枠組み壁工法で必要とされている頭つなぎのような作業は不要である。この結果、積層構造材15の接合作業が行いやすい。しかも、凹凸部14aは互いに補完しあうものであるため、隙間なしに密な接合ができ、高い接合強度が得られる。
【0061】
さらに、接合部14の接合には特定の接合金物を用いる必要がない。つまり、接合部14に凹凸部14aがあれば、接合金物に応じた木材加工が不要であり、この点からも、接合作業の簡素化をはかれる。
【0062】
そして、凹凸部14aについては、同一厚さで同一幅の層部材を積層された構成の積層構造材15において、その層部材51の厚さtを単位長さとして互い補完しあう形状としている。このため、接合箇所に応じた凹凸部14aを規則的に得ることができ、所望の積層構造材15が容易に製造できるうえに、積層構造材15の規格化・部品化が可能である。この結果、素人でも構成できる躯体やそのための部品を提供できる。
【0063】
特に、層部材51の横断面形状が長方形であって、積層構造材15の横断面形状が正方形であるので、積層構造材15はどの向きでも使用できる。このため、使いやすく、組み付け作業の簡単化もはかれる。
【0064】
さらには、積層構造材15が3層構造であるので、基本的に必要な接続態様は容易に、かつ十分に得られる。
【0065】
接合状態においては、接合部14の凹凸部14aが互いに補完しあう形であって、隙間なしにすべての積層構造材15が層部材51単位で接合される。このため、構築された躯体は、方形状をなす複数の環状部を有することになり、強度の高い躯体が得られる。
【0066】
以上の構成はこの発明を実施するための一形態であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用するもできる。
【0067】
例えば、積層構造材15における層部材51の積層数は4層以上であってもよく、積層構造材15の横断面形状は長方形等であってもよい。
【0068】
さらに、凹凸部14aの形状は、積層構造材15の構成や所望の接続態様に応じて適宜設定される。
図19は、他の接続態様の一例を示す斜視図であり、垂直材12の一端に4方に延びる水平材13を接続している。このような接続構造のための凹凸部14aは、
図20に示したように構成される。すなわち、垂直材12の接合部41における凹凸部14aは、前述例と同じ3層構造の積層構造材15における、中間の層部材51における幅方向の中間部のみを残してその周囲を、層部材51の厚さtを2倍した長さの範囲にわたって欠いた形状である。残す部分、すなわち、中央で〈2・t〉の高さで起立している角柱状の部分のたてよこ長さは、層部材51の厚さtと同じである。
【0069】
水平材13には2種類の凹凸部14aが形成される。一つは、上下方向の中間に突片部分を有するものであり、他のひとつは、上下方向の上面に突片部分を有するものである。いずれも突片部分の厚さは層部材51の厚さtと同じである。突片部分の長さは、層部材51の厚さtを1.5倍した長さである。そして、突片部分の中間部に、垂直材12の角柱状の部分が嵌まる凹所が形成されている。凹所の深さは〈0.5・t〉である。
【0070】
このような構造の凹凸部14aを有する積層構造材15は、
図21に示したように、垂直材12に対して、上下方向の中間に突片部分を有する水平材13を嵌めたのち、上下方向の上面に突片部分を有する水平材13を嵌める。これら積層構造材15には、必要に応じて、直角矯正部材16が備えられる。
【0071】
躯体構造11に間柱や大引きなどを設ける場合には、相じゃくりなどで接合できるが、この場合も、層部材51の厚さtを基準にして接続部分を構成できる。
【符号の説明】
【0072】
11…躯体構造
12…垂直材
13…水平材
14…接合部
14a…凹凸部
15…積層構造材
16…直角矯正部材
51…層部材
【要約】
【課題】接合金物に頼らずに簡素な構成で垂直材と水平材の接合部の単純化をはかる。
【解決手段】垂直材12と水平材13における互い接合しあう接合部14を組んで構成される躯体構造において、垂直材12および水平材13を、同一厚さで同一幅の層部材51が厚さ方向に3層以上積層一体化された積層構造材15で構成する。積層構造材15の接合部14には、他の積層構造材15に接合するための凹凸部14aが形成され、凹凸部14aのうちの、積層構造材15を切り欠いた形状に形成される一部の凹凸部14aは、積層構造材15における層部材を層部材の厚さ単位の長さで切り欠いた形状である。そして、互いに接合しあう凹凸部14aを、互いに補完しあう形に形成する。
【選択図】
図1