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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】ピボットヒンジ
(51)【国際特許分類】
   E05D 7/10 20060101AFI20230905BHJP
   E05D 7/081 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
E05D7/10
E05D7/081
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020070394
(22)【出願日】2020-04-09
(65)【公開番号】P2021167510
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003742
【氏名又は名称】弁理士法人海田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100128749
【弁理士】
【氏名又は名称】海田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 達也
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-50568(JP,U)
【文献】実開平3-24584(JP,U)
【文献】特開平8-42232(JP,A)
【文献】米国特許第6205616(US,B1)
【文献】米国特許第5568673(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉に固定設置される支持部材と、
前記支持部材に形成された軸案内孔に挿入され、該軸案内孔の一方の開口から一方の軸端が没入突出可能に配置されるピボット軸と、
前記軸案内孔の内部に配置され、前記ピボット軸の一方の軸端を前記軸案内孔の一方の開口から突出する方向に付勢する弾性部材と、
前記ピボット軸の前記軸案内孔への没入を該ピボット軸の他方の軸端に対する当接によって阻止するために、前記軸案内孔の他方の開口から挿入して前記支持部材に対して固定解除可能に固定される阻止手段と、
前記ピボット軸を軸方向に移動操作するために該ピボット軸の他方の軸端から前記軸案内孔の他方の開口に向けて延設され、前記阻止手段の中心部に形成される挿通孔に挿通される操作手段と、
を備え、
前記支持部材の反ピボット軸突出側に、前記操作手段と前記阻止手段を配置したことを特徴とするピボットヒンジ。
【請求項2】
請求項1に記載のピボットヒンジにおいて、
前記操作手段と前記阻止手段を、前記支持部材の反ピボット軸突出側から前記ピボット軸の軸方向で見たときに、前記操作手段と前記阻止手段が前記支持部材の輪郭内に収まるように構成されることを特徴とするピボットヒンジ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のピボットヒンジにおいて、
前記ピボット軸と前記操作手段は、一体の部材として構成されるものであり、
前記阻止手段から突出する前記操作手段の端部には、つまみ部が設けられることを特徴とするピボットヒンジ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のピボットヒンジにおいて、
前記ピボット軸と前記操作手段は、別体の部材として構成されるものであり、
前記操作手段は、前記阻止手段の中心部に形成される前記挿通孔に対して反ピボット軸側から挿通し、前記ピボット軸の他方の軸端に形成されたネジ穴に螺合されるネジ部を有して構成されることを特徴とするピボットヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉枠に取り付けられる扉を回動自在に支持するピボットヒンジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、扉枠等の開口部を塞ぐ扉の開閉を可能とするピボットヒンジが公知である。このようなピボットヒンジを点検口や制御箱の扉等で用いる場合は、扉を容易に着脱できることが求められる。
【0003】
例えば、下記特許文献1、2に開示される従来のピボットヒンジでは、バネの付勢力によって扉から突出するピボット軸を付勢力に抗して没入させるために操作する操作手段(レバー、L形部)が設けられている。この操作手段により、扉の着脱時に必要となるピボット軸の没入操作が容易になる。
【0004】
また、下記特許文献3に開示される従来のピボットヒンジでは、操作手段(つまみ部)に加えて、不可抗力等によるピボット軸の没入を阻止することができる阻止手段(ビス)を備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭57-32473号公報
【文献】実開昭57-123377号公報
【文献】実開昭57-50568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上掲した特許文献1、2に開示される従来のピボットヒンジでは、操作手段がピボット軸を支持する支持部材から側方に突出して設けられているため、支持部材の側方に位置する部材と干渉する可能性がある。さらに、突出しているピボット軸が不可抗力等によって没入することによって扉が意図せず外れてしまう可能性が存在していた。
【0007】
一方、上掲した特許文献3に開示されるピボットヒンジの構成では、操作手段が支持部材の反ピボット軸突出側に配置されていることから、支持部材の側方に位置する部材との干渉を回避できるとともに、阻止手段によって不可抗力によるピボット軸の没入を阻止できる。ところが、阻止手段が支持部材から側方に突出して設けられていることから、阻止手段が支持部材の側方に位置する部材と干渉する可能性が存在していた。
【0008】
本発明は、上述した従来技術に存在する課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、操作手段と阻止手段を備えるピボットヒンジにおいて、両手段が支持部材の側方に位置する部材と干渉することを回避できる構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0010】
本発明に係るピボットヒンジ(10)は、扉(101)に固定設置される支持部材(11,211)と、前記支持部材(11,211)に形成された軸案内孔(12)に挿入され、該軸案内孔(12)の一方の開口から一方の軸端が没入突出可能に配置されるピボット軸(21,121)と、前記軸案内孔(12)の内部に配置され、前記ピボット軸(21,121)の一方の軸端を前記軸案内孔(12)の一方の開口から突出する方向に付勢する弾性部材(31)と、前記ピボット軸(21,121)の前記軸案内孔(12)への没入を該ピボット軸(21,121)の他方の軸端に対する当接によって阻止するために、前記軸案内孔(12)の他方の開口から挿入して前記支持部材(11,211)に対して固定解除可能に固定される阻止手段(41)と、前記ピボット軸(21,121)を軸方向に移動操作するために該ピボット軸(21,121)の他方の軸端から前記軸案内孔(12)の他方の開口に向けて延設され、前記阻止手段(41)の中心部に形成される挿通孔(41c)に挿通される操作手段(51,151)と、を備え、前記支持部材(11,211)の反ピボット軸突出側に、前記操作手段(51,151)と前記阻止手段(41)を配置したことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明に係るピボットヒンジ(10)では、前記操作手段(51,151)と前記阻止手段(41)を、前記支持部材(11,211)の反ピボット軸突出側から前記ピボット軸(21,121)の軸方向で見たときに、前記操作手段(51,151)と前記阻止手段(41)が前記支持部材(11,211)の輪郭内に収まるように構成されることが好適である。
【0012】
さらに、本発明に係るピボットヒンジ(10)において、前記ピボット軸(21)と前記操作手段(51)は、一体の部材として構成されるものであり、前記阻止手段(41)から突出する前記操作手段(51)の端部には、つまみ部(51a)を設けることができる。
【0013】
またさらに、本発明に係るピボットヒンジ(10)において、前記ピボット軸(121)と前記操作手段(151)は、別体の部材として構成されるものであり、前記操作手段(151)は、前記阻止手段(41)の中心部に形成される前記挿通孔(41c)に対して反ピボット軸側から挿通し、前記ピボット軸(121)の他方の軸端に形成されたネジ穴(121a)に螺合されるネジ部(151b)を有して構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、操作手段と阻止手段を備えるピボットヒンジにおいて、両手段が支持部材の側方に位置する部材と干渉することを回避できる構成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係るピボットヒンジの使用状態例を説明する図である。
図2】扉に取り付けられた状態の本実施形態に係るピボットヒンジの背面図である。
図3】扉に取り付けられた状態の本実施形態に係るピボットヒンジの部分断面左側面図である。
図4図2中の符号A矢視を示す部分底面図である。
図5図3中の符号B-B線断面を示す断面図である。
図6図5で示した断面図における本実施形態に係るピボットヒンジの動作を説明するための図である。
図7】本実施形態に係るピボットヒンジの動作を説明するための図であって、当該ピボットヒンジを上方側から見た場合の図である。
図8】本発明が取り得る他の実施形態例を示す図であり、本実施形態の図5に対応した断面図である。
図9】本発明が取り得る更に他の実施形態例を示す図であり、図中の分図(a)は本実施形態の図2に対応したピボットヒンジの背面図であり、分図(b)は分図(a)中の符号C矢視を示す部分底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
まず、図1を用いて、本実施形態に係るピボットヒンジ10の使用状態例を説明する。ここで、図1は、本実施形態に係るピボットヒンジの使用状態例を説明する図である。
【0018】
本実施形態に係るピボットヒンジ10は、点検口の開閉扉に用いるものである。図1に例示する使用状態例の場合、略矩形形状をした開口部からなる点検口を構成する扉枠100と、この扉枠100に設置された扉101とが示されている。扉101には、上方に本実施形態に係るピボットヒンジ10が設置されており、下方に軸穴102が形成されている。本実施形態に係るピボットヒンジ10は、軸端が上方に向けて突出し、また、下方に向けて没入するピボット軸21を有している。一方、扉枠100には、上方にピボット軸21を嵌入可能な軸穴100aが形成されており、下方に扉101の軸穴102に嵌入可能な固定軸100bが設置されている。したがって、本実施形態に係るピボットヒンジ10を操作してピボット軸21を下方に向けて没入させたり、ピボット軸21を上方に向けて突出させたりすることで、扉101を扉枠100に取り付けて扉101が開閉動作自在な状態としたり、扉101を扉枠100から取り外したりすることが可能となっている。
【0019】
次に、図1に例示する使用状態例の場合の扉101の取付方法を説明すると、扉101が扉枠100から取り外された状態から、本実施形態に係るピボットヒンジ10を操作してピボット軸21を下方に向けて没入させ、さらに、扉101の下方に設置された軸穴102に扉枠100の下方に固定設置された固定軸100bを嵌入させて、扉枠100に対して扉101を取り付け位置に配置する。この状態から、ピボット軸21を上方に向けて突出させて当該ピボット軸21を扉枠100の上方の軸穴100aに嵌入させると、扉枠100に対する扉101の設置が完了する。一方、扉101の取り外し方法は、取付方法の逆の動作を実施すればよい。この様な取り付け・取り外し動作を実行するに際して、本実施形態に係るピボットヒンジ10は、操作性が良く、誤動作しにくい構成を有している。そこで、図2図7を参照して、本実施形態に係るピボットヒンジ10の具体的な構成を説明する。
【0020】
図2は、扉に取り付けられた状態の本実施形態に係るピボットヒンジの背面図であり、図3は、扉に取り付けられた状態の本実施形態に係るピボットヒンジの部分断面左側面図である。また、図4は、図2中の符号A矢視を示す部分底面図であり、図5は、図3中の符号B-B線断面を示す断面図であり、図6は、図5で示した断面図における本実施形態に係るピボットヒンジの動作を説明するための図である。さらに、図7は、本実施形態に係るピボットヒンジの動作を説明するための図であって、当該ピボットヒンジを上方側から見た場合の図である。
【0021】
まず、本実施形態に係るピボットヒンジ10の具体的構成を説明するため、特に図2図5を参照して説明する。本実施形態に係るピボットヒンジ10は、扉101に固定設置される支持部材11と、支持部材11に形成された軸案内孔12に挿入されるピボット軸21と、軸案内孔12の内部に配置される弾性部材としてのコイルバネ31と、ピボット軸21の上下方向の移動を阻止するための阻止手段41と、ピボット軸21を操作するための操作手段としての操作軸51と、を備えている。
【0022】
支持部材11は、扉101に対して複数のネジ103を用いて固定される固定金具13と、軸案内孔12を有するとともに固定金具13に対する設置位置をピボット軸21の軸線方向に対して直交する方向(すなわち、左右方向)で位置調整可能な可動金具14と、可動金具14の位置調整のために固定金具13を介して可動金具14に当接する1本の調整ネジ15と、可動金具14の位置調整の後に可動金具14を固定金具13に対して固定するための2本の固定ネジ16と、を備えて構成されている(特に、図5参照)。
【0023】
また、図4に示されるように、支持部材11を構成する可動金具14は、扉101と固定金具13とによって側面方向の周囲を囲まれて配置されており、さらに、図5に示されるように、可動金具14が固定金具13と扉101との間の隙間で左右方向にスムーズに移動するために、可動金具14には、固定金具13に形成される案内面13bによって摺接案内される被案内面14bが形成されている。また、可動金具14には、固定金具13に形成された案内孔13aに挿通されて可動金具14の側面に螺合固定される案内ボルト14aが設置されている。
【0024】
したがって、固定金具13に螺合する1本の調整ネジ15のねじ込み量を調整することで固定金具13に対する可動金具14の位置を調整し、その後、2本の固定ネジ16と案内ボルト14aをねじ込んで可動金具14に螺合させることで、可動金具14の位置調整の後に可動金具14を固定金具13に対して固定することが可能となる。また、固定前の位置調整のとき、1本の調整ネジ15は、その先端を可動金具14の側面に当接させることで可動金具14の左右方向での位置移動を行うが、扉101と固定金具13とによって側面方向の周囲を囲まれた可動金具14は、扉101と固定金具13とが可動金具14に及ぼす案内作用に加えて、案内孔13aと案内ボルト14aとが発揮する案内作用も加わって、左右方向でのスムーズな位置移動が可能となっている。
【0025】
なお、図4によく示されるように、固定金具13と可動金具14の間には、L字形状に形成された板材からなるスペーサ17が介在されている。このスペーサ17を取り外したり、あるいは厚さを変更したりすることで、固定金具13に対する可動金具14の前後方向の位置を調整することができる。
【0026】
また、可動金具14には、軸案内孔12が形成されている。そして、軸案内孔12の上方にはピボット軸21が配置されており、軸案内孔12の下方にはコイルバネ31が配置されている。
【0027】
コイルバネ31は、下方側が軸案内孔12の下方側の孔内面で支持されており、上方側がピボット軸21の下方側の軸端部に当接しているので、コイルバネ31が有する弾性力は、常にピボット軸21を上方に向けて押圧するように作用する。つまり、コイルバネ31は、ピボット軸21の下方側の軸端を付勢することで、ピボット軸21の上方側の軸端を軸案内孔12の上方の開口から突出する方向に付勢する弾性力を及ぼすように構成されている。
【0028】
さらに、軸案内孔12の下方側の開口には、阻止手段41が設置されている。この阻止手段41は、軸案内孔12の下方側の開口に形成されたネジ溝に螺合可能なネジ部41aを備えるとともに、上方に延びて形成された円筒形状部41bを有している。阻止手段41のネジ部41aを軸案内孔12の下方側の開口に形成されたネジ溝に螺合させることで、阻止手段41が軸案内孔12の内部で固定されることになるが、このとき上方に延びて形成された円筒形状部41bの上端部の位置がピボット軸21の下方側への移動限界となるので、ピボット軸21は円筒形状部41bの上端部の位置で下方側への位置移動を制限されることとなる。つまり、阻止手段41は、軸案内孔12の下方側の開口から挿入して可動金具14に固定されることで、ピボット軸21の軸案内孔12への没入を該ピボット軸21の下方側の軸端に対する当接によって阻止することが可能となる。
【0029】
さらに、ピボット軸21の下方には、ピボット軸21を軸方向に移動操作するための小径軸形状をした操作手段としての操作軸51が形成されている。なお、本実施形態では、ピボット軸21と操作軸51とは、一体の部材として形成されている。操作軸51は、ピボット軸21の下方側の軸端から軸案内孔12の下方側の開口に向けて延設されるとともに、阻止手段41を構成する円筒形状部41bの中心部に形成される挿通孔41cに挿通される部材である。
【0030】
操作軸51の下方端部には、操作性の向上と阻止手段41が下方側に落下することを防止するために、つまみ部としての止めナット51aが設置されている。かかる構成の操作軸51を下方に引くと、コイルバネ31が有する弾性力に抗する力が加わるので、ピボット軸21は軸案内孔12の内部に向けて没入移動することになる。このとき、阻止手段41が軸案内孔12の下方側の開口で固定されることで円筒形状部41bの上端部の位置がピボット軸21の下方側での移動限界となる。一方、操作軸51を下方に引くことを止めると、コイルバネ31が有する弾性力がピボット軸21に作用するので、ピボット軸21は、軸案内孔12の上方側の開口から上方の軸端部をさらに突出するように移動することとなる。
【0031】
なお、上述した構成を備える本実施形態のピボットヒンジ10においては、支持部材11(軸案内孔12を形成した可動金具14)の反ピボット軸突出側(つまり下方側)に、操作手段としての操作軸51と阻止手段41を配置した。したがって、本実施形態によれば、従来技術のように操作手段や阻止手段が支持部材の側方に位置して他の部材と干渉することを回避することができる。したがって、本実施形態に係るピボットヒンジ10によれば、扉101の内側の空間をより好適に活用できるという効果を得ることができる。
【0032】
また、上述した構成を備える本実施形態のピボットヒンジ10においては、特に図4にて示すように、操作手段としての操作軸51と阻止手段41を、支持部材11(軸案内孔12を形成した可動金具14)の反ピボット軸突出側からピボット軸21の軸方向で見たときに、操作手段としての操作軸51と阻止手段41が支持部材11(特に、軸案内孔12を形成した可動金具14)の輪郭内に収まるように構成されている。したがって、本実施形態に係るピボットヒンジ10によれば、従来技術に比べて場所を取らない非常にコンパクトなピボットヒンジを提供することができる。
【0033】
以上、本実施形態に係るピボットヒンジ10の具体的構成を説明した。次に、特に図6および図7を参照して、本実施形態に係るピボットヒンジ10の動作説明を行う。
【0034】
まず、扉101を扉枠100に取り付けるときには、阻止手段41の軸案内孔12の下方側の開口への固定を解除した上で、コイルバネ31の付勢力に抗した引っ張り力である下方側への力を操作軸51に加えることでピボット軸21の上方側の軸端を軸案内孔12の上方の開口から没入させ、図6中の分図(a)の状態とする。
【0035】
続いて、扉101を扉枠100に嵌め込んだ状態で操作軸51への下方側への引っ張り力を解除することで、コイルバネ31の付勢力によりピボット軸21の上方側の軸端が軸案内孔12の上方の開口から突出し、当該ピボット軸21の上方側の軸端が扉枠100に形成された軸穴100aに嵌入され、図6中の分図(b)の状態となる。
【0036】
図6中の分図(b)の状態から、阻止手段41のネジ部41aを軸案内孔12の下方側の開口に螺合して阻止手段41を可動金具14に固定することで、ピボット軸21の上下方向での移動が規制され、扉枠100に形成された軸穴100aへのピボット軸21の嵌入状態が維持される。つまり、図6中の分図(c)の状態となる。かかる状態の実現によって、本実施形態に係るピボットヒンジ10は、扉枠100に取り付けられる扉101を回動自在に支持することができる。
【0037】
一方、扉101を扉枠100から取り外すときには、図6中の分図(c)の状態から、阻止手段41の軸案内孔12の下方側の開口への固定を解除して図6中の分図(b)の状態とし、さらに、コイルバネ31の付勢力に抗した引っ張り力である下方側への力を操作軸51に加えることでピボット軸21の上方側の軸端を軸案内孔12の上方の開口から没入させて図6中の分図(a)の状態とすることで、扉101を扉枠100から取り外すことができる。
【0038】
また、本実施形態に係るピボットヒンジ10では、支持部材11を構成する固定金具13と可動金具14との位置を変更することで、扉101に対するピボット軸21の位置を変更することが可能となっている。すなわち、図7中の分図(a)で示すように、固定金具13と可動金具14との位置を左右方向で遠ざける方向に移動させることもできるし、図7中の分図(b)で示すように、固定金具13と可動金具14との位置を左右方向で近づける方向に移動させることもできる。
【0039】
例えば、図7中の分図(b)で示す状態から、図7中の分図(a)で示す状態に変更する場合には、2本の固定ネジ16および案内ボルト14aを緩めた状態にしておき、固定金具13に螺合する1本の調整ネジ15をねじ込むと、このねじ込み量に応じて可動金具14が固定金具13に対して遠ざかる方向に移動する。そして、固定金具13に対する可動金具14の位置を調整した後、2本の固定ネジ16および案内ボルト14aをねじ込んで可動金具14に螺合させることで、可動金具14の位置調整の後に可動金具14を固定金具13に対して固定することができる。この様な操作を行うことで、図7中の分図(b)で示す状態から、図7中の分図(a)で示す状態に変更することが可能となる。
【0040】
なお、本実施形態の調整ネジ15は、可動金具14に当接させることで固定金具13に対する可動金具14の位置調整を行っていたが、調整ネジ15による可動金具14の位置移動手段は当接に限られるものではなく、可動金具14にネジ穴を設けておき、このネジ穴に調整ネジ15を螺合させることによっても実現することが可能である。
【0041】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0042】
例えば、上述した実施形態では、ピボット軸21と操作手段としての操作軸51とが、一体の部材として形成されていた。しかしながら、本発明に係るピボットヒンジでは、ピボット軸と操作手段を別体の部材として構成することができる。例えば、その具体例を図8に示す。ここで、図8は、本発明が取り得る他の実施形態例を示す図であり、本実施形態の図5に対応した断面図である。なお、図8では、上述した実施形態で説明した部材と同一又は類似する部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
図8において示される他の実施形態例では、操作手段としての操作軸151は、阻止手段41の中心部に形成される挿通孔41cに対して反ピボット軸側(下方側)から挿通し、ピボット軸121の下方側の軸端に形成されたネジ穴121aに螺合されるネジ部151bを有して構成されている。図8で示す実施形態例の場合、上述した本実施形態と比較して部品点数が増加するが、製造コストや組立性の点で有利な場合がある。また、この実施形態例の場合のつまみ部151aは、操作軸151と一体の部材として構成されているが、本実施形態の場合のように、操作軸151とつまみ部151aを別部材として構成することも可能である。さらに、操作軸151を、ピボット軸121のネジ穴121aへの螺合を解除して取り外しておけば、誤って操作軸151を操作することによるピボット軸121の没入を防止することができる。すなわち、扉101が意図せず外れてしまうことを確実に防止することができる。
【0044】
また例えば、上述した実施形態では、支持部材11が固定金具13と可動金具14とによって構成される場合の構成例を示したが、本発明の支持部材については、1つの部材として構成することが可能である。例えば、その具体例を図9に示す。ここで、図9は、本発明が取り得る更に他の実施形態例を示す図であり、図中の分図(a)は本実施形態の図2に対応したピボットヒンジの背面図であり、分図(b)は分図(a)中の符号C矢視を示す部分底面図である。なお、図9では、上述した実施形態で説明した部材と同一又は類似する部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
図9において示される更に他の実施形態例では、支持部材211が1つの部材で構成されており、この支持部材211に対して軸案内孔12やピボット軸21、コイルバネ31が組み込まれるとともに、阻止手段41や操作軸51等の部材が取り付けられている。さらに、この実施形態例の場合、支持部材211が扉101に溶接固定されており、ピボット軸21を扉101に対して位置移動することが不可能となっている。図9で示す実施形態例の場合、上述した実施形態に比べて非常にシンプルで簡易な構成となっており、製造コストを低減する効果を得ることができるので、例えば、扉101の扉枠100に対する取り付け精度が要求されない仕様等の場合には、この実施形態例の構成を採用することに優位性がある。
【0046】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0047】
10 ピボットヒンジ、11 支持部材、12 軸案内孔、13 固定金具、13a 案内孔、13b 案内面、14 可動金具、14a 案内ボルト、14b 被案内面、15 調整ネジ、16 固定ネジ、17 スペーサ、21 ピボット軸、31 コイルバネ(弾性部材)、41 阻止手段、41a ネジ部、41b 円筒形状部、41c 挿通孔、51 操作軸(操作手段)、51a 止めナット(つまみ部)、100 扉枠、100a 軸穴、100b 固定軸、101 扉、102 軸穴、103 ネジ、121 ピボット軸、121a ネジ穴、151 操作軸(操作手段)、151a つまみ部、151b ネジ部、211 支持部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9