(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】生体情報測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1455 20060101AFI20230905BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20230905BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
A61B5/1455
A61B5/02 C
A61B5/02 310B
A61B5/02 310F
A61B5/11 200
(21)【出願番号】P 2019119153
(22)【出願日】2019-06-26
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 一真
(72)【発明者】
【氏名】阿部 淳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】坂内 紀信
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-312010(JP,A)
【文献】特開2014-036764(JP,A)
【文献】特開2018-007959(JP,A)
【文献】特開平08-317911(JP,A)
【文献】特開2015-047253(JP,A)
【文献】特表2017-533737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/398
G06Q 50/22
G16H 10/00 -80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が携帯して使用可能な生体情報測定装置であって、
前記使用者の測定部位に装着して、前記使用者の生体情報を計測する生体情報計測部と、
加速度センサを有し、前記加速度センサの出力に基づいて前記使用者の
歩数を含む活動量を計測する活動量計測部と、
前記生体情報測定装置の主駆動電源であって、前記生体情報計測部及び前記活動量計測部に電源を供給してそれぞれの計測を可能にする駆動源と、
前記駆動源よりも電源容量及び消費電力が小さく、且つ、前記加速度センサに電源を供給して駆動し前記加速度センサに前記生体情報測定装置の状態の変化を検知させる他の駆動源と、
を有し、
前記駆動源は、
前記他の駆動源により駆動する前記加速度センサの出力に基づいて前記生体情報測定装置の状態の変化が検知されたとき、
前記他の駆動源にかわり前記加速度センサへ電力を供給し、前記活動量計測部への電源の供給を開始して、前記活動量計測部による前記活動量の計測を可能にする一方、前記生体情報計測部には電源を供給しない、
生体情報測定装置。
【請求項2】
前記生体情報計測部は、前記使用者の前記測定部位に装着される本体を有し、
前記本体には、前記測定部位への装着を検知する検知部が設けられ、
前記駆動源は、前記検知部により前記測定部位への装着を検知したとき、前記生体情報計測部に電源の供給を開始して、前記生体情報計測部による生体情報の計測を可能にする、
請求項1記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
前記駆動源は、前記加速度センサの出力に基づいて前記生体情報測定装置の動きが検知されたとき、前記検知部への電源の供給を開始して、前記検知部によ
る検知を可能にする、
請求項2に記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
前記生体情報は、動脈血酸素飽和度を含む、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の生体情報測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報として例えば経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)等の生体パラメータを測定する生体情報測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体パラメータを測定する生体情報測定装置として、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)を測定するパルスオキシメータが知られている。パルスオキシメータは、光によって非観血的に経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)を計測するための医療機器であり、その計測のために通常はプローブが指、足趾又は耳朶等の部位に装着されるよう構成されている。
【0003】
一般的な、パルスオキシメータでは、装着された部位に向けて例えば赤色光及び赤外光を発光する発光素子が設けられ、下側のハウジングに、装着部位を透過した光を検出する受光素子が設けられている。血液中のヘモグロビンは酸素との結合の有無により赤色光と赤外光の吸光度が異なることから、発光素子が発光する光が指先等を透過したもの又は反射したものを受光素子で測定して分析することにより、経皮的動脈血酸素飽和度を測定することができる。
【0004】
近年、電子部品の小型化に伴い、パルスオキシメータも、小型軽量化が実現され、手術室以外での用途として、例えば、在宅での患者自身による呼吸器疾患の検査や訪問看護での使用も可能となっている。小型化されたパルスオキシメータとしては、手に持てる大きさのハンドヘルド型、片手で保持できるワンハンドグリップ型、腕時計型、指先に取り付ける発光素子及び受光素子に表示部も一体化された一体型の指用のパルスオキシメータ等のさまざまな形態のものが知られている。
【0005】
例えば、特許文献1に示すパルスオキシメータは、指先に装着して使用可能な小型軽量のクリップ型のパルスオキシメータである。このパルスオキシメータは、発光素子及び受光素子を用いて経皮的動脈血酸素飽和度(血中酸素飽和度)を取得するプローブ部と、取得された生体信号を測定分析処理して経皮的動脈血酸素飽和度の測定および記録を行う本体部とを一体化して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、パルスオキシメータは、在宅での使用として、在宅酸素療法(HOT:home oxygen therapy)によるCOPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:慢性閉塞性肺疾患)の治療に用いられることが知られている。在宅酸素療法は、患者の経皮的動脈血酸素飽和度の数値を改善するために用いられる方法である。在宅酸素療法は、一般的に酸素供給器の一種である酸素濃縮器により、高濃度酸素を患者体内に供給することにより治療する。この場合、患者は、自宅に酸素濃縮器を設置し、在宅時には、医師の処方に従って酸素濃縮器から高濃度酸素を吸入する。患者について酸素流量等の処方を決定した医師は、在宅酸素療法の経過観察をし、処方の見直し等を適宜行うことにより、酸素飽和度の数値の改善を図り、ひいては患者のQOL(Quality of Life)の向上を図っている。
【0008】
よって、医師は、患者の容態を診るだけでなく、自らが決定した処方の適確性或いは患者の処方遵守状況等(以下「在宅酸素療法の経過」という)の確認も行う必要がある。このような患者の予後の確認のために、パルスオキシメータは用いられている。
【0009】
COPD患者の予後に関わるパラメータの一つとして「身体活動性」があり、近年では、パルスオキシメータとしては、患者の身体活動性の指標となる歩数を計測する歩数計としての機能を有するものが実現されている。
【0010】
歩数計の機能を有するパルスオキシメータは、患者の歩行開始を予期できないことから、常時電源ONとなるように設定され、充電することにより繰り返し使用できるように構成されている。
【0011】
しかしながら、患者がパルスオキシメータを身につけていない場合や歩行していない場合でも常に電源がONであるので、歩数計として機能していない状態でも常に電力は消費され、パルスオキシメータとしての消費電力は大きくなる。
【0012】
特に充電式のパルスオキシメータであっても、経皮的動脈血酸素飽和度を測定する際には、その測定が中断されることなく好適に行えるように、患者は毎日充電して使用する必要がある。患者は、その充電を忘れることもあり、患者が使用するパルスオキシメータとしては、歩数計測可能であっても極力消費電力が小さいものが望まれている。
【0013】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、歩数等の活動量を計測可能であるとともに、消費電力の低減化を図り、活動量計測及び生体情報計測をそれぞれ効率よく好適に実行することができる生体情報測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の生体情報測定装置は、
使用者が携帯して使用可能な生体情報測定装置であって、
前記使用者の測定部位に装着して、前記使用者の生体情報を計測する生体情報計測部と、
加速度センサを有し、前記加速度センサの出力に基づいて前記使用者の歩数を含む活動量を計測する活動量計測部と、
前記生体情報測定装置の主駆動電源であって、前記生体情報計測部及び前記活動量計測部に電源を供給してそれぞれの計測を可能にする駆動源と、
前記駆動源よりも電源容量及び消費電力が小さく、且つ、前記加速度センサに電源を供給して駆動し前記加速度センサに前記生体情報測定装置の状態の変化を検知させる他の駆動源と、
を有し、
前記駆動源は、前記他の駆動源により駆動する前記加速度センサの出力に基づいて前記生体情報測定装置の状態の変化が検知されたとき、前記他の駆動源にかわり前記加速度センサへ電力を供給し、前記活動量計測部への電源の供給を開始して、前記活動量計測部による前記活動量の計測を可能にする一方、前記生体情報計測部には電源を供給しない構成を採る。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、歩数等の活動量を計測可能であるとともに、消費電力の低減化を図り、活動量計測及び生体情報計測をそれぞれ効率よく好適に実行することができる生体情報測定装置を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る生体情報測定装置の一例であるパルスオキシメータの外観図である。
【
図2】同パルスオキシメータの指挿入口を開いた状態を示す図である。
【
図3】同パルスオキシメータの開閉検知部を示す概略側面図である。
【
図4】同パルスオキシメータの要部構成を示すブロック図である。
【
図5】同パルスオキシメータにより経皮的動脈血酸素飽和度を計測する動作を示す図である。
【
図6】同パルスオキシメータにより経皮的動脈血酸素飽和度を計測する動作を示す図である。
【
図7】同パルスオキシメータの電源投入動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態に係る生体情報測定装置の一例であるパルスオキシメータの外観の一例を示す図である。パルスオキシメータ100は、プローブ部と本体部が、上部筐体及び下部筐体として一体化され、電源部を収容した、指先に装着するタイプのパルスオキシメータである。本実施の形態のパルスオキシメータ100は、例えば、酸素濃縮器を用いた在宅酸素療法の経過観察において用いられる。この場合に用いられるパルスオキシメータ100は、使用者としての患者の在宅酸素療法の経過の確認(予後の確認)のための判断材料としての、身体活動性の指標となる活動量の一例としての歩数を計測する歩数計測機能を有する。なお、本実施の形態では、生体情報測定装置としてパルスオキシメータを一例として説明するが、これに限らず、クリップ状のプローブ部により生体パラメータを測定する生体情報測定装置であれば、どのような装置であってもよい。
【0019】
図1~
図3に示すパルスオキシメータ100は、クリップ状のプローブ部を有し、プローブ部は、ヒンジ部130により開閉可能に接続された上部筐体(開閉部位)110及び下部筐体(開閉部位)120により構成されている。ヒンジ部130は、上部筐体110と下部筐体120とを閉じる方向に回転力を発生するよう設けられている。これにより、パルスオキシメータ100は、上部筐体110と下部筐体120との間の指挿入口140に矢印の方向で挿入された患者の指Yを、適度な力で挟み込む(
図5及び
図6参照)ことができる。すなわち、上部筐体110、下部筐体120、およびヒンジ部130は、全体として、患者の指Yに取り外し可能に装着される。
【0020】
また、パルスオキシメータ100は、上部筐体110の上面に、表示部であるディスプレイ112を有する。なお、パルスオキシメータ100は、図示しないが、上部筐体110の後面には、主駆動電源としての電池(第1電源部に相当)を収容する電池収容部が開口して設けられ、この開口は電池蓋により水密的に開閉自在に閉塞されている。この電池蓋で閉塞される部位には、例えば、電池収容部近傍にマイクロUSBコネクタ等の外部接続可能なコネクタ(図示せず)が設けられている。外部接続可能なコネクタは、アダプタ(図示せず)を介して、外部装置との間のデータの送受信を可能とする。
ディスプレイ112は、時刻、測定値、および動作状況等を表示する。ディスプレイ112は、制御部180の制御を受けて測定値として経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2:以下、「動脈血酸素飽和度」ともいう)、脈波、脈拍数、歩数等を表示する。ディスプレイ112は、例えば、歩数計測モード、経皮的動脈血酸素飽和度計測モード(「動脈血酸素飽和度計測モード」ともいう)等の複数のモードのそれそれで測定値を表示してもよい。
【0021】
また、ディスプレイ112は、モードに応じて電池残量を表示可能である。具体的な表示形態としては、ディスプレイ112は、電池残量表示として、パルスオキシメータ100に収容された第1電源部162(
図4参照)のメイン電池の残量の目安を、容易に視認できるように模式的に表示する。
ディスプレイ112は、経皮的動脈血酸素飽和度計測時では、動脈血酸素飽和度計測モードの表示画面として、測定された経皮的動脈血酸素飽和度を、「%SpO
2」の単位で表示する。また、これに加えて、ディスプレイ112は、電池残量、バーグラフで表示した脈波、「数字+PR bpm」で測定した脈拍数を表示する。なお、バーグラフのバーの長さは、検出された脈波の検出強度に対応する。また、経皮的動脈血酸素飽和度とともに測定された灌流指数(PI)が十分なものでないとき、例えば、経皮的動脈血酸素飽和度の数字を点滅させる。また、歩数計測モード時では、歩数計測モード表示画面としてディスプレイに歩数を表示してもよく、表示しなくてもよい。
【0022】
経皮的動脈血酸素飽和度計測中では、患者は、経皮的動脈血酸素飽和度の計測値その他の情報を、ディスプレイ112により確認することができる。また、計測された計測値は、データ記憶部125(
図4参照)に記録される。
【0023】
なお、患者には、経皮的動脈血酸素飽和度の測定が行われ、記録されたときに、その旨を記録通知により知るようにしてもよい。更に、連続装着時間が長すぎるときには、その旨を警告通知により知るようにしてもよい。
【0024】
図4は、パルスオキシメータ100の構成の一例を示すブロック図である。
【0025】
図4のパルスオキシメータ100は、経皮的動脈血酸素飽和度計測部(以下、「酸素飽和度計測部」という)150、第1電源部(駆動源)162、第2電源部(駆動源)164、時計・カレンダ機能部165、歩数計測部166、開閉検知部168、制御部180、ディスプレイ(表示部)112、データ通信部124、データ記憶部125を有する。
【0026】
酸素飽和度計測部150は、発光素子152、受光素子154を有し、発光素子152、受光素子154は、所謂、生体情報として、経皮的動脈血酸素飽和度を計測するプローブ部として機能する。この酸素飽和度計測部150は、経皮的動脈血酸素飽和度とともに脈拍数(つまり脈波測定値)を計測する。
発光素子152により、赤色光や赤外光を発光して患者の特定部位(例えば、指先、つま先等)に透過させ、その透過光を受光素子154により検出することにより、検出信号を得る。酸素飽和度計測部150は、検出信号を制御部180の酸素飽和度計測回路(図示せず)に出力し、酸素飽和度計測回路において、検出信号に基づいて酸素飽和度及び脈拍数が測定される。
【0027】
発光素子152及び受光素子154は、本実施の形態では、指挿入口140を構成する上部筐体110及び下部筐体120に配置される。発光素子152は、例えば、発光ダイオードであり、受光素子154は、例えば、フォトダイオードである。発光ダイオードは、制御部180(具体的には制御部180の図示しない発光駆動回路)の駆動制御を受けて、異なる所定の波長の光を発光する。フォトダイオードは、2つの所定の波長の光を受光したときに、その受光量に応じた電流信号を、制御部180(具体的には制御部180の電流電圧変換回路)へ出力する。プローブ部を構成する発光素子152が発光および受光する光は、例えば、赤外光と赤色光である。発光素子152及び受光素子154は、第1電源部162からの電力供給により駆動する。
【0028】
第1電源部162は、パルスオキシメータ100の主駆動電源であり、パルスオキシメータ100の各部、例えば、制御部180、開閉検知部168、酸素飽和度計測部150の発光素子152及び受光素子154等に電力を供給して、それぞれを駆動する。
【0029】
本実施の形態では、第1電源部162は、乾電池であり、電池蓋により閉塞される電池収容部に交換可能に収容される。
【0030】
第2電源部164は、第1電源部162よりも電源容量が小さく、消費電力も小さい。第2電源部164は、ボタン電池等が用いられる、所謂、内部電池であり、時計やパルスオキシメータ100におけるBIOS等のバックアップメモリのデータ保存等に使用される。本実施の形態では、第2電源部164は、時計・カレンダ機能部165に電力供給するとともに、第1電源部162から各部へ電力供給されていない状態、つまりパルスオキシメータ100の電源がオフの状態において、加速度センサ170に電力を供給する。
【0031】
時計・カレンダ機能部165は、時間・カレンダを計測し、表示する。例えば、パルスオキシメータ100では、酸素飽和度計測部150が酸素飽和度と脈拍との測定を行った時点において時計・カレンダ機能部165が示していた日時として測定日時が記憶される。時計・カレンダ機能部165は、第2電源部164からの電源供給により駆動する。
【0032】
歩数計測部166は、患者の歩数を計測する。本実施の形態では、歩数計測部166は、加速度センサ170と、制御部180の歩数計数回路(図示せず)とを有し、加速度センサ170によりパルスオキシメータ100の加速度を測定する。
【0033】
加速度センサ170は、パルスオキシメータ100の加速度(傾き、動きによる変位に基づく)を検知して、制御部180に出力する。制御部180では、加速度センサ170の出力に基づいて、患者の歩数を測定する。つまり、制御部180は、加速度センサ170とともに、患者が歩いた歩数を測定する歩数計測部として機能する。加速度センサ170は、パルスオキシメータ100の静止状態、移動状態を検出する。
【0034】
加速度センサ170は、検知した測定結果を制御部180に送信し、制御部180の歩数計測回路(図示せず)により歩数計測が行われる。加速度センサ170における歩数計測は、加速度センサ170に、例えば、3軸加速度センサを適用し、3軸方向の加速度の合計値を用いる等して患者の歩数を測定する。なお、この歩数の測定により患者の歩行も判定できる。
【0035】
加速度センサ170は、パルスオキシメータ100の使用開始時から、つまり、パルスオキシメータに初めて第1電源部162及び第2電源部164を装着したときから第1電源部162及び第2電源部164の少なくとも一方から電源が供給されている。本実施の形態では、加速度センサ170は、パルスオキシメータ100の使用開始時から第2電源部164からの電力供給により駆動する。
【0036】
開閉検知部168は、上部筐体110及び下部筐体120の開閉状態を検知し、制御部180に出力する。すなわち、開閉検知部168は、パルスオキシメータ100において経皮的動脈血酸素飽和度を計測する前に、制御部180及び酸素飽和度計測部150を駆動して酸素飽和度を計測可能な状態にする。開閉検知部168は、例えば、ホール素子等の磁気センサ172と磁石174を有する。磁気センサ172によって、上部筐体110及び下部筐体120の距離による磁束の変化に基づいて、酸素飽和度測定のために、開閉部位(上部筐体110及び下部筐体120)の開状態或いは閉状態を検出できる。なお、磁気センサ172と磁石174の位置は、上部筐体110及び下部筐体120の開閉状態を検知すれば、どのように設けられてもよく、
図3に示すパルスオキシメータ100では、磁気センサ172と磁石174とを逆の位置にそれぞれ設けてもよい。
【0037】
制御部180は、CPU、RAM、ROMを備える。制御部180では、ROM等の記憶媒体に格納された制御プログラムの実行により、モード設定、測定値の算出、およびパルスオキシメータ100の各部の制御を行う。
制御部180は、酸素飽和度及び脈拍数(つまり脈波測定値)を計測する酸素飽和度計測回路(図示せず)を有する。制御部180は、酸素飽和度計測回路(図示せず)により、開閉検知部168の検知結果(ここでは加速度センサ170の検出結果)をトリガーに駆動して、動脈血の総ヘモグロビンに対する酸化ヘモグロビンの割合を求め、動脈血の脈拍に同期する吸光度の変化を検出する。この検出結果をディジタルデータに変換することにより、制御部180は、酸素飽和度測定値及び脈拍測定値を取得する。酸素飽和度計測回路は、例えば、電流電圧変換回路、復調回路、信号処理回路及び発光駆動回路等を有する。電流電圧変換回路は、酸素飽和度計測部150から入力される電流信号を電圧信号に変換し、電圧信号を復調回路へ出力する。復調回路は、発光駆動回路から入力される信号を受けて、電流電圧変換回路から入力される電圧信号を、上述の波長に対応する成分毎に分離して2つの観測信号を復調する。そして、復調回路は、復調した観測信号を、信号処理回路へ出力する。信号処理回路は、復調回路から入力される2つの観測信号に対して所定の信号処理(例えば、増幅およびA/D変換など)を行い、処理後の観測信号を算出する。発光駆動回路は、CPU制御を受けて、発光素子152である2つの発光ダイオードを発光させる。
【0038】
制御部180は、加速度センサ170とともに歩数計測部166として機能し、加速度センサ170からのデータに基づいて歩数を計測する。制御部180は、計測した歩数をディスプレイ112に表示したり、データ記憶部125に記録したりする。
【0039】
制御部180は、各部の入力される信号に基づいて、動脈血酸素飽和度計測モード、歩数計測モードとしてディスプレイ112に表示する。制御部180は、磁気センサ172からの信号により、発光素子152を発光させて受光素子154で受光する等、酸素飽和度計測部150を駆動して、酸素飽和度の計測を開始可能な状態にする。パルスオキシメータ100が停止状態において、加速度センサ170から、パルスオキシメータ100の移動を示す信号が入力されると、第1電源部162から制御部180を介して歩数計測部166を可能にする各部への電源供給を行う。
また、制御部180は、経皮的動脈血酸素飽和度を計測しているときには、歩数計測を停止する。また、歩数計測時において経皮的動脈血酸素飽和度の計測を始めた際には、歩数計測を停止する。
【0040】
データ通信部124は、パルスオキシメータ100と、例えば、酸素濃縮器或いは外部機器とを通信可能に接続するためのインターフェースである。パルスオキシメータ100と、酸素濃縮器との間の接続、及び、パルスオキシメータ100と在宅酸素療法管理装置等の外部装置との間の接続は、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信方式に基づく無線通信により行われる。パルスオキシメータ100と酸素濃縮器とは、常時通信可能な接続ではなく、互いに近距離にいて無線通信チャネルが確立されている間、通信が可能となる。
【0041】
データ記憶部125は、フラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性メモリ(図示せず)を含み、制御部180の制御を受けて、測定結果を記録できる。
【0042】
本実施の形態の駆動動作について説明する。
【0043】
図7は、パルスオキシメータ100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0044】
パルスオキシメータ100の動作は、上述の通り、制御部180によって制御される。また、制御部180は、経皮的動脈血酸素飽和度を測定するとともに、脈波および脈拍数等を測定して、これらの測定値記録および表示を行う。ここでは、シャットダウン状態、つまり、主電源が投入されていない状態のパルスオキシメータ100において自動的に主電源が投入されて歩行中の歩数を計測する歩数計の機能について説明する。
【0045】
パルスオキシメータ100では、まず、パルスオキシメータ100が所定の場所に載置されている状態等の静止状態から姿勢が変化したか否かを判定する。すなわち、ステップS10において、加速度センサ170が、パルスオキシメータ100の加速度情報を検知したか否かを判定する。加速度センサ170は、パルスオキシメータ100がシャットダウン状態のとき、第2電源部164から常に省電力の電源供給を受けている。この状態において、加速度センサ170は、パルスオキシメータ100の静止状態からの姿勢の変化、つまり、パルスオキシメータ100の変位があるかを検出する。
【0046】
ステップS10において、加速度情報を検知すれば、つまり、パルスオキシメータ100の変位を検知すれば、ステップS12に移行する。ステップS12では、パルスオキシメータ100の主電源オンとなり第1電源部162から各部への電源供給を開始し、且つ、加速度センサ170へ第1電源部162から電源を供給する。すなわち、歩数計測部166(加速度センサ170も含む)及び制御部180には、歩数の計測が可能になるように、第1電源部162から電力供給が開始される。具体的には、ステップS12では、加速度情報を検知した加速度センサ170は、第1電源部162に信号を出力し、信号を受けた第1電源部162は立ち上がり、制御部180及び各部に電源を供給する。これにより、ステップS14では、制御部180は、加速度センサ170とともに歩数計測部166として、歩数計測を開始する。また、第1電源部162が制御部180に電源を供給することにより、制御部180は、加速度センサ170の電源を第2電源部164から第1電源部162に切り換える。また、制御部180は、歩数計測モード表示制御を行い、ディスプレイ112に歩数の計測値を表示可能としてもよい。なお、本実施の形態では、制御部180に第1電源部162から電力供給されることにより、パルスオキシメータ100に電源が投入され、動脈血酸素飽和度計測部(具体的には、発光素子152)以外に電力が供給されて立ち上がる。
【0047】
パルスオキシメータ100は、患者に携帯され、その患者が歩行すると、自動的に電源が投入され、その歩数計測が可能な状態となる。なお、この状態では、発光素子152及び受光素子154へ電源が供給されておらず、経皮的動脈血酸素飽和度の計測モードにはなっていない。これにより、経皮的動脈血酸素飽和度を計測する際の電力を効率良く確保できる。
【0048】
そして、ステップS16に示すように、一定期間経過しても加速度センサ170からの出力が無いかを判定し、一定期間、加速度センサ170からの加速度情報がない場合、パルスオキシメータによる測定は停止したとみなし、処理を終了する。
【0049】
このように、本実施の形態に係るパルスオキシメータ100は、パルスオキシメータ100を持ち上げたり、或いは、携帯されて歩行中の歩数の計測が行われようとすると、自動的に電源オフから電源オン状態となり歩数の計測を開始する。つまり、主電源である第1電源部162から制御部180を介してパルスオキシメータ100の主要な各構成部への電力供給がされていない状態であっても、加速度センサ170の検知により、歩数計測部166として機能するための電源が入力される。例えば、ディスプレイ112の表示等が行われる。
【0050】
また、一定期間、歩行が行われなければ、第1電源部162から加速度センサ170を含む各部へ供給される電源はオフになり、加速度センサ170への電力供給は、第1電源部162から第2電源部164に切り替わり、加速度センサ170は加速度情報の測度待機状態に戻る。これにより、パルスオキシメータ100は、歩数計として機能していないときは、効率よく自動で省電力化を図ることができる。
【0051】
また、本実施の形態は、上述の例の他にも、種々変更して実施することができる。例えば、本実施の形態における上記の構成および動作は、使用者としての患者が携帯或いは装着して生体パラメータ及び活動量を測定しているが、非測定時では携帯或いは装着する必要がない他の各種生体情報測定装置においても実現可能である。例えば、本実施の形態の構成および動作は、歩数計測機能等の活動量を計測する機能と、経皮的動脈血酸素飽和度或いは脈波等の生体パラメータを計測する機能を有する全ての医療機器に適用可能である。
【0052】
また、本実施の形態では、生体情報測定装置として携帯型のパルスオキシメータを一例として説明したが、生体情報測定装置として、携帯可能な小型心電計であってもよく、また活動量計等であっても良い。携帯可能な小型心電計は特開2007-209608号公報に記載のように、患者の心電図を測定する際に患者の測定部位(例えば手と胸部)に接触可能に配置した電極を備えた本体を有する。この場合、検知部は、電極への測定部位の接触を、生体パラメータの測定開始に関わる生体情報測定装置の状態変化として検知可能な構成を有する。電極への測定部位の接触は、例えば、測定部位が電極に接触する際の電極のインピーダンス変化を検知することにより、検知することができる。このときの複数の電極で測定部位への接触を検知して、制御部に電極を介した生体パラメータの測定を開始させる。これにより、測定部位への装着されるまで、心電図情報の取得は行われることが無く、消費電力を削減することができる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る生体情報測定装置は、歩数等の活動量を計測可能であるとともに、消費電力の低減化を図り、活動量の計測及び経皮的動脈血酸素飽和度等の生体パラメータの計測をそれぞれ効率よく好適に実行することができる効果を有し、一次或いは二次電池等により駆動し、且つ活動量としての歩数の計測機能を有する携帯型のパルスオキシメータとして有用である。
【符号の説明】
【0055】
100 パルスオキシメータ
110 上部筐体
112 ディスプレイ
120 下部筐体
124 データ通信部
125 データ記憶部
130 ヒンジ部
140 指挿入口
150 酸素飽和度計測部(生体情報計測部)
152 発光素子
154 受光素子
162 第1電源部
165 時計・カレンダ機能部
164 第2電源部
166 歩数計測部(活動量計測部)
168 開閉検知部
170 加速度センサ
172 磁気センサ
174 磁石
180 制御部