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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20230905BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
B62D25/20 G
B60J5/00 Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020154088
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2022047995
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 章仁
(72)【発明者】
【氏名】木村 亮
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-24236(JP,A)
【文献】特開平7-290953(JP,A)
【文献】特開2014-124997(JP,A)
【文献】特開2016-107767(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0065679(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102006016607(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
B62D 17/00- 25/08
B62D 25/14- 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
前記車両の側面に位置する乗降用のドア開口を有している車体と、
前記車体に取り付けられており、前記ドア開口を開閉可能に構成されているとともに、前記ドア開口を跨って延びているドア補強部材を有している、ドアと、
を備えており、
前記車体は、
前記ドア開口の下端に沿って延びているロッカと、
前記ロッカの上面から車両内側に延びているフロアパネルと、
前記フロアパネルの上面に固定されており、前記フロアパネルの端部に沿って車両前後方向に延びており、その車両外側の端部が前記ロッカの上方に位置しているとともに、その車両内側の端部が前記ロッカよりも車両内側に位置している第1補強部材と、
前記第1補強部材の上面に固定されているとともに、車幅方向に延びている第2補強部材と、
を備えており、
前記第2補強部材は、少なくとも第1固定箇所、第2固定箇所及び第3固定箇所において、前記第1補強部材に固定されており、
前記第2固定箇所は、前記第1固定箇所に対して後方に位置しており、
前記第3固定箇所は、前記第1固定箇所及び前記第2固定箇所に対して車両内側に位置しているとともに、前記車両前後方向に関して前記第1固定箇所と前記第2固定箇所との間に位置しており、
前記ロッカは、前記ロッカの前記上面から上方に延びているロッカフランジを備えており、
前記第2補強部材の車両外側の端部は、前記ロッカフランジと対向している、車両。
【請求項2】
車両であって、
前記車両の側面に位置する乗降用のドア開口を有している車体と、
前記車体に取り付けられており、前記ドア開口を開閉可能に構成されているとともに、前記ドア開口を跨って延びているドア補強部材を有している、ドアと、
を備えており、
前記車体は、
前記ドア開口の下端に沿って延びているロッカと、
前記ロッカの上面から車両内側に延びているフロアパネルと、
前記フロアパネルの上面に固定されており、前記フロアパネルの端部に沿って車両前後方向に延びており、その車両外側の端部が前記ロッカの上方に位置しているとともに、その車両内側の端部が前記ロッカよりも車両内側に位置している第1補強部材と、
前記第1補強部材の上面に固定されているとともに、車幅方向に延びている第2補強部材と、
を備えており、
前記ロッカは、前記ロッカの前記上面から上方に延びているロッカフランジを備えており、
前記第2補強部材の車両外側の端部は、前記ロッカフランジと対向しており、
前記車両は、前記フロアパネルの上面から突出しているとともに、前記ロッカから車両内側に延びているフロアクロスメンバをさらに備えており、
前記第1補強部材の前端は、前記フロアクロスメンバに固定されている、車両。
【請求項3】
前記第2補強部材は、前記ドア開口の下端の後方に配置されている、請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
前記ドアは、リアドアであり、
前記車両は、前記車両の前記側面において前記リアドアよりも前方に位置するフロントドアをさらに備えている、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両。
【請求項5】
前記ドア補強部材の後端は、前記ロッカの前記上面よりも下方に位置している、請求項1からのいずれか一項に記載の車両。
【請求項6】
前記第2補強部材には、車幅方向に延びているとともに、上下方向に変位している段差が設けられている、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
路面を走行する車両には、前面衝突、後面衝突、側面衝突等、様々な方向からの衝突が発生し得る。乗員が乗降時に通過するドア開口の周辺は、特に側面衝突に対して強度が不足しやすい。特許文献1に開示される車両は、ドア開口の下端に沿って延びているロッカと、そのロッカの下部に固定されているフロアパネルとを備えている。ロッカ上面とフロアパネルの上面とは、第1補強部材(例えば、ガセット)によって接続されている。特許文献1の車両は、側面衝突が発生した場合に、車両外側からロッカに加えられた衝撃荷重を、第1補強部材を介してフロアパネルに伝達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-124997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
側面衝突では、ドア開口から衝突物が侵入するおそれがあり、その侵入を防止するための構造として、ドアの内部にドア補強部材を設けることが知られている。ドア補強部材は、ドア開口を跨るように延びており、ドア開口を通過しないように構成されている。しかしながら、側面衝突の荷重が比較的に大きく、ドア開口の周縁に変形が生じてしまうと、ドア補強部材がドア開口の内側へ入り込み、衝突物の侵入を許してしまうおそれがある。特に、特許文献1に記載の構造では、ロッカの上面に設けられたロッカフランジが、車両内側へ倒れ込むように変形しやすい。本明細書では、車両に側面衝突が発生したときに、ロッカフランジが変形することを抑制することによって、ドア補強部材がドア開口の内側へ入り込むことを回避し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する車両は、車体と、ドアと、を備えている。車体は、前記車両の側面に位置する乗降用のドア開口を有している。ドアは、前記車体に取り付けられており、前記ドア開口を開閉可能に構成されているとともに、前記ドア開口を跨って延びているドア補強部材を有している。前記車体は、さらに、ロッカと、フロアパネルと、第1補強部材と、第2補強部材と、を備えている。ロッカは、前記ドア開口の下端に沿って延びている。フロアパネルは、前記ロッカの上面から車両内側に延びている。第1補強部材は、前記フロアパネルの上面に固定されており、前記フロアパネルの端部に沿って車両前後方向に延びており、その車両外側の端部が前記ロッカの上方に位置しているとともに、その車両内側の端部が前記ロッカよりも車両内側に位置している。第2補強部材は、前記第1補強部材の上面に固定されているとともに、車幅方向に延びている。前記ロッカは、前記ロッカの前記上面から上方に延びているロッカフランジを備えている。前記第2補強部材の車両外側の端部は、前記ロッカフランジと対向している。
【0006】
上述した車両では、ロッカの近傍に位置するフロアパネルの端部を補強する第1補強部材に加えて、第1補強部材の上面に固定された第2補強部材がさらに設けられている。第2補強部材は、車幅方向に延びているとともに、その車両外側の端部は、ロッカフランジと対向している。このような構成によると、側面衝突が発生し、ドア補強部材が車体へ押し込まれたとしても、第2補強部材によって、ロッカフランジが車両内側に倒れることを防止することができる。さらに、第2補強部材が第1補強部材の上面に固定されていることで、ロッカフランジを含むロッカに加えられた側面衝突時の荷重を、第1補強部材と第2補強部材とによってフロアパネルに伝達することができる。その結果、ロッカに加えられた衝突時の荷重をよりスムーズにフロアパネルに伝達することができる。
【0007】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例の車両の斜視図である。
図2】車両の左側リアドアを外側からみた側面図を示す。
図3】実施例の車両内側から見た左側リアドア後部周辺の形状の斜視図を示す。
図4図2の線IV-IVに沿った断面図を示す
図5図2の線V-Vに沿った断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本技術の一実施形態では、前記第2補強部材が、前記ドア開口の下端の後方に配置されていてもよい。ドア開口の下端の後方は、側面衝突時にドア補強部材が強く押し込まれ易く、ロッカフランジが変形しやすい箇所である。そのような箇所に第2補強部材を設けることで、ロッカフランジの変形をより効果的に抑制することができる。
【0010】
本技術の一実施形態では、前記ドアが、リアドアであってもよい。即ち、前記車両は、前記車両の前記側面において、前記リアドアよりも前方に位置するフロントドアをさらに備えてもよい。但し、他の実施形態では、側面に一つのドアが配置された車両に対して、本技術が適用されてもよい。
【0011】
本技術の一実施形態では、前記ドア補強部材の後端が、前記ロッカよりも下方に配置されていてもよい。このような構成によると、側面衝突が発生したときに、第2補強部材で補強されたロッカフランジによって、ドア補強部材の後端がドア開口の内側へ入り込むことを効果的に抑制することができる。
【0012】
本技術の一実施形態では、前記第2補強部材が、少なくとも第1固定箇所、第2固定箇所及び第3固定箇所において、前記第1補強部材に固定されていてもよい。この場合、前記第2固定箇所は、前記第1固定箇所に対して後方に位置していてもよい。そして、前記第3固定箇所は、前記第1固定箇所及び前記第2固定箇所に対して車両内側に位置しているとともに、前記車両前後方向に関しては、前記第1固定箇所と前記第2固定箇所との間に位置してもよい。このような固定箇所の組み合わせによると、特に車両内側に配置された第3固定箇所によって、側面衝突の発生時に第2補強部材が第1固定箇所又は第2固定箇所を中心として回転しにくくなる。その結果、第2補強部材がフロアパネルに対してさらに側突時の荷重を伝達しやすくなる。
【0013】
本技術の一実施形態では、前記第2補強部材には、車幅方向に延びているとともに、上下方向に変位している段差が設けられていてもよい。第2補強部材に段差を設けることにより、第2補強部材の車幅方向の荷重に対する強度が向上する。その結果、第2補強部材が、フロアパネルに対してさらに側突時の荷重を伝達しやすくなる。
【0014】
本技術の一実施形態では、前記車両が、前記フロアパネルの上面から突出しているとともに、前記ロッカから車両内側に延びているフロアクロスメンバを備えていてもよい。その場合、前記第1の補強部材の前端は、前記フロアクロスメンバに固定されていてもよい。このような構成によると、ロッカに対して加えられた衝突荷重を、第1補強部材と第2補強部材だけでなく、さらにフロアクロスメンバを介してフロアパネルへ伝達することができる。
【実施例
【0015】
図面を参照して実施例の車両について説明する。図1を参照して、実施例の車両10について説明する。車両10は、路面を走行する車両である。車両10は、車体12と、左側リアドア20Lと、を備えている。図示は省略したが、車両10は、他にも、4個の車輪と、走行用モータと、左右のフロントドアと、右リアドアと、を搭載している。特に限定されないが、車両10は、走行用モータによって車輪を駆動して走行する電動車両である。なお、本明細書では、図面における方向FRは、車両10の前後方向(車長方向)における前方を示し、方向RRは車両10の前後方向における後方を示す。また、方向LHは車両10の左右方向(車幅方向)における左方を示し、方向RHは車両10の左右方向における右方を示す。そして、方向UPは車両10の上下方向(高さ方向)における上方を示し、方向DNは車両10の上下方向における下方を示す。なお、本明細書では、車両10の前後方向、左右方向および上下方向を、それぞれ単に前後方向、左右方向および上下方向と称することがある。
【0016】
図1に示されるように、車体12は、一対のロッカ14R、14Lと、一対のセンターピラー18R、18Lと、フロアパネル15と、前側フロアクロスメンバ16fと、後側フロアクロスメンバ16rと、を備えている。一対のロッカ14R、14Lは、車体12の左右両端において前後方向に延びている。一対のロッカ14R、14Lは、車両10の客室を保護する構造体である。車両10に前面衝突、側面衝突、後面衝突等が発生した場合には、その荷重は、最初に一対のロッカ14R、14Lに加えられる。
【0017】
一対のセンターピラー18R、18Lは、車体12の中央部で上下方向に延びている。一対のセンターピラー18R、18Lも、一対のロッカ14R、14L同様、車両10の客室を保護する構造体である。一対のセンターピラー18R、18Lの前方には、それぞれ、右側フロントドア開口17Rと、左側フロントドア開口17Lとが設けられている。右側フロントドア開口17Rと左側フロントドア開口17Lとは、乗員が車両10の前席に乗降する開口である。同様に、一対のセンターピラー18R、18Lの後方には、それぞれ、右側リアドア開口19Rと、左側リアドア開口19L(図2参照)とが設けられている。右側リアドア開口19Rと左側リアドア開口19Lとは、乗員が車両10の後席に乗降する開口である。
【0018】
それぞれのドア開口を覆うように、車体12には、4枚のドアが取り付けられる。図1では、車両10の内部構造を理解しやすくするために、左側リアドア開口19L(図2参照)を覆う左側リアドア20Lのみを図示し、その他のドアを省略している。左側リアドア20Lは、その前側に設けられているヒンジフック26L(図3参照)によって車体12のヒンジ(図示省略)に回転可能に保持される。左側リアドア20Lの上部には、窓20wが設けられており、左側リアドア20Lの後部には、ドアハンドル20hが配置されている。車両10の後席に乗り込む乗員は、ドアハンドル20hを外側に引っ張ることで、左側リアドア20Lを開ける。これにより、左側リアドア開口19Lが開放される。
【0019】
左側リアドア20Lの内部には、上側ドア補強部材22uと、下側ドア補強部材22dとが配置されている。図1に示されるように、上側ドア補強部材22uおよび下側ドア補強部材22dは、ともに車両10の前後方向(すなわち、図1の紙面左右方向)に延びている。上側ドア補強部材22uおよび下側ドア補強部材22dは、ともに前側ほど上方に傾斜している。下側ドア補強部材22dは、ロッカ14Lに交差するように延びている。下側ドア補強部材22dの後端は、ロッカ14Lよりも下方に位置している。上側ドア補強部材22uおよび下側ドア補強部材22dは、ともにパイプ材で構成されている補強部材であり、左側リアドア20Lのアウターパネル(図示省略)に溶接されている。上側ドア補強部材22uおよび下側ドア補強部材22dは、車両10に左側から側面衝突が発生した場合に、その衝突荷重を車体12(すなわち、フロアパネル15、ロッカ14L、センターピラー18L等)に伝達する。上側ドア補強部材22uおよび下側ドア補強部材22dは、ともにインパクトビームと呼ばれることがある。
【0020】
フロアパネル15は、車両10の客室の床を形成する板金部品であり、前後方向及び左右方向に沿って広がっている。フロアパネル15の上面には、左右方向(すなわち、車幅方向)に延びている前側フロアクロスメンバ16fおよび後側フロアクロスメンバ16rが配置されている。前側フロアクロスメンバ16fおよび後側フロアクロスメンバ16rは、フロアパネル15の上面から突出している。前側フロアクロスメンバ16fおよび後側フロアクロスメンバ16rの右側の先端は、右側のロッカ14Rに接続されている。前側フロアクロスメンバ16fおよび後側フロアクロスメンバ16rの左側の先端は、左側のロッカ14Lに接続されている。すなわち、前側フロアクロスメンバ16fおよび後側フロアクロスメンバ16rは、一対のロッカ14R、14Lを接続している。これにより、前側フロアクロスメンバ16fおよび後側フロアクロスメンバ16rは、車両10のフロア周りの剛性を向上させることができる。
【0021】
図2を参照して、左側リアドア20Lと左側リアドア開口19Lとの位置関係について説明する。図2は、車両10の側面図であり、車両外側から見た左側リアドア20Lの形状を示している。左側リアドア20Lは、左側リアドア開口19Lの全周を覆っている。左側リアドア開口19Lの下端は、ロッカ14Lの上端によって構成されている。すなわち、ロッカ14Lは、左側リアドア開口19Lの下端に沿って前後方向に延びている。図2では、ロッカ14Lの上端を破線で示している。ロッカ14Lの上端の下方には、フロアパネル15が前後方向に延びている。左側リアドア開口19Lの下端の前方には、後側フロアクロスメンバ16rが配置されている。先に述べたように、後側フロアクロスメンバ16rは、左右方向に延びており、ロッカ14Lに接続している。後側フロアクロスメンバ16rの上面と、フロアパネル15は、前後方向に延びている第1補強部材30Lで接続されている。第1補強部材30Lの前端は、後側フロアクロスメンバ16rの上面に固定されており、その後端は、フロアパネル15の上面に固定されている。左側リアドア開口19Lの下端の後方には、第2補強部材32Lが配置されている。
【0022】
左側リアドア開口19Lの前端は、センターピラー18Lの後端によって構成されている。左側リアドア開口19Lの上端および後端は、車体12の本体によって構成されている。すなわち、左側リアドア開口19Lは、車体12の構造体によって形成されている。
【0023】
左側リアドア20Lの内部に固定されている上側ドア補強部材22uおよび下側ドア補強部材22dは、左側リアドア20Lの前端部から後端部にわたって延びている。上側ドア補強部材22uおよび下側ドア補強部材22dは、左側リアドア開口19Lを跨って延びている。左側リアドア20Lは、外側に設けられているアウターパネルと、その内側に固定されているインナーパネル20p(図3参照)によって構成されている。アウターパネルおよびインナーパネル20pは、ともに板金部品であり、特に外側から(すなわち、車両10の側面から)の荷重によって変形しやすい。車両10に側面衝突が発生し、左側リアドア20Lに対して側面から衝突荷重が加えられた場合に、左側リアドア開口19Lを跨って延びている上側ドア補強部材22uおよび下側ドア補強部材22dが、衝突荷重を車体12に伝達する。その結果、衝突エネルギーが車体12に吸収されるため、衝突物が左側リアドア開口19Lを通過して車両10の客室内に侵入することを防止することができる。
【0024】
図3および図4を参照して、第1補強部材30L、第2補強部材32Lを車体12に固定する構造について説明する。最初に、図4を参照して、ロッカ14Lの形状について説明する。ロッカ14Lは、ロッカインナー40と、ロッカアウター42とから構成されている。ロッカ14Lは、ロッカインナー40とロッカアウター42とを互いに溶接することで、矩形に閉じた断面形状を有している。ロッカインナー40は、外側が開放されているとともに、上下端に上下方向に延びているフランジを備えている。同様に、ロッカアウター42は、内側が開放されているとともに、上下端に上下方向に延びているフランジを備えている。ロッカインナー40とロッカアウター42とは、互いにフランジを当接させた状態で溶接される。その結果、図4に示されるように、ロッカ14Lの上面であるロッカ上面14uには、上方にのびるロッカフランジ14fが形成される。なお、車両10(図1参照)には、車体12、左側リアドア20Lに対して、様々な内装部材が配置される。しかしながら、これらの内装部材は、主に樹脂で構成されているため、主に板金で構成されている車体12、左側リアドア20Lに比して剛性が低い。そのため、側面衝突発生時における内装部材の寄与度は小さい。このため、図3図5では、車体12、左側リアドア20Lに固定されている内装部品の図示を省略している。
【0025】
ロッカインナー40のロッカ上面14uには、フロアパネル15の外側の端部が固定されている。フロアパネル15は、ロッカ上面14uから車両10(図1参照)の内側に延びている。フロアパネル15の上面には、第1補強部材30Lが固定されている。図3に示されるように、第1補強部材30Lは、ロッカ14Lに沿って車両前後方向に延びている。第1補強部材30Lの前端は、車幅方向に沿って後側フロアクロスメンバ16rの上面に固定されている。図4に示されるように、第1補強部材30Lの外側の端部は、ロッカ14Lの上方で、フロアパネル15の外側の端部の上面に固定されている。図3に示されるように、第1補強部材30Lは、フロアパネル15の外側の端部に沿って車両前後方向に延びている。第1補強部材30Lの内側の端部は、フロアパネル15の上面に固定されている。第1補強部材30Lの内側の端部は、ロッカ14Lよりも車両内側でフロアパネル15の上面に固定されている。このように、第1補強部材30Lは、ロッカ14Lと、後側フロアクロスメンバ16rと、フロアパネル15とを結合している。これにより、第1補強部材30Lは、側面衝突が発生した場合に、ロッカ14Lおよび後側フロアクロスメンバ16rに加えられた衝突荷重を、フロアパネル15に伝達することができる。
【0026】
図3に示されるように、第1補強部材30Lの上面には、さらに第2補強部材32Lが固定されている。第2補強部材32Lは、第1補強部材30Lの上面の前後方向の中央部の外側端部に固定されている。第2補強部材32Lは、第1ボルトB1と、第2ボルトB2と、第3ボルトB3と、によって第1補強部材30Lの上面に固定されている。第1ボルトB1は、第1固定箇所で第2補強部材32Lを第1補強部材30Lに固定する。第2ボルトB2は、第2固定箇所で第2補強部材32Lを第1補強部材30Lに固定する。第3ボルトB3は、第3固定箇所で第2補強部材32Lを第1補強部材30Lに固定する。第2ボルトB2が配置される第2固定箇所は、第1ボルトB1が配置される第1固定箇所に対して後方に位置している。第3ボルトB3が配置される第3固定箇所は、第1固定箇所および第2固定箇所に対して内側に位置している。第3固定箇所は、第1固定箇所と第2固定箇所の前後方向における略中央に配置されている。
【0027】
図4に示されるように、第2補強部材32Lは、車両内側の端部を第3ボルトB3で固定されている。第2補強部材32Lは、第3ボルトB3で固定されている車両内側の端部からロッカフランジ14fに向かって左方向(すなわち、図4の紙面右方向)に向かって延びている。すなわち、第2補強部材32Lは、車幅方向に延びている。第2補強部材32Lの外側の端部には、補強フランジ32fが設けられている。補強フランジ32fは、第2補強部材32Lの外側の端部から上方に延びており、ロッカフランジ14fと対向している。
【0028】
先に述べたように、左側リアドア開口19Lの下端は、ロッカ14Lの上端によって構成されている。すなわち、図3に示されるように、左側リアドア開口19Lの下端は、ロッカフランジ14fによって構成されている。左側リアドア開口19Lは下端の後部から徐々に上方に変位する。図3に示されるように、左側リアドア開口19Lの下端の後部において、ロッカ14Lのロッカフランジ14fは、左側リアドア開口19Lに沿って上方に変位し、後方に直線的に延びている。ロッカフランジ14fは、左側リアドア開口19Lの下端の後部において、そのまま上方に変位する左側リアドア開口19Lと分離する。左側リアドア開口19Lの後部は、車体12によって構成される。
【0029】
図3に示されるように、第2補強部材32Lは、ロッカフランジ14fと、左側リアドア開口19Lとが分離する部位に対向するように配置されている。さらに、左側リアドア開口19Lの外側には、左側リアドア20Lが配置されている。左側リアドア20Lのインナーパネル20pの外側には、上側ドア補強部材22uおよび下側ドア補強部材22dが配置されている。図3に示されるように、下側ドア補強部材22dは、左側リアドア開口19Lの下端を超えて延びている。上側ドア補強部材22uおよび下側ドア補強部材22dの前端は、ヒンジパネル24Lに固定されている。ヒンジパネル24Lの上下方向の中心部には、ヒンジフック26Lが設けられている。ヒンジフック26Lに対して、車体12に配置されているヒンジ(図示省略)が挿通される。このヒンジを中心に左側リアドア20Lが開閉することで、左側リアドア開口19Lが開閉される。
【0030】
車両10(図1参照)に左側(すなわち、図4の紙面右側)から側面衝突が発生した場合、車体12の左側リアドア開口19Lの周辺が変形し、下側ドア補強部材22dがロッカ14Lのロッカアウター42の側面に沿って移動することがある。その場合、図4の破線に示されるように、下側ドア補強部材22dは、ロッカ14Lの上方に移動する。側面衝突発生時、下側ドア補強部材22dは、ロッカフランジ14fの外側の面と対向する。その際、下側ドア補強部材22dは、ロッカフランジ14fに対して衝突荷重F1を加える。ロッカフランジ14fは、上方に延びており、その上端は開放されている。そのため、外側から衝突荷重F1が加えられると、ロッカフランジ14fは、上端を内側に倒すように変形しやすい。
【0031】
図4に示されるように、ロッカフランジ14fの内側には、第2補強部材32Lの補強フランジ32fが配置されている。先に述べたように、第2補強部材32Lは、車幅方向に延びており、車幅方向に加えられる衝突荷重F1に対して、変形しにくい。実施例の車両10(図1参照)では、ロッカフランジ14fと対向するように、第2補強部材32Lを配置することで、ロッカフランジ14fの上端が内側に倒れることを防止する。その結果、下側ドア補強部材22dは、左側リアドア開口19Lの内側に入り込みにくい。左側リアドア開口19Lの内側には、リアシート50が配置されている。リアシート50には、車両10の乗員が着座する。第2補強部材32Lによって、下側ドア補強部材22dが左側リアドア開口19Lの内側に入り込みにくくすることで、リアシート50に着座している乗員を保護することができる。先に述べたように、側面衝突が発生した場合の衝突荷重は、最初にロッカ14Lに加えられる。実施例の車両10では、フロアパネル15と、第1補強部材30Lと、第2補強部材32Lとをロッカ14Lに向かって延ばすことで、ロッカ14Lに加えられた衝突荷重F1を、3つの部材を介して車体12に伝達することができる。これにより、局部的な荷重の集中を避けることができるとともに、衝突時のエネルギーを3つの部材によって吸収することができる。
【0032】
さらに、図3および図5に示されるように、第2補強部材32Lは、前後方向の中央部に、左右方向に延びている第2ビード32bが設けられている。図5に示されるように、第2ビード32bは、上下方向に変位している段差S1、S2を備えている。図3に示されるように、段差S1、S2は、左右方向(すなわち、車幅方向)に延びている。第2ビード32bは、車幅方向の荷重に対して変形しにくい。第2補強部材32Lに車幅方向に延びている第2ビード32bを設けることで、下側ドア補強部材22dがロッカフランジ14fに加えた衝突荷重F1による、第2補強部材32Lの変形を抑制することができる。このため、第2補強部材32Lは、第1補強部材30Lに衝突荷重F1を伝達しやすい。さらに、図5に示されるように、第1補強部材30Lにも、3個の第1ビード30bが設けられている。第2補強部材32Lに設けられている第2ビード32b同様に、第1ビード30bによって、第1補強部材30Lの変形を抑制することができる。
【0033】
実施例の留意点を以下に述べる。上述した第1補強部材30Lおよび第2補強部材32Lは、左側リアドア開口19Lに配置されていたが、これに限定されず、例えば左側フロントドア開口17Lの周辺に配置されてもよい。その場合、左側フロントドアに配置されるドア補強部材の位置関係に応じて、第2補強部材を配置する位置を変更してもよい。さらに、上述した第2補強部材32Lは、3個の固定箇所で第1補強部材30Lの上面に固定されていたが、溶接で固定されてもよいし、4個の固定箇所で固定されてもよい。また、第2ビード32bが設けられていない第2補強部材を採用してもよい。実施例の第1補強部材30Lの前端は、後側フロアクロスメンバ16rに固定されていたが、これに限定されず、第1補強部材30Lの前端は、フロアパネル15に固定されてもよい。
【0034】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0035】
10 :車両
12 :車体
14L、14R :ロッカ
14f :ロッカフランジ
14u :ロッカ上面
15 :フロアパネル
16f :前側フロアクロスメンバ
16r :後側フロアクロスメンバ
17L :左側フロントドア開口
17R :右側フロントドア開口
18L、18R :センターピラー
19L :左側リアドア開口
19R :右側リアドア開口
20L :左側リアドア
20h :ドアハンドル
20p :インナーパネル
20w :窓
22d :下側ドア補強部材
22u :上側ドア補強部材
24L :ヒンジパネル
26L :ヒンジフック
30L :第1補強部材
30b :第1ビード
32L :第2補強部材
32b :第2ビード
32f :補強フランジ
40 :ロッカインナー
42 :ロッカアウター
50 :リアシート
B1 :第1ボルト
B2 :第2ボルト
B3 :第3ボルト
図1
図2
図3
図4
図5