(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】均一度測定装置、均一度測定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/02 20060101AFI20230905BHJP
【FI】
G01N27/02 Z
(21)【出願番号】P 2020009423
(22)【出願日】2020-01-23
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩入 章弘
(72)【発明者】
【氏名】中山 直人
(72)【発明者】
【氏名】河室 佑貴
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-222651(JP,A)
【文献】特開2018-004535(JP,A)
【文献】特開2013-167485(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0261847(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/92
G01N 15/00 - G01N 15/14
G01B 7/00 - G01B 7/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に不溶性の固体物質が混合された混合液の均一度を測定する均一度測定装置であって、
前記混合液に交流信号を印加する一対の電極と、
前記交流信号が印加された際に前記混合液に流れる応答信号に基づいて前記混合液のインピーダンスを測定する測定手段と、
前記測定手段において測定されたインピーダンスから、抵抗器とコンスタント・フェーズ・エレメントとの並列回路を要素とする等価回路を設定し、設定した前記等価回路を用いて等価回路解析を実行して複素平面インピーダンスを示すデータを生成し、前記並列回路に関するパラメータに基づいて前記均一度を算出する処理手段と、
を備え
、
前記処理手段は、前記コンスタント・フェーズ・エレメントの次数が1に近いほど前記混合液の均一度のうち前記固体物質の大きさの均一性が高いと判断する、
均一度測定装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の均一度測定装置であって、
前記処理手段は、前記等価回路解析によって得られた前記並列回路の数に応じて前記固体物質の種類の数を判別する、
均一度測定装置。
【請求項3】
液体に不溶性の固体物質が混合された混合液の均一度を測定する均一度測定方法であって、
前記混合液に交流信号の周波数を変化させながら前記交流信号を印加し、
前記混合液に前記交流信号が印加された際に前記混合液に流れる応答信号から前記混合液のインピーダンスを測定し、
前記測定されたインピーダンスから、抵抗器とコンスタント・フェーズ・エレメントとの並列回路を要素とする等価回路を求め、
前記等価回路における前記コンスタント・フェーズ・エレメントの次数が1に近いほど前記混合液の均一度のうち前記固体物質の大きさの均一性が高いと判断する、
均一度測定方法。
【請求項4】
液体に不溶性の固体物質が混合された混合液の均一度の測定をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記混合液に交流信号の周波数を変化させながら前記交流信号を印加し、
前記混合液に前記交流信号が印加された際に前記混合液に流れる応答信号から前記混合液のインピーダンスを測定し、
前記測定されたインピーダンスから、抵抗器とコンスタント・フェーズ・エレメントとの並列回路を要素とする等価回路を求め、
前記等価回路における前記コンスタント・フェーズ・エレメントの次数が1に近いほど前記混合液の均一度のうち前記固体物質の大きさの均一性が高いと判断する、
均一度測定方法を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体に不溶性の固体物質の粒子が混合された混合液の均一度を測定する均一度測定装置、均一度測定方法、及びコンピュータに均一度の測定を実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体に不溶性の固体物質の粒子が混合された混合液の一つであるスラリーの評価指標として、粒子径分布等が用いられている。
【0003】
スラリーに含まれる粒子の粒子径分布を測定する方法の一つとして、沈降法がある。沈降法には、さらに、自然重力を利用する液相重力沈降法(日本工業規格「JIS Z8820-1:2002」)と、遠心力を利用する液相遠心沈降法(日本工業規格「JIS Z8823-1:2001」)とがある。
【0004】
上述の沈降法に準拠した沈降試験では、スラリーを沈降管に投入し、時間経過にとともに沈降した粒子層と上澄み液との界面高さの変化や上澄み液が透明か濁っているかの状態等を測定者が観察することによって、スラリーに含まれる粒子の粒子径分布を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本工業規格 JIS Z8820-1:2002
【文献】日本工業規格 JIS Z8823-1:2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、電子部品等に対して高機能化・高性能化の要求が高まっている。このため、電子部品の出発原料であるスラリーの品質を厳密に管理することが要求されている。また、そのために、スラリーに含まれる粒子の種類や粒子径分布等によって表される均一度等のような評価指標を用いて、スラリーの状態を明確に把握する必要がある。
【0007】
しかしながら、上述した沈降試験では、スラリーにおける粒子の沈降が安定するまでに時間を要する。液相遠心沈降法は、液相重力沈降法に比べて、試験時間を短縮できるものの、製造過程の中で行うには実用的でなく、時間短縮が要求されている。また、上述した沈降試験では、測定工程に測定者の主観が含まれるため、厳密性を欠く。
【0008】
このように、上述の試験方法においては、測定時間及び客観性の観点から改善の余地が含まれていた。
【0009】
本発明は、上記問題点に着目してなされたものであり、混合液の均一度を短時間で測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様としての均一度測定装置は、液体に不溶性の固体物質が混合された混合液の均一度を測定する均一度測定装置であって、前記混合液に交流信号を印加する一対の電極と、前記交流信号が印加された際に前記混合液に流れる応答信号に基づいて前記混合液のインピーダンスを測定する測定手段と、前記測定手段において測定されたインピーダンスから、抵抗器とコンスタント・フェーズ・エレメントとの並列回路を要素とする等価回路を設定し、設定した前記等価回路を用いて等価回路解析を実行して複素平面インピーダンスを示すデータを生成し、前記並列回路に関するパラメータに基づいて前記均一度を算出する処理手段と、を備え、前記処理手段は、前記コンスタント・フェーズ・エレメントの次数が1に近いほど前記混合液の均一度のうち前記固体物質の大きさの均一性が高いと判断する。
【発明の効果】
【0011】
この態様によれば、混合液のインピーダンスから、抵抗器とコンスタント・フェーズ・エレメントとの並列回路を要素とする等価回路を用いて均一度が算出されるので、沈降法に比べて待機時間が短く、測定者の主観を含まない測定が可能である。したがって、混合液の均一度を短時間で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る均一度測定装置を示す概略図である。
【
図2】
図2は、測定装置本体の処理部の機能構成を示すブロック図である。
【
図3A】
図3Aは、複素平面インピーダンスデータ生成モジュール及び等価回路解析モジュールにおいて作成される複素平面インピーダンス図を説明する図である。
【
図3B】
図3Bは、等価回路解析に用いられた等価回路を説明する図である。
【
図4】
図4は、均一度測定装置により実行される均一度測定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[均一度測定装置の説明]
本発明の実施形態に係る均一度測定装置1について、
図1及び
図2を用いて詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る均一度測定装置1を示す概略図である。
【0015】
均一度測定装置1は、液槽Xに貯蔵され、液体Xaに不溶性の個体物質(以下、分散質という)Xbが混合された混合液の一つであるスラリーXcを評価する装置である。本実施形態の均一度測定装置1は、スラリーXcの評価指標として均一度を測定する。
【0016】
本実施形態において、均一度には、液体Xaの種類、分散質Xbの種類、分散質Xbの粒子径、分散質Xbの粒子径分布等を含むものとする。
【0017】
本実施形態において、スラリーXcの一例としては、導電率が高い分散質Xbとしてのカーボンブラック等の導電性粒子を、導電率が低い液体Xaとしての溶媒(バインダ樹脂及び活物質を含む有機溶媒)に分散させた混合液が挙げられる。
【0018】
均一度測定装置1は、一対の電極2と、測定装置本体3とを備える。
【0019】
一対の電極2は、液槽Xに貯蔵されたスラリーXcに交流信号としての交流電圧を印加するためのものである。一対の電極2は、互いに対向するように液槽Xの周壁に設けられる。電極2は、例えば、白金又は銅などの不活性金属により形成される。一対の電極2の間には、スラリーXcに印加された交流電圧に応じた応答信号としての応答電流が流れる。なお、スラリーXcに印加される交流信号は、交流電圧に限らず、交流電流であってもよい。
【0020】
測定装置本体3は、
図1に示すように、測定手段としての測定部31、記憶手段としての記憶部32、操作部33、表示部34、及び処理手段としての処理部35を含む。
【0021】
測定部31は、一対の電極2の間に位置するスラリーXcに交流電圧が印加された際に流れる応答電流からインピーダンスを測定する。測定部31は、一対の電極2に、周波数が段階的に変化する交流電圧を印加する。なお、一対の電極2に印加される交流電圧は、測定部31に内蔵される定電圧電源(CV)又は定電流電源(CC)から供給される。そして、測定部31は、交流電圧の周波数が段階的に変化されるたびに、一対の電極2の間の応答電流からインピーダンスを測定して測定信号として処理部35に出力する。
【0022】
記憶部32は、RAM及びROMによって構成される。記憶部32には、スラリーXcの均一度を測定する均一度測定処理を実行するプログラムが記憶されている。記憶部32は、処理部35の動作プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。記憶部32は、測定装置本体3に対して、着脱可能に構成されていてもよい。
【0023】
また、記憶部32には、上述した均一度が既知であるスラリーXcに対して印加した交流電圧に対応するインピーダンスの実測値が、その交流電圧の周波数と紐付けられて、周波数特性テーブルとして記憶されている。この周波数特性テーブルには、各種のスラリーXcごとに、インピーダンスの実部及び虚部の周波数特性が対応付けられている。
【0024】
また、記憶部32には、上述した均一度が既知であるスラリーXcのインピーダンスから生成された複素平面インピーダンス図を近似した等価回路の各種パラメータが、上述の均一度と紐付けられ、均一度テーブルとして記憶されている。この均一度テーブルには、各種のスラリーXcについての等価回路のパラメータごとに、液体Xaの種類、分散質Xbの種類、分散質Xbの粒子径、分散質Xbの粒子径分布等を含む均一度が紐付けられている。
【0025】
操作部33は、測定条件の設定操作及び均一度測定処理の開始等を指示する各種の操作スイッチを備える。操作部33は、これらの操作に応じた操作信号を処理部35に出力する。操作部33は、機械的に構成される操作スイッチの代わりに、表示部34に形成されるタッチパネルであってもよい。
【0026】
表示部34は、処理部35の指示に従って、均一度測定に係る各種設定画面や測定結果等を表示する。本実施形態においては、表示部34は、液晶パネル等によって構成される。
【0027】
処理部35は、操作部33からの操作信号に従って均一度測定装置1を構成する各部を制御する。また、処理部35は、一対の電極2に印加する交流電圧の周波数を制御するとともに、印加した交流電圧に対応するインピーダンスを取得し、取得したインピーダンスに基づいて、スラリーXcの均一度を算出する処理を実行する。
【0028】
本実施形態において、処理部35は、コンピュータとしてのCPUによって構成される。処理部35は、複数のマイクロコンピュータによって構成することも可能である。
【0029】
続いて、測定装置本体3の処理部35の機能構成及び動作について説明する。
図2は、測定装置本体3の処理部35の機能構成を示すブロック図である。
【0030】
処理部35は、解析設定モジュール111と、インピーダンス取得モジュール112と、複素平面インピーダンスデータ生成モジュール115と、等価回路解析モジュール116と、均一度算出モジュール117とを備える。以下では、複素平面インピーダンスデータ生成モジュール115のことを、単に生成モジュール115と称する。
【0031】
解析設定モジュール111は、測定部31に、電極2への交流電圧の印加とインピーダンスの測定とを実行させるための制御信号を生成する。
【0032】
インピーダンス取得モジュール112は、測定部31から測定されたインピーダンスを取得する。また、インピーダンス取得モジュール112は、測定部31から送られた応答電流に基づくインピーダンスからインピーダンスの虚数成分を生成する虚数成分生成部113と、インピーダンスの実数成分を生成する実数成分生成部114とを有する。
【0033】
虚数成分生成部113は、取得されたインピーダンスの虚数成分を生成し、後述する生成モジュール115に出力する。実数成分生成部114は、取得されたインピーダンスの実数成分を生成し、生成モジュール115に出力する。
【0034】
生成モジュール115は、インピーダンス取得モジュール112から取得したインピーダンスの虚数部分と実数部分とから、複素平面インピーダンスを示すデータを作成する。
【0035】
本実施形態においては、生成モジュール115は、複素平面インピーダンスを示すデータとして、測定されたインピーダンスの虚数部分を縦軸とし、実数部分を横軸とする複素平面インピーダンス図を作成する。なお、複素平面インピーダンス図は、ナイキスト線図と記される場合もある。
【0036】
生成モジュール115は、作成した複素平面インピーダンス図を等価回路解析モジュール116に出力する。
【0037】
等価回路解析モジュール116は、抵抗器及びコンデンサ等の要素を組み合わせてなる等価回路を用いた等価回路解析を実行する。
【0038】
本実施形態においては、等価回路の要素として、コンスタント・フェーズ・エレメント(以下、CPEと記す)を適用する。すなわち、等価回路解析モジュール116は、抵抗器RとCPEとの並列回路(R-CPE)を一要素として、この要素を組み合わせて得られる等価回路を設定する。
【0039】
例えば、等価回路解析モジュール116は、CPEを適用した初期の等価回路のパラメータに基づいて、初期の等価回路のインピーダンスの実部及び虚部の周波数特性を示すインピーダンス特性データを生成する。等価回路解析モジュール116は、生成した初期のインピーダンス特性データがXcの測定データに近づくよう、等価回路のパラメータを順次変更する。等価回路解析モジュール116は、実測データと一致するインピーダンス特性データが得られる等価回路のパラメータを解析結果として出力する。このように、等価回路解析モジュール116は、CPEを適用した等価回路を用いて等価回路解析を実行する。
【0040】
本実施形態においては、等価回路解析モジュール116は、インピーダンス特性データとして、設定された等価回路の複素平面インピーダンス図を作成する。
【0041】
コンスタント・フェーズ・エレメント(CPE)とは、通常のコンデンサCに対して、種々の外乱を考慮することのできる因子を含む要素である。CPEのインピーダンスZCPEは、以下の式(1)により表される。
【0042】
【0043】
ただし、上式(1)において、
jは、虚数単位であり、
ωは、角周波数であり、
Tは、CPE定数であり、
pは、CPE指数(ZCPEの次数)である。
【0044】
上式(1)に示したように、CPEのインピーダンスZCPEは、CPE定数TとCPE指数pとで構成される。例えば、インピーダンスZCPEが単純な容量性挙動を示す場合においては、CPE指数Pは、0から1までの範囲内の値をとる。
【0045】
また、上式(1)において、p=1のとき、CPE定数Tは通常のコンデンサCと等価となり、スラリーXcの等価回路は、通常のコンデンサCから構成されることになるので、インピーダンスZCPEは、通常のコンデンサCの値を示す。
【0046】
図3Aは、生成モジュール115及び等価回路解析モジュール116において作成される複素平面インピーダンス図を説明する図である。また、
図3Bは、等価回路解析に用いられた等価回路C
CPEを示す図である。
【0047】
図3Aに示す実線は、インピーダンスの測定データに基づいて、生成モジュール115によって作成された複素平面インピーダンス
図Aである。また、破線は、等価回路解析モジュール116によって作成された複素平面インピーダンス
図Bである。
【0048】
図3Bに示す等価回路C
CPEは、抵抗器R1とCPE1とからなる並列回路R-CPE1と、抵抗器R2とCPE2とからなる並列回路R-CPE2と、抵抗器R3とCPE3とからなる並列回路R-CPE3とを直列接続して得られる等価回路である。
【0049】
図3Aにおける複素平面インピーダンス
図Bは、等価回路C
CPEを用いて等価回路解析を実行して得られる複素インピーダンス図である。
【0050】
等価回路解析モジュール116は、複素平面インピーダンス
図Bが生成モジュール115から取得した複素平面インピーダンス
図Aと重なるように、等価回路C
CPEの各並列回路における抵抗器R及びCPEに関連するパラメータの変更を繰り返す。
【0051】
均一度算出モジュール117は、等価回路解析モジュール116によって生成された複素インピーダンス図を取得し、これを解析する。
【0052】
本実施形態においては、均一度算出モジュール117は、CPEの次数、すなわちCPE指数pが1に近いほど、スラリーXcに含まれる分散質Xbの粒子の大きさのばらつきが低い(すなわち、粒子の大きさの均一性が高い)と判断する。また、均一度算出モジュール117は、等価回路解析によって得られた並列回路(R-CPE)の数に応じて、分散質Xbの粒子の種類の数を判別する。
【0053】
また、均一度算出モジュール117は、等価回路解析によって算出された抵抗器Rのレジスタンスに基づいて、分散質Xbの粒子の抵抗値を算出する。
【0054】
また、均一度算出モジュール117は、記憶部32に記憶された均一度テーブルに基づいて、等価回路解析モジュール116によって設定されたパラメータを選択し、このパラメータに紐付けられた均一度を、測定されたスラリーXcの均一度として決定する。
【0055】
以上の機能構成を備える処理部35は、測定部31によって測定されたインピーダンスから複素平面インピーダンス
図Aを作成するとともに、等価回路解析モジュール116によって、抵抗器RとCPEとからなる並列回路を一要素とする等価回路を用いて複素平面インピーダンス
図Bを作成する。
【0056】
また、処理部35は、複素平面インピーダンス
図Bが複素平面インピーダンス
図Aに重なるように、等価回路の回路素子のパラメータを設定する。そして、処理部35は、設定されたパラメータに紐付けられた均一度を、測定されたスラリーXcの均一度として決定する。これにより、均一度測定装置1は、スラリーXcの均一度を算出することができる。
【0057】
[均一度測定処理]
次に、
図4を参照しながらスラリーXcの評価指標としての均一度を測定する均一度測定処理について説明する。
【0058】
図4は、均一度測定装置1により実行される均一度測定処理を示すフローチャートである。
【0059】
まず、測定者による操作部33への操作によって、均一度測定処理が開始されると、ステップS1に進む。
【0060】
ステップS1において、処理部35の解析設定モジュール111は、測定部31に対して、スラリーXcへの電圧印加処理の実行を指示する。具体的には、解析設定モジュール111は、測定部31に対して、周波数を変化させながらスラリーXcへ交流電圧を印加する処理の実行を指示する。
【0061】
これにより、測定部31は、解析設定モジュール111からの指示に従って、一対の電極2を介してスラリーXcに交流電圧を印加し、印加する交流電圧の周波数を変化させる制御を実行する。
【0062】
また、測定部31は、交流電圧の周波数が変化させられるたびに一対の電極2によってスラリーXcに流れる応答電流からスラリーXcのインピーダンスを測定する。そして、測定部31は、測定されたインピーダンスを測定データとして、測定装置本体3のインピーダンス取得モジュール112に出力する。
【0063】
続いて、ステップS2において、インピーダンス取得モジュール112は、インピーダンスの測定データを測定部31から取得する。
【0064】
ステップS3において、インピーダンス取得モジュール112は、虚数成分生成部113によってインピーダンスの虚数成分を生成するとともに、実数成分生成部114によってインピーダンスの実数成分を生成する。インピーダンス取得モジュール112は、生成した虚数成分及び実数成分を生成モジュール115に出力する。
【0065】
続いて、ステップS4において、生成モジュール115は、インピーダンスの測定データに基づいて、
図3Aに示したように、複素平面インピーダンス
図Aを作成し、作成した複素平面インピーダンス
図Aを等価回路解析モジュール116に出力する。
【0066】
ステップS5において、等価回路解析モジュール116は、測定データに基づいて、抵抗器RとCPEとの並列回路(R-CPE)を一要素とする等価回路解析を実行し、この要素を組み合わせて得られる等価回路のパラメータを設定する。そして、等価回路解析モジュール116は、設定した等価回路の複素平面インピーダンス
図Bを作成する。
【0067】
例えば、等価回路解析モジュール116は、スラリーXcの測定データに基づいて複素平面に描かれる半円の直径をRとし、その半円の頂点の周波数をf
topとし、初期のCPE定数Tを次式(2)のように設定し、初期のCPE指数pを1に設定する。そして等価回路解析モジュール116は、CPE定数T及びCPE指数Pの設定値に基づいて、初期の等価回路の複素平面インピーダンス
図Bを生成する。
【0068】
【0069】
ステップS6において、等価回路解析モジュール116は、複素平面インピーダンス
図Aと複素平面インピーダンス
図Bとを比較し、両者が重なるか否か判別する。
【0070】
複素平面インピーダンス
図Aと複素平面インピーダンス
図Bとが重ならない場合(ステップS6:No)、ステップS5に戻って、等価回路解析モジュール116は、等価回路C
CPEの回路素子のパラメータ(変数)を設定し直し、新たな複素平面インピーダンス
図Bを作成する。
【0071】
等価回路解析モジュール116は、複素平面インピーダンス
図Bが、生成モジュール115から取得した複素平面インピーダンス
図Aに重なるように、等価回路C
CPEの各並列回路における抵抗器R及びCPEに関連するパラメータの設定を繰り返す。
【0072】
等価回路解析モジュール116は、複素平面インピーダンス
図Aと複素平面インピーダンス
図Bとが重なった際(ステップS6:Yes)、等価回路解析モジュール116は、最終的に得られた複素平面インピーダンス
図Bを均一度算出モジュール117に出力する。
【0073】
ステップS7において、均一度算出モジュール117は、等価回路解析モジュール116から複素平面インピーダンス
図Bを取得する。均一度算出モジュール117は、記憶部32に記憶された均一度テーブルに基づいて、複素平面インピーダンス
図Bを作成した等価回路C
CPEのパラメータに紐付けられた均一度を選択し、選択された均一度を測定対象であるスラリーXcの均一度として決定する。
【0074】
次に、ステップS8において、表示部34は、処理部35の指示に従って、スラリーXcの均一度等を表示する。そして、処理部35は、均一度測定処理を終了する。
【0075】
<作用効果>
次に、本実施形態による作用効果について説明する。
【0076】
上述のように、本実施形態に係る均一度測定装置1は、スラリーXcに交流電圧を印加する一対の電極2と、スラリーXcに周波数が段階的に変化する交流電圧が印加された際にスラリーXcに流れる応答電流からスラリーXcのインピーダンスを測定する測定部31と、測定部31において測定されたインピーダンスから、抵抗器Rとコンスタント・フェーズ・エレメント(CPE)との並列回路を要素とする等価回路CCPEを設定し、設定した等価回路CCPEを用いて等価回路解析を実行して複素平面インピーダンスを示すデータを生成し、並列回路に関するパラメータに基づいて均一度を算出する処理部35とを備える。
【0077】
上述の構成を備える均一度測定装置1は、スラリーXcに流れる応答電流から測定されたスラリーXcのインピーダンスから複素平面インピーダンス
図Aを作成するとともに、抵抗器RとCPEとからなる並列回路を要素とする等価回路を設定して、この等価回路の複素平面インピーダンス
図Bを作成する。
【0078】
そして、均一度測定装置1は、複素平面インピーダンス
図Bを複素平面インピーダンス
図Aに近づけるように、等価回路に関するパラメータを設定する。
【0079】
均一度測定装置1は、記憶部32に記憶された均一度テーブルに基づいて、既知のスラリーから得られたパラメータを選択し、選択されたパラメータに紐付けられた均一度を、測定されたスラリーXcの均一度として決定する。
【0080】
したがって、従来の沈降試験等に比べて、測定結果が得られるまでの待機時間を短くすることができる。また、測定者の主観を含まない評価指標の測定が可能となる。
【0081】
また、均一度測定装置1は、記憶部32に記憶された均一度テーブルを用いて、スラリーXcに含まれる分散質Xbの粒子の大きさの均一性、分散質Xbの粒子の種類の数、分散質Xbの粒子の抵抗値、及び分散質Xbの粒子の大きさを算出することができる。
【0082】
[均一度測定プログラム]
上述した均一度測定方法は、均一度の測定をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供することもできる。
【0083】
すなわち、本実施形態に係るプログラムは、液体Xaに不溶性の固体物質(分散質Xb)が混合された混合液としてのスラリーXcにおける分散質Xbの均一度の測定をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、スラリーXcに交流電圧を印加し、交流電圧の周波数を変化させながらスラリーXcに交流電圧を印加した際に流れる応答電流からインピーダンスを測定し、交流電圧の周波数に応じて測定されたインピーダンスから、抵抗器とCPE回路との並列回路を要素とする等価回路を求め、等価回路を用いて均一度を算出する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0084】
本実施形態においては、上述のプログラムは、記憶部32に記憶されていてもよく、均一度測定装置1に対して着脱可能な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0085】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0086】
均一度測定装置1において、記憶部32、操作部33及び表示部34は、測定装置本体3とは別に構成されていてもよい。また、測定部31は、均一度測定装置1から切り離されて、例えば、解析装置のように別の装置として提供されてもよい。
【0087】
均一度測定装置1は、種々の形態を取り得る。例えば、均一度測定装置1は、据え置き型に構成されていてもよい。また、均一度測定装置1は、携帯型の装置として構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 均一度測定装置
2 電極
3 測定装置本体
31 測定部
32 記憶部
33 操作部
34 表示部
35 処理部
111 解析設定モジュール
112 インピーダンス取得モジュール
113 虚数成分生成部
114 実数成分生成部
115 複素平面インピーダンスデータ生成モジュール、生成モジュール
116 等価回路解析モジュール
117 均一度算出モジュール