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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】配管支持具及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/12 20060101AFI20230905BHJP
   F16L 3/133 20060101ALI20230905BHJP
   F16L 3/14 20060101ALI20230905BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20230905BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
F16L3/12 A
F16L3/133
F16L3/14 Z
B29C45/14
B29C45/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020106528
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022001777
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】508333228
【氏名又は名称】AWJ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099704
【弁理士】
【氏名又は名称】久寶 聡博
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 聡
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06943299(US,B1)
【文献】特開2011-007256(JP,A)
【文献】特開2012-057737(JP,A)
【文献】実公昭53-033229(JP,Y1)
【文献】実開昭47-025261(JP,U)
【文献】登録実用新案第3050795(JP,U)
【文献】特開平11-002368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/12
F16L 3/133
F16L 3/14
B29C 45/14
B29C 45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面外方向にかつ環状に湾曲形成された配管挿通部及び該配管挿通部の対向端部から放射方向にそれぞれ延設された互いに対向する一対の連結部からなる金属本体を備え、該一対の連結部を所定の連結具を介して天井面若しくは上階床スラブ下面又は壁面に連結することにより、前記配管挿通部の内側空間に挿通された配管を支持できるようになっている配管支持具において、
前記配管挿通部と前記配管との間で荷重伝達が行われるようにそれらの間に配置された樹脂材料からなる荷重伝達手段を備えるとともに、該荷重伝達手段を、内周側において前記配管の材軸を含む断面で凹凸が顕れないように形成されてなる内周側荷重伝達部と、該内周側荷重伝達部との間に前記配管挿通部が挟み込まれる形でかつ該内周側荷重伝達部と一体となるように前記内周側荷重伝達部の外周側に配置されてなる外周側荷重伝達部とで構成したことを特徴とする配管支持具。
【請求項2】
前記樹脂材料を電気絶縁性の樹脂材料とした請求項1記載の配管支持具。
【請求項3】
前記内周側荷重伝達部及び前記外周側荷重伝達部を、それらの幅が前記配管挿通部の幅よりも大きくなるように構成した請求項1又は請求項2記載の配管支持具。
【請求項4】
前記配管挿通部が嵌め込まれる嵌合溝を前記内周側荷重伝達部の外周面に設けた請求項3記載の配管支持具。
【請求項5】
前記内周側荷重伝達部の内周側であって、前記一対の連結部の反対側に位置する部位に前記配管の材軸方向に沿って延びる切り欠きを設けた請求項1乃至請求項4のいずれか一記載の配管支持具。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一記載の配管支持具を製造する方法であって、前記内周側荷重伝達部を先行形成し、次いで、該内周側荷重伝達部をその外周面に前記配管挿通部が当接された状態で金型内に配置し、しかる後、該金型内に樹脂材料を射出することによって前記外周側荷重伝達部を形成することを特徴とする配管支持具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種配管を吊りバンドあるいは立てバンドといった形で支持する際に用いられる配管支持具及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和設備工事や衛生設備工事においては、用途や目的に応じてさまざまな配管が用いられており、材質で分類すると概ね金属管と樹脂管に大別される。
【0003】
例えば、給水管には、ポリエチレンや硬質ポリ塩化ビニルで内面を被覆したライニング鋼管や、硬質ポリ塩化ビニル管、ポリエチレン管などの樹脂管が用いられており、給湯管には、ステンレス鋼管や耐熱性硬質ポリ塩化ビニルライニング鋼管が用いられている。
【0004】
これらの配管は、横走り管であれば、吊りバンドで天井や上階スラブから吊持し、立ち上がり管であれば、立てバンドで壁に固定することで建物内に設置されるが、これら吊りバンドあるいは立てバンドといった配管支持具は、帯状の鋼材を面外方向に環状に湾曲加工することでその内側に配管が挿通できるように構成された配管挿通部と、該配管挿通部の各端部から互いに対向するように放射方向にそれぞれ延設された一対の連結部とからなる金属本体で構成してあり、該一対の連結部の間に天井面や上階床スラブ下面に固定された連結具の下端あるいは壁面に固定された連結具の先端を挟み込むとともに、上述した配管を配管挿通部に挿通した上、一対の連結部にボルトを挿通して締め付けることで、該配管を天井や上階床スラブから吊持し、あるいは壁に固定できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-57737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、帯状の鋼材からなる配管挿通部には配管の自重が鉛直荷重として常時作用し、あるいは地震時慣性力が水平荷重として作用する一方、それらの反力が配管の周面に作用するが、配管支持具の製造コストを抑えるためには、鋼材の幅を25mm程度に制限せざるを得ない。
【0007】
そのため、配管挿通部からの反力の作用面が配管の狭い範囲に集中し、その結果、腐食等によって配管の強度が低下している場合には、該配管が破断するおそれがある。
【0008】
また、配管挿通部が帯状の鋼材を面外に湾曲加工して構成される関係上、該配管挿通部には、いわゆるスプリングバックを防止するための補剛リブが周方向に設けられるが、その凹凸は、外周側では突条として、内周側では溝として顕れるので、荷重作用面がさらに減少し、上述した応力集中がより顕著になる。
【0009】
本出願人は、かかる問題を解決すべく、従来の配管支持具である金属本体の配管挿通部と配管との間で荷重伝達が行われるように樹脂材料からなる荷重伝達手段を配置するとともに、該荷重伝達手段を、その内周側において、配管の材軸を含む断面(以下、縦断面)で凹凸が顕れないように、換言すれば縦断面でみたときに平坦になるように形成してなる配管支持具を開発した。
【0010】
かかる配管支持具によれば、荷重伝達手段は、配管挿通部の横断面形状とは無関係に、十分な作用面積をもってその内周側で配管の周面と当接し、該荷重伝達手段からの力、すなわち配管の自重や配管の地震時慣性力に対する反力は、分散した状態で配管に作用することとなり、かくして配管に生じるせん断応力が小さくなり、配管への応力集中、ひいてはそれに起因する破断を未然に防止することが可能となる。
【0011】
しかしながら、かかる配管支持具を、従来の配管支持具である金属本体を埋設物とするインサート成形によって製造しようとすると、金属本体が帯状の鋼材を面外に湾曲加工されたものであるために、樹脂が注入されると、その注入圧力で金型に配置された金属本体が撓んで所定の設定位置からずれてしまい、結果として金属本体が荷重伝達手段の厚み中心に位置決めされず、配管への応力集中を防止するという本来の作用効果が発揮されない場合があるという問題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、射出成形を行う際、金型に配置された金属本体が、注入された樹脂の圧力によって所定の設定位置からずれてしまうのを防止することが可能な配管支持具及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る配管支持具は請求項1に記載したように、面外方向にかつ環状に湾曲形成された配管挿通部及び該配管挿通部の対向端部から放射方向にそれぞれ延設された互いに対向する一対の連結部からなる金属本体を備え、該一対の連結部を所定の連結具を介して天井面若しくは上階床スラブ下面又は壁面に連結することにより、前記配管挿通部の内側空間に挿通された配管を支持できるようになっている配管支持具において、
前記配管挿通部と前記配管との間で荷重伝達が行われるようにそれらの間に配置された樹脂材料からなる荷重伝達手段を備えるとともに、該荷重伝達手段を、内周側において前記配管の材軸を含む断面で凹凸が顕れないように形成されてなる内周側荷重伝達部と、該内周側荷重伝達部との間に前記配管挿通部が挟み込まれる形でかつ該内周側荷重伝達部と一体となるように前記内周側荷重伝達部の外周側に配置されてなる外周側荷重伝達部とで構成したものである。
また、本発明に係る配管支持具は、前記樹脂材料を電気絶縁性の樹脂材料としたものである。
【0014】
また、本発明に係る配管支持具は、前記内周側荷重伝達部及び前記外周側荷重伝達部を、それらの幅が前記配管挿通部の幅よりも大きくなるように構成したものである。
【0015】
また、本発明に係る配管支持具は、前記配管挿通部が嵌め込まれる嵌合溝を前記内周側荷重伝達部の外周面に設けたものである。
【0016】
また、本発明に係る配管支持具は、前記内周側荷重伝達部の内周側であって、前記一対の連結部の反対側に位置する部位に前記配管の材軸方向に沿って延びる切り欠きを設けたものである。
【0017】
また、本発明に係る配管支持具の製造方法は請求項6に記載したように、請求項1乃至請求項4のいずれか一記載の配管支持具を製造する方法であって、前記内周側荷重伝達部を先行形成し、次いで、該内周側荷重伝達部をその外周面に前記配管挿通部が当接された状態で金型内に配置し、しかる後、該金型内に樹脂材料を射出することによって前記外周側荷重伝達部を形成するものである。
【0018】
本発明に係る配管支持具においては、従来と同様、面外方向にかつ環状に湾曲形成された配管挿通部及び該配管挿通部の対向端部から放射方向にそれぞれ延設された互いに対向する一対の連結部からなる金属本体を備えるが、配管挿通部には、該配管挿通部と配管との間で荷重伝達が行われるように樹脂材料からなる荷重伝達手段を配置してあるとともに、該荷重伝達手段は、内周側において配管の材軸を含む断面(以下、縦断面)で凹凸が顕れないように、換言すれば縦断面でみたときに平坦になるように形成されてなる内周側荷重伝達部と、該内周側荷重伝達部との間に配管挿通部が挟み込まれる形でかつ該内周側荷重伝達部と一体となるように内周側荷重伝達部の外周側に配置されてなる外周側荷重伝達部とで構成してある。
【0019】
このようにすると、荷重伝達手段は、配管挿通部の横断面形状とは無関係に、十分な作用面積をもってその内周側で配管の周面と当接し、該荷重伝達手段からの力、すなわち配管の自重や配管の地震時慣性力に対する反力は、分散した状態で配管に作用することとなり、かくして配管に生じるせん断応力が小さくなり、配管への応力集中、ひいてはそれに起因する破断が未然に防止される。
【0020】
加えて、荷重伝達手段を上述したように、内周側荷重伝達部及び外周側荷重伝達部からなる二層構造とするとともに、それらの間に金属本体の配管挿通部が挟み込まれるようにしたので、製造の際、内周側荷重伝達部を先行形成し、これをその外周面に配管挿通部が当接された状態で金型内に配置し、しかる後、残りの外周側荷重伝達部を射出成形することにより、配管挿通部に注入圧力が作用しても、その圧力は、先行形成されている内周側荷重伝達部を介して金型に伝達し該金型で支持されるため、円環状をなす配管挿通部が径方向に撓んだり変形したりするおそれがなくなる。
【0021】
内周側荷重伝達部及び外周側荷重伝達部は、荷重伝達手段として配管と配管挿通部との間の荷重伝達を行うことができるように構成される限り、具体的な形成材料は任意であるが、変形性能に富んだ樹脂材料、特に熱可塑性エラストマーを形成材料として採用するのが望ましい。
【0022】
内周側荷重伝達部及び外周側荷重伝達部は、それらの間に配管挿通部が挟み込まれる形で互いに一体となるように配置された構成を必須構成要件とするが、必ずしも連続形成される必要はなく、配管挿通部を介して一体となっていてもかまわない。
【0023】
すなわち、内周側荷重伝達部及び外周側荷重伝達部は、概ね2つの構成から選択することが可能であって、第1の構成は、内周側荷重伝達部、外周側荷重伝達部及びそれらに挟み込まれる金属本体の配管挿通部が概ね同等の幅を有する形であって、配管挿通部を併せれば、外観上、三層構造となる構成、第2の構成は、内周側荷重伝達部及び外周側荷重伝達部の幅が配管挿通部の幅よりも大きく、配管挿通部が埋設される形となるため、外観上は二層構造となる構成となるが、第2の構成を採用した場合、配管挿通部が露出しない形となるめ、防錆に優れた構成となる。
【0024】
なお、第1の構成においては、内周側荷重伝達部と外周側荷重伝達部とが互いに当接しないため、内周側荷重伝達部が配管挿通部の一方の面に、外周側荷重伝達部が他方の面にそれぞれ接着あるいは溶着される必要があるが、第2の構成においては、内周側荷重伝達部と外周側荷重伝達部とがそれらの一部で互いに当接するため、該当接部位で互いに接着あるいは溶着されることで、配管挿通部との接着あるいは溶着は不要である。
【0025】
ここで、第2の構成において、配管挿通部が嵌め込まれる嵌合溝を内周側荷重伝達部の外周面に設けたならば、製造の際、樹脂材料の注入圧力によって金属本体の配管挿通部が配管材軸方向へ位置ずれを起こすのを防止することが可能となる。
【0026】
内周側荷重伝達部は、縦断面でその内周側に凹凸が顕れないように形成されていれば足りるものであって、配管の材軸に直交する断面(以下、横断面)については、内周側に凹凸が顕れてもかまわない。
【0027】
すなわち、金属本体に補剛リブが設けられている従来の配管支持具において、補剛リブの凹凸が内周側では溝として顕れ、その溝の分だけ、配管に当接可能な配管挿通部の領域が狭くなることからわかるように、周方向に沿った溝、つまり縦断面において内周側に顕れる凹部は、周方向に沿っているために長くなりがちであり、荷重作用面の面積減少への影響が大きく、それゆえ、縦断面において内周側に凹凸が顕れる構成は本発明では許容されないが、横断面において内周側に顕れる凹部は、配管材軸方向に沿っているがゆえに長さが短くなるため、荷重作用面の面積減少への影響はわずかであり、本発明ではこれが許容される。
【0028】
ここで、横断面においても内周側に凹凸が顕れないように形成されている構成が典型例となり、かかる場合には、内周側荷重伝達部を周方向に沿って展開した状態での輪郭線(周縁)で囲まれた領域の面積が、配管の周面に当接する実際の面積と一致するため、荷重作用面積が最大となり、配管に生じるせん断応力を最小にすることが可能となるが、これに対し、内周側荷重伝達部の内周側であって、一対の連結部の反対側に位置する部位に配管の材軸方向に沿って延びる切り欠きを設けたならば、断面欠損部やヒンジ部が設けられた箇所での金属本体の露出を回避しつつ、配管挿通部の開閉操作を容易にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本実施形態に係る配管支持具1の図であり、(a)は全体斜視図、(b)は荷重伝達手段を省略して該荷重伝達手段に埋設されている金属本体のみを示した全体斜視図。
図2】荷重伝達手段を構成する内周側荷重伝達部及び外周側荷重伝達部を示した分解斜視図であり、(a)は内周側荷重伝達部の全体斜視図、(b)は金属本体との相対位置関係がわかるように内周側荷重伝達部を示した全体斜視図、(c)は金属本体との相対位置関係がわかるように外周側荷重伝達部を示した全体斜視図。
図3】本実施形態に係る配管支持具1の図であり、(a)は側面図、(b)はA-A線方向から見た正面図。
図4】同じく本実施形態に係る配管支持具1の図であり、(a)はB-B線に沿う断面図、(b)はC-C線に沿う断面図。
図5】本実施形態に係る配管支持具1の作用を説明した模式図。
図6】配管支持具から配管に作用する荷重伝達状況を示した図であり、(a)及び(b)は、本実施形態に係る配管支持具1の作用を、(c)及び(d)は従来構成に係る配管支持具の作用をそれぞれ示した断面図。
図7】変形例に係る配管支持具1cを示した全体斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る配管支持具の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0031】
図1は、本実施形態に係る配管支持具を示した全体斜視図、図2は、荷重伝達手段を構成する内周側荷重伝達部と外周側荷重伝達部とを金属本体との相対位置関係がわかる形で示した全体分解斜視図、図3(a),(b)はそれぞれ、本実施形態に係る配管支持具の側面図、A-A線矢視図(正面図)、図4(a)、(b)はそれぞれ、本実施形態に係る配管支持具のB-B線断面図及びC-C線断面図である。
【0032】
これらの図でわかるように、本実施形態に係る配管支持具1は、いわゆる吊りバンドと称されるものであって、天井又は上階床スラブの下方に横走り管として配置されるべき配管6を吊持するようになっており、金属本体2と該金属本体が埋設された樹脂材料からなる荷重伝達手段としての荷重伝達部3とを備える。
【0033】
金属本体2は、帯板状の鋼材を用いて構成されたものであって、面外方向にかつ環状に湾曲形成された配管挿通部4及び該配管挿通部の対向端部から放射方向にそれぞれ延設された互いに対向する一対の連結部5,5からなり、該一対の連結部を、該連結部に形成されたボルト挿通孔7,7を利用しつつ、吊りボルト等の連結具(図示せず)を介して天井面又は上階床スラブ下面に連結することにより、配管挿通部4の内側空間に挿通された配管6を吊持できるようになっている。
【0034】
金属本体2の配管挿通部4には、いわゆるスプリングバックを防止するための補剛リブ8が周方向に設けられており、その凹凸は、外周側では突条9として、内周側では溝10として顕れる。
【0035】
また、配管挿通部4のうち、一対の連結部5,5の反対側に位置する部位、すなわち最下端近傍位置には、開口からなる断面欠損部11を設けてあり、図3(b)に示す矢印方向に沿った配管挿通部4の開閉操作を容易に行うことができるようになっている。
【0036】
荷重伝達部3は、配管挿通部4と配管6との間で荷重伝達が行われるようになっており、内周側荷重伝達部3a及び外周側荷重伝達部3bで構成してある。
【0037】
内周側荷重伝達部3aは、全体として環状あるいは筒状をなし、その内周側において配管6の材軸31を含む断面(以下、縦断面)で凹凸が顕れないように、換言すれば縦断面でみたときに平坦になるように形成されていて、補強リブ8が溝10として内周側に顕れないように形成してあるとともに、材軸31に直交する断面(以下、横断面)においても、図1(a)に示すように、他の凹凸が内周側に顕れないように、換言すれば、縦断面及び横断面のいずれの方向についても内周側が平坦になるように構成してある。
【0038】
ここで、内周側荷重伝達部3aの内周側を平坦になるように、あるいは凹凸が顕れないように形成するとは、図5に示したように、該内周側荷重伝達部を内周側からみたときの周縁で囲まれた領域、本実施形態では、内周側荷重伝達部3aの内周面のうち、配管6の周面に当接する面積Sが、周縁で囲まれた短冊状の四角形の面積S0と一致するように形成すると定義することが可能であり、両方向で凹凸がなく平坦面であれば、図5(a)に示すように、S=S0となるが、凹凸があれば、その分、当接面積が減少するため、図5(b)に示すように、S<S0となる。
【0039】
一方、外周側荷重伝達部3bは、同じく全体として環状あるいは筒状をなし、内周側荷重伝達部3aとの間に金属本体2の配管挿通部4が挟み込まれる形でかつ該内周側荷重伝達部と一体となるように内周側荷重伝達部3aの外周側に配置してある。
【0040】
なお、外周側荷重伝達部3bの外周側には、断面欠損部11が設けられた位置に相当する部位を除き、補剛リブ8の突条9を覆うべく、周方向に沿った凸部32を設けてある。
【0041】
内周側荷重伝達部3a及び外周側荷重伝達部3bは、図4でよくわかるように、それらの幅が配管挿通部4の幅よりも大きくなるように構成してあり、配管挿通部4の両縁が露出しないように、換言すれば配管挿通部4が荷重伝達部3に埋設されるように形成してあるとともに、内周側荷重伝達部3aの外周面には、配管挿通部4が嵌め込まれる嵌合溝21を設けてある。
【0042】
これら内周側荷重伝達部3a及び外周側荷重伝達部3bは、変形性能に富んだ樹脂材料、特に熱可塑性エラストマーを形成材料として採用するのが望ましい。
【0043】
本実施形態に係る配管支持具1においては、従来と同様、面外方向にかつ環状に湾曲形成された配管挿通部4及び該配管挿通部の対向端部から放射方向にそれぞれ延設された互いに対向する一対の連結部5,5からなる金属本体2を備えるが、配管挿通部4には、該配管挿通部と配管6との間で荷重伝達が行われるように樹脂材料からなる荷重伝達部3を配置してあるとともに、該荷重伝達部の内周側を構成する内周側荷重伝達部3aは、上記縦断面及び横断面で凹凸が顕れないように形成してある。
【0044】
図6(a)及び(b)は、配管挿通部4から荷重伝達部3を介して配管6に作用する反力載荷状況を示したものであって、同図(a)は最下端位置近傍、同図(b)は該最下端位置近傍から上方に若干外れた位置でのものであり、比較のため、ディッピングによってPVCからなる被覆材51を配管挿通部4に被覆した従来構成を同様の位置で同図(c)及び(d)に示してある。
【0045】
これらの図でわかるように、従来構成では、補強リブ8が溝10の形でそのまま配管挿通部4の内周側に顕れるため、該溝の面積分だけ、配管6への荷重作用面積は小さくなるが、本発明に係る配管支持具1においては、溝10を埋めるように荷重伝達部3が拡がっていて、その内周側が両方向で平坦に形成されているため、配管6への荷重作用面積は大きくなる。
【0046】
本実施形態に係る配管支持具1を製造するには、まず、内周側荷重伝達部3aを先行形成する。内周側荷重伝達部3aは、上述したように変形性能に富んだ熱可塑性エラストマーで形成するのが望ましい。
【0047】
次に、内周側荷重伝達部3aをその外周面に配管挿通部4が当接された状態で(図2(b)参照)金型内に配置する。
【0048】
次に、内周側荷重伝達部3aと一体になり、なおかつ配管挿通部4が埋設されるように外周側荷重伝達部3bを射出成形で形成する。
【0049】
外周側荷重伝達部3bは内周側荷重伝達部3aと同様、変形性能に富んだ熱可塑性エラストマーで形成するのが望ましい。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る配管支持具1によれば、配管挿通部4に、該配管挿通部と配管6との間で荷重伝達が行われるように樹脂材料からなる荷重伝達部3を配置するとともに、該荷重伝達部を、内周側の縦断面で凹凸が顕れないように、換言すれば縦断面でみたときに平坦になるように形成されてなる内周側荷重伝達部3aと、該内周側荷重伝達部との間に配管挿通部4が挟み込まれる形でかつ該内周側荷重伝達部と一体となるように内周側荷重伝達部3aの外周側に配置されてなる外周側荷重伝達部3bとで構成したので、荷重伝達部3は、配管挿通部4の横断面形状とは無関係に、十分な作用面積をもってその内周側荷重伝達部3aの内周側で配管6の周面と当接し、該内周側荷重伝達部からの力、すなわち配管6の自重や配管6の地震時慣性力に対する反力は、分散した状態で配管6に作用することとなり、かくして配管6に生じるせん断応力が小さくなり、配管6への応力集中、ひいてはそれに起因する破断を未然に防止することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態に係る配管支持具1によれば、荷重伝達部3のうち、内周側荷重伝達部3aの内周側において上記縦断面及び横断面で凹凸が顕れないように構成したので、内周側荷重伝達部3aを周方向に沿って展開した状態での輪郭線(周縁)で囲まれた領域の面積が、配管6の周面に当接する実際の面積と一致する。
【0052】
したがって、荷重作用面積が最大となり、配管6に生じるせん断応力を最小にすることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態に係る配管支持具及びその製造方法によれば、上述したように、荷重伝達部3を内周側荷重伝達部3a及び外周側荷重伝達部3bからなる二層構造とするとともに、それらの間に金属本体2の配管挿通部4が挟み込まれるように構成し、製造の際には、内周側荷重伝達部3aを先行形成し、これをその外周面に配管挿通部4が当接された状態で金型内に配置してから、該金型内に樹脂材料を注入することで、残りの外周側荷重伝達部3cを射出成形するようにしたので、配管挿通部4に注入圧力が作用しても、その圧力は、先行形成されている内周側荷重伝達部3aを介して金型に伝達し該金型で支持される。
【0054】
そのため、円環状をなす配管挿通部4が径方向に撓んだり変形したりするおそれがなくなり、かくして金属本体2を荷重伝達部3の厚み中心に正確に位置決めすることが可能となり、配管6への応力集中を防止するという本来の作用効果が確実に発揮される。
【0055】
なお、荷重伝達部3を電気絶縁材で構成することで、配管6が金属管である場合の該配管と金属本体2との接触を回避して電食防止を図ることができる。
【0056】
また、本実施形態に係る配管支持具及びその製造方法によれば、内周側荷重伝達部3aの外周面に嵌合溝21を設けた構成とし、製造の際には、嵌合溝21に配管挿通部4を嵌め込むようにしたので、樹脂材料の注入圧力によって金属本体2の配管挿通部4が配管材軸方向へ位置ずれを起こすのを防止することが可能となる。
【0057】
本実施形態では、荷重伝達部3を構成する内周側荷重伝達部3aを、その内周側において上記縦断面及び横断面で凹凸が顕れないように構成したが、本発明の荷重伝達手段は、縦断面でその内周側に凹凸が顕れないように形成されていれば足りるものであって、横断面については、内周側に凹凸が顕れてもかまわない。
【0058】
図7は、このような変形例に係る配管支持具1cを示した全体斜視図であり、一対の連結部5,5の反対側に位置する部位に配管6の材軸方向に沿って延びる切り欠き71を内周側に設けてなる内周側荷重伝達部3a′及び外周側荷重伝達部3bとからなる荷重伝達部3cで本発明の荷重伝達手段を構成してある。
【0059】
かかる構成によれば、断面欠損部11が設けられた箇所での金属本体2の露出を回避しつつ、配管挿通部4の開閉操作を容易にすることが可能となる。
【0060】
なお、本変形例では、横断面において内周側に凹凸が切り欠き71として顕れることになるが、配管材軸方向に沿っているがゆえに長さが短くなるため、荷重作用面の面積減少への影響はわずかである。
【符号の説明】
【0061】
1,1c 配管支持具
2 金属本体
3,3c 荷重伝達部(荷重伝達手段)
3a 内周側荷重伝達部
3b 外周側荷重伝達部
4 配管挿通部
5,5 一対の連結部
6 配管
8 補剛リブ
10 溝
11 断面欠損部
21 嵌合溝
31 配管6の材軸
71 切り欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7