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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】医用診断システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20230905BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
A61B6/03 321G
A61B5/055 320
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019167721
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021041093
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手塚 明
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-023545(JP,A)
【文献】特開2018-130378(JP,A)
【文献】特開2011-240066(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109363701(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に移動可能なガントリと、
前記ガントリ内に設けられ、立位の状態の被検体を撮像する立位モードと、座位の状態の前記被検体を撮像する座位モードのいずれかのモードで前記被検体を撮像可能な撮像部と、
前記ガントリの移動範囲に位置する物体を検知可能であり、前記立位モードと前記座位モードとで検知範囲を異ならせる検知部と、
前記検知部による検知結果に応じて、前記ガントリの移動を制御する移動制御部と、
を備える医用診断システム。
【請求項2】
記検知部は、前記立位モードの場合には前記ガントリに設けられ、前記被検体を収容する開口部に沿った空間領域である第1の検知範囲に位置する前記物体を検知し、前記座位モードの場合には前記第1の検知範囲の一部が除外された第2の検知範囲に位置する前記物体を検知する、
請求項1に記載の医用診断システム。
【請求項3】
前記第1の検知範囲は、前記ガントリと床面との間の空間における前記開口部に沿った円筒状の空間領域であり、
前記第2の検知範囲は、前記第1の検知範囲における前記被検体の前後方向に位置する部分が除外された領域である、
請求項2に記載の医用診断システム。
【請求項4】
前記検知部は、前記ガントリの開口部に沿って設置された1以上のレーザセンサであり、
前記移動制御部は、前記立位モードにおいて前記1以上のレーザセンサによって前記第1の検知範囲に位置する前記物体が検知された場合には、前記ガントリを移動せず、前記座位モードにおいて前記1以上のレーザセンサによって前記第2の検知範囲に位置する前記物体が検知された場合には、前記ガントリを移動しない、
請求項2に記載の医用診断システム。
【請求項5】
前記1以上のレーザセンサの各々は、前記ガントリの開口部に沿って設置された1つの投光部と、前記ガントリに対向する床面に設置された1つの受光部とを備える、
請求項4に記載の医用診断システム。
【請求項6】
前記検知部は、前記第1の検知範囲または前記第2の検知範囲に位置する前記物体と前記ガントリとの間の距離を計測する1以上の測距センサであり、
前記移動制御部は、前記ガントリと前記物体との間の距離が閾値以下になった場合に前記ガントリを停止させる、
請求項2または3に記載の医用診断システム。
【請求項7】
前記検知部は、前記第1の検知範囲または前記第2の検知範囲に位置する前記物体と前記ガントリとの間の距離を計測する1以上の測距センサであり、
前記移動制御部は、前記立位モードにおいて前記1以上の測距センサによって前記第1の検知範囲に位置する前記物体が検知された場合には、前記ガントリを移動せず、前記座位モードにおいて前記1以上の測距センサによって前記第2の検知範囲に位置する前記物体が検知された場合には、前記ガントリを移動しない、
請求項2または3に記載の医用診断システム。
【請求項8】
前記ガントリと対向する床面において、前記被検体の前記立位モードにおける立ち位置を含む範囲の外に設置された第1の荷重センサをさらに備え、
前記移動制御部は、前記第1の荷重センサによって荷重が検出された場合には、前記ガントリを移動しない、
請求項2から7のいずれか1項に記載の医用診断システム。
【請求項9】
前記ガントリと対向する前記床面において、前記開口部を前記床面に投影した範囲よりも小さい範囲であって、かつ前記被検体の前記立位モードにおける立ち位置を含む範囲に設置された第2の荷重センサと、
前記第2の荷重センサによって前記被検体の移動または荷重の変動が検知された場合に報知する報知部と、をさらに備える、
請求項8に記載の医用診断システム。
【請求項10】
上下方向に移動可能なガントリと、
前記ガントリ内に設けられ、立位の状態の被検体を撮像する立位モードと、座位の状態の前記被検体を撮像する座位モードのいずれかのモードで前記被検体を撮像可能な撮像部と、
前記立位モードの場合には前記被検体を収容する前記ガントリの開口部に沿った空間領域である第1の検知範囲に位置する物体を検知し、前記座位モードの場合には前記第1の検知範囲の一部が除外された第2の検知範囲に位置する前記物体を検知する検知部と、
前記検知部による検知結果に応じて、前記ガントリの移動を制御する移動制御部と、
を備える医用診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立位や座位などの種々の体位の被検体を撮像するCT装置等の医用診断システムにおいて、ガントリが上下する際に、被検体と接触することを低減する技術が知られている。例えば、床面にガントリの内径よりも小さい径の円筒状のエリアカバー等の防護部材を設置して被検体がガントリの内径からはみ出ることを低減することにより、ガントリと被検体とが接触する可能性を低減する技術がある。また、立位の体勢の被検体を撮像する装置において、被検体がガントリの内径からはみ出ていることをセンサ等により検知する技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-077457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、ガントリが上下移動する医用診断システムにおける安全性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る医用診断システムは、ガントリと、撮像部と、検知部と、移動制御部とを備える。ガントリは、上下方向に移動可能である。撮像部は、ガントリ内に設けられ、立位の状態の被検体を撮像する立位モードと、座位の状態の被検体を撮像する座位モードのいずれかのモードで被検体を撮像可能である。検知部は、ガントリの移動範囲に位置する物体を検知可能であり、立位モードと座位モードとで検知範囲を異ならせる。移動制御部は、検知部による検知結果に応じて、ガントリの移動を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係る立位CTシステムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るガントリの動作の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るガントリおよび支柱の上面図の一例である。
図5図5は、第1の実施形態に係る第1の検知範囲の上面図の一例である。
図6図6は、第1の実施形態に係る立位モードの場合に投光されるレーザ光の一例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る第2の検知範囲の上面図の一例である。
図8図8は、第1の実施形態に係る座位モードの場合に投光されるレーザ光の一例を示す図である。
図9図9は、第1の実施形態に係る立位CTシステムで実行される物体検知処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10図10は、第1の実施形態に係る報知画面の一例を示す図である。
図11図11は、第1の実施形態に係る報知画面の他の一例を示す図である。
図12図12は、第2の実施形態に係る立位CTシステムの構成の一例を示すブロック図である。
図13図13は、第2の実施形態に係る制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
図14図14は、第2の実施形態に係る立位CTシステムで実行される物体検知処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図15図15は、第3の実施形態に係る荷重センサの設置位置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、医用診断システムの実施形態について詳細に説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る立位CT(Computed Tomography)システム1の構成を示すブロック図である。立位CTシステム1は、X線CTシステムであり、本実施形態における医用診断システムの一例である。
【0009】
立位CTシステム1は、被検体Pを撮像可能である。また、本実施形態の立位CTシステム1は、被検体Pを複数の異なる体位で撮像可能である。具体的には、本実施形態の立位CTシステム1は、被検体Pを立位の状態(以下、立位状態という)で撮像する「立位モード」と、被検体Pを座位の状態(以下、座位状態という)で撮像する「座位モード」の2種類の撮像モードを有するものとする。立位状態とは、被検体Pが床面5に起立した状態である。また、座位状態とは、被検体Pが車椅子または椅子(以下、車椅子等という)に座った状態である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係る立位CTシステム1は、架台装置10と、コンソール装置40とを有する。架台装置10とコンソール装置40とは、異なる部屋に設置されても良い。コンソール装置40が設置される部屋を、コンソール室という。立位CTシステム1による撮像中は、技師等の操作者は、コンソール室にいる。
【0011】
コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44とを有する。なお、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40またはコンソール装置40の各構成要素の一部が含まれても良い。
【0012】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、投影データやCT画像データを記憶する。また、例えば、メモリ41は、立位CTシステム1に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。なお、メモリ41は、立位CTシステム1とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されても良い。
【0013】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成された各種の画像を表示したり、操作者から各種の操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。ディスプレイ42は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ42は、デスクトップ型でも良いし、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されても良い。また、ディスプレイ42は、架台装置10に設けられても良い。
【0014】
本実施形態のディスプレイ42は、例えば、立位モードと座位モードのいずれかを操作者が選択可能な選択画面を表示する。また、本実施形態のディスプレイ42は、例えば、後述のレーザセンサ3による検知結果を操作者に報知する報知画面を表示する。ディスプレイ42は、表示部ともいう。
【0015】
入力インターフェース43は、操作者から各種の入力操作を受け付けて、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インターフェース43は、CT画像データを再構成する際の再構成条件や、CT画像データから後処理画像を生成する際の画像処理条件等の入力操作を操作者から受け付ける。
【0016】
例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース43は、架台装置10に設けられても良い。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0017】
また、入力インターフェース43は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、コンソール装置40とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース43の例に含まれる。
【0018】
処理回路44は、立位CTシステム1全体の動作を制御する。例えば、処理回路44は、スキャン制御機能441、画像生成機能442、および表示制御機能443を備える。スキャン制御機能441は、スキャン制御部の一例である。画像生成機能442は画像生成部の一例である。表示制御機能443は、表示制御部の一例である。
【0019】
スキャン制御機能441は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路44の各種機能を制御する。また、スキャン制御機能441は、架台装置10で行なわれるCTスキャンを制御する。例えば、スキャン制御機能441は、X線管装置11、X線検出器12、X線高電圧装置14、制御装置15、およびDAS18を制御することで、架台装置10における投影データの収集処理を制御する。また、例えば、スキャン制御機能441は、操作者から立位モードまたは座位モードの選択操作を受け付けた場合、選択されたモードを架台装置10の制御装置15に通知する。
【0020】
画像生成機能442は、DAS21から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施したデータを生成する。なお、前処理を施す前のデータ(検出データ)および前処理後のデータを総称して投影データと称する場合もある。また、例えば、画像生成機能442は、CT画像データを生成する。具体的には、画像生成機能442は、前処理後の投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データを生成する。また、画像生成機能442は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、CT画像データを任意断面の断層像データや3次元画像データに変換する。
【0021】
表示制御機能443は、CT画像、または各種の画像データをディスプレイ42に表示する。また、表示制御機能443は、例えば、立位モードまたは座位モードの選択画面、または、検知結果の報知画面等をディスプレイ42に表示する。
【0022】
図1に示す立位CTシステム1においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ41へ記憶されている。処理回路44は、メモリ41からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路44は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0023】
なお、図1においては、スキャン制御機能441、画像生成機能442、および表示制御機能443の各処理機能が単一の処理回路44によって実現される場合を示したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、処理回路44は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路44が有する各処理機能は、単一または複数の処理回路に適宜に分散または統合されて実現されても良い。
【0024】
架台装置10は、X線管装置11と、X線検出器12と、ガントリ13と、X線高電圧装置14と、制御装置15と、ウェッジ16と、コリメータ17と、DAS(Data Acquisition System)18と、投光部30a~30nと、支柱19a,19bと、水平材20とを有する。また、架台装置10が設置された床面5には、受光部31a~31nが設けられる。
【0025】
支柱19a,19b(以下、特に区別しない場合は単に支柱19という)は、床面5に対して垂直に設けられ、ガントリ13を支持する。また、支柱19の内部には、制御装置15が設けられる。支柱19は、例えば、ガントリ13を上下方向に移動させる駆動機構191a,191b(以下、特に区別しない場合は単に駆動機構191という)と、上下方向に延伸する不図示のレールと、を備える。
【0026】
駆動機構191は、例えば、モータおよびアクチュエータ等を備え、制御装置15からの制御の下、ガントリ13を移動または停止させる。また、駆動機構191は、制御装置15からの制御の下、ガントリ13内の回転フレームを回転させる機能を有しても良い。
【0027】
水平材20は、支柱19aと支柱19bの間に渡された、床面5と水平な部材である。
【0028】
ガントリ13は、内部にX線管装置11と、X線検出器12と、ガントリ13と、X線高電圧装置14と、制御装置15と、ウェッジ16と、コリメータ17と、DAS(Data Acquisition System)18とを備える。また、ガントリ13は、円筒状の空洞131を有している。空洞131はガントリ13を上下に貫通しているため、ガントリ13の上下にそれぞれ開口部が設けられている。ガントリ13は、ガントリドームまたは架台本体等ともいう。なお、本実施形態で「円筒状」という場合には、円筒の軸に直交する断面が楕円状となるものを含むものとする。また、「円状」という場合にも、楕円状を含むものとする。
【0029】
ガントリ13は、上下方向に移動可能であり、例えば、駆動機構191によって、支柱19に設けられたレール上を上下に移動する。例えば、ガントリ13は、下方の開口部から、被検体Pを収容する。なお、ガントリ13の移動の手段は、図1に示す例に限定されるものではない。また、図1では、駆動機構191は支柱19に設けられるものとしたが、ガントリ13に設けられても良い。
【0030】
ここで、ガントリ13の動作について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態に係るガントリ13の動作の一例を示す図である。
【0031】
ガントリ13は、撮像に使用されていないときは、図2の一番左の図に示すように、上方に位置する。この状態で、被検体Pがガントリ13の中央の下方に位置する撮像可能範囲132に移動する。
【0032】
また、図2の中央の図は、ガントリ13が支柱19の上下方向の略中央位置まで下降した状態を示す。ガントリ13がこの状態までの移動を「ハーフストローク」という。
【0033】
また、図2の一番右の図は、ガントリ13が上下方向の下限位置まで下降した状態を示す。ガントリ13がこの状態までの移動を「フルストローク」という。
【0034】
ガントリ13の移動範囲は、被検体Pの体位に応じて異なる。立位モードの場合は、ガントリ13の移動範囲はフルストロークであり、座位モードの場合は、ガントリ13の移動範囲はハーフストロークである。
【0035】
撮像可能範囲132は、立位モードでの撮像時に被検体Pが位置すべき範囲であり、被検体Pの立ち位置ともいう。床面5における撮像可能範囲132の位置は、ガントリ13の空洞131の開口部と対向する位置である。また、撮像可能範囲132の径の大きさは、ガントリ13の空洞131の径の大きさ以下である。立位状態の被検体Pが撮像可能範囲132に位置する場合に、ガントリ13がフルストロークの移動をした場合、被検体Pの全身が空洞131内に入る。
【0036】
また、座位モードでの撮像時は、被検体Pは車椅子等に座った状態で、撮像可能範囲132に位置する。この場合、被検体Pが撮像可能範囲132の中央に位置しても、被検体Pの脚または車椅子等が撮像可能範囲132の外に出る場合がある。このため、座位モードでの撮像時は、ガントリ13はフルストロークはせず、ハーフストロークで移動する。
【0037】
被検体Pが座位状態である場合に、ガントリ13がハーフストロークの移動をした場合、被検体Pの上半身が空洞131内に入る。また、ハーフストロークにおける最も低い位置でガントリ13が停止した場合に、ガントリ13の最下部の高さは、車椅子等、および車椅子等に座った状態の被検体Pの脚等に接触しない高さであるものとする。
【0038】
図1に戻り、X線管装置11は、X線管と偏向部とを有する。X線管は、電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極から陽極に向けて熱電子を照射して、陽極の焦点においてX線を放出することで、被検体Pに対し照射するX線を発生する。例えば、X線管には、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。
【0039】
偏向部は、陰極から照射される熱電子を偏向させることで、熱電子の入射方向を変化させ、陽極における焦点の位置を変化させる。すなわち、偏向部は、陽極から放出されるX線の方向を変更する。
【0040】
X線検出器12は、X線を検出する検出素子を複数有する。X線検出器12における各検出素子は、X線管装置11から照射されて被検体Pを通過したX線を検出し、検出したX線量に対応した信号をDAS18へと出力する。
【0041】
また、X線管装置11とX線検出器12とは、ガントリ13内で回転フレームに支持され、空洞131の周囲を回転しながら被検体PへのX線の照射、および被検体Pを通過したX線の検出をしても良い。
【0042】
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)および整流器等の電気回路を有し、X線管装置11に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管装置11が発生するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であっても良いし、インバータ方式であっても良い。
【0043】
ウェッジ16は、X線管装置11から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管装置11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管装置11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ16は、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウム等を加工したフィルタである。
【0044】
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。なお、コリメータ17は、X線絞りと呼ばれる場合もある。また、図1においては、X線管装置11とコリメータ17との間にウェッジ16が配置される構成を示すが、X線管装置11とウェッジ16との間にコリメータ17が配置される構成であっても良い。
【0045】
DAS18は、X線検出器12が有する各検出素子によって検出されるX線の信号を収集する。例えば、DAS18は、各検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS18は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0046】
DAS18が生成したデータは、ガントリ13に設けられた送信機および受信機を介して、コンソール装置40へと転送される。DAS18と送信機および受信機との通信手段は例えば光通信を採用できるが、非接触型の他のデータ伝送方式を採用しても良いし、接触型のデータ伝送方式を採用しても良い。
【0047】
なお、X線管装置11とX線検出器12は、本実施形態における撮像部の一例である。あるいは、X線管装置11、X線検出器12、X線高電圧装置14、ウェッジ16、コリメータ17、およびDAS18を撮像部の一例としても良い。撮像部を構成する上記の各構成は、立位モードの場合には、立位状態の被検体Pを撮像し、座位モードの場合には、座位状態の被検体Pを撮像する。
【0048】
投光部30a~30n(以下、特に区別しない場合は単に投光部30という)は、ガントリ13に設けられる。例えば、投光部30a~30nは、ガントリ13の開口部に沿って設置される。より詳細には、投光部30a~30nは、空洞131に面したガントリ13の内壁に、空洞131を囲むように円状に設置される。また、投光部30a~30nは、下方に向けてレーザ光32a~32n(以下、特に区別しない場合は単にレーザ光32という)を投光する。なお、図1では説明のためにレーザ光32を図示しているが、レーザ光32は可視光でなくとも良い。
【0049】
受光部31a~31nは、ガントリ13の開口部を床面5に投影した円状の範囲に沿って、床面5に設置される。受光部31a~31nは、投光部30a~30nから投稿されたレーザ光32a~32nを受光し、受光結果を制御装置15に送出する。
【0050】
投光部30a~30nと、受光部31a~31nとは、レーザセンサ3a~3nを構成する。具体的には、投光部30a~30nの各々は、床面5に設置された受光部31a~31n(以下、特に区別しない場合は単に受光部31という)の各々と対になっており、1対の投光部30と受光部31とが、1つのレーザセンサ3を構成する。
【0051】
図1に示す例では、投光部30aと、投光部30aに対向する受光部31aとが1つのレーザセンサ3aを構成し、投光部30nと、投光部30nに対向する受光部31nとが1つのレーザセンサ3nを構成する。すなわち、レーザセンサ3a~3nは、ガントリ13の開口部に沿って設置される。レーザセンサ3は、本実施形態における検知部の一例である。なお、個々のレーザセンサ3a~3nを検知部の一例としても良いし、全てのレーザセンサ3a~3nを総称して1つの検知部としても良い。なお、ガントリ13に設けられた投光部30を、検知部の一例としても良い。
【0052】
レーザセンサ3は、ガントリ13の移動範囲に位置する物体を検知可能であり、被検体Pの体位に応じて検知範囲を変更する。より詳細には、レーザセンサ3は、ガントリ13が下降を開始する前に、ガントリ13の下方に位置する物体を検知する。本実施形態において、“物体”という場合は、被検体Pを含むものとする。具体的には、レーザセンサ3は、投光部30と受光部31との間に位置する物体を検知する。
【0053】
例えば、投光部30aと、受光部31aとの間に物体が存在しない場合、受光部31aは、投光部30aが投光したレーザ光32aを受光する。投光部30aと受光部31aとの間に物体が存在する場合は、レーザ光32aが遮られるため、受光部31aは投光部30aが投光したレーザ光32aを受光しない。なお、投光部30、受光部31、およびレーザセンサ3の数は、特に限定されるものではない。また、レーザセンサ3による物体検知の手法は公知の技術を採用することが可能であり、特に限定されるものではない。
【0054】
図1に示す例では、受光部31は、床面5に埋め込まれており、床面5と受光部31の表面とが段差がなく、平坦な状態になっている。なお、受光部31の設置態様は、これに限定されるものではない。
【0055】
また、レーザセンサ3a~3nの各々は、制御装置15の制御の下、有効状態と無効状態を個別に切り替え可能である。無効状態となったレーザセンサ3は、物体の検知をしない。このため、制御装置15がレーザセンサ3a~3nのうち、いずれのレーザセンサ3を有効状態にするかによって、レーザセンサ3a~3nの検知範囲が変化する。被検体Pの体位に応じた検知範囲の変更の詳細については後述する。
【0056】
制御装置15は、レーザセンサ3による検知結果、またはコンソール装置40からの指示等に基づいて駆動機構191を制御することにより、ガントリ13の動作を制御する。なお、図1では制御装置15は支柱19に設けられるものとしたが、制御装置15はガントリ13またはコンソール装置40に設けられても良い。
【0057】
次に、制御装置15の機能の詳細について説明する。図3は、本実施形態に係る制御装置15の構成の一例を示すブロック図である。
【0058】
図3に示すように、制御装置15は、メモリ151と、処理回路152とを有する。なお、制御装置15は、さらにディスプレイまたは入力インターフェースを備えても良い。
【0059】
メモリ151は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ151は、例えば、制御装置15に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。
【0060】
処理回路152は、取得機能1521と、検知制御機能1522と、移動制御機能1523と、報知機能1524とを備える。取得機能1521は取得部の一例である。検知制御機能1522は、検知制御部の一例である。移動制御機能1523は、移動制御部の一例である。報知機能1524は、報知部の一例である。なお、処理回路152を移動制御部の一例としても良いし、制御装置15を移動制御部の一例としても良い。
【0061】
制御装置15においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ151へ記憶されている。処理回路152は、メモリ151からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路152は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0062】
なお、図3においては、取得機能1521、検知制御機能1522、移動制御機能1523、および報知機能1524の各処理機能が単一の処理回路152によって実現される場合を示したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、処理回路152は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路44が有する各処理機能は、単一または複数の処理回路に適宜に分散または統合されて実現されても良い。
【0063】
取得機能1521は、コンソール装置40から、各種の制御信号を取得する。例えば、取得機能1521は、撮像開始に伴うガントリ13の移動を指示する制御信号を取得する。取得機能1521は、ガントリ13の移動を指示する制御信号を取得した場合、ガントリ13の移動の指示を、検知制御機能1522と、移動制御機能1523とに送出する。
【0064】
また、取得機能1521は、コンソール装置40から、モードの選択結果、すなわち立位モードと座位モードのいずれが操作者によって選択されたかを通知する信号を取得する。あるいは、取得機能1521は、フルストロークとハーフストロークのいずれかを指示する信号を、コンソール装置40から取得しても良い。取得機能1521は、モードの選択結果を取得した場合、取得したモードの選択結果を検知制御機能1522と、移動制御機能1523とに送出する。
【0065】
また、取得機能1521は、レーザセンサ3から、検知結果を取得する。取得機能1521は、取得した検知結果を、移動制御機能1523と、報知機能1524とに送出する。
【0066】
検知制御機能1522は、被検体Pの体位に応じて、レーザセンサ3の検知範囲を変更する。より詳細には、検知制御機能1522は、取得機能1521によって取得されたガントリ13の移動の指示およびモードの選択結果に応じて、レーザセンサ3の有効状態と無効状態とを切り替える。例えば、ガントリ13の移動の指示を受ける前、つまり通常時は、全てのレーザセンサ3が無効状態であるものとする。そして、検知制御機能1522は、ガントリ13の移動の指示を受けた場合に、モードの選択結果に応じて、全てまたは一部のレーザセンサ3を有効状態に切り替える。
【0067】
ここで、図4~8を用いて、被検体Pの体位に応じた検知範囲の変更の詳細について説明する。図4は、本実施形態に係るガントリ13および支柱19の上面図の一例である。
【0068】
図4に示す例では、ガントリ13の開口部に沿って、12個の投光部30a~30lが空洞131を囲むように円状に設置されている。図4では、上方が架台装置10の正面方向を示し、下方が架台装置10の背面方向を示すものとする。なお、図4に示す投光部30の数および設置位置は一例であり、これに限定されるものではない。なお、図4では省略しているが、投光部30a~30lの各々に対応する12個の受光部31が、床面5に設けられているものとする。すなわち、ガントリ13の開口部に沿って、12個のレーザセンサ3a~3lが空洞131を囲むように円状に設置されている。
【0069】
まず、立位モードの場合について説明する。検知制御機能1522は、立位モードの場合には、12個のレーザセンサ3a~3lを全て有効状態にする。この場合、ガントリ13と床面5との間の空間におけるガントリ13の開口部に沿った円筒状の空間領域が、検知範囲となる。該検知範囲を、第1の検知範囲という。
【0070】
図5は、本実施形態に係る第1の検知範囲301の上面図の一例である。図5に示すように、第1の検知範囲301は上方から見ると空洞131を囲む円形状となる。レーザセンサ3は、立位モードの場合には、ガントリ13の下方の第1の検知範囲301に位置する被検体P等の物体を検知する。
【0071】
図6は、本実施形態に係る立位モードの場合に投光されるレーザ光32の一例を示す図である。図6では、被検体Pが撮像可能範囲132内の床面5に立位状態で位置する。投光部30a~30lから照射されたレーザ光32(図6では、レーザ光32a,32b,32i,32j,32kを図示する)が、撮像可能範囲132の周囲を囲む第1の検知範囲301に投光されている。もし、被検体Pの身体が撮像可能範囲132の外に出ている場合、被検体Pの身体がレーザ光32を遮ることにより、レーザセンサ3が第1の検知範囲301に物体(被検体Pを含む)が存在することを検知する。
【0072】
次に、座位モードの場合について説明する。検知制御機能1522は、座位モードの場合には、12個のレーザセンサ3a~3lのうち、一部を有効状態にし、残りを無効状態のままにする。
【0073】
具体的には、検知制御機能1522は、レーザセンサ3a~3lのうち、被検体Pの左右方向に位置するレーザセンサ3を有効状態にする。また、検知制御機能1522は、被検体Pの前後方向(正面方向と背後方向)に位置するレーザセンサ3を無効状態にする。これは、被検体Pが座位状態である場合は、被検体Pの脚や車椅子等の一部が被検体Pの前後方向にせり出すため、撮像可能範囲132からはみ出すためである。すなわち、座位状態の場合、被検体Pの前後方向においては、被検体Pが正常な立ち位置に位置しても、撮像可能範囲132外に被検体Pの身体の一部や他の物体が存在するため、レーザセンサ3による検知の対象としない。また、被検体Pの左右方向においては、座位状態の場合であっても、撮像可能範囲132外に被検体Pの身体の一部や他の物体が存在しないことが正常な状態である。このため、検知制御機能1522は、座位モードの場合も、被検体Pの左右方向のレーザセンサ3は有効状態にする。
【0074】
例えば、被検体Pが架台装置10の正面方向(図面4の上方)を向いて座位状態で撮像される場合、検知制御機能1522は、検知制御機能1522は、レーザセンサ3l,3a,3b,3f,3g,3h(図4で斜線を付したレーザセンサ3)を有効状態にする。また、検知制御機能1522は、レーザセンサ3i,3j,3k,3e,3d,3c(図4でドットを付したレーザセンサ3)を無効状態のままにする。この場合、ガントリ13と床面5との間の空間におけるガントリ13の開口部に沿った円筒状の空間領域のうち、有効状態のレーザセンサ3によって検知可能な範囲が、検知範囲となる。該検知範囲を、第2の検知範囲という。
【0075】
図7は、本実施形態に係る第2の検知範囲302の上面図の一例である。図7に示すように、第2の検知範囲302は、図5に示した第1の検知範囲301の一部が除外された領域である。より詳細には、第2の検知範囲302は、第1の検知範囲301における被検体Pの前後方向に位置する部分が除外された領域である。また、換言すれば、第2の検知範囲は、第1の検知範囲の一部である。
【0076】
図8は、本実施形態に係る座位モードの場合に投光されるレーザ光32の一例を示す図である。図8では、被検体Pが架台装置10の正面方向を向いて座位状態で車椅子6に乗っている。図8に示すように、被検体Pの脚および車椅子6の一部は、撮像可能範囲132の外に出ている。しかしながら、座位モードの場合は、ガントリ13はフルストロークではなくハーフストロークで動作するため、図8に示す撮像可能範囲132の外に出ている被検体Pの脚および車椅子6の一部に接触する位置までは下降しない。
【0077】
有効状態の投光部30l,30a,30b,30f,30g,30hから照射されたレーザ光32(図8では、レーザ光32l,32a,32b,32g,32hを図示する)が、第2の検知範囲302に投光されている。もし、被検体Pの身体が、左右方向において、撮像可能範囲132の外に出ている場合、例えば、車椅子6の位置が撮像可能範囲132から左右方向にずれた位置にある場合は、被検体Pの身体または車椅子6がレーザ光32を遮ることにより、レーザセンサ3は、第2の検知範囲302に物体(被検体Pを含む)が存在することを検知する。
【0078】
なお、図4、7、8においては、被検体Pが架台装置10の正面方向を向いて座位状態で撮像する場合を説明したが、被検体Pの向きはこれに限定されるものではない。例えば、被検体Pは、架台装置10の支柱19aまたは支柱19bの方を向いて(すなわち、架台装置10の正面方向が、被検体Pの左右方向になる向きで)座位状態になっても良い。この場合、検知制御機能1522は、被検体Pの左右方向に位置するレーザセンサ3i,3j,3k,3e,3d,3cを有効状態にする。また、検知制御機能1522は、被検体Pの前後方向に位置するレーザセンサ3l,3a,3b,3f,3g,3hを無効状態にする。また、被検体Pは、架台装置10の正面方向に対して斜めを向いて座位状態になっても良い。
【0079】
座位モードにおける被検体Pの向きは、例えば、操作者が入力インターフェース43から入力するものとしても良い。この場合、取得機能1521がコンソール装置40から被検体Pの向きを取得し、検知制御機能1522に送出する。
【0080】
図3に戻り、移動制御機能1523は、取得機能1521によって取得されたガントリ13の移動の指示、モードの選択結果、およびレーザセンサ3による検知結果に応じて、ガントリ13の移動を制御する。例えば、移動制御機能1523は、被検体Pの体位に応じた検知範囲内で物体が検知された場合に、ガントリ13の移動を許可しないインタロックの機能を備える。
【0081】
具体的には、移動制御機能1523は、立位モードにおいて、ガントリ13の移動の指示を受けた場合であっても、レーザセンサ3によって第1の検知範囲301に位置する物体が検知された場合には、ガントリ13を移動しない。また、移動制御機能1523は、立位モードにおいて、レーザセンサ3によって第1の検知範囲301に位置する物体が検知されない場合には、ガントリ13の移動の指示に従って、駆動機構191を制御することにより、ガントリ13を移動させる。この場合、移動制御機能1523は、例えば、ガントリ13をフルストロークで上下に移動させる。
【0082】
また、移動制御機能1523は、座位モードにおいて、ガントリ13の移動の指示を受けた場合であっても、レーザセンサ3によって第2の検知範囲302に位置する物体が検知された場合には、ガントリ13を移動しない。また、移動制御機能1523は、座位モードにおいて、レーザセンサ3によって第2の検知範囲302に位置する物体が検知されない場合には、ガントリ13の移動の指示に従って、駆動機構191を制御することにより、ガントリ13を移動させる。この場合、移動制御機能1523は、例えば、ガントリ13をハーフストロークで上下に移動させる。
【0083】
報知機能1524は、取得機能1521によって取得されたレーザセンサ3による検知結果に基づいて、第1の検知範囲301または第2の検知範囲302で物体が検知されたことを、報知する。具体的には、報知機能1524は、レーザセンサ3による検知結果に基づいて、第1の検知範囲301または第2の検知範囲302で物体が検知された位置を、コンソール装置40に送信する。例えば、報知機能1524は、有効状態であるレーザセンサ3a~3nのうち、物体を検知したレーザセンサ3を特定する情報を、コンソール装置40に送信する。
【0084】
上記コンソール装置40および制御装置15についての説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。なお、メモリ41またはメモリ151にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0085】
次に、以上のように構成された本実施形態の立位CTシステム1で実行される物体検知処理の流れについて説明する。
【0086】
図9は、本実施形態に係る立位CTシステム1で実行される物体検知処理の流れの一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、例えば、コンソール装置40の入力インターフェース43が、操作者による撮像開始の操作を受け付けた場合に開始する。
【0087】
制御装置15の取得機能1521は、コンソール装置40から、ガントリ13の移動の指示と、モード選択結果とを取得する(S1)。取得機能1521は、取得結果を検知制御機能1522と、移動制御機能1523とに送出する。
【0088】
検知制御機能1522は、取得機能1521によって取得されたモード選択結果が、立位モードまたは座位モードのいずれであるかを判定する(S2)。
【0089】
検知制御機能1522は、立位モードが選択されたと判定した場合(S2“立位モード”)、全てのレーザセンサ3を有効化する(S3)。例えば、図4で説明した例のように、検知制御機能1522は、12個のレーザセンサ3a~3lを全て有効状態にする。
【0090】
そして、取得機能1521は、レーザセンサ3a~3lから、検知結果を取得する(S4)。取得機能1521は、取得した検知結果を、移動制御機能1523と、報知機能1524とに送出する。
【0091】
そして、移動制御機能1523は、レーザセンサ3a~3lが、レーザセンサ3a~3lの検知範囲である第1の検知範囲301で物体を検知したか否かを判定する(S5)。
【0092】
移動制御機能1523は、レーザセンサ3a~3lのうちのいずれかが物体を検知している場合、第1の検知範囲301で物体が検知されたと判定する(S5“Yes”)。この場合、移動制御機能1523は、ガントリ13の移動を許可しない(S6)。
【0093】
また、報知機能1524は、取得機能1521によって取得されたレーザセンサ3による検知結果に基づいて、第1の検知範囲301内で物体が検知されたことを報知する(S7)。例えば、報知機能1524は、レーザセンサ3a~3lのうち、物体を検知したレーザセンサ3を特定する情報を、検知結果としてコンソール装置40に送信する。この場合、コンソール装置40の表示制御機能443は、検知結果に基づく報知画面を、ディスプレイ42に表示する。
【0094】
図10は、本実施形態に係る報知画面420の一例を示す図である。図10に示すように、表示制御機能443は、例えば、有効状態のレーザセンサ3a~3lのうち、物体を検知したレーザセンサ3k,3lを、物体を検知していないレーザセンサ3a~3jとは異なる態様で表示する。表示制御機能443は、物体を検知したレーザセンサ3k,3lの色を変えて表示しても良いし、点滅させても良い。また、表示制御機能443は、報知画面420に、第1の検知範囲301内で物体が検知されたためにガントリ13の移動を許可しないことを操作者に通知するメッセージを表示しても良い。
【0095】
なお、報知画面420は図10に示す例に限定されるものではなく、例えば、表示制御機能443は、架台装置10が設置された部屋に設置された撮像装置によって撮像された、第1の検知範囲301を含む静止画または動画を報知画面420に表示しても良い。この場合、操作者は、第1の検知範囲301内のどの位置にどのような物体が存在するかを、報知画面420上で視認することができる。
【0096】
S7の処理の後は、S4の処理に戻り、第1の検知範囲301で物体が検知されなくなるまで、S4~S7の処理を繰り返す。なお、S7の処理の後、このフローチャートの処理を停止し、操作者による再開操作を受けた場合に処理を再開するものとしても良い。
【0097】
また、移動制御機能1523は、レーザセンサ3a~3lのいずれも物体を検知していない場合、第1の検知範囲301で物体が検知されていないと判定する(S5“No”)。この場合、移動制御機能1523は、ガントリ13の移動を許可する(S8)。
【0098】
そして、立位モードが選択されている場合、移動制御機能1523は、フルストロークでガントリ13を移動させる(S9)。この場合、ガントリ13は、図2の一番右の図に示したように、下限の位置まで下降する。
【0099】
そして、コンソール装置40のスキャン制御機能441は、架台装置10における投影データの収集処理を制御し、立位状態の被検体Pを撮像する撮像処理を実行する(S10)。
【0100】
そして、移動制御機能1523は、撮像処理の終了後、ガントリ13を上昇させて、元の位置に戻す(S11)。
【0101】
また、検知制御機能1522は、座位モードが選択されたと判定した場合(S2“座位モード”)、一部のレーザセンサ3を有効化する(S3)。例えば、図4で説明した例のように、検知制御機能1522は、12個のレーザセンサ3a~3lのうち、被検体Pの左右方向に位置するレーザセンサ3l,3a,3b,3f,3g,3hを有効状態にする。また、検知制御機能1522は、被検体Pの前後方向に位置するレーザセンサ3i,3j,3k,3e,3d,3cを無効状態のままにする。
【0102】
そして、取得機能1521は、有効状態のレーザセンサ3l,3a,3b,3f,3g,3hから、検知結果を取得する(S13)。取得機能1521は、取得した検知結果を、移動制御機能1523と、報知機能1524とに送出する。
【0103】
そして、移動制御機能1523は、レーザセンサ3l,3a,3b,3f,3g,3hが、レーザセンサ3l,3a,3b,3f,3g,3hの検知範囲である第2の検知範囲302内の物体を検知したか否かを判定する(S14)。
【0104】
移動制御機能1523は、レーザセンサ3l,3a,3b,3f,3g,3hのうちのいずれかが物体を検知している場合、第2の検知範囲302内の物体が検知されたと判定する(S14“Yes”)。この場合、移動制御機能1523は、ガントリ13の移動を許可しない(S15)。
【0105】
また、報知機能1524は、取得機能1521によって取得されたレーザセンサ3による検知結果に基づいて、第2の検知範囲302内で物体が検知されたことを報知する(S16)。例えば、報知機能1524は、有効状態であるレーザセンサ3l,3a,3b,3f,3g,3hのうち、物体を検知したレーザセンサ3を特定する情報を、検知結果としてコンソール装置40に送信する。この場合、コンソール装置40の表示制御機能443は、検知結果に基づく報知画面420を、ディスプレイ42に表示する。
【0106】
図11は、本実施形態に係る報知画面420の他の一例を示す図である。図11では、有効状態であるレーザセンサ3l,3a,3b,3f,3g,3hのうち、レーザセンサ3lが物体を検知している。座位モードの場合は、移動制御機能1523は、図11に示すように、有効状態であるレーザセンサ3l,3a,3b,3f,3g,3hのみを表示対象としても良い。また、移動制御機能1523は、無効状態であるレーザセンサ3i,3j,3k,3e,3d,3cを、有効状態であるレーザセンサ3l,3a,3b,3f,3g,3hとは異なる態様で表示しても良い。
【0107】
S16の処理の後は、S13の処理に戻り、第2の検知範囲302で物体が検知されなくなるまで、S13~S16の処理を繰り返す。なお、S16の処理の後、このフローチャートの処理を停止し、操作者による再開操作を受けた場合に処理を再開するものとしても良い。
【0108】
また、移動制御機能1523は、有効状態であるレーザセンサ3l,3a,3b,3f,3g,3hのいずれも物体を検知していない場合、第2の検知範囲302で物体が検知されていないと判定する(S14“No”)。この場合、移動制御機能1523は、ガントリ13の移動を許可する(S17)。
【0109】
そして、座位モードが選択されている場合、移動制御機能1523は、ハーフストロークでガントリ13を移動させる(S18)。この場合、ガントリ13は、図2の中央の図に示したように、支柱19の上下方向の略中央位置まで下降する。
【0110】
そして、コンソール装置40のスキャン制御機能441は、架台装置10における投影データの収集処理を制御し、座位状態の被検体Pを撮像する撮像処理を実行する(S19)。そして、移動制御機能1523は、撮像処理の終了後、ガントリ13を上昇させて、元の位置に戻す(S20)。ここで、このフローチャートの処理は終了する。
【0111】
本実施形態における立位CTシステム1の比較例として、架台装置が設置された床にアクリル製のエリアカバー等の防護部材を設置することにより、被検体がガントリと接触することを低減する技術がある。このような比較例においては、床に防護部材を設置するための床堀工事が必要となるため、立位CTシステムの設置場所の制約になる場合があった。
【0112】
また、上述の比較例においては、エリアカバーに隙間がある場合や、エリアカバーの高さが被検体の身長よりも低い場合、エリアカバーが存在する部分と、エリアカバーが存在しない部分とでX線の収集結果に差異が生じてしまう場合があった。
【0113】
また、上述の比較例においては、例えば、被検体が転倒した場合等に、エリアカバーのエッジに接触してしまい、被検体の身体に負荷をかける可能性があった。また、エリアカバーがあると被検体の動線が制約されるため、エリアカバー内の被検体の容態が急変した場合等の緊急時に、被検体を迅速に移動させることが困難な場合があった。
【0114】
また、座位モードでの撮像の際は、上述の比較例においては、例えば、エリアカバーの一部を開放することにより、被検体の脚または車椅子等がガントリの内径の範囲からはみ出した状態で被検体を固定していた。しかしながら、このような比較例においては、エリアカバーによって車椅子の動線が制約されるため、座位状態の被検体を様々な向きで撮像することは困難な場合があった。
【0115】
また、他の比較例においては、立位の体勢の被検体を撮像する装置において、被検体がガントリの内径からはみ出ていることをセンサ等により検知する技術がある。しかしながら、このような比較例においては検知範囲が固定であるため、被検体の様々な体位に対応することが困難な場合があった。
【0116】
これに対して、本実施形態の立位CTシステム1は、レーザセンサ3の検知範囲を被検体Pの体位に応じて変更し、レーザセンサ3による検知結果に応じて、ガントリ13の移動を制御する。このため、本実施形態の立位CTシステム1によれば、撮像の際の被検体Pの体位に応じたガントリ13の移動範囲に被検体Pまたは他の物体が存在する場合に、該被検体Pまたは他の物体を検知し、検知結果に応じてガントリ13の移動を制御することができる。このため、実施形態の立位CTシステム1によれば、防護部材が設置されていなくとも、ガントリ13が被検体Pに接触する可能性を低減することができる。すなわち、本実施形態によれば、ガントリ13が上下移動する立位CTシステム1における安全性を向上させることができる。
【0117】
また、本実施形態の立位CTシステム1は、立位モードの場合にはガントリ13の開口部に沿った空間領域である第1の検知範囲301に位置する物体を検知し、座位モードの場合には、第1の検知範囲301の一部が除外された第2の検知範囲302に位置する物体を検知する。このため、本実施形態の立位CTシステム1は、立位モードと座位モードで検知範囲を変更することにより、被検体Pが各モードにおける正常な位置からはみ出している場合に、検知することができる。
【0118】
また、本実施形態の立位CTシステム1において、第1の検知範囲301は、ガントリ13と床面5との間の空間におけるガントリ13の開口部に沿った円筒状の空間領域である。また、第2の検知範囲302は、第1の検知範囲301における被検体Pの前後方向に位置する部分が除外された領域である。このため、本実施形態の立位CTシステム1においては、立位モードの場合は被検体Pの全身が撮像可能範囲132からはみ出さないように監視することができると共に、座位モードの場合は、被検体Pの脚または車椅子等が撮像可能範囲132から出ることを許容することができるため、車椅子等に座った状態の被検体Pを撮像することができる。
【0119】
また、本実施形態の立位CTシステム1は、ガントリ13の開口部に沿って設置された1以上のレーザセンサ3を備え、立位モードにおいて、レーザセンサ3によって第1の検知範囲301に位置する物体が検知された場合には、ガントリ13を移動しない。また、本実施形態の立位CTシステム1は、座位モードにおいて、レーザセンサ3によって第2の検知範囲302に位置する物体が検知された場合には、ガントリ13を移動しない。このため、実施形態の立位CTシステム1によれば、被検体Pが各モードにおける正常な位置からはみ出している場合、または、各モードにおけるガントリ13の移動範囲に物体が存在する場合に、ガントリ13が被検体P等の物体に接触することを回避することができる。
【0120】
また、本実施形態の立位CTシステム1において、1以上のレーザセンサ3a~3nの各々は、ガントリ13の開口部に沿って設置された1つの投光部30と、ガントリ13に対向する床面5に設置された1つの受光部31とを備える。このため、本実施形態の立位CTシステム1によれば、ガントリ13と床面5との間の、ガントリ13と接触する可能性のある位置に存在する被検体P等の物体を検出することができる。また、本実施形態の立位CTシステム1においては、被検体Pの上方からレーザ光32を投光するため、被検体Pがレーザ光32を直視する可能性を低減することができる。
【0121】
なお、本実施形態においては、複数のレーザセンサ3a~3nがガントリ13の開口部に沿って設けられるとしたが、レーザセンサ3の数または位置は、上述の例に限定されるものではない。例えば、1つの投光部30が、ガントリ13の開口部に沿って回転しながらレーザ光32を投光する構成を採用しても良い。当該構成を採用する場合、床面5に撮像可能範囲132の外周に沿って設置された複数の受光部31が該レーザ光32を受光することにより、第1の検知範囲301位置する物体の有無を検知する。また、当該構成を採用する場合、座位モードにおいては、移動制御機能1523は、第2の検知範囲302内に位置する物体の検知結果は採用するが、第2の検知範囲302外に位置する物体の検知結果を採用しないものとする。
【0122】
また、本実施形態においては、投光部30はガントリ13の内壁に設けられるものとしたが、投光部30の設置場所はこれに限定されるものではない。また、レーザセンサ3は、架台装置10に含まれるものであっても良いし、架台装置10外に設けられても良い。例えば、投光部30は、ガントリ13の下面における開口部の縁、水平材20、架台装置10が設置された天井、または床面5等に設けられても良い。投光部30が床面5に設けられる場合は、投光部30は、上方にむけてレーザ光32を投光する。この場合、受光部31は、例えば、ガントリ13の内壁、ガントリ13の下面における開口部の縁、水平材20、または架台装置10が設置された天井等に設けられても良い。投光部30は、上方にむけてレーザ光32を投光する。また、レーザセンサ3がレーザ光32の反射を検出可能な機能を有する場合、投光部30と受光部31が共にガントリ13に設けられても良い。
【0123】
なお、本実施形態においては、レーザセンサ3の有効状態と無効状態とを、レーザ光32の投光の有無で切り替えるものとしたが、レーザセンサ3の有効状態と無効状態との切り替えはこれに限定されるものではない。例えば、レーザセンサ3は無効状態であってもレーザ光32の投光を継続し、移動制御機能1523は、無効状態のレーザセンサ3の検知結果を採用しないものとしても良い。また、本実施形態においては、制御装置15がガントリ13の移動の指示を受ける前、つまり通常時は、全てのレーザセンサ3が無効状態であるものとしたが、架台装置10の稼動中は全てのレーザセンサ3が有効状態である状態を通常の状態としても良い。
【0124】
また、本実施形態においては、ガントリ13の移動の開始前に物体の存在の有無をレーザセンサ3が検知するものとしたが、ガントリ13の移動の開始後も、物体の存在の有無の検知を継続しても良い。例えば、移動制御機能1523は、ガントリ13の移動を開始した後にレーザセンサ3によって物体が検知された場合は、ガントリ13を停止させるものとしても良い。
【0125】
また、本実施形態においては、報知機能1524は、第1の検知範囲301または第2の検知範囲302で物体が検知された位置を、コンソール装置40に送信するものとしたが、報知の手段はこれに限定されるものではない。例えば、架台装置10またはコンソール装置40がスピーカを備える場合、報知機能1524は、メッセージや警告音等の音声を出力することによって物体が検知されたことを報知しても良い。
【0126】
なお、本実施形態においては、立位CTシステム1は被検体Pを立位状態または座位状態で撮像可能であるものとしたが、さらに他の体位で撮像可能であっても良い。
【0127】
なお、本実施形態においては、立位CTシステム1を医用診断システムの一例としたが、医用診断システムはこれに限定されるものではない。例えば、医用診断システムは、立位MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、立位PET(Positron Emission Tomography)装置、立位SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、等であっても良い。
【0128】
(第2の実施形態)
上述の第1の実施形態では、レーザセンサ3を検知部として採用したが、この第2の実施形態では、測距センサを検知部として採用する。
【0129】
図12は、本実施形態に係る立位CTシステム1の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態の立位CTシステム1は、図1で説明した第1の実施形態に係る立位CTシステム1におけるレーザセンサ3(投光部30、受光部31)の代わりに、測距センサ7a~7n(以下、特に区別しない場合には、単に測距センサ7という)を備える。測距センサ7は、本実施形態における検知部の一例である。なお、測距センサ7の数は、特に限定されるものではない。立位CTシステム1のその他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0130】
測距センサ7は、物体との距離を測定可能なセンサである。測距センサ7は、例えば、公知の超音波センサ、あるいは、光学式のセンサ等である。
【0131】
測距センサ7は、例えば、ガントリ13の開口部に沿って設置され、第1の検知範囲301または第2の検知範囲302に位置する物体とガントリ13との間の距離dを計測する。例えば、図12に示すように、被検体Pの身体の一部が、測距センサ7の第1の検知範囲301内に位置する場合、測距センサ7は、測距センサ7と、第1の検知範囲301に入った被検体Pの身体との間の距離dを計測する。なお、図1ではガントリ13と被検体Pとの距離としたが、例えば、車椅子6等が第2の検知範囲302に位置する場合、測距センサ7は、ガントリ13と車椅子6等との間の距離dを計測する。
【0132】
また、本実施形態の立位モードにおける第1の検知範囲301と、座位モードにおける第2の検知範囲302の定義は、第1の実施形態と同様とする。例えば、本実施形態においては、複数の測距センサ7が、ガントリ13の開口部に沿って円状に設置されるものとする。
【0133】
測距センサ7は、計測結果を、制御装置15に送信する。
【0134】
図13は、本実施形態に係る制御装置15の構成の一例を示すブロック図である。制御装置15は、第1の実施形態と同様に、メモリ151と、処理回路152とを有する。
【0135】
また、本実施形態の制御装置15は、取得機能11521と、検知制御機能11522と、移動制御機能11523と、報知機能11524と、判定機能1525とを備える。判定機能1525は、演算部の一例である。
【0136】
本実施形態の検知制御機能11522は、レーザセンサ3の代わりに測距センサ7を制御する。より詳細には、検知制御機能11522は、第1の実施形態と同様に、立位モードの場合に、全ての測距センサ7を有効状態にし、座位モードの場合には、一部の測距センサ7を有効状態にする。
【0137】
本実施形態の取得機能11521は、第1の実施形態の機能に加えて、測距センサ7から、計測結果を取得する。取得機能11521は、取得した計測結果を、判定機能1525に送出する。
【0138】
判定機能1525は、取得機能11521によって取得された測距センサ7の計測結果に基づいて、ガントリ13と検知された物体との距離dが、閾値以下であるか否かを判定する。判定機能1525は、ガントリ13と検知された物体との距離dが閾値以下であると判定した場合に、ガントリ13と検知された物体との距離dが閾値以下であることを、移動制御機能11523と、報知機能11524とに通知する。本実施形態における閾値は特に限定されるものではない。
【0139】
なお、図13では、測距センサ7は、ガントリ13と検知された物体との距離を直接的に計測していたが、計測結果はこれに限定されるものではない。例えば、判定機能1525は、測距センサ7がガントリ13の上部に位置する場合には、測距センサ7と物体との距離から、測距センサ7からガントリ13の開口部までの距離を減算することにより、ガントリ13と検知された物体との距離dを求めても良い。
【0140】
移動制御機能11523は、第1の実施形態の機能に加えて、ガントリ13と物体との間の距離が閾値以下になった場合に、ガントリ13を停止させる。
【0141】
報知機能11524は、第1の実施形態の機能に加えて、ガントリ13と物体との間の距離が閾値以下になった場合に、ガントリ13と物体とが接近していることをコンソール装置40に送信する。また、報知機能11524は、音声など他の手法によってガントリ13と物体とが接近していることを報知しても良い。
【0142】
次に、以上のように構成された本実施形態の立位CTシステム1で実行される物体検知処理の流れについて説明する。
【0143】
図14は、本実施形態に係る立位CTシステム1で実行される物体検知処理の流れの一例を示すフローチャートである。S1のガントリの移動の指示およびモード選択結果の取得処理から、S2の立位モードと座位モードの判定の処理までは、第1の実施形態と同様である。
【0144】
次に、立位モードの場合(S2“立位モード”)、検知制御機能11522は、全ての測距センサ7を有効化する(S101)。そして、取得機能11521は、測距センサ7から計測結果を取得する(S102)。
【0145】
判定機能1525は、取得機能11521によって取得された測距センサ7の計測結果に基づいて、ガントリ13と検知された物体との間の距離dが、閾値以下であるか否かを判定する(S103)。
【0146】
ガントリ13と検知された物体との間の距離dが、閾値よりも大きいと判定された場合(S103“No”)、移動制御機能11523は、ガントリ13の移動を開始する(S104)。立位モードの場合は、移動制御機能11523は、ガントリ13をフルストロークの移動範囲で移動させる。
【0147】
移動制御機能11523がガントリ13を規定の位置まで移動完了させたと判定していない間は(S105“No”)、S102の処理に戻り、取得機能11521は、測距センサ7から計測結果を継続的に取得する。
【0148】
そして、ガントリ13と検知された物体と間の距離dが、閾値以下であると判定された場合(S103“Yes”)、移動制御機能11523は、ガントリ13の移動を停止する(S106)。また、この場合、報知機能11524は、ガントリ13と物体とが接近していることをコンソール装置40に送信するS(S107)。S107の処理の後は、S102の処理に戻る。
【0149】
また、移動制御機能11523がガントリ13を規定の位置まで移動完了させたと判定した場合(S105“Yes”)、S10の撮像処理に進む。S10の処理と、S11のガントリ13を元の位置に戻す処理は、第1の実施形態と同様である。
【0150】
次に、座位モードの場合(S2“座位モード”)、検知制御機能11522は、一部の測距センサ7を有効化する(S109)。S110の計測結果の取得処理から、S114の報知処理までは、上述のS102からS107までと同様である。ただし、S111の処理においては、移動制御機能11523は、ガントリ13をハーフストロークの移動範囲で移動させる。また、S19の撮像処理と、S20のガントリ13を元の位置に戻す処理は、第1の実施形態と同様である。
【0151】
このように、本実施形態の立位CTシステム1は、第1の検知範囲301または第2の検知範囲302に位置する物体とガントリ13との間の距離を計測する1以上の測距センサ7を備え、ガントリ13と物体との間の距離dが閾値以下になった場合にガントリ13を停止させる。このため、本実施形態の立位CTシステム1によれば、第1の実施形態の効果を備えた上で、被検体P等の物体との距離dが閾値以下になるまではガントリ13の移動を継続することができる。
【0152】
なお、本実施形態においては、第1の実施形態と同様に、立位モードと座位モードとで検知範囲を変更したが、座位モードにおいても、立位モードと同様に第1の検知範囲301を測距センサ7の検知範囲としても良い。また、立位モードと座位モードとで、異なる閾値を採用しても良い。
【0153】
また、測距センサ7の設置位置は、図12の例に限定されるものではなく、例えば、床面5に設けられても良い。
【0154】
(第2の実施形態の変形例)
上述の第2の実施形態では、移動制御機能11523は、ガントリ13と物体との間の距離が閾値以下になった場合に、ガントリ13を停止させるものとしたが、第1の検知範囲301または第2の検知範囲302に物体が検知された場合にはガントリ13の移動を許可しないインタロックを構成するものとしても良い。
【0155】
例えば、本変形例の移動制御機能11523は、立位モードにおいて、測距センサ7によって第1の検知範囲301に位置する物体が検知された場合には、ガントリ13を移動しない。また、移動制御機能11523は、座位モードにおいて、測距センサ7によって第2の検知範囲302に位置する物体が検知された場合には、ガントリ13を移動しない。
【0156】
なお、本変形例においては、制御装置15は、判定機能1525を備えなくとも良い。また、本変形例においては、測距センサ7は、被検体Pの下方に設置されても良い。例えば、測距センサ7は、床面5に設けられても良い。
【0157】
(第3の実施形態)
この第3の実施形態では、立位CTシステム1は、第1の実施形態と同様の構成に加えて、さらに、荷重センサを備える。
【0158】
図15は、本実施形態に係る荷重センサ8a~8k(以下、特に区別しない場合には単に荷重センサ8という)の設置位置の一例を示す図である。図15に示すように荷重センサ8は、ガントリ13と対向する床面5に設置される。さらに詳細には、荷重センサ8は、立位モードにおける被検体Pの立ち位置1331a,1331bを含む立位範囲133の外に設置される。
【0159】
立ち位置1331a,1331b(以下、立ち位置1331aと立ち位置1331bとを総称する場合は、単に立ち位置1331という)は、立位モードにおいて被検体Pの足が置かれる位置である。図15においては、一例として、被検体Pの左右の足のうちの一方の足が立ち位置1331aに置かれ、もう一方の足が立ち位置1331bに置かれた状態が、正常な立位の姿勢であるものとする。また、図15に示す立位範囲133は、撮像可能範囲132よりも小さい範囲であり、立位モードにおける立ち位置1331を含む円形の領域である。換言すれば、立ち位置1331は、立位範囲133に含まれる。被検体Pの左右の足が立ち位置1331からずれた場合でも、被検体Pの左右の足が立位範囲133内に位置する場合は、被検体Pがガントリ13に接触する可能性は低いものとする。立位範囲133の形状は、例えば撮像可能範囲132を縮小した形状であるが、これに限定されるものではない。なお、立位範囲133を、被検体Pの立ち位置と称しても良い。
【0160】
なお、本実施形態においては、図15に示すように、荷重センサ8は立位範囲133の外縁と撮像可能範囲132の外縁の間に設置される。また、荷重センサ8は、撮像可能範囲132の外に設置されても良い。
【0161】
図15に示す荷重センサ8は、第1の荷重センサの一例である。なお、荷重センサ8の数は特に限定されるものではなく、図15では複数の荷重センサ8を記載したが、単一の荷重センサが設置されても良い。
【0162】
荷重センサ8は、荷重の検出結果を制御装置15に送信する。
【0163】
また、本実施形態の立位CTシステム1は、第1の実施形態と同様の構成を備える。
【0164】
また、本実施形態の制御装置15は、第1の実施形態と同様に、メモリ151と、処理回路152とを有する。また、処理回路152は、第1の実施形態と同様に、取得機能1521と、検知制御機能1522と、移動制御機能1523と、報知機能1524とを備える。
【0165】
本実施形態の取得機能1521は、第1の実施形態の機能を備えた上で、荷重センサ8から荷重の検出結果を取得する。
【0166】
また、本実施形態の移動制御機能1523は、第1の実施形態の機能に加えて、荷重センサ8によって荷重が検出された場合には、ガントリ13を移動しない。例えば、本実施形態の移動制御機能1523は、立位モードにおいて、ガントリ13の移動の指示を受けた場合に、レーザセンサ3によって第1の検知範囲301に位置する物体が検知されていなくとも、荷重センサ8によって荷重が検出された場合には、ガントリ13を移動しない。
【0167】
また、移動制御機能1523は、ガントリ13の移動中に荷重センサ8によって荷重が検出された場合に、ガントリ13を停止させるものとしても良い。なお、移動制御機能1523は、立位モードの場合にのみ、荷重センサ8の計測結果を採用し、座位モードの場合には採用しないものとしても良い。
【0168】
このように、本実施形態の立位CTシステム1によれば、第1の実施形態の効果に加えて、さらに、被検体Pがふらつき等によって立位範囲133から外れ、ガントリ13と接触することを低減することができる。
【0169】
なお、本実施形態の構成を、第2の実施形態または第2の実施形態の変形例と組み合せても良い。また、報知機能1524は、荷重センサ8によって荷重が検出された場合に、報知するものとしても良い。例えば、報知機能1524は、コンソール装置40に被検体Pの移動または荷重の変動が検知されたことを送信しても良いし、音声等によって報知をしても良い。
【0170】
(第3の実施形態の変形例)
上述の第3の実施形態では、荷重センサ8は、立位モードにおける被検体Pの立ち位置1331a,1331bの外に設置されるとしたが、本変形例においては、立位範囲133の中に、さらに他の荷重センサが設置される。当該他の荷重センサは、第2の荷重センサの一例である。
【0171】
例えば、第2の荷重センサは、ガントリ13と対向する床面5において、ガントリ13の開口部を床面5に投影した範囲よりも小さい範囲であって、かつ被検体Pの立位モードにおける立ち位置1331を含む範囲に設置される。一例として、第2の荷重センサは、図15に示す立位範囲133内に設置される
【0172】
第2の荷重センサは、被検体Pが、立位範囲133を出ていない場合でも、被検体Pの移動、または被検体Pのふらつき等による荷重の変化を検知する。
【0173】
本変形例の報知機能1524は、第2の荷重センサによって被検体Pの移動または荷重の変動が検知された場合に報知する。報知機能1524は、コンソール装置40に被検体Pの移動または荷重の変動が検知されたことを送信しても良いし、音声等によって報知をしても良い。
【0174】
このように、本変形例の立位CTシステム1によれば、被検体Pがガントリ13の第1の検知範囲301に位置していなくとも、被検体Pのふらつき等を検知するため、被検体Pがガントリ13と接近することを未然に回避することができる。
【0175】
(その他の変形例)
上述の各実施形態においては、立位モードまたは座位モードが予め選択された後に、物体検知処理が実行されていたが、処理の流れはこれに限定されるものではない。例えば、レーザセンサ3または測距センサ7による検知結果に応じて、立位モードと座位モードとが切り替えられる構成を採用しても良い。例えば、コンソール装置40のスキャン制御機能441は、第1の検知範囲301で物体が検出されない場合には、立位モードでの撮像を実行し、第1の検知範囲301で物体が検出されるが、第2の検知範囲302では物体が検出されない場合には、座位モードでの撮像を実行しても良い。
【0176】
また、コンソール装置40のスキャン制御機能441は、測距センサ7によって計測されたガントリ13と物体との距離dの長さに応じて、立位モードと座位モードとを切り替えても良い。
【0177】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、ガントリが上下移動する医用診断システムにおける安全性を向上させることができる。
【0178】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0179】
1 システム
3,3a~3n レーザセンサ
5 床面
6 車椅子
7,7a~7n 測距センサ
8,8a~8k 荷重センサ
10 架台装置
11 X線管装置
12 X線検出器
13 ガントリ
14 X線高電圧装置
15 制御装置
16 ウェッジ
17 コリメータ
18 DAS
19,19a,19b 支柱
20 水平材
30,30a~30n 投光部
31,31a~31n 受光部
32,32a~32n レーザ光
40 コンソール装置
41 メモリ
42 ディスプレイ
43 入力インターフェース
44 処理回路
131 空洞
132 撮像可能範囲
133 立位範囲
151 メモリ
152 処理回路
301 第1の検知範囲
302 第2の検知範囲
420 報知画面
441 スキャン制御機能
442 画像生成機能
443 表示制御機能
1331,1331a,1331b 立ち位置
1521,11521 取得機能
1522,11522 検知制御機能
1523,11523 移動制御機能
1524,11524 報知機能
1525, 判定機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15