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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】タワークレーンの自動運転制御システム
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/22 20060101AFI20230905BHJP
   B66C 13/46 20060101ALI20230905BHJP
   B66C 23/16 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
B66C13/22 T
B66C13/46 F
B66C23/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019214148
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2021084746
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市村 元
(72)【発明者】
【氏名】松岡 明彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山本 真之
(72)【発明者】
【氏名】山内 博史
(72)【発明者】
【氏名】中村 保則
(72)【発明者】
【氏名】石田 正法
(72)【発明者】
【氏名】米本 謙一
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112178(JP,A)
【文献】特表2018-531201(JP,A)
【文献】特開2011-102167(JP,A)
【文献】国際公開第2015/068249(WO,A1)
【文献】特開2008-083777(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0031680(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/22
B66C 13/46
B66C 23/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場のタワークレーンは、制御ユニットが搭載された吊上げ治具を介して吊荷を吊上げ、
前記制御ユニットには、衛星測位アンテナが受信した衛星からの測位情報に基づき吊荷の位を把握する第1計測システムと、
立体カメラ及び三次元物体認識センサが計測した計測情報に基づき前記吊荷の位置及び周囲の状況を把握する第2計測システムと、が備えられ、
前記第1計測システム又は前記第2計測システムにより前記吊荷の荷取り及び取付けを自動運転制御し、
前記制御ユニットは、前記吊荷の荷取り位置又は取付け位置の近傍に達するまでは、前記第1計測システムの測位情報に基づき、前記吊荷の荷取り位置又は取付け位置の近傍に達した後は、前記第2計測システムの計測情報に切り替え
ことを特徴とするタワークレーンの自動運転制御システム。
【請求項2】
建設現場のタワークレーンは、制御ユニットが搭載された吊上げ治具を介して吊荷を吊上げ、
前記制御ユニットには、衛星測位アンテナが受信した衛星からの測位情報に基づき吊荷の位を把握する第1計測システムと、
立体カメラ及び三次元物体認識センサが計測した計測情報に基づき前記吊荷の位置及び周囲の状況を把握する第2計測システムと、が備えられ、
前記第1計測システム又は前記第2計測システムにより前記吊荷の荷取り及び取付けを自動運転制御し、
前記制御ユニットは、前記吊荷の荷取り位置又は取付け位置の近傍に達するまでは、前記第1計測システムの測位情報に基づき、前記吊荷の荷取り位置又は取付け位置の近傍に達した後は、前記第2計測システムの計測情報と前記第1計測システムの測位情報とを併用す
ことを特徴とするタワークレーンの自動運転制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタワークレーンの自動運転制御システムであって、前記第1計測システムの前記衛星測位アンテナは、前記制御ユニットの上部に取り付けられて衛星からの測位情報を受信し、
前記第2計測システムの前記立体カメラ及び三次元物体認識センサは、前記制御ユニットの下部の支持材に設けられた開口部を通して、吊荷及び周囲の状況を把握することを特徴とするタワークレーンの自動運転制御システム。
【請求項4】
請求項1乃至の何れか1項に記載のタワークレーンの自動運転制御システムであって、前記制御ユニットは、前記第1計測システムの測位情報がマルチパスの影響を受ける場合には、前記第2計測システムの計測情報に切り替えることを特徴とするタワークレーンの自動運転制御システム。
【請求項5】
請求項1乃至の何れか1項に記載のタワークレーンの自動運転制御システムであって、前記制御ユニットは、前記タワークレーンから吊り下げられた吊上げ治具により保持され、前記吊上げ治具は前記吊荷を上部から吊ることを特徴とするタワークレーンの自動運転制御システム。
【請求項6】
請求項1乃至の何れか1項に記載のタワークレーンの自動運転制御システムであって、前記吊荷の高さ位置は、前記制御ユニットの所定のポイントの高さ位置を測定し、前記吊上げ治具の高さ分を補正して算出することを特徴とするタワークレーンの自動運転制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タワークレーンの自動運転制御システムに係り、特に、建設現場でのタワークレーンによる吊荷の荷取り位置、及び取付け位置を自動的に計測して自動運転制御するタワークレーンの自動運転制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場においては、建設労働者の急速な高齢化や人手不足、外国人労働者の増加等の問題が深刻化しつつある。特に、熟練した作業や経験が要求されるタワークレーンのオペレータは、タワークレーン作業の安全性を担保しなければならない。また、タワークレーンの正確な運転技術により迅速なオペレーションが要求される。さらに、吊荷の傍に配置されタワークレーンのオペレータに吊荷の状態を連絡したり吊荷の運転を指示する補助者についてもタワークレーンのオペレータと同様に高齢化や人手不足、外国人労働者の増加等の問題が深刻化しつつある。
【0003】
建設現場のタワークレーンは、クレーン操作による「荷振れ」や吊荷と建築物等との衝突が無いように、熟練したオペレータが目視や過去の経験等によりタワークレーンの運転制御をしている。或いは、上述したタワークレーン操作の補助者に依存しながらタワークレーンの制御をしている。
【0004】
一方、建設現場においては、上述したタワークレーンの熟練したオペレータ不足への対策としてタワークレーン操作の自動化を目指した取り組みが提案されている。特に、タワークレーン操作に対する補助者が必須となるタワークレーンの吊荷の荷取り時又は取付け時の作業を完全に自動化することが目指されている。そのためには、タワークレーンによる吊荷の荷取り時又は取付け時において吊荷の荷取り位置、或いは取り付け位置を正確にかつ素早く認識する技術を確立することが重要となる。
【0005】
特許文献1は、タワークレーンのブームの移動を自動化することで作業の危険性を解消させるタワークレーンとその操作方法が開示されている。ここでは、タワークレーンのブームの移動を自動化することで作業の危険性を解消できるタワークレーンとその操作方法が開示されている。このタワークレーンは、発信装置からの信号を受信する受信装置と、この受信装置に接続されブームを発信装置の上に移動させるように制御する制御装置と、この制御装置により駆動されるブーム上下移動用の駆動装置とブーム回転移動用の駆動装置と、前記制御装置に接続されてフックの巻上げ・巻下げを制御する遠隔操作装置とを有し、任意の荷降ろし場所に対応でき、ブームの旋回移動を自動化して稼働の作業効率を上げることが記載されている。
【0006】
特許文献2は、吊荷の位置が常時把握できて自動運転化が可能なタワークレーン装置が開示されている。ここでは、フックブロックに備えられた全周プリズムをクレーン本体に備えたトータルステーションにより追尾してフックブロックの三次元位置を把握し、フックブロックの三次元位置をフィードバックしてフックブロックを所定の位置に運転する制御装置を備えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-278581号公報
【文献】特開2001-80881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
タワークレーンによる吊荷の荷取り位置、或いは取付け位置を認識する技術としては、人工衛星からの測位データを利用して吊荷の荷取り位置、或いは取付け位置を認識する手法が考えられる。また、タワークレーンに立体カメラ及び三次元物体認識センサを搭載して吊荷の荷取り位置、或いは取付け位置を計測する手法が開発されつつある。
【0009】
しかし、この人工衛星からの測位データを受信して吊荷の荷取り位置、或いは取付け位置を測位する計測手段は、タワークレーンを設置する建物近傍にマルチパスの影響があり、また、天空の視界が狭いことから測位精度が低下するという問題がある。
【0010】
一方、立体カメラ及び三次元物体認識センサによる計測手段については、近接した吊荷の位置や周囲の状況に関する高精度の制御には向いているが、対象物の位置や周囲の状況を素早く認識することには向いていないという問題がある。
【0011】
本願の目的は、かかる課題を解決し、タワークレーンによる吊荷の荷取り位置、及び取付け位置を自動で計測し、吊荷周囲の状況を把握してタワークレーンの正確、迅速でかつ安全な自動運転制御を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係るタワークレーンの自動運転制御システムは、建設現場のタワークレーンが、制御ユニットが搭載された吊上げ治具を介して吊荷を吊上げ、制御ユニットには、衛星測位アンテナが受信した衛星からの測位情報に基づき吊荷の位置及び周囲の状況を把握する第1計測システムと、立体カメラ及び三次元物体認識センサが計測した計測情報に基づき吊荷の位置及び周囲の状況を把握する第2計測システムと、が備えられ、第1計測システム又は第2計測システムにより吊荷の荷取り及び取付けを自動運転制御することを特徴とする。
【0013】
上記構成により、建設現場におけるタワークレーンの自動運転制御システムは、衛星からの測位情報に基づく第1計測システムと、立体カメラ及び三次元物体認識センサによる計測情報に基づく第2計測システムとが備えられている。すなわち、2つの異なる計測システムを切り替えたり併用したりできる。このように、それぞれの計測システムの特徴を生かし、吊荷、荷取り位置、及び荷取り位置を正確に計測し、タワークレーンの運転を迅速に精度良くかつ安全に制御することができる。
【0014】
また、タワークレーンの自動運転制御システムは、第1計測システムの衛星測位アンテナが、制御ユニットの上部に取り付けられて衛星からの測位情報を受信し、第2計測システムの立体カメラ及び三次元物体認識センサは、制御ユニットの下部の支持材に設けられた開口部を通して、吊荷及び周囲の状況を把握することが好ましい。このように、制御ユニットは、衛星測位アンテナを制御ユニットの上部に設置して第1計測システムにより衛星からの測位データを妨害や干渉なく受信することができ、また、吊荷位置、荷取り位置及び取付け位置を制御ユニットの下部に取り付けたカメラ等により妨害や干渉なく計測することができる。
【0015】
また、タワークレーンの自動運転制御システムは、制御ユニットが吊荷の荷取り位置又は取付け位置の近傍に達するまでは、第1計測システムの測位情報に基づき、吊荷の荷取り位置又は取付け位置の近傍に達した後は、第2計測システムの計測情報に切り替える
ことが好ましい。これにより、例えば、第1計測システムによる吊荷等の位置把握がマルチパスの影響により精度が悪化する場合は、計測システム選択部により第2計測システムに切り替えられ、吊荷位置、荷取り位置及び取付け位置を迅速にかつ精度良く把握し、タワークレーンの運転を遠隔操作により安全に制御することができる。
【0016】
また、タワークレーンの自動運転制御システムは、制御ユニットが吊荷の荷取り位置又は取付け位置の近傍に達するまでは、第1計測システムの測位情報に基づき、吊荷の荷取り位置又は取付け位置の近傍に達した後は、第2計測システムの計測情報と第1計測システムの測位情報とを併用するが好ましい。これにより、位置の精度は高くないが迅速に吊荷にアプローチが可能な第1計測システムと、位置の精度は高いが迅速性に劣る第2計測システムとのそれぞれの特徴を生かして吊荷の荷取り位置及び取付け位置を迅速にかつ精度良く把握し、タワークレーンの運転を遠隔操作により安全に制御することができる。
【0017】
また、タワークレーンの自動運転制御システムは、制御ユニットが第1計測システムの測位情報がマルチパスの影響を受ける場合には、第2計測システムの計測情報に切り替えることが好ましい。これにより、マルチパスの影響を回避し、タワークレーンの運転を遠隔操作により安全に制御することができる。
【0018】
また、タワークレーンの自動運転制御システムは、制御ユニットがタワークレーンから吊り下げられた吊上げ治具により保持され、吊上げ治具は吊荷を上部から吊ることが好ましい。制御ユニットは、衛星測位アンテナを制御ユニットの上部に設置して第1計測システムにより衛星からの測位データを妨害や干渉なく受信することができ、また、吊荷位置、荷取り位置及び取付け位置を制御ユニットの下部に取り付けたカメラ等により妨害や干渉なく計測することができる。
【0019】
さらに、タワークレーンの自動運転制御システムは、吊荷の高さ位置が制御ユニットの所定のポイントの高さ位置を測定し、吊上げ治具の高さ分を補正して算出することができる。このように、吊荷の高さ位置が吊荷の種類により変動する本自動運転制御システムでは、高さが固定された吊上げ治具を介して制御ユニットの所定のポイントに高さ位置を設定することで吊荷の種類に拘わらず本自動運転制御システムを機能させることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明に係るタワークレーンの自動運転制御システムによれば、タワークレーンによる吊荷の荷取り位置、及び取付け位置を自動で計測し、吊荷周囲の状況を把握してタワークレーンの正確、迅速でかつ安全な自動運転制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る建設現場におけるタワークレーンの自動運転制御システムの概要及びタワークレーンによる吊上げのステージを示す全体説明図である。
図2】吊荷、制御ユニット、及び、吊上げ治具の位置関係を示す説明図である。
図3】吊り下げられた制御ユニットの一つの実施形態を示す斜視図である。
図4図3の制御ユニットの断面図を示す。
図5】立体カメラ及び三次元物体認識センサに関する説明図である。
図6】第1計測システムの測位データ、及び第2計測システムの計測データに基づいてタワークレーンの制御を行うシステム図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(自動運転制御システム)
以下に、図面を用いて本発明に係るタワークレーン5の自動運転制御システム1につき、詳細に説明する。図1に建設現場30におけるタワークレーン5の自動運転制御システム1の概略構成、及び吊荷2の運搬に関する基本的な搬送ルートをステージ1~ステージ6で示す。なお、図1では、ステージの番号は丸数字で示し、明細書では「ステージ1~6」で示す。また、図1では、建設現場30に吊荷2を搬送トラック6で搬入し、タワークレーン5により吊荷2を建築物24の上部に取付ける場合を想定している。
【0023】
図1に示すように、一般的に建設現場30における吊荷2の搬送ルートは、まず搬送トラック6により建設現場30に吊荷2が搬入され(ステージ1)、次に、タワークレーン5により荷取り位置3の上方に所定の高さまでフック25により持ち上げられ(ステージ2)、さらに、タワークレーン5により取付け位置4である建設物24の上部まで横持ちされる(ステージ3)。そして、吊荷2が所望の取付け方向に向けられ(ステージ4)、その取付け方向を維持したまま下降して(ステージ5)、建設物24の所定の取付け位置4である上部に取り付けられる(ステージ6)。この吊荷2は、吊上げ治具22を介してタワークレーン5の吊上げワイヤ23に接続されて持ち上げられる。そして、吊上げ治具22には制御ユニット7が取り付けられ吊荷2の位置及び方向の制御が行われ、吊荷2や周辺の状況が認識される。この制御ユニット7は、コントロールユニット、コアコントロールユニットとも称され、タワークレーン5による吊荷2の搬送に関する機器やセンサが集約されている。なお、吊荷2は、搬送トラック6により建設現場30に搬入される物に限らず、他の重機等により建設現場30に持ち込まれた吊荷2でも良い。また、吊上げ治具22は他の形式でも良く、吊荷2の吊上げ方法は他の方法であっても良い。さらに、各ステージ1~6はこれに限らず他の搬入ルートであっても良い。
【0024】
(制御ユニット)
図2に、タワークレーン5の吊荷2、制御ユニット7、及び、吊上げ治具22の相互の位置関係を示す。図2(a)は、ステージ1において、タワークレーン5により吊荷2が搬送トラック6から「荷取り」される場合を示す。また、図2(b)は、ステージ6にて、タワークレーン5により吊荷2が建築物24の所定の位置に「取付けられる」場合を示す。この制御ユニット7は箱状のユニットであり、内部にカメラやセンサ等の機器が内蔵されて吊荷2の上部に配置される。これにより、人工衛星27が測位した吊荷2の位置、方向等のデータが第1計測システム8によりタワークレーン5の制御ユニット7へと伝送される。吊荷2は、吊上げ治具22に取り付けられた吊上げワイヤ23によりタワークレーン5に吊り下げられる。吊荷2の高さ位置(h1,h2)は、例えば、図2(a)の荷取りの際には、地面29から制御ユニット7の中心点までの高さ(h1)が基準となる。また、図2(b)の取付けの際には、建築物24の頂部から制御ユニット7の中心点までの高さ(h2)が基準となる。但し、地面29や建築物24の頂部等の基準点は、これに限らず他の測定可能な任意な基準点であっても良い。この測定により、吊荷2の高さ位置が正確に把握され、タワークレーン5による吊荷2の自動運転が可能となる。
【0025】
(位置計測システム)
図3に、吊り下げられた制御ユニット7に搭載された第1計測システム8及び第2計測システム10(図6参照)の構成を斜視図で示し、図4に、図3の制御ユニット7の断面図を示す。制御ユニット7の上部には、人工衛星27から発信された測位データを受信する2台の衛星測位アンテナ9が設けられ、吊荷2の三次元位置等がリアルタイムに連続して測位される。このように、制御ユニット7の上部に2台の衛星測位アンテナ9を搭載させることで第1計測システム8による吊荷2の測位が可能となる。また、図4に示すように、制御ユニット7の下部には、第2計測システム10に係る立体カメラ11及び三次元物体認識センサ12が搭載され、制御ユニット7の底板28に設けられた開口部26を通じて立体カメラ11及び三次元物体認識センサ12が吊上げられる吊荷2までの距離及び吊荷2の荷取り位置3及び取付け位置4周囲の状況を計測する。
【0026】
図5に、立体カメラ11及び三次元物体認識センサ12の一つの実施例を示す。図5(a)は、立体カメラ11の実施例を示す。図5(b)は、三次元物体認識センサ12の実施例を示す。立体カメラ11は、ステレオカメラとも称され、幅(W)だけ離された2個のカメラにより所定の吊荷2までの距離(L)を計測してその位置及び形状を認識する。また、三次元物体認識センサ12は、3D-LiDERとも称され、レーダーよりも短い波長の電磁波を用い、パルス状に発光するレーザ照射に対する散乱光を測定し、遠距離にある対象までの距離やその対象の形状を分析し、吊荷2の荷取り位置3及び取付け位置4付近の部材位置を計測する。図5(b)に示す実施例では、対象物を開口角120°の角度及び15°の仰角で24か所のスキャン位置にわたり継ぎ目なしに形状を検出することが可能である。従って、動いている対象物であってもスキャンし、測定することができる。この3D-LiDER技術は、主として自動車の自動運転用のセンサ等に利用されているが、本願発明では、この技術を建設現場30におけるタワークレーン5の自動運転制御システム1に応用する。
【0027】
(計測システムのシステム構成)
図6に、第1計測システム8及び第2計測システム10のシステム構成をブロック図で示す。第1計測システム8は、人工衛星27の衛星測位データ送信部16aから発信される衛星測位データを衛星測位アンテナ9により受信する衛星測位データ受信部16b、受信した測位データから吊荷2の位置データ等を算出する制御ユニット7a、及び、タワークレーン5の動作を制御するタワークレーン制御部21aから構成される。また、制御ユニット7aは、吊荷2の地面29からの高さ又は所定の位置から吊荷2等の位置を検出する吊荷位置検出部13を含む。この吊荷位置検出部13は、電波高度計31により吊荷2の高さを算出する吊荷高さ計測部13a、及び、吊荷2の経度及び緯度から測定された測位情報を座標変換してXYZ座標に変換する吊荷位置座標変換部13bから構成される。この電波高度計31は、電波を使用して目標物からの反射時間を測定して地上からの高度を測定する。第1計測システム8では、地上や建物近傍において、無線信号が空間を伝播する際に2つ以上の伝播経路を持つことにより生じる反射などの現象である「マルチパス」の影響が生じ易い。また、天空の視界が狭いことから人工衛星27から発信された測位データを補足する必要があり、その場合は、測位精度の低下が発生する虞がある。
【0028】
また、第2計測システム10は、立体カメラ11及び三次元物体認識センサ12が測定した測定データを発信する測定情報送信部20a、その測定データを受信する測定情報受信部20b、受信した測定データから吊荷2の位置データ等を算出する制御ユニット7b、さらに、タワークレーン5の動作を制御するタワークレーン制御部21bから構成される。制御ユニット7bは吊荷位置検出部13からなり、さらに、この吊荷位置検出部13は、吊荷高さ計測部13a、荷取り位置計測部17、及び取付け位置計測部18から構成される。吊荷位置座標変換部13bは、立体カメラ11及び三次元物体認識センサ12が測定した三次元座標データ(X,Y,Z)を計測する。荷取り位置計測部17は、吊荷2の荷取り位置3を三次元物体認識センサ12により特定する。また、取付け位置計測部18は、吊荷2の荷取り位置3を三次元物体認識センサ12により特定する。
【0029】
(計測システムの選択)
計測システム選択部19は、計測システムとして第1計測システム8、又は第2計測システム10のいずれかを選択する。例えば、荷取り位置3や取付け位置4の近傍では、よりきめの細かい作業を迅速にかつ正確にできる第2計測システム10による。一方、荷取り位置3や取付け位置4以外であって吊荷2を横持ちする場合、荷取り位置3や取付け位置4に素早く接近する場合などでは、第1計測システム8による。具体的には、荷取り位置3や取付け位置4から約30m以内では第2計測システム10が好ましく、荷取り位置3や取付け位置4から約30mを越すと第1計測システム8が好ましいと言われている。従って、上述した建設現場30における吊荷2の搬送ルートにおいてステージ1、ステージ6では第2計測システム10を採用し、ステージ2~5では第1計測システム8を採用するのが好ましい。
【0030】
計測システム選択部19は、第1計測システム8と第2計測システム10とを切り替える計測システム切替え部14、及び、第1計測システム8と第2計測システム10との切り替えの条件を気象条件、吊荷2の種類や大きさ、ステージの種類等から判定する計測システム調整部15から構成される。このようなハイブリッドな計測システムを機能させるには、上述した吊荷2の搬送ルートの途中で第1計測システム8と第2計測システム10とを切り替える作業をする必要があり、過去の経験、過去の実績などから判定条件を決定しなければならない。
【0031】
制御ユニット7は、吊荷2の荷取り位置3又は取付け位置4の近傍に達するまでは、第1計測システム8の測位情報に基づき、吊荷2の荷取り位置3又は取付け位置4の近傍に達した後は、第2計測システム10の計測情報に切り替えても良い。また、制御ユニット7は、吊荷2の荷取り位置3又は取付け位置4の近傍に達するまでは、第1計測システム8の測位情報に基づき、吊荷2の荷取り位置3又は取付け位置4の近傍に達した後は、第2計測システム10の計測情報と第1計測システム8の測位情報とを併用しても良い。さらに、制御ユニット7は、第1計測システム8の測位情報がマルチパスの影響を受ける場合には、第2計測システム10の計測情報に切り替えても良い。
【0032】
このように、計測システム選択部19は、その時の状況に応じて最善の計測システムを探索してタワークレーン5の動作に適用する。この計測システム選択部19の計測システムの履歴は、気象条件、マルチパスの状況、吊荷2の種類、大きさ、重量等と共に自動運転制御システム1のデータベースに保存されることが好ましい。
【0033】
以上の実施形態で説明された自動運転制御システム1の構成、形状、大きさ、及び配置関係については、本発明が理解、実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示され
る技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 自動運転制御システム、2 吊荷、3 荷取り位置、4 取付け位置、5 タワークレーン、6 搬送トラック、7 制御ユニット,7a 制御ユニット(第1計測システム),7b 制御ユニット(第2計測システム)、8 第1計測システム、9 衛星測位アンテナ、10 第2計測システム、11 立体カメラ(ステレオカメラ)、12 三次元物体認識センサ(3D-LiDER)、13 吊荷位置検出部、13a 吊荷高さ計測部,13b 吊荷位置座標変換部、14 計測システム切替え部、15 計測システム調整部、16a 衛星測位データ送信部,16b 衛星測位データ受信部、17 荷取り位置計測部、18 取付け位置計測部、19 計測システム選択部、20a 測定情報送信部,20b 測定情報受信部、21a,21b タワークレーン制御部、22 吊上げ治具、23 吊上げワイヤ、24 建設物、25 フック、26 開口部、27 人工衛星、28 底板、29 地面、30 建設現場、31 電波高度計、h1 地面から制御ユニットの中心点までの高さ、h2 建設物の頂部から制御ユニットの中心点までの高さ、L 吊荷までの距離、W 立体カメラの幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6