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特許7343399分割ボーラスプロトコルの生成のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】分割ボーラスプロトコルの生成のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20230905BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20230905BHJP
   A61M 5/172 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
A61B6/03 375
A61M5/142 530
A61M5/172
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019569692
(86)(22)【出願日】2018-06-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 US2018037492
(87)【国際公開番号】W WO2018232085
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】62/520,728
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507021757
【氏名又は名称】バイエル・ヘルスケア・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ヴォルカー
(72)【発明者】
【氏名】コーリー・ケンパー
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0109966(US,A1)
【文献】特表2010-514502(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0025461(KR,A)
【文献】ロシア国特許出願公開第02556619(RU,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/03
A61M 5/142
A61M 5/172
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像システムを使用して患者に対して実行される造影剤強調撮像手順に関連して患者へ造影剤を注入するための注入システムであって、
プロセッサと、
前記プロセッサによって実行されたときに、当該注入システムが、当該注入システムによる造影剤の注入を制御する分割ボーラス注入プロトコルに関連するパラメータの決定に使用されるパラメータ生成システムとして動作することを可能にするプログラミング命令を格納した非一時的な記憶媒体と、
を備えた、注入システムにおいて、
前記分割ボーラス注入プロトコルは、ローディング注入および診断用注入を少なくとも含み、前記ローディング注入は、前記診断用注入の前に実行され、休止が、前記ローディング注入を前記診断用注入から隔てており、
前記分割ボーラス注入プロトコルに関連する前記パラメータの決定は、対象とする複数の身体領域で到達された強調レベルのシミュレーションの最適化を通じて、前記ローディング注入において注入される造影剤の体積、前記診断用注入において注入される造影剤の体積、および、前記ローディング注入を前記診断用注入から隔てている休止を決定することを含み、
当該注入システムは、前記パラメータ生成システムによって決定された前記パラメータに従って前記ローディング注入および前記診断用注入を実行するように構成されていることを特徴とする、注入システム。
【請求項2】
前記パラメータ生成システムは、前記ローディング注入において注入される前記造影剤の流量、および前記診断用注入において注入される前記造影剤の流量のうちの1つ以上をさらに決定する、請求項1に記載の注入システム。
【請求項3】
前記分割ボーラス注入プロトコルは、第2のローディング注入を含み、前記パラメータ生成システムは、前記第2のローディング注入において注入される造影剤の体積および前記第2のローディング注入において注入される前記造影剤の流量のうちの少なくとも一方を決定する、請求項1に記載の注入システム。
【請求項4】
前記パラメータ生成システムによって決定された前記パラメータを表示するように構成されたグラフィカルユーザインターフェースをさらに備える、請求項1に記載の注入システム。
【請求項5】
前記グラフィカルユーザインターフェースは、前記ローディング注入において注入される前記造影剤の体積、前記ローディング注入において注入される前記造影剤の流量、前記診断用注入において注入される前記造影剤の体積、および前記診断用注入において注入される前記造影剤の流量を表示するように構成されている、請求項4に記載の注入システム。
【請求項6】
当該注入システムは、前記診断用注入の後に前記撮像システムへとタイミング信号を送信するように構成されている、請求項1に記載の注入システム。
【請求項7】
分割ボーラス注入技術を使用した撮像のためのシステムであって、
ローディング注入および診断用注入についてのパラメータを決定するパラメータ生成システムであって、前記ローディング注入および前記診断用注入のそれぞれは、それぞれ所定の体積の造影剤を含み、決定されたパラメータは、前記ローディング注入において注入される造影剤の体積、前記診断用注入において注入される造影剤の体積、および、前記ローディング注入を前記診断用注入から隔てている所定の時間の休止を含み、さらに、前記パラメータは、撮像システムを使用して患者に対して実行される造影剤強調撮像手順中に対象とする複数の身体領域で達成された強調レベルのシミュレーションの最適化によって決定される、パラメータ生成システムと、
前記ローディング注入および前記診断用注入を実行する注入システムであって、前記ローディング注入と前記診断用注入との間に前記休止が生じる、注入システムと、
を含んでなる、撮像のためのシステムにおいて、
前記診断用注入が完了したことを示すタイミング信号が、前記注入システムから撮像システムへと送信され、
前記撮像システムが、前記タイミング信号の受信に応答して、前記造影剤強調撮像手順を実行する、撮像のためのシステム。
【請求項8】
前記パラメータ生成システムは、前記ローディング注入において注入される前記造影剤の流量、および前記診断用注入において注入される前記造影剤の流量のうちの1つ以上を決定する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記パラメータ生成システムは、第2のローディング注入において注入される造影剤の体積および前記第2のローディング注入において注入される前記造影剤の流量のうちの少なくとも一方のパラメータを決定する、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記パラメータ生成システムによって決定された前記パラメータが、グラフィカルユーザインターフェース上に表示される、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記グラフィカルユーザインターフェースは、前記ローディング注入において注入される前記造影剤の体積、前記ローディング注入において注入される前記造影剤の流量、前記診断用注入において注入される前記造影剤の体積、および前記診断用注入において注入される前記造影剤の流量を表示する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
患者の撮像のためのシステムであって、
撮像システムと、
請求項1から6のいずれか一項に記載の注入システムであって、前記撮像システムと通信する、注入システムと、
を備えることを特徴とする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年6月16日に出願された米国特許仮出願第62/520,728号の優先権を主張し、この米国特許仮出願の内容全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、広くには、流体のデリバリのためのシステムおよび方法に関し、とくには、分割ボーラス技術を使用して患者へと造影剤をデリバリするためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
造影剤に基づく医療撮像は、世界中の病院および医療施設で広く使用されている必要不可欠な診断ツールである。そのような撮像の望ましくない副作用は、患者が、本来であれば受けることがなかったであろう電離放射線に曝露されることである。国際原子力機関(IAEA)によると、胸部または腹部のCTスキャンにおける患者の曝露は、通常の胸部X線においては0.1mSv未満であるのに対し、5~20mSvである。残念ながら、スキャンにおいて曝露を減らすと、取得される画像の品質に有害な影響が及び、結果として診断に悪影響が及ぶ可能性がある。近年において過剰なX線放射への曝露の危害がますます意識されるにつれて、「合理的に達成可能な限り少なく(「ALARA」)」という原則が大いに注目されており、そのような有害な放射線への患者の曝露を減らすように医療撮像の手順を最適化するやり方に大きな関心が向けられている。
【0004】
ほとんど使用されていないが、放射線への患者の曝露を低減するための1つの既知の技術が、分割ボーラス技術と呼ばれる。分割ボーラス技術は、複数回の取得の代わりに1回のスキャンによる取得を使用できるようにすることで、放射線への患者の曝露を低減する技術である。本質的に、分割ボーラス技術は、造影剤に基づく大部分の医療撮像手順において一般的である単一の連続注入を、遅延または休止を間に挟む2回または3回の別個の造影剤注入で置き換える。別個の注入の各々が、異なる時点において身体の異なる部分に到達して吸収されるため、分割ボーラス注入は、異なる身体部分の同時の強調をもたらすことができる。取得スキャンが同時強調期間に一致するように正しいタイミングで行われる場合、分割ボーラス技術によって、単一のスキャンを実行して、身体の複数の部分に関する情報を取得することができるため、この情報を取得するために複数回のスキャンを実行する必要がなくなる。
【0005】
分割ボーラス技術は、患者の放射線への曝露の低減を助けるうえでおおむね効果的であるが、依然としてニッチな技術と見なされ、通常は調査研究および先進的な医師だけのものにとどまり、臨床現場で一般的に適用されているわけではない。この理由の1つは、広く使用することができる一貫的かつ実用的なやり方で分割ボーラス注入プロトコルを開発および実装することが困難であるからだと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第6,643,537号明細書
【文献】米国特許第7,553,294号明細書
【文献】米国特許第5,840,026号明細書
【文献】米国特許第6,385,483号明細書
【文献】米国特許第8,295,914号明細書
【文献】米国特許第9,302,044号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の特定の実施形態の目的は、分割ボーラス注入手順を実装するために使用することができるシステムおよび方法を提供することである。システムは、複数の造影剤注入を含む分割ボーラスプロトコルのパラメータを決定することができるパラメータ生成システムを含むことができる。
【0008】
本開示の種々の態様は、以下の条項のうちの1つ以上をさらに特徴とすることができる。
【0009】
条項1:撮像システムを使用して患者について実行される造影剤強調撮像手順に関連して患者へと造影剤を注入するための注入システムであって、注入システムは、プロセッサと、プロセッサによって実行されたときに、注入システムが、注入システムによる造影剤の注入を制御する分割ボーラス注入プロトコルに関連するパラメータの決定に使用されるパラメータ生成システムとして動作することを可能にするプログラミング命令を格納した非一時的な記憶媒体とを備えており、分割ボーラス注入プロトコルは、ローディング注入および診断用注入を少なくとも含み、ローディング注入は、診断用注入の前に実行され、休止が、ローディング注入を診断用注入から隔てており、注入システムは、パラメータ生成システムによって決定されたパラメータに従ってローディング注入および診断用注入を実行するように構成されている、注入システム。
【0010】
条項2:パラメータ生成システムは、ローディング注入において注入される造影剤の体積、ローディング注入において注入される造影剤の流量、診断用注入において注入される造影剤の体積、および診断用注入において注入される造影剤の流量のうちの1つ以上を決定する、条項1に記載の注入システム。
【0011】
条項3:パラメータ生成システムは、ローディング注入において注入される造影剤の体積、ローディング注入において注入される造影剤の流量、診断用注入において注入される造影剤の体積、および診断用注入において注入される造影剤の流量を決定する、条項2に記載の注入システム。
【0012】
条項4:分割ボーラス注入プロトコルは、第2のローディング注入を含み、パラメータ生成システムは、第2のローディング注入において注入される造影剤の体積および第2のローディング注入において注入される造影剤の流量のうちの少なくとも一方を決定する、条項1~3のいずれかに記載の注入システム。
【0013】
条項5:分割ボーラス注入プロトコルは、第2のローディング注入を含み、パラメータ生成システムは、第2のローディング注入において注入される造影剤の体積および第2のローディング注入において注入される造影剤の流量のうちの少なくとも一方を決定する、条項2に記載の注入システム。
【0014】
条項6:パラメータ生成システムによって決定されたパラメータを表示するように構成されたグラフィカルユーザインターフェースをさらに備える、条項1~5のいずれかに記載の注入システム。
【0015】
条項7:グラフィカルユーザインターフェースは、ローディング注入において注入される造影剤の体積、ローディング注入において注入される造影剤の流量、診断用注入において注入される造影剤の体積、および診断用注入において注入される造影剤の流量を表示するように構成されている、条項6に記載の注入システム。
【0016】
条項8:パラメータ生成システムは、造影剤の濃度に少なくとも部分的に基づき、かつ患者の体重に応じて異なる値を有する関数Xに少なくとも部分的に基づいて、ローディング注入において注入される造影剤の体積および診断用注入において注入される造影剤の体積を決定する、条項1~7のいずれかに記載の注入システム。
【0017】
条項9:造影剤の濃度および患者の体重をパラメータ生成システムへと入力するための入力装置をさらに備える、条項8に記載の注入システム。
【0018】
条項10:ローディング注入において注入される造影剤の体積および診断用注入において注入される造影剤の体積が、式:V=体重*X*Yを使用してそれぞれ独立に計算され、ここで、Yは造影剤の濃度の関数であり、Xはローディング注入と診断用注入との間で相違してよい、条項8に記載の注入システム。
【0019】
条項11:Xは、特定の患者の体重について、Xを体重の関数として計算するアルゴリズムから決定される、条項10に記載の注入システム。
【0020】
条項12:Xは、特定の患者の体重について、Xを体重の関数として規定するテーブルから決定される、条項10に記載の注入システム。
【0021】
条項13:注入システムは、診断用注入の後に撮像システムへとタイミング信号を送信するように構成されている、条項1~12のいずれかに記載の注入システム。
【0022】
条項14:分割ボーラス注入技術を使用した患者の撮像のための方法であって、方法は、ローディング注入および診断用注入についてのパラメータをパラメータ生成システムによって決定するステップであって、ローディング注入および診断用注入はそれぞれ所定の体積の造影剤を含む、ステップと、注入システムによってローディング注入を実行し、ローディング注入を患者へともたらすステップと、注入システムによって診断用注入を実行し、診断用注入を患者へともたらすステップであって、ローディング注入と診断用注入との間に、所定の時間の休止が生じる、ステップと、
診断用注入が完了したことを示すタイミング信号を、注入システムから撮像システムへと送信するステップと、撮像システムによって、タイミング信号の受信に応答して、患者の撮像手順を実行するステップとを含む方法。
【0023】
条項15:パラメータ生成システムは、ローディング注入において注入される造影剤の体積、ローディング注入において注入される造影剤の流量、診断用注入において注入される造影剤の体積、および診断用注入において注入される造影剤の流量のうちの1つ以上を決定する、条項14に記載の方法。
【0024】
条項16:パラメータ生成システムは、ローディング注入において注入される造影剤の体積、ローディング注入において注入される造影剤の流量、診断用注入において注入される造影剤の体積、および診断用注入において注入される造影剤の流量を決定する、条項15に記載の方法。
【0025】
条項17:パラメータ生成システムによって、第2のローディング注入において注入される造影剤の体積および第2のローディング注入において注入される造影剤の流量のうちの少なくとも一方のパラメータを決定するステップをさらに含む、条項14~16に記載の方法。
【0026】
条項18:パラメータ生成システムによって決定されたパラメータを、グラフィカルユーザインターフェース上に表示するステップをさらに含む、条項14~17に記載の方法。
【0027】
条項19:グラフィカルユーザインターフェースは、ローディング注入において注入される造影剤の体積、ローディング注入において注入される造影剤の流量、診断用注入において注入される造影剤の体積、および診断用注入において注入される造影剤の流量を表示する、条項18に記載の方法。
【0028】
条項20:パラメータ生成システムは、造影剤の濃度に少なくとも部分的に基づき、かつ患者の体重に応じて異なる値を有する関数Xに少なくとも部分的に基づいて、ローディング注入において注入される造影剤の体積および診断用注入において注入される造影剤の体積を決定する、条項14~19のいずれかに記載の方法。
【0029】
条項21:造影剤の濃度および患者の体重が、入力装置を介して入力される、条項20に記載の方法。
【0030】
条項22:ローディング注入において注入される造影剤の体積および診断用注入において注入される造影剤の体積が、式:V=体重*X*Yを使用してそれぞれ独立に計算され、ここで、Yは造影剤の濃度の関数であり、Xはローディング注入と診断用注入との間で相違してよい、条項20に記載の方法。
【0031】
条項23:Xは、特定の患者の体重について、Xを体重の関数として計算するアルゴリズムから決定される、条項22に記載の方法。
【0032】
条項24:Xは、特定の患者の体重について、Xを体重の関数として規定するテーブルから決定される、条項22に記載の方法。
【0033】
条項25:患者の撮像のためのシステムであって、システムは、撮像システムと、条項1~13のいずれかに記載の注入システムであって、注入システムは、撮像システムと通信する、注入システムとを備える、システム。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】やはり図1に示されている2シリンジの注入システムにおいて使用される形式のグラフィカルユーザインターフェース(GUI)であって、複数の段階を含む注入プロトコルのパラメータを表すための多段階GUIの実施形態を示している。
図2】本発明の一実施形態(ただし、これに限られるわけではない)による患者撮像環境を示している。
図3】本発明の一実施形態(ただし、これに限られるわけではない)によるグラフィカルユーザインターフェースを示している。
図4】本発明の一実施形態(ただし、これに限られるわけではない)による一組のシミュレーションによる強調曲線を示している。
図5】分割ボーラス注入技術を使用した患者の撮像のための方法の実施形態(ただし、これに限られるわけではない)のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下の説明の目的で、空間における向きの用語は、図面の図における向きのとおりの実施形態に関するものとする。しかしながら、本開示の種々の実施形態が、とくに明示されない限り、別の変種および手順の順序を呈してもよいことを、理解すべきである。また、添付の図面に示され、以下の明細書に記載される具体的な装置およびプロセスが、あくまでも例にすぎないことを理解すべきである。したがって、本明細書に開示される実施形態に関する具体的な寸法および他の物理的特性を、限定と見なすべきではない。
【0036】
本明細書において使用されるとき、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈からそのようでないことが明らかでない限り、対象が複数である場合を含む。
【0037】
とくに示されない限り、本明細書に開示されるすべての範囲または比は、その範囲または比に含まれるありとあらゆる部分的な範囲または部分的な比を包含すると理解されるべきである。例えば、「1~10」という範囲または「1対10」という比の記載は、最小値1と最大値10との間(最小値1および最大値10を含む)のありとあらゆる部分的な範囲、すなわちこれらに限られるわけではないが1~6.1(1対6.1)、3.5~7.8(3.5対7.8)、および5.5~10(5.5対10)など、1以上の最小値で始まって10以下の最大値で終わるすべての部分的な範囲または部分的な比を含むと理解されるべきである。
【0038】
これらに限られるわけではないが発行済みの特許および特許出願など、本明細書において言及されるあらゆる文書は、とくに示されない限り、その全体が「援用」されたものと見なされるべきである。
【0039】
注入手順に関して本明細書で使用される場合、「プロトコル」という用語は、流体デリバリ手順において患者へともたらされるべき造影剤またはフラッシュ流体などの流体の量を定める流れの速度、流れの体積、流れの時間、などのパラメータ群を指す。このようなパラメータは、手順の過程において変化してもよい。
【0040】
本開示の主題であるプロトコルは、本明細書において「分割ボーラスプロトコル」と呼ばれることもあるが、分割ボーラス注入手順においてデリバリされる流体の量を定める。分割ボーラスプロトコルは、造影剤のデリバリを複数(例えば、2つ、3つ、または4つ)の個別の造影剤注入に分割する分割ボーラス技術を使用し、個別の造影剤注入の各々が、少なくとも造影剤ボーラスのデリバリを含み、さらに例えば所定量のフラッシュ流体または希釈剤も含むことができる。造影剤注入を、流体のデリバリが生じておらず、あるいは少なくとも造影剤のデリバリが行われていない休止または遅延期間によって、互いに隔てることができる。休止期間は、可変の長さであっても、一定の長さであってもよい。例えば、各々の注入の間の遅延が、同じであっても、違ってもよい。
【0041】
本開示による分割ボーラスプロトコルは、例えば、2つ、3つ、または4つ以上の個別の造影剤注入を含むことができる。「診断用注入」と呼ばれることもある最後のこのような造影剤注入は、動脈相強調またはファーストパス撮像に使用される造影剤ボーラスをもたらすことができる。診断用注入に先立つ1つ以上の造影剤注入を、本明細書において「ローディング注入」と呼ぶことができる。ローディング注入は、造影剤が患者へと適切にロードされることを保証するための充分な造影剤のボーラスをもたらすことができる。さらに、本開示による分割ボーラスプロトコルは、上述の造影剤注入の前に生じるテスト注入も含むことができる。例えば、カテーテルの配置をテストするために使用することができるテスト注入は、随意であり、本開示の目的において、分割ボーラスプロトコルの「造影剤注入」の1つとは見なされない。
【0042】
例として、本開示による分割ボーラスプロトコルは、2回のローディング注入および1回の診断用注入、したがって合計3回の個別の造影剤注入を含むことができる。第1のローディング注入は、主として患者の身体組織、あるいは腎臓、尿管、および/または膀胱に造影剤をロードするように機能する第1のローディングボーラスをもたらすことができる。造影剤の体積、造影剤の流量、および第1のローディング注入に続く休止期間の長さを含むこの第1のローディング注入のパラメータを、この注入によってもたらされる造影剤を実質撮像のために血流から吸収して組織へと拡散させることができるように選択することができ、あるいは遅延の長さに応じて、排泄系において処理および収集されるように選択することができる。第2のローディング注入は、主として静脈系に集中する第2のローディングボーラスをもたらすことができる。例えば、第2のローディング注入のパラメータを、静脈側および動脈側の両方が等しい量の造影剤を有する血液プール内の造影剤のほぼ均一な分布を生み出すように選択することができる。この第2のローディング注入に続く休止期間は、造影剤が静脈→心臓→肺→心臓→動脈の経路を複数回循環できるために充分であってよいが、かなりの量の造影剤が血液プールから出るほどは長くない。この第2のローディング注入の目的は、動脈構造を対象とする後続のスキャン取得(診断用注入に続く)において血管系全体の撮像を可能にすることであってよい。この技術は、尿路造影および外傷の撮像にとくに有用となり得る。第2のローディング注入に続くことができる診断用注入は、主として診断用注入に続くスキャナ取得が有効であるように対象の身体領域の強調レベルをしきい値まで高めるように機能する診断用ボーラスをもたらすことができる。
【0043】
各々の造影剤注入(例えば、各々のローディング注入および診断用注入)は、例えば2つの段階など、2つ以上の段階を含むことができ、第1の段階において造影剤ボーラスがデリバリされ、第2の段階において生理食塩水などのフラッシュ流体がデリバリされる。一般に、第2の段階は、第1の段階の直後に続く。造影剤ボーラスのデリバリの直後のフラッシュ流体の投与は、技術的に既知のとおり、患者を通って造影剤ボーラスを流し、もしくは押す役に立ち、カテーテルラインから残留造影剤を取り除く役に立つなど、いくつかの目的に機能する。例えば、ローディング注入は、所定量の造影剤を所定の流量で所定の時間にわたって注入する第1の段階と、所定量の生理食塩水を所定の流量で所定の時間にわたって注入する造影剤の注入の完了の直後の第2の段階とを含むことができる。いくつかの実施形態(ただし、これらに限られるわけではない)において、ローディング注入は、生理食塩水段階の終了時に完了したと見なされ、休止期間が、例えば次のローディング注入または診断用注入の前に発生する。例えば、ローディング注入が完了した後に、休止が存在でき、次いで所定量の造影剤を所定の流量で所定の時間にわたって注入する診断用注入の第1の段階が存在でき、その直後に、所定量の生理食塩水を所定の流量で所定の時間にわたって注入する診断用注入の第2の段階が存在できる。
【0044】
本開示のいくつかの実施形態においては、図1に示され、例えばどちらも参照によって本明細書に組み込まれる特許文献1および特許文献2に開示されているようなデュアルシリンジ注入システム100などの注入システムが使用される。注入システム100は、第1の流体および/または第2の流体を独立に患者へと導入するように動作することができるシリンジの形態であってよい本明細書においてソース「A」およびソース「B」と呼ばれることもある2つの流体デリバリ源を含むことができる。いくつかの実施形態(ただし、これらに限られるわけではない)において、第1の流体は、造影剤であってよく、第2の流体は、生理食塩水などのフラッシュ流体であってよい。第1および/または第2の流体を、例えば、同時にもたらすことができ、互いに異なる体積流量比で同時にもたらすことができ、あるいは順次に、または互いに続けて(すなわち、Aの次にB、またはBの次にA)もたらすことができる。
【0045】
図1の実施形態において、ソースAは、駆動部材110Aなどの加圧機構に動作可能に接続され、ソースBは、駆動部材110Bなどの加圧機構に動作可能に接続されている。注入システムは、ソースAからの流体A(例えば、造影剤)の注入およびソースBからの流体Bの注入(例えば、生理食塩水)の注入をそれぞれ制御するために駆動部材110Aおよび110Bの動作を制御するように動作することができる注入システム100に動作可能に接続されたコントローラ200を含む。注入システムに、例えば、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)が表示されるディスプレイ210を組み合わせることができる。さらに、コントローラ200は、メモリ230に動作可能に接続されたプロセッサ220(例えば、技術的に既知のデジタルマイクロプロセッサ)を含むことができる。
【0046】
本開示のいくつかの実施形態(ただし、これらに限られるわけではない)において、図2に示されるような撮像システム300をさらに使用することができる。撮像システム300は、例えば、CTシステム、磁気共鳴撮像(MRI)システム、超音波撮像システム、ポジトロン放出断層撮影(PET)システム、または他の撮像システムであってよい。撮像システム300は、一般に、患者ベッド304に対して移動するイメージャ301を含むことができる。撮像システム300の一例は、X線源からのX線を被験者へと照射するために使用されるCTスキャナを含むCTシステムである。X線源から放出されたX線は、被験者の組織、臓器、および構造をさまざまな割合で通過する(一部がそのような組織、臓器、および構造によって吸収される)が、その割合は、組織および/または臓器における造影剤の存在(または、不在)など、X線が通過する物質の密度および種類に依存する。リング内に配置されたセンサが、被験者を通過する放射線の量を検出する。注入システム100および/またはコンピュータなどの入力装置302(ディスプレイ210を含むことができる)を撮像システム300と通信可能に接続して、これらの間で信号を伝えることが可能であり、注入システム100、入力装置302、および撮像システム300の1つ、複数、またはすべての構成要素を統合することが可能である。注入システム100、入力装置302、および撮像システム300の間の通信は、イントラネット、LAN、WAN、またはインターネット接続などの有線または無線のネットワーク接続によることができる。
【0047】
一実施形態(ただし、これに限られるわけではない)において、注入システム100は、1つ以上の注入が完了したことを示すタイミング信号を撮像システム300に送信する。撮像システム300は、このタイミング信号を使用して、画像取得スキャンを開始する適切な時間を決定することができる。分割ボーラス技術が使用される本開示によるいくつかの実施形態(ただし、これに限られるわけではない)においては、診断用注入の完了後にのみタイミング信号を注入システム100から撮像システム300へと送信できる一方で、ローディング注入などの、分割ボーラスプロトコルの他の注入後には、そのようなタイミング信号が送信されない。
【0048】
本開示のいくつかの実施形態(ただし、これらに限られるわけではない)においては、分割ボーラスプロトコルの1つ以上の造影剤注入のパラメータなど、分割ボーラスプロトコルのパラメータが、パラメータ生成システムによって決定される。パラメータ生成システムは、注入システム100および/または撮像システム300に統合されていてもよく、あるいは、例えば上述の通信手段によって注入システム100および/または撮像システム300と通信する1つ以上の別個のシステムの一部であってもよい。パラメータ生成システムは、注入システム100および/または撮像システム300上に存在し、あるいは注入システム100および/または撮像システム300によってアクセス可能である非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に存在するプログラミング命令またはアルゴリズムの形態のソフトウェアであってよい。プログラミング命令は、プロセッサによって実行されたとき、注入システム100および/または撮像システム300がパラメータ生成システムとして動作して、本明細書に記載の動作を実行することを可能にする。パラメータ生成システムは、例えば、造影剤の濃度(例えば、CT処置の場合のヨウ素濃度)、患者データ(例えば、体重、対象とする身体の領域または区画、ボディ・マス・インデックス、体表面積、身長、性別、年齢、心拍出量、など)、実行されるスキャンの種類、血管内アクセスのために患者へと挿入されるカテーテルの種類、上述の分割ボーラス技術の適用の目的において造影剤注入を何回に分割するか、および造影剤注入の間に休止期間を生じさせる場合の休止期間の長さ、などの特定の情報に基づいて、本開示による分割ボーラスプロトコルのパラメータを決定することができる。
【0049】
例えば、分割ボーラスプロトコルは、分割ボーラス注入手順を協働して構成する複数の造影剤注入(例えば、ローディングボーラス、診断用ボーラス)の各々についてのパラメータ(例えば、造影剤の流量、注入時間、および/または造影剤の体積)を含むことができる。本開示によれば、パラメータ生成システムを、設定および入力値に基づくワンパス計算にて分割ボーラスプロトコルの造影剤注入の各々についてのパラメータを計算するように構成することができる。例えば、パラメータ生成システムは、ワンパス計算により、1回以上(例えば、2回)のローディング注入と、1回以上(例えば、1回)の診断用注入とを含む分割ボーラス注入手順について、注入体積、注入流量、注入時間、および注入間の休止などの注入パラメータを決定することができる。
【0050】
患者ごとに投与要件が異なることが知られている。例えば、その開示が参照によって本明細書に組み込まれる本開示の譲受人へと譲渡済みの特許文献3および特許文献4が、注入前または注入中に導出された患者固有のデータを使用して注入を患者へとカスタマイズするための装置および方法を開示している。同様に、その内容が参照によって本明細書に組み込まれる本開示の譲受人へと譲渡済みの特許文献5が、患者固有のデータを使用して注入を患者へとカスタマイズすることをやはり開示しており、所与の入力またはプロトコルについて時間強調出力を説明するためのいくつかのモデルを説明している。さらに、その内容が参照によって本明細書に組み込まれる本開示の譲受人へと譲渡済みの特許文献6が、医療注入プロトコルのための患者に基づくパラメータ生成システムを開示している。これらの参照文献の各々において論じられている技術は、本開示において、例えば分割ボーラス注入手順において注入されるべき造影剤の量および/またはフラッシュ流体の量を決定するうえで有用であり得る。しかしながら、これらの開示は、そこで論じられている技術を、分割ボーラスプロトコルに関して適用していないことに注意すべきである。
【0051】
分割ボーラス技術を利用する場合に、分割ボーラスプロトコルにおける流量、体積、および造影剤注入間の休止期間の最適な組は、インジェクタのオペレータにとって容易には分からないため、本開示は、実行中の手順の種類について効果的な分割ボーラスプロトコルを提供することによって、オペレータのタスクを楽にする。そのようなプロトコルを、ヨウ素の濃度および/またはカテーテルの番手などの注入そのものについての情報、患者の体重、身長、ボディ・マス・インデックス、または性別などの患者についての情報、使用される管電圧などのスキャナについての情報、および入手可能であってよい他の情報など、上述のような情報を使用して定めることができる。この情報を、例えば、病院情報システム(HIS)、放射線医学情報システム(RIS)、あるいは撮像施設内にあり、もしくは撮像施設にとって利用可能である別の情報源から受け取ることができる。また、この情報を、注入システム100、撮像システム300、および/またはパラメータ生成システムに組み合わせられた入力装置302などの入力装置を介してオペレータが入力してもよい。
【0052】
分割ボーラスプロトコルのパラメータを決定するこのプロセスの一部として、オペレータは、例えば、患者へともたらされるべき造影剤の濃度(例えば、CT手順におけるヨウ素の濃度)を選択することができる。この選択を、例えば、ドロップダウンメニューまたはグラフィカルユーザインターフェース上でオペレータに利用可能な選択肢を提供する他の手段などの選択機構によって行うことができる。また、この選択を、グラフィカルユーザインターフェース上、あるいは例えば入力装置302に組み合わせられてよいキーボード、マウス、または他の入力機構を用いた数値の直接入力によって行うことも可能である。濃度値を、HISまたはRISなどの別のシステムからパラメータ生成システムへと送信することも可能である。さらに、臨床オペレータが、その特定の患者に挿入されたカテーテルの番手を選択することができる。カテーテルのサイズを入力することで、後の段階において、体積流量が決定されたときに、使い捨ての流路セットに発生させるべき圧力水頭を(例えば、コンピュータプログラムによって)計算することができる。あるいは、カテーテルのサイズを感知し、この情報を注入システムへと提供するために、1つ以上のセンサを設けてもよい。
【0053】
さらに、オペレータに対し、例えば分割ボーラス注入手順に含まれるべき造影剤注入の回数および種類の指示を入力するように促すことができる。例えば、手順は、2回のローディングボーラスおよび1回の診断用ボーラスを含むことができる。この情報、ならびに本明細書において言及される他の情報を、例えば、直接テキスト入力あるいはドロップダウンメニューまたは他の機構からの選択などの形態で、注入システム100、撮像システム300、および/またはパラメータ生成システムに組み合わせられた入力装置302への入力を通じて受け取ることができ、あるいは上述のソース(例えば、HIS、RIS)などの他のソースから受け取ることができる。手順にテスト注入が含まれる場合、パラメータ生成システムは、テスト注入の体積(例えば、ml)および持続時間(例えば、秒)の値を受け取ることができ、そこから、パラメータ生成システムは、テスト注入の流量(ml/秒)を決定することができる。
【0054】
さらに、オペレータに対し、例えば、他の変数(例えば、患者の体重、身長、ボディ・マス・インデックス、性別、などの患者の生理学的変数)の値を入力するように促すことができる。これの実施形態または実施態様の例は、オペレータが患者の体重をポンドまたはキログラムで入力するキーパッドをユーザインターフェース上に用意することである。別の実施形態において、オペレータは、体重の範囲を低、中、および高の範囲から選択する。また、そのような変数を、システムに組み合わせられた1つ以上の感知装置によって測定してもよく、さらには/あるいは例えば病院のデータベースに保存されていてよい患者記録から電子的またはデジタル的に読み出してもよい。
【0055】
可変の重み係数(造影剤(mg)/体重(kg))を使用して、分割ボーラス注入手順のいくつかの造影剤注入の各々における患者への造影剤の投与量(例えば、ヨウ素の投与量)を決定することができる(例えば、各々のローディング注入における造影剤の投与量および診断用注入における造影剤の投与量を決定することができる)。これらの重み係数は、注入の種類および目的に応じて異なり得る。例えば、ローディングボーラスの重み係数が、診断用ボーラスの重み係数とは違ってよい。さらに、第1のローディングボーラスの重み係数が、第2のローディングボーラスの重み係数とは違ってよい。あるいは、各々の造影剤注入の重み係数が、同じであってもよい。いくつかの実施形態(ただし、これらに限られるわけではない)においては、重み係数を、所定の範囲の患者の体型(例えば、サイズ)に関して対象の身体領域において得られる強調のレベルについて多数のシミュレーションなどのシミュレーションを実行し、ヒューリスティック最適化などの最適化を適用して、分割ボーラス注入手順の数回の造影剤注入の各々においてもたらされるべき造影剤の割合および総量を決定するとともに、スキャンタイミングを決定することによって、設定の時点において決定することができる。
【0056】
さらに、本発明のパラメータ生成システムは、1つ以上の境界条件を受け取ることができ、その例は、患者が被る最大流量を示す流量限界である。これらの境界条件は、パラメータ生成システムによって記憶されてよく、計算値および/または入力値が特定の患者および/または手順について推奨される限界を超えないように保証するチェックとして役立つことができる。いくつかの実施形態においては、公開された以前の研究の結果を使用して、本開示の投与スケールの境界条件をもたらすことができる。
【0057】
さらに、パラメータ生成システムは、1つ以上の造影剤注入の所望の持続時間(例えば、各々の注入の長さ(単位は、秒))を受け取ることができる。各々の造影剤注入の所望の持続時間を、患者の体重および上述の重み係数とともに使用して、単位時間あたりの造影剤の体積(例えば、mgI/秒)で表すことができる特定の造影剤注入の造影剤デリバリ速度を決定することができる。造影剤デリバリ速度(例えば、mgI/秒)および造影剤濃度(例えば、mgI/ml)についての情報から、パラメータ生成システムは、1つ以上の造影剤注入に使用する造影剤の流量(例えば、ml/秒)を決定することができる。例えば、患者の体重を使用して、パラメータ生成システムは、例えば各々の造影剤注入についての重み係数を体重の関数として含んでいる参照テーブルを参照することにより、各々のローディング注入および診断用注入について、適切な重み係数を決定することができる。その重み係数、造影剤濃度、および各々の注入の所望の持続時間から、パラメータ生成システムは、各々の造影剤注入において適切な体積の造影剤をもたらすために充分な流量(例えば、ml/秒)を(例えば、各々のローディング注入および診断用注入について)決定することができる。この計算された流量を境界条件と比較して、境界条件を超えないように保証することができる。あるいは、パラメータ生成システムは、所望の流量値を受け取り、この情報ならびに患者の体重および重み係数から、各々の造影剤注入の注入時間を決定することができる。さらなる例として、各々の造影剤注入において注入されるべき造影剤の体積を、式:V=体重*X*Yを使用して計算することができ、ここで、Yは造影剤の濃度の関数であり、Xはローディング注入と診断用注入とで違ってもよい重み係数であり、Vは造影剤の体積である。
【0058】
造影剤注入のいずれかが、造影剤段階に加えてフラッシュ段階を有する限りにおいて、パラメータ生成システムは、フラッシュ体積、フラッシュ時間、および/またはフラッシュ流量に関する情報も受け取ることができる。例えば、パラメータ生成システムは、各々の造影剤注入ごとに、フラッシュ流体の総量およびフラッシュ流体の流量を受け取ることができる。パラメータ生成システムは、この情報を使用して、分割ボーラス注入手順の1つ以上の造影剤注入の第2段階のためのプロトコルパラメータを作成することができる。一実施形態(ただし、これに限られるわけではない)において、フラッシュ流体、フラッシュ体積、およびフラッシュ流量は、各々の造影剤注入について同一であってよく、この実施形態において、パラメータ生成システムは、各々の造影剤注入に適用することができるただ1組のフラッシュパラメータを受け取ればよい。別の実施形態(ただし、これに限られるわけではない)においては、フラッシュ流量は同じままで、フラッシュ体積を造影剤注入ごとに変えることができる。例えば、ローディングボーラスにおいて、フラッシュ体積が診断用ボーラスよりも多くてよく、あるいは診断用ボーラスにおいて、フラッシュ体積がローディングボーラスよりも多くてよい。
【0059】
さらに、パラメータ生成システムは、連続する造影剤注入の間の休止または遅延の期間の値を受け取ることができる。例えば、パラメータ生成システムは、オペレータからの入力として、第1のローディング注入の終了と第2のローディング注入の開始との間ならびに/あるいは第1または第2のローディング注入の終了と診断用注入の開始との間の休止の長さについての値(単位は、秒)を受け取ることができる。そのような値がもたらされない場合、パラメータ生成システムは、90秒などのデフォルト値を適用することができる。さらに、いくつかの実施形態(ただし、これらに限られるわけではない)においては、パラメータ生成システムを、造影剤注入の間の休止の最大値であってよい開始時間しきい値を含むように構成することができる。この開始時間しきい値は、例えば90秒であってよく、オペレータが休止の値を指定せず、あるいは誤って不当に長い値を指定する状況に対し、保護を提供することができる。例えば、入力された休止値が開始時間しきい値を超える場合、注入システム100は、入力された休止値を無効にし、開始時間しきい値の終わりにおいて次の注入を自動的に開始することができる。
【0060】
いくつかの実施形態(ただし、これらに限られるわけではない)においては、造影剤注入のうちの1つ以上を、注入システム100のオペレータが手動で開始させることができる。そのような場合に、造影剤注入の開始時間が近づいていることを1つ以上のリマインダでオペレータに知らせることができる。例えば、ローディングまたは診断用造影剤注入を例えば10秒で、5秒で、1秒で、または即時に開始すべきであることを示す視覚および/または聴覚によるメッセージを発することができる。オペレータに対し、各々のリマインダに関して表示されるテキストおよびリマインダの名称を指定するように促すことができ、あるいはシステムが、デフォルトのテキストおよび/または名称を選択することができる。促しを、入力装置302に組み合わせられたディスプレイなどのディスプレイに表示することができる。
【0061】
ひとたび分割ボーラスプロトコルが決定されると、パラメータ生成システムは、その特定のパラメータを、入力装置302に組み合わせられたグラフィカルユーザインターフェース上に表示することができる。図3が、分割ボーラスプロトコルの詳細が表示された典型的なグラフィカルユーザインターフェース400を示している。このグラフィカルユーザインターフェース400を、情報を入力装置302に入力するためにも使用することができる。
【0062】
図3に示されるように、患者の体重、年齢、身長、および性別が既知であり、グラフィカルユーザインターフェース400の適切な領域に表示されている。この情報は、上述のように、手動で入力されていてもよく、あるいは1つ以上のデータソースを使用して入力されていてもよい。あるいは、グラフィカルユーザインターフェース400は、オペレータが例えば名前または患者IDによって患者を選択することができるドロップダウンメニューを含むことができ、そのような選択が行われると、体重、年齢、身長、および性別が、データベースに記憶された選択された患者についての情報から入力されてよい。図3は、mgI/mlで表された造影剤の濃度に関する情報も表示している。この実施形態において、濃度は、ドロップダウンメニューを使用してオペレータによってグラフィカルユーザインターフェース400に直接入力される。さらに、図3は、流量(単位は、ml/秒)および体積(単位は、ml)に関する分割ボーラスプロトコルの造影剤注入パラメータを表示している。この典型的な分割ボーラスプロトコルは、100mlの造影剤が4ml/秒の速度で25秒間の総持続時間にわたって注入される第1の段階と、40mlの生理食塩水が4ml/秒の速度で10秒間の総持続時間にわたって注入されるその後の第2の段階とを有する第1の造影剤注入を含む。この手順は、第2の造影剤注入を開始する前に35秒の休止をさらに含む。第2の造影剤注入は、40mlの造影剤が4ml/秒の速度で10秒間の総持続時間にわたって注入される第1の段階と、40mlの生理食塩水が4ml/秒の速度で10秒間の総持続時間にわたって注入されるその後の第2の段階とを有する。図3に示されるように、この実施形態において、スキャナの管電圧は120kVpに設定されるが、管電圧について他の選択肢も利用可能である。
【0063】
さらに、図3に示される実施形態において、スキャンのタイミングは100秒の遅延に設定され、スキャンの時間は10秒間に設定されている。この実施形態におけるスキャンの遅延は、造影剤注入手順の開始(すなわち、第1の造影剤注入の第1の段階が始まる前)からスキャン手順の開始までの時間である。当業者であれば本開示を検討することで理解できるとおり、スキャンの遅延の長さは、典型的には、造影剤が身体を通って伝播して対象の領域によって吸収される充分な時間を可能にするように選択される。
【0064】
図4が、図3に示した分割ボーラス注入プロトコルによって生じる一組のシミュレーションによる強調曲線を示している。図4の曲線は、さまざまな対象領域(例えば、胃/脾臓/膵臓、下行大動脈、肝臓、および門脈)の強調を、造影剤注入のタイミングに対する時間の関数として示している。図4には、造影剤注入およびスキャンウィンドウの時間も示されている。図4に見られるように、図3の分割ボーラスプロトコルを適用すると、対象の領域のそれぞれに複数の強調ピークがもたらされる。最初の造影剤注入(例えば、4ml/秒の流量で100ml)は、造影剤を患者へとロードするためのローディングボーラスとして機能する。第2の造影剤注入(例えば、4ml/秒の流量で40ml)は、診断用ボーラスとして機能し、強調をローディングレベルから動脈相の強調に有効なレベルまでさらに強める。スキャンウィンドウは、この場合には150HUであるしきい値レベルを複数の対象領域の強調値が同時に上回る時点に一致するように選択される。分割ボーラス技術を使用することにより、同時の強調期間(例えば、100~110秒)に一致するようにタイミングを合わせた単一のスキャンによって、オペレータは単一のスキャンで複数の対象領域の診断画像を同時に取得することができる。
【0065】
図5を参照すると、図5は、分割ボーラス注入技術を使用した患者の撮像のための方法500の実施形態(ただし、これに限られるわけではない)のフローチャートである。この方法は、ローディング注入および診断用注入のパラメータを決定するステップ501を含むことができる。このステップ501を、上述のように、パラメータ生成システムによって実行することができる。さらに、この方法は、ステップ501で決定されたパラメータに従って、ローディング注入に関連する造影剤および/またはフラッシュ流体を患者へともたらすためにローディング注入を実行するステップ503を含むことができる。ステップ503を、注入システム100によって実行することができる。上述のように、休止期間が、ステップ503の後かつステップ505の前に存在でき、ステップ505は、ステップ501で決定されたパラメータに従って、診断用注入に関連する造影剤および/またはフラッシュ流体を患者へともたらすことを含む。ステップ505も、注入システム100によって実行することができる。ステップ505の完了後に、注入システム100は、診断用注入が完了したことを知らせるタイミング信号を撮像システム300へと送信することを含むステップ507を実行することができる。ステップ509において、撮像システム300は、タイミング信号の受信に応答して、患者の撮像手順を実行することができる。
【0066】
本発明を以上の実施形態および/または例に関連して詳細に説明したが、そのような詳細が例示であって限定ではなく、当業者であれば本発明から逸脱することなく変更を加えることができることを、理解すべきである。本発明の技術的範囲は、以上の説明よりもむしろ、以下の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲と同等の意味および範囲に含まれるすべての変更形態および変形形態は、特許請求の範囲の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
100 注入システム
110A 駆動部材
110B 駆動部材
200 コントローラ
210 ディスプレイ
220 プロセッサ
230 メモリ
300 撮像システム
301 イメージャ
302 入力装置
304 患者ベッド
400 グラフィカルユーザインターフェース
図1
図2
図3
図4
図5