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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】梁補強構造および梁補強方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/08 20060101AFI20230905BHJP
   E04G 21/32 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
E04C3/08
E04G21/32 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019081815
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020180432
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】323005120
【氏名又は名称】センクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】望月 久智
(72)【発明者】
【氏名】冨田 拓
(72)【発明者】
【氏名】林 郁実
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-131824(JP,A)
【文献】特開2015-200085(JP,A)
【文献】特開2007-162244(JP,A)
【文献】特開2016-211252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/04,3/06,3/08
E04G 21/32
E04B 1/24
F16L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブに貫通孔が形成された梁を補強するための梁補強金具を用いた梁補強構造であって、
前記梁補強金具は、
貫通孔に挿入される筒状の本体部と、
前記本体部の一方の端部近傍に形成され、径方向に突出するフランジ部と、
を具備し、
前記本体部と前記フランジ部との間に、前記本体部よりも外径が大きく、前記フランジ部よりも外径の小さな段部が形成され、
前記本体部が、梁のウェブに形成された貫通孔に挿入されて前記梁に溶接され、
前記段部によって形成される前記ウェブと前記フランジ部の間の隙間にネットが掛けられていることを特徴とする梁補強構造。
【請求項2】
ウェブに貫通孔が形成された梁を補強するための梁補強金具を用いた梁補強方法であって、
前記梁補強金具は、
貫通孔に挿入される筒状の本体部と、
前記本体部の一方の端部近傍に形成され、径方向に突出するフランジ部と、
を具備し、
前記本体部と前記フランジ部との間に、前記本体部よりも外径が大きく、前記フランジ部よりも外径の小さな段部が形成され、
前記本体部を、梁のウェブに形成された貫通孔に挿入して前記梁に溶接し、
前記段部によって形成される前記ウェブと前記フランジ部の間の隙間にネットを掛けることを特徴とする梁補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造物を構成し、貫通孔を有する梁を補強するための梁補強金具、梁補強構造および梁補強方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築構造物の梁には配管や配線を通すために貫通孔が形成されることがある。この場合、貫通孔により、梁の曲げ耐力が低下する。この梁の曲げ耐力低下を防ぐため梁に梁補強金具を接合し、梁の補強を行っている。
【0003】
このような梁補強金具としては、例えば、リング状の部材であって、梁に形成された貫通孔に接合する梁補強金具がある(例えば特許文献1)。
【0004】
また、建築構造物を構築する際には、柱や梁に取り付けたフックに落下防止ネットを引っ掛けて、作業中に物や作業員が落下するのを防止している(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-167615号公報
【文献】特開2004-232351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の梁補強金具を用いて梁の補強を行い、前述した落下防止ネットを柱や梁に設けたフックに引っ掛ける場合、現場で柱や梁にフックを取り付けたりネットの使用後にフックを撤去したりするため、作業工程が増える。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、梁の補強と同時にネットの取り付け準備が可能な梁補強金具、梁補強構造および梁補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するため、の発明は、ウェブに貫通孔が形成された梁を補強するための梁補強金具を用いた梁補強構造であって、前記梁補強金具は、貫通孔に挿入される筒状の本体部と、前記本体部の一方の端部近傍に形成され、径方向に突出するフランジ部と、を具備し、前記本体部と前記フランジ部との間に、前記本体部よりも外径が大きく、前記フランジ部よりも外径の小さな段部が形成され、前記本体部が、梁のウェブに形成された貫通孔に挿入されて前記梁に溶接され、前記段部によって形成される前記ウェブと前記フランジ部の間の隙間にネットが掛けられていることを特徴とする梁補強構造である。
【0014】
の発明によれば、梁に梁補強金具が溶接され、段部の部分にフランジ部とウェブとの間に隙間を形成することができるため、この隙間にネットを掛けることが可能である。このため、梁補強金具を梁に溶接することによって、梁の補強と同時にネットの取り付け準備を完了することができる。
【0015】
の発明は、ウェブに貫通孔が形成された梁を補強するための梁補強金具を用いた梁補強方法であって、前記梁補強金具は、貫通孔に挿入される筒状の本体部と、前記本体部の一方の端部近傍に形成され、径方向に突出するフランジ部と、を具備し、前記本体部と前記フランジ部との間に、前記本体部よりも外径が大きく、前記フランジ部よりも外径の小さな段部が形成され、前記本体部を、梁のウェブに形成された貫通孔に挿入して前記梁に溶接し、前記段部によって形成される前記ウェブと前記フランジ部の間の隙間にネットを掛けることを特徴とする梁補強方法である。
【0016】
の発明によれば、段部の部分にフランジ部とウェブとの間に隙間を形成することができるため、この隙間にネットを掛けることが可能である。このため、梁補強金具を梁に溶接することによって、梁の補強と同時にネットの取り付け準備を完了することができ、作業が容易である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、梁の補強と同時にネットの取り付け準備が可能な梁補強金具、梁補強構造および梁補強方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】梁補強金具1を示す斜視図。
図2】梁補強金具1を示す側面図。
図3】梁補強構造10を示す斜視図であり、(a)は背面側を示す図、(b)は正面側を示す図。
図4】梁補強構造10を示す正面図。
図5】(a)、(b)、(c)は、図4のA-A線断面図。
図6】梁補強金具1aを示す側面図。
図7】梁補強金具1aを用いた梁補強構造の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態にかかる梁補強金具1を示す斜視図であり、図2は側面図である。梁補強金具1は、本体部3、フランジ部5、段部7等から構成される。梁補強金具1は、ウェブに貫通孔が形成された梁を補強するための部材である。
【0020】
梁補強金具1は、例えば鋼材やステンレス鋼などの金属製の部材である。梁補強金具1は、全体としてリング状の部材であり、配管等が貫通する配管孔を有している。本体部3は、後述する梁の貫通孔に挿入される筒状の部位である。本体部3の一方の端部近傍には、フランジ部5が設けられる。フランジ部5は、本体部3に対して外径が大きい部位であり、本体部3の径方向に突出する。
【0021】
本体部3とフランジ部5との間には、本体部3よりも外径が大きく、フランジ部5よりも外径の小さな段部7が形成される。すなわち、本体部3の一方の端部側において、本体部3、段部7、フランジ部5と、順に外径が大きくなる。なお、本体部3、フランジ部5及び段部7の内径は略同一であり、内周面には凹凸は形成されない。
【0022】
なお、段部7は、図示したように、本体部3の全周に亘って連続して形成されてもよいが、周方向に複数個所に所定の間隔で形成されてもよい。また、段部7の端面(本体部3側から見てリング状の面)は、本体部3の外周面に対して略垂直であることが望ましいが、段部7の外周面とフランジ部5の端面とは、なだらかに接続されていてもよい。例えば、段部7の外周面とフランジ部5の端面とが、円弧状又はテーパ状に接続されていてもよい。
【0023】
次に、梁補強金具1を用いた梁補強構造10について説明する。図3(a)は、梁補強構造10をウェブ15の背面15b側から見た斜視図であり、図3(b)は、梁補強構造10をウェブ15の正面15a側から見た斜視図である。また、図4は、梁補強構造10の正面図である。
【0024】
梁11は、ウェブ15の上下にフランジ13を有するH鋼である。ウェブ15には、配管等を通すための貫通孔17が形成される。梁補強金具1は貫通孔17に配置される。前述したように、貫通孔17には、梁補強金具1の本体部3が挿入される。段部7は、貫通孔17の縁部近傍のウェブ15に面接触する。これにより、貫通孔17の縁にバリ等がある場合にも、梁補強金具1で隠すことができる。また、段部7は、ウェブ15とフランジ部5との間に隙間7aを形成可能なスペーサとして機能する。
【0025】
梁補強金具1は、ウェブ15に対して溶接によって接合される。図5(a)は、図4のA-A線部分断面図である。なお、図5(a)において、背面15b側のネット等の図示を省略する。本実施形態では、本体部3の外周部が、ウェブ15に対して全周にわたって溶接される。すなわち、溶接部19は、本体部3の外周部とウェブ15の背面15bとの間に形成される。
【0026】
梁補強構造10では、ウェブ15の正面15aにおいて、梁補強金具1のフランジ部5とウェブ15との間の段部7の部位に形成された隙間7aに落下防止用のネット9が掛けられる。また、梁11はウェブ15の背面15b側にフック8が設けられ、フック8にも落下防止用のネット9が掛けられる(図3(a)参照)。段部7(隙間7a)に掛けられたネット9及びフック8に掛けられたネット9は、それぞれ梁11の下側のフランジ13の縁部を覆うように配置され、作業中に梁11の側方に物や作業員が落下するのを防止する。
【0027】
なお、図5(b)に示すように、段部7の外周部を、ウェブ15に対し溶接してもよい。すなわち、溶接部19は、段部7の外周部とウェブ15の正面15aとの間に形成される。また、段部7の外周部を溶接する場合には、図5(c)に示すように、フランジ部5の内面側をテーパ形状にしてもよい。すなわち、フランジ部5は、段部7から前端面に向かって徐々に拡径するようにテーパ形状としてもよい。このようにすると、溶接がやりやすい。さらに、溶接部19は、梁補強金具1の両側に形成してもよい。なお、段部7側を溶接する場合には、段部7とフランジ部5との外径差よりも溶接部19の高さを低くし、フランジ部5とウェブ15との間に隙間7aが残るようにする。すなわち、溶接部19は、フランジ部5よりも外方にはみ出さず、フランジ部5とウェブ15との隙間7aが埋まらないように溶接する必要がある。
【0028】
次に、梁補強金具1を用いた梁補強方法(梁補強構造10の施工方法)について説明する。まず、梁11をウェブ15の正面15a側が上向きになるように作業ヤードに仮置きし、梁補強金具1の本体部3を、梁11のウェブ15の正面15a側から貫通孔17に挿入する。この際、梁補強金具1の段部7は、梁11に設けられた貫通孔17よりも大きな外径を有している。また、本体部3は、梁11に設けられた貫通孔17の径よりも小さい外径を有している。このため、本体部3を貫通孔17に挿入すると、段部7をウェブ15に接触させることができる。すなわち、段部7は梁補強金具1を貫通孔17に挿入する際、軸方向の位置決めに使われる。
【0029】
梁補強金具1の位置が決まったら、必要に応じて梁補強金具1を仮固定し、ウェブ15の背面15b側から本体部3の外周部とウェブ15の背面15bとの間に溶接部19を形成して、梁補強金具1をウェブ15に固定する。なお、溶接部19は、ウェブ15の正面15a側であってもよく、背面15b側であってもよい。溶接は例えば被覆アーク溶接で行われる。
【0030】
梁補強金具1を梁11に溶接したら、梁11を現場に設置する。すなわち図示しない柱との接合部に梁11を接合する。そして、梁補強金具1に形成された段部7において形成される、フランジ部5とウェブ15との間の隙間7aに落下防止用のネット9を掛ける。また、ウェブ15の背面15b側に取り付けられたフック8にもネット9を掛ける。フック8はウェブ15の背面15bにあらかじめ取り付けておいてもよいし、現場で取り付けてもよい。
【0031】
以上により、梁補強構造10を得ることができる。梁補強金具1によって、梁11の貫通孔17の近傍における曲げ耐力を向上させることができる。
【0032】
以上、本実施の形態によれば、梁補強金具1に段部7とフランジ部5が形成されているので、梁補強金具1を梁11に固定した際に、落下防止用のネット9を掛けることが可能である。このため、梁補強金具1を梁11に溶接することにより梁11の補強と同時にネット9の取り付け準備を完了することができる。また、現場に梁11を設置したらすぐに段部7(隙間7a)にネット9を掛けて落下防止対策を行うことができる。
【0033】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図6は、梁補強金具1aの側面図であり、図7は梁補強金具1aを用いた梁補強構造の部分断面図である。なお、以下の説明において、梁補強金具1及び梁補強構造10と同様の機能を奏する構成には、図1図5と同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0034】
梁補強金具1aは、本体部3の外周部に溝6が形成される点で梁補強金具1と構成が異なる。梁補強金具1aは、本体部3のフランジ部5等が形成される端部側とは逆側の端部近傍において、外周面に周方向に溝6が形成される。
【0035】
梁補強金具1aを梁11に固定すると、梁11の背面15b側には、本体部3の先端部の一部がウェブ15から突出する。溝6は、本体部3のウェブ15からの突出部に形成される。すなわち、溝6は、本体部3の端面から所定距離離れて形成され、ウェブ15の背面15b側において、溝6が、ウェブ15に隠れない範囲に形成される。なお、溶接部19は、ウェブ15の正面15a側であってもよく、背面15b側であってもよい。
【0036】
梁補強金具1aを用いることで、いずれの端面側においても、隙間7aと溝6にネット9を掛けることができる。このため、図3(a)に示す梁11のウェブ15の背面15b側においても梁補強金具1aにネット9が掛けられる。したがって、フック8の使用量を削減し、作業を短縮することができる。
【0037】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、梁補強金具1aのように、本体部3の端部近傍(フランジ部5が設けられない側の端部近傍)の外周面に溝6を形成することで、梁の補強と同時にウェブ15の背面15b側においてもネット9の取り付け準備を完了することができる。
【0038】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0039】
また、梁補強金具の本体部3は円筒状に限らない。例えば貫通孔が角形である場合、角筒状の本体部の端部に段部とフランジ部が形成された梁補強金具を用いてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1、1a………梁補強金具
3………本体部
5………フランジ部
6………溝
7………段部
7a………隙間
8………フック
9………ネット
10………梁補強構造
11………梁
13………フランジ
15………ウェブ
15a………正面
15b………背面
17………貫通孔
19………溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7