(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】ティシュペーパー及びティシュペーパー製品
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20230905BHJP
【FI】
A47K10/16 C
(21)【出願番号】P 2020165556
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 貞直
(72)【発明者】
【氏名】越智 良一
(72)【発明者】
【氏名】椎木 裕介
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第01/049936(WO,A1)
【文献】特開2015-016355(JP,A)
【文献】特開2020-081659(JP,A)
【文献】特開2018-171254(JP,A)
【文献】特開2019-150136(JP,A)
【文献】特開2007-260161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 7/00、10/16
D21H 27/00-27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3プライ又は4プライが積層されたティシュペーパーであって、
各プライは吸湿性を示す水系の保湿剤を含有しており、
各プライ相互間の前記水系の保湿剤の含有量は、製品の乾燥保湿剤含有率を100としたとき、各プライの乾燥保湿剤含有率が92.0~108.0の範囲内にあ
り、
各プライはその両面相互間でISO25718による算術平均高さSaの大小の相違を有し、3プライ又は4プライの積層体における外側に位置するそれぞれのプライの外側面が、前記算術平均高さSaが小さい面であり、
前記3プライ又は4プライの積層体における外側に位置するそれぞれのプライの外側面が、内側面より前記保湿剤の含有量が多い、
ことを特徴とするティシュペーパー。
【請求項2】
3プライ又は4プライが積層されたティシュペーパーであって、
前記3プライ又は4プライの積層体における内側に位置するそれぞれのプライの、前記算術平均高さSaが小さい面の前記保湿剤の含有量が、前記算術平均高さSaが大きい面の前記保湿剤の含有量よりも多い、
ことを特徴とする請求項1記載のティシュペーパー。
【請求項3】
前記保湿剤は、グリセリンを主成分とする請求項1
または2記載のティシュペーパー。
【請求項4】
前記保湿剤の各プライにおける含有量が10.0~35.0%である請求項1
または2記載のティシュペーパー。
【請求項5】
3プライが積層されたティシュペーパーであって、1プライの坪量が15.0~22.5g/m
2、3プライの紙厚が140~270μmである、請求項1
または2記載のティシュペーパー。、
【請求項6】
4プライが積層されたティシュペーパーであって、1プライの坪量が15.0~22.5g/m
2、4プライの紙厚が180~360μmである、請求項1
または2記載のティシュペーパー。
【請求項7】
積層シートの露出面におけるISO25718による算術平均高さSaが0.005~0.012mmである、請求項1
または2記載のティシュペーパー。
【請求項8】
3プライ又は4プライが積層されたティシュペーパーが収納体に収納されたティシュペーパー製品であって、
各プライは吸湿性を示す水系の保湿剤を含有しており、
各プライ相互間の前記水系の保湿剤の含有量は、各プライにおける含有量の平均値を100としたとき、92.0~108.0の範囲内
にあり、
各プライはその両面相互間でISO25718による算術平均高さSaの大小の相違を有し、3プライ又は4プライの積層体における外側に位置するそれぞれのプライの外側面が、前記算術平均高さSaが小さい面であり、
前記3プライ又は4プライの積層体における外側に位置するそれぞれのプライの外側面が、そのプライの内側面より前記保湿剤の含有量が多い、
ことを特徴とするティシュペーパー製品。
【請求項9】
3プライ又は4プライが積層されたティシュペーパーが収納体に収納されたティシュペーパー製品であって、
前記3プライ又は4プライの積層体における内側に位置するそれぞれのプライの、前記算術平均高さSaが小さい面の前記保湿剤の含有量が、前記算術平均高さSaが大きい面の前記保湿剤の含有量よりも多い、
ことを特徴とする請求項8記載のティシュペーパー製品。
【請求項10】
3プライで4組の合計12プライ、もしくは、4プライで3組の合計12プライでの、圧縮仕事量が1.85~2.50gf
・cm/cm
2、かつ、圧縮回復性が46.0~54.5%、
である請求項
8または9記載のティシュペーパー製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティシュペーパーに関し、特に、保湿剤が塗布されているティシュペーパー及びティシュペーパー製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ティシュペーパーは、2プライが主流であるが、近年、3プライや4プライといった多プライで厚み感のあるものの需要も高まりつつある。
このような多プライのティシュペーパーは、製品価格が高い高級タイプに属する製品とされることが多く、このような製品群のティシュペーパーは、特にプライ数に対応した「ふんわりとした嵩高感」と「表面の滑らかさ」と「やわらかさ」とが要求される。
【0003】
そして、多プライ構造の場合、各プライの米坪を高めると、各プライの総和によって紙厚を容易に厚くすることができ、「ふんわりとした嵩高感」さを発現させることができる。
しかし、このように各プライの米坪を高める場合、やわらかさや滑らかな品質も確保したうえで「ふんわりとした嵩高感」が発現するようにすることが重要である。
【0004】
ティシュペーパーには種々のものが市販されており、その一つの分野に水系の保湿剤を含有した保湿ティシューやローションティシューと呼ばれるものがある。
従来の保湿ティシュー、ローションティシューは、花粉症や風邪などで頻繁にティシュペーパーで洟をかむ人のために、繰り返し使用しても肌が赤くならない、痛くならないようにやわらかく滑らかな品質となるよう製造されている。
【0005】
ティシュペーパーの使用形態には、国別にすくなからず相違する点がある。これは生活又は文化様式の相違に基づくものと思われる
日本における保湿ティシュー、ローションティシューは2プライのものが主流であるが、例えば中国では3プライのものが主流である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の3プライが積層された保湿ティシュー又はローションティシュー又はその製造においては、両外層シートに対してのみ保湿剤が適用され、中間層シートには保湿剤が塗布されていないものであった。
【0008】
この従来の保湿ティシュー又はローションティシューにおいては、使用時の使用者が柔らかさを感じさせるために、ある程度の量の保湿剤を適用する必要がある。
しかし、反面、保湿剤の適用量が多いことにより、外層シートの外面にベタツキを生じさせるようになり、好ましいものではない。
【0009】
したがって、本発明は、必要なやわらかさを確保しつつ、外面のベタツキ感を低減した3プライ又は4のティシュペーパー及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決した本発明に係るティシュペーパーは、
3プライ又は4プライが積層されたティシュペーパーであって、
各プライは吸湿性を示す水系の保湿剤を含有しており、
各プライ相互間の前記水系の保湿剤の含有量は、製品の乾燥保湿剤含有率を100としたとき、各プライの乾燥保湿剤含有率が92.0~108.0の範囲内にある、
ことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のティシュペーパー製品は、
3プライ又は4プライが積層されたティシュペーパーが収納体に収納されたティシュペーパー製品であって、
各プライは吸湿性を示す水系の保湿剤を含有しており
各プライ相互間の前記水系の保湿剤の含有量は、製品の乾燥保湿剤含有率を100としたとき、各プライの乾燥保湿剤含有率が92.0~108.0の範囲内にある、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、必要なやわらかさを確保しつつ、外面のベタツキ感を低減した3プライ又は4のティシュペーパーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】ロータリー式インターフォルダの説明図である。
【
図6】従来の3プライの実施の形態の説明図である。
【
図7】従来、想定される4プライの実施の形態の説明図である。。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を示しながら本発明をさらに説明する。
【0015】
3プライ又は4プライが積層されたティシュペーパーである。
2プライではなく、3プライ又は4プライであるために、「ふんわりとした嵩高感」をもたらす。
【0016】
各プライは吸湿性を示す水系の保湿剤(以下「薬液」ともいうことがあり、同義である。)が適用され、保湿剤を含有している。吸湿性を示す水系の保湿剤としてはポリオールを主成分とする保湿剤、特にグリセリンを主成分、すなわちグリセリンを50質量%を超えて含有する、望ましくはグリセリンを70質量%以上含有する保湿剤を使用することができる。グリセリンは保湿性のほか吸湿性を示す。
【0017】
表面性、特に滑らかさを向上させるために、流動パラフィンを含有させることができる。また、必要により1,3-プロパンジオールを6.1質量%以上12.6質量%以下含有させることができる。
【0018】
ティシュペーパー中に、グリセリンなどの保湿剤のほか公知の助剤が含有されてもよい。助剤の例としては、ソルビトール等の保湿補助成分、ティシュペーパー中の水分の保持性を高めるための、親水性高分子ゲル化剤、界面活性剤や柔軟性向上剤、滑らかさの発現を補助する前記の流動パラフィンなどの油性成分、その他、保湿剤の安定化、塗布性を向上させるための乳化剤、防腐剤、消泡剤等が挙げられる。なお、保湿補助成分、水分の保持性を高める親水性高分子ゲル化剤等の成分の配合量は、「ふんわりとした嵩高感」、「やわらかさ」及び「表面の滑らかさ」に過度の影響を及ぼさない程度とする。具体的には、1.0質量%以下、好ましくは0.6質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下とするのがよい。
【0019】
本実施形態のティシュペーパーの1プライの坪量は、15.0~22.5g/m2、特に15.5~20.5g/m2が望ましい。各層の坪量がこの範囲内であると「やわらかさ」と「ふんわりとした嵩高感」とが顕著にあらわれる。
坪量が高いと紙が固くなり、低いとやわらかくなる傾向があるため、坪量は「やわらかさ」への影響が大きいと考えられる。この坪量の下で「3プライ又は4プライであると、顕著に「ふんわりとした嵩高感」を与える。なお、坪量は、JIS P 8124(1998)に基づいて測定した値である。
【0020】
前記水系の保湿剤は各プライにほぼ均等に含有される。すなわち、製品の乾燥保湿剤(薬液)含有率を100としたとき、各プライの乾燥保湿剤(薬液)含有率が92.0~108.0の範囲内にある。望ましくは、プライの乾燥保湿剤(薬液)含有率が95.0~104.0の範囲内にある。
【0021】
図4は3層(1R、2R、3R)のの実施の形態を示し、
図5は4層(1R、2R、3R、4R)実施の形態を示し、
図6は3層(1R、2R、3R)の従来の実施の形態を示し、
図7は3層(1R、2R、3R)の従来の実施の形態を示す。
また、保湿剤の塗布面Fと非塗布面Wを示した。塗布面Fから非塗布面Wに向かって厚み方向に保湿剤の含有濃度の勾配が少なからず存在するので、その濃度勾配を、グラデーションで図示してある。
【0022】
既述のように、従来の保湿ティシュー(ローションティシューとも呼ばれる)においては、使用者が使用時に柔らかさを感じさせるために、ある程度の量の保湿剤を適用する必要がある。そのために、
図6及び
図7に示す従来の実施の形態における中間層(
図6では2R、
図7では2R及び3R)に保湿剤を塗布しないために、外層シートに対する保湿剤の適用量が多くなりがちであり、外層シートの外面にベタツキを生じさせるようになり、好ましいものではない。
これに対し、実施の形態のティシュペーパーは、従来の多層ティシュペーパーと異なり、中間層(中間プライ)、ずなわち(
図4では2R、
図5では2R及び3R)にも水系の保湿剤が適用される。
この構成による利点は、中間層(中間プライ)にも水系の保湿剤を含有させることにより、中間層(中間プライ)に柔らかさに生じさせ、もって積層シート全体が柔らかいものとなることにある。
その結果、外層シートに含有させる保湿剤の量を少なくでき、外層シートの外面(積層シートの露出面)における保湿剤によるベタツキ感をなくす又は抑制することができる。
なお、この利点は、製品の乾燥保湿剤(薬液)含有率を100としたとき、各プライの乾燥保湿剤(薬液)含有率が前掲の範囲内にある限り、各プライの坪量や各プライの保湿剤の含有量と実質的に関係なく、発現するものである。
【0023】
中間層(中間プライ)にも水系の保湿剤を含有させるには、外層のほか、中間層に対しても直接保湿剤を塗布することによって行うことができる。
例えば積層シートの外層シートに保湿剤を塗布した場合、その外層シートへの保湿剤は塗布面から時間経過とともに全体に浸透拡散するように挙動する。しかし、積層シートの外層シートに塗布した保湿剤は、積層シートにカレンダー処理などの外圧を与えると、隣接するシートに一部が移行するようになる。しかし、保湿剤の塗布量が少ない場合には、隣接するシートへの保湿剤の移行量は少ない。
他方で、保湿剤の塗布量が多い場合には、隣接するシートへの保湿剤の移行量は多くなるものの、移行には限度があり、保湿剤の塗布した外層シートの保湿剤含有量と隣接シートの保湿剤含有量との間で明確な高低差を示す。
【0024】
したがって、中間層(中間プライ)にも、柔らかさを担保するために必要な保湿剤を含有させるには、外層のほか、中間層に対しても直接保湿剤を塗布することが必要となる。
逆に、中間層に保湿剤を移行させ、柔らかさを担保するために、外層シートに必要以上の多くの保湿剤を塗布すると、外層シートの外面(露出面)に保湿剤が多く残留するようになり、ベタツキを生じる。
しかるに、中間層(中間プライ)に対しても直接保湿剤を塗布することによって、外層シートの外面(露出面)への保湿剤の塗布量を少なくでき、ベタツキの発生を解消又は抑制できる。
【0025】
ティシュペーパーに柔軟性を与えるための、プライ原紙にクレープ加工を行うことが一般的である。実施の形態においても、クレープ加工を行うことが望ましい。
【0026】
クレープ本数は38~54本/cmが望ましい。
ワンショット3Dで計測されるクレープ本数(本/cm)は、MD方向で線形状を描き、MD方向に1.0~2.0cmの山谷形状の山の数を数え、測定したMD方向の長さで除した値で表すことができる。
ワンショット3Dにより形状測定し、画面上にX-Y平面上の高さプロファイルを示すと、ティシュペーパー表面の高さが色調で表される。クレープの高さ方向の形状が測定断面曲線プロファイルから確認できる。ここで、クレープはMD方向と90垂直方向に谷山が形成されているので、MD方向に1.0~2.0cmの山谷形状の山の数を数え、測定したMD長さで除した値を言う。1サンプルにつき、5点の計測値の平均値を値とする。
凹凸山頂部の尖り具合「山頂点の算術平均曲率Spc」は、2.8~3.5(1/mm)(値が大きいほど表面の細かな凸が尖っている)が望ましい。
【0027】
かかるクレープ加工によって、プライ原紙の一方の面と他方の面との間で、表面粗さが異なるようになる。
【0028】
保湿剤をプライ原紙に塗布する場合、クレープ加工による凹凸が小さい表面に対して保湿剤を塗布するのが好ましい。
すなわち、表面粗さが、ISO25718による算術平均高さSaの大小の相違としてあらわれるプライにおいて、算術平均高さSaが小さい面に対して、保湿剤を塗布するのが望ましい。
そして、算術平均高さSaが小さい面に保湿剤を塗布すると、算術平均高さSaが小さい面であること、保湿剤が十分な量をもって存在する面であることによって、滑らかな手触り感を与えるとともに、柔らかさを与えるようになる。
【0029】
外層は薬液を含むため、保湿剤の塗布後に、積層シートにカレンダー処理がなされると、外層の外側面への外圧により紙は平滑化され、塗布された保湿剤は表面に均一に拡散し、表面が滑らかになり、より一層の「表面の滑らかさ」が発現する。
【0030】
実施の形態の保湿剤が塗布されたティシュペーパーは、非加圧下における外面(特に積層シートの露出面)の算術平均高さSaが0.005~0.012mm、特に0.006~0.008mmであるのが望ましい。この算術平均高さSaが範囲内であると、表面が滑らかで、かつ適度の凹凸を示すので、例えば口紅やファンデーションなどの拭き取り性に優れる。
ここに「非加圧下」とは測定を生成(「きなり」)の状態で行うことである。
【0031】
逆に、原紙プライのクレープ加工による凹凸が大きい表面に対して保湿剤を塗布すると、保湿剤は吸湿性でもあるので、経時的に吸湿により表面にシワが大きく生成し、表面が縮み、表面の滑らかさを損なう。
【0032】
算術平均高さSaは、ISO25178に定められており、定義領域中における表面の平均面に対して、各点の高さの差の絶対値の平均を表したものである。数値が小さいほど表面の平均面に対して、各点の高さの差の絶対値が小さく、表面が平坦であることを示し、数値が大きいほど表面が粗いことを示す。
なお、ティシュペーパーの束が包装体内にポップアップ式で収納されたティシュペーパー製品について、算術平均高さSaを測定する場合、ティシュペーパー束から取り出した試料について、その測定面は折りの山側がある面とする(山頂点の算術平均曲率 Spcにおいても同様)。
【0033】
実施の形態におけるティシュペーパーは、非加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc)は2.8~3.5(1/mm)が望ましい。山頂点の算術平均曲率は、定義領域中における山頂点の主曲率の算術平均を表したものである。数値が小さいほど他の物体と接触する点が丸みを帯びていることを示し、数値が大きいほど他の物体と接触する点が尖っていることと示す。
なお、ポップアップ式の束から得られた試料では、その測定面は折りの山側がある面とする。非加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc)が2.8~3.5(1/mm)であると、表面が滑らかに感じつつ、口紅やファンデーション等の拭き取り性に優れる。
【0034】
本明細書における「算術平均高さSa」及び「山頂点の算術平均曲率(Spc)」は、「ワンショット3D形状測定機 VR-3200(株式会社キーエンス社製)」(以下、「3Dマクロスコープ」ともいう)及びその相当機(非接触三次元測定器)を用いて測定した値をいう。
「3Dマイクロスコープ」は、投光部より照射された構造化照明光により、モノクロC-MOSカメラに写し出された対象物の縞投影画像から形状を測定することができ、特に、得られた縞投影画像を使って、任意の部分の高さ、長さ、角度、体積などを計測することができる。「3Dマイクロスコープ」により得られた画像の観察・測定・画像解析には、ソフトウェア「VR-H2A」及びその相当ソフトウェアを使用することができる。なお、測定条件は、視野面積24mm×18mm、倍率12倍の条件とする。
【0035】
非加圧下の外面の算術平均高さSa及び算術平均曲率(Spc)の具体的な測定手順は次のようにして行う。
測定台に、試料となるプライのままのティシュペーパー(MD方向50mm×CD方向50mm程度の大きさとする)を、測定機を正面にして奥行方向がMD方向となるようにして生成りの状態で載置する。なお、測定に用いる試験片は製品の平坦な部分とする。
ソフトウェア(「VR-H2A」)の画面を操作して、試料表面のメイン画像(テクスチャ)、メイン画像(高さ)、3D画像の3つの画像を得る。次に、前記ソフトウェアの「表面粗さ」を選択するなどして表示される「テクスチャ」画像を、「高さ」画像(高さ方向に色分けされた色調の濃淡で表される画像)に変換する。
次いで、計測パラメータとして少なくとも最大高さ(Sz)、算術平均高さSa、及び山頂点の算術平均曲率(Spc)を設定して測定を行う。測定範囲の大きさは、3.0mm×3.0mmとする。前記ソフトウェアであれば、「領域の追加」で「数値指定」を選択することで測定範囲を設定することができる。測定範囲には、エンボス部分を含まないようにし、さらに、目視にて画面上の各測定範囲内の色調の濃淡が一定に近くなるように測定範囲を設定する。
測定された、最大高さ(Sz)、算術平均高さSa、及び山頂点の算術平均曲率(Spc)の値を確認し、最大高さ(Sz)が0.1000mmを超えている場合には、その値を破棄し、他の測定範囲を設定するようにする。なお、最大高さ(Sz)、算術平均高さSa及び山頂点の算術平均曲率(Spc)は、ISO25178で規定されている面粗さのパラメータである。また、測定にあたっては、シートの大きなうねりを除去するため、フィルターはガルシアン補正あり、S-フィルターなし、Fオペレーションは2次元曲面、L-フィルター0.8mm、終端処理オンの条件で測定する。
測定範囲となる3.0mm角の範囲で、「最大高さ(Sz)」、「算術平均粗さ(Sa)」、「山頂点の算術平均曲率(Spc)」の平面粗さ測定を行う。この画像中の3.0mm角の範囲の平面粗さ測定を、位置を変えて計5箇所行い、その5個所の平均値を測定サンプルの「最大高さ(Sz)」、「算術平均粗さ(Sa)」、「山頂点の算術平均曲率(Spc)」の測定値とする。測定範囲となる3.0mm角の範囲は、視野面積24mm×18mmの中で歪みの小さい中央部に位置する。なお、上記の各々5つの測定範囲の選定および、「最大高さ(Sz)」、「算術平均粗さ(Sa)」、「山頂点の算術平均曲率(Spc)は同時に測定してもよいが、測定する範囲Zを変えて測定してもよい。
【0036】
保湿剤の各プライにおける含有量は10.0~35.0%。特に17.0~30.0%であるのが望ましい。含有量が少ないと柔らかさが十分でなく、多いと露出面にベタツキが生じるほか、紙力の低下を招き易い。
【0037】
3プライが積層されたティシュペーパーであって、1プライの坪量が15.0~22.5g/m2、3プライの紙厚が140~270μm、特に176~230μmであるのが望ましい。3プライのような多プライ構造では、紙厚は、特に「やわらかさ」と「ふんわり感」に影響を及ぼしやすい。本実施形態のティシュペーパーでは、紙厚がこの範囲内であると「やわらかさ」と「ふんわりとした嵩高感」と「表面の滑らかさ」が顕著となる。
【0038】
4プライが積層されたティシュペーパーである場合、1プライの坪量が15.0~22.5g/m2、4プライの紙厚が180~360μm、特に220~320μmであるのが望ましい。
【0039】
紙厚は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定した値とする。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試験片を測定台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。測定時には、金属製のプランジャーの端子(直径10mmの円形の平面)が紙平面に対し垂直に当たるように留意する。なお、この紙厚測定時の荷重は、約70gfである。紙厚は、部位を変えてこの測定を10回行って得られた測定値の平均値とする。試験片は、3プライの製品シートを採取し、折り目やコンタクトエンボス部分等を避けて測定する。
【0040】
本実施形態のティシュペーパーは、縦方向の3プライ、もしくは、4プライでの乾燥強度が220~420cN/25mmが望ましい。縦方向の乾燥強度がこの範囲内であると「やわらかさ」と「ふんわりとした嵩高感」と「表面の滑らかさ」が顕著となる。また、使用に耐える十分な強度の範囲にある。
縦方向の3プライでの乾燥強度が過度に高い、すなわち縦方向に繊維を密に配置し高い圧力で圧密したようなプライ原紙を使用する場合には、柔らかさが劣り、保湿剤が繊維間に浸透しないことが(予想される)原因として、露出面にベタツキを生じやすい。
【0041】
また、横方向の3プライ、もしくは、4プライでの乾燥強度は60~160cN/25mmが望ましい。横方向の乾燥強度がこの範囲内であると「やわらかさ」と「ふんわりとした嵩高感」と「表面の滑らかさ」が顕著となる。また、使用に耐える十分な強度の範囲にある。
さらに、定かではないが、「横方向の乾燥引張強度」は、「やわらかさ」、「ふんわり感」といった個別の官能性ではなく、総括的な「肌ざわり」の官能性に影響がある。被験者に対して「やわらかさ」、「ふんわり感」といった具体的な評価基準ではなく、試料に対して自由に触れさせた後に「肌ざわり」という総合的な評価基準でティシュペーパーの良い悪いを評価させた際に、この「肌ざわり」の評価と「横方向の乾燥強度」とに一定の相関があることが知見されている。
【0042】
また、本実施形態のティシュペーパーは、横方向の3プライ、もしくは、4プライでの湿潤紙力が50~90cN/25mmが望ましい。
横方向の湿潤引張強度/横方向の乾燥引張強度の比率は0.62~0.76であるのが望ましい。なお、この値は3プライ、もしくは、4プライのままの測定値である。このような強度差であることにより、洟をかむ際などに、乾燥時から湿潤時へと変化する使用態様において、使用者が「丈夫さ(強度・安心感)」を感じるようになる。さらに、そのような使用態様における紙の強さの変化が感じられがたくなり、使用の際に「滑らかさ」の感じ方に影響する。
なお、紙の縦方向とは、MD方向とも呼ばれ、抄紙の際の流れ方向である。紙の横方向は、CD方向とも呼ばれ、抄紙の際の流れ方向(MD方向)に直交する方向である。
【0043】
また、実施の形態のティシュペーパーの乾燥(引張)強度は、JIS P 8113に基づいて測定した値であり、次のようにして測定した値である。試験片は縦・横方向ともに巾25mm(±0.5mm)×長さ150mm程度に裁断したものを用いる。ティシュペーパーは複数プライのまま測定する。試験機は、ミネベア株式会社製ロードセル引張り試験機TG-200N及びこれに相当する相当機を用いる。なお、つかみ間隔100mm、引張速度は100mm/minに設定する。測定は、試験片の両端を試験機のつかみに締め付け、紙片を上下方向に引張り荷重をかけ、紙が破断する時の指示値(デジタル値)を読み取る手順で行う。縦方向、横方向ともに各々5組の試料を用意して各5回ずつ測定し、その測定値の平均を各方向の乾燥引張強度とする。試料の調整は、JIS P 8111(1998)による。
【0044】
また、実施の形態におけるティシュペーパーの湿潤(引張)強度は、JIS P 8135(1998)に準じて測定した値であり、次のようにして測定した値である。試験片は縦・横方向ともに巾25mm(±0.5mm)×長さ150mm程度に裁断したものを用いる。ティシュペーパーは複数プライの場合は複数プライのまま測定する。試験機は、ミネベア株式会社製ロードセル引張り試験機TG-200N及びこれに相当する相当機を用いる。なお、つかみ間隔100mm、引張速度は50mm/minに設定する。試験片は、105℃の乾燥機で10分間のキュアリングを行ったものを用いる。試験片の両端を試験機のつかみに締め付けた後、水を含ませた平筆を用い、試験片の中央部に約10mm幅で水平に水を付与し、その後、直ちに紙片に対して上下方向に引張り荷重をかけ、紙が破断する時の指示値(デジタル値)を読み取る手順で測定を行う。縦方向、横方向ともに各々5組の試料を用意して各5回ずつ測定し、その測定値の平均を各方向の湿潤引張強度とする。
【0045】
乾燥引張強度及び湿潤引張強度の調整は、乾燥紙力増強剤や湿潤紙力増強剤を紙料或いは湿紙に内添することにより行うことができる。乾燥紙力増強剤としては、澱粉、ポリアクリルアミド、CMC(カルボキシメチルセルロース)若しくはその塩であるカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース亜鉛等を用いることができる。湿潤紙力増強剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、尿素樹脂、酸コロイド・メラミン樹脂、熱架橋性塗工PAM等を用いることができる。なお、乾燥紙力増強剤を内添する場合、パルプスラリーに対する添加量は、1.0kg/パルプt以下程度である。また、湿潤紙力増強剤は、カチオン性のものが望ましく、そのパルプスラリーに対する添加量は、5.0~20.0kg/パルプt程度である。
【0046】
ティシュペーパーを構成する繊維素材は、パルプ繊維であり、ティシュペーパーに用いられるNBKP(針葉樹クラフトパルプ)及びLBKP(広葉樹クラフトパルプ)であるのが望ましい。古紙パルプが配合されていてもよいが、古紙パルプは「やわらかさ」を発現させがたいことから、バージンパルプのNBKPとLBKPのみから構成されているのが極めて望ましい。配合割合としては、質量比でNBKP:LBKP=25:75~40:60である。この範囲であると洟かみに必要な紙力と「ふんわりとした嵩高感」を感じられつつ、「やわらかさ」と「滑らかさ」を顕著に感じられるものとすることができる。
【0047】
3プライで4組の合計12プライ、もしくは、4プライで3組の合計12プライでの、圧縮仕事量が1.85~2.50gf/cm/cm2、特に2.18~2.35gf/cm/cm2が望ましく、かつ、圧縮回復性が46.0~54.5%、特に48.0~53.0%が望ましい。
【0048】
〔ティシュペーパーの製造方法〕
本実施形態に係るティシュペーパー及び、このティシュペーパーを束にして包装するなどした製品は、次の製造手順によって製造することができる。
まず、抄紙設備で抄紙したクレープを有する単層のティシュペーパー原紙(プライ原紙)を巻き取って一次原反ロールを形成する。次いで、この一次原反ロールを三つ(4プライの場合四つ)、プライマシンとも称される積層設備にセットし、各々の一次原反ロールから単層の連続シートを繰り出して3層(又は4層)に積層した後、適宜にスリットするなどして巻き取り二次原反ロールを製造する。
次いで、この二次原反ロールを用いて、インターフォルダとも称される折畳み設備などにおいて積層束を形成する。
その後、この積層束を適宜の大きさに裁断する等した後、包装体、例えば紙製包装箱又はプラスチック包装袋内に包装して、ティシュペーパーに係る製品とする。
【0049】
このティシュペーパーを製品化する一連の製造工程又は、工程間に別途に薬剤付与設備を設けて、ティシュペーパー原紙にグリセリンを含む保湿剤(保湿性薬液)を外添により付与する。
【0050】
保湿性薬液の付与は、具体的には、プライマシンやインターフォルダいずれかの設備に、フレキソ印刷機、グラビア印刷機等のロール転写装置、スプレー塗布装置などの薬液塗布装置を組み込んで行ってもよいし、これらの装置をプライマシンやインターフォルダとは別途の設備として行ってもよい。
【0051】
実施の形態のティシュペーパーの製造においては、プライ原紙に対する保湿剤の付与は各プライ原紙に対して行う。この形態は適宜選択できる。
【0052】
保湿性薬液の塗布形態としては、例えば
図1の形態とすることができる。
すなわち、3プライの原紙ロール6から3プライ原紙を繰り出し、バット8から保湿性薬液をグラビアロール9によりピックアップし、これを金属ロール7Aに転写し、対向する他の金属ロール7Bとの間に通しながら、一方の外層及び中層の露出面にそれぞれ保湿剤を塗布する。
その後の位置において、同様の形態で、3プライ原紙シートの他方の第2の外層の外表面に保湿性薬液を塗布するものである。
保湿性薬液を塗布したシートは、原反ロール10として巻き取る。
フレキソ方式による保湿性薬液の塗布でもよいが、フレキソ方式よりも、グラビア塗布方式のほうが表面を滑らかにする効果が高いことを確認している。
【0053】
他の塗布形態を挙げると、例えば、3プライの例で説明すれば、、保湿剤をピックアップする第1のピックアップと、これを受ける第1の転写ロールを対とし、保湿剤をピックアップする第2のピックアップロールと、これを受ける第2の転写ロールを対とする第1塗布ユニットと第2塗布ユニットとを対向させた形態で配置する。
一方の外層とする第1のプライ原紙と他方の内層とする第2のプライ原紙とを、積層した状態で、対向する第1転写ロールと第2転写ロール間に供給し、それぞれ第1のプライ原紙の外面及び第2のプライ原紙の外面に、第1転写ロール及び第2転写ロールに保湿剤を塗布する。
この前段塗布の後段に、保湿剤をピックアップする第3のピックアップロールと、これを受ける第3の転写ロールを対とする第3の塗布ユニットを設け、反対側の外層とする第3のプライ原紙の外面に、保湿剤を第3転写ロールにより転写させて塗布する。
この場合、第3転写ロールは、適宜のバックアップロールに対向させるほか、第1の転写ロール又は第2の転写ロールをバックアップロールとして利用して、第3のプライ原紙の外面に、保湿剤を第3転写ロールにより転写させて塗布することもできる。
各転写ロールによる対象面への塗布量の調整には、各ピックアップロールによるピックアップ量を例えばブレードによる掻取り度合いにより調整できるほか、アニロックスロールで形成したピックアップロールと転写ロールとの回転速度差によっても転写ロールによる対象面への塗布量を調整することができる。
【0054】
図2に示すように、保湿性薬液を塗布した積層シートの一対の積層原反ロール10A、10Bは、例えばロータリーインターホルダ11により折り畳み製品化する。
【0055】
折り加工を行うインターフォルダは、マルチスタンド式、スタンド式、折板式とも称される折板によって折り加工を行う設備であってもよいし、ロータリー式とも称される一対のフォールディングロールで折り加工を行う設備であってもよい。
実施の形態では、ロータリー式のインターフォルダであるのが望ましい。3プライ以上の多プライ構造のティシュペーパー製品の場合、積層数が多く各層のずれが発生しやすくなるが、ロータリー式のインターフォルダは、連続シートに加わる張力が他の設備に比して弱いことなどから、各層のずれが発生しがたく、折り品質も良好としやすい。よって、特に加工時に「ふんわり感」が低下することが少ない。
【0056】
さらに、積層シートに対してカレンダー加工を行うのが望ましい。積層シートに対してカレンダー加工を行うことで、外層及び中層の紙厚差を生じさせやすくなる。また、特に、ロータリー式のインターフォルダで折り加工を行う場合には、インターフォルダ内で、保湿性薬液を付与するようにするのが望ましい。さらに、保湿性薬液を付与する前に第一カレンダー加工工程を行い、保湿性薬液を付与した後に第二カレンダー加工工程を行うようにすると、「ふんわりとした嵩高感」を感じられつつ、「やわらかさ」と「滑らかさ」を顕著に感じられるティシュペーパーとしやすい。
【0057】
図3に積層シートの折り畳み形態例を示した。この折り畳み形態例は公知のものであり、積層シートS2の谷折り部分に対して、先行する積層シートS1の片側、及び後行する積層シートS3の片側が挿入される形態で積層されることにより、収容した包装体(紙製包装箱、プラスチック包装袋など)からポップアップ方式で積層シートを順次包装体から取り出せるようにしたものである。
【0058】
ワンショット3D((株)キーエンス製)で測定した表面の「算術平均粗さSa」、KES-G5(カトーテック(株)製)で測定した「圧縮仕事量」及び「圧縮回復性」が、何故に「ティッシュオフ」に適しているのかの理由については、大まかには、次のように考えられる。
「算術平均粗さSa」の値が小さいことは、滑らかな表面性を与える。
「圧縮仕事量」の値が大きいことは、圧縮が始まる段階が速く、長いために良好なやわらかさを与える。
「圧縮回復性」の値が小さいことは、一旦押し込んだら元に戻り難いことを意味し、もって圧力のコントロール性が良好となり、口紅やファンデーションを拭き取る力の加減をコントロールし易くなるのに寄与する。
【実施例】
【0059】
実施の形態のティシュペーパー及び従来のティシュペーパーに係る試料を作成し、官能試験の欄の各項目について評価項目として、下記官能試験を行なった。各試料の物性値・組成値等は、下記のとおり測定した。各試料の物性値・組成値及び試験結果は、3プライについては表1及び表2に、4プライについては表3及び表4示されるとおりである。
【0060】
〔坪量〕
JIS P 8124(1998)に従って測定した。
〔紙厚〕
既述のように、JIS P 8111(1998)の条件下で、ダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて上述の厚みの測定方法に従って測定した。
【0061】
〔乾燥引張強度〕
既述
【0062】
〔湿潤引張強度〕
JIS P 8135(1998)の引張試験に従って測定した。
試験片は縦・横方向ともに巾25mm(±0.5mm)×長さ150mm程度に裁断したものを用いた。ティシュペーパーは複数プライの場合は複数プライのまま測定した。試験機は、ミネベア株式会社製ロードセル引張り試験機TG-200Nを用いた。つかみ間隔が100mmに設定した。測定は、105℃の乾燥機で10分間のキュアリングを行った試験片の両端を試験機のつかみに締め付け、次に、水を含ませた平筆を用い、試験片の中央部に約10mm幅で水平に水を付与し、その後、直ちに紙片に対して上下方向に引張り荷重をかけ、紙が破断する時の指示値(デジタル値)を読み取る手順で行った。引張速度は50mm/minとした。縦方向、横方向ともに各々5組の試料を用意して各5回ずつ測定し、その測定値の平均を各方向の湿潤引張強度とした。
【0063】
〔ソフトネス〕
JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に従って測定した。但し、試験片は100mm×100mmの大きさとし、クリアランスは5mmとして実施した。1プライで縦方向、横方向の各々5回ずつ測定し、その全10回の平均値を、cN/100mmを単位として表した。ソフトネスは、やわらかさの指標の一つである。1プライで測定する。コンタクトエンボス等で接着している場合は丁寧に剥がし、試験片の中央にコンタクトエンボス部がこないように避けて測定する。
【0064】
〔MMD〕
摩擦子の接触面を所定方向に20g/cmの張力が付与された測定試料の表面に対して25gの接触圧で接触させながら、張力が付与された方向と略同じ方向に速度0.1cm/sで2cm移動させ、このときの、摩擦係数を、摩擦感テスター KES-SE(カトーテック株式会社製)を用いて測定する。その摩擦係数を摩擦距離(移動距離=2cm)で除した値がMMDである。摩擦子は、直径0.5mmのピアノ線Pを20本隣接させてなり、長さ及び幅がともに10mmとなるように形成された接触面を有するものとする。接触面には、先端が20本のピアノ線P(曲率半径0.25mm)で形成された単位膨出部が形成されているものとする。
なお、MMDの測定には、予めコンタクトエンボス部やシワの部分を含めて測定しないようにする。
【0065】
他方、測定試料は、積層シートの束の上部、中央部、下部の3か所から任意の奇数組を各々1組採取し測定した平均値。3層(3プライ)シートの谷側からシートを第1層(外層)、第2層(中層)、第3層(外層)としている。
【0066】
表中の注記1(薬液塗布面の判定):各シートから2cm角に切り取った試験片2枚を、匙上に表側と裏側を上にし静かに水に浮かべ、30秒後に試験片上の水分が少ない方を塗布面(表記「CT」)、他方を非塗布面(表記「NCT」とした。塗布面が明確でない場合は「-」と表記する。
【0067】
表中の注記2は、ワンショット3Dで計測した平面粗さ測定で得られる値
【0068】
〔官能試験〕
比較例2のものを基準とし、その評価を「4.0」とし、12名の評価者による、評点1~評点7段階の評点の平均値である。評点が高いほど評価が高い。
【0069】
比較例1~比較例4のものは、中国での市販品である。参考例は出願人による試作品である。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
上記結果によれば、必要なやわらかさを確保しつつ、外面のベタツキ感を低減した3プライ又は4のティシュペーパー得ることができることが分かる。
【0075】
上記の実験例においては、薬液塗布面の判定を簡易的に行っているが、より詳しくは次のように行うのが望ましいことを知見している。
(1)水500mLを入れたパン、匙、サンプルを用意する。
(2)3層または4層の積層シートで、エンボスや皺の部分を除き、2cm×2cmに切り出し、その1片を各シートに(3シート、4シート)に分ける。2セット用意し試験片Aと試験片Bとする。
(3)分けた各シートの谷側面からA面(試験片A)、その裏側面をB面(試験片B)とする。A面には赤いボールペンで印をつける。
(4)薬剤用匙(長さ20cm程度)の椀の上に、各シート毎にA面を上にした試験片Aと、B面を上にした試験片Bを載せる。
(5)試験片Aと試験片Bを同時にパンに入れた水面上に静かに浮かべる。
(6)30秒後に目視(写真)で試験片上の水の膜の状態、光の反射状態を見る。
(7)試験片の表面の水の反射が明らかに多い面(試験片)を非塗布面(表記「NCT」)とした。その反対面(試験片)を塗布面(表記「CT」)とする。
(8)目視(写真)で判定し、明らかな差がない場合には、両面とも「ー」と表記する。
【0076】
試験例を
図8及び
図9に示した。
試験片Aについての
図8の場合を注視すると、見ている面はA面=薬液塗布面であり、水は裏面から湿潤しているが、上面(A面=薬液塗布面)の水が露出している部分は少ない。下から紙の間隙(細孔)を抜けた水分は、上面に達するが、薬液の表面張力が低いために上面に広がりにくいと考えられる。
これに対し、試験片Bについての
図9の場合を注視すると、見ている面はB面=非薬液塗布面であり、水は裏面から湿潤し、上面(B面=非薬液塗布面)に水が露出している部分が多い。下から紙の間隙(細孔)を抜けた水分は、上面の薬液が比較的少ないため、表面張力は高く上面に広がりやすいと考えられる。
【0077】
また、「薬液含有量」は、JIS P8111の標準状態23℃50%RHで調湿された各シート中に10.0~35.0質量%含まれる。
薬液含有量の測定に際しては、薬液塗布多層衛生薄葉紙の各シートを剥がし、JIS P 8111の標準状態で重量(a)を計測し、ソックスレー抽出器でエチルアルコール:アセトンの比率を50:50とした溶媒に試験片を入れ約3時間軽く沸騰した状態に保ち薬液塗布多層衛生薄葉紙に塗布された薬液を溶出させる。試験片を取出し、60℃で較量となるまで乾燥させ、重量(b)を測定する。「薬液含有量(%)」は、{(a)-(b)}÷(a)×100で計算される。製品に含まれる乾燥された薬液の質量比率を意味する。
【符号の説明】
【0078】
6…原紙ロール、9…グラビアロール、10…原反ロール、10A、10B…積層原反ロール、11…ロータリーインターホルダ、1R~4R…プライ、F…塗布面、W…非塗布面。