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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】金属検出器
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/10 20060101AFI20230905BHJP
   G01N 27/82 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
G01V3/10 F
G01N27/82
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019209876
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021043176
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2019160918
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】522193547
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 信之
(72)【発明者】
【氏名】西村 裕次
(72)【発明者】
【氏名】水川 尚信
(72)【発明者】
【氏名】井上 武清
(72)【発明者】
【氏名】常見 裕章
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特許第4633830(JP,B2)
【文献】特開平02-176572(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180584(WO,A1)
【文献】特開2007-315837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-99/00
G01N27/72-27/9093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査領域に検査周波数で磁界を発生させるとともに、前記検査領域の磁界の変化を前記検査周波数で検出することによって、前記検査領域を通過する被検査物中の異物を検出する金属検出器において、
前記検査周波数を所定の周波数範囲内で微調整する微調整手段と、
前記周波数範囲を変更する範囲変更手段と、
前記周波数範囲を変更するとともに前記検査周波数の微調整を行うことによって、複数の検査周波数におけるノイズの大きさを測定し、前記周波数範囲ごとにノイズの大きさを比較する画面を表示する比較表示手段と、
を備え、前記測定したノイズの大きさについて前記周波数範囲ごとに平均値を求め、該平均値を表示するようにしたことを特徴とする金属検出器。
【請求項2】
検査領域に検査周波数で磁界を発生させるとともに、前記検査領域の磁界の変化を前記検査周波数で検出することによって、前記検査領域を通過する被検査物中の異物を検出する金属検出器において、
前記検査周波数を所定の周波数範囲内で微調整する微調整手段と、
前記周波数範囲を変更する範囲変更手段と、
前記周波数範囲を変更するとともに前記検査周波数の微調整を行うことによって、複数の検査周波数におけるノイズの大きさを測定し、前記周波数範囲ごとにノイズの大きさを比較する画面を表示する比較表示手段と、
を備え、前記測定したノイズの大きさについて前記周波数範囲ごとに最大値を求め、該最大値を表示するようにしたことを特徴とする金属検出器。
【請求項3】
前記範囲変更手段は、変更前後の周波数範囲が隣接するように変更することを特徴とする請求項1または2の金属検出器。
【請求項4】
前記範囲変更手段は、前記周波数範囲を周波数のプラス側とマイナス側にそれぞれ変更可能であることを特徴とする請求項1または2の金属検出器。
【請求項5】
前記微調整手段は、前記検査周波数を連続的に変化させ、
前記比較表示手段は、前記周波数範囲内で前記検査周波数を変化させて周波数解析して得られた周波数分布図を、前記周波数範囲ごとに並べて比較する画面を表示することを特徴とする請求項1または2の金属検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属検出器に係り、特にノイズの影響を抑制する金属検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等に金属異物が混入していないかを検査する装置として、金属検出器が知られている。金属検出器は、検査領域に磁界を発生させ、その検査領域に被検査物を通過させるとともに磁界の変動を検出することによって、被検査物中の異物を検査している。
【0003】
このような金属検出器は、装置外の電磁ノイズ(以下、たんにノイズという)の影響を受けやすいことが知られている。たとえば、金属検出器の周囲にインバータ機器がある場合には、所定の周波数ごとにノイズの山が発生し、そのノイズに近い周波数で磁界の発生・検出を行うと、ノイズの影響が大きくなり、小さい異物を検出できなくなる。
【0004】
そこで、特許文献1の金属検出器は、「被検査物の物品影響に対応して予め定められた周波数範囲」(数kHz~数MHzの範囲)のなかから、所定の帯域幅(たとえば10kHz)で複数の検査周波数を設定し、その複数の検査周波数でノイズを測定し、ノイズレベルが所定値以下となる検査周波数を選択することによって自動的に設定を行っている。この金属検出器によれば、ノイズレベルが小さい検査周波数に設定できるので、検査開始当初は良好な検査を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許4633830号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の金属検出器は、ノイズが時間的に変化すると、すぐにノイズの影響を受けてしまい、検査精度が大きく低下するという問題があった。すなわち、特許文献1における検査周波数の最適化は一時的なものであり、すぐにノイズの影響を受けてしまうという問題があった。このため、特許文献1の金属検出器は、検査周波数の自動設定を頻繁に行わなければならないという問題があった。
【0007】
また、特許文献1の金属検出器は、検査周波数の設定間隔によって不具合が生じるという問題もあった。たとえば、10kHzと非常に大きい設定間隔にすると、検査周波数を変更することによって、それまでの検出結果と大きな差異が現れるという問題や、変更後に別のノイズの山にぶつかるという問題が生じる。このため、検査途中に検査周波数を変更すると、検査精度が悪化してしまうおそれがあった。このような不具合を避けるためには、検査周波数の設定間隔をできるだけ小さくし、たとえば100Hz以下(好ましくは50Hz以下)として、検査周波数を微調整することが好ましい。しかし、検査周波数を微調整した場合には、発生したノイズを完全に避けられなかったり、避けるために微調整を繰り返し行わなければならないという問題があり、やはり検査途中での検査周波数を変更することが難しかった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みて成されたものであり、長時間にわたってノイズの影響を受けにくく、高い検査精度を維持できる金属検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は前記目的を達成するために、検査領域に所定の検査周波数で磁界を発生させるとともに、前記検査領域に被検査物を通過させて磁界の変動を検出することによって、前記被検査物の異物検査を行う金属検出器において、前記検査周波数を所定の周波数範囲内で微調整する微調整手段と、前記微調整を行う周波数範囲を変更する範囲変更手段と、前記周波数範囲を変更するとともに前記検査周波数の微調整を行うことによって、複数の検査周波数におけるノイズの大きさを測定し、前記周波数範囲ごとにノイズの大きさを比較する画面を表示する比較表示手段と、を備え、前記測定したノイズの大きさについて前記周波数範囲ごとに平均値を求め、該平均値を表示するようにしたことを特徴とする。
請求項2の発明は前記目的を達成するために、検査領域に検査周波数で磁界を発生させるとともに、前記検査領域の磁界の変化を前記検査周波数で検出することによって、前記検査領域を通過する被検査物中の異物を検出する金属検出器において、前記検査周波数を所定の周波数範囲内で微調整する微調整手段と、前記周波数範囲を変更する範囲変更手段と、前記周波数範囲を変更するとともに前記検査周波数の微調整を行うことによって、複数の検査周波数におけるノイズの大きさを測定し、前記周波数範囲ごとにノイズの大きさを比較する画面を表示する比較表示手段と、を備え、前記測定したノイズの大きさについて前記周波数範囲ごとに最大値を求め、該最大値を表示するようにしたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ノイズの大きさを周波数範囲ごとに比較表示するので、どの周波数範囲が検査に好ましいか(たとえばどの周波数範囲であればノイズの山が無いか等)を判断することができる。したがって、検査に好ましい周波数範囲(すなわちノイズの影響の小さい周波数範囲)に検査周波数を設定することができ、高い精度で検査を行うことができる。このように設定した検査周波数は、ノイズの影響が小さい周波数範囲内で設定されるので(すなわち近い周波数にノイズの山が無いので)、ノイズの周波数が経時的に変化してもノイズの影響を受けにくく、高い検査精度を維持することができる。
【0011】
また、本発明によれば、ノイズの周波数が経時的に変化した場合に、検査周波数を微調整すればよく、簡単にノイズの影響を避けることができる。その際、検査周波数は大きく変化しないので、調整の前後で検査結果の差が生じにくく、検査精度の低下を抑制することができる。
さらに請求項1の発明によれば、周波数範囲ごとの平均値が表示されるので、どの周波数範囲が最適かを容易に判断することができる。請求項2の発明によれば、周波数範囲ごとの最大値が表示されるので、どの周波数範囲が最適かを判断することができる。
【0012】
請求項3の発明は請求項1または2の発明において、前記範囲変更手段は、変更前後の周波数範囲が隣接するように変更することを特徴とする。本発明によれば、周波数範囲が隣接しているので、連続する周波数範囲で検査周波数を設定することができる。したがって、検査周波数が大きく変わることを抑制でき、それに伴う不具合を抑制することができる。
【0013】
請求項4の発明は請求項1または2の発明において、前記範囲変更手段は、前記周波数範囲を周波数のプラス側とマイナス側にそれぞれ変更可能であることを特徴とする。本発明によれば、検査周波数の周波数範囲をプラス側とマイナス側に変更することができる。
【0016】
請求項5の発明は請求項1または2の発明において、前記微調整手段は、前記検査周波数を連続的に変化させ、前記比較表示手段は、前記周波数範囲内で前記検査周波数を変化させて周波数解析して得られた周波数分布図を、前記周波数範囲ごとに並べて比較する画面を表示することを特徴とする。本発明によれば、周波数分布図を並べて比較するようにしたので、どの周波数範囲にノイズが存在するかを一目で把握することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ノイズを周波数範囲ごとに比較表示するようにしたので、適切な周波数範囲に検査周波数を設定することができ、長時間にわたって高い検査精度を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の金属検出器の構成を示す模式図
図2図1の範囲調整部を説明する回路図
図3】ノイズ検出表示処理を説明するフロー図
図4】ノイズの検出結果の表示例を示す図
図5】ノイズの検出結果の表示例を示す図
図6】ノイズの検出結果の表示例を示す図
図7】第2の実施形態の金属検出器における表示例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下添付図面に従って、本発明に係る金属検出器の好ましい実施形態について説明する。図1は本発明の金属検出器10の構成を模式的に示している。
【0020】
同図に示す金属検出器10は、被検査物12を検査領域14に通過させて金属異物を検出する装置であり、検査領域14に磁界を発生させる磁界発生部16と、検査領域14の磁界変動を検出する磁界検出部18を備えている。磁界発生部16には送信コイル17(図2参照)が設けられ、この送信コイル17に交流電流が流れることによって検査領域14に磁界が発生する。磁界発生部16の送信コイル17と同軸上に(或いは上下に対向する位置に)磁界検出部18の受信コイル(不図示)が設けられており、検査領域14の磁界が変動したことを、受信コイルに流れる電流の変動として検出することができる。なお、被検査物12を検査領域14に通過させる機構は省略するが、通常はベルトコンベア等が用いられる。
【0021】
金属検出器10の制御部20には、送信信号設定部22、受信信号処理部24、ノイズ検出部26、コンデンサ設定部28が設けられている。送信信号設定部22は、磁界発生部16への送信信号の検査周波数や受信信号処理部24における検波側の検査周波数を調節する機能を備えており、検査周波数を所定範囲内で微調整したり、その範囲を大きく変更させたりすることができる。たとえば、ある周波数範囲に対して変更点の数を設定することによって、検査周波数を微小間隔で設定することができ、検査周波数を所定の範囲内で微調整することができる。微調整の間隔は、調整前後で検査結果に差異が現れることを抑制するため、100Hz以下が好ましく、50Hz以下がより好ましく、たとえば38Hzに設定される。また、間隔が狭すぎると、調整前後でノイズの影響を変わらなくなるため、10Hz以上、好ましくは30Hz以上が好ましい。
【0022】
送信信号設定部22で周波数を設定した信号は、D/A変換器32でD/A変換された後、ドライブ回路34とトランス回路36で出力が増幅され、後述するコンデンサ調整部38を介して磁界発生部16の送信コイル17に送信される。これにより、送信コイル17に交流電流が流れ、検査領域14に交番磁界が発生する。
【0023】
一方、磁界検出部18の受信コイルは、トランス回路46、アンプ44、A/D変換器42を介して制御部20の受信信号処理部24に接続されている。受信信号処理部24は、周波数発生部22で発生した検査周波数に応じて検波処理やフィルタ処理を行う。これにより、被検査物12に金属異物が存在する場合には、検査領域14の磁界変動を検出することによって金属異物を検出することができる。
【0024】
制御部20のノイズ検出部26は、受信信号処理部24の結果を用いてノイズの影響を数値として算出する。具体的には、検査領域14に被検査物12を通さずに磁界の発生・検出を行い、その結果から、装置外を要因とするノイズを数値化して求める。ノイズの数値は、たとえば受信信号の最大振幅(ピークトゥピーク)を求めることによって算出する。さらにノイズ検出部26は、算出したノイズを用いて、周波数範囲ごとに比較可能な画面を生成し、表示部50に出力して表示させる。
【0025】
一方、制御部20のコンデンサ設定部28は、コンデンサ調整部38に接続されており、コンデンサ設定部28でコンデンサ調整部38を制御することによって、検査周波数の範囲を大きく変更した際の送信側の共振を図っている。
【0026】
図2はコンデンサ調整部38の回路図を示している。同図に示すようにコンデンサ調整部38は、主要コンデンサ62、マイナス用コンデンサ64、プラス用コンデンサ66を備えており、これらのコンデンサ62、64、66が、トランス回路36のコイル37と磁界発生部16の送信コイル17の間に並列に接続されている。これらのうち主要コンデンサ62は常に接続されており、この主要コンデンサ62によって通常時の共振周波数が設定される。一方、マイナス用コンデンサ64とプラス用コンデンサ66はそれぞれ、スイッチ65、67を介して接続されており、このスイッチ65、67が前述のコンデンサ設定28によって制御される。たとえば、プラス用コンデンサ66のスイッチ67は通常時に接続されており、周波数範囲をプラス側に移動する際に接続が解除される。逆にマイナス用コンデンサ64のスイッチ65は通常時に接続が解除されており、周波数範囲をマイナス側に移動する際に接続される。
【0027】
ここで、通常時(スイッチ65がオフ、スイッチ67がオン)の周波数範囲を通常範囲とし、プラス側に移動した際(スイッチ65がオフ、スイッチ67がオフ)の周波数範囲をプラス範囲とし、マイナス側に移動した際(スイッチ65がオン、スイッチ67がオン)の周波数範囲をマイナス範囲とする。各コンデンサ62、64、66の容量は、調節後の周波数範囲が隣接するように設定されている。すなわち、プラス範囲は通常範囲に対してプラス側に隣接するように設定され、マイナス範囲は通常範囲に対してマイナス側に隣接するように設定される。たとえば、通常範囲が500Hzの間隔の場合には、その通常範囲の間隔500Hzと同じ分だけ、プラス側またはマイナス側に移動するように設定されている。
【0028】
次に上記の如く構成された金属検出器10の操作方法について説明する。本発明の金属検出器10は、ノイズ検出表示処理に特徴があり、このノイズ検出表示処理は、装置の初期設定時や駆動開始時、さらにはノイズの影響が大きくなって再設定する際などに行われる。
【0029】
図3は、ノイズ検出表示処理のフローを示している。同図に示すように、まず、周波数範囲を設定する(ステップS1)。周波数範囲の設定は、上述したコンデンサ設定部28がコンデンサ調整部38のスイッチ65、67を切り替えることによって行い、3つの周波数範囲(通常範囲、プラス範囲、マイナス範囲)のいずれかに設定される。なお、周波数範囲は全てが順番に行われるようになっており、たとえば最初にスイッチ65をオフ、スイッチ67をオンにすることによって通常範囲が設定される。
【0030】
次に検査周波数の微調整を行う(ステップS2)。検査周波数の微調整は、上述した送信信号設定部22によって行われ、数十Hzずつ検査周波数が変更される。
【0031】
次に電磁ノイズの算出が行われる(ステップS3)。すなわち、磁界発生部16によって検査周波数の磁界を検査領域14に発生させ、磁界検出部18によって検査領域14の磁界変動を検出し、ノイズ検出部26によってノイズを数値化して求める。このようにして求めたノイズとその際の検査周波数が不図示のメモリに記憶される。
【0032】
次に微調整が全て終了したか、すなわち周波数範囲内の全ての検査周波数が終了したか否かを判断し(ステップS4)、微調整が全て終わっていない場合には、ステップS2に戻り、検査周波数の微調整を行って、再度、ノイズの算出を行う(ステップS3)。これを繰り返し行うことによって、周波数範囲内の全ての検査周波数でのノイズの測定が終了する。
【0033】
ステップS4で周波数範囲内の微調整が全て終わったと判断した場合には、ステップS5に進み、周波数範囲の変更が終了したか否か、すなわち全ての周波数範囲を検査したかを判断する。そして、周波数範囲の変更が終わっていない場合(未測定の周波数範囲がある場合)には、ステップS1に戻り、周波数範囲の変更を行って、以下の操作を繰り返す。たとえば、スイッチ65とスイッチ67をオフとすることによって周波数範囲をプラス範囲に変更して、ステップS2~ステップS4を行う。その後、スイッチ65とスイッチ67をオンとすることによって周波数範囲をマイナス範囲に変更して、ステップS2~ステップS4を行う。これにより、全ての周波数範囲でのノイズ測定を行うことができる。
【0034】
全ての周波数範囲においてノイズ測定を行った後、ノイズの検出結果を表示する(ステップS6)。ノイズの検出結果は、たとえば、図4に示すように周波数範囲ごとの平均値を表示する。すなわち、通常範囲内の全ての検査周波数におけるノイズの平均値と、プラス範囲内の全ての検査周波数におけるノイズの平均値と、マイナス範囲内の全ての検査周波数におけるノイズの平均値を表示する。これにより、作業者は画面を見て、どの範囲が検査に適しているかを判断することができる。たとえば図4の場合には、マイナス範囲の平均値だけが非常に大きくなっており、このマイナス範囲にノイズの山があることが想定される。したがって、マイナス範囲は検査に不適切であり、通常範囲かプラス範囲が検査に適切な範囲であると判断できる。
【0035】
作業者は、検査に適していると判断した周波数範囲のなかから検査周波数を設定する(ステップS7)。たとえば、プラス範囲を選択し、そのプラス範囲のなかで検査周波数を設定する。このように設定した検査周波数は、ノイズの少ない周波数範囲内であり、ノイズの山が無いので、ノイズが経時的に変化した場合であっても、ノイズが検査周波数に影響しにくい。したがって、長時間にわたって、高い検査精度を維持することができる。また、たとえノイズが経時的に変化して検査周波数に少し影響したとしても、検査周波数の微調整を行うことによって、ノイズの影響を下げることができる。その際、調整の前後で検査結果の差が生じにくいので、検査精度の低下を抑制することができる。
【0036】
このように本実施の形態によれば、周波数範囲ごとにノイズの影響を比較可能な形態で表示するようにしたので、ノイズの影響の小さい周波数範囲に検査周波数を設定することができ、ノイズの影響を受けにくい異物検査を行うことができる。
【0037】
また、本実施の形態によれば、設定後は、検査周波数を微調整することによって、ノイズの影響が少し出てきた場合であっても微調整して影響を減らすことができる。その場合、検査周波数を大きく変更しないので、検査結果に大きな差異が生じることを抑制することができる。
【0038】
なお、上述した実施の形態では、ノイズの検出結果として、ノイズの平均値を比較する画面を表示するようにしたが、これに限定するものでは無く、周波数範囲ごとにノイズの影響を比較可能な画面を表示するのであればよい。たとえば、周波数範囲ごとにノイズの最大値を求め、それを表示するようにしてもよい。また、図5に示すようにノイズの最大値と平均値を同時に表示するようにしてもよい。さらに、図6に示すように、各検査周波数ごとの値をグラフ表示するようにしても良い。この場合、周波数範囲が分かるように、周波数範囲の境界に線を引くとよい。また、平均値や最大値を表示したり、最もノイズの影響の小さい周波数範囲を別の色で表示したりしてもよい。
【0039】
なお、上述した実施の形態では、周波数範囲の数を3としたが、これに限定するものではなく、周波数範囲の数を2あるいは4以上としてもよい。いずれの場合にも、周波数範囲ごとに比較可能な形態でノイズの影響を表示することで、本発明の効果を得ることができる。
【0040】
また、上述した実施の形態では、周波数範囲が隣接するように設定したが、これに限定するものでは無く、周波数範囲の一部が重なったり、離れたりするように設定してもよい。 さらに、比較表示画面に周波数範囲の選択ボタンを表示して、周波数範囲を簡単に設定したりしてもよい。
【0041】
次に第2の実施形態の金属検出器について説明する。第2の実施形態の金属検出器は、上述した実施形態の金属検出器と略同様に構成されるが、次の点で異なっている。すなわち、第2の実施形態では、送信信号設定部22は、検査周波数を所定の周波数範囲内で連続的に変化させるとともに、その周波数範囲を大きく変更できるようになっている。また、ノイズ検出部26は、検査周波数を所定の周波数範囲内で連続的に変化させながら得られた受信信号を周波数解析することによって、ノイズの診断を実施するように構成される。なお、ズームFFTを実施することにより、診断処理の高速化を行うとよい。
【0042】
上記の如く構成された第2の実施形態によれば、ノイズの比較表示として、周波数範囲ごとに周波数解析して周波数分布図を作成し、その周波数範囲ごとの周波数分布図を並べて表示する。図7は、第2の実施形態における表示例を示している。同図に示すように、マイナス側の周波数分布図70A、通常(センター)の周波数分布図70B、プラス側の周波数分布図70Cが並んで表示されている。周波数分布図70A~70Cは、横軸に周波数が表示され、縦軸に信号レベル(ノイズの大きさ)が表示されるので、どの周波数にどの程度のノイズが発生しているかを一目で把握することができる。また、複数の周波数分布図70A~70Cが並べて表示されるので、どの周波数範囲が異物検査に適しているかを一目で把握することができる。たとえば、図7の表示例では、通常(センター)のノイズが大きく、マイナスかプラスの範囲に設定することが好ましいことが分かる。
【0043】
なお、図7の符号72A~72Cは、それぞれの周波数分布図70A~70Cにおける中心の周波数であり、符号74A~74Cと符号76A~76Cは、対象異物ごとの目安ラインである。目安ライン74A~74Cは、検出対象の異物が鉄で直径0.5mmの大きさの場合に検出される信号レベルを示しており、この線より大きいノイズが発生するとノイズを異物と誤認するおそれがある。また、目安ライン76A~76Cは、検出対象の異物の材質がステンレスで直径1.0mmの大きさの場合に検出される信号レベルを示しており、この線より大きいノイズが発生するとノイズを異物と誤認するおそれがある。図7の符号78は、目安ラインの異物の説明の表示であり、目安ラインと異物の説明が同じ色で表示される。
【符号の説明】
【0044】
10…金属検出器、12…被検査物、14…検査領域、16…磁界発生部、17…送信コイル、18…磁界検出部、19…受信コイル、20…制御部、22…送信信号設定部、24…受信信号処理部、26…ノイズ検出部、28…コンデンサ設定部、32…D/A変換器、34…ドライブ回路、36…トランス回路、38…コンデンサ調整部、42…A/D変換器、44…増幅回路、46…トランス回路、50…表示部、62…コンデンサ、64…マイナス用コンデンサ、65…スイッチ、66…プラス用コンデンサ、67…スイッチ、70A~70C…周波数分布図、72A~72C…設定周波数ライン、74A~74C…目安ライン、76A~76C…目安ライン、78…異物の説明の表示
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7