(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】ブロックイソシアネート、および、コーティング剤
(51)【国際特許分類】
C08G 18/80 20060101AFI20230905BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
C08G18/80 070
C09D175/04
(21)【出願番号】P 2019216930
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 拡之
(72)【発明者】
【氏名】矢木 徹
(72)【発明者】
【氏名】高松 孝二
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-163146(JP,A)
【文献】国際公開第2018/190290(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/133495(WO,A1)
【文献】特開2016-160428(JP,A)
【文献】特開2004-059866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基がブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートであって、
前記キシリレンジイソシアネート誘導体は、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を
、前記キシリレンジイソシアネート誘導体の総量に対して90質量%以上の割合で含有し、
前記キシリレンジイソシアネート誘導体をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量500以上600未満の間をピークトップとするピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率が、20%以上40%以下であり、
前記ブロック剤が、
3,5-ジメチルピラゾール、イミダゾール、または、メチルエチルケトンオキシムである
ことを特徴とする、ブロックイソシアネート。
【請求項2】
前記キシリレンジイソシアネート誘導体をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量500以上600未満の間をピークトップとするピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率が、30%以上であり、
前記ブロック剤が、
3,5-ジメチルピラゾールまたはイミダゾールである
ことを特徴とする、請求項1に記載のブロックイソシアネート。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブロックイソシアネートを含む硬化剤と、マクロポリオールを含む主剤とを含有することを特徴とする、コーティング剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックイソシアネート、および、コーティング剤に関し、詳しくは、ブロックイソシアネート、そのブロックイソシアネートを含有するコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロックイソシアネートは、一般的には、加熱によりブロック剤が解離し、イソシアネート基が再生するイソシアネートであり、貯蔵安定性、加工性に優れるため、塗料、接着剤など、主剤と硬化剤とを使用時に配合する二液硬化型ポリウレタン樹脂の硬化剤として使用されている。また、ブロックイソシアネートは、ポリイソシアネート化合物とブロック剤とを反応させることにより得られる。
【0003】
このようなブロックイソシアネートにおけるポリイソシアネート化合物として、キシリレンジイソシアネート誘導体を用いることが知られている。より具体的には、例えば、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体と、ブロック剤としての1,1,3,3-テトラメチルグアニジンおよび3,5-ジメチルピラゾールとを反応させて得られるブロックイソシアネートが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、ブロックイソシアネートは、用途に応じて、優れた貯蔵安定性が要求される。しかしながら、上記のブロックイソシアネートは、貯蔵安定性が十分ではない場合がある。
【0006】
本発明は、貯蔵安定性に優れるブロックイソシアネート、および、そのブロックイソシアネートを含有するコーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、キシリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基がブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートであって、前記キシリレンジイソシアネート誘導体は、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含有し、前記キシリレンジイソシアネート誘導体をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量500以上600未満の間をピークトップとするピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率が、20%以上40%以下であり、前記ブロック剤が、ピラゾール系ブロック剤、イミダゾール系ブロック剤およびオキシム系ブロック剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、ブロックイソシアネートを含んでいる。
【0008】
本発明[2]は、前記キシリレンジイソシアネート誘導体をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量500以上600未満の間をピークトップとするピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率が、30%以上であり、前記ブロック剤が、ピラゾール系ブロック剤および/またはイミダゾール系ブロック剤を含有する、上記[1]に記載のブロックイソシアネートを含んでいる。
【0009】
本発明[3]は、上記[1]または[2]に記載のブロックイソシアネートを含む硬化剤と、マクロポリオールを含む主剤とを含有することを特徴とする、コーティング剤を含んでいる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のブロックイソシアネートでは、キシリレンジイソシアネート誘導体が、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含有し、そのキシリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基が、特定のブロック剤によりブロックされている。さらに、キシリレンジイソシアネート誘導体をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量500以上600未満の間をピークトップとするピークの面積の全ピークの面積に対する面積率が、特定の範囲である。
【0011】
そのため、本発明のブロックイソシアネートは、貯蔵安定性に優れる。
【0012】
本発明のコーティング剤は、本発明のブロックイソシアネートを含有するため、貯蔵安定性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施例1におけるキシリレンジイソシアネート誘導体のゲルパーミエーションクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のブロックイソシアネートは、キシリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基がブロック剤によってブロックされている。
【0015】
換言すれば、ブロックイソシアネートは、キシリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤との反応生成物である。
【0016】
キシリレンジイソシアネート誘導体は、イソシアネート基を含有するポリイソシアネート組成物であり、主成分として(キシリレンジイソシアネート誘導体の総量に対して90質量%以上の割合で)、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含有する。
【0017】
キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、分子中に1つ以上のイソシアヌレート基(イソシアヌレート環)を含有するキシリレンジイソシアネートの多量体である。多量体としては、例えば、イソシアヌレート3分子体、イソシアヌレート5分子体、イソシアヌレート7分子体などが挙げられる。
【0018】
なお、イソシアヌレートn分子体(n:自然数)とは、n分子(n:自然数)のキシリレンジイソシアネートがイソシアヌレート基(イソシアヌレート環)を介して結合した誘導体を示す。
【0019】
キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、キシリレンジイソシアネートを、イソシアヌレート化触媒(後述)の存在下でイソシアヌレート化反応させることにより、得られる。
【0020】
また、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、好ましくは、アルコール類によって変性されている。
【0021】
すなわち、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、好ましくは、まず、キシリレンジイソシアネートと、アルコール類とをウレタン化反応させ、次いで、そのウレタン反応液にイソシアヌレート化触媒を添加して、ウレタン反応液(キシリレンジイソシアネートと、キシリレンジイソシアネートおよびアルコール類の反応生成物とを含む。以下同様。)をイソシアヌレート化反応させ、その後、必要により、未反応のキシリレンジイソシアネートを除去することにより得られる。
【0022】
より具体的には、この方法では、まず、キシリレンジイソシアネートとアルコール類とを混合してウレタン化反応させる。
【0023】
キシリレンジイソシアネートとしては、1,2-キシリレンジイソシアネート(o-キシリレンジイソシアネート(o-XDI))、1,3-キシリレンジイソシアネート(m-キシリレンジイソシアネート(m-XDI))、1,4-キシリレンジイソシアネート(p-キシリレンジイソシアネート(p-XDI))が、構造異性体として挙げられる。
【0024】
これらキシリレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0025】
キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0026】
アルコール類としては、例えば、1価アルコール、多価アルコールなどが挙げられる。
【0027】
1価アルコールは、1分子中に水酸基を1つ有する有機化合物であって、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデカノール、n-ドデカノール(ラウリルアルコール)、n-トリデカノール、n-テトラデカノール、n-ペンタデカノール、n-ヘキサデカノール、n-ヘプタデカノール、n-オクタデカノール(ステアリルアルコール)、n-ノナデカノール、エイコサノールなどの直鎖状の1価アルコール、イソプロパノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、イソペンタノール、イソヘキサノール、イソヘプタノール、イソオクタノール、2-エチルへキサン-1-オール、イソノナノール、イソデカノール、5-エチル-2-ノナノール、トリメチルノニルアルコール、2-ヘキシルデカノール、3,9-ジエチル-6-トリデカノール、2-イソヘプチルイソウンデカノール、2-オクチルドデカノール、その他の分岐状アルカノール(炭素数5~20)などの分岐状の1価アルコールが挙げられ、好ましくは、分岐状の1価アルコール、より好ましくは、イソブタノールが挙げられる。
【0028】
多価アルコールは、1分子中に水酸基を2つ以上有する有機化合物であって、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-または1,3-プロパンジオールもしくはその混合物)、ブチレングリコール(1,2-または1,3-または1,4-ブチレングリコールもしくはその混合物)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタンなどのアルカンジオール、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのエーテルジオールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどの脂肪族多価アルコールが挙げられる。
【0029】
アルコール類として、貯蔵安定性の観点から、好ましくは、多価アルコール、より好ましくは、脂肪族多価アルコール、さらに好ましくは、2価アルコール、とりわけ好ましくは、ブチレングリコール、最も好ましくは、1,3-ブチレングリコールが挙げられる。
【0030】
アルコール類の配合割合(アルコール類の、キシリレンジイソシアネート100質量部に対する変性量)は、貯蔵安定性の観点から、キシリレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1質量部を超過、さらに好ましくは、2質量部以上、例えば、15質量部以下、好ましくは、10質量部以下、さらに好ましくは、5質量部以下である。
【0031】
なお、上記アルコール類の配合割合(変性量)は、アルコール類により変性された、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体において、イソシアヌレート誘導体に対するアルコール類の変性量と同義である。
【0032】
また、アルコール類のヒドロキシ基に対する、キシリレンジイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は、例えば、5以上、好ましくは、10以上、さらに好ましくは、20以上、通常、1000以下である。
【0033】
このようなキシリレンジイソシアネートとアルコール類との混合は、例えば、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気、常圧(大気圧)下において実施される。混合条件として、混合温度は、例えば、室温(例えば、25℃)以上、好ましくは、40℃以上、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下であり、混合時間は、例えば、3分間以上、好ましくは、12分間以上、例えば、10時間以下、好ましくは、6時間以下である。
【0034】
上記のウレタン化反応において、キシリレンジイソシアネートのウレタン転化率は、例えば、3質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、また、例えば、25質量%以下である。
【0035】
なお、上記のウレタン転化率は、キシリレンジイソシアネートのイソシアネート基濃度に対する、ウレタン反応液のイソシアネート基濃度の減少率を算出することにより求めることができる。
【0036】
次いで、この方法では、得られたウレタン反応液に、イソシアヌレート化触媒を添加し、ウレタン反応液をイソシアヌレート化反応させる。
【0037】
イソシアヌレート化触媒としては、イソシアヌレート化に有効な触媒であれば、特に限定されず、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドやその有機弱酸塩、例えば、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウムなどのトリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドやその有機弱酸塩、例えば、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸などのアルキルカルボン酸のアルカリ金属塩、例えば、上記アルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛などの金属塩、例えば、アルミニウムアセチルアセトン、リチウムアセチルアセトンなどのβ-ジケトンの金属キレート化合物、例えば、塩化アルミニウム、三フッ化硼素などのフリーデル・クラフツ触媒、例えば、チタンテトラブチレート、トリブチルアンチモン酸化物などの種々の有機金属化合物、例えば、ヘキサメチルシラザンなどのアミノシリル基含有化合物などが挙げられる。
【0038】
具体的には、例えば、Zwitter ion型のヒドロキシアルキル第4級アンモニウム化合物などが挙げられ、より具体的には、例えば、N-(2-ヒドロキシプロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウム-2-エチルヘキサノエート、N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチル-N-2-ヒドロキシプロピルアンモニウム・ヘキサノエート、トリエチル-N-2-ヒドロキシプロピルアンモニウム・ヘキサデカノエート、トリメチル-N-2-ヒドロキシプロピルアンモニウム・フェニルカーボネート、トリメチル-N-2-ヒドロキシプロピルアンモニウム・フォーメートなどが挙げられる。
【0039】
これらイソシアヌレート化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0040】
イソシアヌレート化触媒として、好ましくは、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドが挙げられ、さらに好ましくは、テトラブチルアンモニウムのハイドロオキサイドが挙げられる。
【0041】
イソシアヌレート化触媒の使用形態は、特に制限されず、イソシアヌレート化触媒の固形分を直接使用してもよく、また、イソシアヌレート化触媒を有機溶剤に溶解させた触媒溶液を使用してもよい。
【0042】
好ましくは、イソシアヌレート化触媒は、触媒溶液として使用される。
【0043】
触媒溶液において、有機溶剤としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリルなど)、アルキルエステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなど)、グリコールエーテルエステル類(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネートなど)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、極性非プロトン類(例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなど)などが挙げられる。有機溶剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0044】
有機溶剤のなかでは、好ましくは、グリコールエーテルエステル類が挙げられ、さらに好ましくは、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0045】
触媒溶液の固形分濃度(イソシアヌレート化触媒の含有割合)は、例えば、60.0質量%以下、好ましくは、50.0質量%以下、より好ましくは、10.0質量%以下である。
【0046】
イソシアヌレート化触媒(固形分換算)の添加割合は、ウレタン反応液100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.005質量部以上、例えば、0.1質量部以下、好ましくは、0.05質量部以下である。
【0047】
イソシアヌレート化触媒の添加割合が上記下限以上であれば、ウレタン反応液を確実にイソシアヌレート化反応させることができる。イソシアヌレート化触媒の添加割合が上記上限以下であれば、ウレタン反応液にイソシアヌレート化触媒を添加したときに、ゲルの発生を安定して抑制できる。
【0048】
このイソシアヌレート化反応は、例えば、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気、常圧(大気圧)下において実施される。イソシアヌレート化反応の反応条件として、反応温度は、例えば、室温(例えば、25℃)以上、好ましくは、40℃以上、より好ましくは、60℃以上、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下であり、反応時間は、例えば、30分以上、好ましくは、1時間以上、さらに好ましくは、2時間以上、例えば、12時間以下、好ましくは、10時間以下、さらに好ましくは、8時間以下である。
【0049】
上記のイソシアヌレート化反応において、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート転化率は、後述するMn500-600面積率(3分子体面積率)を調整する観点から、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、25質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、45質量%以下、より好ましくは、35質量%以下である。
【0050】
このようなイソシアヌレート化反応により、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体が得られる。
【0051】
また、上記のイソシアヌレート化反応においては、必要に応じて、例えば、酸化防止剤、助触媒(例えば、有機亜リン酸エステルなど)などの公知の添加剤を添加することができる。
【0052】
添加剤として、好ましくは、酸化防止剤が挙げられる。
【0053】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられ、衛生性の観点から、好ましくは、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、具体的には、例えば、2,6?ジ(tert-ブチル)?4?メチルフェノール(別名:ジブチルヒドロキシトルエン、以下、BHTと略する場合がある。)、[3-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノイルオキシ]-2,2-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノイルオキシメチル]プロピル]3-(3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート(イルガノックス1010、チバ・ジャパン社製、商品名)、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(イルガノックス1076、チバ・ジャパン社製、商品名)、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸オクチルエステル(イルガノックス1135、チバ・ジャパン社製、商品名)、ビス[3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)プロピオン酸]エチレンビスオキシビスエチレン(イルガノックス245、チバ・ジャパン社製、商品名)などが挙げられる。
【0054】
これら酸化防止剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0055】
酸化防止剤として、衛生性の観点から、好ましくは、BHTを除くヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられ、より好ましくは、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(イルガノックス1076、チバ・ジャパン社製、商品名)が挙げられる。
【0056】
なお、添加剤を添加するタイミングは、特に制限されず、イソシアヌレート化反応前のキシリレンジイソシアネートまたはウレタン反応液に添加してもよく、また、イソシアヌレート化反応中のイソシアヌレート反応液に添加してもよく、さらには、イソシアヌレート化反応後のイソシアヌレート反応液に添加してもよい。好ましくは、キシリレンジイソシアネートに添加する。
【0057】
添加剤の添加割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0058】
また、上記の反応において、イソシアヌレート転化率が上記した範囲に到達した後に触媒失活剤が添加されることで、イソシアヌレート化反応が停止される。
【0059】
触媒失活剤としては、例えば、リン酸化合物、スルホン酸化合物、スルホンアミド化合物などが挙げられる。
【0060】
リン酸化合物としては、例えば、リン酸、リン酸エステルなどが挙げられる。リン酸エステルとしては、例えば、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸プロピル、リン酸ブチル、リン酸ジプロピル、リン酸ブトキシエチル、リン酸2-エチルヘキシル、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)、リン酸(C12~18)アルキル、リン酸イソトリデシル、リン酸オレイル、リン酸テトラコシル、リン酸エチレングリコール、リン酸2-ヒドロキシエチルメタクリレート、リン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0061】
スルホン酸化合物としては、例えば、スルホン酸、スルホン酸エステルなどが挙げられる。スルホン酸としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸などが挙げられる。スルホン酸エステルとしては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸メチル、ドデシルベンゼンスルホン酸エチル、ドデシルベンゼンスルホン酸プロピル、ドデシルベンゼンスルホン酸ブチルなどのドデシルベンゼンスルホン酸アルキルエステル、例えば、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸プロピル、パラトルエンスルホン酸ブチルなどのパラトルエンスルホン酸アルキルエステルなどが挙げられる。
【0062】
スルホンアミド化合物としては、例えば、芳香族スルホンアミド類(例えば、ベンゼンスルホンアミド、ジメチルベンゼンスルホンアミド、スルファニルアミド、o-およびp-トルエンスルホンアミド、ヒドロキシナフタレンスルホンアミド、ナフタレン-1-スルホンアミド、ナフタレン-2-スルホンアミド、m-ニトロベンゼンスルホンアミド、p-クロロベンゼンスルホンアミドなど)、脂肪族スルホンアミド類(例えば、メタンスルホンアミド、N,N-ジメチルメタンスルホンアミド、N,N-ジメチルエタンスルホンアミド、N,N-ジエチルメタンスルホンアミド、N-メトキシメタンスルホンアミド、N-ドデシルメタンスルホンアミド、N-シクロヘキシル-1-ブタンスルホンアミド、2-アミノエタンスルホンアミドなど)などが挙げられる。
【0063】
また、触媒失活剤としては、上記のほか、例えば、モノクロル酢酸、ベンゾイルクロリドなども挙げられる。
【0064】
これら触媒失活剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0065】
なお、触媒失活剤は、上記のイソシアヌレート反応液に対して、貯蔵安定剤としても作用する。
【0066】
触媒失活剤として、好ましくは、リン酸化合物および/またはスルホン酸化合物が挙げられる。換言すれば、触媒失活剤として、好ましくは、リン酸および/またはスルホン酸、あるいは、そのエステルが挙げられる。
【0067】
このような観点から、触媒失活剤として、さらに好ましくは、スルホン酸が挙げられ、とりわけ好ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸が挙げられる。
【0068】
触媒失活剤の使用形態は、特に制限されず、触媒失活剤の有効成分を直接使用してもよく、また、触媒失活剤を上記の有機溶剤に溶解させた触媒失活剤溶液を使用してもよい。好ましくは、触媒失活剤溶液を使用する。
【0069】
触媒失活剤を、触媒失活剤溶液として使用する場合、有機溶剤として、好ましくは、グリコールエーテルエステル類が挙げられ、さらに好ましくは、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0070】
また、触媒失活剤の有効成分濃度(触媒失活剤の含有割合)は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、例えば、70質量%以下、好ましくは、60質量%以下である。
【0071】
また、触媒失活剤の添加割合(有効成分換算)は、イソシアヌレート反応液の総量に対して、例えば、300ppm以上、好ましくは、400ppm以上であり、例えば、3000ppm以下、好ましくは、1000ppm以下、より好ましくは、800ppm以下である。
【0072】
これにより、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体と、未反応のキシリレンジイソシアネートとを含むイソシアヌレート反応液を得ることができる。
【0073】
そして、この方法では、上記のイソシアヌレート化反応終了後において、イソシアヌレート反応液から、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含む分離液と、未反応のキシリレンジイソシアネートを含む回収液とを、それぞれ分離する。
【0074】
これらを分離する方法としては、特に制限されないが、例えば、薄膜蒸留装置が用いられる。
【0075】
薄膜蒸留における蒸留条件としては、蒸留温度が、例えば、120℃以上、好ましくは、150℃以上であり、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、蒸留圧力(絶対圧力)が、例えば、1PaA以上であり、例えば、60PaA以下である。
【0076】
また、イソシアヌレート反応液のフィード量が、例えば、1g/時間以上、好ましくは、5g/時間以上であり、例えば、1000g/時間以下、好ましくは、500g/時間以下である。
【0077】
これにより、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含む分離液が、高沸点成分として分離される。
【0078】
そして、得られる分離液を、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含むキシリレンジイソシアネート誘導体(ポリイソシアネート組成物)とすることができる。
【0079】
そして、キシリレンジイソシアネート誘導体(ポリイソシアネート組成物)において、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、必須成分として、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3分子体を含有し、また、任意成分として、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート5分子体、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート7分子体などを含有することができる。
【0080】
キシリレンジイソシアネート誘導体(ポリイソシアネート組成物)において、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3分子体の質量割合は、キシリレンジイソシアネート誘導体(ポリイソシアネート組成物)を、示差屈折計を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフにて測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)500以上600未満の範囲にピークトップを有するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率(以下、Mn500-600面積率、または、3分子体面積率と称する場合がある。)として、求めることができる。
【0081】
キシリレンジイソシアネート誘導体のMn500-600面積率(3分子体面積率)は、高粘度化を抑制し、ブロックイソシアネートの製造容易性の向上を図る観点から、20%以上、好ましくは、25%以上であり、ブロックイソシアネートの貯蔵安定性の観点から、40%以下、好ましくは、38%以下である。
【0082】
とりわけ、後述するブロック剤が、ピラゾール系ブロック剤および/またはイミダゾール系ブロック剤を含有する場合、ブロックイソシアネートの貯蔵安定性の観点から、より好ましくは、30%以上、さらに好ましくは、32%以上であり、また、好ましくは、36%以下である。
【0083】
なお、Mn500-600面積率(3分子体面積率)は、キシリレンジイソシアネート誘導体(ポリイソシアネート組成物)の総量に対する、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3分子体の含有割合(質量割合)を示す。
【0084】
なお、キシリレンジイソシアネート誘導体(ポリイソシアネート組成物)において、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3分子体を除くイソシアヌレート多量体(5分子体、7分子体など)の含有割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0085】
また、キシリレンジイソシアネート誘導体(ポリイソシアネート組成物)は、さらに、不可避的不純物として、イソシアヌレート誘導体以外の誘導体を含有することができる。
【0086】
すなわち、上記のウレタン化反応およびイソシアヌレート化反応においては、反応条件によって、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体の他、例えば、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体、キシリレンジイソシアネートのビウレット誘導体、キシリレンジイソシアネートのウレトジオン誘導体などが、副生成物として得られる場合がある。
【0087】
このような場合、キシリレンジイソシアネート誘導体(ポリイソシアネート組成物)において、イソシアヌレート誘導体以外の誘導体の質量割合は、本発明の優れた効果を損なわない範囲において、適宜設定される。例えば、キシリレンジイソシアネート誘導体(ポリイソシアネート組成物)の総量に対して、イソシアヌレート誘導体以外の誘導体の質量割合は、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下である。
【0088】
また、この方法では、キシリレンジイソシアネート誘導体(上記分離液)に、必要により、上記の有機溶剤を適宜の割合で添加して、固形分濃度を調整することができる。
【0089】
このような場合において、その固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、100質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
【0090】
また、必要により、分離されたキシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含む分離液に、上記の触媒失活剤(貯蔵安定剤)をさらに添加して、含有割合を上記範囲に調整することもできる。
【0091】
また、分離されたキシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含む分離液には、必要に応じて、公知の添加剤、例えば、可塑剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤(上記のスルホンアミド化合物など)、耐光安定剤、酸化防止剤、離型剤、顔料、染料、滑剤、フィラー、加水分解防止剤などを添加することができる。
【0092】
なお、例えば、上記のように分離することなく、有機溶剤を含むイソシアヌレート反応液を、キシリレンジイソシアネート誘導体(ポリイソシアネート組成物)として、後述するブロック剤と反応させることもできる。
【0093】
そして、ブロックイソシアネートは、上記のキシリレンジイソシアネート誘導体(ポリイソシアネート組成物)とブロック剤とを反応させることにより得られる。
【0094】
本発明において、ブロック剤は、ピラゾール系ブロック剤、イミダゾール系ブロック剤およびオキシム系ブロック剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0095】
ピラゾール系ブロック剤としては、例えば、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール(DMP、解離温度120℃)、3,5-ジイソプロピルピラゾール、3,5-ジフェニルピラゾール、3,5-ジ-t-ブチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾールなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。好ましくは、3,5-ジメチルピラゾール(DMP)が挙げられる。
【0096】
イミダゾール系ブロック剤としては、例えば、イミダゾール(IMZ、解離温度100℃)、ベンズイミダゾール(解離温度120℃)、2-メチルイミダゾール(解離温度70℃)、4-メチルイミダゾール(解離温度100℃)、2-エチルイミダゾール(解離温度70℃)、2-イソプロピルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。好ましくは、イミダゾール(IMZ)が挙げられる。
【0097】
オキシム系ブロック剤としては、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトンオキシム(MEKO、解離温度130℃)、シクロヘキサノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ペンゾフェノオキシム、2,2,6,6-テトラメチルシクロヘキサノンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、メチルt-ブチルケトンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチル2,4-ジメチルペンチルケトンオキシム、メチル3-エチルへプチルケトンオキシム、メチルイソアミルケトンオキシム、n-アミルケトンオキシム、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオンモノオキシム、4,4’-ジメトキシベンゾフェノンオキシム、2-ヘプタノンオキシムなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。好ましくは、メチルエチルケトンオキシム(MEKO)が挙げられる。
【0098】
ブロック剤が、これらピラゾール系ブロック剤、イミダゾール系ブロック剤およびオキシム系ブロック剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有することにより、優れた貯蔵安定性を得ることができる。
【0099】
貯蔵安定性の向上を図る観点から、好ましくは、ブロック剤は、キシリレンジイソシアネート誘導体のMn500-600面積率(3分子体面積率)に応じて、選択される。
【0100】
すなわち、キシリレンジイソシアネート誘導体のMn500-600面積率(3分子体面積率)が、30%以上(好ましくは、35%以上)である場合には、貯蔵安定性の観点から、ブロック剤は、好ましくは、ピラゾール系ブロック剤および/またはイミダゾール系ブロック剤を含有し、より好ましくは、ピラゾール系ブロック剤またはイミダゾール系ブロック剤の一方を含有し、さらに好ましくは、3,5-ジメチルピラゾール(DMP)またはイミダゾール(IMZ)を含有し、とりわけ好ましくは、3,5-ジメチルピラゾール(DMP)またはイミダゾール(IMZ)からなる。
【0101】
また、キシリレンジイソシアネート誘導体のMn500-600面積率(3分子体面積率)が、30%未満(好ましくは、25%以下)である場合には、貯蔵安定性の観点から、ブロック剤は、好ましくは、オキシム系ブロック剤を含有し、より好ましくは、メチルエチルケトンオキシム(MEKO)を含有し、とりわけ好ましくは、メチルエチルケトンオキシム(MEKO)からなる。
【0102】
また、ブロック剤は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲で、その他のブロック剤(例えば、イミダゾリン系ブロック剤、ピリミジン系ブロック剤、グアニジン系ブロック剤、アルコール系ブロック剤、フェノール系ブロック剤、活性メチレン系ブロック剤、アミン系ブロック剤、イミン系ブロック剤、カルバミン酸系ブロック剤、尿素系ブロック剤、酸アミド系(ラクタム系)化合物、酸イミド系ブロック剤、トリアゾール系ブロック剤、メルカプタン系ブロック剤、重亜硫酸塩など)を含有できる。好ましくは、ブロック剤は、その他のブロック剤を含有せず、ピラゾール系ブロック剤、イミダゾール系ブロック剤およびオキシム系ブロック剤からなる群から選択される少なくとも1種からなり、より好ましくは、ピラゾール系ブロック剤および/またはイミダゾール系ブロック剤からなり、さらに好ましくは、ピラゾール系ブロック剤またはイミダゾール系ブロック剤からなる。
【0103】
そして、キシリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤とを反応させるには、例えば、キシリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤とを混合する。
【0104】
キシリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤との配合割合としては、ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基(すなわち、ブロック基)の、キシリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基に対する当量比(活性基/イソシアネート基)が、例えば、0.8以上、好ましくは、1.0以上であり、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下、より好ましくは、1.1以下である。
【0105】
また、上記の反応は、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下において、実施される。
【0106】
反応条件として、反応温度が、例えば、20℃以上、好ましくは、30℃以上であり、また、例えば、80℃以下、好ましくは、70℃以下であり、また、反応時間が、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、また、例えば、6時間以下、好ましくは、3時間以下である。
【0107】
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法、アミン当量の測定を用い、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
【0108】
また、上記の反応は、無溶剤下であってもよく、例えば、溶剤の存在下であってもよい。
【0109】
溶剤としては、例えば、上記の有機溶剤が挙げられる。
【0110】
また、上記の反応では、必要により、ブロック化触媒を添加することができる。
【0111】
ブロック化触媒としては、例えば、塩基性化合物が挙げられ、具体的には、例えば、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチララート、ナトリウムフェノラート、カリウムメチラートなどのアルカリ金属アルコラート、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、例えば、テトラアルキルアンモニウムなどの酢酸塩、オクチル酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩などの有機弱酸塩、例えば、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸などのアルキルカルボン酸のアルカリ金属塩、例えば、上記のアルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛などの金属塩、例えば、ヘキサメチレンジシラザンなどのアミノシリル基含有化合物、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などが挙げられる。また、これらブロック化触媒は、必要により、上記の溶剤や水、メタノール、エタノール、プロピルアルコールなどのアルコール類に溶解された溶液として用いることもできる。
【0112】
これらブロック化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0113】
ブロック化触媒の配合割合は、特に制限されないが、例えば、キシリレンジイソシアネート誘導体100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.05質量部以上、より好ましくは、0.1質量部以上であり、例えば、3質量部以下、好ましくは、2質量部以下、より好ましくは、0.3質量部以下、さらに好ましくは、0.2質量部以下である。
【0114】
そして、上記のようにキシリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤とを反応させることにより、キシリレンジイソシアネート誘導体(具体的には、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体)のイソシアネート基が、ブロック剤によってブロックされ、ブロックイソシアネートが得られる。
【0115】
また、このようなブロックイソシアネートは、例えば、上記の溶剤に溶解された溶液として用いることもできる。
【0116】
ブロックイソシアネートを溶剤に溶解させる場合において、その固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上であり、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
【0117】
このようなブロックイソシアネートでは、キシリレンジイソシアネート誘導体が、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含有し、そのキシリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基が、特定のブロック剤によりブロックされている。さらに、キシリレンジイソシアネート誘導体をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量500以上600未満の間をピークトップとするピークの面積の全ピークの面積に対する面積率が、特定の範囲である。
【0118】
そのため、上記のブロックイソシアネートは、貯蔵安定性に優れる。
【0119】
その結果、上記のブロックイソシアネートは、例えば、コーティング剤、塗料、インキ、接着剤などの分野において、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂などの公知の樹脂の硬化剤(架橋剤)として、好適に用いられる。
【0120】
とりわけ、上記のブロックイソシアネートは、コーティング剤の分野において、ポリウレタン樹脂の硬化剤として、好適に用いられる。
【0121】
本発明のコーティング剤は、上記のブロックイソシアネートを含む硬化剤と、ポリオール成分を含む主剤とを含有する。このコーティング剤は、例えば、上記のブロックイソシアネートからなる硬化剤と、ポリオール成分からなる主剤とを、それぞれ個別に調製し、それらを配合することにより得られる。
【0122】
硬化剤は、上記のブロックイソシアネートとともに、他のブロックイソシアネートを含むこともできる。
【0123】
他のブロックイソシアネートとしては、例えば、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネートまたはその誘導体のブロックイソシアネート、例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)などの脂環族ジイソシアネートまたはその誘導体のブロックイソシアネート、例えば、ジフェニルメタンジイソシネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)などの芳香族ジイソシアネートまたはその誘導体のブロックイソシアネートなどが挙げられる。
【0124】
誘導体としては、例えば、イソシアヌレート誘導体、アロファネート誘導体、ビウレット誘導体、ウレトジオン誘導体、3価アルコール付加体(アダクト体)などが挙げられる。
【0125】
他のブロックイソシアネートの配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0126】
ポリオール成分は、マクロポリオールを含んでいる。つまり、主剤は、マクロポリオールを含んでいる。
【0127】
マクロポリオールは、水酸基を2つ以上有する、数平均分子量が、300以上、好ましくは、400以上、さらに好ましくは、500以上、通常、20000以下、好ましくは、10000以下の化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリオキシアルキレン(炭素数(C)2~3)ポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなど)、ポリエステルポリオール(例えば、アジピン酸系ポリエステルポリオール、フタル酸系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオールなど)、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール(例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどをポリイソシアネートによりウレタン変性したポリオール)、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられる。
【0128】
マクロポリオールの水酸基価は、例えば、50mgKOH/g以上であり、また、例えば、500mgKOH/g以下、好ましくは、300mgKOH/g以下、より好ましくは、180mgKOH/g以下、さらに好ましくは、150mgKOH/g以下、とりわけ好ましくは、100mgKOH/g以下である。
【0129】
マクロポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0130】
マクロポリオールとして、好ましくは、アクリルポリオール、ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0131】
また、ポリオール成分は、低分子量ポリオールを含むこともできる。
【0132】
低分子量ポリオールは、1分子中に水酸基を2つ以上有する、分子量40以上400未満、好ましくは、300未満の有機化合物である。低分子量ポリオールとしては、例えば、上記のアルコール類が挙げられ、好ましくは、多価アルコール、より好ましくは、2~8価アルコール、さらに好ましくは、2価アルコール、3価アルコール、とりわけ好ましくは、2価アルコールが挙げられる。
【0133】
低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0134】
低分子量ポリオールの配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0135】
ポリオール成分は、好ましくは、マクロポリオールからなる。
【0136】
なお、ポリオール成分の使用形態は、特に制限されず、ポリオール成分をそのまま使用してもよく、また、ポリオール成分を上記の有機溶剤に溶解させたポリオール成分溶液を使用してもよい。
【0137】
ポリオール成分を、ポリオール成分溶液として使用する場合、有機溶剤として、好ましくは、酢酸ブチル、シクロヘキサンが挙げられる。
【0138】
また、ポリオール成分の有効成分濃度(ポリオール成分の含有割合)は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。
【0139】
ブロックイソシアネートを含む硬化剤と、ポリオール成分を含む主剤との配合割合は、例えば、ポリオール成分の水酸基に対するブロックイソシアネートのイソシアネート基(ブロック剤によりブロックされているイソシアネート基)の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、例えば、0.1以上、好ましくは、0.2以上、さらに好ましくは、0.3以上、とりわけ好ましくは、0.9以上、例えば、5以下、好ましくは、3以下、より好ましくは、1.1以下となる割合である。
【0140】
そして、このようなコーティング剤は、その使用時において、ブロックイソシアネートからブロック剤を、例えば、加熱することにより、解離させる。
【0141】
解離条件は、ブロックイソシアネートにおけるブロック剤が解離する条件であれば、特に制限されないが、具体的には、解離温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、160℃以下である。
【0142】
ブロックイソシアネートの再生したイソシアネート基と、ポリオール化合物の水酸基との加熱条件下における反応時間は、例えば、10分以上、好ましくは、20分以上であり、例えば、60分以下、好ましくは、30分以下である。
【0143】
これにより、ブロックイソシアネートにおけるブロック剤を解離させるとともに、ブロックイソシアネートの再生したイソシアネート基と、ポリオール成分の水酸基とを反応させ、コーティング剤を硬化させることができる。
【0144】
また、硬化反応は、室温(20~30℃)で熟成させることによっても進行することもできる。
【0145】
また、このようなコーティング剤は、例えば、溶剤に溶解させて用いることができる。
【0146】
溶剤としては、上記の有機溶剤が挙げられ、好ましくは、酢酸エチルが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0147】
コーティング剤(主剤および硬化剤)を溶剤に溶解させる場合において、その固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上であり、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
【0148】
また、コーティング剤は、必要に応じて、さらに、上記の酸性化合物、硬化促進剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、シランカップリング剤、エポキシ樹脂、触媒、塗工性改良剤、レベリング剤、核剤、滑剤、離型剤、消泡剤、増粘剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、顔料分散剤、染料、有機または無機微粒子、防黴剤、難燃剤、密着改良剤、つや消し剤などの添加剤を含有することができる。
【0149】
なお、これら添加剤の添加のタイミングは、特に制限されず、上記の各成分(ブロックイソシアネート、マクロポリオールなど)に予め添加してもよく、また、上記の各成分の混合時に同時に添加してもよく、さらに、上記の各成分の混合後に、別途添加してもよい。
【0150】
このようなコーティング剤は、上記のブロックイソシアネートを含有するため、貯蔵安定性に優れる。
【0151】
そして、コーティング剤から硬化膜を得る方法としては、例えば、コーティング剤を基材に塗布し、上記の条件で、硬化反応させる。
【0152】
基材としては、特に制限されず、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂などの(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。
【0153】
コーティング剤を基材に塗布する方法としては、特に制限されず、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法などによる塗布、例えば、バーコーター、アプリケーターなどを用いたキャスティングなどが挙げられる。
【0154】
これにより、硬化膜が得られる。
【0155】
また、必要により、硬化膜を、20℃以上300℃以下にて1分間以上30日間以下養生することもできる。
【0156】
このように、上記のブロックイソシアネートは、コーティング剤として好適に用いられる。
【実施例】
【0157】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0158】
1.GPC測定方法
サンプルをゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定し、得られたクロマトグラム(チャート)における各ピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率を求めた。
【0159】
そして、ポリスチレン換算分子量500以上600未満の範囲にピークトップを有するピークの面積率(Mn500-600面積率)を、イソシアヌレート3分子体の含有割合とした。
【0160】
なお、GPC測定においては、サンプルを約0.04g採取し、メタノールでメチルウレタン化させた後、過剰のメタノールを除去し、テトラヒドロフラン10mLを添加して溶解させた。そして、得られた溶液を、以下の条件でGPC測定した。
(1)分析装置 : Alliance(Waters)
(2)ポンプ : Alliance 2695(Waters)
(3)検出器 : 2414型示差屈折検出器(Waters)
(4)溶離液 : Tetrahydrofuran
(5)分離カラム :Plgel GUARD + Plgel 5μmMixed-C×3本(50×7.5mm,300×7.5mm)
メーカー ; Polymer Laboratories
品番 ; PL1110-6500
(6)測定温度 : 40℃
(7)流速 : 1mL/min
(8)サンプル注入量 : 100μL
(9)解析装置 : EMPOWERデータ処理装置(Waters)
・システム補正
(1)標準物質名 : Polystyrene
(2)検量線作成方法 : 分子量の異なるTOSOH社製 TSKstandard Polystyreneを用い、リテンションタイムと分子量のグラフを作成。
(3)注入量、注入濃度 : 100μL、 1mg/mL
なお、実施例1のポリイソシアネート組成物のゲルパーミエーションクロマトグラムを
図1に示す。
【0161】
2.ブロックイソシアネートの製造
実施例1~9、比較例1~6および参考例1~10
温度計、撹拌装置、冷却管、窒素導入管が装置された反応器に、窒素雰囲気下、1,3-キシリレンジイソシアネート(m-XDI、三井化学社製) 100質量部と、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、商品名:イルガノックス1076、チバ・ジャパン社製)0.021質量部(0.02phr)とを仕込み、60℃~65℃において混合した。
【0162】
次いで、その混合物に、1,3-ブチレングリコール 2質量部を、70℃~75℃において添加して混合し、ウレタン化反応させた。
【0163】
次いで、得られたウレタン反応液に、テトラブチルアンモニウムのハイドロオキサイド(イソシアヌレート化触媒、TBAOH(37%メタノール溶液))のプロピレングリコールメチルエーテルアセテート溶液(固形分濃度3.7質量%)を添加した。添加量は、ウレタン反応液に対して、TBAOH(37%メタノール溶液)が0.11質量部(有効成分として0.04質量部)となるように、調整した。
【0164】
次いで、ウレタン反応液を混合しながら、70℃~75℃において、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体の転化率が、表1~表2に記載の値に到達するまで、1,3-キシリレンジイソシアネートをイソシアヌレート化反応させた。
【0165】
なお、イソシアヌレート誘導体の転化率は、以下の方法により算出した。
【0166】
具体的には、ウレタン反応液およびイソシアヌレート反応液のイソシアネート基濃度を、JIS K-1556(2006年)のn-ジブチルアミン法に準拠してそれぞれ測定した。
【0167】
次いで、ウレタン反応液のイソシアネート基濃度に対する、イソシアヌレート反応液のイソシアネート基濃度の減少率を算出することにより、イソシアヌレート転化率を求めた。
【0168】
次いで、得られたイソシアヌレート反応液に、ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA、触媒失活剤)のプロピレングリコールメチルエーテルアセテート溶液(有効成分濃度50質量%)を添加し、イソシアヌレート化反応を停止させた。添加量は、DDBSAが0.054質量部(DDBSAの添加割合が、イソシアヌレート反応液に対して500ppm)となるように、調整した。
【0169】
次いで、得られたイソシアヌレート反応液を、さらに、70~75℃で30分撹拌した。次いで、得られたイソシアヌレート反応液を薄膜蒸留(圧力:60PaA以下、温度:160℃、フィード量:5g/時間)して、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含有する分離液と、未反応のキシリレンジイソシアネートを含有する回収液とを、それぞれ分離した。
【0170】
そして、得られた分離液には、酢酸エチルを添加して固形分濃度を75質量%に調整し、耐熱安定剤として、パラトルエンスルホンアミド0.04質量部を添加した。
【0171】
これにより、1,3-ブチレングリコールによって変性された1,3-キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を得た。また、得られたイソシアヌレート誘導体の3分子体面積率を測定した。
【0172】
次いで、この1,3-キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体のイソシアネート基1モルに対して、表1~表2に記載のブロック剤を、1.02モル(ブロック剤/イソシアネート基=1.02(mol/mol))添加し、40~60℃で1~2時間反応させ、アミン当量が20,000以上となったところで反応を停止し、その後、固形分濃度70%になるように酢酸エチルを添加した。
【0173】
これにより、ブロックイソシアネートの溶液を得た。
【0174】
その後、得られたブロックイソシアネートの溶液と、Q-166(アクリルポリオール、オレスターQ-166(商品名、三井化学社製)の溶剤置換品、溶剤(酢酸ブチル、シクロヘキサン)、水酸基価(固形分)60mgKOH/g、水酸基価(溶剤中)29mgKOH/g、固形分濃度40%)とを、当量比1.0(NCO/OH=1.0)で混合し、固形分濃度50%になるようにイソプロピルアルコールを添加し、23℃、5分間混合し、次いで、10分間超音波処理することにより、脱泡して、コーティング剤を得た。
【0175】
得られたコーティング剤を、4milのアプリケーターによって、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)および鋼板(SPCC鋼板、PBN-144処理品)に塗工し、150℃のオーブンで30分加熱し、硬化膜を得た。
【0176】
比較例7
タケネートD-110N(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン変性体、三井化学社製、固形分濃度75%、溶剤(酢酸エチル))と、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンおよび3,5-ジメチルピラゾールとを、混合した。
【0177】
より具体的には、タケネートD-110Nのイソシアネート基1モルに対して、0.8モルの3,5-ジメチルピラゾールを混合し、室温で撹拌した後、さに、上記イソシアネート基1モルに対して0.2モルの1,3,3-テトラメチルグアニジンを添加し、室温で撹拌した。その後、FT-IRスペクトルを測定し、イソシアネート基がブロック化されていることを確認して、ブロックイソシアネートを得た。
【0178】
また、ブロックイソシアネートに、固形分濃度70%になるように酢酸エチルを添加した。これにより、ブロックイソシアネートの溶液を得た。
【0179】
そして、実施例1と同じ方法で、硬化膜を得た。
【0180】
3.評価
(貯蔵安定性)
ブロックイソシアネートの溶液を、100mLガラス瓶に入れ、窒素置換した後、金属製の蓋で密閉し、60℃のオーブンにて保管した。
【0181】
8週間後、ブロックイソシアネートの溶液の色相(APHA)を、JIS K 0071-1(2017年)に準拠して、目視により評価した。
【0182】
評価基準を、以下に示す。
◎:保管前後で変化なし
○:保管前後での色相(APHA)変化量50未満
△:保管前後での色相(APHA)変化量50以上100未満
×:保管前後での色相(APHA)変化量50以上100以上
【0183】
【0184】
【0185】
表中の略号の詳細を下記する。
DMP:3,5-ジメチルピラゾール
IMZ:イミダゾール
MEKO:メチルエチルケトンオキシム
DEM:マロン酸ジエチル
TMG:1,1,3,3-テトラメチルグアニジン