(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】ルーフ搭載エアバッグ用の支持体
(51)【国際特許分類】
B60R 21/215 20110101AFI20230905BHJP
B60R 21/214 20110101ALI20230905BHJP
B60R 21/216 20110101ALI20230905BHJP
【FI】
B60R21/215
B60R21/214
B60R21/216
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019160099
(22)【出願日】2019-09-03
【審査請求日】2022-09-05
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591067705
【氏名又は名称】ゼット・エフ・パッシブ・セーフティ・システムズ・ユーエス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・エム・ゴールド
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・クレンク
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・バーコー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・シー・ポペク
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-137403(JP,A)
【文献】特表平11-509150(JP,A)
【文献】特開2000-185618(JP,A)
【文献】特開2010-274898(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0161049(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/214
B60R 21/2338
B60R 21/216
B60R 21/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフおよびキャビンを含む車両のためのモジュールであって、
チャンバを画定し、前記チャンバと流体連通する開口部を含み、前記ルーフ内に配置されるように構成されたハウジングと、
前記チャンバ内に設けられ、前記開口部を通って前記キャビンの中に延びる展開状態に膨張可能であるエアバッグと、
前記開口部を閉じるために、前記ハウジングに旋回可能に連結されたドアであって、展開中の前記エアバッグに対する反作用面を提供するために、前記エアバッグの展開に応答して前記ルーフから離れる方向に旋回可能であり、前記開口部を閉じている間は、第1の長さを有し、前記ルーフから離れる方向に旋回するとき、前記第1の長さよりも大きい第2の長さを有する、ドアと
を備える、モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のモジュールにおいて、前記ドアは、旋回した場合に、前記キャビン内の車両搭乗者に向かって前記エアバッグを導く、モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載のモジュールにおいて、エアバッグ展開中に前記ドアの旋回を制限するための、前記モジュールと前記ドアとに固定されたストラップを更に備える、モジュール。
【請求項4】
請求項1に記載のモジュールにおいて、前記ドアは、第1の端部から第2の端部まで延び、前記ドアが旋回する程度を制限するために、ヒンジが前記第1の端部を前記ハウジングに連結する、モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載のモジュールにおいて、前記ヒンジは強化されている、モジュール。
【請求項6】
請求項4に記載のモジュールにおいて、エアバッグ展開中に前記ドアが旋回する程度を制限するための、前記モジュールと前記ドアとに固定されたストラップを更に備える、モジュール。
【請求項7】
請求項1に記載のモジュールにおいて、前記エアバッグは、前記車両の後方方向に面した搭乗者の後方で展開する、モジュール。
【請求項8】
請求項1に記載のモジュールにおいて、前記ドアは、前記ドアの旋回運動に応答して延びる入れ子式セグメントを備える、モジュール。
【請求項9】
請求項8に記載のモジュールにおいて、前記ドアが前記開口部を閉じている間は、前記セグメントは互いの中に入れ子状になる、モジュール。
【請求項10】
請求項1に記載のモジュールにおいて、エアバッグ展開中に前記ドアが旋回する程度を制限するための、前記モジュールと前記ドアとに連結されたストラップを更に備える、モジュール。
【請求項11】
請求項1に記載のモジュールにおいて、エアバッグ展開中に前記エアバッグを前記ドアに向かって引っ張るための、前記ドアと前記エアバッグとに連結されたテザーを更に備える、モジュール。
【請求項12】
請求項1に記載のモジュールにおいて、前記ドアは、前記車両のルーフライナまたはヘッダの一部として形成される、モジュール。
【請求項13】
請求項1に記載のモジュールにおいて、前記ドアは、前記車両のルーフライナまたはヘッダの周りに旋回可能である、モジュール。
【請求項14】
ルーフおよびキャビンを含む車両のためのモジュールであって、
チャンバを画定し、前記チャンバと流体連通する開口部を含み、前記ルーフ内に配置されるように構成されたハウジングと、
前記チャンバ内に設けられ、前記開口部を通って前記キャビンの中に延びる展開状態に膨張可能であるエアバッグと、
前記開口部を閉じるために、前記ハウジングに旋回可能に連結されたドアであって、入れ子式セグメントを備え、展開中の前記エアバッグに対する反作用面を提供するために、前記エアバッグの展開に応答して前記ルーフから離れる方向に旋回可能であり、前記開口部を閉じている間は、第1の長さを有し、前記ルーフから離れる方向に旋回するとき、前記第1の長さよりも大きい第2の長さを有する、ドアと、
エアバッグ展開中に前記エアバッグを前記ドアに向かって引っ張るために、前記ドアと前記エアバッグとに連結されたテザーと
を備える、モジュール。
【請求項15】
請求項14に記載のモジュールにおいて、前記ドアは、旋回した場合に、前記キャビン内の車両搭乗者に向かって前記エアバッグを導く、モジュール。
【請求項16】
請求項14に記載のモジュールにおいて、前記ドアは、第1の端部から第2の端部まで延び、前記ドアが旋回する程度を制限するために、ヒンジが前記第1の端部を前記ハウジングに連結する、モジュール。
【請求項17】
請求項16に記載のモジュールにおいて、前記ヒンジは強化されている、モジュール。
【請求項18】
請求項14に記載のモジュールにおいて、前記エアバッグは、前記車両の後方方向に面した搭乗者の後方で展開する、モジュール。
【請求項19】
請求項14に記載のモジュールにおいて、前記ドアは、前記車両のルーフライナまたはヘッダの一部として形成される、モジュール。
【請求項20】
請求項14に記載のモジュールにおいて、前記ドアは、前記車両のルーフライナまたはヘッダの周りに旋回可能である、モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は、2018年9月13日に出願された米国仮出願第62/730,581号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本発明は、一般に車両用エアバッグに関し、特にルーフ搭載エアバッグ用の支持構造に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]エアバッグなどの、車両の搭乗者を保護することを支援するための、膨張可能な車両搭乗者保護デバイスを提供することが知られている。エアバッグの特定のタイプの1つは、車両の前座席の搭乗者と車両の計器パネルとの間で膨張可能なフロントエアバッグである。そのようなエアバッグは、運転席用エアバッグまたは助手席用エアバッグであり得る。膨張した場合、運転席用エアバッグおよび助手席用エアバッグは、車両の計器パネルおよび/またはステアリングホイールなどの、車両の部品による衝撃から搭乗者を保護することに役立つ。
【0004】
[0004]助手席用エアバッグは、典型的には、収縮させた状態で、車両の計器パネルに搭載されたハウジング内に格納される。エアバッグのドアは、ハウジングおよび/または計器パネルと連結可能であり、エアバッグを格納状態に囲い込み、隠すのに役立つ。助手席用エアバッグが展開すると、エアバッグのドアが開いてエアバッグが膨張状態に移行することが可能になる。膨張中のエアバッグによってドアに作用する力の結果として、エアバッグのドアが開く。
【0005】
[0005]運転席用エアバッグは、典型的には、収縮させた状態で、車両のステアリングホイールに搭載されたハウジング内に格納される。エアバッグのカバーは、ハウジングおよび/またはステアリングホイールと連結可能であり、エアバッグを格納状態に囲い込み、隠すのに役立つ。運転席用エアバッグが展開すると、エアバッグのカバーが開いてエアバッグは膨張状態に移行することが可能になる。膨張中の運転席用エアバッグによってカバーに作用する力の結果として、エアバッグのカバーが開く。
【0006】
[0006]自動車産業では、車両をより広々とする動向がある。スタイリングにより、計器パネルはより小さくなり、したがって、搭乗者から、より離れるようになってきている。更なる将来を見ると、運転者がいない自律車両は更にもっと広々としている。自律車両は、しばらくの間検討されてきており、現在、その大規模な採用が近づいている。自律車両では、いくつかの構造を排除することができる。
【0007】
[0007]これらの現実を背景として、搭乗者安全システムのパラダイムは変化しなければならない。過去には、車両のオペレータ/運転者の必要性が、ある程度は標準的な車両乗客キャビン構成に寄与していた。米国では、運転者は、前座席で左側にあって前方を向き、車両の制御装置および計器(ステアリングホイール、ペダル、計器パネル、コンソール等)に手が届く搭乗者である。この運転席構成が、車両の残りの部分、すなわち、前座席、前方に面する助手席側搭乗者、後部座席(2列目、3列目等)で前方に面する搭乗者のレイアウトを決定することを支援する。それに応じて、過去には、搭乗者安全システムは典型的には、この乗客キャビンレイアウト、および関連付けられた搭乗者の位置および方向を考慮して設計されていた。
【0008】
[0008]自律車両はオペレータ/運転者を排除し、それにより、通常の形式でそれらの位置および向きを決める必要性は排除される。車両の製造業者は、全てが前方に面する搭乗者などの所定の乗客配置構成、または、ステアリングホイール/計器パネル構成、中央コンソール構成、座席前ペダル制御装置などの車両構造構成に制約されることなく、乗客キャビン空間を自由に活用できる。
【0009】
[0009]これが、エアバッグシステムをどこに配置するかだけでなく、反作用面を見出して、反作用面が衝撃を吸収できるように、反作用面に抗してエアバッグを配置するという難題をも提示する。典型的には、計器パネルおよびステアリングホイールに搭載するフロントエアバッグは、それら構造体をエアバッグが載置される反作用面として利用し、その結果、反作用面は、衝撃を受ける搭乗者の衝撃エネルギーに対向し、和らげ、吸収することができ、所望のライドダウン効果をもたらす。しかし、自律車両では、車両は計器パネルまたはステアリングホイールを全く有しない場合があり、搭乗者は従来の形態とは異なって位置および向きが決められ得る。これにより、車両内の従来の構造を反作用面として利用することは困難または不可能となり得る。
【発明の概要】
【0010】
[0010]一例では、ルーフおよびキャビンを有する車両用のモジュールは、チャンバを画定し、チャンバと流体連通する開口部を含むハウジングを含む。ハウジングは、ルーフ内に配置されるように構成される。エアバッグは、チャンバ内に設けられ、開口部を通ってキャビンの中に延びる展開状態に膨張可能である。ハウジングに旋回可能に連結されたドアは、開口部を閉じる。ドアは、展開中のエアバッグに対する反作用面を提供するために、エアバッグの展開に応答してルーフから離れる方向に旋回可能である。ドアは、開口部を閉じている間は、第1の長さを有し、ルーフから離れる方向に旋回する場合(とき)は、第1の長さよりも大きい第2の長さを有する。
【0011】
[0011]別の例では、ルーフおよびキャビンを有する車両用のモジュールは、チャンバを画定し、チャンバと流体連通する開口部を含むハウジングを含む。ハウジングは、ルーフ内に配置されるように構成される。エアバッグは、チャンバ内に設けられ、開口部を通ってキャビンの中に延びる展開状態に膨張可能である。ハウジングに旋回可能に連結されたドアは、開口部を閉じる。ドアは、入れ子式の部分を有し、展開中のエアバッグに対する反作用面を提供するために、エアバッグの展開に応答してルーフから離れる方向に旋回可能である。ドアは、開口部を閉じている間は、第1の長さを有し、ルーフから離れる方向に旋回する場合(とき)は、第1の長さよりも大きい第2の長さを有する。エアバッグ展開中にエアバッグをドアに向かって引っ張るために、ドアとエアバッグとにテザーが連結される。
【0012】
[0012]本発明の他の目的および利点、ならびにより十分な理解が、以下の詳細な説明および添付の図面から得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】[0013]エアバッグモジュールを有する、例示的なルーフ搭載の搭乗者拘束を含む車両の上面図である。
【
図2】[0014]拘束システムのエアバッグが第1の格納状態にある車両のキャビンの概略図である。
【
図3】[0015]
図3Aは、
図1のエアバッグモジュールの側面図である。[0016]
図3Bは、
図3Aの線3B-3Bに沿った断面図である。
【
図4】[0017]拘束システムのエアバッグが第2の展開状態にある車両のキャビンの概略図である。
【
図5】[0018]ストラップを含む別の例示的な拘束システムの概略図である。
【
図6】[0019]入れ子式ドアおよびテザーを含む別の例示的な拘束システムの概略図である。
【
図7】[0020]
図7Aは、
図6のエアバッグモジュールの入れ子式ドアを更に示す図である。
図7Bは、
図6のエアバッグモジュールの入れ子式ドアを更に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0021]本発明は、一般に車両用エアバッグに関し、特にルーフ搭載エアバッグ用の支持構造に関する。
図1および
図2は、搭乗者拘束システム10の形態の車両安全システムの例を表す。車両20は、中心線22に沿って、第1の端部または前端部24から第2の端部または後端部26に延びている。車両20は、中心線22の両側にある左側面28および右側面30に延びている。車両20の第1の端部24は車室またはキャビン40に面する計器パネル42を含む。計器パネル42とルーフ32との間に、ウィンドシールドまたはウィンドスクリーン44が位置し得る。
【0015】
[0022]車両20は自律車両とすることができ、その場合、キャビン40にはステアリングホイール、ペダル、計器、中央コンソールなどのオペレータ制御装置がない場合がある。それに応じて、キャビン40内の空間を最大化するために、計器パネル42はサイズを縮小するか、または取り除くことができる。
【0016】
[0023]シート50はキャビン40内に配置されている。このオープン乗客キャビン40の構成では、車両シート50は、車両の運転者/オペレータを支援する必要性によって制約されることなく、様々な形で構成、位置付け、および配置され得る。例えば、
図2では、シート50は前列52および後列54に、それぞれ互いに対向して、前列が後列に向かって後方に面して配置され得る。代替として、前列52および後列54は両方とも、通常の自動車と同様に、前方に面する形(図示せず)で配置され得る。いずれの場合も、各シート50はシートバック51を含み、その搭乗者60を拘束するシートベルト56が取り付けられている。搭乗者60はシートバック51から離れる方向に面する。環境制御、GPS、ナビゲーション、娯楽等のための制御インタフェースが、例えば、前列52および/または後列54の搭乗者60の間に位置する、車両20の中央コンソール領域に設けられ得る。
【0017】
[0024]
図2の通常とは異なる前方-後方のシート配置において、前面衝突の場合、前方に面する後列54の搭乗者60は、その対応するシートベルト56によって拘束される。後方に面する前列52の搭乗者60は、前面衝突では、車両シート50のバックシートによって支持される。これが理由で、シート50は、衝突時に搭乗者60を支持するように構成されていなければならない。後列54の前方に面する搭乗者60にとっては、シートベルト56がある程度の拘束をもたらす。しかし、両方の列52、54にとって、頭および首を支持する追加の拘束を含むことが望ましい。
【0018】
[0025]前列52は、前方に面する必要がなく、計器パネル42に、または計器パネルが通常存在する場所に、極めて接近している必要がないので、前列52と、前列に面する提示された前方のキャビン構造との間に大容積の空間が存在し得る。これが理由で、この位置からエアバッグを展開することは、エアバッグが占める必要があるであろう大容積ゆえに効率的でない場合がある。このことは、そのような大容積を占めるエアバッグおよびインフレータの大きさを決める際に問題となり、また、衝突シナリオにおいて、搭乗者を保護するのに要求される、必要な短時間で、そのような大容積の中にエアバッグを展開させる際に問題となり得る。
【0019】
[0026]したがって、自律車両によって可能になる様々な乗客シート構成が、通常のエアバッグ保護の概念に難題をもたらし得ることが明らかである。更には、エアバッグが、搭乗者を押圧することに応答した運動に抗して、展開されたエアバッグを支持する構造(例えば、反作用面)を必要とするので、計器パネルなどの、反作用面として機能する典型的な車両基本構成の不存在が追加の難題をもたらす。
【0020】
[0027]これを念頭に置き、
図1および
図2に示す搭乗者拘束システム10は、車両20のルーフ32に沿って配置するための、少なくとも1つのエアバッグモジュール100を含む。各エアバッグモジュール100は、膨張可能なカーテンエアバッグ120およびエアバッグに膨張流体を供給するためのインフレータ122の形態の、車両搭乗者保護装置を含む。
【0021】
[0028]エアバッグが保護することを支援するように意図された搭乗者60に対して、希望するだけ近接した位置にエアバッグを配置することができるので、エアバッグモジュール100を車両ルーフ32内に搭載することは好都合である。これが、エアバッグの必要な膨張可能容積を減らすことに役立つことができ、また、過度に大容積のインフレータを必要とすることなく、所望のエアバッグ展開時間を提供することに役立つことができる。エアバッグモジュール100は、例えばルーフライナ70の裏側の、車両20のルーフ構造内に収容/隠されている。エアバッグ120は、ルーフライナ70の後ろのエアバッグモジュール100内に配置される前に、巻かれている、および折り畳まれている、のうちの少なくとも1つである。
【0022】
[0029]インフレータ122はエアバッグ制御装置130(
図2参照)に動作可能に(例えば、ワイヤにより)接続され、エアバッグ制御装置130は、1つまたは複数の衝突センサ(図示せず)を含むか、または1つまたは複数の衝突センサと通信する。エアバッグ制御装置130は、衝突事象の発生を判定し、エアバッグ120を膨張させるための既知の方法でインフレータ122を作動させるよう動作可能である。インフレータ122は、ストアードガス式、固体推進薬式、拡張式(augmented)またはハイブリッド式などの任意の既知の種類であり得る。
【0023】
[0030]エアバッグ120は、ナイロン(例えば、ナイロン6-6糸を織ったもの)などの任意の好適な材料から構成することができ、任意の好適な方法で構成してもよい。例えば、主エアバッグ70は材料の1つまたは複数の部品またはパネルを含み得る。2つ以上の部品またはパネルが使用される場合は、部品またはパネルは、縫製、超音波溶接、熱接合、または接着剤などの既知の手段によって相互連結されてエアバッグ120が形成され得る。エアバッグ120は、未被覆であるか、気体不透過性ウレタンなどの材料で被覆されているか、または気体不透過性フィルムなどの材料で積層され得る。したがって、エアバッグ120は気密な、または実質的に気密な構造を有し得る。当業者は、ポリエステル糸などの代替の材料、およびシリコーンなどの代替の被覆材を使用してエアバッグ120を構成してもよいことを理解するであろう。
【0024】
[0031]搭乗者拘束システム10は、ルーフ32に沿って、かつルーフライナ70の内部に、各列52、54内の各シート50に関連付けられ位置合わせされた場所に設けられた複数のエアバッグモジュール100を含み得る。換言すれば、車両20内の各シート50は、それに関連付けられた個々のエアバッグモジュール100を有することができ、したがって、各シートは、各シートに関連付けられ位置合わせされた個々のエアバッグ100(および対応するインフレータ122)を有することができる。
【0025】
[0032]複数のエアバッグモジュール100が、前列52に平行な第1の線に沿って、かつ前列52の後方に、互いに位置合わせされており、中心線101は第1の線に垂直に延びている。複数のエアバッグモジュール100はまた、後列54に平行な第2の線に沿って、かつ後列54の前方に、互いに位置合わせされており、中心線101は第2の線に垂直に延びている。いずれの場合でも、モジュール100の列はシート50の列52または54の前で、これらシート内の搭乗者60が面するであろう方向(すなわち、前列の後方、および後列の前方)に配置される。
【0026】
[0033]
図3Aおよび
図3Bを更に参照すると、各モジュール100は略矩形であるか、または別の幾何学的形状を有することができる。いずれにせよ、モジュール100は中心線101に沿って延び、チャンバ104を画定するハウジング102を含む。開口部106は、ハウジング102を通って延び、チャンバ104と流体連通する。エアバッグ120は、チャンバ104の内部に格納される前に、巻かれている、および折り畳まれている、のうちの少なくとも1つである。ドア108が、ハウジング102に連結された第1の端部110から、第2の端部112に延びている。一例では、ヒンジ150が第1の端部110をハウジング102に旋回可能に連結する。
【0027】
[0034]ドア108は、開口部106を閉じ、ハウジング102と協働してエアバッグ120をチャンバ104の内部に閉じ込めている、初期状態を有する。ドア108は、ハウジング102に連結された別個の構成要素であって、ルーフライナ70とは別である(図示するように)か、またはルーフライナ70の一部を形成し得る(図示せず)。いずれの場合でも、エアバッグモジュール100は同一であり、したがって、簡潔にするために、各列52、54内の1つのシート50に関連付けられた1つだけのエアバッグモジュールの構成および動作を議論する。
【0028】
[0035]
図4に示すように、車両衝突などの、エアバッグ120の膨張が望まれる事象の発生が検知された時点で、制御装置130はインフレータ122のうちの1つに信号を伝達する。より具体的には、制御装置130は、後方の車両衝突に応答して、前列52に関連付けられたインフレータ122を作動させ、前方の車両衝突に応答して、後列54に関連付けられたインフレータを作動させる。ゆえに、
図4では列52、54の両方に関連付けられたエアバッグ120が膨張し展開されているが、前述の衝突方向に基づき1つだけが展開されることが理解されよう。
【0029】
[0036]制御装置130からの信号を受信した時点でインフレータ122が作動され、既知の方法で、エアバッグ120の膨張可能な容積に膨張流体を供給する。膨張中のエアバッグ120は対応するドア108に力を及ぼし、ドアを開放状態に移行させる。これにより、エアバッグ120は解放され、対応するそのハウジング102内のその格納状態からキャビン40内の展開状態に膨張する。膨張している間、エアバッグ120は搭乗者の衝撃を吸収することにより、車両搭乗者60を保護することに役立つ。
【0030】
[0037]シート50の後列54に関連付けられたモジュール100に関しては、展開中のエアバッグ120の各々が、関連付けられたドア108を、概ねR1で示す方向に後列の搭乗者60から離れるようにヒンジ150の周りを旋回させる。この旋回により、各エアバッグ120は、後列54の関連付けられたシート50に向かって、(図示するように)下向きに、そのシート内の搭乗者60の前方に展開することが可能になる。
【0031】
[0038]後列54に向かうエアバッグ120の展開は旋回したドア108によって制限される。より具体的には、ドア108とハウジング102との間のヒンジ150による連結は、ドアが所定の角度だけ旋回してから停止し、展開中のエアバッグ120に対して反作用面を提供するようになっている。これは、前方に面した、後列54の関連付けられた搭乗者60の前に、各エアバッグ120を規定された形態で確実に展開させることに役立つ。一例では、ドア108は、開口部106が閉じた初期状態から、R1のように約90°旋回する。展開中のエアバッグ120に所望の程度の抵抗を付与するために、ヒンジ150の強さを増加または減少させることができる。
【0032】
[0039]同様に、前列52に関連付けられた各モジュール100については、展開中のエアバッグ120の各々が、関連付けられたドア108を、概ねR2で示す方向に前列52の搭乗者60から離れるように旋回させる。より具体的には、ドア108は、第1の端部110をハウジング102に連結するヒンジ152の周りに旋回する。ヒンジ152は、ヒンジ150と同一であるが、明確にするために異なる参照番号を付与する。いずれの場合でも、この旋回により、各エアバッグ120は、前列52の関連付けられたシート50に向かって、(図示するように)下向きに、かつそのシート内の搭乗者60の後方に展開することが可能になる。
【0033】
[0040]前列52に向かうエアバッグ120の展開は旋回したドア108によって制限される。より具体的には、ドア108とハウジング102との間の連結は、ドアが所定の角度だけ旋回してから停止し、展開中のエアバッグ120に対して反作用力/反作用面を提供するようになっている。これは、後方に面した、前列52の関連付けられた搭乗者60の前に、各エアバッグ120を規定した形態で確実に展開させることに役立つ。一例では、ドア108は、開口部106を閉じた初期状態から、R2のように約90°旋回する。展開中のエアバッグ120に所望の程度の抵抗を付与するために、ヒンジ152の強さは増加または減少させることができる。
【0034】
[0041]両方の状態において、通常は既存の車両基本構成(例えば、計器パネルまたはウィンドシールド)によって提供される反作用面の代わりに、ドア108およびヒンジ150、152が協働して、展開中のエアバッグ120に対する反作用面を提供する。ドアは代替として、別個の構成要素の代わりに、ルーフ32、ルーフライナ70、または車両20のヘッダ(図示せず)の一部によって形成できることが理解されよう。ドアはまた、ルーフライナ70またはヘッダに固定され、それらの周りに旋回可能であり得る。別の構成の例では、ヒンジ150、152は、ドアのR1のような旋回運動を制限するために強化され得る(図示せず)。
【0035】
[0042]
図5に示す別の例では、搭乗者拘束システム10a内の各モジュール100aは第1の端部162および第2の端部164を有する非伸長性のテザーまたはストラップ160を含む。第1の端部162はドア108に固定され、第2の端部164はハウジング102に固定される。代替として、ストラップ160はルーフライナ70(図示せず)に固定され得る。
【0036】
[0043]それにも関わらず、ストラップ160はドア108のR1のような(後列54に関連付けられたモジュール100aに対して)、またはR2のような(前列52に関連付けられたモジュールに対して)旋回運動を制限する。一例では、ドア108は、R1またはR2のような約90°の旋回運動に制限される。ストラップ160の長さおよび取り付け点は、エアバッグ120が規定した形態で展開するように、ドア108の旋回運動を制限するように構成され得る。換言すれば、ドア108は展開中のエアバッグ120に対する反作用面として機能する。
【0037】
[0044]
図6から
図7Bに示す別の搭乗者拘束システム10bの例では、ドアは複数の入れ子式チューブまたはセグメント180、182、184から形成された入れ子式ドア108aである。ドア108aは、エアバッグ120を展開する前は、最初は、ハウジング102内の開口部106を覆っている畳み込まれた状態(
図7A)にある。この状態では、チューブ180、182、184は互いの中に入れ子状になっており、その結果、チューブ182、184はチューブ180の端部を長手方向に越えて延びることはない。
【0038】
[0045]エアバッグ120が展開してドア108aのR1またはR2のような旋回が生じると、チューブ180、182、184は自動的にTのように外側に入れ子式に延びて伸長状態になる。換言すれば、ドア108aは、畳み込まれた状態のときは第1の長さL1を有し、ドアが伸長状態に至ったときは、第1の長さよりも大きな第2の長さL2を有する。その結果、伸長したドア108aはハウジング102内の開口部106よりも大きい/長い。これにより、伸長したドア108aが、展開中のエアバッグ120に対して、より長い反作用面を提供し、それにより展開の方向を導くことに更に役立つことが可能になる。
【0039】
[0046]任意選択のテザー186が、最後のチューブ184およびエアバッグ120に固定され得る。テザー186は展開中のエアバッグ120をドア108aに向かって引っ張る。したがって、ドア108aおよびテザー186は協働してエアバッグ120の展開を制御する。しかし、伸長したドア108aが単独で、展開中のエアバッグ120に対する反作用面を提供するように、テザー186は省略できることが理解されよう。その上、ドア108aのR1のような旋回運動を制限するために、テザー186は代替として、ドア108aおよびモジュール100bに、またはドアおよび車両20に固定され得る。
【0040】
[0047]上記で説明したことは本発明の例である。もちろん、本発明を説明する目的のために、構成要素または手法のあらゆる考えられる組み合わせを説明することは可能ではないが、当業者は、本発明の多くの更なる組み合わせ、および入れ替えが可能であることを理解するであろう。それに応じて、本発明は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲に含まれる、全ての変更、修正、および変形を包含するように意図されている。例えば、強化されたヒンジ、ストラップ、テザー、および/または入れ子式ドアの任意の組み合わせを使用して、エアバッグが、エアバッグモジュールからルーフを貫通し車両の搭乗者に向かって展開する際に、エアバッグ用の反作用面を提供できると理解されよう。
【符号の説明】
【0041】
10 搭乗者拘束システム
10a 搭乗者拘束システム
10b 搭乗者拘束システム
20 車両
22 中心線
24 第1の端部
26 第2の端部
28 左側面
30 右側面
32 ルーフ
40 キャビン
42 計器パネル
44 ウィンドスクリーン
50 シート
51 シートバック
52 前列
54 後列
56 シートベルト
60 搭乗者
70 ルーフライナ
72 ルーフライナ
100 モジュール
100a モジュール
100b モジュール
101 中心線
102 ハウジング
104 チャンバ
106 開口部
108 ドア
108a ドア
110 第1の端部
112 第2の端部
120 エアバッグ
122 インフレータ
130 制御装置
150 ヒンジ
152 ヒンジ
160 ストラップ
162 第1の端部
164 第2の端部
180 チューブ
182 チューブ
184 チューブ
186 テザー