IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アズビル株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】超音波流量計および流量計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/66 20220101AFI20230905BHJP
【FI】
G01F1/66 101
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019185914
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021060343
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】小貝 和史
(72)【発明者】
【氏名】栗林 英毅
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-224685(JP,A)
【文献】特開2004-069524(JP,A)
【文献】特開2020-063974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/66-1/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測ユニットと、
演算ユニットとを備え、
前記計測ユニットは、
測定対象の流体が流れるように構成された配管と、
この配管の上流と下流に配置された1対のトランスデューサと、
一方の前記トランスデューサから超音波を送信させるように構成された送信部と、
上流側の前記トランスデューサから超音波を送信して下流側の前記トランスデューサで受信する順方向の計測回のときの超音波受信信号のゼロクロス時刻、および下流側の前記トランスデューサから超音波を送信して上流側の前記トランスデューサで受信する逆方向の計測回のときの超音波受信信号のゼロクロス時刻を、計測回毎および順逆の方向毎に格納する時刻配列を記憶するように構成された記憶部と、
前記ゼロクロス時刻を計測回毎および順逆の方向毎にそれぞれ複数計測して、計測した複数のゼロクロス時刻を、対応する計測回および対応する方向のために用意された前記時刻配列の特定の格納位置から順に格納するように構成された時間計測部と、
ゼロクロス時刻間の時刻差が最小になるシフト量を求めるシフト処理を順逆の方向毎に行うように構成されたシフト処理部と、
前記ゼロクロス時刻のうち、前記流体の流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値を前記演算ユニットに送信するように構成された第1の通信部とを備え、
前記演算ユニットは、
前記計測ユニットから送信されたゼロクロス時刻の情報とを受信するように構成された第2の通信部と、
受信した情報の中から流量計算に使用するゼロクロス時刻の値を順逆の方向毎に取得し、取得した順方向のゼロクロス時刻と逆方向のゼロクロス時刻とに基づいて順方向と逆方向の超音波の伝搬時間差を算出して、この伝搬時間差から前記流体の流量を算出するように構成された流量算出部とを備えることを特徴とする超音波流量計。
【請求項2】
請求項1記載の超音波流量計において、
前記計測ユニットの前記第1の通信部は、前記流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値と前記シフト処理の情報とを計測回毎および順逆の方向毎に前記演算ユニットに送信し、
前記演算ユニットの前記流量算出部は、受信した情報の中から前記シフト処理の情報に基づいて、流量計算に使用するゼロクロス時刻の値を順逆の方向毎に取得することを特徴とする超音波流量計。
【請求項3】
請求項2記載の超音波流量計において、
前記計測ユニットの前記第1の通信部は、送信処理の対象の計測回の時刻配列に格納されたゼロクロス時刻のうち、順逆の方向が同一で計測回が異なる少なくとも1回分の時刻配列の同一の格納位置に値が格納されているゼロクロス時刻を、前記流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値とすることを特徴とする超音波流量計。
【請求項4】
請求項2または3記載の超音波流量計において、
前記演算ユニットの前記流量算出部は、前記シフト処理によって欠けが生じたゼロクロス時刻を前記シフト処理の情報に基づいて特定し、特定したゼロクロス時刻の時間軸上の位置と対応する位置のゼロクロス時刻を、順逆の方向が同一で計測回が異なる複数の計測回分のゼロクロス時刻から除いた結果を、前記流量計算に使用するゼロクロス時刻とすることを特徴とする超音波流量計。
【請求項5】
請求項1記載の超音波流量計において、
前記計測ユニットの前記第1の通信部は、前記流体の流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値を複数の計測回分纏めて順逆の方向毎に前記演算ユニットに送信し、
前記演算ユニットの前記流量算出部は、受信した順方向のゼロクロス時刻の値をそのまま流量計算に使用する順方向のゼロクロス時刻の値とし、受信した逆方向のゼロクロス時刻の値をそのまま流量計算に使用する逆方向のゼロクロス時刻の値とすることを特徴とする超音波流量計。
【請求項6】
請求項5記載の超音波流量計において、
前記計測ユニットの前記第1の通信部は、送信処理の対象の複数の計測回分の時刻配列に格納されたゼロクロス時刻のうち、順逆の方向が同一で計測回が異なる全ての時刻配列の同一の格納位置に値が格納されているゼロクロス時刻を、前記流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値とすることを特徴とする超音波流量計。
【請求項7】
請求項5記載の超音波流量計において、
前記計測ユニットの前記第1の通信部は、前記流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値を特定する際、送信処理の対象の複数の計測回について前記シフト処理で適用した個々のシフト量の適用回数をそれぞれ計数し、得られた適用回数の大小判定の結果に基づいて、予め設定されている基準格納位置に格納されている複数の計測回分のゼロクロス時刻を、前記流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値とすることを特徴とする超音波流量計。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の超音波流量計において、
前記シフト処理の情報は、シフト量またはシフト処理後のゼロクロス時刻が格納された時刻配列の先頭位置の情報であることを特徴とする超音波流量計。
【請求項9】
計測ユニットと、
演算ユニットとを備え、
前記計測ユニットは、
測定対象の流体が流れるように構成された配管と、
この配管の上流と下流に配置された1対のトランスデューサと、
一方の前記トランスデューサから超音波を送信させるように構成された送信部と、
上流側の前記トランスデューサから超音波を送信して下流側の前記トランスデューサで受信する順方向の計測回のときの超音波受信信号のゼロクロス時刻、および下流側の前記トランスデューサから超音波を送信して上流側の前記トランスデューサで受信する逆方向の計測回のときの超音波受信信号のゼロクロス時刻を、計測回毎および順逆の方向毎に格納する時刻配列を記憶するように構成された記憶部と、
前記ゼロクロス時刻を計測回毎および順逆の方向毎にそれぞれ複数計測して、計測した複数のゼロクロス時刻を、対応する計測回および対応する方向のために用意された前記時刻配列の特定の格納位置から順に格納するように構成された時間計測部と、
ゼロクロス時刻間の時刻差が最小になるシフト量を求めるシフト処理を順逆の方向毎に行うように構成されたシフト処理部と、
前記演算ユニットとの通信を行うように構成された第1の通信部とを備え、
前記演算ユニットは、
前記シフト処理の情報を前記第1の通信部を介して読み出し、読み出したシフト処理の情報に基づいて、前記流体の流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値を前記記憶部から前記第1の通信部を介して読み出すように構成された第2の通信部と、
前記第2の通信部によって読み出された情報の中から流量計算に使用するゼロクロス時刻の値を順逆の方向毎に取得し、取得した順方向のゼロクロス時刻と逆方向のゼロクロス時刻とに基づいて順方向と逆方向の超音波の伝搬時間差を算出して、この伝搬時間差から前記流体の流量を算出するように構成された流量算出部とを備えることを特徴とする超音波流量計。
【請求項10】
計測ユニットが、測定対象の流体が流れる配管の上流側のトランスデューサから超音波を送信して前記配管の下流側のトランスデューサで受信する順方向の計測回のときの超音波受信信号のゼロクロス時刻と、下流側の前記トランスデューサから超音波を送信して上流側の前記トランスデューサで受信する逆方向の計測回のときの超音波受信信号のゼロクロス時刻とを、計測回毎および順逆の方向毎にそれぞれ複数計測する第1のステップと、
前記計測ユニットが、計測した複数のゼロクロス時刻を、対応する計測回および対応する方向のために用意された時刻配列の特定の格納位置から順に格納する第2のステップと、
前記計測ユニットが、ゼロクロス時刻間の時刻差が最小になるシフト量を求めるシフト処理を順逆の方向毎に行う第3のステップと、
前記計測ユニットが、前記ゼロクロス時刻のうち、前記流体の流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値を演算ユニットに送信する第4のステップと、
前記演算ユニットが、前記計測ユニットから送信されたゼロクロス時刻の情報を受信する第5のステップと、
前記演算ユニットが、受信した情報の中から流量計算に使用するゼロクロス時刻の値を順逆の方向毎に取得し、取得した順方向のゼロクロス時刻と逆方向のゼロクロス時刻とに基づいて順方向と逆方向の超音波の伝搬時間差を算出して、この伝搬時間差から前記流体の流量を算出する第6のステップとを含むことを特徴とする流量計測方法。
【請求項11】
計測ユニットが、測定対象の流体が流れる配管の上流側のトランスデューサから超音波を送信して前記配管の下流側のトランスデューサで受信する順方向の計測回のときの超音波受信信号のゼロクロス時刻と、下流側の前記トランスデューサから超音波を送信して上流側の前記トランスデューサで受信する逆方向の計測回のときの超音波受信信号のゼロクロス時刻とを、計測回毎および順逆の方向毎にそれぞれ複数計測する第1のステップと、
前記計測ユニットが、計測した複数のゼロクロス時刻を、対応する計測回および対応する方向のために用意された時刻配列の特定の格納位置から順に格納する第2のステップと、
前記計測ユニットが、ゼロクロス時刻間の時刻差が最小になるシフト量を求めるシフト処理を順逆の方向毎に行う第3のステップと、
演算ユニットが、前記シフト処理の情報を前記計測ユニットから読み出す第4のステップと、
前記演算ユニットが、読み出したシフト処理の情報に基づいて、シフト処理後のゼロクロス時刻のうち、前記流体の流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値を前記計測ユニットから読み出す第5のステップと、
前記演算ユニットが、読み出した情報の中から流量計算に使用するゼロクロス時刻の値を順逆の方向毎に取得し、取得した順方向のゼロクロス時刻と逆方向のゼロクロス時刻とに基づいて順方向と逆方向の超音波の伝搬時間差を算出して、この伝搬時間差から前記流体の流量を算出する第6のステップとを含むことを特徴とする流量計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波流量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波を用いて流量を計測する超音波流量計が知られている(特許文献1参照)。超音波流量計は、図23(A)または図23(B)に示すように、測定対象の気体が流れる配管10に対し1対のトランスデューサ(超音波圧電素子)11,12を配置する。上流側のトランスデューサ11を例えば500kHzの共振周波数で駆動し、トランスデューサ11から超音波を送信させる。
【0003】
超音波が配管10内の気体中を伝搬して下流側のトランスデューサ12を励起する。このトランスデューサ12の出力を増幅することで受信信号が得られる。超音波の送信タイミングから受信信号の到達タイミングの時間計測を行うことで、超音波の伝搬時間を計測できる。同様に、下流側のトランスデューサ12から超音波を送信し、上流側のトランスデューサ11で受信して、超音波の伝播時間を計測する。
【0004】
トランスデューサ11からトランスデューサ12までの順方向(気体が流れる方向)の超音波の伝搬時間とトランスデューサ12からトランスデューサ11までの逆方向の超音波の伝搬時間とを比較することで、伝搬時間差が求められる。気体の流量がゼロの場合、原理的には伝搬時間差がゼロになるが、気体が流れている場合、流量に応じて伝搬時間差が生じる。したがって、伝搬時間差から気体の流量を算出することができる。
【0005】
超音波の伝搬時間を検出するためには、超音波受信信号がゼロ電圧(0V)と交差するゼロクロス点の時刻を検出する必要がある。ゼロクロスの検出に用いるオペアンプなどのアナログ回路、および時間計測回路(TDC:Time-to-Digital Converter)などのデジタル回路が搭載されたIC(Integrated Circuit)と、伝搬時間から流量を算出する処理などの汎用の演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)とは、プロセスの違いやCPUに汎用マイコンを用いる、などの理由で別のチップになる場合が多い。ICとCPUとが別のチップになる場合、ICとCPU間で通信が発生することになる(特許文献2参照)。
【0006】
特許文献1に開示された技術では、順方向と逆方向の伝搬時間を1セットとし、複数セットを纏めてICからCPUに送信することで、計測データ以外の通信フォーマット上必要な情報の送信を削減している。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、計測データ(複数セットの伝搬時間)自体が通信の大半を占めており、ICとCPU間の通信のために電力を消費してしまう、という課題があった。
【0008】
超音波流量計の適用分野の1つであるガスメータにおいては、10年間電池で動作することが必要とされており、低消費電力であることが求められる。超音波流量計において、毎秒や数秒毎に計測する必要のある流量計測は消費電力の多くを占めており、消費電力の更なる削減が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5467328号公報
【文献】特許第4271979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、送信データ量の更なる削減を実現し、消費電力を削減することが可能な超音波流量計および流量計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の超音波流量計は、計測ユニットと、演算ユニットとを備え、前記計測ユニットは、測定対象の流体が流れるように構成された配管と、この配管の上流と下流に配置された1対のトランスデューサと、一方の前記トランスデューサから超音波を送信させるように構成された送信部と、上流側の前記トランスデューサから超音波を送信して下流側の前記トランスデューサで受信する順方向の計測回のときの超音波受信信号のゼロクロス時刻、および下流側の前記トランスデューサから超音波を送信して上流側の前記トランスデューサで受信する逆方向の計測回のときの超音波受信信号のゼロクロス時刻を、計測回毎および順逆の方向毎に格納する時刻配列を記憶するように構成された記憶部と、前記ゼロクロス時刻を計測回毎および順逆の方向毎にそれぞれ複数計測して、計測した複数のゼロクロス時刻を、対応する計測回および対応する方向のために用意された前記時刻配列の特定の格納位置から順に格納するように構成された時間計測部と、ゼロクロス時刻間の時刻差が最小になるシフト量を求めるシフト処理を順逆の方向毎に行うように構成されたシフト処理部と、前記ゼロクロス時刻のうち、前記流体の流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値を前記演算ユニットに送信するように構成された第1の通信部とを備え、前記演算ユニットは、前記計測ユニットから送信されたゼロクロス時刻の情報とを受信するように構成された第2の通信部と、受信した情報の中から流量計算に使用するゼロクロス時刻の値を順逆の方向毎に取得し、取得した順方向のゼロクロス時刻と逆方向のゼロクロス時刻とに基づいて順方向と逆方向の超音波の伝搬時間差を算出して、この伝搬時間差から前記流体の流量を算出するように構成された流量算出部とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の超音波流量計の1構成例(第1、第2の実施例)において、前記計測ユニットの前記第1の通信部は、前記流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値と前記シフト処理の情報とを計測回毎および順逆の方向毎に前記演算ユニットに送信し、前記演算ユニットの前記流量算出部は、受信した情報の中から前記シフト処理の情報に基づいて、流量計算に使用するゼロクロス時刻の値を順逆の方向毎に取得することを特徴とするものである。
また、本発明の超音波流量計の1構成例(第1、第2の実施例)において、前記計測ユニットの前記第1の通信部は、送信処理の対象の計測回の時刻配列に格納されたゼロクロス時刻のうち、順逆の方向が同一で計測回が異なる少なくとも1回分の時刻配列の同一の格納位置に値が格納されているゼロクロス時刻を、前記流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値とすることを特徴とするものである。
また、本発明の超音波流量計の1構成例(第1、第2の実施例)において、前記演算ユニットの前記流量算出部は、前記シフト処理によって欠けが生じたゼロクロス時刻を前記シフト処理の情報に基づいて特定し、特定したゼロクロス時刻の時間軸上の位置と対応する位置のゼロクロス時刻を、順逆の方向が同一で計測回が異なる複数の計測回分のゼロクロス時刻から除いた結果を、前記流量計算に使用するゼロクロス時刻とすることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の超音波流量計の1構成例(第3の実施例)において、前記計測ユニットの前記第1の通信部は、前記流体の流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値と前記シフト処理の情報とを、複数の計測回分纏めて順逆の方向毎に前記演算ユニットに送信し、前記演算ユニットの前記流量算出部は、受信した順方向のゼロクロス時刻の値をそのまま流量計算に使用する順方向のゼロクロス時刻の値とし、受信した逆方向のゼロクロス時刻の値をそのまま流量計算に使用する逆方向のゼロクロス時刻の値とすることを特徴とするものである。
また、本発明の超音波流量計の1構成例(第3の実施例)において、前記計測ユニットの前記第1の通信部は、送信処理の対象の複数の計測回分の時刻配列に格納されたゼロクロス時刻のうち、順逆の方向が同一で計測回が異なる全ての時刻配列の同一の格納位置に値が格納されているゼロクロス時刻を、前記流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値とすることを特徴とするものである。
また、本発明の超音波流量計の1構成例(第3の実施例)において、前記計測ユニットの前記第1の通信部は、前記流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値を特定する際、送信処理の対象の複数の計測回について前記シフト処理で適用した個々のシフト量の適用回数をそれぞれ計数し、得られた適用回数の大小判定の結果に基づいて、予め設定されている基準格納位置に格納されている複数の計測回分のゼロクロス時刻を、前記流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値とすることを特徴とするものである。
また、本発明の超音波流量計の1構成例(第1~第3の実施例)において、前記シフト処理の情報は、シフト量またはシフト処理後のゼロクロス時刻が格納された時刻配列の先頭位置の情報である。
【0014】
また、本発明の本発明の超音波流量計(第5、第6の実施例)は、計測ユニットと、演算ユニットとを備え、前記計測ユニットは、測定対象の流体が流れるように構成された配管と、この配管の上流と下流に配置された1対のトランスデューサと、一方の前記トランスデューサから超音波を送信させるように構成された送信部と、上流側の前記トランスデューサから超音波を送信して下流側の前記トランスデューサで受信する順方向の計測回のときの超音波受信信号のゼロクロス時刻、および下流側の前記トランスデューサから超音波を送信して上流側の前記トランスデューサで受信する逆方向の計測回のときの超音波受信信号のゼロクロス時刻を、計測回毎および順逆の方向毎に格納する時刻配列を記憶するように構成された記憶部と、前記ゼロクロス時刻を計測回毎および順逆の方向毎にそれぞれ複数計測して、計測した複数のゼロクロス時刻を、対応する計測回および対応する方向のために用意された前記時刻配列の特定の格納位置から順に格納するように構成された時間計測部と、ゼロクロス時刻間の時刻差が最小になるシフト量を求めるシフト処理を順逆の方向毎に行うように構成されたシフト処理部と、前記演算ユニットとの通信を行うように構成された第1の通信部とを備え、前記演算ユニットは、前記シフト処理の情報を前記第1の通信部を介して読み出し、読み出したシフト処理の情報に基づいて、前記流体の流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値を前記記憶部から前記第1の通信部を介して読み出すように構成された第2の通信部と、前記第2の通信部によって読み出された情報の中から流量計算に使用するゼロクロス時刻の値を順逆の方向毎に取得し、取得した順方向のゼロクロス時刻と逆方向のゼロクロス時刻とに基づいて順方向と逆方向の超音波の伝搬時間差を算出して、この伝搬時間差から前記流体の流量を算出するように構成された流量算出部とを備えることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の流量計測方法は、計測ユニットが、測定対象の流体が流れる配管の上流側のトランスデューサから超音波を送信して前記配管の下流側のトランスデューサで受信する順方向の計測回のときの超音波受信信号のゼロクロス時刻と、下流側の前記トランスデューサから超音波を送信して上流側の前記トランスデューサで受信する逆方向の計測回のときの超音波受信信号のゼロクロス時刻とを、計測回毎および順逆の方向毎にそれぞれ複数計測する第1のステップと、前記計測ユニットが、計測した複数のゼロクロス時刻を、対応する計測回および対応する方向のために用意された時刻配列の特定の格納位置から順に格納する第2のステップと、前記計測ユニットが、ゼロクロス時刻間の時刻差が最小になるシフト量を求めるシフト処理を順逆の方向毎に行う第3のステップと、前記計測ユニットが、前記ゼロクロス時刻のうち、前記流体の流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値を演算ユニットに送信する第4のステップと、前記演算ユニットが、前記計測ユニットから送信されたゼロクロス時刻の情報を受信する第5のステップと、前記演算ユニットが、受信した情報の中から流量計算に使用するゼロクロス時刻の値を順逆の方向毎に取得し、取得した順方向のゼロクロス時刻と逆方向のゼロクロス時刻とに基づいて順方向と逆方向の超音波の伝搬時間差を算出して、この伝搬時間差から前記流体の流量を算出する第6のステップとを含むことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の流量計測方法は、計測ユニットが、測定対象の流体が流れる配管の上流側のトランスデューサから超音波を送信して前記配管の下流側のトランスデューサで受信する順方向の計測回のときの超音波受信信号のゼロクロス時刻と、下流側の前記トランスデューサから超音波を送信して上流側の前記トランスデューサで受信する逆方向の計測回のときの超音波受信信号のゼロクロス時刻とを、計測回毎および順逆の方向毎にそれぞれ複数計測する第1のステップと、前記計測ユニットが、計測した複数のゼロクロス時刻を、対応する計測回および対応する方向のために用意された時刻配列の特定の格納位置から順に格納する第2のステップと、前記計測ユニットが、ゼロクロス時刻間の時刻差が最小になるシフト量を求めるシフト処理を順逆の方向毎に行う第3のステップと、演算ユニットが、前記シフト処理の情報を前記計測ユニットから読み出す第4のステップと、前記演算ユニットが、読み出したシフト処理の情報に基づいて、シフト処理後のゼロクロス時刻のうち、前記流体の流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値を前記計測ユニットから読み出す第5のステップと、前記演算ユニットが、読み出した情報の中から流量計算に使用するゼロクロス時刻の値を順逆の方向毎に取得し、取得した順方向のゼロクロス時刻と逆方向のゼロクロス時刻とに基づいて順方向と逆方向の超音波の伝搬時間差を算出して、この伝搬時間差から前記流体の流量を算出する第6のステップとを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、計測ユニットに配管と1対のトランスデューサと送信部と記憶部と時間計測部とシフト処理部と第1の通信部とを設け、シフト処理後のゼロクロス時刻のうち、流体の流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値を演算ユニットに送信するようにしたことにより、全てのゼロクロス時刻を演算ユニットに送信する場合と比較して、送信データ量を削減することができ、この送信データ量の削減分だけ超音波流量計の消費電力を削減することが可能となる。また、本発明では、シフト処理により、各ゼロクロス時刻のずれを補正することができ、各時刻配列の同一の格納位置に、それぞれ同一のゼロクロス点に対応するゼロクロス時刻を格納することができる。したがって、本発明によれば、演算ユニット側で順方向のゼロクロス時刻と逆方向のゼロクロス時刻とに基づいて伝搬時間差を精度良く算出することが可能となり、流量計測誤差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の第1の実施例に係る超音波流量計の構成を示すブロック図である。
図2図2は、超音波受信信号とゼロクロス点との関係を示す信号波形図である。
図3図3は、ゼロクロス点に関する時間間隔と変動を示す説明図である。
図4図4は、本発明の第1の実施例に係る計測ユニットのトランスデューサと送信部と受信部と切替部と時間計測部と記憶部の動作を説明するフローチャートである。
図5図5は、本発明の第1の実施例に係る計測ユニットのシフト処理部と通信部の動作を説明するフローチャートである。
図6図6は、本発明の第1の実施例に係る計測ユニットのシフト処理部と通信部の動作を説明する図である。
図7図7は、本発明の第1の実施例に係る演算ユニットの動作を説明するフローチャートである。
図8図8は、本発明の第2の実施例に係る計測ユニットのシフト処理部と通信部の動作を説明するフローチャートである。
図9図9は、本発明の第2の実施例に係る計測ユニットのシフト処理部と通信部の動作を説明する図である。
図10図10は、本発明の第2の実施例に係る演算ユニットの動作を説明するフローチャートである。
図11図11は、本発明の第3の実施例に係る計測ユニットのシフト処理部と通信部の動作を説明するフローチャートである。
図12図12は、本発明の第3の実施例に係る演算ユニットの動作を説明するフローチャートである。
図13図13は、本発明の第4の実施例に係る超音波流量計の構成を示すブロック図である。
図14図14は、本発明の第4の実施例に係る計測ユニットのシフト処理部と補間処理部と通信部の動作を説明するフローチャートである。
図15図15は、本発明の第4の実施例に係る計測ユニットのシフト処理部と補間処理部と通信部の動作を説明する図である。
図16図16は、本発明の第4の実施例に係る計測ユニットのシフト処理部と補間処理部と通信部の動作を説明する図である。
図17図17は、本発明の第5の実施例に係る超音波流量計の構成を示すブロック図である。
図18図18は、本発明の第5の実施例に係る計測ユニットのシフト処理部と通信部の動作を説明するフローチャートである。
図19図19は、本発明の第5の実施例に係る演算ユニットの動作を説明するフローチャートである。
図20図20は、本発明の第6の実施例に係る計測ユニットのシフト処理部と通信部の動作を説明するフローチャートである。
図21図21は、本発明の第6の実施例に係る演算ユニットの動作を説明するフローチャートである。
図22図22は、本発明の第1~第6の実施例に係る超音波流量計の演算ユニットを実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
図23図23は、従来の超音波流量計の動作原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施例に係る超音波流量計の構成を示すブロック図である。超音波流量計は、計測ユニット1と、演算ユニット2とから構成される。
【0020】
計測ユニット1は、測定対象の気体(流体)が流れる配管10と、配管10の上流と下流に配置された1対のトランスデューサ(超音波圧電素子)11,12と、一方のトランスデューサから超音波を送信させる送信部13と、他方のトランスデューサで受信された超音波受信信号を増幅する受信部14と、トランスデューサ11,12と送信部13と受信部14との接続を切り替える切替部15と、超音波受信信号が閾値電圧を超えた時点以降のゼロクロス時刻を、計測回毎および順逆の方向毎にそれぞれ複数計測する時間計測部16と、ゼロクロス時刻を記憶する記憶部17と、記憶部17のゼロクロス時刻の格納位置をシフトするシフト処理を順逆の方向毎に行うシフト処理部18と、シフト処理後のゼロクロス時刻のうち、気体の流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻の値とシフト処理の情報とを演算ユニット2に送信する通信部19とを備えている。
【0021】
演算ユニット2は、計測ユニット1から送信されたゼロクロス時刻とシフト処理の情報とを受信する通信部20と、受信した情報の中から流量計算に使用するゼロクロス時刻の値を順逆の方向毎に取得し、取得した順方向のゼロクロス時刻と逆方向のゼロクロス時刻とに基づいて順方向と逆方向の超音波の伝搬時間差を算出して、この伝搬時間差から気体の流量を算出する流量算出部21と、流量の値を上位装置へ送信する流量出力部22とを備えている。
【0022】
本実施例では、1対のトランスデューサ11,12を、互いに向かい合うように配管10の上流と下流に配置している。なお、図23(B)に示したように、1対のトランスデューサ11,12を、配管10の円形断面の円周上の位置が同じで、かつ気体の流れる方向の位置が異なる箇所に配置してもよい。この場合には、超音波の送受信の伝播経路は、配管10の内壁で反射させたV字型の伝播路となる。
【0023】
計測ユニット1の送信部13と受信部14と切替部15と時間計測部16と記憶部17とシフト処理部18と通信部19とは、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)などのICに搭載される。
演算ユニット2の通信部20と流量算出部21と流量出力部22とは、例えばマイクロコンピュータによって実現される。
【0024】
上流側のトランスデューサ11から超音波を送信して、下流側のトランスデューサ12で受信する順方向のとき、切替部15は、送信部13とトランスデューサ11とを接続し、トランスデューサ12と受信部14とを接続する。このとき、送信部13は、トランスデューサ11に対して駆動用の送信パルスを供給する。これにより、トランスデューサ11は、送信部13からの送信パルスに応じて、配管10内を流れる気体に対して斜め方向に超音波を送信する。トランスデューサ12は、トランスデューサ11から送出された超音波を受信する。受信部14は、トランスデューサ12の出力信号を増幅して超音波受信信号Vinを出力する。
【0025】
反対に、下流側のトランスデューサ12から超音波を送信して、上流側のトランスデューサ11で受信する逆方向のとき、切替部15は、送信部13とトランスデューサ12とを接続し、トランスデューサ11と受信部14とを接続する。このとき、送信部13は、トランスデューサ12に対して駆動用の送信パルスを供給する。これにより、トランスデューサ12は、送信部13からの送信パルスに応じて、配管10内を流れる気体に対して斜め方向に超音波を送信する。トランスデューサ11は、トランスデューサ12から送出された超音波を受信する。受信部14は、トランスデューサ11の出力信号を増幅して超音波受信信号Vinを出力する。
【0026】
計測ユニット1の時間計測部16は、受信部14によって増幅された超音波受信信号Vin(電圧信号)が予め設定された閾値電圧Vsを超えた時点以降に、ゼロ電圧(0V)と交差するゼロクロス時刻を、計測回毎および順逆の方向毎にそれぞれ複数計測して、計測した複数のゼロクロス時刻を、対応する計測回および対応する方向のために用意された記憶部17の時刻配列に格納する。
【0027】
[発明の原理]
次に、図2を参照して、本発明の原理について説明する。図2は、超音波受信信号とゼロクロス点との関係を示す信号波形図である。
受信部14によって増幅された超音波受信信号Vin(電圧信号)は、図2に示すように、振幅が時間軸に沿って増減する複数の正弦波交流パルスからなる。
【0028】
複数のゼロクロス点のうちから計算に使用する可能性があるゼロクロス点を抽出するため、計測ユニット1は、超音波受信信号Vinが予め設定された閾値電圧Vsを超えたトリガー点を検出することにより、このトリガー点以降のH個のゼロクロス点を検出して、ゼロクロス時刻を計測する。
【0029】
複数の計測回において、多くの場合、正しいタイミングすなわち目標パルスでトリガー点が検出されるものの、超音波受信信号Vinに対するノイズ成分の重畳などによる超音波受信信号Vinの振幅変化が発生した場合、トリガー点が1超音波周期分だけ前後にずれて検出される場合がある。
【0030】
図2の例では、超音波受信信号Vin#1が時刻Ts1で閾値電圧Vsを超えているため、時刻Ts1でゼロクロス点の検出が開始され、ゼロクロス点Z3,Z4,Z5,Z6,Z7が検出され、ゼロクロス点Z3,Z4,Z5,Z6,Z7に対応するゼロクロス時刻T3,T4,T5,T6,T7が記憶部17の時刻配列D#1に格納される。
【0031】
一方、ノイズ成分の重畳などの影響で超音波受信信号の振幅が増大し、図2に示すように、超音波受信信号Vin#2は、時刻Ts1よりも前の時刻Ts2で閾値電圧Vsを超えてしまうため、超音波受信信号Vin#1の場合よりも1超音波周期分だけ早めにゼロクロス点が検出されることになる。すなわち、時刻Ts2でゼロクロス点の検出が開始され、ゼロクロス点Z1,Z2,Z3,Z4,Z5が検出され、ゼロクロス点Z1,Z2,Z3,Z4,Z5に対応するゼロクロス時刻T1,T2,T3,T4,T5が記憶部17の時刻配列D#2に格納される。
【0032】
したがって、図2の例では、超音波受信信号Vin#1の場合に時刻Ts1以降に検出した最初のゼロクロス点と、超音波受信信号Vin#2の場合に時刻Ts2以降に検出した先頭から3番目のゼロクロス点の検出時刻は、ゼロクロス点Z3の時刻T3とほぼ等しくなる。また、超音波受信信号Vin#1の場合に時刻Ts1以降に検出した先頭から3番目のゼロクロス点と、超音波受信信号Vin#2の場合に時刻Ts2以降に検出した先頭から5番目のゼロクロス点の検出時刻は、ゼロクロス点Z5の時刻T5とほぼ等しくなる。
【0033】
一方、ゼロクロス点に関する時間間隔と変動とには一定の関係が見られる。図3は、ゼロクロス点に関する時間間隔と変動を示す説明図であり、各ゼロクロス点の検出時刻をVin#i(iは1~Xの整数)ごとに時間軸上にプロットしたものである。
【0034】
個々のゼロクロス点の検出時刻を観察すると、図3に示すように、ゼロクロス点の検出時刻は、超音波受信信号Vinのノイズや脈動などの影響で変動するものの、その変動幅は限定的であり、実際の計測では真値に対して±400nsec程度であった。一方、超音波受信信号Vinのパルス幅は、トランスデューサ11,12から送出される超音波の周波数fuに依存してほぼ一定である。例えば超音波の周波数fuが500kHzの場合、超音波の半波長は1000nsecであり、ゼロクロス点の時間間隔もほぼ同じ1000nsecである。
【0035】
このため、短い時間間隔で複数回の計測を行い、隣接する2回計測の間(例えば、Vin#1とVin#2)、ゼロクロス点の検出時刻が、ゼロクロス点の時間間隔1000nsecを超えて変動することは、まずありえないことが分かった。また、超音波受信信号Vinがマイナスからゼロを通過するプラスゼロクロス点同士の時間間隔や、超音波受信信号Vinがプラスからゼロを通過するマイナスゼロクロス点同士の時間間隔は、ほぼ2000nsecである。
【0036】
本発明は、このようなゼロクロス点の時間間隔と変動との関係に着目し、超音波が繰り返し送受信される複数の計測回i(i=1~Xの整数)のそれぞれにおいて、超音波受信信号Vin#iがVsを超えた後に検出した複数のゼロクロス点のゼロクロス時刻を時刻配列D#iに格納し、同一格納位置におけるゼロクロス時刻間の時刻差が最小となるよう、各時刻配列D#iにおけるゼロクロス時刻の格納位置をシフトするシフト処理を行うようにしたものである。そして、シフト処理後の時刻配列から、流量計算に使用するゼロクロス時刻を抽出し、これらゼロクロス時刻を基に伝搬時間差Δtを算出して、流量Qを算出するようにしたものである。
【0037】
次に、図4図5を参照して、本実施例の計測ユニット1の動作について説明する。図4は計測ユニット1のトランスデューサ11,12と送信部13と受信部14と切替部15と時間計測部16と記憶部17の動作を説明するフローチャートである。図5は計測ユニット1のシフト処理部18と通信部19の動作を説明するフローチャートである。
【0038】
本実施例では、超音波を順逆両方向で送受信する計測をX(Xは2以上の整数)回実施するものとする。また、1回の超音波の送受信について、H=8個のゼロクロス時刻を計測するものとする。
【0039】
最初に、計測ユニット1の時間計測部16は、計測回数i(iは1~Xの整数)を1に初期化する(図4ステップS100)。
計測ユニット1のトランスデューサ11または12は、送信部13からの送信パルスに応じて、配管10内を流れる気体に対して超音波を送信する(図4ステップS101)。上記のとおり、順方向の場合はトランスデューサ11から超音波を送信し、逆方向の場合はトランスデューサ12から超音波を送信する。本実施例では、順方向から計測を開始するものとする。
【0040】
計測ユニット1の受信部14は、トランスデューサ11または12の出力信号を増幅して、超音波受信信号Vin#iを出力する(図4ステップS102)。順方向の場合は、トランスデューサ12がトランスデューサ11から送出された超音波を受信して、受信部14がトランスデューサ12の出力信号を増幅する。逆方向の場合は、トランスデューサ11がトランスデューサ12から送出された超音波を受信して、受信部14がトランスデューサ11の出力信号を増幅する。
【0041】
計測ユニット1の時間計測部16は、超音波受信信号Vin#iを予め設定された閾値電圧Vsと比較する(図4ステップS103)。
時間計測部16は、Vin#i≦Vs、すなわち超音波受信信号Vin#iが閾値電圧Vs以下の場合、ゼロクロス時刻の検出を開始しない。時間計測部16は、Vin#i>Vs、すなわち超音波受信信号Vin#iが閾値電圧Vsを超えた場合、ゼロクロス時刻の検出を開始する。
【0042】
時間計測部16は、超音波受信信号Vin#iが閾値電圧Vsを超えた場合、記憶部17の時刻配列D#iの格納位置kを予め設定されているK(例えばK=3)番目に初期化する(図4ステップS104)。そして、時間計測部16は、超音波受信信号Vin#iのゼロクロス点かどうか確認する(図4ステップS105)。
【0043】
時間計測部16は、超音波受信信号Vin#iのゼロクロス点を検出したVin#iの時刻をゼロクロス時刻Tzとし(図4ステップS106)、ゼロクロス時刻Tzの値を記憶部17の時刻配列D#iの格納位置kに格納する(図4ステップS107)。
【0044】
ゼロクロス時刻Tzの格納後、時間計測部16は、格納位置kを1増やし(図4ステップS108)、格納位置k=K+Hに達したかどうか、すなわちH個のゼロクロス時刻Tzを計測し終えたかどうかを判定する(図4ステップS109)。時間計測部16は、H個のゼロクロス時刻Tzを計測し終えていない場合、ステップS105に戻る。
こうして、時刻配列D#iの格納位置kを更新しながら、H個のゼロクロス時刻Tzを順番に計測し、格納位置kに格納する。
【0045】
H個のゼロクロス時刻Tzの計測が終了した場合、1方向の計測終了となる。順逆両方向の計測が終了していない場合(図4ステップS110においてNO)、切替部15は、方向の切り替えを行う(図4ステップS111)。例えば順方向についてH個のゼロクロス時刻Tzの計測が終了して、逆方向の計測が終了していない場合、切替部15は、逆方向への切り替えを行う。上記のとおり、逆方向の場合、切替部15は、送信部13とトランスデューサ12とを接続し、トランスデューサ11と受信部14とを接続する。
【0046】
こうして、逆方向についてステップS101~S109の処理が上記と同様に行われる。なお、記憶部17の時刻配列D#iは、順方向と逆方向で別個に設けられている。
逆方向についてH個のゼロクロス時刻Tzの計測が終了すると、順逆両方向の計測終了となるので、時間計測部16は、計測回数iを1増やす(図4ステップS112)。
【0047】
計測回数iがXを超えておらず、順逆両方向X回の計測が終了していない場合(図4ステップS113においてNO)、切替部15は、方向の切り替えを行う(ステップS111)。ここでは、切替部15は、順方向への切り替えを行う。上記のとおり、順方向の場合、切替部15は、送信部13とトランスデューサ11とを接続し、トランスデューサ12と受信部14とを接続する。
【0048】
こうして、順逆両方向についての計測が繰り返し実行される。計測回数iがXを超えたとき(ステップS113においてYES)、順逆両方向X回の計測終了となる。
【0049】
一方、シフト処理部18は、順方向または逆方向のどちらかについてH個のゼロクロス時刻Tzを計測し終えたとき(図4ステップS109、図5ステップS200においてYES)、H個のゼロクロス時刻Tzを計測し終えた方向についてシフト処理を実施する(図5ステップS201)。具体的には、シフト処理部18は、時刻配列D#iの格納位置kが同一で、かつ計測回が異なるゼロクロス時刻間の時刻差が最小となるように、個々の時刻配列D#iにおけるゼロクロス時刻の格納位置をシフトする。
【0050】
図6(A)~図6(E)を参照して、シフト処理部18と通信部19の動作について説明する。なお、シフト処理と送信処理とは、順逆の方向毎に実施されるが、ここでは順方向または逆方向の1方向についてのみ説明する。
【0051】
本実施例では、H=8個のゼロクロス時刻TzをX=3回計測する例で説明する。初回(i=1)の計測で得られたゼロクロス時刻Tzは{16,17,18,19,20,21,22,23}、2回目(i=2)の計測で得られたゼロクロス時刻Tzは{14,15,16,17,18,19,20,21}、最後の3回目(i=3)の計測で得られたゼロクロス時刻Tzは{16,17,18,19,20,21,22,23}であったとする。これにより、初回の計測で得られたゼロクロス時刻Tzは、記憶部17の時刻配列D#1に図6(A)のように格納される。
【0052】
図6の例では、時刻配列D#i(i=1~3)の格納位置kに格納されるゼロクロス時刻Tzは、格納位置kの前後に少なくとも2個ずつオフセットが設けられている。これらオフセットは、格納位置k=K(本実施例ではK=3)から格納を開始したゼロクロス時刻Tzを、損失することなく前後にシフトさせるためである。これにより、少なくとも格納位置は全部で12個となる。
シフト処理部18は、時刻配列D#1に格納された初回のゼロクロス時刻Tzについてはシフト無しとする(シフト量Sfは0)。
【0053】
次に、通信部19は、シフト処理後の記憶部17の時刻配列D#1に格納されたゼロクロス時刻Tzの値のうち、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzの値と、シフト処理部18におけるシフト量Sfの情報とを演算ユニット2に送信する(図5ステップS202)。通信部19は、初回の計測で得られたゼロクロス時刻Tzについては、送信処理の対象の時刻配列D#1に格納された全てのゼロクロス時刻Tzを、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzとして送信する。上記のとおり、初回のシフト量Sfは0である。
【0054】
次に、2回目(i=2)のゼロクロス時刻Tzの計測が終了したとき(ステップS109、ステップS200においてYES)、2回目の計測で得られたゼロクロス時刻Tzは、記憶部17の時刻配列D#2に図6(B)のように格納される。
【0055】
シフト処理部18は、時刻配列D#2に格納された2回目のゼロクロス時刻Tzと時刻配列D#1に格納された初回のゼロクロス時刻Tzとを同一の格納位置k毎に比較し、同一の格納位置kのゼロクロス時刻Tz間の差が最小となるように、2回目のゼロクロス時刻Tzの格納位置kをシフトする(ステップS201)。具体的には、シフト処理部18は、時刻配列D#2の各ゼロクロス時刻Tzを、図6(C)に示すように。左側に2つ分シフトさせるようにすればよい(左2シフト)。
【0056】
通信部19は、シフト処理後の記憶部17の時刻配列D#2に格納されたゼロクロス時刻Tzの値のうち、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzの値と、シフト処理部18におけるシフト量Sfの情報とを演算ユニット2に送信する(ステップS202)。通信部19は、時刻配列D#2に格納されたゼロクロス時刻Tzの値のうち、送信済みの他の時刻配列D#1の同一の格納位置kに値が格納されているゼロクロス時刻Tzのみを、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzの値とする。
【0057】
図6(C)の例では、時刻配列D#2に格納されたゼロクロス時刻Tz={14,15,16,17,18,19,20,21}のうち、他の時刻配列D#1の同一の格納位置kに値が格納されているゼロクロス時刻Tzは、{16,17,18,19,20,21}である。したがって、通信部19は、ゼロクロス時刻Tz={16,17,18,19,20,21}を演算ユニット2に送信する。時刻配列D#2の先頭の2つのゼロクロス時刻Tz={14,15}は、流量計算では使用されないものとされる。上記のとおり、2回目のシフト量Sfは左2である。
【0058】
次に、3回目(i=3)のゼロクロス時刻Tzの計測が終了したとき(ステップS109、ステップS200においてYES)、3回目の計測で得られたゼロクロス時刻Tzは、記憶部17の時刻配列D#3に図6(D)のように格納される。
【0059】
シフト処理部18は、時刻配列D#3に格納された3回目のゼロクロス時刻Tzと時刻配列D#1に格納された初回のゼロクロス時刻Tzとを同一の格納位置k毎に比較し、同一の格納位置kのゼロクロス時刻Tz間の差が最小となるように、3回目のゼロクロス時刻Tzの格納位置kをシフトする(ステップS201)。図6(D)の例では、同一の格納位置kのゼロクロス時刻Tz間の差が既に最小となっているので、シフト処理部18はシフト無しとする。すなわち、図6(E)に示すようにシフト量Sfは0である。
【0060】
通信部19は、シフト処理後の記憶部17の時刻配列D#3に格納されたゼロクロス時刻Tzの値のうち、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzの値と、シフト処理部18におけるシフト量Sfの情報とを演算ユニット2に送信する(ステップS202)。通信部19は、時刻配列D#3に格納されたゼロクロス時刻Tzの値のうち、送信済みの他の時刻配列D#1,D#2のうち少なくとも1つの同一の格納位置kに値が格納されているゼロクロス時刻Tzのみを、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzの値とする。
【0061】
図6(E)の例では、時刻配列D#3に格納されたゼロクロス時刻Tz={16,17,18,19,20,21,22,23}のうち、他の時刻配列D#1,D#2の何れか1つの同一の格納位置kに値が格納されているゼロクロス時刻Tzは、{16,17,18,19,20,21,22,23}である。したがって、通信部19は、ゼロクロス時刻Tz={16,17,18,19,20,21,22,23}を演算ユニット2に送信する。上記のとおり、3回目のシフト量Sfは0である。
【0062】
以上のように、通信部19は、送信処理の対象の計測回の時刻配列に格納されたゼロクロス時刻Tzのうち、順逆の方向が同一で計測回が異なる送信済みの少なくとも1回分の時刻配列の同一の格納位置kに値が格納されているゼロクロス時刻を、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzの値とする。
こうして、シフト処理部18と通信部19の処理が終了する。シフト処理部18と通信部19とは、図5図6で説明した処理を計測回毎および順逆の方向毎に実施すればよい。
【0063】
図7は演算ユニット2の動作を説明するフローチャートである。演算ユニット2の通信部20は、計測ユニット1から送信されたゼロクロス時刻Tzとシフト量Sfの情報を受信する(図7ステップS300)。
【0064】
演算ユニット2の流量算出部21は、順逆両方向についてX回分の情報を受信したかどうかを判定する(図7ステップS301)。流量算出部21は、順逆両方向についてX回分の情報を受信し終えた場合(ステップS301においてYES)、受信した情報の中からシフト量Sfの情報に基づいて、流量計算に使用するゼロクロス時刻Tzの値を順逆の方向毎に取得する(図7ステップS302)。
【0065】
例えば図6(A)~図6(E)の例では、初回の計測においてゼロクロス時刻Tz={16,17,18,19,20,21,22,23}とシフト量Sf{0}の情報が計測ユニット1から送信される。2回目の計測においては、ゼロクロス時刻Tz={16,17,18,19,20,21}とシフト量Sf{左2}の情報が計測ユニット1から送信される。3回目の計測においては、ゼロクロス時刻Tz={16,17,18,19,20,21,22,23}とシフト量Sf{0}の情報が計測ユニット1から送信される。
【0066】
流量算出部21は、シフト処理によって欠けが生じたゼロクロス時刻Tzをシフト処理の情報(シフト量Sf)に基づいて特定し、特定したゼロクロス時刻Tzの時間軸上の位置と対応する位置のゼロクロス時刻Tzを、順逆の方向が同一で計測回が異なるX回分のゼロクロス時刻Tzから除いた結果を、流量計算に使用するゼロクロス時刻Tzとする。
【0067】
ここで、時間軸上の位置が対応する位置にあるゼロクロス時刻Tzとは、例えば図2の異なる計測回の超音波受信信号Vin#1,Vin#2において、横軸上の位置がほぼ同じ位置にあるゼロクロス時刻Tzのことを言う。図6(E)の例で言えば、時刻配列D#iの格納位置kが同一で、かつ計測回が異なるゼロクロス時刻Tzに相当する。
【0068】
例えば図6(E)の例の場合、2回目の計測のシフト量Sf{左2}の情報により、2回目の計測のゼロクロス時刻Tzは、後端(図6(E)の右端)の2つの時刻が欠けていることが分かる。したがって、流量算出部21は、後端の2つの値を全ての計測回から除いたゼロクロス時刻Tz、図6(E)の例で言えば格納位置k=3~8の位置のゼロクロス時刻Tzを、流量計算に使用するゼロクロス時刻Tzとする。
流量算出部21は、以上のようなステップS302の処理を順逆の方向毎に行えばよい。
【0069】
なお、本実施例と反対に、例えば2回目の計測時に時刻配列D#2の各ゼロクロス時刻Tzを右側に2つ分シフトさせた場合には、格納位置k=5~10の位置のゼロクロス時刻Tzが、流量計算に使用するゼロクロス時刻Tzとなることは言うまでもない。
【0070】
そして、流量算出部21は、ステップS302で取得した順方向のゼロクロス時刻Tzの平均値Tz_ave1を算出し、トランスデューサ11から超音波を送信した時刻からゼロクロス時刻Tzの平均値Tz_ave1までの時間を順方向の超音波の伝搬時間t1とする。同様に、流量算出部21は、ステップS302で取得した逆方向のゼロクロス時刻Tzの平均値Tz_ave2を算出し、トランスデューサ12から超音波を送信した時刻からゼロクロス時刻Tzの平均値Tz_ave2までの時間を逆方向の超音波の伝搬時間t2とする。そして、流量算出部21は、伝搬時間t1と伝搬時間t2との差を伝搬時間差Δtとして算出する(図7ステップS303)。
【0071】
トランスデューサ11から超音波を送信した時刻は、例えば順方向の計測のときに流量算出部21から通信部20を通じて計測ユニット1の送信部13に送信開始信号を送信した時刻とすればよい。送信開始信号を受信した送信部13は、トランスデューサ11に対して駆動用の送信パルスを供給する。同様に、トランスデューサ12から超音波を送信した時刻は、例えば逆方向の計測のときに流量算出部21から通信部20を通じて計測ユニット1の送信部13に送信開始信号を送信した時刻とすればよい。送信開始信号を受信した送信部13は、トランスデューサ12に対して駆動用の送信パルスを供給する。
【0072】
なお、平均値Tz_ave1,Tz_ave2を算出する際に、流量の脈動の影響を低減するため、平均値Tz_ave1,Tz_ave2に対してN次のFIRフィルタ(Nは2以上の整数)を用いてデジタルフィルタ処理を実施してもよい。具体的には、流量算出部21は、平均値Tz_ave1[i]を算出したときに、所定のN+1個の係数k[j](jは0~Nの整数)と、N+1個の直近の平均値Tz_ave1[i-j]とを用いて、以下の式により、平均値Tz_ave1[i]に対してデジタルフィルタ処理を実施する。
【0073】
【数1】
【0074】
式(1)のTz_ave1*[i]はフィルタ処理後の平均値Tz_ave1[i]である。平均値Tz_ave2についても同様にデジタルフィルタ処理を実施することができる。そして、流量算出部21は、フィルタ処理後の平均値Tz_ave1から上記のように順方向の超音波の伝搬時間t1を算出し、フィルタ処理後の平均値Tz_ave2から逆方向の超音波の伝搬時間t2を算出すればよい。
【0075】
流量算出部21は、伝搬時間差Δtから流量Qを算出する(図7ステップS304)。流量Qを求める演算手法については、一般的な超音波流量計で用いられている公知の計算式を用いればよく、詳細な説明は省略する。
【0076】
演算ユニット2の流量出力部22は、通信ネットワークを介して上位装置(不図示)と接続され、定期的あるいは上位装置からの出力指示に応じて、流量算出部21が算出した流量Qの値を上位装置へ送信する(図7ステップS305)。
【0077】
上記のように、1回の計測あたりH=8個のゼロクロス時刻Tzを計測し、ゼロクロス時刻Tzが1つあたり32bitであったとすると、X=3回の計測を行ったときに全てのゼロクロス時刻Tzを演算ユニット2に送信する場合、一方向あたり3×8×32=768bitを送信する必要がある。
【0078】
一方、本実施例では、2回目の計測時における2つのゼロクロス時刻Tzを送信しないので、一方向あたり32×2=64bitの送信を削減できる。また、シフト量Sfは、発明の原理の説明から明らかなように、{左2シフト、0、右2シフト}の何れかになるので、2bitで表現できる。つまり、シフト量Sfは、一方向あたり2×3=6bitで送信できる。
【0079】
したがって、本実施例では、一方向あたり710bitを送信すればよく、一方向あたり(32×2-2×3)=58bitの送信を削減できるので、この送信データ量の削減分だけ超音波流量計の消費電力を削減することが可能となる。
【0080】
なお、本実施例の動作では説明していないが、順逆両方向X回の計測が終了し、情報の送信が全て終了した後に、時間計測部16は、記憶部17の時刻配列D#iの全格納位置の値を削除する(空白にする)。この時間計測部16の動作は以降の実施例においても同じである。
【0081】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第1の実施例では、計測ユニット1からシフト量Sfの情報を演算ユニット2に送信しているが、シフト量Sfでなく、シフト処理後のゼロクロス時刻Tzが格納された各時刻配列D#iの先頭位置Lの情報を演算ユニット2に送信するようにしてもよい。本実施例においても、超音波流量計の構成は第1の実施例と同様であるので、図1の符号を用いて説明する。
【0082】
計測ユニット1のトランスデューサ11,12と送信部13と受信部14と切替部15と時間計測部16と記憶部17の動作は、第1の実施例で説明したとおりである。
【0083】
図8は本実施例の計測ユニット1のシフト処理部18と通信部19の動作を説明するフローチャートである。シフト処理部18の動作は第1の実施例と同じである。
図9(A)~図9(E)は、それぞれ第1の実施例の図6(A)~図6(E)に対応している。第1の実施例で説明したとおり、初回の計測で得られたゼロクロス時刻Tzについてはシフト無しとするので、初回の計測で得られたゼロクロス時刻Tzが格納された時刻配列D#1の先頭位置Lは3である(図9(A))。
【0084】
計測ユニット1の通信部19は、時刻配列D#1に格納された全てのゼロクロス時刻Tzの値と、時刻配列D#1の先頭位置Lの情報とを演算ユニット2に送信する(図8ステップS202a)。
【0085】
2回目の計測では、シフト処理部18は時刻配列D#2の各ゼロクロス時刻Tzを左側に2つ分シフトさせたので、2回目の計測で得られたゼロクロス時刻Tzが格納された時刻配列D#2の先頭位置は1である(図9(C))。
【0086】
通信部19は、シフト処理後の記憶部17の時刻配列D#2に格納されたゼロクロス時刻Tzの値のうち、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tz={16,17,18,19,20,21}の値と、時刻配列D#2の先頭位置Lの情報とを演算ユニット2に送信する(ステップS202a)。
【0087】
3回目の計測では、シフト処理部18はシフト無しとしたので、3回目の計測で得られたゼロクロス時刻Tzが格納された時刻配列D#3の先頭位置は3である(図9(E))。
【0088】
通信部19は、シフト処理後の記憶部17の時刻配列D#3に格納されたゼロクロス時刻Tzの値のうち、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tz={16,17,18,19,20,21,22,23}の値と、時刻配列D#3の先頭位置Lの情報とを演算ユニット2に送信する(ステップS202a)。
第1の実施例と同様に、シフト処理部18と通信部19とは、図8図9で説明した処理を計測回毎および順逆の方向毎に実施すればよい。
【0089】
図10は本実施例の演算ユニット2の動作を説明するフローチャートである。演算ユニット2の通信部20は、計測ユニット1から送信されたゼロクロス時刻Tzと時刻配列D#iの先頭位置Lの情報を受信する(図10ステップS300a)。
【0090】
演算ユニット2の流量算出部21は、順逆両方向についてX回分の情報を受信し終えた場合(図10ステップS301においてYES)、受信した情報の中から時刻配列D#iの先頭位置Lの情報に基づいて、流量計算に使用するゼロクロス時刻Tzの値を順逆の方向毎に取得する(図10ステップS302a)。
【0091】
第1の実施例と同様に、流量算出部21は、シフト処理によって欠けが生じたゼロクロス時刻Tzをシフト処理の情報(時刻配列D#iの先頭位置L)に基づいて特定し、特定したゼロクロス時刻Tzの時間軸上の位置と対応する位置のゼロクロス時刻Tzを、順逆の方向が同一で計測回が異なるX回分のゼロクロス時刻Tzから除いた結果を、流量計算に使用するゼロクロス時刻Tzとすればよい。
【0092】
例えば図9(E)の例の場合、シフト無しの場合の時刻配列D#iの先頭位置Lは3であるが、時刻配列D#2の先頭位置L=1の情報により、2回目の計測のゼロクロス時刻Tzは、後端の2つの時刻が欠けていることが分かる。したがって、流量算出部21は、第1の実施例と同様に、後端の2つの値を全ての計測回から除いたゼロクロス時刻Tzを、流量計算に使用するゼロクロス時刻Tzとする。
流量算出部21は、以上のようなステップS302aの処理を順逆の方向毎に行えばよい。
【0093】
流量算出部21のステップS303,S304の動作および流量出力部22の動作(ステップS305)は、第1の実施例で説明したとおりである。
本実施例では、第1の実施例と同様に、2回目の計測時における2つのゼロクロス時刻Tzを送信しない。また、時刻配列D#iの先頭位置Lは、発明の原理の説明から明らかなように、{1,3,5}の何れかになるので、2bitで表現できる。したがって、本実施例では、第1の実施例と同様に送信データ量を削減することができ、超音波流量計の消費電力を削減することが可能となる。
【0094】
[第3の実施例]
次に、本発明の第3の実施例について説明する。第1、第2の実施例では、計測の度にゼロクロス時刻Tzと、シフト量Sfまたは時刻配列D#iの先頭位置Lの情報とを計測ユニット1から演算ユニット2に送信しているが、順逆両方向X回の計測が終了した後に送信するようにしてもよい。本実施例においても、超音波流量計の構成は第1の実施例と同様であるので、図1の符号を用いて説明する。
【0095】
計測ユニット1のトランスデューサ11,12と送信部13と受信部14と切替部15と時間計測部16と記憶部17の動作は、第1の実施例で説明したとおりである。
【0096】
図11は本実施例の計測ユニット1のシフト処理部18と通信部19の動作を説明するフローチャートである。シフト処理部18の動作は第1の実施例と同じである。
本実施例の計測ユニット1の通信部19は、シフト処理部18におけるシフト処理終了後、順逆両方向X回の計測が終了したかどうかを判定する(図11ステップS203)。ステップS113で説明したとおり、計測回数iがXを超えておらず、順逆両方向X回の計測が終了していない場合、ステップS200に戻る。
【0097】
通信部19は、計測回数iがXを超え、順逆両方向X回の計測が終了した場合(ステップS203においてYES)、記憶部17の時刻配列D#iに格納されたゼロクロス時刻Tzの値のうち、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzの値と、順逆両方向X回分のシフト量Sfの情報とを演算ユニット2に送信する(図11ステップS204)。
【0098】
本実施例では、通信部19は、送信処理の対象のX回分の時刻配列D#iに格納されたゼロクロス時刻Tzのうち、順逆の方向が同一で計測回が異なる全ての時刻配列の同一の格納位置kに値が格納されているゼロクロス時刻Tzを、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzの値とすればよい。
【0099】
例えば図6(E)の例の場合、2回目の計測のゼロクロス時刻Tzは、後端(図6(E)の右端)の2つの時刻が欠けている。したがって、通信部19は、後端の2つのゼロクロス時刻を全ての計測回から除いたゼロクロス時刻Tz、図6(E)の例で言えば格納位置k=3~8の位置のゼロクロス時刻Tzを、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzとする。通信部19は、以上のように流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzを、順逆の方向毎に抽出すればよい。
【0100】
また、通信部19は、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzの値を特定する際、送信処理の対象のX回についてシフト処理で適用した個々のシフト量の適用回数をそれぞれ計数し、得られた適用回数の大小判定の結果に基づいて、予め設定されている基準格納位置に格納されているX回分のゼロクロス時刻Tzを、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzの値としてもよい。
【0101】
例えば図6(E)の例の場合、送信処理の対象のX=3回についてシフト処理で適用した個々のシフト量の適用回数は、シフト量Sf{0}が2回、シフト量Sf{左2}が1回である。シフト量Sf{0}を除く適用回数の最多はシフト量Sf{左2}である。
通信部19は、シフト量Sf{0}を除く適用回数が最も多いシフト量Sf{左2}に対応する基準格納位置k=3~8に格納されているX=3回分のゼロクロス時刻Tzを、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzの値とする。シフト量Sf{0}を除く適用回数が最も多いシフト量がSf{右2}である場合、シフト量Sf{右2}に対応する基準格納位置はk=5~10である。また、左2シフト、右2シフトが発生せず、シフト量Sf{0}の適用回数の最多である場合、シフト量Sf{0}に対応する基準格納位置はk=3~10である。通信部19は、以上のように流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzを、順逆の方向毎に抽出すればよい。
【0102】
図12は本実施例の演算ユニット2の動作を説明するフローチャートである。演算ユニット2の通信部20は、計測ユニット1から送信されたゼロクロス時刻Tzとシフト量Sfの情報を受信する(図12ステップS300b)。
【0103】
演算ユニット2の流量算出部21は、受信した情報のうち、順方向のゼロクロス時刻Tzと逆方向のゼロクロス時刻Tzとをそのまま流量計算に使用するゼロクロス時刻Tzの値として取得する(図12ステップS302b)。
【0104】
流量算出部21のステップS303,S304の動作および流量出力部22の動作(ステップS305)は、第1の実施例で説明したとおりである。
本実施例では、全ての計測回で計測したゼロクロス時刻Tzを基に、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzを順逆の方向毎に抽出した上で計測ユニット1から演算ユニット2に送信しているので、第1の実施例と比較して送信データ量を更に削減することができ、超音波流量計の消費電力を更に削減することが可能となる。例えば図6(E)の例では、一方向あたりの送信データ量は582bitとなる。
【0105】
なお、本実施例では、シフト処理の情報として、第1の実施例と同様にシフト量Sfの情報を計測ユニット1から演算ユニット2に送信しているが、第2の実施例と同様に時刻配列D#iの先頭位置Lの情報を送信するようにしてもよい。
【0106】
[第4の実施例]
次に、本発明の第4の実施例について説明する。第3の実施例では、X回の計測中に、時刻配列D#iのゼロクロス時刻Tzを左側に2つ分シフトさせる左2シフトと、ゼロクロス時刻Tzを右側に2つ分シフトさせる右2シフトとが発生してしまうと、格納位置k=5~8の位置のゼロクロス時刻Tzを、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzとしてしまう。通常の状態では、X回の計測中に左2シフトと右2シフトが両方共発生することはないが、ノイズなどの影響により左2シフトと右2シフトが両方共発生する場合があり得る。
【0107】
そこで、本実施例では、X回の計測中に左2シフトと右2シフトが両方共発生した場合の補間処理について説明する。図13は本実施例に係る超音波流量計の構成を示すブロック図である。
本実施例の計測ユニット1は、トランスデューサ11,12と、送信部13と、受信部14と、切替部15と、時間計測部16と、記憶部17と、シフト処理部18と、通信部19と、補間処理部31とを備えている。
【0108】
計測ユニット1のトランスデューサ11,12と送信部13と受信部14と切替部15と時間計測部16と記憶部17の動作は、第1の実施例で説明したとおりである。
【0109】
図6(A)、図14図15(A)~図15(E)、図16を参照して、本実施例の計測ユニット1のシフト処理部18と補間処理部31と通信部19の動作について説明する。シフト処理と補間処理と送信処理とは、順逆の方向毎に実施されるが、ここでは順方向または逆方向の1方向についてのみ説明する。
【0110】
本実施例では、第1の実施例と同様にH=8個のゼロクロス時刻TzをX=3回計測する例で説明する。初回(i=1)の計測で得られたゼロクロス時刻Tzは{16,17,18,19,20,21,22,23}、2回目(i=2)の計測で得られたゼロクロス時刻Tzは{18,19,20,21,22,23,24,25}、最後の3回目(i=3)の計測で得られたゼロクロス時刻Tzは{14,15,16,17,18,19,20,21}であったとする。これにより、初回の計測で得られたゼロクロス時刻Tzは、記憶部17の時刻配列D#1に図6(A)のように格納される。
【0111】
シフト処理部18の動作(図14ステップS201)は、第1の実施例と同じである。補間処理部31は、時刻配列D#1の格納位置k=3~10のゼロクロス時刻Tzの値に欠けが生じている場合、欠けているゼロクロス時刻Tzを補う補間処理を行う(図14ステップS205)。補間処理部31は、シフト処理後の記憶部17の時刻配列D#1の格納位置k=3~10の値に欠けが生じていないので、補間の必要無しとする。
【0112】
次に、2回目(i=2)のゼロクロス時刻Tzの計測が終了したとき(ステップS109、ステップS200においてYES)、2回目の計測で得られたゼロクロス時刻Tzは、記憶部17の時刻配列D#2に図15(A)のように格納される。
【0113】
第1の実施例で説明した動作により、2回目の計測では、シフト処理部18は、時刻配列D#2の各ゼロクロス時刻Tzを、図15(B)に示すように、右側に2つ分シフトさせる(ステップS201)。
【0114】
補間処理部31は、時刻配列D#2の格納位置k=3~10のゼロクロス時刻Tzのうち、格納位置k=3,4の値に欠けが生じているので、欠けているゼロクロス時刻Tzを補う補間処理を行う(ステップS205)。具体的には、補間処理部31は、直前の計測回の時刻配列D#1の格納位置k=3,4に格納されたゼロクロス時刻Tz=16,17を、それぞれ時刻配列D#2の格納位置k=3,4に格納する(図15(C))。すなわち、時刻配列D#2の欠けが生じている格納位置kの値を、直前の計測回の時刻配列D#1の同一の格納位置kから取得する。
【0115】
次に、3回目(i=3)のゼロクロス時刻Tzの計測が終了したとき(ステップS109、ステップS200においてYES)、3回目の計測で得られたゼロクロス時刻Tzは、記憶部17の時刻配列D#3に図15(D)のように格納される。
【0116】
第1の実施例で説明した動作により、3回目の計測では、シフト処理部18は、時刻配列D#3の各ゼロクロス時刻Tzを、図15(E)に示すように、左側に2つ分シフトさせる(ステップS201)。
【0117】
補間処理部31は、時刻配列D#3の格納位置k=3~10のゼロクロス時刻Tzのうち、格納位置k=9,10の値に欠けが生じているので、欠けているゼロクロス時刻Tzを補う補間処理を行う(ステップS205)。具体的には、補間処理部31は、直前の計測回の時刻配列D#2の格納位置k=9,10に格納されたゼロクロス時刻Tz=22,23を、それぞれ時刻配列D#3の格納位置k=9,10に格納する(図16)。すなわち、時刻配列D#3の欠けが生じている格納位置kの値を、直前の計測回の時刻配列D#2の同一の格納位置kから取得する。
【0118】
通信部19は、計測回数iがXを超え、順逆両方向X回の計測が終了した場合(図14ステップS203においてYES)、記憶部17の時刻配列D#iに格納されたゼロクロス時刻Tzの値のうち、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzの値と、順逆両方向X回分のシフト量Sfの情報とを演算ユニット2に送信する(図14ステップS204)。
【0119】
本実施例では、第3の実施例で説明した動作により、送信処理の対象のX回分の時刻配列D#iに格納されたゼロクロス時刻Tzのうち、格納位置k=3~10に格納されているゼロクロス時刻Tzが、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzの値となる。
演算ユニット2の構成および動作は、第3の実施例と同じである。
【0120】
こうして、本実施例では、ゼロクロス時刻Tzの補間処理を実施することにより、X回の計測中に左2シフトと右2シフトが両方共発生した場合でも、計測誤差を抑えることができる。
【0121】
本実施例では、シフト処理の情報として、第1の実施例と同様にシフト量Sfの情報を計測ユニット1から演算ユニット2に送信しているが、第2の実施例と同様に時刻配列D#iの先頭位置Lの情報を送信するようにしてもよい。
【0122】
[第5の実施例]
第1~第4の実施例では、計測ユニット1から演算ユニット2にデータを送信するようにしているが、演算ユニット2から計測ユニット1の記憶部に格納されたゼロクロス時刻のデータを読み出すことも可能である。図17は本実施例に係る超音波流量計の構成を示すブロック図である。
【0123】
本実施例の計測ユニット1は、トランスデューサ11,12と、送信部13と、受信部14と、切替部15と、時間計測部16と、記憶部17と、シフト処理部18と、通信部19aとを備えている。
本実施例の演算ユニット2は、通信部20aと、流量算出部21と、流量出力部22とを備えている。
【0124】
計測ユニット1のトランスデューサ11,12と送信部13と受信部14と切替部15と時間計測部16と記憶部17の動作は、第1の実施例で説明したとおりである。
図18は計測ユニット1のシフト処理部18と通信部19aの動作を説明するフローチャート、図19は演算ユニット2の動作を説明するフローチャートである。
【0125】
シフト処理部18の動作(図18ステップS201)は、第1の実施例と同じである。通信部19aは、順方向または逆方向のどちらかについてH個のゼロクロス時刻Tzを計測し終え、H個のゼロクロス時刻Tzを計測し終えた方向についてシフト処理が完了した後に、演算ユニット2に対して完了通知を行う(図18ステップS206)。
【0126】
演算ユニット2の通信部20aは、計測ユニット1からの完了通知を受信すると(図19ステップS306においてYES)、計測とシフト処理とが完了した方向および計測回のシフト処理の情報の既知のアドレス情報を計測ユニット1に送信し、このアドレス情報で特定される計測ユニット1の記憶部17の領域からシフト処理の情報(シフト量Sf)を通信部19aを介して読み出す(図19ステップS307)。こうして、計測とシフト処理とが完了した方向および計測回のシフト量Sfの情報を読み出すことができる。
【0127】
次に、通信部20aは、読み出したシフト量Sfの情報に基づいて、計測ユニット1の記憶部17の時刻配列D#1に格納されたゼロクロス時刻Tzの値のうち、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzの値を計測ユニット1から読み出す(図19ステップS308)。
図6(A)~図6(E)を参照して、ステップS308の通信部20aの動作について説明する。ステップS308の処理は、順逆の方向毎および計測回毎に実施されるが、ここでは順方向または逆方向の1方向についてのみ説明する。
【0128】
通信部20aは、初回(i=1)の計測で得られたゼロクロス時刻Tzについては、時刻配列D#1に格納された全てのゼロクロス時刻Tzを、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzとする(図6(A))。そこで、通信部20aは、記憶部17の時刻配列D#1の格納位置k=3~10の既知のアドレス情報を計測ユニット1に送信し、時刻配列D#1の格納位置k=3~10からゼロクロス時刻Tzを読み出す。
【0129】
続いて、通信部20aは、2回目(i=2)の計測で得られたゼロクロス時刻Tzについては、時刻配列D#2に格納されたゼロクロス時刻Tzの値のうち、格納位置k=3~8に格納されたゼロクロス時刻Tzを、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzとする(図6(C))。通信部20aは、記憶部17の時刻配列D#2の格納位置k=3~8の既知のアドレス情報を計測ユニット1に送信し、時刻配列D#2の格納位置k=3~8からゼロクロス時刻Tzを読み出す。
【0130】
次に、通信部20aは、3回目(i=3)の計測で得られたゼロクロス時刻Tzについては、時刻配列D#3に格納されたゼロクロス時刻Tzの値のうち、格納位置k=3~10に格納されたゼロクロス時刻Tzを、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzとする(図6(E))。通信部20aは、記憶部17の時刻配列D#3の格納位置k=3~10の既知のアドレス情報を計測ユニット1に送信し、時刻配列D#3の格納位置k=3~10からゼロクロス時刻Tzを読み出す。
【0131】
以上の説明から明らかなように、本実施例において流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzを特定する手法は、第1の実施例における通信部19における特定手法と同じである。
通信部20aは、ステップS307,S308の処理を計測回毎および順逆の方向毎に実施すればよい。
【0132】
演算ユニット2の流量算出部21は、順逆両方向についてX回分の情報を読み出したかどうかを判定する(図19ステップS309)。ステップS302~ステップS305の処理は第1の実施例で説明したとおりである。
こうして、本実施例では、演算ユニット2から計測ユニット1の記憶部17に格納されたゼロクロス時刻のデータを読み出す場合において第1の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0133】
本実施例では、シフト処理の情報として、第1の実施例と同様にシフト量Sfの情報を用いているが、第2の実施例と同様に時刻配列D#iの先頭位置Lの情報を用いてもよい。
【0134】
[第6の実施例]
第5の実施例では、計測の度に演算ユニット2がゼロクロス時刻Tzを計測ユニット1から読み出しているが、順逆両方向X回の計測が終了した後に読み出すようにしてもよい。本実施例においても、超音波流量計の構成は第5の実施例と同様であるので、図17の符号を用いて説明する。
【0135】
計測ユニット1のトランスデューサ11,12と送信部13と受信部14と切替部15と時間計測部16と記憶部17の動作は、第1の実施例で説明したとおりである。
図20は計測ユニット1のシフト処理部18と通信部19aの動作を説明するフローチャート、図21は演算ユニット2の動作を説明するフローチャートである。
【0136】
シフト処理部18の動作(図20ステップS201)は、第1の実施例と同じである。通信部19aは、計測回数iがXを超え、順逆両方向X回の計測が終了した場合(図20ステップS203においてYES)、演算ユニット2に対して完了通知を行う(図20ステップS207)。
【0137】
演算ユニット2の通信部20aは、計測ユニット1からの完了通知を受信すると(図21ステップS310においてYES)、順逆両方向X回分のシフト処理の情報の既知のアドレス情報を計測ユニット1に送信し、このアドレス情報で特定される計測ユニット1の記憶部17の領域からシフト処理の情報(シフト量Sf)を通信部19aを介して読み出す(図21ステップS311)。こうして、順逆両方向X回分のシフト量Sfの情報を読み出すことができる。
【0138】
次に、通信部20aは、読み出したシフト量Sfの情報に基づいて、計測ユニット1の記憶部17の時刻配列D#iに格納されたゼロクロス時刻Tzの値のうち、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzの値を計測ユニット1から読み出す(図21ステップS312)。
【0139】
具体的には、通信部20aは、時刻配列D#iに格納されたゼロクロス時刻Tzの値のうち、格納位置k=3~8に格納されたゼロクロス時刻Tzを、流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzとする(図6(E))。通信部20aは、記憶部17の時刻配列D#1~D#3の格納位置k=3~8の既知のアドレス情報を計測ユニット1に送信し、時刻配列D#1~D#3の格納位置k=3~8からゼロクロス時刻Tzを読み出す。
【0140】
以上の説明から明らかなように、本実施例において流量計算に使用される可能性があるゼロクロス時刻Tzを特定する手法は、第3の実施例における通信部19における特定手法と同じである。
通信部20aは、ステップS312の処理を順逆の方向毎に実施すればよい。
【0141】
ステップS302b、ステップS303~ステップS305の処理は第3の実施例で説明したとおりである。
こうして、本実施例では、演算ユニット2から計測ユニット1の記憶部17に格納されたゼロクロス時刻のデータを読み出す場合において第3の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0142】
本実施例では、シフト処理の情報として、第1の実施例と同様にシフト量Sfの情報を用いているが、第2の実施例と同様に時刻配列D#iの先頭位置Lの情報を用いてもよい。
また、本実施例に第4の実施例で説明した補間処理を適用してもよい。
【0143】
第1~第6の実施例で説明した演算ユニット2は、CPU、記憶装置及びインターフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図22に示す。
【0144】
コンピュータは、CPU200と、記憶装置201と、インターフェース装置(以下、I/Fと略する)202とを備えている。I/F202には、通信部20,20aのうちハードウェア部の構成等が接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明の流量計測方法を実現させるためのプログラムは記憶装置201に格納される。CPU200は、記憶装置201に格納されたプログラムに従って第1~第6の実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明は、超音波流量計に適用することができる。
【符号の説明】
【0146】
1…計測ユニット、2…演算ユニット、10…配管、11,12…トランスデューサ、13…送信部、14…受信部、15…切替部、16…時間計測部、17…記憶部、18…シフト処理部、19,19a,20,20a…通信部、21…流量算出部、22…流量出力部、31…補間処理部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23