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特許7343453配列に基づいた遺伝子検査の解釈および報告のための方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】配列に基づいた遺伝子検査の解釈および報告のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20230905BHJP
   G16H 50/70 20180101ALI20230905BHJP
【FI】
G16H10/00
G16H50/70
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020122812
(22)【出願日】2020-07-17
(62)【分割の表示】P 2017521064の分割
【原出願日】2015-06-18
(65)【公開番号】P2020184371
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2020-08-14
(31)【優先権主張番号】14/460,568
(32)【優先日】2014-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/319,986
(32)【優先日】2014-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511236408
【氏名又は名称】キアゲン レッドウッド シティ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QIAGEN REDWOOD CITY, INC.
【住所又は居所原語表記】1001 Marshall Street,Suite 200, Redwood City, California 94063, United States of America
(73)【特許権者】
【識別番号】599072611
【氏名又は名称】キアゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】バセット, ダグラス, イー. ジュニア.
(72)【発明者】
【氏名】リチャーズ, ダニエル, アール.
(72)【発明者】
【氏名】シャッツ, ピアー, エム.
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-041657(JP,A)
【文献】特開2001-188876(JP,A)
【文献】特開2003-108663(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0046054(US,A1)
【文献】国際公開第2014/063080(WO,A1)
【文献】水澤 有香,イオンチャネル病における遺伝子解析-複雑な病態の遺伝的背景を探る,医学のあゆみ Vol245,No9,第245巻,医歯薬出版株式会社,2013年06月01日,pp.719-724
【文献】清水 渉,イオンチャネル病としての不整脈―遺伝子変異と遺伝子多型,医学のあゆみ 第217巻 第6号,第217巻,医歯薬出版株式会社,2006年05月06日,pp.631-635
【文献】佐々木 昭彦,糖尿病と遺伝子異常,医学のあゆみ,第207巻,医歯薬出版株式会社,2003年11月29日,pp.625-629
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨床試験の候補者を決定するためのシステムであって、
メモリと、
前記メモリに結合され、
遺伝子ターゲティング基準を含む臨床試験登録基準をユーザから受信し、
前記臨床試験登録基準に適合する患者に関して、複数の独立エンティティから受信された患者検査情報の知識ベースを検索し、前記知識ベースは、表現型と遺伝的バリアントの修飾因子バリアント情報の組み合わせに基づく遺伝的バリアントとの因果関係を識別するオントロジーデータ構造を含み、前記知識ベースは遺伝的バリアントと修飾因子バリアント情報とを結びつけ、前記修飾因子バリアント情報は前記表現型の重症度を修飾する修飾因子バリアントが存在しうるか否かを識別し、
同意が得られた患者の患者ポータルへのアクセスを監視し、
前記同意が得られた患者と前記患者ポータルとの対話に基づく前記同意が得られた患者に関するデータを取得し、及び
前記同意が得られた患者に関するデータに基づいて、同意が得られた患者を前記臨床試験登録基準と一致させることで、前記臨床試験登録基準に適合する同意が得られた患者が、前記臨床試験登録基準に対応する臨床試験に登録されるように構成された少なくとも1つのプロセッサと
を備えるシステム。
【請求項2】
前記患者検査情報が、患者配列バリアント情報、患者医療記録情報、患者位置情報、検査拠点位置情報、表現型情報、および患者同意情報のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
検索するために、前記少なくとも1つのプロセッサが、患者の電子的医療記録または前記患者の電子的医療記録の派生物のうちの少なくとも1つにアクセスするようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つのプロセッサが、1つまたは複数の患者が検査情報を見ることを可能にする患者ポータルを提供するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記追加情報が、前記患者がまだ生きているかどうか、前記患者の地理的位置、前記患者の臨床試験への関心、または前記患者の追加表現型情報のうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記臨床試験登録基準に適合する1つまたは複数の患者を前記臨床試験に登録するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記患者検査情報の知識ベースの検索から生じた患者が集約されることをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
少なくとも1つのコンピューティングデバイスによって実行されたときに、
遺伝子ターゲティング基準を含む臨床試験登録基準をユーザから受信することと、
前記臨床試験登録基準に適合する患者に関して、複数の独立エンティティから受信された患者検査情報の知識ベースを検索し、前記知識ベースは、表現型と遺伝的バリアントの修飾因子バリアント情報の組み合わせに基づく遺伝的バリアントとの因果関係を識別するオントロジーデータ構造を含み、前記知識ベースは遺伝的バリアントと修飾因子バリアント情報とを結びつけ、前記修飾因子バリアント情報は前記表現型の重症度を修飾する修飾因子バリアントが存在しうるか否かを識別することと、
同意が得られた患者の患者ポータルへのアクセスを監視することと、
前記同意が得られた患者と前記患者ポータルとの対話に基づく前記同意が得られた患者に関するデータを取得すること、及び
前記同意が得られた患者に関するデータに基づいて、同意が得られた患者を前記臨床試験登録基準と一致させることで、前記臨床試験登録基準に適合する同意が得られた患者が、前記臨床試験登録基準に対応する臨床試験に登録されることと
を含む動作を前記少なくとも1つのコンピューティングデバイスに実行させる命令が記憶されている、有形のコンピュータ可読デバイス。
【請求項9】
前記患者検査情報が、患者配列バリアント情報、患者医療記録情報、患者位置情報、検査拠点位置情報、表現型情報、および患者同意情報のうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載のコンピュータ可読デバイス。
【請求項10】
前記検索することが、患者の電子的医療記録または前記患者の電子的医療記録の派生物のうちの少なくとも1つにアクセスすることを含む、請求項8に記載のコンピュータ可読デバイス。
【請求項11】
前記動作が、1つまたは複数の患者が検査情報を見ることを可能にする患者ポータルを提供することをさらに含む、請求項8に記載のコンピュータ可読デバイス。
【請求項12】
前記追加情報が、前記患者がまだ生きているかどうか、前記患者の地理的位置、前記患者の臨床試験への関心、または前記患者の追加表現型情報のうちの少なくとも1つを含む、請求項11に記載のコンピュータ可読デバイス。
【請求項13】
前記動作が、前記臨床試験登録基準に適合する1つまたは複数の患者を臨床試験に登録することをさらに含む、請求項8に記載のコンピュータ可読デバイス。
【請求項14】
前記患者検査情報の知識ベースの検索から生じた患者が集約される動作をさらに含む、請求項8に記載のコンピュータ可読デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ゲノムバリアントを評価し、1つまたは複数のユーザが知識ベースと対話することを可能にするための、システム実施形態、方法実施形態、および/もしくはコンピュータプログラム製品実施形態、ならびに/またはそれらの組み合わせおよび副組み合わせが、本明細書において提供される。
【背景技術】
【0002】
配列に基づいた検査からのDNAバリアントの効率的で正確な解釈は、臨床検査室にとって難題である。この難題は、検査ごとにアッセイされる遺伝子の数の増加、病原性のエビデンスの出現、および臨床表現型が不正確であることにより検査の複雑さを増加させることによって、複雑になる。
【0003】
一般に、一例として、医師が患者の癌性腫瘍のための配列に基づいた検査を指示すると、配列に基づいた検査のワークフローが始まる。配列に基づいた検査は、患者を治療するうえで腫瘍およびどの薬剤が最も効果的であり得るかについて、より良く理解するために使用される。検査が指示された後、試料が収集され、配列データが生成され、その癌試料に対するDNA配列情報が生成される。次いで、1つまたは複数のバリアントを決定するために、インフォマティクスおよび分析が適用される。バリアントとは、参照ゲノムなどの参照と比較して、その患者の試料内に存在するDNAの変化である。臨床遺伝学者は、1つまたは複数のバリアントを調査する。時には、特定の試料の状況における特定のバリアントの知見は、バリアント知見と呼ばれることもある。バリアントを調査する際、遺伝学者は、たとえば、対象となる1つもしくは複数の疾患もしくは表現型の原因である可能性が他のバリアントよりも高いバリアントはどれか、どのバリアントが病原性もしくは病原性の可能性があるか、および/または修飾された薬剤反応もしくは薬剤毒性と関連するバリアントはどれかを評価する。次いで、医師の指示に基づいて、報告が作成される。たとえば、その分野の専門家であるラボ責任者がその検査報告に署名し、結果が医師に返送され、患者の治療を向上させる助けとなる。
【0004】
この一般的なワークフローには、いくつかの欠点がある。第1に、配列結果を解釈するために使用される文献を入手および調査する必要があることが多い。生物医学研究論文および他の文献を入手および調査するために、たとえば、遺伝学者または同僚は、研究論文を取得して読み、観察されたさまざまなバリアントを解釈する。しかしながら、検査が指示されたときと結果が医師に戻されるときとの間のプロセスは、長い時間がかかることがある。そうでなければ、その時間を、患者の治療に費やすことができるであろう。いくつかの例では、その時間遅延によって、患者の疾患治療が成功する確率が実際に低下する。
【0005】
第2に、指示された配列に基づいた検査の数がますます増加していることによる拡張性の問題がある。検査のボリュームが増加するにつれて、検査解釈についていくことがより困難になる。さらに、検査の数が増加するにつれて、バリアントや調査する論文も増加し、それによって、問題が複雑になる。
【0006】
第3に、検査そのものがより大規模でより複雑になっている。検査は、女性を乳癌に罹患しやすくするBRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子などの遺伝子における少数の変異を考慮する単純な検査から、数十、数百、さらには数千もの遺伝子のパネルを考慮する検査に変化しつつある。いくつかの場合では、ラボは、実際に、患者のゲノム内の遺伝子の既知のエクソンのすべてエクソーム全体、さらには患者のゲノム全体をも配列している。そのような配列は、その中に非常に多くの情報を有するので、ビッグデータ問題をもたらし、配列を解釈して配列から関連する洞察を引き出すことが非常に難問になる。
【0007】
一般に、バリアントを研究するための臨床試験を実施することに関心を抱く存在(entity)は、多量のリソースを、患者を見つけて臨床試験に登録することに費やす。たとえば、製薬会社は、特定の遺伝子変化または遺伝子変化群を持つ(または、これを持たない)患者は特定の治療法に対してより好ましく応答する、またはそれに対する応答があまり好ましくないと予想され得ると予想して、それらの変化すなわちバリアントを持つ(または、これを持たない)患者を研究するに関心を抱くことがある。会社は、遺伝子変化の潜在的候補者を検査するいくつかの試験拠点を登録する。所望のバリアントまたはバリアント群を持つ(または、これを持たない)、対象となる表現型を有する患者の希少性に応じて、所望のバリアントまたはバリアント群を実際に持つ(または、これを持たない)比較的少数の候補者を見つけるために多数の候補患者を検査することが必要であり得る。試験に十分な候補者が試験を適切に推進させると識別されない可能性さえある。
【0008】
いくつかの場合では、バリアントに関連する論文が公開されているが、その公開が最近すぎて、対象となるバリアントのための参考文献一覧が要求されるときまでに、キュレーションが行われていない。論文のキュレーションを行うために必要とされる時間の量は、キュレーションに利用可能なリソースに応じて変化し得る。たとえば、必要とされる時間は、少なくとも、人がその論文に目を通すのに必要な長さであり得、多くの場合、それよりもはるかに長いことがある。それにもかわらず、文献は、対象となる特定のバリアントに関する関連情報を含み得る。これらの研究論文が検査の解釈の前にキュレーションが行われていないまたは一部のキュレーションが行われていない場合、患者は、研究論文に含まれ得る有用な情報の恩恵を得られないことがある。いくつかの例では、キュレーションが行われていないコンテンツ中の関連情報は、自然言語処理などのテキスト検索技法を使用して、または対象となる1つもしくは複数のバリアントに関する「ジャストインタイムの」参考文献一覧の作成によって、識別可能である。しかしながら、キュレーションが行われていないコンテンツに関するテキスト検索技法は、キュレーションが行われたコンテンツによって提供される結果と同じくらい関連するまたは有用な結果を提供するのに失敗することが多い。
【0009】
情報そのものに関して、単一ゲノムバリアントの有無が、表現型効果を完全に決定しないことが多い。にもかかわらず、一般に、個々のバリアントすなわち個々のDNA変化のみが評価され、ゲノムの残りの状況の外部にあることが多い。たとえば、米国の国立生物工学情報センターによって稼働されるClinVarデータベースは、特定のDNA変化の臨床上の重要性についての情報を提供する。にもかかわらず、他の遺伝子変化および修飾因子バリアントの状況を認識することなくバリアントを1回限り解釈するこのモードは、あまりにも単純である。
【0010】
遺伝子検査解釈における別の現在の問題は、非常にまれと思われる臨床医が個々の配列に基づいた検査に対するゲノムを解釈し、DNA変化を発見するときに発生する。変化の希少性と、それが特定の疾患に結び付けられている遺伝子において発生したということによって、そのバリアントは、患者が冒されているまれな疾患表現型の原因であると結論付けることに説得力がもたらされる。しかしながら、公共財産に提出された多数のシークエンシング試験は、ヨーロッパ人の子孫の人々に極めて偏っている。その結果、バリアントは、同じ量のシークエンシング調査がなされていない母集団では、あまりまれでない場合であっても、1つの母集団または民族においてまれであるために、原因であると誤分類され得る。
【0011】
一般に、特定のゲノムバリアントについての知識は、常に更新されている。更新は、臨床試験、研究、規制による承認、患者の治療経験、または他の源によってもたらされ得る。しかしながら、これらの更新が治療法の変更または健康状態のモニタリングを示唆するときでさえ、これらの更新の効果、影響、または発生は常に明確ではない。多くの場合、患者は、特定のゲノムバリアントを持つことに基づいて診断を受け得るが、ゲノムバリアントの理解におけるその後の発展を知らない。
【0012】
添付の図面は本明細書に援用されており、明細書の一部を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ゲノムバリアントを評価し、1つまたは複数のユーザが知識ベースと対話することを可能にするための、システム実施形態、方法実施形態、および/もしくはコンピュータプログラム製品実施形態、ならびに/またはそれらの組み合わせおよび副組み合わせが、本明細書において提供される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態によるシステムのブロック図である。
図2】一実施形態による例示的なダッシュボードを示す図である。
図3】一実施形態による例示的な参考文献一覧を示す図である。
図4】一実施形態による例示的なダッシュボードをさらに示す図である。
図5】一実施形態による例示的な治療ビューである。
図6】一実施形態による、臨床試験候補者を決定するための流れ図である。
図7】一実施形態による、参考文献一覧を提供するための流れ図である。
図8】一実施形態による、バリアント評価をクラウドソーシングするための流れ図である。
図9A】ユーザによって提供されるフィードバックを含むための例示的なスクリーンショットである。
図9B】ユーザによって提供されるフィードバックを含むための例示的なスクリーンショットである。
図10】一実施形態による、マルチバリアント分類のための流れ図である。
図11】一実施形態による、評価を確認するための流れ図である。
図12】一実施形態による、遺伝子型を表現型に相関させるための流れ図である。
図13】一実施形態による、ユーザの分類を含む例示的な報告を示す図である。
図14】一実施形態による、アレル頻度を評価するための流れ図である。
図15】一実施形態による、バリアントをスコア付けするための流れ図である。
図16】一実施形態による、バリアント分類アラートを提供するための流れ図である。
図17】一実施形態による、例示的なアラート報告を示す図である。
図18】一実施形態による、患者ポータルを提供するための流れ図である。
図19】一実施形態による、例示的な患者ポータルを示す図である。
図20】一実施形態による、バリアント分類ルールを改善するための流れ図である。
図21】一実施形態による、バリアント分類ルールを改善するための流れ図である。
図22】さまざまな実施形態を実施するために有用な例示的なコンピュータシステムを示す図である。
【0016】
図面において、類似する参照番号は、一般に、同一の要素または類似する要素を示す。さらに、一般に、参照番号の左端の数字は、参照番号が最初に出現する図面を識別する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
用語集
以下の説明において使用されるとき、
「疾患」は、例として疾患もしくは疾患状態、疾患の素因もしくは易罹患性、または異常な薬剤反応を含む、関係する任意の表現型または表現型形質を意味する。疾患状態の例示的で非限定的な例としては、癌、高いコレステロールレベル、うっ血性心不全、高血圧、糖尿病、耐糖能障害、うつ、不安、感染症、中毒状態、薬物療法の副作用、薬物療法の無効果、アルコール依存症、耽溺、外傷などがある。
【0018】
「治療法」および「治療」は、予防および予防薬を含み、疾患状態に関連する症状の改善だけでなく予防、疾患状態の進行の抑制または遅延、および疾患状態の治療を包含する。
【0019】
「タンパク質」または「遺伝子産物」は、翻訳されるまたは翻訳に続いて修飾され得る、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を意味する。遺伝子産物はまた、RNA分子とすることもできる。
【0020】
「文献」とは、情報データベースを構築するために使用されるデータである。このデータは、データベースならびに科学的出版物および/または臨床的出版物などの公共の情報源に由来し得るが、専有データまたは専有データと公共データの混合物も含んでよい。さまざまな実施形態では、文献は、自然言語(たとえば、英語)により形式化されたテキストコンテンツから得られる。論文、研究論文、および他の参考文献はすべて、「文献」のタイプとみなされる。
【0021】
「バリアント」は、限定するものではないが単一ヌクレオチドバリアント、挿入、欠失、重複、および再構成を含む、確立された参照ヌクレオチドまたは参照ヌクレオチド配列と比較したヌクレオチドまたはヌクレオチド配列における任意の特定の変化を意味する。これは、限定するものではないが、メチル化などの核酸修飾、ならびにゲノム内の異常な数のヌクレオチドまたはヌクレオチド配列のコピーも含む。
【0022】
「変異」および「DNA変化」は各々、一般にバリアントを指す。
【0023】
「患者」は、一般に、限定するものではないが、1つもしくは複数の患者組織からの体質性DNA配列情報および/または1つもしくは複数の患者腫瘍からの配列情報、ならびに任意選択で表現型情報を含み得る、関連付けられた配列情報を有する生物を意味する。
【0024】
「ユーザ」は、知識ベースと直接もしくは間接的に対話するために本明細書において説明される1つまたは複数の方法および/もしくはシステムならびに/または本明細書において説明される1つもしくは複数の方法、システム、またはデバイスを使用している人を意味する。
【0025】
「フィルタリング」は、1つもしくは複数のデータセットにアノテーションを付与するまたは1つもしくは複数のデータセットを変えることを意味する。フィルタリングは、データ点を保持する、追加する、データセットから取り去る、または戻すことを意味することができる。フィルタリングは、データセット内の1つまたは複数のデータ点をマスクすること意味することができる。フィルタリングは、データセット内のデータ点をアンマスクすることを意味することができる。いくつかの実施形態では、フィルタリングは反復プロセスである。いくつかの実施形態では、フィルタリングは、1つまたは複数のフィルタとともに実行される。いくつかの実施形態では、1つのフィルタによって除去またはマスクされたデータ点が、第2のフィルタによって戻されるまたはアンマスクされる。いくつかの実施形態では、フィルタリングは、バリアントのリストに対して実行される。フィルタリングされたデータセットは、元のデータセットよりも小さくても大きくてもよい。いくつかの実施形態では、フィルタリングされたデータセットは、元のデータセットから除去されていないデータ点を含む。いくつかの実施形態では、フィルタリングされたデータセットは、元のデータセットよりも多くの情報を含む。たとえば、フィルタリングされたデータセットは、元のデータセット、各データ点が現在マスクされているかどうかに関する情報、各データ点が以前にマスクされたかどうかに関する情報、および以前のフィルタリングに関する情報、のうちの1つまたは複数を含むことができる。以前のフィルタに関する情報は、適用されたフィルタの種類、そのフィルタの適用のために選択された変数、フィルタによってなされた仮定、およびまたはフィルタによって依拠される情報(たとえば、データベースからの情報)とすることができる。
【0026】
概要
臨床シークエンシングデータ内に見られるバリアントの解釈の助けとなることを意図した、知識に基づいたシステムおよび方法が提示される。本発明の一実施形態はHIPAAに準拠しており、臨床文献ならびに現在の遺伝子および疾患に関する知識の深い、専門家によるキュレーションの状況においてゲノムバリアントを鑑定し、公開された臨床ケース、薬物の適応症、ならびにNCCN(National Comprehensive Cancer Network)、ASCO(米国臨床腫瘍学会)、およびACMG(米国臨床遺伝学会)の偶発的所見などの統合されたガイドラインを総合したものを提供する。一実施形態では、標準的なACMGガイドラインまたはユーザにより定義されたスコア付けロジックに基づいたバリアント分類を自動的に示唆する分類ロジックが提供される。これによって、臨床遺伝学者、バリアント科学者、および分子病理学者によるバリアント解釈のための使用に対するエビデンスに基づいた根拠が提供される。専門家によりキュレーションが行われたコンテンツおよび分析ツールは、表現型情報および最新のコンテンツをスケーラブルで再現可能な自動判定支援ワークフローに組み込むことによって、バリアント分類を合理化し、スケーリングする。本発明の一実施形態は、1つまたは複数の遺伝子的基準に基づいて患者が優先的に層別、選択、または登録される臨床試験への登録に適しているのが理想的である患者(および/または前記患者にアクセスできる拠点)の、効率的で知識に基づいた識別も可能にする。
【0027】
DNAバリアントなどのバリアントは、一実施形態ではオントロジーを活用して、構造化された情報へと整理された、キュレーションが行われたコンテンツに基づいて、カテゴリ化される。たとえば、バリアントは、患者からの配列に基づいた検査において観察され、知識ベースからの関連する構造化された情報を用いてアノテーションが付与され、ルールのセットを使用して分類され得る。そのようなキュレーションは、1つまたは複数のバリアントを疾患または他の表現型と直接的に関連付けることができる。すなわち、キュレーションを通して文献から取得された構造化されたコンテンツの分析は、対象となる表現型によって冒されていない個人の集団におけるアレル頻度などの他の情報とともに、バリアントが病原性であるまたは特定の表現型の原因である可能性が非常に高いことを決定するために使用することができる。一方、特定のまれな疾患(たとえば、50,000人の出生児において1人未満に発生する疾患)に罹患した個人において以前に見つけられているが、また、ヨーロッパ人の子孫の全患者の52%に存在する、遺伝子内のバリアントを考える。可能性は極めて低い全ヨーロッパ人の52%に存在するバリアントが、50,000人の出生児において1人未満に存在するまれな疾患の原因である。バリアントが特定の劣性遺伝疾患の原因であり、バリアントが特定の母集団の52%に見られる場合、その特定の疾患は、その母集団の約26%に見られると予想されるであろう。バリアントが疾患を引き起こす可能性が非常に低い場合、一実施形態では、そのバリアントは、良性とカテゴリ化される。バリアントの自動化されたスコア付けまたはカテゴリ化の特定の方法、システム、または媒体は、参照によりその全体が本明細書に援用されているPCT公開第WO 2013/070634号において説明されている。
【0028】
本発明の一実施形態は、その疾患状況に基づいてデータセットの解釈のための関連情報を要約する。システムは、ユーザが、特定のバリアント(たとえば、BBS1バリアント)に対して掘り下げ、このバリアントに関連するデータ、その関連疾患または他の表現型、およびその患者ケース状況を文献およびさまざまなデータベースから要約する情報のダッシュボードを受け取ることを可能にすることができる。
【0029】
一実施形態では、1つまたは複数のユーザは、1つまたは複数のキュレータを含むことができる。キュレータは、知識ベースからの情報を調査して、そこからの情報を整理するユーザである。1つまたは複数のキュレータは、たとえば、限定するものではないが、医者、関連する主題の学位を持つ人(たとえば、博士号、理学修士号、理学士号など)、専門家、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。キュレータは、一人で、またはチームで作業して、文献からの情報のプールを調査し、洞察、事実、所見などを取得して、それらを、知識ベースに組み込むために構造化された情報として整理することができる。
【0030】
たとえば、情報は、その内容は参照によりその全体が本明細書に援用されているPCT公開第WO 2013/070634号に記載されたシステム、方法、または媒体などのツールを使用して、オントロジーに従って構造化されてよい。オントロジーとは、知識の構造化された形式である。オントロジーは、遺伝情報と表現型情報との関係を含むことができる。知識ベースからの情報をオントロジーの構造化された形式に含めることによって、オントロジー要素間の関係を活用して、追加情報を導き出すことができる。
【0031】
オントロジーは、関連情報を見つけるのをはるかに容易にすることができる。たとえば、知識ベースに対して、疾患または表現型などの概念を用いて問い合わせる場合、オントロジーは、オントロジーにおける関係から、問い合わされた概念が他の概念に関連することを理解する、またはこれをオントロジーに組み込む。たとえば、オントロジーを活用して「乳癌」の概念に関して知識ベースを検索することによって、1つもしくは複数の遺伝子が乳癌に関連するという関連概念、または乳房の癌腫もしくは乳房腫瘍もしくは非浸潤性乳管癌について説明する研究論文が明らかにされ得る。このようにして、関連概念が、いかなる形であれ、直接的に重複しない場合であっても、システムは、概念間の関係を理解する。論文が乳癌に言及しており、ユーザが、乳癌に関連する変異を要求するクエリを入力した場合、そのユーザは、その論文からだけでなく、オントロジーにおけるリンクがもとで論文に関係すると識別された他の論文からも、関連のある結果および洞察を受け取るであろう。これは、より単純な例であるが、それによって、オントロジーを使用して関連概念を見つけて活用する力が示される。
【0032】
オントロジーに従って構造化された知識ベースが、関連情報を見つけることを、どのようにしてはるかに簡単にすることができるかの別の例として、ユーザは、複数の属性を使用して問い合わせることができる。たとえば、ユーザは、EGFR(上皮増殖因子受容体)の特定の変異に関心を抱き、その特定の変異と患者による治療法に対する反応との関係について論じる関連文献エビデンスのすべてを見ることを望むことがある。従来のキーワードを使用して論文を検索し、返された結果を読むことは、情報を見つける典型的な手段である。しかし、キーワードおよび研究者が論文全体を吸収して関連情報を収集するのに要する時間の制限により、そのような典型的な検索は時間がかかり、非効率的であり、すべての関連情報を取得するとは限らないことがある。そのような検索および分析は、知識ベースおよびオントロジーを使用すると、はるかに簡単になる。
【0033】
一実施形態では、1つまたは複数の分析が、知識ベースからの情報を使用して実行される。たとえば、知識ベースからの情報は、ヒトの疾患の原因であるDNA変化を見つけることなどの、ヒトDNA配列解釈のトランスレーショナル適用に使用することができる。知識ベースからの情報は、配列に基づいた検査の臨床解釈にも使用することができる。ますます、検査は、DNA変化またはDNAバリアントを調べるラボにおいて利用可能になっている。そのような検査の結果は、医師が疾患の診断を下し、患者の腫瘍はどの薬物に対して感受性があるかを識別し、特定の患者を治療するのにどの薬物が最も良いかを識別するなどの助けとなり得る。逆に、検査は、配列情報、たとえば腫瘍中に存在する変異に基づいて、特定の患者を治療するうえでどの薬物が効果的でないかを示すことができる。
【0034】
知識ベース内で患者固有の情報を収集、検索、または分析するには、その患者からの同意が必要とされることがあり、一実施形態では、HIPAA準拠であることがある。この患者の同意は、さまざまなときに獲得され、特定の範囲を有することができる。たとえば、患者は、いかなる使用の同意を与えてもよいし、患者検査情報の特定の使用のみを提供してもよい。患者の同意は、検査のときに取得されてもよいし、試料抽出のときに取得されてもよいし、別のときに取得されてよい。たとえば、患者の同意用紙または質問紙は、「将来、あなたの検査情報に基づいて、あなたが恩恵を受け得る臨床試験があるという程度まで知らされることを希望しますか?」と尋ねるであろう。そのような質問は、たとえば、電子的質問紙にチェックボックスとして含めることができる。患者が同意した場合、患者の検査情報は、臨床試験のマッチングに使用されてよい。たとえば、患者の遺伝子検査情報が、製薬会社によって行われている薬物試験と比較され、患者が試験に適切に適合するかどうかを確かめることがある。薬物会社にとって、遺伝情報は、どの患者が薬物に反応する可能性があるかまたは可能性が低いかを予測するのに非常に有用であることがある。さらに、製薬会社が関心を抱くそれらの遺伝子変化を実際に有する患者は、特に、現在の治療法が不成功な場合、そのような薬物が出現していること、および患者が試験の状況において治療に適格であることを知ることから恩恵を受けるであろう。そのため、患者は、臨床試験マッチングに患者の検査情報を使用することに対して同意を与えることに、かなり興味を示すことがある。
【0035】
この事前同意を取得する利点は大きい。本明細書において説明するように、研究中に母集団中の個人をランダムにサンプリングすることによって特定のゲノムバリアントまたはバリアント群を有する患者を見つけることが、信じられないほど困難なことがある。すでに調べられたゲノムバリアントを持つ患者のデータベースを維持することは、人々の貴重なカタログをもたらす結果となり、したがって、試験および試験拠点がより迅速に登録され、ターゲットとされた治療法へのより迅速なアクセスを提供することによって患者に恩恵をもたらし、製薬会社が新しい治療を得て、より迅速に販売する助けとなることによって製薬会社に恩恵を与える。
【0036】
ポータル
図1は、ユーザがクラウドを介して知識ベースと対話できるシステム100のブロック図である。そのようなシステムによって、異なる位置にいるユーザは、データの共通セットを利用し、ユーザ自身の情報を知識ベースに寄与することができる。
【0037】
システム100は、ネットワーク106を介してクライアント104と通信するコンピューティングシステム102を含む。コンピューティングシステム102は、サーバ機能を有してよい。コンピューティングシステム102は、エンジン108と、ストレージ110とを含む。エンジン108は、本明細書において説明するプロセスのいずれかなどのプロセスを実行するように構成することができる。ストレージ110は、コンピューティングシステム102から受け取った情報などのデータを記憶することができる。ストレージ110は、データベース、知識ベース、任意の形態のコンピュータストレージ、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0038】
クライアント104は、限定するものではないが、パーソナルコンピュータ、携帯電話、タブレット、PDA、ワークステーション、組み込みシステム、ゲームコンソール、テレビ、セットトップボックス、または他の任意のコンピューティングデバイスなどの、任意のタイプのコンピューティングデバイスであってよい。一実施形態では、ユーザは、クライアント104上のインタフェースまたはポータル105を操作して、コンピューティングシステム102上に配置された情報にアクセスすることがある。ポータル105は、クライアント104によって実行される特定のコンピューティングデバイスプラットフォームに固有のネイティブアプリケーションであってよい。あるいは、ポータル105は、クライアント104上で実行されている、ウェブブラウザなどのブラウザを介して、アクセスされてよい。
【0039】
ネットワーク106は、データ通信を搬送できる任意のネットワークまたはネットワークの組み合わせであってよい。そのようなネットワーク106としては、限定するものではないが、ローカルエリアネットワーク、メトロポリタンエリアネットワーク、および/またはインターネットなどのワイドエリアネットワークがあり得る。
【0040】
一実施形態では、コンピューティングシステム102は、クライアント104から要求112を受信する。要求112としては、たとえば、限定するものではないが、報告の要求、検査の要求、検査結果の要求、またはそれらの任意の組み合わせがあり得る。コンピューティングシステム102は、要求112を処理して、ストレージ110に記憶された情報に基づいた結果114を生じさせることができる。コンピューティングシステム102は、次いで、結果114をクライアント104に送信することができる。
【0041】
図2は、例示的な一実施形態による、例示的なダッシュボード200を示す。一実施形態では、ダッシュボード200内の情報は、ポータル105を介した表示のために、コンピューティングシステム102によってクライアント104に提供される。ダッシュボード200は、特定のゲノムバリアントが特定の表現型に関連があるかどうかについての情報を提供する。この例では、遺伝子はBBS1(バルデー・ビードル症候群1型(Bardet-Beidl Syndrome 1))であり、バリアントはc.1169T>Gであり、表現型はバルデー・ビードル症候群である。この遺伝子、バリアント、および表現型の組み合わせは、例を示すために使用されているに過ぎない。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、ダッシュボードは他の遺伝子、バリアント、および表現型の任意の組み合わせを含み得ることは、当業者には認識されよう。
【0042】
ダッシュボード200内で、遺伝子の状況におけるゲノムバリアントの位置は、位置202に示されている。行204に示すように、この遺伝子(BBS1)は複数のエクソンを有する。インジケータ206は、遺伝子内のDNA変異の位置を識別する。行208は、知識ベース内に配置された情報に基づいて、遺伝子を損傷する変異内のその他のどこが識別されているかを示す。この表示によって、ユーザは、すばやく眺めて、このバリアントが、疾患を引き起こすことができる他のDNA変化のホットスポット内にあるかどうかを確かめる。
【0043】
ダッシュボード200の「報告されている臨床ケース(Reported Clinical Cases)」セクションは、知識ベース内に配置されたバリアントに関連する臨床ケースを総合したものを提供する。これは、たとえば、コンピューティングデバイス102の知識ベース内に記憶されたこの表現型に関連する生物医学文献内のすべてのバリアント固有患者ケースのものを含むことがある。この総合したものから、ユーザは、対象となる表現型とこのバリアントを有する遺伝子の両方を有する患者のグループをすばやく見ることができる。この特定のバリアントを有していたが表現型を発現しなかった患者もすばやく見ることができる。そのような患者は、ダッシュボード200のインタフェース内で強調表示される。このゲノムバリアントを有するが表現型を発言していない患者は、このバリアントが因果的に表現型に関連するかどうかを判定する、および/またはこの特定のバリアントが存在するときでさえ表現型を抑制するバリアントの組み合わせがあるかどうかを判定するために、対象となり得る。参考文献およびこのバリアントに関連する文献へのリンク210を介して、参考文献一覧に非常に迅速にアクセスすることができる。一実施形態では、そのようなリンクは、報告された臨床ケースの一部として示されるアイコンに埋め込まれる。
【0044】
図3は、一実施形態による、例示的な参考文献一覧インタフェース300を示す図である。一実施形態では、参考文献一覧インタフェース300は、ユーザがダッシュボード200内でリンク210を選択したとき、コンピューティングシステム102によって提供される。参考文献一覧インタフェース300は、疾患と対象となるバリアントとの間のとの遺伝子相互作用に関連する出版物があるかどうか示す。参考文献一覧インタフェース300から、ラボ責任者または遺伝学者などのユーザは、このバリアントおよびこの表現型に関連する文献エビデンスを迅速に評価することができる。ユーザは、特定の論文を選択して、医師に戻す報告書に含めることができる。参考文献一覧インタフェース300は、関連文献を複数のタブに分けてよい。たとえば、ダッシュボード200上に示される、分析をサポートする文献は1つのタブの中で提供されてよいが、分析から除外された文献は別のタブの中で提供される。文献は、たとえば、信用できないまたは実際には対象となるバリアントもしくは表現型に関連しないと識別される場合、分析から除外され得る。ユーザが参考文献一覧を調査しているとき、ユーザは、特定の結果に関するメモを追加してもよいし、特定の結果が関連文書のリストから除外されることを要求してもよい。
【0045】
図4は、例示的な一実施形態による、ダッシュボード200によって提供される情報をさらに示す。たとえば、ダッシュボード200は、ダッシュボード200内の見出し「他の検査室からの臨床ケース(Clinical cases from other 検査室)」の下に示される、他の検査室において観察された臨床ケースエビデンスも提供することができる。図4の例では、他のラボからの評価を含む、「ClinVar」と呼ばれるデータベースがある。これは、ユーザにとって有用な安心となり得る。図4の例では、ラボが、BBS1バリアントがこの患者に対して病原性であったことを述べる検査に署名することを計画した場合、1つまたは複数の他のラボがこのバリアントを病原性と分類したと安心することができる。他の検査室からの情報は、たとえば、そのような検査室からの情報のリポジトリを調べることによって、および/またはコンピューティングデバイス102とそれらの検査室との間の直接リンクによって、コンピューティングデバイス102によって取得され得る。
【0046】
ダッシュボード200は、一般母集団におけるこのバリアントの希少性の評価も提供する。上記で説明したように、所与の母集団においてバリアントが一般的である場合、バリアントがまれな疾患の原因である可能性は低い。一方、所与の母集団においてバリアントがまれな場合、そのことは、バリアントがまれな疾患の原因であることと矛盾しない。図4に示される例では、希少性を表す図示のパーセンテージは、母集団にこのバリアントが存在することは、一般母集団において疾患(表現型)が発現することと矛盾しないことを示す。これによって、バリアント(BBS1)が疾患(バルデー・ビードル症候群)に因果的に関連するという所見が強化される。なぜなら、バリアントは、その疾患に対して予想される範囲内の頻度で観察されるからである。
【0047】
一実施形態では、ダッシュボード200は、バリアントによるDNA変化の生化学的影響の評価を提供することができる。ダッシュボード200は、ユーザたとえば科学者がこの特定のDNAタンパク質変化の生化学的影響を調査し、生化学的影響を予想することもできる論文への1つまたは複数のリンクを提供することができる。たとえば、さまざまなツールは、所与のDNA変化がタンパク質の機能を損ねるかそれとも損ねる可能性が低いかを予測することができる。そのようなツールとしては、たとえば、限定するものではないが、SIFT(Sorting Intolerant from Tolerant)アルゴリズム、PolyPhen(Polymorphism Phenotyping)アルゴリズム、Blosumマトリックス、PhyloPモデル、およびB-SIFT(双方向SIFT)アルゴリズムがある。これらのツールのための例示的基準には、所与のDNA変化またはタンパク質変化が保存的アミノ酸置換であるか非保存的アミノ酸置換であるか、バリアントの影響が未知の場合でもバリアントが哺乳類全体にわたって高度に保存された領域で観察されるかどうか、があり得る。特定のバリアントが、すべての哺乳類種全体にわたって高度に保存されたヌクレオチドまたはタンパク質位置に影響を与えることから、バリアントは何か重要なことであることが示唆されよう。この情報およびこれらのアルゴリズムは、このDNA変化が遺伝子機能もしくはタンパク質機能を乱す可能性があるか、またはあるいは、機能を強化もしくは増強する、もしくは何らかの方法で、たとえば遺伝子融合によって新しい機能を作り出す可能性があるかどうかを予想するために使用することができる。
【0048】
図5は、特定のゲノムバリアントまたはバリアント群を有する患者に関連し得る薬物および/または治療法の概要を含む例示的な治療ビュー500を示す。ビュー500は、ダッシュボード200からのリンク(図示せず)を介してアクセスされ得る。図5の例では、治療ビュー500は、知識ベース内で特定の遺伝子変異(EGFRエクソン19の欠失)によって引き起こされる肺癌に関連すると識別された薬物治療を示す。この例では、エビデンスは、FDAのウェブサイトからキュレーションが行われており、処方情報は、この治療が、腫瘍、具体的にはEGFRにおけるエクソン19の欠失を有する癌を有する患者に関連することを示す。ユーザがリンクを選択した場合、そのユーザは、基礎となる参考文献またはデータソースに向けられる。たとえば、ユーザが、図5に示される「米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)」リンクを選択した場合、ユーザは、FDAのウェブサイトに通され、データのキュレーションが行われた、この薬物に関する処方情報を見る。
【0049】
一実施形態では、治療ビュー500は、進行中の臨床試験も示し得る。たとえば、製薬会社が、特定の疾患の状況における特定の変異を有する患者を探す試験を行うことがあるが、これは、これらの患者は、これらの患者を助けることができる新しい治療法を探しているからである。特定の患者情報の知識を持った医師または研究者によって見られるとき(または、患者情報が知識ベースに含まれる場合)、そのような臨床試験を治療ビューにおいて識別することによって、プロスペクティブな登録者を、臨床試験に登録することについて(医師、検査室を介して、または直接的に)関連企業と接触させることが可能になる。プロスペクティブな登録者が他の治療選択肢によっていなくなった場合、このリスティングによって、その患者に恩恵を与え得る最新の発展が患者に知らされることも可能になる。
【0050】
事前プロファイリングの向上
ますます多くの患者検査情報が知識ベースに収集されるので、知識ベースは、単に文献および臨床試験から関連情報を抽出する以上のことのために使用することができる。一実施形態では、患者が許可した場合、知識ベースに含まれる多量の患者遺伝情報を使用して、利用可能な臨床試験の候補者を識別することができる。複数の拠点および組織からのデータを知識ベース内で組み合わせて検索し、ターゲットとされた特定の臨床試験に適格な拠点および患者を識別することができ、したがって、それらの拠点および/または患者をより迅速に臨床試験に登録することができる。これによって、試験の登録が合理化および促進され、患者が、患者の疾患を治療するうえで効果的である可能性がより高い、生命を与える治療法へのより迅速なアクセスを得ることが可能になるが、製薬会社が新しい治療法を、従来の方法よりも早く、著しく減少したコストで市場に出すことも可能になる。図6は、一実施形態による、臨床試験の候補者を決定するための方法600の流れ図である。方法600は、ハードウェア(たとえば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、ソフトウェア(たとえば、処理デバイス上で実行される命令)、またはそれらの組み合わせを含む処理ロジックによって実行することができる。一実施形態では、方法600は、コンピューティングシステム102によって実行される。
【0051】
ブロック602において、臨床試験登録基準がユーザから受信される。一実施形態では、コンピューティングシステム102は、ユーザからクライアント104上のポータル105を介して臨床試験登録基準を受信する。臨床試験登録基準は、遺伝子ターゲティング基準、患者検査情報パラメータ、患者配列バリアントパラメータ、患者表現型パラメータ、患者同意パラメータなどを含むことができる。
【0052】
ブロック604において、患者検査情報の知識ベースが、臨床試験登録基準に合致する患者(および/または患者へのアクセスを有する拠点)に関して検索される。一実施形態では、コンピューティングシステム102は、そのような患者に関して、ストレージ110に配置された知識ベースを検索する。たとえば、知識ベースは、薬物または治療法が反応する可能性が非常に高い特定のバリアント群を有する試験候補者に関して検索可能である。
【0053】
一実施形態では、検索することは、患者の電子的医療記録または患者の電子的医療記録の派生物のうちの少なくとも1つにアクセスすることを含む。コンピューティングデバイス102は、患者情報へのアクセスを得るように、ネットワーク106などのネットワークを介して電子的医療記憶提供者またはデータベースと接続し得る。
【0054】
一実施形態では、患者検査情報は、ストレージ110内の知識ベースに配置される。たとえば、患者検査情報は、複数の独立した顧客エンティティから、ネットワーク106などのネットワークを介して、コンピューティングデバイス102によって受信され得る。たとえば、複数の検査拠点は、検査が、対象となる特定の臨床試験のためのものかどうかに関係なく、患者の検査情報(いつ検査されたかおよびその検査の結果など)を収集することができる。検査の前などの、プロセス中の任意の時点において、患者は、患者が臨床試験の候補者となり得るかどうかを決断するなど、検査情報のその後の使用を可能にするために、同意を提供することができる。そのような患者検査情報および同意は、コンピュータ102によってストレージ110内に記憶可能である。次いで、その患者検査情報および/または同意は、受信した患者検査情報パラメータおよび/または受信した患者同意パラメータと比較され、患者が臨床試験に適合するかどうかを確かめ得る。
【0055】
一実施形態では、患者表現型情報は、コンピュータシステム102上に配置され、オントロジーにより構造化され、検索可能である。たとえば、知識ベースは、配列に基づいた検査によって発見可能なバリアントなどの1つまたは複数のバリアントに患者表現型情報を関連付ける情報を含むことができる。患者表現型情報がコンピューティングデバイス102によって受信されるとき、コンピューティングデバイス102は、エンジン108を使用して情報を処理し、ストレージ110内に配置されたオントロジー的知識ベースに情報を記憶し得る。次いで、その患者表現型情報および遺伝子型情報は、所望の遺伝子型情報を含む受信した所望の患者臨床試験パラメータと比較され、患者が臨床試験に適合するかどうかを確かめ得る。
【0056】
ブロック606において、臨床試験登録基準に適合する、同意が得られた患者の検索結果が、たとえばコンピューティングシステム102によって、ユーザ(たとえば、検査室または臨床試験参加者に関して検索する企業)に提供される。検索結果は、患者についての情報、たとえば、人口統計学的情報、患者の表現型、ゲノムバリアント、または患者を臨床試験から適合もしくは除外するために有用な他の任意の情報、の任意の組み合わせを含むことができる。追加または代替として、検索結果は、拠点単位で集約可能である。たとえば、検索結果は、登録基準を満たす同意が得られた患者を有する上位5つの拠点および/または臨床試験登録基準に適合する、各拠点における患者の数をリストアップし得る。
【0057】
一実施形態では、1つまたは複数の患者が検査情報を見ることを可能にする患者ポータルが提供される。たとえば、患者は、クライアント104上で実行されるポータル105を介してコンピューティングシステム102にアクセスし得る。ポータル105が、検査室/研究者によって使用されることを意図したものか、それとも患者によって使用されることを意図したものかに応じて、異なる能力を有してよいことは、当業者には認識されよう。患者ポータルは、患者、患者の家族、ケア提供者(たとえば医師または遺伝学者)、研究者、保険会社、またはそれらの任意の組み合わせなどの、患者によって許可された個人または存在によってアクセス可能である。患者ポータルに関するさらなる詳細については、以下で図18および図19を参照しながら説明する。図19は、例示的な患者ポータルを示すが、実施形態は、1つまたは複数の患者が検査情報を見ることを可能にする任意の患者ポータルをサポートする。
【0058】
一実施形態では、さまざまなデータが、患者ポータルとの患者の対話に基づいて取得可能である。そのようなデータとしては、たとえば、限定するものではないが、患者がまだ生きている可能性があるか(患者の同意またはシステムとの対話の継続に基づく)、患者の地理的位置、患者の臨床試験への関心、または追加の患者表現型情報があり得る。たとえば、患者が患者ポータルにログインするとき、これは、患者が生きており、治療を探し求める健康状態を依然として有しており、他の治療法または治療選択肢についての情報を受信することに関心を抱いていることを示すことができる。同様に、患者が新しい検査情報または表現型情報を入力している(または、提供者が患者に代わって入力している)場合、それは、患者が関連表現型に冒されているかどうかを示すことができる。また、患者または提供者は、患者が特定の臨床試験に適し得るかを評価する助けとなり得る健康記録情報、たとえば、患者はどの治療レジメンを受けているか、患者はどのくらいの時間の長さにわたって特定の表現型と診断されているのか、表現型の治療は成功と考えられるかどうか、を入力し得る。
【0059】
一実施形態では、臨床試験登録基準に適合する1つまたは複数の患者が臨床試験に登録される。一実施形態では、患者にアクセスできる1つまたは複数の拠点または独立組織は、これらの拠点または組織が、限定するものではないが患者を試験に適するようにする所望の遺伝子型特性を含む所望の試験特性を有するかなりの数の患者をすでに見たということに基づいて、試験における活性化/登録のために選択される。一実施形態では、患者は、患者を特定の臨床試験に適さないようにする遺伝子型特性を含む検査情報を有するということに基づいて、除外される。
【0060】
1つまたは複数の試験のための対象となる患者および/または拠点を識別するために患者の遺伝子型評価を容易にすることによって、臨床試験を実施することことに従来関与するいくつかの問題が解決され、登録するべき潜在的候補患者を見つけることに関連する費用およびリスクの多くを減少させることができる。潜在的候補者についての遺伝情報にアクセスできることによって、個人が臨床試験についての広告または紹介に反応するのを試験提供者が待たなければならない状況が解消可能である、または少なくとも減少可能である。加えて、従来、そのような広告または紹介に反応する人が、試験される特定のバリアントを実際に持つという保証はない。さらに、本明細書において説明した複数の組織から編集された患者検査情報の知識ベースを検索することによって、対象となるゲノムバリアントを有する十分な人々が識別されていないことを見つけるためにのみ多数の人々を検査するリスク、時間遅延、およびコストが減少される。
【0061】
参考文献一覧
有用性および関連性を最大にするために、所与のバリアントに関連する参考文献の参考文献一覧は、バリアントについての最新の知識がユーザの結果セットに含まれることを保証するために定期的に更新することができる。参考文献の参考文献一覧は、要求に応じて、特定の生物医学文献に関連する検査情報の受信時に、または特定の生物医学文献に関連する検査情報の受信を予想して、システムによって更新されてもよい。一実施形態では、ユーザがダッシュボード200に参考文献一覧を要求したとき、参考文献一覧がリアルタイムで生成される。このタイプの「ジャストインタイムの」参考文献一覧は、最新情報のキュレーションが行われていないまたは一部しかキュレーションが行われていないというだけの理由で最新情報を見落とすことなく、可能な限り多くの関連情報を取得するのに有用である。別の実施形態では、1つまたは複数のバリアントを含む検査情報がシステムにアップロードされると、参考文献一覧がリアルタイムで更新される。図7は、一実施形態による、参考文献一覧を提供するための方法700の流れ図である。方法700は、ハードウェア(たとえば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、ソフトウェア(たとえば、処理デバイス上で実行される命令)、またはそれらの組み合わせを含む処理ロジックによって実行することができる。一実施形態では、方法700は、コンピューティングシステム102によって実行される。
【0062】
参考文献一覧500などの参考文献一覧は、キュレーションが行われたコンテンツと、キュレーションが行われていないまたは一部のキュレーションが行われたコンテンツの両方を含むことができる。一部のキュレーションが行われたコンテンツとは、何らかキュレーションを受けたが、完全にはキュレーションが行われていないコンテンツを指し得る。一部のキュレーションが行われたコンテンツは、キュレーションが行われたコンテンツの詳細のレベルを含まない場合でも、知識ベースに含まれ得る。非限定的な一例では、一部のキュレーションが行われたコンテンツは、特定のバリアントおよび特定の疾患表現型に関連することが確認された論文を含み得る。別の非限定的な例では、一部のキュレーションが行われたコンテンツは、研究論文が機能的エビデンスおよび/または臨床ケースエビデンスを含むかどうかに関して分類される。これによって、ユーザが、より関連する論文エビデンス、すなわち、患者の検査情報内で観察される1つまたは複数のバリアントに関連すると生物医学文献においてキュレーションが行われた論文だけでなく、まだキュレーションが行われていない、または一部のキュレーションが行われたが、たとえば、参考文献中のキーワードに基づいてバリアントに関連すると予想される、知識ベースまたは文献ベースからの追加の論文または参考文献も提供されることが可能になる。
【0063】
ブロック702において、検査情報が受信される。一実施形態では、コンピューティングシステム102は、検査情報を受信する。検査情報は、1つまたは複数の情報源から受信可能である。たとえば、限定するものではないが、検査情報は、検査被験者、検査室、ケア提供者、保険会社などから受信可能である。
【0064】
一実施形態では、検査情報は、自動パイプラインを介して受信される。この自動パイプラインは、検査情報を自動的に受信、キューイング、またはこれに作用するプロセスを含むことができる。たとえば、検査情報は、遺伝子データベース、出版物データベース、顧客機器、または他の情報源から自動的に取得することができる。本明細書において説明するように、たとえば、検査情報は、知識ベースに組み込む、1つまたは複数の分析に供する、参考文献一覧に含めることなどが可能である。
【0065】
ブロック704において、1つまたは複数のキュレーションが行われた論文が知識ベースから選択される。一実施形態では、コンピューティングシステム102は、1つまたは複数のキュレーションが行われた論文を知識ベースから選択する。1つまたは複数のキュレーションが行われた論文は、検査情報によって識別される1つまたは複数のゲノムバリアントに関連することができる。たとえば、BBS1遺伝子に関連するキュレーションが行われた論文が選択され得る。図5に示される例などの別の例では、EGFRエクソン19欠失に関連するキュレーションが行われた論文が選択され得る。
【0066】
一実施形態では、1つまたは複数のキュレーションが行われた論文は、オントロジーにより知識ベース内で整理される。知識ベースに、オントロジーの特徴を使用して問い合わせ、1つまたは複数のゲノムバリアントに関連する1つまたは複数の論文を見つけることができる。
【0067】
ブロック706において、1つまたは複数のキュレーションが行われていないまたは一部のキュレーションが行われた論文が選択される。一実施形態では、コンピューティングシステム102は、1つまたは複数のキュレーションが行われていないまたは一部のキュレーションが行われた論文を選択する。1つまたは複数のキュレーションが行われていないまたは一部のキュレーションが行われた論文は、検査情報内で識別される1つまたは複数のゲノムバリアントの解釈に関連することが予想され得る。
【0068】
一実施形態では、1つまたは複数のキュレーションが行われていないまたは一部のキュレーションが行われた論文を知識ベースから選択することは、この1つまたは複数のキュレーションが行われていないまたは一部のキュレーションが行われた論文は、1つまたは複数のゲノムバリアントに対応する遺伝子識別子と、1つまたは複数のゲノムバリアントのタンパク質または核酸識別子とに言及すると決定することを含む。たとえば、論文がこの特定のDNA変化またはタンパク質変化に関係することを明らかにするBBS1遺伝子における1つまたは複数の特定のバリアントの記載を含む、キュレーションが行われていないまたは一部のキュレーションが行われた論文が選択可能である。
【0069】
一実施形態では、1つまたは複数のキュレーションが行われていないまたは一部のキュレーションが行われた論文を選択することは、この1つまたは複数のキュレーションが行われていないまたは一部のキュレーションが行われた論文は1つまたは複数のゲノムバリアントに対応すると、自然言語処理を使用して決定することを含む。一実施形態では、自然言語処理は、生物医学オントロジーを活用して実行される。
【0070】
ブロック708において、参考文献一覧がユーザに提供される。一実施形態では、コンピューティングシステム102が、参考文献一覧をユーザに提供する。参考文献一覧は、1つまたは複数のキュレーションが行われた論文と、1つまたは複数のキュレーションが行われていない論文とを含むことができる。このようにして、「ジャストインタイムの」参考文献一覧は、キュレーションが行われた研究論文だけでなく、関連情報は対象となるバリアントの解釈に関連することを示唆するテキストをその中に有する最新の興味深い情報も含む。
【0071】
キュレーションが行われたコンテンツとキュレーションが行われていないまたは一部のキュレーションが行われたコンテンツの両方を受信することは、特定の患者の検査情報を解釈するのに非常に有用であり得る。キュレーションが行われたコンテンツは、キュレーションが行われたということにより、より関連があるまたは信頼できると考えられ得るが、情報が利用可能になるときと、情報のキュレーションが行われるときとの間にタイムラグがある。分析家は、公開されたのが非常に最近であるのでまだキュレーションを行うことができていない情報が、検査情報にかなり関連すると決定される場合、その情報を受信することに依然として関心を抱くであろう。たとえば、患者の検査に関連する論文が昨日公表されたばかりの場合、医師および検査室は、その論文について知ることを望むであろう。医師および検査室は、論文のキュレーションが完全に行われるためにかなりの量の時間が経過したかどうかを気にしないことがある。その代り、医師および検査室は、任意の潜在的に関連した最新情報を見て、情報がその患者の治療に関連するかどうかに関して決定を下すことを希望するであろう。
【0072】
一実施形態では、参考文献一覧内で提示される論文についての、1つまたは複数のユーザからのフィードバックが、受信される。ユーザは、論文を読み、患者の検査報告に署名していることがあるので、1つまたは複数のユーザは、論文についての意味のある情報を提供することができる。たとえば、ユーザは、参考文献一覧内の論文が対象となるバリアントとどれくらい関連するかを指定することができる。たとえば、ユーザは、参考文献一覧をプルアップし、研究論文が名目上、特定のバリアントまたは特定の表現型に関連すること、研究論文が品質標準を満たさないこと、または研究論文は、バリアントが特定の表現型の原因であることを示すのに十分な情報を有することを示すことができる。ユーザは、このことを、たとえば、この研究論文を報告から含めるもしくは除外すること、またはそれをバリアントの自動評価における分析から含めるもしくは除外することを選択することによって示すことができる。ユーザはまた、参考文献一覧に表示されないことがある1つまたは複数のバリアントに関連し得る追加の研究論文を示唆し得る。一実施形態では、これらの論文は、キュレーションのために優先順位が付けられる、および/または前記ユーザもしくは前記1つもしくは複数のバリアントに関心を抱く他のユーザのための将来前記1つもしくは複数のバリアントに関する参考文献一覧に含まれる。
【0073】
バリアント評価のクラウドソーシング
一実施形態では、ユーザは情報を変更するまたは異議を申し立てることはできないので、知識ベース内のデータは静的である。にもかかわらず、何回も、ユーザ(医師または検査室研究者など)は、知識ベースデータを鑑定するのに良い立場にいるユーザはおそらく、現在の関心の状況においてデータにアクセスおよび分析している。したがって、別の実施形態では、知識ベース内のデータは、能動的または受動的(すなわち、ワークフローの自然(natural)部分として)のいずれかで、ユーザがデータを編集またはアノテーションを付与することを可能にすることによって増強され得る。ネットワークを介したユーザからのデータのそのような収集は、本明細書では、クラウドソーシングと呼ばれる。図8は、一実施形態による、バリアント評価をクラウドソーシングするための方法800の流れ図である。方法800は、ハードウェア(たとえば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、ソフトウェア(たとえば、処理デバイス上で実行される命令)、またはそれらの組み合わせを含む処理ロジックによって実行することができる。一実施形態では、方法800は、コンピューティングシステム102によって実行される。
【0074】
ブロック802において、検査情報がユーザから受信される。一実施形態では、コンピューティングシステム102は、検査情報を受信する。
【0075】
ブロック804において、検査情報に含まれる1つまたは複数のゲノムバリアントが評価される。一実施形態では、コンピューティングシステム102は、1つまたは複数のゲノムバリアントを評価する。1つまたは複数のゲノムバリアントは、本明細書においてまたはその内容が参照により本明細書に援用されているPCT出願公開第WO 2013/070634号によって説明される方法などの評価方法の任意の組み合わせを使用して評価可能である。
【0076】
一実施形態では、評価することは、1つまたは複数のゲノムバリアントを臨床的重要性カテゴリに分類することを含む。この1つまたは複数のゲノムバリアントは、バリアントスコア付けロジックを使用して分類可能である。臨床的重要性カテゴリの例としては、限定するものではないが、病原性、病原性の可能性、重要性不明、良性の可能性、および良性がある。
【0077】
ブロック806において、フィードバックがユーザから受信される。一実施形態では、コンピューティングシステム102は、評価に関するフィードバックをユーザから受信する。フィードバックは、ポータルウェブページ、ネイティブアプリケーション、または他の入力源と対話するユーザからの入力として受信され得る。フィードバックは、さまざまな手段で受信可能である。たとえば、一実施形態では、フィードバックを受信することは、1つまたは複数の評価されたゲノムバリアントの選択を受信することと、1つまたは複数の選択されたバリアントの分類を受信することとを含む。別の実施形態では、フィードバックを受信することは、1つまたは複数のバリアントの評価のために参考文献の値または関連性の標識を受信することを含む。たとえば、フィードバックは、「親指を下に向けた」ボタンまたは「親指を上に向けた」ボタンの形で提供されてよい。別の例では、フィードバックは、参考文献がユーザによって報告に含まれたかまたは除外されたかを含むことができる。さらに別の実施形態では、フィードバックを受信することは、キュレーションが行われていないまたは不完全にキュレーションが行われた論文の標識を受信することと、キュレーションが行われていないまたは不完全にキュレーションが行われた論文のキュレーションに優先順位を付けることとを含む。他の実施形態では、フィードバックを受信することは、キュレーションが行われていないまたは不完全にキュレーションが行われた論文のキュレーションをユーザから受信することを含む。さらなる実施形態では、フィードバックを受信することは受動的であり、たとえば、1つまたは複数のユーザは、判定支援システムによって生成される機械予測分類とは異なる1つまたは複数のバリアントの臨床分類を手動で示唆する。このことは、判定支援システムの将来予測力を改善するために、バリアントまたは調査に関連するエビデンスの鑑定および/またはキュレーションならびに潜在的には機械予測支援スコア付けロジックの調整をトリガし得る。キュレーションは、バリアントの表現型情報を含むことができ、この表現型情報は、オントロジーにより構造化される。いかなる実施形態においても、フィードバックは、キュレーションが行われていないまたは不完全にキュレーションが行われた論文が、検査情報に含まれる1つまたは複数のゲノムバリアントを評価するために関連のあることを示すことができる。
【0078】
一実施形態では、検査情報は、オントロジーにより構造化されたバリアントの表現型情報を含む。
【0079】
一実施形態では、ユーザによって提供されるフィードバックは、1つまたは複数のゲノムバリアントのその後の評価において使用される。このフィードバックは、バリアント解釈に優れている人間によるコンピュータ化システムに対する訓練であり、経時的に(たとえば、機械学習と同様に)評価を継続的に改善するために使用可能である。すなわち、訓練によって、予測アルゴリズムおよびコンテンツがより強力になるので、バリアントをスコア付けおよび評価する人間が多くなるにつれて、評価が改善される。
【0080】
ブロック808において、フィードバックが1つまたは複数の他のユーザに提供される。一実施形態では、コンピューティングシステム102が、フィードバックを1つまたは複数の他のユーザに提供する。参考文献一覧の特徴を使用して、1つのユーザが、1つまたは複数のバリアントに関連する論文を見て、その論文を掘り下げて、より多くの情報を取得することができる。ユーザはまた、バリアントを評価するためのユーザの気に入っている参考文献などの別の参考文献を参考文献一覧に含めることを提案することができる。次のユーザが、同じバリアントに関連する参考文献一覧にアクセスすると、その次のユーザは、その参考文献についての情報を追加し、その参考文献をユーザの報告のために選択することができる。これらの反復的な努力によって、ユーザが利用可能な参考文献の量と品質の両方を改善することができる。
【0081】
一実施形態では、第2のユーザに、1つまたは複数のゲノムバリアントに関する第1のユーザのフィードバックが提供される。たとえば、コンピューティングシステム102は、第2のユーザから第2の検査情報を受信することができ、この第2の検査情報は1つまたは複数のゲノムバリアントを含む。第2の検査情報の評価を第2のユーザに提供するとき、コンピューティングシステム102は、第1のユーザからのフィードバックを提供することもできる。
【0082】
図9Aおよび図9Bは、参考文献一覧に入力されたユーザによって提供されたフィードバックを示す例示的なスクリーンショット900および950を示す。スクリーンショット900は、他の検査室からの臨床ケースと、一般母集団における遺伝子バリアントの希少性と、既知の生化学的影響の参考文献と、予測される生化学的影響とを含む。一般母集団におけるバリアントの希少性は、ドロップダウン902を使用して選択可能な1つまたは複数の情報源に対して表示され得る。
【0083】
内部ラボバリアント分類およびアノテーションデータベースは、ツールによって使用されるプライベートインスタンスに統合されてよい。次いで、1つまたは複数のユーザは、分類またはアノテーションのプライベートインスタンスにアノテーションを付与することができる。スクリーンショット950は、評価、たとえばスクリーンショット900において提供される評価を編集するためのいくつかのフィールドを含む。スクリーンショット950において、ユーザは、表現型、評価、報告可能性、メモ、および評価に関する以前のメモを見てもよいし、編集してもよい。報告可能性とは、編集が報告可能であるか報告可能でないかを指し得る。
【0084】
図9Aおよび図9Bは例示的なスクリーンショット900および950を提供するが、本発明の実施形態は、ユーザフィードバックを見るまたは編集するための他のタイプまたは構成の画面をサポートし、これらの画面では、限定するものではないが本明細書において説明される情報のいずれかを含む、ユーザフィードバックに関連する任意の情報が、患者または他のユーザに提示可能である。
【0085】
マルチバリアントの分類
上記で説明したように、単一バリアントは特定の表現型に結び付けられ得、したがって、そのバリアントを有する患者は、特定の表現型を発現する可能性が高い。しかし、常にそれほど単純であるとは限らない。多数の患者が複数の遺伝子変異を示し、たとえば、その患者の健康および/または治療選択肢の実際の様相を取得するために、それらの変異(または、その欠如)の効果が複合的になることを考慮する必要がある場合がある。修飾因子バリアントおよび遺伝学的背景は、特定のバリアントが、特定の患者において、疾患または薬物治療への反応などの所与の表現型の現れとどの程度相関するかに劇的に影響することができる。図10は、一実施形態による、マルチバリアント分類のための方法1000の流れ図である。方法1000は、ハードウェア(たとえば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、ソフトウェア(たとえば、処理デバイス上で実行される命令)、またはそれらの組み合わせを含む処理ロジックによって実行することができる。一実施形態では、方法1000は、コンピューティングシステム102によって実行される。
【0086】
ブロック1002において、患者の検査情報が受信される。一実施形態では、コンピューティングシステム102は、検査情報を受信する。検査情報は、1つまたは複数の情報源から受信可能である。たとえば、限定するものではないが、検査情報は、検査被験者、検査室、ケア提供者、保険会社などから受信可能である。
【0087】
ブロック1004において、検査情報に含まれるゲノムバリアントの臨床評価または重要性カテゴリが、患者におけるゲノムバリアントと1つまたは複数の他のゲノムバリアントが同時に生じることに部分的に基づいて、決定される。一実施形態では、コンピューティングシステム102が重要性カテゴリを決定する。代替又は追加として、検査情報に含まれるゲノムバリアントの既存の重要性カテゴリは、患者におけるゲノムバリアントと1つまたは複数の他のゲノムバリアントが同時に生じることに基づいて修正可能である。
【0088】
一実施形態では、重要性カテゴリを決定することは、ゲノムバリアントおよび1つまたは複数の他のゲノムバリアントについての知識ベース内の情報を使用する。情報は、オントロジーにより構造化可能である。知識ベースは、ゲノムバリアントと1つまたは複数の他のゲノムバリアントとの結び付きを識別し得る。一実施形態では、そのような修飾因子バリアント情報は、オントロジーにより構造化された生物医学的文献からキュレーションが行われたエビデンスから得られる。一実施形態では、そのような修飾因子バリアント情報は、遺伝子型情報と表現型情報の相関によって、表現型の重症度(または有無)を修正する可能性が非常に高いバリアントを識別することが可能になる、患者検査情報のデータベースから得られる。たとえば、バリアント間の相互作用について説明する参考文献は、所与のバリアントの臨床評価に影響することができ、経時的に知識ベースに入力されるその患者で観察される他のバリアントまたは新しい文献またはデータベースのエビデンスに基づいた変更を受ける。これは、患者の検査情報内の他の修飾因子バリアントの有無を考慮せずに単一バリアントを独立して使用する臨床評価とは基本的に異なる。
【0089】
たとえば、特定のゲノムバリアントは、単独で出現するときはかなり良性のことがあるが、他のゲノムバリアントと組み合わせて出現するとき、病原性のことがある。あるいは、バリアントは、ある患者では病原性のことがあるが、第1のバリアントの潜在的悪影響を軽減する1つまたは複数の他のバリアントを有する別の患者では、良性のことがある。そのため、単独の特定のバリアントを識別する患者検査情報は、ある重要性カテゴリに割り当てられ得るが、他のバリアントと組み合わされた同じバリアントを識別する患者検査情報は、前記バリアントが単独で評価される場合とは異なる要性カテゴリに割り当てられ得る。一実施形態では、1つまたは複数の既知の修飾因子バリアントを有する第1のバリアントの臨床評価は、前記第1のバリアントに関連するエビデンスだけでなく、その患者の検査情報に存在するまたは存在しない修飾因子と組み合わせたそのバリアントの総合的評価にも基づいて、臨床的重要性カテゴリに割り当てられる。割り当てられる特定の重要性カテゴリは、知識ベースから取得されるマルチバリアント関係についての情報に基づいて決定され得る。
【0090】
一実施形態では、対象となる所与のバリアントは、バリアントスコア付けのための米国臨床遺伝学会ガイドラインに従って評価されてよい。スコア付けガイドラインは、コンピュータに基づいた一連のルールとして実施されてよく、このルールには、さまざまな重みまたは重要性レベルが割り当てられてよい。次いで、このコンピュータに基づいたスコア付けロジックが、対象となるバリアントと遺伝学的に相互作用して表現型を修飾することが知られている他の修飾因子バリアント部位に関する、コンピュータに基づいた知識ベース内の文献の評価を含むように拡張され得る。キュレーションが行われた文献の知識ベースは、患者が対象となるバリアントを有し、ならびに一般的には対象となるバリアントによって引き起こされる表現型の重症度または性質を修飾することが知られているまたは考えられる他の部位に1つまたは複数の配列を有するケースが文書化されているかどうかを決定するように問い合わせされ得る。
【0091】
たとえば、CFTRデルタ-F508変異は、嚢胞性線維症に関する患者のリスクを評価するためにスコア付け可能であるが、患者が、ホモ接合デルタ-F508変異を有する患者において嚢胞性線維症表現型を軽減するまたはなくすと文献に文書化されたゲノム内の別の位置に配列バリアント(またはバリアントの欠如)を有する場合、ルールは、修飾因子バリアントをサポートする文献またはデータベースエビデンスの品質および量に応じて「病原性」からあまり重症でないカテゴリにデルタ-F508変異のバリアント分類を変更することをトリガする。修飾因子バリアントは、対象となるバリアントと同じ遺伝子内にあってもよいし、異なる遺伝子内にあってもよい。
【0092】
一実施形態では、嚢胞性線維症患者コホートのデータベースが、デルタ-F508に関してホモ接合である冒されていない個人が修飾因子配列を所有するかどうか、およびこの修飾因子が、典型的には疾患を引き起こすと評価されるであろうホモ接合デルタ-F508変異を有する患者の間で疾患にかかっていないステータスと同時分離されるかどうかを評価するために分析され得る。「極端な表現型のエクソームシーケンシングは、嚢胞性線維症においてDCTN4を慢性Pseudomonas aeruginosa感染症の修飾因子として同定する(Exome sequencing of extreme phenotypes identifies DCTN4 as a modifier of chronic Pseudomonas aeruginosa infection in cystic fibrosis)」などの研究論文は、そのような修飾因子バリアントが存在する可能性が高いことを示す。本明細書において説明するマルチバリアント分類の技法は、オントロジーにより構造化された生物医学的文献からのキュレーションが行われたエビデンスを活用して、ルールセットに基づいて対象となるバリアントの分類を修正する。
【0093】
一実施形態では、患者は、癌治療選択肢に関して評価可能であるが、1つまたは複数の修飾因子配列(バリアントまたはその欠如など)は、この患者のための評価された治療選択肢を修正することができる。たとえば、末期メラノーマ患者は、一般的にはベムラフェニブを用いた治療時により好ましい転帰と関連するBRAF V600Eバリアントに関して陽性と検査され得る。しかしながら、評価は、BRAFまたは生物医学的文献、臨床試験、および/もしくは1つもしくは複数の規制当局によって承認された処方情報においてベムラフェニブに対する患者反応を修正することが知られているもしくは考えられる他の遺伝子における1つまたは複数の他のバリアント(またはバリアントの欠如)によって修正され得る。患者の検査情報に修飾因子バリアントが存在することによって、限定するものではないが、対象となるバリアントと一般的には対象となるバリアントによって引き起こされる1つまたは複数の表現型を修飾する他の配列バリアント(またはその欠如)との相互作用に関連する研究論文を含むように検査結果一覧を修正することを含めて、バリアント評価および/または検査結果を修正することができる。
【0094】
一実施形態では、重要性カテゴリを決定するには、ルールに基づいた評価を使用する。ルールに基づいた評価は、ゲノムバリアントをカテゴリ化するように1つまたは複数のルールを処理することができる。たとえば、遺伝疾患のためのバリアントの評価のためのルールセットは、バリアントを、病原性、病原性の可能性、重要性不明、良性の可能性、または良性と分類するために使用され得る。そのようなルールセットは、重みを変化させるルールを含み得る。ルールは、関連する表現型によって冒されていない母集団におけるアレル頻度を有する対象となるバリアントがその表現型の原因である可能性は非常に低いことを述べ得る。そのようなルールは、良性または良性の可能性の分類を支持する強力なエビデンスとなり得る。あるいは、ルールセットの分類カテゴリは、医師、個人、または機関への、対象となる特定の適用例に合わせて、カスタマイズおよび調整され得る。たとえば、ルールセットは、特定の形態の癌を治療する際の臨床的重要性の度合いに関してバリアントを評価するために使用され得る。非限定的な一例では、癌の配列に基づいた検査解釈適用例の分類カテゴリとしては、臨床的に関連がある(同じ組織)、臨床的に関連がある(異なる組織)、関連する臨床試験、または関連する癌パスウェイがあり得る。
【0095】
一実施形態では、癌バリアントの解釈のルールは、バリアントが、対象となる組織中の癌を治療するために使用するように適切な規制当局(たとえば、FDA)によって承認された薬物の処方情報によって直接的に参照される場合、バリアントは、この試料に関して臨床的に関連がある(同じ組織)と分類されるべきであることを述べ得る。たとえば、FDAのウェブサイトには、EGFR遺伝子において観察される変異に基づいた薬物の説明が掲載されている。これは、一連の非常に強力なエビデンスとなり得る。システムは、それらのルールおよびそれらのエビデンスの強力さを鑑定し、コンピュータ化された分類をユーザまたはレビューアに提供する。
【0096】
たとえば、知識ベース内で利用可能な情報に基づいてシステムによってコンピュータ処理された分類は、バリアントに、潜在的に良性または良性の可能性とラベルし得る。そのような評価は、同じ患者において第1のバリアントが、一般的に第1のバリアントと関連する表現型を軽減する第2のバリアントと同時に生じることを示す、知識ベース内のエビデンスに基づく。すなわち、この患者における別のDNA変異によって、この患者は、第1のバリアントの一般的な疾患または有害な影響を受ける可能性が低くなっている。第1のバリアントが人々の99%において病原性であっても、第1のバリアントは、既存のエビデンスに基づいて、そのようなマルチバリアント患者において病原性でないことが知られている。
【0097】
一実施形態では、1つまたは複数の他のゲノムバリアントは、ゲノムバリアントの表現型効果に対するさらなる感受性または抵抗性を与えることが知られている。たとえば、知識ベースは、表現型効果に対するさらなる感受性または抵抗性を示す遺伝的変異間の関係について論じる参考文献を有することができる。これらの関係は、知識ベース内に構造化された情報、たとえば、オントロジーにより構造化された情報として記憶され得る。一実施形態では、バリアントとは、腫瘍学における体細胞バリアントまたは患者を遺伝病に罹患しやすくする遺伝バリアントのうちの少なくとも1つである。
【0098】
ブロック1006において、重要性カテゴリがユーザに提供される。一実施形態では、コンピューティングシステム102が、重要性カテゴリをユーザに提供する。ユーザは、コンピュータ処理された重要性カテゴリに同意するまたは同意しないことができる。一実施形態では、レビューアが、コンピュータ処理された重要性カテゴリに同意しない場合、レビューアは、それを修正することができる。「良性の可能性」のカテゴリを返す上記の例を続けると、レビューアは、「病原性の可能性」などの別の分類を提案し、それを依然として報告に含めてよいが、レビューアがなぜカテゴリ化に同意するか同意しないかに関してメモを加える。
【0099】
検査情報の専門家評価の提供
ユーザは、ポータル105を使用して、専門家が患者の検査情報を評価することを要求し得る。図1100は、一実施形態による、専門家評価をユーザに提供するための方法1100の流れ図である。方法1100は、ハードウェア(たとえば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、ソフトウェア(たとえば、処理デバイス上で実行される命令)、またはそれらの組み合わせを含む処理ロジックによって実行することができる。一実施形態では、方法1100は、コンピューティングシステム102によって実行される。
【0100】
ブロック1102において、検査情報の解釈に関する支援の要求がユーザから受信される。この要求は、特定の患者の検査情報を含み得る。代替または追加として、この要求は、知識ベースにすでに記憶されている検査情報を参照してよい。一実施形態では、コンピューティングシステム102が要求を受信する。
【0101】
ブロック1104において、要求は、1つまたは複数の認定されたバリアント評価専門家に割り当てられる。一実施形態では、コンピューティングシステム102が要求を割り当て、この要求は、ネットワーク106を介して専門家によってアクセス可能である。認定されたバリアント評価専門家は、バリアント評価を準備、実行、または調査するうえでの特定の専門知識を獲得した個人であってよい。専門家は、そのようなものとして公認団体によって公認されてもよいし、基準のセットを満たすことによって公認されてもよい。満たすべき基準のセットは、たとえば、評価される1つもしくは複数のバリアントに応じて、および/または患者を冒す1つもしくは複数の表現型に応じて、変化してよいことは、当業者には認識されよう。コンピューティングシステム102は、評価が専門家に割り当てられたとき、専門家に通知してよい。
【0102】
ブロック1106において、完了した評価報告が、1つまたは複数の認定されたバリアント評価専門家から受信される。一実施形態では、コンピューティングシステム102が、ネットワーク106を介して専門家から評価報告を受信する。評価報告は、検査情報に含まれる1つまたは複数のゲノムバリアントの1つまたは複数の臨床的重要性評価を含むことができる。専門家は、報告のすべてまたは一部を作成した可能性がある。
【0103】
ブロック1108において、評価報告が、要求したユーザに返される。
【0104】
一実施形態では、上述のように、専門家は、組織によって登録および公認されてよい。組織は、専門家のネットワークを構築し、ユーザを適切な公認専門家と結び付ける仲介料を取り、必要とされる解釈をユーザが得る助けとなり得る。たとえば、ユーザは、ポータル105を介して検査情報をシステムにロードすることができ、ユーザは、たとえばプロンプトを介して、検査情報の解釈に関する専門家の支援を要求することができる。次いで、検査を、評価に関する1つまたは複数の認定専門家に割り当てることができる。一実施形態では、専門家は、単独で分析を行う。別の実施形態では、専門家は、システムの状況において検査情報を共有するおよび/またはユーザと通信することによって、ユーザと協調して分析を行う。次いで、専門家は、専門家によって評価された検査情報に含まれたバリアントの評価を含む報告をユーザに提供することができる。
【0105】
遺伝子型の表現型との相関
より多くの情報が知識ベースに提供されるにつれて、特定の遺伝子シグネチャを表現型に結び付けるデータ内の大規模パターンを決定することができる。図12は、一実施形態による、遺伝子型を表現型に相関させるための方法1200の流れ図である。方法1200は、ハードウェア(たとえば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、ソフトウェア(たとえば、処理デバイス上で実行される命令)、またはそれらの組み合わせを含む処理ロジックによって実行することができる。一実施形態では、方法1200は、コンピューティングシステム102によって実行される。
【0106】
遺伝子型または表現型の相関は、遺伝子変化を表現型に結び付けることを含むことができる。たとえば、これは、変異が特定の疾患と関連するまたは特定の薬物治療に対する良好な反応と関連すると決定することを含む。検査情報は、分析のために複数の組織から経時的に収集することができる。
【0107】
ブロック1202において、患者の試料に関する遺伝情報および表現型情報を含む検査情報が受信される。一実施形態では、コンピューティングシステム102が、ネットワーク106を介して複数のクライアント104から検査情報を受信する。表現型情報はオントロジーにより構造化可能であり、したがって、構造化されていない知識の収集が困難なことで悪名高い相互相関を行うことが可能である。患者の試料中の各患者は、このタイプの分析で検査情報を使用する同意を提供することが必要とされることがある。患者の同意は、受信される検査情報に含めることもできる。
【0108】
ブロック1204において、試料における遺伝子レベルまたはバリアントレベルの遺伝子変化と表現型との相関が確立される。一実施形態では、コンピューティングシステム102が、検査データ内のパターンを識別することによって、パスウェイレベル、遺伝子レベル、またはバリアントレベルの遺伝子変化相関を確立する。
【0109】
ブロック1206において、統計学的に有意な相関に基づいて、バイオマーカ分類器が作製される。一実施形態では、コンピューティングシステム102が、バイオマーカ分類器を作製する。一実施形態では、1つまたは複数のユーザが、バイオマーカ分類器の作製を監督し、知らせる。バイオマーカ分類器は、母集団を複数の部分母集団に層別するように構成することができる。たとえば、バイオマーカ分類器は、各患者の検査情報に適用して、患者が属する部分母集団を決定することができる。バイオマーカ分類器は、以下の技法のうちの1つまたは複数を使用して作製されてよい。バイオマーカ分類器は、Sequence Kernel Association Test(SKAT)などの統計学的方法を使用して開発することができる。代替または追加として、バイオマーカ分類器は、k平均法または階層クラスタリングなどのクラスタリング方法を使用して作製することができる。これらの技法は、バリアント、遺伝子、および/またはパスウェイレベルに適用して、遺伝子変化と観察される表現型との統計学的に有意な関連を識別し得る。これらの技法は、複数のデータセットおよび母集団にわたって複数のユーザから表現型情報および遺伝子型情報を供給するために使用可能である。適切な同意を有する試料の場合、システムは、複数のユーザによって実行される複数の試験にわたって実行されるメタアナリシスにおいて統計学的に有意な遺伝子型-表現型の関連を識別することができる。
【0110】
一実施形態では、部分母集団は、治療的治療に続くまれな有害事象に対する感受性の高い部分母集団と、治療的治療に続くまれな有害事象に対する感受性の低い部分母集団とを含む。別の実施形態では、部分母集団は、治療法に対する可能性の高い応答者の部分母集団と、治療法に対する可能性の低い応答者の部分母集団とを含む。別の実施形態では、部分母集団は、疾患に冒される可能性の高い個人の部分母集団と、前記疾患に冒される可能性の低い個人の部分母集団とを含む。別の実施形態では、部分母集団は民族である。母集団は、上記で説明した母集団とは異なる追加の母集団または他の母集団に分けられてよいことは、当業者には認識されよう。
【0111】
一実施形態では、分類の結果を有する報告がユーザに提供される。この報告は、使用されたバイオマーカ分類器、分類器の信頼水準なども含むことができる。
【0112】
図13は、ユーザの分類を含む例示的な報告1300を示す。報告1300は、実行された検査、高レベル解釈、報告可能なバリアント、および報告可能なバリアントに関連する治療についての情報を含む。図13は例示的な報告1300を提供するが、本発明の実施形態は、他のタイプまたは構成の報告をサポートし、これらの報告では、限定するものではないが本明細書において説明される情報のいずれかを含む、ユーザ分類に関連する任意の情報が、患者または他のユーザに提示可能である。
【0113】
民族的に適合した制御
多数の臨床検査または研究の参加者の多様性は、一般母集団よりも低い。さらに、ゲノムバリアントは、第1の民族的背景の個々人では一般に観察されることがあるが、第2の民族的背景の個々人では一般に観察されないことがある。そのため、ユーザが、バリアントが所与の患者における所与の表現型の原因である(良性多型とは対照的に)かどうかを知ることを真に希望する場合、そのユーザは、患者と同じ民族的背景であるのが理想的な多数の個人を含む、対象となる表現型によって冒されていないさまざまな個人に対するバリアントを鑑定しなければならない。これによって、ユーザは、まれな疾患によって冒された患者で観察されるレアバリアントが、患者の民族集団において実際にまれである(一般母集団ではまれであるが、患者の民族集団では比較的一般的であることとは対照的である)ことを比較的に確信することができる。図14は、例示的な一実施形態による、アレル頻度を評価するための方法1400の流れ図である。方法1400は、ハードウェア(たとえば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、ソフトウェア(たとえば、処理デバイス上で実行される命令)、またはそれらの組み合わせを含む処理ロジックによって実行することができる。一実施形態では、方法1400は、コンピューティングシステム102によって実行される。
【0114】
ブロック1402において、検査情報およびこの検査情報内の1つまたは複数のバリアントの重要性分類が受信される。検査情報および重要性分類は、検査被験者、検査室、ケア提供者、保険会社などの1つまたは複数の情報源から受信可能である。
【0115】
ブロック1404において、アレル頻度データベース内の1つまたは複数のバリアントのアレル頻度が評価される。一実施形態では、アレル頻度データベースはストレージ110に配置される。
【0116】
一実施形態では、アレルデータベースは、少なくとも最小数のデータ点を有する。たとえば、データベースは、少なくとも10の異なる民族からの少なくとも500人を含む少なくとも10,000人から得られた配列情報を含むことが必要とされることがある。
【0117】
一実施形態では、アレル頻度データベースは、複数の部分母集団に関する1つまたは複数のバリアントの頻度を含む。この部分母集団は、たとえば、限定するものではないが、以下の民族、すなわち、コーカサス人、ラテンアメリカ系、インド人、フィリピン人、プエルトリコ人、アフリカ人、ポリネシア人、ネイティブアメリカン、トルコ人、湾岸/中東人、パルシー教徒、中国人、マレーシア人、アシュケナージ系ユダヤ人、ニュージーランド人、朝鮮人、日本人、およびオーストラリア先住民を含むことができる。
【0118】
ブロック1406において、アレル頻度がユーザに提供される。一実施形態では、コンピューティングシステム102が、アレル頻度をユーザに提供する。
【0119】
一実施形態では、アレル頻度に基づくノルムから、1つまたは複数のバリアントの重要性分類が修正される。分類は、重症度を高くまたは低くするように修正可能である。バリアントの評価された頻度は、母集団における一般的な頻度と比較することができる。現在の検査情報の実頻度および実頻度データベースの実頻度が、ユーザに提供可能である。検査結果を民族状況結果に含めることによって、ゲノムバリアントに起因する表現型に対する原因相関の修正が得られる。たとえば、バリアントの分類は、非罹患母集団において患者の表現型を合理的に説明するには高すぎるアレル頻度で存在するバリアントに関して、より重症の分類から良性に修正可能である。
【0120】
たとえば、バルデー・ビードル症候群(BBS)を引き起こすバリアントである特定のBBS1バリアントを考えてみよう。BBS1は、突然変異するとバルデー・ビードル症候群と呼ばれる疾患を引き起こし得る遺伝子である。このバリアントは、頻度に基づくと人間の0.2%で生じ、この疾患の有病率は70,000人中約1人である。この情報から、ほとんどの人は、このバリアントは一般母集団では0.3%で見られると予想する。これは、バリアントが0.2%で見られるという知見と一致する。しかし、データベースが、特定の民族からの統計学的に有意な情報を含まない場合、バリアントがその民族では一般母集団と同じ発生率を有するかどうか、または、その民族について遺伝的に特殊な何かがあるかどうかは不明である。たとえば、システムがプエルトリコ人の母集団において20%のバリアント知見を返すシナリオを考えてみよう。ここで、一般母集団における最大値は0.3%と予想される。これによって、バリアントはプエルトリコ人の方が一般的なのかどうか、または単に、統計学的に有意な分析を行うのに十分な数のプエルトリコ人がデータベースに含まれていないのかどうか、という疑問が生じる。限定するものではないが臨床的に評価する患者の民族を表すシークエンシングされた個人の大規模グループを含む複数の民族からのデータ点に関する特定の要件を有するアレル頻度データベースを使用することによって、これらの問題が改善される。
【0121】
バリアントのスコア付け
配列に基づいた検査は、単一の患者において数百万の観察されるバリアントを潜在的に生じさせることができる。そうでないものから患者の評価または治療において関連するまたは重要である可能性が最も高いのはどのバリアントかを決定することは複雑になり得る。バリアント評価は、対象となる特定のバリアントに関連する情報の深度を反映する信頼水準をユーザに提供するためにスコア付けされてよい。図15は、一実施形態による、バリアントをスコア付けするための方法1500の流れ図である。方法1500は、ハードウェア(たとえば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、ソフトウェア(たとえば、処理デバイス上で実行される命令)、またはそれらの組み合わせを含む処理ロジックによって実行することができる。一実施形態では、方法1500は、コンピューティングシステム102によって実行される。
【0122】
ブロック1502において、患者の検査情報が受信される。一実施形態では、コンピューティングシステム102が、1つまたは複数の情報源から検査情報を受信する。たとえば、検査情報は、たとえば、限定するものではないが、検査被験者、検査室、ケア提供者、保険会社などから受信可能である。
【0123】
ブロック1504において、検査情報内の1つまたは複数のバリアントの信頼度スコアが、重み付けされた入力に基づいて生成される。一実施形態では、コンピューティングシステム102が信頼度スコアを生成する。重み付けされた入力としては、たとえば、限定するものではないが、民族的に適合した個人を含む患者の疾患表現型によって冒されていない個人の母集団における1つまたは複数のバリアントの頻度、知識ベースにおける表現型との1つまたは複数のバリアントの関連、1つまたは複数のバリアントの部位におけるシークエンシングカバレッジ、およびバリアントコーリングソフトウェアによって報告される1つまたは複数のバリアントのコール信頼度、の任意の組み合わせがあり得る。各入力に与えられる重みは、所定の値、入力の強度に基づいて調整された値、またはそれらの任意の組み合わせを使用して設定することができる。たとえば、民族的に適合する個人を含む患者の疾患表現型によって冒されていない個人の母集団における1つまたは複数のバリアントの頻度は、頻度が、疾患関連に関する高い信頼値と関連する場合、決定的である。上記で説明したように、バリアントが、特に患者の民族的部分母集団内で、極度に一般的な場合、そのバリアントが前記患者においてまれな疾患の原因である可能性は低い。
【0124】
知識ベース内の1つまたは複数のバリアントの表現型との関連は、知識ベース内の文献においてバリアントがどのくらい頻繁に表現型と関連するかという尺度を含むことができる。1つまたは複数のバリアントの部位におけるシークエンシングカバレッジは、バリアントが何回試料採取されたかという尺度を参照してよく、バリアントは、ゲノム中の他のヌクレオチドの一部分にすぎない。たとえば、1Xのカバレッジでは、このバリアントが存在する1つのデータ点のみがあり、これは、極度に不良な品質を示し得る。一方、カバレッジが増加する(たとえば、100Xのカバレッジ、1000Xのカバレッジ、または3000Xのカバレッジ)につれて、結果の信頼度も増加させることができる。
【0125】
一実施形態では、1つまたは複数のバリアントのコール信頼度は、ソフトウェアによって実行される分析の信頼性の品質スコアを一般に生成するアライメントおよび/またはバリアントコーリングソフトウェアによって報告することができる。たとえば、アライメントおよび/またはバリアントコーリングソフトウェアは、CLC Bio Genomics Workbenchであってよい。別の例として、アライメントおよび/またはバリアントコーリングソフトウェアは、BWA/GATK(Burrows-Wheeler Aligner/Genome Analysis Toolkit)であってよい。
【0126】
一実施形態では、入力は、決定木によって重み付けすることができる。いくつかの例では、決定木は、入力が信頼度スコアに寄与するのを防ぐことができる。
【0127】
バリアント分類アラートの提供
知識ベースにおいて、特定のゲノムバリアントについての情報が、たとえば、臨床評価重要性カテゴリ、臨床試験情報、治療情報、および/または参考文献一覧に関して、追加、更新、または変更されるとき、ユーザが、アラートを受信することを希望することがある。図16は、一実施形態による、バリアント分類アラートを提供するための方法1600の流れ図である。方法1600は、ハードウェア(たとえば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、ソフトウェア(たとえば、処理デバイス上で実行される命令)、またはそれらの組み合わせを含む処理ロジックによって実行することができる。一実施形態では、方法1600は、コンピューティングシステム102によって実行される。
【0128】
ブロック1602において、1つまたは複数のゲノムバリアントを含む検査情報が受信される。一実施形態では、コンピューティングシステム102が、1つまたは複数の情報源から検査情報を受信する。たとえば、検査情報は、たとえば、限定するものではないが、検査被験者、検査室、ケア提供者、保険会社などから受信可能である。
【0129】
ブロック1604において、アラート報告の要求がユーザから受信される。このアラート報告は、ユーザが関心を抱く特定のゲノムバリアントを識別し得る。アラート報告の要求は、同じユーザまたは異なるユーザからの他のアラート報告要求と共にコンピューティングシステム102によって記憶されてよい。
【0130】
ブロック1606において、アラート報告が、知識ベース内で変更を検出したことに応答して生成され、この変更は1つまたは複数のゲノムバリアントに対応する。一実施形態では、コンピューティングシステム102は、ストレージ110の知識ベース内の情報を監視し、追加イベント、変更イベント、または更新イベントが検出されるとアラート報告を生成する。
【0131】
一実施形態では、報告は、任意の間隔で生成可能である。たとえば、アラート報告は、少なくとも2年に1回の頻度で、または1日に1回の頻度で、または1週間に1回の頻度で、または1か月に1回の頻度で、または1年に1回の頻度で、生成可能である。一実施形態では、報告は、対象となる1つまたは複数のバリアントに関連する知識のかなりの変更が発生したとき、生成可能である。一実施形態では、ユーザにとって興味深いバリアントは、そのユーザの検査情報に含まれる表現型に関連するバリアントに基づいて推測され得る。
【0132】
一実施形態では、アラート報告は、前のバリアント分類が生成されたまたは別の方法で臨床報告の一部として第三者に提供された以降の1つまたは複数のバリアントの分類の変更を要約する。
【0133】
一実施形態では、アラート報告は、たとえば、コンピューティングシステム102によって、ユーザに提供される。アラート報告を提供することは、ユーザへのアラート報告の配信を容易にする任意のアクションを指してよい。たとえば、アラート報告を提供することは、アラート報告が生成されたことをユーザに通知する、アラート報告をユーザに電子的に送信する、コンピューティングシステム102においてユーザにアラート報告を提供する、患者ポータルにアクセスするようにユーザに警告する、またはそれらの任意の組み合わせによって実行されてよい。
【0134】
図17は、例示的なアラート報告1700を示す図である。アラート報告1700は、バリアント識別子と、バリアントの以前の分類と、バリアントの新しいまたは更新された分類と、更新日と、分類の変更につながるエビデンスの要約とを含む。図17は例示的なアラート報告1700を提供するが、本発明の実施形態は、他のタイプまたは構成のアラート報告をサポートし、これらの報告では、限定するものではないが本明細書において説明される情報のいずれかを含む、バリアント変更に関連する任意の情報が、患者または他のユーザに提示可能である。
【0135】
患者ポータル
これまでの説明の大部分は、ユーザが医師、研究者、検査室の技術者、製薬会社などである例に関係していた。しかしながら、患者自身が、知識ベース内に記憶された情報にアクセスすることに関心を抱くことがある。図18は、一実施形態による、患者ポータルを提供するための方法1800の流れ図である。方法1800は、ハードウェア(たとえば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、ソフトウェア(たとえば、処理デバイス上で実行される命令)、またはそれらの組み合わせを含む処理ロジックによって実行することができる。一実施形態では、方法1800は、コンピューティングシステム102によって実行される。
【0136】
ブロック1802において、患者の検査情報が、たとえば、コンピューティングシステム102によって受信される。検査情報は、知識ベースに記憶することができる。検査情報は、患者または許可された提供者などの任意の情報源から受信され得る。
【0137】
ブロック1804において、ポータルを通じての検査情報へのアクセスがユーザに提供される。一実施形態では、コンピューティングシステム102は、検査情報へのアクセスが与えられていることを、患者または許可された提供者に通知する。一実施形態では、ユーザは、患者、提供者、患者の家族、友人、代理人、または代表者、医師、保険会社、またはそれらの任意の組み合わせなどの、ポータルにアクセスする任意のユーザであってよい。
【0138】
ブロック1806において、検査情報を使用するために、同意がポータルを通じてユーザから受信される。同意は、分析、疾患研究、臨床試験マッチング、治療研究、治療開発、転帰研究、一般公開、要求側当事者への公開、または任意の目的のうちの少なくとも1つに検査情報を使用することに関するものであってよい。一実施形態では、コンピューティングシステム102が、ユーザから同意を受信する。
【0139】
一実施形態では、ユーザは、認証されてから、ポータルへのアクセスが提供される。認証は、たとえば、システムにログインすることを含むことができる。
【0140】
一実施形態では、ユーザに関連する検査情報は、遺伝情報、検査情報が生成された後で利用可能になったアノテーションをサポートすることなどを含む。この情報は、ポータル上で利用可能にされると、ユーザに提供することができる。たとえば、この実施形態は、ポータル上でアラート報告として提供することができる。
【0141】
ポータルへのアクセスは、条件を満たすことに基づいて提供可能である。一実施形態では、ポータルへのアクセスは、購読料の支払いによって管理される。別の実施形態では、ポータルへのアクセスは、ユーザに関連する検査情報の使用条件への同意に基づく。別の実施形態では、ポータルへのアクセスは、検査情報に基づいたターゲットとされた広告または提案を受信するための同意に基づく。別の実施形態では、ポータルへのアクセスは、一般母集団および/または特定の民族部分母集団内でのアレル頻度情報などの、患者の検査情報に基づいて算出された匿名要約統計量を公開するための同意に基づく。
【0142】
ポータルとのユーザの対話は、ユーザについての情報を決定するために使用可能である。一実施形態では、ポータルへのユーザのアクセスは監視される。アクセスを監視することに基づいて、ユーザが臨床試験への登録に適格であると決定することができる。たとえば、ポータルへのユーザのアクセスは、たとえば、限定するものではないが、ユーザの健康ステータス、ユーザの位置、ユーザの利用可能性、およびユーザがそのような情報に関心を抱くことについての何かを示すことができる。このタイプのステータス情報は、ポータルとは異なる情報源から容易に入手可能でないことがあり、さまざまな要因の中でもとりわけ、臨床試験への登録に適格とすることができる。ユーザは、ユーザに恩恵を与え得る臨床試験ユーザを適合させ得るために使用され得る治療歴および遺伝子型情報をポータルにアップロードすることもできる。
【0143】
図19は、例示的な患者ポータル1900を示す図である。一実施形態では、患者ポータル1900は、コンピューティングシステム102によって提供される。患者ポータル1900は、患者に関連する検査情報を表示する。たとえば、患者ポータル1900は、患者が、FDAの承認を受けたターゲットとされる治療法に対する関連EGFR変異を有するどうかを示す。患者ポータル1900は、治療、治療成功の特徴付け、および治療に関連する適応症を含むいくつかの薬物治療法も表示する。患者ポータル1900は、ゲノムバリアントに関連する臨床試験も表示する。
【0144】
図19は例示的な患者ポータル1900を提供するが、本発明の実施形態は、他のタイプまたは構成の患者ポータルをサポートし、これらの患者ポータルでは、限定するものではないが本明細書において説明される情報のいずれかを含む、患者に関連する任意の情報が、患者または他のユーザに提示可能である。
【0145】
バリアント分類ルールの改善
図20は、例示的な一実施形態による、バリアント分類ルールを改善するための方法2000の流れ図である。方法2000は、ハードウェア(たとえば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、ソフトウェア(たとえば、処理デバイス上で実行される命令)、またはそれらの組み合わせを含む処理ロジックによって実行することができる。一実施形態では、方法2000は、コンピューティングシステム102によって実行される。
【0146】
ブロック2002において、患者の検査情報が受信される。一実施形態では、コンピューティングシステム102は、患者の検査情報を受信する。検査情報は、1つまたは複数の情報源から受信可能である。たとえば、検査情報は、たとえば、限定するものではないが、検査被験者、検査室、ケア提供者、保険会社などから受信可能である。
【0147】
ブロック2004において、検査情報内の1つまたは複数のバリアントの複数の専門家バリアント評価が受信される。専門家バリアント評価は、たとえば、限定するものではないが、検査室、ケア提供者、保険会社、研究機関などを含む、1つまたは複数の情報源から受信可能である。専門家バリアント評価は、バリアントの鑑定のための任意のスコア付けロジック、たとえばバリアント評価のための米国臨床遺伝学会(ACMG)ルール、本明細書において説明するスコア付けロジックのいずれか、他の任意のスコア付けロジック、またはそれらの任意の組み合わせを使用することができる。一実施形態では、専門家バリアント評価は、バリアントの手動評価である。
【0148】
ブロック2006において、バリアント評価のためのスコア付けロジックの選択が受信される。バリアント評価のためのスコア付けロジックは、任意のタイプのスコア付けロジック、たとえば、バリアント評価のためのACMGルール、本明細書において説明するスコア付けロジックのいずれか、他の任意のスコア付けロジック、またはそれらの任意の組み合わせであってよい。一実施形態では、スコア付けロジックは前もって選択される。一実施形態では、スコア付けロジックは、特定の検査の提供に基づいて選択される。
【0149】
ブロック2008において、複数の専門家バリアント評価が、スコア付けロジックによる1つまたは複数のバリアントのスコア付けと比較される。
【0150】
ブロック2010において、比較することの結果がユーザに提供される。比較することの結果は、複数の専門家バリアント評価とスコア付けロジックによるスコア付けとの相関度を含むことができる。この相関度は、スコア付けロジックがどれくらい専門家評価と類似しているかまたは異なるかを示すことができる。結果はまた、たとえば、標準的な機械学習プロセスを使用してコンピューティングシステム102のスコア付けロジックを改善するために、フィードバックループにおいて使用可能である。
【0151】
アレルのカウントまたは頻度のプーリング
バリアント分析技法が高度になるにつれて、バリアントと表現型との意味のある関係を引き出すために依拠するバリアント試料の数が多くなり、バリアント試料のデータセットも多様性を増す。しかしながら、バリアントデータの従来の情報源は、少なすぎる試料セット、民族バイアス、またはこの両方を経験する。たとえば、エクソームバリアントサーバ(EVS)プロジェクトおよび1,000ゲノムプロジェクトなどのプロジェクトは、現在、何千にも達するが10,000以下のゲノム情報を有する。データセットはコーカサス人に民族的に偏っており、民族的部分母集団(たとえば、プエルトリコ人)のためのデータセットは、これらの部分母集団における一般的な多型の識別を可能にするには少なすぎる。プールされた頻度および知見のカウントなどのアレル統計量のデータベースが大規模になり、多様性を増すにつれて、潜在的なまれな疾患を引き起こすバリアントを良性バリアントと区別することが容易になる。したがって、そのようなデータベースは、配列に基づいた検査の臨床解釈、ならびに、たとえば診断および患者の層別のために新規な疾患を引き起こすバリアントおよび遺伝子バイオマーカを識別することを目的とするトランスレーショナル研究に恩恵を与えることができる。従来のデータベースの問題は、一部は、ヒト遺伝情報に対する制限およびそれを共有することへの抵抗によって引き起こされる。公共バリアントデータの従来の情報源の制限により、このデータを使用するいかなる分析も、公共配列データベースにおいて過小評価される民族母集団に属する患者においてバリアントを誤って解釈する高いリスクを有する。
【0152】
本明細書において説明する技法は、より広範囲の同意が得られた試料からのアレル統計量を組み合わせて、アレルカウントまたは頻度カバレッジの増加をもたらすことによって、これらの不足分を克服する。バリアント分析ワークフロー中にデータを収集することによって、研究者および臨床ラボが有用な手段で情報を共有することがより簡便になり、そのため、より多数の試料が遺伝子型の解釈の目的でそれ自体として含まれる。そのうえ、より完全なゲノム情報ではなくカウントまたは頻度などの匿名のプールされたアレル統計量をユーザが共有するしくみを提供することによって、実施形態によって、ユーザは、ゲノム情報を共有しやすくなることが可能である。ユーザは、一般に、完全なゲノム情報を共有しにくく、プールされ匿名化されたゲノム情報を共有しやすい。実施形態はまた、コミュニティに戻さずにデータを貯蔵する傾向を克服するように設計されたゲノム情報を共有するようにユーザに報奨を提供する。たとえば、システムは、所与のユーザが「寄与し」、自分のゲノムデータセットをプールに寄与することを可能にすることにも同意した場合、そのユーザのゲノムデータセットに、プールされたアレル統計量を用いてアノテーションを付与することのみを可能にし、それによって、そのユーザならびにデータセットが「オプトイン」されるまたはコミュニティに参加することに同意したすべての他のユーザを発見する力を増強する。ユーザのコミュニティからのデータセットの組み合わせを活用することによって、アレルのカウントまたは頻度などのバリアント分布についてのより完全で代表的な情報がもたらされる。これによって、臨床的配列に基づいた検査解釈の効率化ならびに疾患を引き起こすバリアントの識別の高速化および精度向上などの遺伝情報を分析するための能力の増強が可能になる。さらに、プールされたレベルにおける共有を可能にすることによって、個々の患者がプールへの寄与に基づいて個人的に識別されるリスクが軽減される。このレベルの共有はリスクが低いので、ユーザは、遺伝情報を共有しやすく、そうする可能性が高くなる。一実施形態では、プールされたバリアント統計量は、たとえば試料表現型単位または民族性/家系単位で、部分プールに分割される。この実施形態では、プエルトリコ系の患者に関して配列に基づいた検査を分析するユーザは、対象となる特定のバリアントは世界的母集団では非常にまれであるが、実際には、プエルトリコ人母集団では非常に一般的であり、したがって、この患者において疾患を引き起こす可能性が低いことを示すアレル統計量が提供され得る。
【0153】
本明細書で使用するとき、「匿名化された」という用語は、本来は個人的に識別可能でなく、したがって匿名である情報を指す。個人的に識別可能な情報のない複数の個人からのアレル統計量のプールは、本来、匿名化されるまたは実際に匿名であること、個人のプライバシーを保証する追加のステップが講じられてよいが、それ自体として個人のプールからアレル統計量を計算する行為は、匿名化されたアレル統計量を生じさせることが可能であることは、当業者には認識されよう。
【0154】
図21は、例示的な一実施形態による、アレルカウントのコミュニティデータベースを構築するための方法2100の流れ図である。方法2100は、ハードウェア(たとえば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、ソフトウェア(たとえば、処理デバイス上で実行される命令)、またはそれらの組み合わせを含む処理ロジックによって実行することができる。一実施形態では、方法2100は、コンピューティングシステム102によって実行される。
【0155】
ブロック2102では、異なるユーザによって生成された試料から得られたヒトバリアントデータセットが受信される。一実施形態では、コンピューティングシステム102は、複数のユーザからヒトバリアントデータセットを受信する。試料は、10,000以上などの比較的多数の生物学的試料から得られてよい。さらに、試料は、10人以上などのさまざまな異なるユーザに由来してよい。多数の試料およびさまざまな情報源は、上記で説明した利点の多くをもたらす。異なるユーザは、バリアント分析またはそれからプールされた統計量を共有するための同意を参加者から受信した検査室またはプロジェクトを含むことができる。
【0156】
一実施形態では、バリアントデータセットに関する解釈ワークフロー中にバリアントデータセットが集められ、同意が得られる。たとえば、検査室が試料に対して検査を実行するとき、検査室は、プロセス中にコンピューティングシステム102に結果を送信してよく、結果を収集、処理、または解釈するためにツールが使用され得る。別の実施形態では、同意は、前払いのユーザ(user up-front)から受信されてもよいし、プールされたアレル統計量を見ることにユーザが最も関心を抱くときは、分析を見るときに受信されてもよい。
【0157】
データをプールに提供したユーザは、積極的または消極的にのいずれかで、プールされたアレルカウント情報を他のユーザと共有することに同意する。積極的に同意することは、たとえば、インタフェース上に提示されるダイアログボックスによってユーザが明確に同意すること、同意を含むライセンス契約を受諾することなどを含むことができる。消極的な同意は、たとえば、特に、ツールを使用すると、プールされたアレルカウント情報を他のユーザと共有することに同意したとして扱われることをユーザが認識しているとき、ツールまたはワークフローの使用を含むことができる。さらに、同意は、バリアント分析ワークフローにおける1つまたは複数のステージにおいて獲得され得る。たとえば、同意の選択肢は、オンラインツールを使用するためにサインアップしたときに新しいユーザに、オンラインツールにログインするときに既存のユーザに、プールされたアレルデータを使用もしくは比較するための条件として、またはそれらの任意の組み合わせとして、ユーザに提示可能である。
【0158】
ユーザは、同意するため、またはプールされたデータ内で共有する目的で情報を提供するために、1つまたは複数の報奨を提供されることがある。たとえば、上述のように、同意は、プールされたデータを使用または比較するために、条件として使用することができる。別の報奨は、1つまたは複数のプールのカウントまたは頻度へのアクセスであってよい。さらに別の報奨は、バリアントデータを解釈する際に使用するための、コミュニティにプールされたアレル頻度またはカウントへのアクセスであってよい。ユーザは、より高い品質またはより大量の試料を提出することと引き換えに、プール情報へのより高いアクセスを付与され得る。これらの非限定的な例示的な報奨は説明のために提示されているが、他の任意のタイプの報奨が使用可能であることを理解されたい。
【0159】
一実施形態では、受信されたヒトバリアントデータセットは、上記で説明したものなど、オントロジーにより構造化された患者検査情報の知識ベースに記憶される。
【0160】
ブロック2104では、試料またはそれからのバリアントのうちの1つまたは複数がアレルのプールに寄与することが決定される。一実施形態では、コンピューティングシステム102は、知識ベースを検索することによって、1つまたは複数の試料がアレルのプールに寄与すると決定する。この決定は、所与の試料に対応する患者情報が特定のプールの1つまたは複数の要件またはその組み入れ基準を満たすかどうかに基づいて行われ得る。プールは、たとえば、民族性、表現型などに基づいて、定義可能である。試料の患者情報が、プール要件または組み入れ基準を満たすと決定される場合、試料はアレルのプールに追加可能である。
【0161】
1つまたは複数の試料またはバリアントまたはユーザデータセットは、アレルのプールに寄与しないとも決定され得、したがって、除外基準に基づいてプールから除外可能である。試料の除外基準または組み入れ基準としては、たとえば、試料のゲノムカバレッジの幅、試料のカバレッジの深さ、試料の品質、試料が見つかった配列の品質、バリアントコール品質、試料に関連する表現型、試料の冗長性、バリアントカウント、データの情報源に関する信用メトリック、コミュニティフィードバック、十分に確立された疾患を引き起こすバリアントを含むこと、手動もしくは自動のQC、またはそれらの任意の組み合わせがあり得る。データセット試料内のバリアントは、バリアントコール品質、読み取り深度、一般的な技術的エラーもしくは故障モードとの既知の関連、手動もしくは自動の品質制御、またはそれらの任意の組み合わせのうちに基づいて、除外されてもよいし、含められてもよい。この品質制御は、複数の情報源から収集されたデータを使用するときに有益である。なぜなら、この品質制御は、重複試料が何回もカウントされる(multiply-counted)のを防ぐ助けと成り、誤ってコールされたバリアントを除外し、不十分な品質を有する試料がコミュニティによって依拠されるのを防ぐ。組み入れおよび/または除外のために使用される基準は、プールを定義するために使用されてよく、基準は、プールを修正するように経時的に調整されてよい。
【0162】
一実施形態では、試料のうちの1つまたは複数の民族性または疾患状態にアノテーションが付与され得る。試料は、主成分分析(PCA)、ユーザにより提供されたアノテーション、バイオマーカに基づいた分析、またはそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを使用してアノテーションが付与され得る。たとえば、ユーザは、試料の民族性のアノテーションを提供することがあり、PCAは、アノテーションを確認するために使用可能である、またはその逆も可能である。一実施形態では、試料の推定(probable)民族性は、特定の民族的部分母集団に関するアレル頻度データベースを構築するために組み入れ基準として使用され得る。別の実施形態では、試料のアノテーションが付与されたまたは推測される疾患状態は、対象となる遺伝子疾患または他の表現型によって冒されていない試料を有するアレル頻度データベースを構築するために使用され得る。これらの特徴は、特定の民族的背景の患者におけるまれな遺伝子疾患の原因である可能性の低い一般的なバリアントのフィルタリングに特に適しているコミュニティアレル頻度データベースの構築を可能にするために組み合わされてよい。なぜなら、それらのバリアントは、対象となる患者と同じ民族母集団の健康なメンバーにおいて一般的に観察されるからである。一実施形態では、そのようなバリアントは、頻度、帰属(imputed)頻度、またはカウントなどの、アレル統計量のプールされ、匿名化された知識ベースからのこのエビデンスに基づいて、対象となる患者において「良性」または「良性の可能性」と分類され得る。
【0163】
ブロック2106では、プール内で所与の変異が観察された回数などのアレル統計量が計算される。一実施形態では、コンピューティングシステム102は、所与のバリアントがプール内で観察された回数を計算する。プールは、1つまたは複数の試料の民族性もしくは表現型、上記で説明した組み入れ基準もしくは除外基準、またはそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つによって定義することができる。さらに、アレル頻度は、バリアントがプール内で観察された回数に基づいて生成され得る。アレル頻度は、所与の変異の観察された発生の数と所与のバリアントを測定する可能性を有すると思われるプール内の試料の総数との比とすることができる。この比における試料の総数は、バリアントカバレッジに基づいて帰属され(imputed)得る。たとえば、帰属することは、対象となるゲノムのその部分に関するシークエンシング情報が、試料中の領域内で一般的に生じる他のバリアントを検出することによって試料採取されたかどうかを決定することを含み得る。他のアレル統計量も、ブロック2106において計算されてよい。
【0164】
結果として得られるアレル統計量は、1つまたは複数の手段で使用可能である。統計量は、試料に寄与したユーザに提供可能である。統計量は、バリアントフィルタリングにおいて、または本明細書において説明したものなどのバリアント分類ロジックによって、使用することができる。統計情報へのアクセスは、本明細書において説明するツールなどのウェブベースのリソースを介してユーザに提供可能である。
【0165】
自分の情報または自分の情報の少なくとも一部分をプールに追加することに同意しない個人もいることがある。しかしながら、ユーザについての他の情報との相関が調査されないので、部分的なデータによって、プールの完全性は減少することができる。一実施形態では、ユーザは、1つまたは複数のバリアントに関連する個人のデータセット全体を提供するために必要とされてもよいし、データセットをまったく提出しなくてもよい。すなわち、そのような一実施形態では、部分的データセットは、提出が可能ではない。これによって、ユーザは、プールに寄与するデータセットの完全性を保ちながら、特定の個人または彼らの情報がプールに提供されないようにする。
【0166】
例示的なコンピューティングシステム
たとえば、図22に示されるコンピュータシステム2200などの1つまたは複数のコンピュータシステムを使用するさまざまな実施形態が実施可能である。コンピュータシステム2200は、本明細書において説明する機能を実行することが可能な任意のコンピュータとすることができる。
【0167】
コンピュータシステム2200は、プロセッサ2204などの1つまたは複数のプロセッサ(中央処理装置すなわちCPUとも呼ばれる)を含む。プロセッサ2204は、通信インフラストラクチャまたはバス2206に接続される。
【0168】
1つまたは複数のプロセッサ2204は各々、グラフィック処理装置(GPU)であってよい。一実施形態では、GPUは、数学的に処理の多い(mathematically intensive)アプリケーションを処理するように設計された専用電子回路であるプロセッサである。GPUは、コンピュータグラフィックスアプリケーションに一般的な数学的の処理量の多いデータ、画像、ビデオなどなどのデータの大規模ブロックの並列処理に効率的な並列構造を有してよい。
【0169】
コンピュータシステム2200は、ユーザ入出力インタフェース2202を通じて通信インフラストラクチャ2206と通信する、モニタ、キーボード、ポインティングデバイスなどのユーザ入出力デバイス2203も含む。
【0170】
コンピュータシステム2200は、ランダムアクセスメモリ(RAM)などのメインメモリまたは1次メモリ2208も含む。メインメモリ2208は、1つまたは複数のレベルのキャッシュを含んでよい。メインメモリ2208は、その中に制御ロジック(すなわち、コンピュータソフトウェア)および/またはデータを記憶させる。
【0171】
コンピュータシステム2200は、1つまたは複数の二次記憶デバイスまたはメモリ2210も含んでよい。二次メモリ2210としては、たとえば、ハードディスクドライブ2212および/またはリムーバブルストレージデバイスもしくはドライブ2214があり得る。リムーバブルストレージドライブ2214は、フロッピーディスクドライブ、磁気テープドライブ、コンパクトディスクドライブ、光ストレージデバイス、テープバックアップデバイス、および/または他の任意のストレージデバイス/ドライブであってよい。
【0172】
リムーバブルストレージドライブ2214は、リムーバブルストレージユニット2218と相互作用してよい。リムーバブルストレージユニット2218は、コンピュータソフトウェア(制御ロジック)および/またはデータが記憶されたコンピュータ使用可能ストレージデバイスまたはコンピュータ可読ストレージデバイスを含む。リムーバブルストレージユニット2218は、フロッピーディスク、磁気テープ、コンパクトディスク、DVD、光ストレージディスク、および/他の任意のコンピュータデータストレージデバイスであってよい。リムーバブルストレージドライブ2214は、既知の様式でリムーバブルストレージユニット2218から読み取る、および/またはリムーバブルストレージユニット2218に書き込む。
【0173】
例示的な一実施形態によれば、二次メモリ2210は、コンピュータプログラムおよび/または他の命令および/またはデータがコンピュータシステム2200によってアクセスされることを可能にするための他の手段、機器、または他の手法を含んでよい。そのような手段、機器、または他の手法としては、たとえば、リムーバブルストレージユニット2222およびインタフェース2220があり得る。リムーバブルストレージユニット2222およびインタフェース2220の例としては、プログラムカートリッジおよびカートリッジインタフェース(ビデオゲームデバイスで見られるものなど)、取り外し可能なメモリチップ(EPROMまたはPROMなどの)および関連するソケット、メモリスティックおよびUSBポート、メモリカードおよび関連メモリカードスロット、ならびに/または他の任意のリムーバブルストレージユニットおよび関連インタフェースがある。
【0174】
コンピュータシステム2200は、通信インタフェースまたはネットワークインタフェース2224をさらに含んでよい。通信インタフェース2224は、コンピュータシステム2200が、リモートデバイス、リモートネットワーク、リモートエンティティなどの任意の組み合わせ(参照番号2228によって個々におよびまとめて参照される)と通信および相互作用することを可能にする。たとえば、通信インタフェース2224は、コンピュータシステム2200が、通信経路2226を介してリモートデバイス2228と通信することができてよく、通信経路2226はワイヤードおよび/またはワイヤレスであってよく、LAN、WAN、インターネットなどの任意の組み合わせを含んでよい。制御ロジックおよび/またはデータは、通信経路2226を介してコンピュータシステム2200におよびそれから送信されてよい。
【0175】
一実施形態では、制御ロジック(ソフトウェア)が記憶された有形のコンピュータ使用可能媒体またはコンピュータ可読媒体を備える有形の装置または物品は、本明細書において、コンピュータプログラム製品またはプログラムストレージデバイスとも呼ばれる。これは、限定するものではないが、コンピュータシステム2200と、メインメモリ2208と、二次メモリ2210と、リムーバブルストレージユニット2218および2222と、ならびに前述のものの任意の組み合わせを実施する有形の物品とを含む。そのような制御ロジックは、1つまたは複数のデータ処理デバイス(システム2200コンピュータなど)によって実行されると、そのようなデータ処理デバイスに、本明細書において説明するように動作させる。
【0176】
この開示に含まれる教示に基づいて、図22に示されるものとは異なるデータ処理デバイス、コンピュータシステム、および/またはコンピュータアーキテクチャを使用する本発明の実施形態をどのように作製および使用するかは、当業者には明らかであろう。特に、実施形態は、本明細書において説明するものとは異なるソフトウェア実装形態、ハードウェア実装形態、および/またはオペレーティングシステム実装形態とともに動作し得る。
【0177】
終わりに
「発明を実施するための形態」セクションは、特許請求の範囲を解釈するために使用されることを意図しているが、「発明の概要」セクションおよび「要約書」セクション(もしあれば)、そのように使用されることを意図したものではないことを理解されたい。「発明の概要」セクションおよび「要約書」セクション(もしあれば)は、発明者によって企図される本発明の1つまたは複数の例示的な実施形態を記載してよいが、すべての例示的な実施形態を記載するとは限らず、したがって、決して本発明または添付の特許請求の範囲を制限することを意図したものではない。
【0178】
本発明について、本明細書で例示的な分野および適用例に関する例示的な実施形態を参照しながら説明してきたが、本発明はそれに限定されないことを理解されたい。それに対する他の実施形態および修正形態が可能であり、本発明の範囲および趣旨に含まれる。たとえば、この段落の一般性を制限することなく、実施形態は、図に示されるおよび/または本明細書において説明されるソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、および/またはエンティティに限定されない。さらに、実施形態(本明細書において明示的に説明されようとされまいと)は、本明細書において説明する例を超える分野および適用例に対してかなりの実用性を有する。
【0179】
実施形態について、本明細書では、その指定の機能および関係の実装形態を示す機能ビルディングブロックを用いて説明してきた。これらの機能ビルディングブロックの境界は、本明細書では、説明しやすくするために恣意的に定義されてきた。指定の機能および関係(またはその等価物)が適切に実行される限り、代替形態が定義可能である。また、代替実施形態は、本明細書において説明する順序と異なる順序を使用して、機能ブロック、ステップ、動作、方法などを実行してよい。
【0180】
本明細書における「一実施形態(one embodiment)」、「一実施形態(an embodiment)」、「例示的な一実施形態」、または類似の句について言及する場合、説明する実施形態は、特定の特徴、構造、または特性を含んでよいが、あらゆる実施形態は、特定の特徴、構造、または特性を必ずしも含むとは限らないことを示す。さらに、そのような句は、必ずしも同じ実施形態を参照するとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が一実施形態に関連して説明されるとき、本明細書において明示的に言及または説明されていようといまいと、そのような特徴、構造、または特性を他の実施形態に組み込むことは、当業者の知識の範囲内である。
【0181】
本発明の範囲は、上記で説明した例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびその等価物のみによって定義されるべきである。
図1
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