(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】無線通信システム、端末装置、基地局装置、ビーム選択方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 16/28 20090101AFI20230905BHJP
H04W 16/14 20090101ALI20230905BHJP
【FI】
H04W16/28
H04W16/14
(21)【出願番号】P 2020061128
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-01-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、総務省「異システム間の周波数共用技術の高度化に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】菅野 一生
(72)【発明者】
【氏名】堅岡 良知
(72)【発明者】
【氏名】石川 博康
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利則
【審査官】倉本 敦史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0068549(US,A1)
【文献】Apple,Considerations on separate DL and UL beam reporting,3GPP TSG RAN WG1 Ad-Hoc Meeting 1901 R1-1900751,2019年01月12日,pp.1-4
【文献】AT&T,Physical Layer Enhancements for NR Unlicensed,3GPP TSG RAN WG1 Meeting 92bis R1-1804666,2018年04月07日,pp.1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末と基地局の少なくともいずれか一方がビームフォーミング機能を有する無線通信システムにおいて、
前記無線通信システムは、他無線通信システムと共用する共用周波数帯を利用し、
前記基地局は、自無線通信システムの受信電力を含む第1受信電力と、自無線通信システムの受信電力を含まない第2受信電力とを区別して測定するための受信選別情報を前記端末へ通知する制御部を備え、
前記端末は、
前記基地局から通知される前記受信選別情報に基づいて、前記第1受信電力と前記第2受信電力とを前記ビームフォーミング機能の複数のビーム毎に前記共用周波数帯で測定する測定部と、
前記第1受信電力の測定結果と前記第2受信電力の測定結果とに基づいて、前記ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、下りリンクで使用するビームを選択する制御部と、を備え
、
前記受信選別情報は、前記基地局が前記共用周波数帯の無線信号を送信しないミュート期間を示すミュート期間インデックスであり、
前記ミュート期間は、前記端末の複数の受信ビームの各測定時間分の長さを有し、
前記測定部は、前記ミュート期間において、自己の受信ビームを前記複数の受信ビームの順に切り替えながら、各受信ビームでの前記第2受信電力を前記共用周波数帯で測定し、
前記測定部は、前記ミュート期間以外の期間であって前記基地局が前記共用周波数帯の無線信号を送信する所定期間に前記第1受信電力を測定する、
無線通信システム。
【請求項2】
端末と基地局の少なくともいずれか一方がビームフォーミング機能を有する無線通信システムに対応する端末装置であって、
前記無線通信システムは、他無線通信システムと共用する共用周波数帯を利用し、
前記端末装置は、
前記基地局から通知される受信選別情報に基づいて、自無線通信システムの受信電力を含む第1受信電力と、自無線通信システムの受信電力を含まない第2受信電力とを、前記ビームフォーミング機能の複数のビーム毎に前記共用周波数帯で測定する測定部と、
前記第1受信電力の測定結果と前記第2受信電力の測定結果とに基づいて、前記ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、下りリンクで使用するビームを選択する制御部と、を備え
、
前記受信選別情報は、前記基地局が前記共用周波数帯の無線信号を送信しないミュート期間を示すミュート期間インデックスであり、
前記測定部は、前記基地局から通知される前記ミュート期間インデックスで示されるミュート期間に前記第2受信電力を測定し、前記基地局から通知される前記ミュート期間インデックスで示されるミュート期間以外の期間であって前記基地局が前記共用周波数帯の無線信号を送信する所定期間に前記第1受信電力を測定する、端末装置であり、
前記ミュート期間は、前記端末装置の複数の受信ビームの各測定時間分の長さを有し、
前記測定部は、前記ミュート期間において、自己の受信ビームを前記複数の受信ビームの順に切り替えながら、各受信ビームでの前記第2受信電力を前記共用周波数帯で測定する、
端末装置。
【請求項3】
端末と基地局の少なくともいずれか一方がビームフォーミング機能を有する無線通信システムに対応する基地局装置であって、
前記無線通信システムは、他無線通信システムと共用する共用周波数帯を利用し、
前記基地局装置は、
自無線通信システムの受信電力を含む第1受信電力と、自無線通信システムの受信電力を含まない第2受信電力とを区別して測定するための受信選別情報を前記端末へ通知する制御部を備え、
前記受信選別情報は、前記基地局装置が前記共用周波数帯の無線信号を送信しないミュート期間を示すミュート期間インデックスであり、
前記ミュート期間は、前記端末の複数の受信ビームの各測定時間分の長さを有する、
基地局装置。
【請求項4】
端末と基地局の少なくともいずれか一方がビームフォーミング機能を有する無線通信システムのビーム選択方法であって、
前記無線通信システムは、他無線通信システムと共用する共用周波数帯を利用し、
前記基地局が、自無線通信システムの受信電力を含む第1受信電力と、自無線通信システムの受信電力を含まない第2受信電力とを区別して測定するための受信選別情報を前記端末へ通知する通知ステップと、
前記端末が、前記基地局から通知される前記受信選別情報に基づいて、前記第1受信電力と前記第2受信電力とを前記ビームフォーミング機能の複数のビーム毎に前記共用周波数帯で測定する測定ステップと、
前記端末が、前記第1受信電力の測定結果と前記第2受信電力の測定結果とに基づいて、前記ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、下りリンクで使用するビームを選択するビーム選択ステップと、
を含むビーム選択方法
であり、
前記受信選別情報は、前記基地局が前記共用周波数帯の無線信号を送信しないミュート期間を示すミュート期間インデックスであり、
前記ミュート期間は、前記端末の複数の受信ビームの各測定時間分の長さを有し、
前記測定ステップは、前記ミュート期間において、自己の受信ビームを前記複数の受信ビームの順に切り替えながら、各受信ビームでの前記第2受信電力を前記共用周波数帯で測定し、
前記測定ステップは、前記ミュート期間以外の期間であって前記基地局が前記共用周波数帯の無線信号を送信する所定期間に前記第1受信電力を測定する、
ビーム選択方法。
【請求項5】
端末と基地局の少なくともいずれか一方がビームフォーミング機能を有する無線通信システムであって、他無線通信システムと共用する共用周波数帯を利用する無線通信システムに対応する端末装置のコンピュータに、
前記基地局から通知される受信選別情報に基づいて、自無線通信システムの受信電力を含む第1受信電力と、自無線通信システムの受信電力を含まない第2受信電力とを、前記ビームフォーミング機能の複数のビーム毎に前記共用周波数帯で測定する測定ステップと、
前記第1受信電力の測定結果と前記第2受信電力の測定結果とに基づいて、前記ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、下りリンクで使用するビームを選択するビーム選択ステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラム
であって、
前記受信選別情報は、前記基地局が前記共用周波数帯の無線信号を送信しないミュート期間を示すミュート期間インデックスであり、
前記ミュート期間は、前記端末装置の複数の受信ビームの各測定時間分の長さを有し、
前記測定ステップは、前記ミュート期間において、自己の受信ビームを前記複数の受信ビームの順に切り替えながら、各受信ビームでの前記第2受信電力を前記共用周波数帯で測定し、
前記測定ステップは、前記ミュート期間以外の期間であって前記基地局が前記共用周波数帯の無線信号を送信する所定期間に前記第1受信電力を測定する、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、端末装置、基地局装置、ビーム選択方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端末と基地局の少なくともいずれか一方がビームフォーミング機能を有する無線通信システムにおいて、ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、端末と基地局との間の無線通信に使用するビームを選択するビーム選択技術が、例えば非特許文献1に記載されている。非特許文献1に記載のビーム選択技術では、基地局が、予め決められた時間にビームをスイープしながら品質測定用の参照信号を送信する。そして、端末が、基地局の各ビームに対応する参照信号を自己のビームを切り替えながら受信して参照信号の品質を測定し、参照信号の品質の測定結果に基づいてビームを選択し、選択結果のビームを基地局に報告する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】T. Obara et.al., “Experimental Trial of 5G Super Wideband Wireless Systems Using Massive MIMO Beamforming and Beam Tracking Control in 28GHz Band,” IEICE Transactions on Communications, vol.E100-B, No.8, Aug. 2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した非特許文献1に記載のビーム選択技術では、以下に示す課題があった。
【0005】
近年、複数の無線通信システムが同一の周波数帯を共用することが検討されている。例えば、既存の無線通信システム(既存システム)に割り当てられている周波数帯を他の無線通信システム(2次システム)が二次的に利用することが検討されている。既存システムと2次システムとが共用する周波数帯(共用周波数帯)において、上述した非特許文献1に記載のビーム選択技術を2次システムに適用する場合、2次システムにおいて、端末が参照信号を受信する時に既存システムからの信号が混入されるため、端末がその受信電力に基づいてビーム選択を適切に行うことができないという問題があった。特に、端末が既存システムからの信号を強い電力で受信するビームが選択される可能性が高く、そのようなビームが選択されると、DUR(所望波電力対干渉波電力比)が著しく低くなって端末の受信品質が著しく低下する。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、複数の無線通信システムが同一の周波数帯を共用する場合に、ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、端末と基地局との間の無線通信に使用するビームを適切に選択することを図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、端末と基地局の少なくともいずれか一方がビームフォーミング機能を有する無線通信システムにおいて、前記無線通信システムは、他無線通信システムと共用する共用周波数帯を利用し、前記基地局は、自無線通信システムの受信電力を含む第1受信電力と、自無線通信システムの受信電力を含まない第2受信電力とを区別して測定するための受信選別情報を前記端末へ通知する制御部を備え、前記端末は、前記基地局から通知される前記受信選別情報に基づいて、前記第1受信電力と前記第2受信電力とを前記ビームフォーミング機能の複数のビーム毎に前記共用周波数帯で測定する測定部と、前記第1受信電力の測定結果と前記第2受信電力の測定結果とに基づいて、前記ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、下りリンクで使用するビームを選択する制御部と、を備え、前記受信選別情報は、前記基地局が前記共用周波数帯の無線信号を送信しないミュート期間を示すミュート期間インデックスであり、前記ミュート期間は、前記端末の複数の受信ビームの各測定時間分の長さを有し、前記測定部は、前記ミュート期間において、自己の受信ビームを前記複数の受信ビームの順に切り替えながら、各受信ビームでの前記第2受信電力を前記共用周波数帯で測定し、前記測定部は、前記ミュート期間以外の期間であって前記基地局が前記共用周波数帯の無線信号を送信する所定期間に前記第1受信電力を測定する、無線通信システムである。
【0008】
本発明の一態様は、端末と基地局の少なくともいずれか一方がビームフォーミング機能を有する無線通信システムに対応する端末装置であって、前記無線通信システムは、他無線通信システムと共用する共用周波数帯を利用し、前記端末装置は、前記基地局から通知される受信選別情報に基づいて、自無線通信システムの受信電力を含む第1受信電力と、自無線通信システムの受信電力を含まない第2受信電力とを、前記ビームフォーミング機能の複数のビーム毎に前記共用周波数帯で測定する測定部と、前記第1受信電力の測定結果と前記第2受信電力の測定結果とに基づいて、前記ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、下りリンクで使用するビームを選択する制御部と、を備え、前記受信選別情報は、前記基地局が前記共用周波数帯の無線信号を送信しないミュート期間を示すミュート期間インデックスであり、前記測定部は、前記基地局から通知される前記ミュート期間インデックスで示されるミュート期間に前記第2受信電力を測定し、前記基地局から通知される前記ミュート期間インデックスで示されるミュート期間以外の期間であって前記基地局が前記共用周波数帯の無線信号を送信する所定期間に前記第1受信電力を測定する、端末装置であり、前記ミュート期間は、前記端末装置の複数の受信ビームの各測定時間分の長さを有し、前記測定部は、前記ミュート期間において、自己の受信ビームを前記複数の受信ビームの順に切り替えながら、各受信ビームでの前記第2受信電力を前記共用周波数帯で測定する、端末装置である。
【0009】
本発明の一態様は、端末と基地局の少なくともいずれか一方がビームフォーミング機能を有する無線通信システムにおいて、前記無線通信システムは、他無線通信システムと共用する共用周波数帯を利用し、前記端末は、下りリンクにおける前記ビームフォーミング機能の複数のビームの評価結果を前記基地局へ通知する通知部を備え、前記基地局は、自己の配下の全ての前記端末が前記共用周波数帯の無線信号を送信しないミュート期間を設定する制御部と、自無線通信システムの受信電力を含まない受信電力を、前記ミュート期間に、前記ビームフォーミング機能の複数のビーム毎に前記共用周波数帯で測定する測定部と、前記評価結果を前記端末から受信する受信部と、を備え、前記制御部は、前記受信電力の測定結果と前記端末から受信した前記評価結果とに基づいて、前記ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、上りリンクで使用するビームを選択する、無線通信システムである。
本発明の一態様は、前記基地局は、前記ミュート期間に前記共用周波数帯の無線信号を送信しない、前記端末は、前記ミュート期間に、自無線通信システムの受信電力を含まない受信電力を、前記ビームフォーミング機能の複数のビーム毎に前記共用周波数帯で測定する、上記の無線通信システムである。
【0010】
本発明の一態様は、端末と基地局の少なくともいずれか一方がビームフォーミング機能を有する無線通信システムに対応する基地局装置であって、前記無線通信システムは、他無線通信システムと共用する共用周波数帯を利用し、前記基地局装置は、自無線通信システムの受信電力を含む第1受信電力と、自無線通信システムの受信電力を含まない第2受信電力とを区別して測定するための受信選別情報を前記端末へ通知する制御部を備え、前記受信選別情報は、前記基地局装置が前記共用周波数帯の無線信号を送信しないミュート期間を示すミュート期間インデックスであり、前記ミュート期間は、前記端末の複数の受信ビームの各測定時間分の長さを有する、基地局装置である。
本発明の一態様は、端末と基地局の少なくともいずれか一方がビームフォーミング機能を有する無線通信システムに対応する基地局装置であって、前記無線通信システムは、他無線通信システムと共用する共用周波数帯を利用し、前記基地局装置は、自己の配下の全ての前記端末が前記共用周波数帯の無線信号を送信しないミュート期間を設定する制御部と、自無線通信システムの受信電力を含まない受信電力を、前記ミュート期間に、前記ビームフォーミング機能の複数のビーム毎に前記共用周波数帯で測定する測定部と、下りリンクにおける前記ビームフォーミング機能の複数のビームの評価結果を前記端末から受信する受信部と、を備え、前記制御部は、前記受信電力の測定結果と前記端末から受信した前記評価結果とに基づいて、前記ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、上りリンクで使用するビームを選択する、基地局装置である。
【0011】
本発明の一態様は、端末と基地局の少なくともいずれか一方がビームフォーミング機能を有する無線通信システムのビーム選択方法であって、前記無線通信システムは、他無線通信システムと共用する共用周波数帯を利用し、前記基地局が、自無線通信システムの受信電力を含む第1受信電力と、自無線通信システムの受信電力を含まない第2受信電力とを区別して測定するための受信選別情報を前記端末へ通知する通知ステップと、前記端末が、前記基地局から通知される前記受信選別情報に基づいて、前記第1受信電力と前記第2受信電力とを前記ビームフォーミング機能の複数のビーム毎に前記共用周波数帯で測定する測定ステップと、前記端末が、前記第1受信電力の測定結果と前記第2受信電力の測定結果とに基づいて、前記ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、下りリンクで使用するビームを選択するビーム選択ステップと、を含むビーム選択方法であり、前記受信選別情報は、前記基地局が前記共用周波数帯の無線信号を送信しないミュート期間を示すミュート期間インデックスであり、前記ミュート期間は、前記端末の複数の受信ビームの各測定時間分の長さを有し、前記測定ステップは、前記ミュート期間において、自己の受信ビームを前記複数の受信ビームの順に切り替えながら、各受信ビームでの前記第2受信電力を前記共用周波数帯で測定し、前記測定ステップは、前記ミュート期間以外の期間であって前記基地局が前記共用周波数帯の無線信号を送信する所定期間に前記第1受信電力を測定する、ビーム選択方法である。
【0012】
本発明の一態様は、端末と基地局の少なくともいずれか一方がビームフォーミング機能を有する無線通信システムのビーム選択方法であって、前記無線通信システムは、他無線通信システムと共用する共用周波数帯を利用し、前記端末が、下りリンクにおける前記ビームフォーミング機能の複数のビームの評価結果を前記基地局へ通知する通知ステップと、前記基地局が、前記評価結果を前記端末から受信する受信ステップと、前記基地局が、自己の配下の全ての前記端末が前記共用周波数帯の無線信号を送信しないミュート期間を設定する制御ステップと、前記基地局が、自無線通信システムの受信電力を含まない受信電力を、前記ミュート期間に、前記ビームフォーミング機能の複数のビーム毎に前記共用周波数帯で測定する測定ステップと、前記基地局が、前記受信電力の測定結果と前記端末から受信した前記評価結果とに基づいて、前記ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、上りリンクで使用するビームを選択するビーム選択ステップと、を含むビーム選択方法である。
【0013】
本発明の一態様は、端末と基地局の少なくともいずれか一方がビームフォーミング機能を有する無線通信システムであって、他無線通信システムと共用する共用周波数帯を利用する無線通信システムに対応する端末装置のコンピュータに、前記基地局から通知される受信選別情報に基づいて、自無線通信システムの受信電力を含む第1受信電力と、自無線通信システムの受信電力を含まない第2受信電力とを、前記ビームフォーミング機能の複数のビーム毎に前記共用周波数帯で測定する測定ステップと、前記第1受信電力の測定結果と前記第2受信電力の測定結果とに基づいて、前記ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、下りリンクで使用するビームを選択するビーム選択ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムであって、前記受信選別情報は、前記基地局が前記共用周波数帯の無線信号を送信しないミュート期間を示すミュート期間インデックスであり、前記ミュート期間は、前記端末装置の複数の受信ビームの各測定時間分の長さを有し、前記測定ステップは、前記ミュート期間において、自己の受信ビームを前記複数の受信ビームの順に切り替えながら、各受信ビームでの前記第2受信電力を前記共用周波数帯で測定し、前記測定ステップは、前記ミュート期間以外の期間であって前記基地局が前記共用周波数帯の無線信号を送信する所定期間に前記第1受信電力を測定する、コンピュータプログラムである。
【0014】
本発明の一態様は、端末と基地局の少なくともいずれか一方がビームフォーミング機能を有する無線通信システムであって、他無線通信システムと共用する共用周波数帯を利用する無線通信システムに対応する基地局装置のコンピュータに、自己の配下の全ての前記端末が前記共用周波数帯の無線信号を送信しないミュート期間を設定する制御ステップと、自無線通信システムの受信電力を含まない受信電力を、前記ミュート期間に、前記ビームフォーミング機能の複数のビーム毎に前記共用周波数帯で測定する測定ステップと、下りリンクにおける前記ビームフォーミング機能の複数のビームの評価結果を前記端末から受信する受信ステップと、前記受信電力の測定結果と前記端末から受信した前記評価結果とに基づいて、前記ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、上りリンクで使用するビームを選択するビーム選択ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の無線通信システムが同一の周波数帯を共用する場合に、ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、端末と基地局との間の無線通信に使用するビームを適切に選択することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す概略構成図である。
【
図2】一実施形態に係る端末装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る基地局装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】一実施形態に係るビームフォーミング機能を説明するための説明図である。
【
図5】一実施形態に係る下りリンクのビーム選択方法の例を説明するための説明図である。
【
図6】一実施形態に係る下りリンクのビーム選択方法の例を説明するための説明図である。
【
図7】一実施形態に係る下りリンクのビーム選択方法の例を説明するための説明図である。
【
図8】一実施形態に係る下りリンクのビーム選択方法の例を説明するための説明図である。
【
図9】一実施形態に係る上りリンクのビーム選択方法の例を説明するための説明図である。
【
図10】一実施形態に係るビーム選択方法の手順の例を示すフローチャートである。
【
図11】一実施形態に係るビーム選択方法の手順の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す概略構成図である。
図1において、既存の無線通信システム(既存システム)100と、第5世代移動通信システム(5G)とが同じ地域に設けられている。既存システム100と5Gとは同一の周波数帯(共用周波数帯)を共用する。5Gは、既存システム100が既に利用している共用周波数帯を利用するものである。
【0018】
既存システム100は複数の無線局装置50を備える。無線局装置50同士は、共用周波数帯を利用して無線通信を行う。
【0019】
5Gは、基地局装置gNBと、端末装置UEとを備える。基地局装置gNBと端末装置UEとは、共用周波数帯を利用して無線通信を行う。
【0020】
図1に示されるように、既存システム100と5Gとが十分な離隔を取らずに運用される場合、5Gは、既存システム100に対する電波干渉の影響を抑えるために送信電力を下げて運用する。これにより、5Gは、既存システム100から相対的に大きな電波干渉110,120を受けて受信品質が劣化する。基地局装置gNBでは、上りリンク(端末から基地局に向かう方向の無線通信リンク)において電波干渉110により受信品質が劣化する。端末装置UEでは、下りリンク(基地局から端末に向かう方向の無線通信リンク)において電波干渉120により受信品質が劣化する。
【0021】
このため、5Gが有するビームフォーミング機能を活用して、5Gにおける受信品質の劣化を抑制することが考えられる。そこで、本実施形態では、5Gにおいて、ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、端末装置UEと基地局装置gNBとの間の無線通信に使用するビームを適切に選択することを図る。以下、本実施形態について詳細に説明する。
【0022】
図2は、本実施形態に係る端末装置の構成例を示すブロック図である。
図2において、端末装置UEは、通信部11と、測定部12と、制御部13と、を備える。通信部11は、共用周波数帯を利用して基地局装置gNBと無線通信を行う。通信部11は、ビームフォーミング機能を有する。測定部12は、通信部11が受信する信号の受信電力を測定する。制御部13は、端末装置UEの制御を行う。
【0023】
端末装置UEの各機能は、端末装置UEがCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。端末装置UEは、例えば、スマートフォンやタブレット型のコンピュータ(タブレットPC)等である。
【0024】
図3は、本実施形態に係る基地局装置の構成例を示すブロック図である。
図3において、基地局装置gNBは、通信部31と、測定部32と、制御部33と、を備える。通信部31は、共用周波数帯を利用して端末装置UEと無線通信を行う。通信部31は、ビームフォーミング機能を有する。測定部32は、通信部31が受信する信号の受信電力を測定する。制御部33は、基地局装置gNBの制御を行う。
【0025】
基地局装置gNBの各機能は、基地局装置gNBがCPU及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0026】
図4は、本実施形態に係るビームフォーミング機能を説明するための説明図である。本実施形態では、基地局装置gNB及び端末装置UEは、それぞれにビームフォーミング機能を有する。基地局装置gNB及び端末装置UEの各ビームフォーミング機能は、本実施形態の一例として、4個のビームを形成する。
【0027】
基地局装置gNBは、4個のビームGB1,GB2,GB3,GB4を形成する。基地局装置gNBは、下りリンクの無線通信においては、送信ビームとして4個のビームGB1,GB2,GB3,GB4を形成する。基地局装置gNBは、上りリンクの無線通信においては、受信ビームとして4個のビームGB1,GB2,GB3,GB4を形成する。
【0028】
端末装置UEは、4個のビームUB1,UB2,UB3,UB4を形成する。端末装置UEは、下りリンクの無線通信においては、受信ビームとして4個のビームUB1,UB2,UB3,UB4を形成する。端末装置UEは、上りリンクの無線通信においては、送信ビームとして4個のビームUB1,UB2,UB3,UB4を形成する。
【0029】
基地局装置gNBと端末装置UEとの間の無線通信では、基地局装置gNBの4個のビームGB1,GB2,GB3,GB4と、端末装置UEの4個のビームUB1,UB2,UB3,UB4との全ての組合せの中から、適切なビームの組合せが選択されて使用される。ビームの組合せは、上りリンクと下りリンクとでそれぞれ別個に適切なビームの組合せが選択される。
【0030】
図4に示されるように、既存システム100の無線局装置50は送信ビームB50により共用周波数帯の無線信号を送信する。無線局装置50から送信ビームB50により送信される共用周波数帯の無線信号は、基地局装置gNB及び端末装置UEが各受信ビームにより受信する共用周波数帯の受信信号に混入する。基地局装置gNB及び端末装置UEにおいて、共用周波数帯の受信信号に混入する無線局装置50の信号は、上記のビームの組合せの選択において適切な選択を妨げる可能性がある。
【0031】
しかしながら、無線局装置50は既存システム100であるため、無線局装置50が共用周波数帯の無線信号を送信しない期間を設けるように、無線局装置50に対して共用周波数帯の無線信号の送信に制限をかけることは難しい。このため、本実施形態では、5Gの受信電力を含まない受信電力(第2受信電力)を測定する手段を設け、第2受信電力の測定結果を使用して上記したビームの組合せの選択を行うようにする。
【0032】
以下、本実施形態に係るビーム選択方法について説明する。
【0033】
(下りリンクのビーム選択方法の例1)
図5及び
図6を参照して、本実施形態に係る下りリンクのビーム選択方法の例1を説明する。
図5及び
図6は、本実施形態に係る下りリンクのビーム選択方法の例1を説明するための説明図である。
【0034】
図5には、本ビーム選択方法における基地局装置gNBの送信ビーム(gNB送信ビーム)と端末装置UEの受信ビーム(UE受信ビーム)との各組合せの測定の順番の例が示されている。
図5に示されるように、測定期間において、ミュート(MUTE)期間T2が設けられる。ミュート期間T2は、基地局装置gNBが共用周波数帯の無線信号を送信しない期間である。したがって、ミュート期間T2においては、端末装置UEは、共用周波数帯において、5Gの受信電力を含まない第2受信電力を測定することができる。ミュート期間T2は、端末装置UEの4個の受信ビームUB1,UB2,UB3,UB4の各測定時間分の長さを有する。端末装置UEの測定部12は、ミュート期間T2において、自己の受信ビームをUB1,UB2,UB3,UB4の順に切り替えながら、各受信ビームUB1,UB2,UB3,UB4での受信電力(第2受信電力)を共用周波数帯で測定する。
【0035】
図6に、ミュート期間T2での各受信ビームUB1(UE Beam1),UB2(UE Beam2),UB3(UE Beam3),UB4(UE Beam4)の受信電力(第2受信電力)の測定結果が示される。各受信ビームUB1,UB2,UB3,UB4の第2受信電力の測定値P_M(1),P_M(2),P_M(3),P_M(4)は、5Gの受信電力を含まないが、既存システム100の受信電力を含むものである。
【0036】
図5に示されるように、測定期間において、ミュート期間T2に引き続き、参照信号送信期間T1が設けられる。参照信号送信期間T1は、基地局装置gNBが共用周波数帯の品質測定用の参照信号を送信する期間である。基地局装置gNBは、参照信号送信期間T1において、自己の送信ビームをGB1,GB2,GB3,GB4の順に切り替えながら、共用周波数帯の品質測定用の参照信号(以下、単に参照信号と称する)を送信する。一送信ビームの参照信号の送信期間は、端末装置UEの4個の受信ビームUB1,UB2,UB3,UB4の各測定時間分の長さを有する。端末装置UEの測定部12は、4個の各gNB送信ビームの参照信号の送信期間において、自己の受信ビームをUB1,UB2,UB3,UB4の順に切り替えながら、各受信ビームUB1,UB2,UB3,UB4での参照信号の受信電力(第1受信電力)を測定する。第1受信電力は、5Gの受信電力を含む受信電力である。
【0037】
なお、端末装置UEは、参照信号送信期間T1において、参照信号の受信電力を測定するが、端末装置UEにおける共用周波数帯の受信信号には、既存システム100の無線局装置50から送信された共用周波数帯の無線信号が混入するために、参照信号の受信電力の測定結果(第1受信電力)は、5Gの受信電力と既存システム100の受信電力とを含むものになる。
【0038】
図6に、参照信号送信期間T1での送信ビームGB1(gNB Beam1),GB2(gNB Beam2),GB3(gNB Beam3),GB4(gNB Beam4)と受信ビームUB1(UE Beam1),UB2(UE Beam2),UB3(UE Beam3),UB4(UE Beam4)との各組合せの受信電力(第1受信電力)の測定結果が示される。各組合せの第1受信電力の測定値P_CSI(1,1-4),P_CSI(2,1-4),P_CSI(3,1-4),P_CSI(4,1-4)は、5Gの受信電力と既存システム100の受信電力とを含むものである。
【0039】
基地局装置gNBの制御部33は、ミュート期間T2を示すミュート期間インデックスを端末装置UEへ通知する。ミュート期間インデックスは、5Gの受信電力を含む第1受信電力と5Gの受信電力を含まない第2受信電力とを区別して測定するための受信選別情報として機能する。なお、参照信号送信期間T1に関するインデックスは、予め、端末装置UEに設定される。
【0040】
端末装置UEの測定部12は、基地局装置gNBから通知されるミュート期間インデックスで示されるミュート期間T2に第2受信電力を測定する。また、測定部12は、当該ミュート期間T2以外の期間である参照信号送信期間T1に第1受信電力を測定する。これらの測定により
図6に示される第1受信電力の測定結果と第2受信電力の測定結果とが得られる。
【0041】
端末装置UEの制御部13は、
図6に示される第1受信電力の測定結果と第2受信電力の測定結果とに基づいて、基地局装置gNBの4個のビームGB1,GB2,GB3,GB4と端末装置UEの4個のビームUB1,UB2,UB3,UB4との全ての組合せの中から、適切なビームの組合せを選択する。このビームの組合せの選択には、次の(1)式が用いられる。
【0042】
(i,j)=arg MAX((P_CSI(i,j)-P_M(j))/P_M(j)) ・・・(1)
(1)式において、iは、基地局装置gNBの送信ビームを識別する基地局ビーム識別子である。jは、端末装置UEの受信ビームを識別する端末ビーム識別子である。P_CSI(i,j)は、基地局装置gNBの送信ビーム(i)と端末装置UEの受信ビーム(j)の組合せによる第1受信電力の測定値である。P_M(j)は、端末装置UEの受信ビーム(j)による第2受信電力の測定値である。
【0043】
制御部13は、(1)式により、端末装置UEの受信ビームと基地局装置gNBの送信ビームの組合せ(ビーム組合せ)毎に「P_M(j)に対する(P_CSI(i,j)-P_M(j))の比」を計算し、全てのビーム組合せの中から当該比が最大のビーム組合せ(i,j)を選択する。
【0044】
制御部13は、(1)式により選択したビーム組合せ(i,j)を、基地局装置gNBへ通知する。基地局装置gNBの制御部33は、端末装置UEから通知されたビーム組合せ(i,j)を、当該端末装置UEに対して下りリンクで使用する。
【0045】
なお、端末装置UEの制御部13は、各ビーム組合せに対して、(1)式により、「P_M(j)に対する(P_CSI(i,j)-P_M(j))の比」が大きい方から順位付けし、ビーム組合せの順位付けの結果を基地局装置gNBへ通知してもよい。基地局装置gNBの制御部33は、端末装置UEから通知されたビーム組合せの順位付けの結果に基づいて、当該端末装置UEに対して下りリンクで使用するビーム組合せを決定してもよい。例えば、基地局装置gNBの制御部33は、自己の基地局装置gNBの配下の複数の端末装置UEに対して、各端末装置UEのビーム組合せの順位付けの結果に基づいて、各端末装置UEに対して下りリンクで使用するビーム組合せを決定してもよい。
【0046】
また、端末装置UEの制御部13は、第1受信電力及び第2受信電力の測定結果(測定値P_CSI(i,j),P_M(j)や、「P_M(j)に対する(P_CSI(i,j)-P_M(j))の比」など)を基地局装置gNBへ通知してもよい。基地局装置gNBの制御部33は、端末装置UEから通知された第1受信電力及び第2受信電力の測定結果に基づいて、当該端末装置UEに対して下りリンクで使用するビーム組合せを決定してもよい。例えば、基地局装置gNBの制御部33は、自己の基地局装置gNBの配下の複数の端末装置UEに対して、各端末装置UEの各第1受信電力及び第2受信電力の測定結果に基づいて、各端末装置UEに対して下りリンクで使用するビーム組合せを決定してもよい。
【0047】
なお、端末装置UEの測定部12は、ミュート期間T2において、RSSI(Received Signal Strength Indicator)を測定してもよい。また、測定部12は、参照信号送信期間T1において、RSRP(Reference Signal Received Power)を測定してもよい。端末装置UEの制御部13は、ミュート期間T2のRSSIの測定値を第2受信電力の測定値P_M(j)に使用する場合、参照信号送信期間T1のRSRPの測定値をRSSIに換算した値を第1受信電力の測定値P_CSI(i,j)に使用する。RSRPをRSSIに換算するための換算式は、予め、端末装置UEに設定される。
【0048】
また、上記した(1)式では、「P_M(j)に対する(P_CSI(i,j)-P_M(j))の比」を用いたが、「P_M(j)に対するP_CSI(i,j)の比」を用いてもよい。この場合、次の(1a)式が上記(1)式の代わりに使用される。
(i,j)=arg MAX(P_CSI(i,j)/P_M(j)) ・・・(1a)
【0049】
(下りリンクのビーム選択方法の例2)
図7及び
図8を参照して、本実施形態に係る下りリンクのビーム選択方法の例2を説明する。
図7及び
図8は、本実施形態に係る下りリンクのビーム選択方法の例2を説明するための説明図である。
【0050】
図7には、本ビーム選択方法における基地局装置gNBの送信ビーム(gNB送信ビーム)と端末装置UEの受信ビーム(UE受信ビーム)との各組合せの測定の順番の例が示されている。
図7に示されるように、本ビーム選択方法では、上記した下りリンクのビーム選択方法の例1の
図5における参照信号送信期間T1が設けられるが、ミュート期間T2はない。
図7において、参照信号送信期間T1は上記した
図5と同じである。
【0051】
本ビーム選択方法では、基地局装置gNBの制御部33は、自セルで利用している参照信号系列を示す第1識別子(自セル系列ID)と、自セル及び周辺セルで利用していない参照信号系列を示す第2識別子(非利用系列ID)とを端末装置UEへ通知する。自セル系列ID及び非利用系列IDは、受信選別情報に対応する。
【0052】
なお、自セル系列IDは、自セルで利用している参照信号系列に関連付けられたセル識別子(セルID)であってもよい。非利用系列IDは、自セル及び周辺セルで利用していない参照信号系列に関連付けられたセルIDであってもよい。
【0053】
基地局装置gNBは、参照信号送信期間T1において、上記した下りリンクのビーム選択方法の例1と同様に、自己の送信ビームをGB1,GB2,GB3,GB4の順に切り替えながら、参照信号を送信する。基地局装置gNBが送信する参照信号は、自セル系列IDの参照信号系列の参照信号である。
【0054】
端末装置UEの測定部12は、参照信号送信期間T1において、4個の各gNB送信ビームの参照信号の送信期間において、自己の受信ビームをUB1,UB2,UB3,UB4の順に切り替えながら、各受信ビームUB1,UB2,UB3,UB4での参照信号の第1受信電力及び第2受信電力を測定する。測定部12は、基地局装置gNBから通知された自セル系列IDで示される参照信号系列の相関検出により第1受信電力を測定する。第1受信電力は、5Gの受信電力と既存システム100の受信電力とを含むものである。
【0055】
また、測定部12は、基地局装置gNBから通知された非利用系列IDで示される参照信号系列の相関検出により第2受信電力を測定する。第2受信電力は、5Gの受信電力を含まないが、既存システム100の受信電力を含むものである。
【0056】
図8に、参照信号送信期間T1での送信ビームGB1(gNB Beam1),GB2(gNB Beam2),GB3(gNB Beam3),GB4(gNB Beam4)と受信ビームUB1(UE Beam1),UB2(UE Beam2),UB3(UE Beam3),UB4(UE Beam4)との各組合せの第1受信電力及び第2受信電力の測定結果が示される。各組合せの第1受信電力の測定値(自セル系列)P_CSI(1,1-4),P_CSI(2,1-4),P_CSI(3,1-4),P_CSI(4,1-4)は、5Gの受信電力と既存システム100の受信電力とを含むものである。また、各組合せの第2受信電力の測定値(非利用系列)P_u(1,1-4),P_u(2,1-4),P_u(3,1-4),P_u(4,1-4)は、5Gの受信電力を含まないが、既存システム100の受信電力を含むものである。
【0057】
端末装置UEの制御部13は、
図8に示される第1受信電力の測定結果(自セル系列)と第2受信電力の測定結果(非利用系列)とに基づいて、基地局装置gNBの4個のビームGB1,GB2,GB3,GB4と端末装置UEの4個のビームUB1,UB2,UB3,UB4との全ての組合せの中から、適切なビームの組合せを選択する。このビームの組合せの選択には、次の(2)式が用いられる。
【0058】
(i,j)=arg MAX((P_CSI(i,j)-P_u(i,j))/P_u(i,j)) ・・・(2)
(2)式において、iは、基地局装置gNBの送信ビームを識別する基地局ビーム識別子である。jは、端末装置UEの受信ビームを識別する端末ビーム識別子である。P_CSI(i,j)は、基地局装置gNBの送信ビーム(i)と端末装置UEの受信ビーム(j)の組合せによる第1受信電力の測定値(自セル系列)である。P_u(i,j)は、基地局装置gNBの送信ビーム(i)と端末装置UEの受信ビーム(j)の組合せによる第2受信電力の測定値(非利用系列)である。
【0059】
制御部13は、(2)式により、端末装置UEの受信ビームと基地局装置gNBの送信ビームの組合せ(ビーム組合せ)毎に「P_u(i,j)に対する(P_CSI(i,j)-P_u(i,j))の比」を計算し、全てのビーム組合せの中から当該比が最大のビーム組合せ(i,j)を選択する。
【0060】
制御部13は、(2)式により選択したビーム組合せ(i,j)を、基地局装置gNBへ通知する。基地局装置gNBの制御部33は、端末装置UEから通知されたビーム組合せ(i,j)を、当該端末装置UEに対して下りリンクで使用する。
【0061】
なお、端末装置UEの制御部13は、各ビーム組合せに対して、(2)式により、「P_M(j)に対する(P_CSI(i,j)-P_M(j))の比」が大きい方から順位付けし、ビーム組合せの順位付けの結果を基地局装置gNBへ通知してもよい。基地局装置gNBの制御部33は、端末装置UEから通知されたビーム組合せの順位付けの結果に基づいて、当該端末装置UEに対して下りリンクで使用するビーム組合せを決定してもよい。例えば、基地局装置gNBの制御部33は、自己の基地局装置gNBの配下の複数の端末装置UEに対して、各端末装置UEのビーム組合せの順位付けの結果に基づいて、各端末装置UEに対して下りリンクで使用するビーム組合せを決定してもよい。
【0062】
また、端末装置UEは、第1受信電力及び第2受信電力の測定結果(測定値P_CSI(i,j),P_u(i,j)や、「P_u(i,j)に対する(P_CSI(i,j)-P_u(i,j))の比」など)を基地局装置gNBへ通知してもよい。基地局装置gNBの制御部33は、端末装置UEから通知された第1受信電力及び第2受信電力の測定結果に基づいて、当該端末装置UEに対して下りリンクで使用するビーム組合せを決定してもよい。例えば、基地局装置gNBの制御部33は、自己の基地局装置gNBの配下の複数の端末装置UEに対して、各端末装置UEの各第1受信電力及び第2受信電力の測定結果に基づいて、各端末装置UEに対して下りリンクで使用するビーム組合せを決定してもよい。
【0063】
なお、端末装置UEの測定部12は、参照信号送信期間T1において、RSRP(Reference Signal Received Power)を測定してもよい。端末装置UEの制御部13は、参照信号送信期間T1のRSRPの測定値を、第1受信電力の測定値(自セル系列)P_CSI(i,j)及び第2受信電力の測定値(非利用系列)P_u(i,j)に使用してもよい。
【0064】
また、上記した(1)式では、「P_u(i,j)に対する(P_CSI(i,j)-P_u(i,j))の比」を用いたが、「P_u(i,j)に対するP_CSI(i,j)の比」を用いてもよい。この場合、次の(2a)式が上記(2)式の代わりに使用される。
(i,j)=arg MAX(P_CSI(i,j)/P_u(i,j)) ・・・(2a)
【0065】
(上りリンクのビーム選択方法の例)
図9を参照して、本実施形態に係る上りリンクのビーム選択方法の例Bを説明する。
図9は、本実施形態に係る上りリンクのビーム選択方法の例を説明するための説明図である。
【0066】
一般に、5Gが既存システム100から受ける電波干渉は、上りリンクと下りリンクとで非対称である。このため、本ビーム選択方法では、上りリンクで使用するビームの選択方法を示す。
【0067】
端末装置UEの制御部13は、下りリンクにおけるビームフォーミング機能の複数のビームの評価結果(下りリンクビーム評価結果)を基地局装置gNBへ通知する通知部の機能を有する。例えば、端末装置UEの制御部13は、上記した下りリンクのビーム選択方法の例1又は例2によるビーム組合せの選択結果や、ビーム組合せの順位付けの結果や、第1受信電力及び第2受信電力の測定値などを、下りリンクビーム評価結果として基地局装置gNBへ通知する。
【0068】
基地局装置gNBの制御部33は、
図9に示されるように、ミュート期間T3を設定する。ミュート期間T3は、基地局装置gNBの配下の全ての端末装置UEが共用周波数帯の無線信号を送信しない期間である。したがって、ミュート期間T3においては、基地局装置gNBは、共用周波数帯において、5Gの受信電力を含まない受信電力を測定することができる。ミュート期間T3は、基地局装置gNBの4個の受信ビームGB1,GB2,GB3,GB4の各測定時間分の長さを有する。なお、ミュート期間T3は、基地局装置gNBが共用周波数帯の無線信号を送信しないミュート期間T2(
図5参照)と同一の期間であってもよい。ミュート期間T2とミュート期間T3とを同一の期間に設定することにより、設定した期間において端末装置UE及び基地局装置gNBの双方が5Gの受信電力を含まない受信電力を同時に測定することができる。これにより、上りリンク及び下りリンクにおいてミュートする期間を短縮し、測定のオーバーヘッドを削減することが可能になる。
【0069】
基地局装置gNBの制御部33は、例えば、自基地局装置gNBの配下の全ての端末装置UEに対してミュート期間T3の無線リソースを割り当てないことにより、ミュート期間T3を設定する。又は、制御部33は、自基地局装置gNBの配下の全ての端末装置UEに対して、ミュート期間T3の送信を強制的に禁止する指示を行ってもよい。
【0070】
基地局装置gNBの測定部32は、ミュート期間T3において、自己の受信ビームをGB1,GB2,GB3,GB4の順に切り替えながら、各受信ビームGB1,GB2,GB3,GB4での受信電力を測定する。この受信電力の測定値は、5Gの受信電力を含まないが、既存システム100の受信電力を含むものである。
【0071】
基地局装置gNBの制御部33は、測定部32による受信電力の測定結果と端末装置UEから受信した下りリンクビーム評価結果とに基づいて、ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、上りリンクで使用するビームを選択する。例えば、制御部33は、測定部32による受信電力の測定結果に対する下りリンクビーム評価結果の第1受信電力の測定値(5Gの受信電力と既存システム100の受信電力とを含むもの)の比に基づいて、上りリンクで使用する基地局装置gNBの受信ビームを決定してもよい。例えば、当該比が最大になる基地局装置gNBの受信ビームが、上りリンクで使用する基地局装置gNBの受信ビームに決定されてもよい。
【0072】
基地局装置gNBの制御部33は、決定した上りリンクで使用する基地局装置gNBの受信ビームを、端末装置UEへ通知する。端末装置UEの制御部13は、基地局装置gNBから通知された上りリンクで使用する基地局装置gNBの受信ビームに基づいて、自己が上りリンクで使用する自己の送信ビームを決定する。例えば、制御部13は、上りリンクで使用される基地局装置gNBの受信ビームの基地局ビーム識別子に対応する基地局装置gNBの送信ビームに対して、下りリンクビーム評価結果において最良の評価結果である端末装置UEの受信ビームの端末ビーム識別子を、上りリンクで使用する自端末装置UEの送信ビームの端末ビーム識別子に決定してもよい。なお、同様にして、基地局装置gNBの制御部33が、上りリンクで使用する自基地局装置gNBの受信ビームと各端末装置UEの下りリンクビーム評価結果とに基づいて、上りリンクで使用する各端末装置UEの送信ビームを決定し、決定した各端末装置UEの上りリンクの送信ビームを各端末装置UEへ通知してもよい。
【0073】
次に、
図10,
図11を参照して本実施形態に係るビーム選択方法の手順を説明する。
図10及び
図11は、本実施形態に係るビーム選択方法の手順の例を示すフローチャートである。
【0074】
図10を参照して本実施形態に係る下りリンクのビーム選択方法の手順を説明する。
(ステップS1) 基地局装置gNBは、5Gの受信電力を含む第1受信電力と5Gの受信電力を含まない第2受信電力とを区別して測定するための受信選別情報を端末装置UEへ通知する。
【0075】
(ステップS2) 端末装置UEは、基地局装置gNBから通知される受信選別情報に基づいて、第1受信電力と第2受信電力とをビームフォーミング機能の複数のビーム毎に共用周波数帯で測定する。
【0076】
(ステップS3) 端末装置UEは、第1受信電力の測定結果と第2受信電力の測定結果とに基づいて、ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、下りリンクで使用するビームを選択する。
【0077】
図11を参照して本実施形態に係る上りリンクのビーム選択方法の手順を説明する。
(ステップS11) 端末装置UEは、下りリンクにおけるビームフォーミング機能の複数のビームの評価結果(下りリンクビーム評価結果)を基地局装置gNBへ通知する。
【0078】
(ステップS12) 基地局装置gNBは、自己の配下の全ての端末装置UEが共用周波数帯の無線信号を送信しないミュート期間を設定する。
【0079】
(ステップS13) 基地局装置gNBは、5Gの受信電力を含まない受信電力を、ミュート期間に、ビームフォーミング機能の複数のビーム毎に共用周波数帯で測定する。
【0080】
(ステップS14) 基地局装置gNBは、当該受信電力の測定結果と端末装置UEから受信した下りリンクビーム評価結果とに基づいて、ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、上りリンクで使用するビームを選択する。
【0081】
上述した実施形態によれば、自無線通信システムと他無線通信システムとが同一の周波数帯を共用する場合に、端末が、自無線通信システムの受信電力を含む第1受信電力と自無線通信システムの受信電力を含まない第2受信電力とを区別して測定し、第1受信電力の測定結果と第2受信電力の測定結果とに基づいて、ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、下りリンクで使用するビームを選択する。これにより、複数の無線通信システムが同一の周波数帯を共用する場合に、ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、端末と基地局との間の無線通信に使用するビームを適切に選択することができるという効果が得られる。
【0082】
また、実施形態によれば、自無線通信システムと他無線通信システムとが同一の周波数帯を共用する場合に、基地局が、自己の配下の全ての端末が共用周波数帯の無線信号を送信しないミュート期間を設定し、自無線通信システムの受信電力を含まない受信電力を、ミュート期間に、ビームフォーミング機能の複数のビーム毎に共用周波数帯で測定し、当該受信電力の測定結果と端末から受信した下りリンクビーム評価結果とに基づいて、ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、上りリンクで使用するビームを選択する。これにより、複数の無線通信システムが同一の周波数帯を共用する場合に、ビームフォーミング機能の複数のビームの中から、端末と基地局との間の無線通信に使用するビームを適切に選択することができるという効果が得られる。
【0083】
本実施形態によれば、複数の無線通信システムが同一の周波数帯を共用する場合に、ビームフォーミング機能を活用して周波数利用効率の向上やカバレッジの改善などを図ることができる。特に、受信側で既存システムからの電波干渉が少ないビームを選択することが可能となるので、干渉電力が低減して受信品質が改善される効果が得られる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0085】
上述した実施形態では、端末と基地局の両方がビームフォーミング機能を有したが、端末と基地局の少なくともいずれか一方がビームフォーミング機能を有するものであってもよい。
【0086】
上述した実施形態では、既存システムと同一の周波数帯を利用する無線通信システムの一例として5Gを挙げたがこれに限定されず、各種の無線通信システムに適用可能である。
【0087】
また、上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0088】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
5G…第5世代移動通信システム、gNB…基地局装置、UE…端末装置、11,31…通信部、12,32…測定部、13,33…制御部、50…無線局装置、100…既存システム