IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ピクシブ株式会社の特許一覧

特許7343283切断線生成装置、切断線生成方法及び切断線生成プログラム
<>
  • 特許-切断線生成装置、切断線生成方法及び切断線生成プログラム 図1
  • 特許-切断線生成装置、切断線生成方法及び切断線生成プログラム 図2
  • 特許-切断線生成装置、切断線生成方法及び切断線生成プログラム 図3
  • 特許-切断線生成装置、切断線生成方法及び切断線生成プログラム 図4
  • 特許-切断線生成装置、切断線生成方法及び切断線生成プログラム 図5
  • 特許-切断線生成装置、切断線生成方法及び切断線生成プログラム 図6
  • 特許-切断線生成装置、切断線生成方法及び切断線生成プログラム 図7
  • 特許-切断線生成装置、切断線生成方法及び切断線生成プログラム 図8
  • 特許-切断線生成装置、切断線生成方法及び切断線生成プログラム 図9
  • 特許-切断線生成装置、切断線生成方法及び切断線生成プログラム 図10
  • 特許-切断線生成装置、切断線生成方法及び切断線生成プログラム 図11
  • 特許-切断線生成装置、切断線生成方法及び切断線生成プログラム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】切断線生成装置、切断線生成方法及び切断線生成プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/12 20170101AFI20230905BHJP
   G06T 11/80 20060101ALI20230905BHJP
   G06V 10/30 20220101ALI20230905BHJP
   G06V 10/34 20220101ALI20230905BHJP
【FI】
G06T7/12
G06T11/80 A
G06V10/30
G06V10/34
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019029189
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020135508
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】507180054
【氏名又は名称】ピクシブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】児玉 捷平
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 隼人
(72)【発明者】
【氏名】重松 裕三
【審査官】笠田 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-275788(JP,A)
【文献】特開平11-195118(JP,A)
【文献】特開2001-038680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/12
G06T 11/80
G06V 10/30
G06V 10/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デザインが記録される、構造物を生成するための描画データを受け付ける受付部と、
前記受付部によって受け付けた描画データに基づく画像から構造物のデザインが記録されるデザイン領域を抽出する抽出部と、
前記抽出部によって抽出されたデザイン領域内のデザインが記録される1つの画素としての第1画素を選択し、前記第1画素に隣接する第2画素にデザインが記録されていれば前記第1画素のデザインの記録を維持し、隣接する前記第2画素の全てにデザインが記録されていなければ前記第1画素にはノイズが記録されているとして、ノイズを除去するノイズ除去部と、
前記ノイズ除去部によってノイズが除去されたデザイン領域の輪郭に沿って、切断に利用される切断線を生成する生成部と、
前記生成部によって生成された切断線を平滑化することにより平滑化切断線を生成する平滑化部と、を備え、
前記生成部は、前記デザイン領域の輪郭に対してモフォロジ(Morphology)の膨張演算を行うことにより、前記輪郭に対して前記デザイン領域の外側に距離をあけて設定される外縁に切断線を生成すると共に、前記デザイン領域とは異なる背景に孔形成領域を追加する
切断線生成装置。
【請求項2】
前記平滑化部は、
前記生成部によって生成される切断線に対してモフォロジ(Morphology)のクロージング演算を行うことにより、前記平滑化切断線を生成する
請求項1に記載の切断線生成装置。
【請求項3】
前記抽出部は、描画データに基づく画像を2値化して、2値化した画像の輝度情報及び画像の不透明度を示すアルファチャンネルのうち少なくとも一方に基づいてデザイン領域を抽出する
請求項1又は2に記載の切断線生成装置。
【請求項4】
前記抽出部は、デザインが記録される1つの画素としての第3画素を選択し、前記第3画素に隣接する第4画素にデザインが記録されれば前記第3画素と前記第4画素をグループ化する処理を繰り返して、グループ化した画素をデザイン領域として設定し、グループ化していない画素を背景として設定する
請求項1~3のいずれか1項に記載の切断線生成装置。
【請求項5】
キャラクタモデルに対応する3次元のフィギュアを作製するために、キャラクタモデルに関するデータを受け付ける受付部と、
前記受付部によって受け付けたデータに基づいて、キャラクタモデルに対応するモデル領域を抽出する抽出部と、
前記抽出部によって抽出されたモデル領域内のキャラクタモデルが記録される1つの画素としての第1画素を選択し、前記第1画素に隣接する第2画素にキャラクタモデルが記録されていれば前記第1画素のキャラクタモデルの記録を維持し、隣接する前記第2画素の全てにキャラクタモデルが記録されていなければ前記第1画素にはノイズが記録されているとして、ノイズを除去するノイズ除去部と、
前記ノイズ除去部によってノイズが除去されたモデル領域の輪郭に沿って、切断に利用される切断線を生成する生成部と、
前記生成部によって生成された切断線を平滑化することにより平滑化切断線を生成する平滑化部と、を備え、
前記生成部は、前記モデル領域の輪郭に対してモフォロジ(Morphology)の膨張演算を行うことにより、前記輪郭に対して前記モデル領域の外側に距離をあけて設定される外縁に切断線を生成すると共に、前記モデル領域とは異なる背景に孔形成領域を追加する
切断線生成装置。
【請求項6】
コンピュータが、
デザインが記録される、構造物を生成するための描画データを受け付ける受付ステップと、
前記受付ステップによって受け付けた描画データに基づく画像から構造物のデザインが記録されるデザイン領域を抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップによって抽出されたデザイン領域内のデザインが記録される1つの画素としての第1画素を選択し、前記第1画素に隣接する第2画素にデザインが記録されていれば前記第1画素のデザインの記録を維持し、隣接する前記第2画素の全てにデザインが記録されていなければ前記第1画素にはノイズが記録されているとして、ノイズを除去するノイズ除去ステップと、
前記ノイズ除去ステップによってノイズが除去されたデザイン領域の外縁に沿って、切断に利用される切断線を生成する生成ステップと、
前記生成ステップによって生成された切断線を平滑化することにより平滑化切断線を生成する平滑化ステップと、を実行し、
前記生成ステップは、前記デザイン領域の輪郭に対してモフォロジ(Morphology)の膨張演算を行うことにより、前記輪郭に対して前記デザイン領域の外側に距離をあけて設定される外縁に切断線を生成すると共に、前記デザイン領域とは異なる背景に孔形成領域を追加する
切断線生成方法。
【請求項7】
コンピュータに、
デザインが記録される、構造物を生成するための描画データを受け付ける受付機能と、
前記受付機能によって受け付けた描画データに基づく画像から構造物のデザインが記録されるデザイン領域を抽出する抽出機能と、
前記抽出機能によって抽出されたデザイン領域内のデザインが記録される1つの画素としての第1画素を選択し、前記第1画素に隣接する第2画素にデザインが記録されていれば前記第1画素のデザインの記録を維持し、隣接する前記第2画素の全てにデザインが記録されていなければ前記第1画素にはノイズが記録されているとして、ノイズを除去するノイズ除去機能と、
前記ノイズ除去機能によってノイズが除去されたデザイン領域の外縁に沿って、切断に利用される切断線を生成する生成機能と、
前記生成機能によって生成された切断線を平滑化することにより平滑化切断線を生成する平滑化機能と、を実現させ、
前記生成機能は、前記デザイン領域の輪郭に対してモフォロジ(Morphology)の膨張演算を行うことにより、前記輪郭に対して前記デザイン領域の外側に距離をあけて設定される外縁に切断線を生成すると共に、前記デザイン領域とは異なる背景に孔形成領域を追加する
切断線生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断線生成装置、切断線生成方法及び切断線生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像が印刷されたシートをその画像に沿って切断する技術がある。例えば、特許文献1に記載された技術は、画像領域の輪郭を膨張させる処理と、その後の収縮させる処理とを行うことにより、凹凸の少ない滑らかな輪郭線を生成し、その輪郭線を切断のためのカット線としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-275788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一例として、手書きのイラスト等を画像データに変換した場合、スキャナによってイラスト等を読み込む時にノイズが発生し、そのノイズが画像データに含まれてしまう可能性があった。しかし、特許文献1に記載された技術では、画像に含まれる微小なノイズ(例えば、点状のノイズ等)の除去は行われていない。このため、特許文献1に記載された技術は、ノイズを画像領域の輪郭として認識し、本来の画像領域のみの輪郭に基づいてカット線が生成されない可能性がある。
【0005】
本発明は、画像領域に対応した切断線を生成する切断線生成装置、切断線生成方法及び切断線生成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様の切断線生成装置は、デザインが記録される、構造物を生成するための描画データを受け付ける受付部と、受付部によって受け付けた描画データに基づく画像から構造物のデザインが記録されるデザイン領域を抽出する抽出部と、抽出部によって抽出されたデザイン領域内のデザインが記録される1つの画素としての第1画素を選択し、第1画素に隣接する第2画素にデザインが記録されていれば第1画素のデザインの記録を維持し、第2画素にデザインが記録されていなければ第1画素にはノイズが記録されているとして、ノイズを除去するノイズ除去部と、ノイズ除去部によってノイズが除去されたデザイン領域の輪郭に沿って、切断に利用される切断線を生成する生成部と、生成部によって生成された切断線を平滑化することにより平滑化切断線を生成する平滑化部と、を備える。
【0007】
一態様の切断線生成装置では、生成部は、デザイン領域の輪郭に対してモフォロジ(Morphology)の膨張演算を行うことにより、輪郭に対してデザイン領域の外側に距離をあけて設定される外縁に切断線を生成することとしてもよい。
【0008】
一態様の切断線生成装置では、平滑化部は、生成部によって生成される切断線に対してモフォロジ(Morphology)のクロージング演算を行うことにより、平滑化切断線を生成することとしてもよい。
【0009】
一態様の切断線生成装置では、抽出部は、描画データに基づく画像を2値化して、2値化した画像の輝度情報及び画像の不透明度を示すアルファチャンネルのうち少なくとも一方に基づいてデザイン領域を抽出することとしてもよい。
【0010】
一態様の切断線生成装置では、抽出部は、デザインが記録される1つの画素としての第3画素を選択し、第3画素に隣接する第4画素にデザインが記録されれば第3画素と第4画素をグループ化する処理を繰り返して、グループ化した画素をデザイン領域として設定し、グループ化していない画素を背景として設定することとしてもよい。
【0011】
一態様の切断線生成装置は、キャラクタモデルに対応する3次元のフィギュアを作製するために、キャラクタモデルに関するデータを受け付ける受付部と、受付部によって受け付けたデータに基づいて、キャラクタモデルに対応するモデル領域を抽出する抽出部と、抽出部によって抽出されたモデル領域内のキャラクタモデルが記録される1つの画素としての第1画素を選択し、第1画素に隣接する第2画素にキャラクタモデルが記録されていれば第1画素のキャラクタモデルの記録を維持し、第2画素にキャラクタモデルが記録されていなければ第1画素にはノイズが記録されているとして、ノイズを除去するノイズ除去部と、ノイズ除去部によってノイズが除去されたモデル領域の輪郭に沿って、切断に利用される切断線を生成する生成部と、生成部によって生成された切断線を平滑化することにより平滑化切断線を生成する平滑化部と、を備える。
【0012】
一態様の切断線生成方法では、コンピュータが、デザインが記録される、構造物を生成するための描画データを受け付ける受付ステップと、受付ステップによって受け付けた描画データに基づく画像から構造物のデザインが記録されるデザイン領域を抽出する抽出ステップと、抽出ステップによって抽出されたデザイン領域内のデザインが記録される1つの画素としての第1画素を選択し、第1画素に隣接する第2画素にデザインが記録されていれば第1画素のデザインの記録を維持し、第2画素にデザインが記録されていなければ第1画素にはノイズが記録されているとして、ノイズを除去するノイズ除去ステップと、ノイズ除去ステップによってノイズが除去されたデザイン領域の外縁に沿って、切断に利用される切断線を生成する生成ステップと、生成ステップによって生成された切断線を平滑化することにより平滑化切断線を生成する平滑化ステップと、を実行する。
【0013】
一態様の切断線生成プログラムは、コンピュータに、デザインが記録される、構造物を生成するための描画データを受け付ける受付機能と、受付機能によって受け付けた描画データに基づく画像から構造物のデザインが記録されるデザイン領域を抽出する抽出機能と、抽出機能によって抽出されたデザイン領域内のデザインが記録される1つの画素としての第1画素を選択し、第1画素に隣接する第2画素にデザインが記録されていれば第1画素のデザインの記録を維持し、第2画素にデザインが記録されていなければ第1画素にはノイズが記録されているとして、ノイズを除去するノイズ除去機能と、ノイズ除去機能によってノイズが除去されたデザイン領域の外縁に沿って、切断に利用される切断線を生成する生成機能と、生成機能によって生成された切断線を平滑化することにより平滑化切断線を生成する平滑化機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0014】
一態様の切断線生成装置は、描画データに基づく画像から構造物のデザインが記録されるデザイン領域を抽出する抽出部と、デザイン領域からノイズを除去するノイズ除去部と、ノイズ除去部によってノイズが除去されたデザイン領域の外縁に沿って切断線を生成する生成部と、切断線を平滑化することにより平滑化切断線を生成する平滑化部と、を備えるので、ノイズを除去した後の本来のデザイン領域に対応した平滑化切断線を生成することができる。
また、一態様の切断線生成方法及び切断線生成プログラムは、上述した一態様の切断線生成装置と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る切断線生成システムについて説明するブロック図である。
図2】抽出部の説明に関し、画素に記録されるデータについての説明するための図である。
図3】(A)はノイズとして除去されないデータに関し、ノイズ除去部による処理の前の画素について説明するための図、(B)はノイズとして除去されないデータに関し、ノイズ処理部による処理の後の画素について説明するための図である。
図4】(A)はノイズとして除去されるデータに関し、処理部による処理の前の画素について説明するための図、(B)はノイズとして除去されるデータに関し、ノイズ処理部による処理の後の画素について説明するための図である。
図5】生成部によって生成される切断線について説明するための図である。
図6】正方形のカーネルの一例について説明するための図である。
図7】処理対象の画像の一例について説明するための図である。
図8】輪郭を形成した後の画像の一例について説明するための図である。
図9】平滑化部によって生成される平滑化切断線について説明するための図である。
図10】構造物のデザインに加えて孔のデザインが追加されたものについて設定される切断線について説明するための図である。
図11】一実施形態に係る切断線生成方法について説明するためのフローチャートである。
図12】キャラクタモデルについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
切断線生成装置は、外部端末から受け付けた描画データに基づく画像からデザインが記載されたデザイン領域を抽出し、そのデザイン領域の外縁に沿ってデザイン領域を切り出すための切断用の加工線(平滑化切断線)を生成する構成である。切断線生成装置は、切断線を生成した後、例えば、デザインのデータと切断線のデータとを含む加工データ(描画データ)を生成する。加工データは、デザインが付された2D又は3Dの構造物を生成するためのデータである。
【0017】
切断線生成装置は、加工データを後工程となる工作機械等(例えば、切断機、印刷装置、3Dプリンタ又は加工装置等)に送信する。
例えば、印刷装置は、加工データを切断線生成装置から受け付けると、加工データに基づいてデザインを用紙又はシール用紙等にプリントする。その後、切断機は、平滑化切断線に沿って用紙又はシール用紙を切断する。
又は、例えば、3Dプリンタは、加工データを切断線生成装置から受け付けると、加工データデータに基づいて、デザインが付された、キーホルダ等のアクセサリ又はフィギュア等の立体構造物等を作製する。ここで、キーホルダの外縁は平滑化切断線に対応する。また、立体構造物の表面は平滑化切断線に対応する。
又は、例えば、加工装置は、加工データに基づいて、デザインが付されたキーホルダ等の構造物の原型を作製したのち、平滑化切断線に沿って構造物の原型を切断することにより、構造物を作製する。
【0018】
図1は、一実施形態に係る切断線生成システムについて説明するブロック図である。
切断線生成システム1は、切断線生成装置10と、1又は複数の外部端末20とを備える。切断線生成装置10は、例えば、ネットワークを介して1又は複数の外部端末20と接続する。図1には3つの外部端末20が記載されるが、外部端末20の数はこの例に限定されることはない。
【0019】
外部端末20は、例えば、描画データを生成し、その描画データを記憶することが可能な端末である。具体例としては、外部端末20は、携帯端末、タブレット端末又はパーソナルコンピュータ等である。外部端末20は、例えば、イラスト又は文字等のデザインが記録される描画データを生成する。ここで、描画データは、例えば、写真のデータであってもよい。外部端末20は、スキャナ等の外部機器によってイラストが読み込まれることに基づいて生成された描画データを記憶部(不図示)に記憶してもよい。外部端末20は、描画データを生成し、又は、外部端末20の記憶部(不図示)に記憶される描画データを読み出し、その描画データを切断線生成装置10に送信する。
【0020】
上述した描画データは、デザインがプリントされた、又は、デザインの形状に倣う構造物を生成するためのデータである。描画データは、2次元の構造部を生成するためのデータ、又は、3次元の構造物を生成するためのデータである。構造物は、一例として、キーホルダ、シール、マスキングテープ、スマートフォンケース、缶バッジ、トートバック、モバイルバッテリ、キャラクタ、フィギュア等の種々の品物及びモデル等である。
【0021】
ここで、構造物としてのキーホルダの一例は、アクリルキーホルダ等である。アクリルキーホルダを作製する場合、デザインが付された領域の輪郭に対応してアクリルを切断する必要がある。後述する切断線生成装置10は、その輪郭に対応してアクリルを切断するための切断線(平滑化切断線)を生成する。なお、切断線生成装置10は、上記のアクリルキーホルダの例に限定されることはなく、デザインが付された領域の輪郭に対応して構造物の原型を切断するための切断線(平滑化切断線)を生成する。
【0022】
切断線生成装置10は、パーソナルコンピュータ等の端末によって実現されてもよく、サーバの一機能として実現されてもよい。
切断線生成装置10は、受付部11、抽出部12、ノイズ除去部13、生成部14及び平滑化部15を備える。
【0023】
受付部11は、デザインが記録される描画データを受け付ける。受付部11は、外部端末20によって送信された描画データを受け付ける。描画データは、上述したように構造物を生成するためのデータである。構造物は、上述したように、一例として、キーホルダ等である。
【0024】
抽出部12は、受付部11によって受け付けた描画データに基づく画像から構造物のデザインが記録されるデザイン領域を抽出する。すなわち、抽出部12は、描画データに基づく画像を、デザインが記録されるデザイン領域と、デザインが記録されない背景領域とに分離する。
具体的な一例として、抽出部12は、例えば、受付部11によって受け付けた描画データに基づく画像を2値化する。抽出部12は、2値化した画像の輝度情報及び画像の不透明度を示すアルファチャンネルのうち少なくとも一方に基づいてデザイン領域を抽出する。
【0025】
例えば、抽出部12は、輝度情報に基づいて輝度のある領域をデザイン領域として抽出する。一例として、2値化されたデータが、背景を示す「0」と、輝度がある領域を示す「1」とである場合、抽出部12は、「1」が記録された領域をデザイン領域として抽出する。例えば、抽出部12は、描画データを構成する画素それぞれには上述した「0」及び「1」のデータのいずれかが記録されているため、「1」が記録された画素をグループ化することにより、グループ化された複数の画素をデザイン領域として抽出する。
又は、抽出部12は、アルファチャンネルの不透明度に関して閾値を予め設定し、描画データに基づいて得られるアルファチャンネルの不透明度が閾値以上であれば(相対的に、より透明であれば)、その閾値以上の領域をデザイン領域として抽出してもよい。
【0026】
図2は、抽出部の説明に関し、画素に記録されるデータについての説明するための図である。
なお、図2及び以下において、第3画素(P3)及び第4画素(P4)が出現する。この第3画素(P3)及び第4画素(P4)は、特許請求の範囲に記載される第3画素及び第4画素に対応させるために、本明細書に出現する画素の番号が連続するものとなっていない(第1画素から出現せず、第3画素から出現する)。なお、描画データを構成する画素は、図2に示すように4画素×4画素に限定されることはなく、それぞれ4画素以上であってよい。
【0027】
具体的な一例として、まず、抽出部12は、デザインが記録される画素として第3画素(P3)を選択する。ここで、2値化された描画データの場合、「0」又は「1」のデータにより画像が記録され、「1」が記録される画素にデザインが記録され、「0」が記録される画素に背景が記録される。次に、抽出部12は、第3画素(P3)に隣接する第4画素(P4)にデザインが記録されれば第3画素(P3)と第4画素(P4)をグループ化する処理を行う。すなわち、抽出部12は、第3画素(P3)に隣接する第4画素(P4)に「1」が記録されていれば、第3画素と、「1」が記録された第4画素(P4)をグループ化する。抽出部12は、そのようなグループ化を行う処理を全ての画素で行うよう繰り返し、グループ化した画素(G)をデザイン領域として設定することとしてもよい。また、抽出部12は、グループ化していない画素を背景として設定することとしてもよい。また、抽出部12は、「1」が記録された画素をグループ化することにより、グループ化された外縁部となる画素をデザイン領域の輪郭として特定することができる。
【0028】
ノイズ除去部13は、抽出部12によって抽出されたデザイン領域内のデザインが記録される画素として第1画素を選択し、第1画素に隣接する第2画素にデザインが記録されていれば第1画素のデザインの記録を維持し、第2画素にデザインが記録されていなければ第1画素にはノイズが記録されているとして、ノイズを除去する。ノイズ除去部13は、例えば、Connected Component Labelingを利用して、「1」が記録される(画像が記録される)相対的に微小な領域を検出して削除する。
【0029】
図3は、ノイズ除去部の説明に関し、画素に記録されるデータについて説明するための第1の図である。図3(A)はノイズとして除去されないデータに関し、ノイズ除去部13による処理の前の画素について説明するための図、図3(B)はノイズとして除去されないデータに関し、ノイズ処理部による処理の後の画素について説明するための図である。
図4は、ノイズ除去部の説明に関し、画素に記録されるデータについて説明するための第2の図である。図4(A)はノイズとして除去されるデータに関し、処理部による処理の前の画素について説明するための図、図4(B)はノイズとして除去されるデータに関し、ノイズ処理部による処理の後の画素について説明するための図である。
なお、描画データを構成する画素は、図3及び図4に示すように4画素×4画素に限定されることはなく、それぞれ4画素以上であってよい。
【0030】
図3(A)に例示するように、抽出部12は、「1」が記録された画素を第1画素(P1)として特定する。抽出部12は、第1画素(P1)を特定すると、その第1画素(P1)に隣接する複数の第2画素(P2)のいずれかに「1」が記録されている(画像が記録されている)か否かを判断する。図3(A)に例示する場合、8個の第2画素(P2)のうち2個に「1」が記録されている(画像が記録されている)ため、抽出部12は、第1画素(P1)に記録された画像は点状のノイズではなく、デザインであると判断し、第1画素(P1)に記録された「1」のデータを維持する(図3(B)参照)。
【0031】
一方、図4(A)に例示するように、上記と同様に、抽出部12は、「1」が記録された画素を第1画素(P1)として特定する。抽出部12は、上記と同様に、第1画素(P1)に隣接する複数の第2画素(P2)のいずれかに「1」が記録されているか否かを判断する。図4(A)に例示する場合、8個の第2画素(P2)のいずれにも「1」が記録されていない(画像が記録されていない)。このため、抽出部12は、第1画素(P1)に記録された画像はデザインではなく、点状のノイズであると判断し、第1画素に記録された「1」を「0」に変更する(図4(B)参照)。これにより、抽出部12は、点状のノイズを除去する。
抽出部12は、デザイン領域内の全ての画素について図3又は図4に例示するような処理を行い、点状ノイズを除去する。
【0032】
なお、抽出部12は、図3に例示するように、第1画素(P1)に隣接する第2画素(P2)に「1」が記録されることにより、「1」が記録された隣接する複数の画素(画素グループ)がある場合でも、画素グループを構成する画素の数が予め設定された画素数以下の場合には、画素グループをノイズとして削除してもよい。
【0033】
図5は、生成部によって生成される切断線について説明するための図である。
生成部14は、ノイズ除去部13によってノイズが除去されたデザイン領域の外縁に沿って、デザイン領域を切り出すための切断線を生成する。すなわち、生成部14は、描画データに基づくデザインが付された構造物を生成するため、その構造物の切り出し(切断)に利用される切断線を生成する。図5に例示するように「pixiv」のデザインの場合、生成部14は、「pixiv」の周囲に切断線L1を生成する。
【0034】
具体的な一例としては、生成部14は、モルフォロジ(Morphology)を用いた膨張演算を行うことによりデザイン領域の輪郭L2を膨張させ、膨張毎の輪郭(外縁)を切断線L1として設定する。
生成部14は、第1膨張演算によってデザイン(輪郭L2)から切断線L1までの幅が所定幅(一例として2mm以上)になるようにする。
【0035】
ここで、本実施形態の膨張処理について、さらに説明する。
例えば、あるピクセルAが白で、そのピクセルAの周囲に存在する他のピクセルもすべて白であるなら、そのピクセルAは、明らかに輪郭ではない。逆に、そのピクセルAの周囲に存在する他のピクセルの1つにでも白ではないピクセルが存在すれば、そのピクセルAは輪郭であると判断できる。
これを拡張し、あるピクセルBが白で、そのピクセルBからNピクセル以内がすべて白であるなら、ピクセルBは、輪郭からNピクセル以上内側の領域である。これに対し、ピクセルBからNピクセル以内に1つでも白でないピクセルが存在すれば、ピクセルBは、輪郭からNピクセル以内の領域である。ピクセルBが輪郭からNピクセル以内の領域であった場合、そのピクセルBを除外する(輪郭生成においては背景であると判定する)処理は、Erosionの処理である。また、描画データが白黒2値の画像である場合は、上記白黒を逆転させたものがDilationの処理となる。本実施形態の輪郭形成処理は、白黒2値の画像に変換した画像に対して実施している。
上記のように、輪郭からNピクセル以内とした領域は、実際には座標上の距離として扱うことはせず、対象ピクセルを中心とした半径Nピクセルの円と重なる領域として表現する。「半径Nピクセルの円」のような形状をカーネルと呼び、その大きさと形状は自由である。カーネルを構成するピクセルそれぞれで、負の値を含め異なった重みを持つこともできる。
【0036】
より具体的には、輪郭は以下のように計算する。
図6は、正方形のカーネルの一例について説明するための図である。
図7は、処理対象の画像の一例について説明するための図である。
図8は、輪郭を形成した後の画像の一例について説明するための図である。
【0037】
図6に例示するように、簡略化のために、K0,0を中心とした3×3の正方形のカーネルで考える。この例示においては、全ての重みを1とする。なお、図6は例示であり、実際には円形のカーネルを使用し、大きさも図6に示す3×3のサイズよりも大きい。
また、図7に例示するように、処理対象の画像(処理前画像)は、5×5のサイズとし、ピクセル「D1,3」、「D1,4」及び「D2,4」のみが1で、それ以外の他のピクセルが0のデータを持つと仮定する。
【0038】
また、図8の例示は、処理後の画像(処理後画像)とする。
処理前画像のピクセル「D3,1」に対する値(処理後画像のピクセル「D’3,1」の値)は、以下のような計算により、ゼロとなる。すなわち、処理後画像のピクセル「D’3,1」は黒となる。
「D’3,1」=「K-1,-1」*「2,0」+「K0,-1」*「D3,0」+「K1,-1」*「D4,0」
+「K-1,0」*「D2,1」+「K0,0」*「D3,1」+「K1,0」*「D4,1」
+「K-1,1」*「D2,2」+「K0,1」*「D3,2」+「K1,1」*「D4,2」
=0
【0039】
また、処理前画像のピクセル「D1,2」に対する値(処理後画像のピクセル「D’1,2」は、以下のような計算により、1となる。すなわち、処理後画像のピクセル「D’1,2」は白となる。
「D’1,2」=「K-1,-1」*「D0,1」+「K0,-1」*「D1,1」+「K1,-1」*「D2,1」
+「K-1,0」*「D0,2」+「K0,0」*「D1,2」+「K1,0」*「D2,2」
+「K-1,1」*「D0,3」+「K0,1」*「D1,3」+「K1,1」*「D2,3」
=1
【0040】
上記と同様にして、処理前画像のピクセル「D0,0」~「D4,4」についてD’を計算し、D’>0の場合を1とすると図8に示すようになる。なお、斜線を付したピクセルが黒、斜線を付していないピクセルが白となる。図8に示すように、輪郭が膨張された結果が得られる。なお、前述の重みを0.5などにしておけば、2ピクセル以上白が存在する場合に条件を変更できる。
【0041】
生成部14によって生成される切断線は、例えば、図5に例示するように鋭角な部分が含まれる可能性がある。切断線が鋭角であると、加工装置等によって構造物を切り出す切断工程等において、鋭角な部分等にヒビ又はカケ等の破損が生じる可能性がある。また、切断工程において切断用のレーザが用いられる場合、複数の切断線が近接していると、その近接箇所が高温になって白化する恐れがある。また、生成される構造物がシールの場合、例えば、複数の切断線によってV字が形成されていると、切断工程等においてV字部分に力がかかり、シールが裂けてしまう可能性がある。このため、後述する平滑化部15は、生成される構造物に上記のような不具合が生じるのを抑制するため、一例として、モルフォロジ(Morphology)を用いたクロージング演算を行う(膨張演算と収縮演算とを順に行う)ことにより、切断線を平滑化して平滑化切断線を生成する。
【0042】
図9は、平滑化部によって生成される平滑化切断線について説明するための図である。
平滑化部15は、生成部14によって生成された切断線L1(図5参照)を平滑化することにより、図7に例示するような平滑化切断線L4を生成する。平滑化切断線L4は、図9に例示する切断線L1の鋭角な部分が平滑化され、丸みを帯びている。なお、例えば、凸部分の鋭角は生成部14による膨張演算によって滑らかになり(一例として、円形カーネルの場合)、凹部分の鋭角は平滑化部15のクロージング演算により滑らかになる。
【0043】
図10は、構造物のデザインに加えて孔のデザインが追加されたものについて設定される切断線について説明するための図である。
キーホルダ等の構造物には、チェーンを通すための孔が形成される場合がある。この場合、生成部14は、膨張演算を行って、切断のための輪郭を生成する。次に、生成部14は、Flood fill等を利用することにより背景とデザイン領域とを分離した後、背景領域にチェーンの孔を作るための領域(孔形成領域)を追加する。次に、平滑化部15は、孔形成領域を含む背景領域の輪郭を平滑化する。最後に、平滑化部15は、孔が埋もれないように、孔を形成する部分(孔部分)を切断領域から取り除く。
このような場合でも、図10に例示するように、生成部14は、「pixiv」のデザインと、円形のデザイン(孔のデザイン)CDとを一体とした領域の外縁に切断線L3を設定することが可能である。
【0044】
切断線生成装置10によって平滑化切断線を生成した後の工程で利用される加工装置等は、平滑化切断線に沿って、一例として切断用のレーザを照射することにより、構造物に付されたデザイン領域を切り出すことが可能になる。又は、加工装置等は、平滑化切断線に沿って、一例として切断用のカッタ等を移動させることにより、構造物に付されたデザイン領域を切り出すことが可能になる。
【0045】
なお、上述した切断線生成装置10を構成する各部は、切断線生成装置10に配される処理装置の一機能として実現されてもよい。また、切断線生成プログラムは、上述した各部を処理装置の一機能として実現させるために、切断線生成装置10で実行されてもよい。切断線生成プログラムは、例えば、外部メモリ又は光ディスク等の記録媒体に記録されてもよい。
【0046】
次に、切断線生成方法について説明する。
図11は、一実施形態に係る切断線生成方法について説明するためのフローチャートである。
【0047】
ステップST1において、受付部11は、構造部を生成するための、デザインが記録される描画データを外部端末20から受け付ける。なお、受付部11は、後述するように切断線生成装置10において生成された描画データを受け付けることとしてもよい。
【0048】
ステップST2において、抽出部12は、ステップST1で受け付けた描画データに基づく画像から、構造物に付すデザインが記録されるデザイン領域を抽出する。抽出部12は、例えば、ステップST1で受け付けた描画データに基づく画像を2値化することにより、デザイン領域と、デザインが記録されていない背景領域とに分離して、デザイン領域を抽出する。
【0049】
ステップST3において、ノイズ除去部13は、ステップST2で抽出されたデザイン領域から微小なノイズを除去する。ノイズ除去部13は、例えば、Connected Component Labeling等を利用することにより相対的に微小な画像が記録された画素(微小領域)を検出し、その微小領域を削除する。
【0050】
ステップST4において、生成部14は、ステップST3でノイズが除去されたデザイン領域に基づいて切断線を生成する。生成部14は、例えば、Morphology等を用いた膨張演算を行うことによりデザイン領域の輪郭を膨張させ、膨張毎の輪郭(外縁)を切断線として設定する。
【0051】
ステップST5において、平滑化部15は、ステップST4で設定された切断線に基づいて平滑化切断線を生成する。平滑化部15は、例えば、Morphology等を用いたクロージング演算を行う(膨張演算と収縮演算とを順に行う)ことにより切断線の平滑化を行って、平滑化切断線を生成する。
【0052】
これにより、構造物を切り出すための切断線(平滑化切断線)の生成が終了する。切断線生成装置10は、平滑化切断線の生成が終了すると、デザイン領域のデータ及び平滑化切断線のデータを含む加工データ(描画データ)を生成して、後工程で用いられる加工装置又は切断装置等に加工データ(描画データ)を送信する。なお、切断線生成装置10は、記憶部(不図示)に加工データ(描画データ)を記憶してもよい。
【0053】
本実施形態では、例えば、以下の効果を奏する。
切断線生成装置10は、描画データに基づく画像から構造物のデザインが記録されるデザイン領域を抽出する抽出部12と、Connected Component Labelingを利用してデザイン領域からノイズを除去するノイズ除去部13と、ノイズ除去部13によってノイズが除去されたデザイン領域の外縁に沿って切断線を生成する生成部14と、切断線を平滑化することにより平滑化切断線を生成する平滑化部15と、を備える。
これにより、切断線生成装置10は、ノイズを除去した後に平滑化切断線を生成するので、デザイン領域の輪郭に対応した切断に利用されるラインを生成することができる。すなわち、切断線生成装置10は、ノイズがデザイン領域に含まれることにより、本来のデザイン領域の輪郭に基づかない平滑化切断線が生成されるのを抑制することができる。
また、切断線生成装置10は、ノイズの除去にデザインの先鋭部分を損なうことを抑制することができる。なお、ノイズの除去に、単純な平滑化手法又はMorphologyのオープニング演算を利用した場合、デザインの角が落ちてしまう(デザインが平滑化されてしまう)可能性がある。しかし、本実施形態の切断線生成装置10は、Connected Component Labelingを利用するので、デザインの先鋭さが失われるのを抑制することができる。
【0054】
切断線生成装置10では、生成部14は、デザイン領域の輪郭に対して膨張演算を行うことにより切断線を生成することとしてもよい。
これにより、切断線生成装置10は、デザイン領域の輪郭に対応した切断線を演算によって生成することができる。すなわち、切断線生成装置10は、コンピュータ処理によって容易に切断線を生成することができる。
【0055】
切断線生成装置10では、平滑化部15は、切断線に対してクロージング演算を行う(膨張演算と収縮演算とを順に行う)ことにより、平滑化切断線を生成することとしてもよい。
これにより、切断線生成装置10は、デザイン領域の輪郭に対応した平滑化切断線を演算(コンピュータ処理)により生成することができる。
【0056】
切断線生成装置10では、抽出部12は、描画データに基づく画像を2値化し、2値化したデータに基づいてデザイン領域を抽出することとしてもよい。
これにより、切断線生成装置10は、「0」又は「1」の2値化データを利用するので、グレースケール等の画像を利用する場合に比べて、デザイン領域を抽出するための処理内容を容易にすることができる。すなわち、切断線生成装置10は、背景をデザイン領域と誤認したり、デザイン領域を背景と誤認したりするなどを抑制でき、デザイン領域と背景とを確実に分離することとができる。
【0057】
切断線生成装置10では、抽出部12は、「1」がデザインを示すデータとし、「0」が背景を示すデータとすると、2値化した画像のうち「1」が記録された画素をグループ化することにより、デザイン領域を抽出することとしてもよい。
これにより、切断線生成装置10は、「1」が記録された画素をグループ化することにより、描画データに基づく画像に複数のデザインが有る場合でも、複数のデザインを1つのデザイン領域として抽出することができる。
【0058】
切断線生成方法及び切断線生成プログラムは、上述した切断線生成装置10と同様に、デザイン領域の輪郭に対応した切断に利用されるライン(平滑化切断線)を生成することができる。
【0059】
なお、上述した切断線生成装置10は、カウント部(不図示)によって、平滑化切断線に沿って切断するときの切断回数(カットパス数)をカウントしてもよい。そのカウント部は、例えば、Connected Component Labelingを利用することにより、連続する平滑化切断線の数をカウントする。例えば、図7に例示する場合、孔を形成するための平滑化切断線と、デザイン領域に沿った平滑化切断線とが有るため、カウント部は、その平滑化切断線の数を切断回数としてカウントする。
後工程である加工工程においては、切断回数(カットパス数)に応じて工賃が変動する。このため、ユーザにとっては、切断回数を事前に知りたいという要望がある。切断線生成装置10は、カウント部によってカウントされた切断回数をユーザに提示することにより、ユーザのそのような要望に応えることができる。
【0060】
なお、上述した切断線生成システム1は、以下のような変形例の構成を取ることも可能である。
すなわち、変形例に係る切断線生成システム1を構成する切断線生成装置10は、外部端末20から3次元のキャラクタモデル(3次元の構造物)を生成するためのデータを受け付けてもよい。
変形例に係る切断線生成システム1を構成する外部端末20は、例えば、表示部、入力部、メッシュモデル作成部及び画像処理部を備える。
図12は、キャラクタモデルについて説明するための図である。
【0061】
表示部は、3次元表示されたキャラクタモデル21と、ポインタ111とを表示する。キャラクタモデル21は、例えば、人の形をしたものである。外部端末20は、一例として、外部端末20の記憶部からモデルデータを読み出すことにより、外部ネットワークからモデルデータをダウンロードすることにより、又は、外部端末20においてモデルデータを作成することにより、表示部においてキャラクタモデル21を表示することが可能になる。
ポインタ111は、例えば、入力部の一例としてのマウスのポインタのことである。
【0062】
入力部は、表示部に表示されたポインタ111により入力が行われる。入力部の一例は、上述したように、外部端末20に接続するマウスである。また、入力部は、マウスの他に、キーボードを備えていてもよい。
【0063】
メッシュモデル作成部は、表示部に3次元表示されたキャラクタモデル21の表面形状に沿うメッシュモデル22を作成する。メッシュモデル作成部は、一例として、次のようにメッシュモデル22を作成する。すなわち、メッシュモデル作成部は、まず、表示部に表示されたキャラクタモデル21の複数の位置(前後方向及び左右方向に沿って)において初期点列を生成する。次に、メッシュモデル作成部は、各初期点列からキャラクタモデル21の中心軸に向かう直線と、キャラクタモデル21の表面との交点を計算する。次に、メッシュモデル作成部は、計算した各交点の間を楕円で補完してメッシュモデル22を作成する。次に、メッシュモデル作成部は、作成したメッシュモデル22を適宜調整して、キャラクタモデル21に適したメッシュモデル22を作成する。
【0064】
このとき、メッシュモデル作成部は、メッシュモデル22上に複数の位置(前後方向及び左右方向)に作業点を作成する。メッシュモデル作成部は、操作可能な1つの作業点と、操作不可の複数の作業点とに対して、それぞれ異なる色を付す。メッシュモデル作成部は、例えば、操作可能な作業点に対して緑色を付し、操作不可の作業点に対して赤色を付す。メッシュモデル作成部は、操作可能な1つの作業点の位置がポインタ111による入力に基づいて移動された場合、その移動に応じてメッシュモデル22を変形するように、メッシュモデル22の再計算等を行う。メッシュモデル作成部は、操作可能な作業点と、操作不可の作業点を、例えば、ポインタ111による選択に応じて、切り替えることが可能である。
【0065】
画像処理部は、髪モデル23を生成する。画像処理部は、一例として、次のように髪モデル23を生成する。まず、表示部に表示されるポインタ111が入力部によって操作されることにより、メッシュモデル22上に髪モデル23を生成するための始点と終点が設定される。始点は、キャラクタモデル21の頭部に向かい合う位置のメッシュモデル22上に設定される。終点は、メッシュモデル22上の任意の位置に設定される。次に、画像処理部は、始点と終点が設定された場合、始点と終点との間のポインタ111の軌跡(ストローク)に沿い、メッシュモデル22の表面に沿って予め設定された形状の髪モデル23を生成する。
【0066】
より具体的な一例としては、メッシュモデル作成部は、メッシュモデル22(キャラクターモデル21)の3次元表示上で、ポインタ111の軌跡上に複数の点を生成する。次に、メッシュモデル作成部は、生成した複数の点とメッシュモデル22との交点とを計算する。次に、メッシュモデル作成部は、各交点に沿って、予め設定された形状で髪モデル23を生成する。
画像処理部は、適宜設定されることにより、種々の形状の髪モデル23を生成することができる。画像処理部は、メッシュモデル22が変形されるのに応じて、髪モデル23も変形することが可能である。
外部端末20は、このようなキャラクタモデルについての3次元の構造物(フィギュア)を作製するためのデータを生成して、切断線生成装置10及び加工装置に送信する。
【0067】
切断線生成装置10は、外部端末20からそのようなデータを受信した場合にも、キャラクタモデルの表面に倣うような平滑化切断線を生成することができる。
すなわち、まず、加工装置は、キャラクタモデルのデータを受信すると、一例として、3Dプリンタ等を利用して、キャラクタモデルに対応するフィギュアを作製する。次に、加工装置は、フィギュアの周囲を透明な樹脂等でコーティングする。
【0068】
また、切断線生成装置10は、フィギュアの周囲のコーティングを切削するために、平滑化切断線を生成する。具体的には、切断線生成装置10は、キャラクタモデルに対応する3次元のフィギュアを作製するために、キャラクタモデルに関するデータを受け付ける受付部11と、受付部11によって受け付けたデータに基づいて、キャラクタモデルに対応するモデル領域を抽出する抽出部12と、抽出部12によって抽出されたモデル領域内のキャラクタモデルが記録される1つの画素としての第1画素を選択し、第1画素に隣接する第2画素にキャラクタモデルが記録されていれば第1画素のキャラクタモデルの記録を維持し、第2画素にキャラクタモデルが記録されていなければ第1画素にはノイズが記録されているとして、ノイズを除去するノイズ除去部13と、ノイズ除去部13によってノイズが除去されたモデル領域の輪郭に沿って、切断に利用される切断線を生成する生成部14と、生成部14によって生成された切断線を平滑化することにより平滑化切断線を生成する平滑化部15と、を備える。
【0069】
加工装置は、切断線生成装置10によって生成された平滑化切断線に倣うように、フィギュアの周囲のコーティングを削除する。
これにより、上述した切断線生成装置10及び外部端末20等を備える切断線生成システム1は、透明樹脂によってコーティング(補強)されたフィギュアを作製することができる。切断線生成システム1は、フィギュアの細かい部分がコーティングで埋められているため、フィギュアに破損等が発生するのを抑制することができる。また、切断線生成システム1は、フィギュアの表面に対応するように3次元の平滑化切断線を生成することができるので、その平滑化切断線に沿ってコーティングを切削することでき、フィギュアの質感や臨場感が損なわれるのを抑制することができる。
【0070】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、種々の変形が可能である。
例えば、上述した実施形態では、切断線生成システム1は、外部端末20が描画データを生成して、切断線生成装置10に送信する例について説明した。
しかし、切断線生成装置10は、描画データ生成部(図示せず)を備えていてもよい。描画データ生成部は、例えば、イラスト又は文字等のデザインが記録される描画データを生成し、その描画データを受付部11に出力する。
これにより、切断線生成システム1は、外部端末20を備えなくとも、切断線生成装置10において描画データを生成することが可能となる。
【符号の説明】
【0071】
1 切断線生成システム
10 切断線生成装置
11 受付部
12 抽出部
13 ノイズ除去部
14 生成部
15 平滑化部
20 外部端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12