(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】建造物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/70 20060101AFI20230905BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20230905BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20230905BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
E04B1/70 B
E04B1/76 200D
E04B1/76 200A
F24F7/007 B
F24F5/00 K
(21)【出願番号】P 2020194454
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】松山 知生
(72)【発明者】
【氏名】今西 浩司
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-028534(JP,U)
【文献】特許第2585458(JP,B2)
【文献】特開2000-146222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
F24F 5/00
F24F 1/06 - 1/68
F24F 3/00
F24F 7/00 - 7/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外皮の内側において、居住空間と、前記居住空間以外の空間である中空層とを備える建造物において、
前記中空層は、床下空間と、小屋裏空間と、前記床下空間と前記小屋裏空間とを連通させる壁体内空間と、前記壁体内空間とは別に前記床下空間と前記小屋裏空間とを連通させる筒状体とを備え、
前記中空層は、外気に対して閉鎖された閉鎖空間を構成する場合があり、
前記外皮を構成する外壁は、第1外壁と、前記第1外壁と異なる方位を向く第2外壁とを備え、前記第1外壁は、前記第2外壁より終日日射量が小さい外壁であって、
前記筒状体は、前記第2外壁よりも前記第1外壁に対して近い位置に配置されている
とともに、前記居住空間または前記居住空間と連通する空間に露出する露出部を備え、
前記居住空間は、空調されている空調居住空間である
建造物。
【請求項2】
外皮の内側において、居住空間と、前記居住空間以外の空間である中空層とを備える建造物において、
前記中空層は、床下空間と、小屋裏空間と、前記床下空間と前記小屋裏空間とを連通させる壁体内空間と、前記壁体内空間とは別に前記床下空間と前記小屋裏空間とを連通させる筒状体とを備え、
前記中空層は、外気に対して閉鎖された閉鎖空間を構成する場合があり、
前記外皮を構成する外壁は、第1外壁と、前記第1外壁と異なる方位を向く第2外壁とを備え、前記第1外壁は、前記第2外壁より終日日射量が小さい外壁であって、
前記筒状体は、前記第2外壁よりも前記第1外壁に対して近い位置に配置されており、
さらに、前記中空層と空調機を備えた前記居住空間とを連通する通気口と、前記通気口を開閉する開閉部とを備える
建造物。
【請求項3】
前記露出部は、前記居住空間において、天井に対してよりも床に対して近い位置に配置されている
請求項
1に記載の建造物。
【請求項4】
前記筒状体は、前記小屋裏空間から前記床下空間への気流、または、前記床下空間から前記小屋裏空間への気流を形成するダクトファンを備える
請求項1ないし3のうち何れか1項に記載の建造物。
【請求項5】
温度センサ、湿度センサのうちの少なくとも1つのセンサであって前記小屋裏空間、および、前記床下空間のうちの少なくとも
前記床下空間に配置される前記センサと、
前記センサの検出値に従って前記ダクトファンを制御する制御部とを備える
請求項4に記載の建造物。
【請求項6】
前記中空層は、開閉部で開閉される換気口を備える
請求項1ないし
5のうち何れか1項に記載の建造物。
【請求項7】
温度センサ、湿度センサのうちの少なくとも1つのセンサであって前記小屋裏空間に配置される前記センサと、
前記センサの検出値に従って前記ダクトファンを制御する制御部とを備える
請求項4に記載の建造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、居住空間以外の空間である中空層によって、床下空間と小屋裏空間との間で空気を対流させる建造物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などには、外皮の内側において、居住空間と、居住空間以外の空間である中空層とを備えた住宅が記載されている。中空層は、床下空間と、小屋裏空間と、床下空間と小屋裏空間とを連通させる壁体内空間とで構成されている。そして、床下空間は、コンクリート基礎に貫通した床下換気口を備えており、床下換気口は、床下換気口を開閉する開閉部を備えている。梅雨時期や夏季などにおいて、床下空間を構成する床下コンクリート表面を外気露点温度以下に冷やさないため、外気温が低くなると、床下換気口を塞ぎ、床下空間への外気の取入れを遮断するようにしている。これにより、床下温度の低下を抑えて、床下空間での結露の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の住宅などは、日本国内における梅雨時期や夏季などを考慮して中空層に形成される気流を制御するものである。しかしながら、コンクリート基礎が断熱された特許文献1に記載のような住宅は、夏でも雨曇りなど天候によって外気温度も上がらず、床下温度が低くなると床下換気口を開放できず、その温度が維持され易くなり、あわせて高湿状態が継続し易い。特に蒸暑地域の雨期などにおいては、床下温度の低い状態が維持されると結露が発生するおそれがある。また、蒸暑地域以外の一般地域においても、梅雨時期から夏季の低温が続く場合にも同様に高湿状態の継続や結露が発生するおそれがある。このように、特許文献1に記載のような住宅は、蒸暑地域の雨季や一般地域の梅雨時期から夏季のような環境までを考慮したものとなっていない。このため、環境条件によっては、コンクリート基礎における、床下コンクリート表面などに結露が形成されてしまうおそれがある。
【0005】
また、全館冷房をするような暮らしによるさらなる床下温度の低下まで考慮したものではない。すなわち、冷房によって居住空間は、終日低温となり、床下空間が低温化し、床下コンクリート表面などに結露が形成されてしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る建築物は、外皮の内側において、居住空間と、前記居住空間以外の空間である中空層とを備える建造物において、前記中空層は、床下空間と、小屋裏空間と、前記床下空間と前記小屋裏空間とを連通させる壁体内空間と、前記壁体内空間とは別に前記床下空間と前記小屋裏空間とを連通させる筒状体とを備え、前記中空層は、外気に対して閉鎖された閉鎖空間を構成する場合があり、前記外皮を構成する外壁は、第1外壁と、前記第1外壁と異なる方位を向く第2外壁とを備え、前記第1外壁は、前記第2外壁より終日日射量が小さい外壁であって、前記筒状体は、前記第2外壁よりも前記第1外壁に対して近い位置に配置されている。
【0007】
上記構成によれば、中空層が閉鎖空間で構成される場合において、日射の影響の大きく終日日射量の大きい第2外壁部分の壁体内空間には、第2外壁部分に日射が照射されることにより暖められた壁内空気によって小屋裏空間への上昇気流が形成され、日射の影響の小さく終日日射量の小さい第1外壁部分の壁体内空間および筒状体には、床下空間への下降気流が形成される。これにより、小屋裏空間と床下空間の空気が混合され、床下空間の相対湿度を下げることができる。
【0008】
上記建築物において、一例として、前記筒状体は、前記居住空間または前記居住空間と連通する空間に露出する露出部を備え、前記居住空間は、空調されている空調居住空間である。上記構成によれば、露出部で、筒状体内の空気が、例えば、空調機によって空調された居住空間の空気によって冷却される。これにより、小屋裏空間から床下空間への下降気流が形成され易くなる。
【0009】
上記建築物において、前記露出部は、前記居住空間において、天井に対してよりも床に対して近い位置に配置されているように構成してもよい。上記構成によれば、居住空間は床面に近い位置の方が天井の近くよりも室温が低い傾向があり、露出部を床面の近くに位置させることで、筒状体内の空気を、居住空間の空気によって冷却することができる。これにより、筒状体内における下降気流を促進することができる。
【0010】
上記建築物において、前記筒状体は、前記小屋裏空間から前記床下空間への気流、または、前記床下空間から前記小屋裏空間への気流を形成するダクトファンを備えるように構成してもよい。上記構成によれば、小屋裏空間と床下空間との間に対流が形成されにくいときに、ダクトファンを駆動し筒状体内に気流を形成することで、小屋裏空間と床下空間の空気を混合できる。
【0011】
上記建築物において、温度センサ、湿度センサのうちの少なくとも1つのセンサであって前記小屋裏空間、および、前記床下空間のうちの少なくとも床下空間に配置される前記センサと、前記センサの検出値に従って前記ダクトファンを制御する制御部とを備えるように構成してもよい。上記構成によれば、センサが検出した検出値に従って、制御部がダクトファンを駆動することで、小屋裏空間と床下空間の空気を混合できる。センサは、床下空間の温度や湿度を管理して結露を抑制する観点から、床下空間に優先的に設けることが好ましい。
【0012】
上記建築物において、前記中空層と空調機を備えた前記居住空間とを連通する通気口と、前記通気口を開閉する開閉部とを備えるように構成してもよい。上記構成によれば、中空層の湿度が居住空間の湿度より高い場合、通気口を開けることで、中空層の湿度を下げることができる。
【0013】
上記建築物において、前記中空層は、開閉部で開閉される換気口を備えてもよい。上記構成によれば、換気口を塞ぐことで中空層を閉鎖空間として構成することができる。したがって、蒸暑地域の雨季や一般地域の梅雨時期から夏季において、屋外から中空層への多湿空気の浸入を抑えつつ、小屋裏空間と床下空間との間に対流を形成し易くなる。その結果、小屋裏空間と床下空間の空気が混合され、床下空間の相対湿度を下げることができる。
【0014】
上記課題を解決するため、本発明に係る建築物は、外皮の内側において、居住空間と、前記居住空間以外の空間である中空層とを備える建造物において、前記中空層は、床下空間と、小屋裏空間と、前記床下空間と前記小屋裏空間とを連通させる壁体内空間と、前記壁体内空間とは別に前記床下空間と前記小屋裏空間とを連通させる筒状体とを備え、前記中空層は、外気に対して閉鎖された閉鎖空間を構成する場合があり、前記筒状体は、前記複数の居住空間の中で空調されている空調居住空間または前記空調居住空間と連通する空間に露出している。
【0015】
上記構成によれば、中空層が閉鎖空間で構成されている場合において、空調されている空調居住空間または前記空調居住空間と連通する空間に露出している筒状体は、空調によって筒状体が冷却されることで、筒状体内の空気温度が下がり床下空間への下降気流が形成され、日射の影響の大きい外皮の壁体内空間は、壁内空気が暖められることで小屋裏空間への上昇気流が形成される。これにより、小屋裏空間と床下空間の空気が混合され、床下空間の相対湿度を下げることができる。
【0016】
上記課題を解決するため、本発明に係る建築物は、外皮の内側において、居住空間と、前記居住空間以外の空間である中空層とを備える建造物において、前記中空層は、床下空間と、小屋裏空間と、前記床下空間と前記小屋裏空間とを連通させる壁体内空間と、前記壁体内空間とは別に前記床下空間と前記小屋裏空間とを連通させる筒状体とを備え、前記中空層は、外気に対して閉鎖された閉鎖空間を構成する場合があり、前記外皮を構成する外壁は、第1外壁と、前記第1外壁と異なる方位を向く第2外壁とを備え、前記第1外壁は、前記第2外壁より前記第2外壁より方位ごとの冷房期の平均日射熱取得率が小さい外壁であって、前記筒状体は、前記第2外壁よりも前記第1外壁に対して近い位置に配置されている。
【0017】
上記構成によれば、中空層が閉鎖空間で構成される場合において、冷房期の平均日射熱取得率の大きい第2外壁部分の壁体内空間には、第2外壁部分に日射が照射されることにより暖められた壁内空気によって小屋裏空間への上昇気流が形成され、冷房期の平均日射熱取得率の小さい第1外壁部分の壁体内空間および筒状体には、床下空間への下降気流が形成される。これにより、小屋裏空間と床下空間の空気が混合され、床下空間の相対湿度を下げることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、床下空間の相対湿度を下げ、結露の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図4】雨季において日射が外壁に当たる間の建造物内の気流を説明する建造物の縦断面図。
【
図5】雨季において日射が外壁に当たらない間の建造物内の気流を説明する建造物の縦断面図。
【
図6】乾季において日射が外壁に当たる間の建造物内の気流を説明する建造物の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る建造物が適用された住宅を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明が適用された建造物を模式的に示す縦断面図であり、
図2は、平断面図である。
【0021】
住宅1は、沖縄県、九州、四国から関東にかけた太平洋側の地域などの蒸暑地域(次世代省エネルギー基準における地域基準の7地域、8地域など)に好適な住宅である。この住宅1は、ここでは2階建て木造住宅である。住宅1は、外皮として、コンクリート基礎2と、外壁3と、屋根4とを備えている。コンクリート基礎2は、底板部分、立ち上がり部分などを主たる構成要素とした基礎断熱がされた基礎である。屋根4は、瓦、防水布、野地板などを主たる構成要素としている。また、外壁3および屋根4の内側は、断熱材5を備えている。具体的に、屋根4の内側において、断熱材5は、瓦と防水布との間などに設けられる。また、外壁3の内側において、断熱材5は、外装下地材と柱との間などに設けられている。そして、壁部分において、断熱材5の内側は、内装材6を備えている。
【0022】
住宅1は、コンクリート基礎2の内側に構成される床下空間11と、内装材6の内側に構成される複数の居住空間12と、屋根裏に構成される小屋裏空間13とを備えている。居住空間12は、1階と2階のそれぞれに複数設けられている。
【0023】
断熱材5と外壁3および屋根4との間は、外側通気層16が構成されている。また、断熱材5と内装材6との間は、中空層17が構成されている。中空層17は、断熱材5の内側において、居住空間12以外の空間であって、床下空間11と、小屋裏空間13と、床下空間11と小屋裏空間13とを連通させる壁体内空間14とを備えている。また、中空層17は、壁体内空間14とは別に小屋裏空間13と床下空間11とを連通させる筒状体31を備えている。
【0024】
外壁3は、コンクリート基礎2の上部から屋根の方向に延びており、外側通気層16の下端開口16aは、一例として、コンクリート基礎2の上部に位置している。外側通気層16の上端開口16bは、一例として、屋根頂部に位置している。外側通気層16は、一例として、中空層17を構成する床下空間11、小屋裏空間13、および、壁体内空間14とは、連通していない。また、下端開口16aおよび上端開口16bは、常時開口されており、常時外気が流通可能である。外側通気層16において、断熱材5と外壁3との間の間隔は、15mm~25mm、好ましくは18mm以上である。また、断熱材と5と屋根4との間の間隔は、15mm~50mm、好ましくは30mm以上である。
【0025】
コンクリート基礎2で囲まれた床下空間11は、1つまたは複数の床下換気口21を備えている。床下換気口21は、コンクリート基礎2に貫通して設けられ、屋外と床下空間11とを連通する。床下換気口21は、床下空間11内に延びる床下ダクト22が接続されている。床下ダクト22は、床下ダクト22の通路を開閉する床下開閉部23を備えている。床下開閉部23は、一例として、電動シャッタであり、制御部51によって、開閉制御される。床下開閉部23は、床下ダクト22の通路を閉じたとき、屋外の外気に対して床下空間11を遮断し、床下ダクト22の通路を開いたとき、屋外と床下空間11とを連通する。
【0026】
居住空間12は、住宅1内に複数区画されている。一例として、居住空間12は、1階部分と2階部分にそれぞれ複数設けられている。各居住空間12は、内装材6で囲まれている。1階の居住空間12は、2階の居住空間に比べて屋根4に当たる日射の影響を受けにくく、室温が低くなる傾向がある。また、1階の居住空間12は、床下空間11に近いため、2階の居住空間12よりも相対湿度が高くなる傾向がある。また、居住空間12の中には、空調機18が設置されている空間もある。1階および2階の居住空間12は、空調機18を設置し駆動することで、雨季において、除湿し室温を下げることができる。1階および2階の居住空間12は、空調機18を設置することで、空調居住空間12aを構成できる。
【0027】
また、複数の居住空間12の中で少なくとも1階の空調居住空間12aは、床下空間11と連通する通気口15を備えている。通気口15は、通気口15を開閉する開閉部15aを備えている。例えば、空調居住空間12aが床下空間11よりも湿度が低いときは、開閉部15aを開き、通気口15を通じて床下空間11と空調居住空間12aを連通させることで、床下空間11の相対湿度を下げることができる。開閉部15aは、通気口15を開閉する手動シャッタでもよいが、ここでは制御部51の制御に従って開閉される電動シャッタである。
【0028】
小屋裏空間13は、1つまたは複数の小屋裏開口24を備えている。小屋裏開口24は、小屋裏空間13部分の外壁3および断熱材5を貫通して設けられ、屋外と小屋裏空間13とを連通する。小屋裏開口24は、小屋裏空間13内に延びる小屋裏ダクト25が接続されている。小屋裏ダクト25は、排気ファン26を備えている。排気ファン26は、駆動されると、小屋裏空間13の空気を排気する。
【0029】
図1および
図2の住宅では、壁が東西南北を向き、周囲も、隣接して、日射を大きく遮る高層ビルなどの障害物もないと仮定する。年間を通じて、北壁は、南壁より終日日射量(ある面が1日に受ける日射エネルギー量)が小さくなる。ここでは、北壁を構成する外壁3が第1外壁3aであり、東壁を構成する外壁3、西壁を構成する外壁3、および、南壁を構成する外壁3の中の少なくとも1つの外壁が第2外壁で3bである。第1外壁3aの終日日射量は、夏至のときであっても、第2外壁3bの終日日射量よりも小さくなる。
【0030】
また、住宅に侵入する日射量を示す方位ごとの冷房期の平均日射熱取得率も、第1外壁3aは、第2外壁3bよりも小さくなる。
床下空間11と小屋裏空間13とは、壁体内空間14によって連通している。壁体内空間14において、断熱材5と内装材6との間の間隔は、一例として、柱として、105mm~120mmの角材が存在する場合、その寸法となる。外壁3と内装材6との間に構成される壁において、北壁などは、採光が悪い方位の壁であるため、水回り設備などを設ける傾向があり、結果として、壁における窓などの開口部の開口部比率が小さくなる傾向がある。ここでの開口部比率は、各方位の壁(外皮)の全体面積に対する開口部面積の割合である。
【0031】
中空層17には、筒状体31が配置されている。筒状体31は、一例として、ステンレスなどの金属製ホースである。また、ポリ塩化ビニルなどの樹脂製ホースである。また、樹脂製ホースの一部と金属製ホースとを接続した管である。筒状体31の直径は、90mm以上、200mm以下、好ましくは150mmである。筒状体31は、床下空間11と小屋裏空間13とを連通させている。筒状体31は、部分的に潜熱蓄熱材を取り付けることもできる。潜熱蓄熱材を取り付けた場合、冷房を止めた後でも、筒状体31内の空気を一定時間冷却することができる。
【0032】
筒状体31は、各方位の第2外壁3bに対してよりも第1外壁3aの近くに配置されている。一例として、平断面において、筒状体31の中心Oと第1外壁3aの外皮Eまたは壁芯Cとの最短距離をL1とし、筒状体31の中心Oと各方位の第2外壁3bの外皮Eまたは壁芯Cとの最短距離をL2としたとき、筒状体31は、少なくともその一部がL1<L2の関係が成り立つように配置されている。
【0033】
図3に示すように、筒状体31は、内装材6の内側に区画され、床下空間11と小屋裏空間13とを連通させるパイプスペースなどの収納空間32に配置されている。収納空間32は、一例として、中空層17の一部を構成している。筒状体31は、その一部が空調居住空間12aに隣接しており、空調居住空間12aの空調空気に晒されている。具体的に、空調居住空間12aの位置において、収納空間32は、上部と下部が塞がれた区画空間34が構成されている。区画空間34において、空調居住空間12aとの境界は、内装材6により仕切られ、ガラリなどの通気部33が設けられている。また、区画空間34は、上下の端部が閉塞され中空層17と区画されていることで、中空層17と連通している収納空間32の空気が空調居住空間12aに浸入しないように構成されている。筒状体31の中で区画空間34に露出している部分が露出部31aであり、露出部31aは、空調居住空間12aの空調空気に晒される。このように構成される区画空間34は、2階の空調居住空間12aであっても、天井に対してよりも床に対して近い位置に配置されている。冷却された空調空気は、床近くに滞留する傾向にあるからである。
【0034】
空調居住空間12aが第1外壁3aに沿う内壁を有するのであれば、収納空間32も1階から2階に亘って上下に直線形状に設けられ、収納空間32を挿通する筒状体31も、直線形状を有することになる。また、空調居住空間12aに第1外壁3aに沿う内壁が存在しない場合、収納空間32は、直線部と折曲部を組み合わせて、第1外壁3aに隣接する部分と空調居住空間12aに隣接する部分とが連通するように構成される。そして、筒状体31も、このような収納空間32の形状に合わせて直線部と折曲部を組わせて配管される。
【0035】
なお、筒状体31を配置する居住空間12または空調居住空間12aは、第1外壁3aに沿う内壁を有し、かつ、第2外壁3bに沿う内壁を有していない空間、すなわち第1外壁3aだけに面した空間が好ましい。第1外壁3aを含む第1壁は、終日日射量、且つ、方位ごとの冷房期の平均日射熱取得率が小さく、開口部比率も小さくなる傾向にあることから室温が上昇しにくいからである。
【0036】
また、筒状体31を配置する空間が第1外壁3aに沿う内壁、および、第2外壁3bに沿う内壁を備える居住空間の場合は、空調居住空間12aであることが好ましい。空調機18が居住空間に設けられていないと、第2外壁3bを含む第2壁の開口部のガラスなどからの日射侵入によって室温が上昇してしまう。これにより、筒状体31が第2外壁3bよりも第1外壁3aの近くに配置されていても、所望の筒状体31の冷却効率を望めなくなる場合があるからである。空調機18を設けない場合は、第2外壁3bを含む第2壁の開口部比率を下げるように開口部を設けることが好ましい。
【0037】
筒状体31は、ダクトファン35を備えている。ダクトファン35は、制御部51の制御に従って、小屋裏空間13から床下空間11への下降気流、または、床下空間11から小屋裏空間13への上昇気流を形成する。例えば、雨季において、日射の少ない曇りの日、夜間などに筒状体31内に下降気流を形成するように駆動される。
【0038】
床下空間11には、床下センサ41が配置されている。床下センサ41は、湿度センサ、温度センサ、カビセンサの中の少なくとも1つのセンサである。床下センサ41の検出値は、制御部51に入力される。また、居住空間12も、床下センサ41と同様な室内センサ42を備えている。空調居住空間12aにおいて、室内センサ42は、空調機18が備えていてもよいし、空調機18とは別に設けられていてもよい。さらに、屋外にも、床下センサ41と同様な屋外センサ43を備えている。屋外センサ43は、外壁3に設けられている。さらに、小屋裏空間13にも、床下センサ41と同様な小屋裏センサ44を備えている。
【0039】
住宅1は、制御部51を備えている。制御部51は、制御プログラムを記憶するメモリと、操作信号を入力するための操作部と、遠隔操作装置、センサ41~44、外部サーバなどの機器と通信するための通信部と、入力された操作信号に従って制御プログラムを実行するコントローラとを備えている。操作部は、内壁に設置された操作パネルまたは遠隔操作装置である。制御部51は、空調居住空間12aが備える通気口15を開閉する開閉部15a、床下換気口21を開閉する床下開閉部23、小屋裏空間13が備える排気ファン26、筒状体31が備えるダクトファン35などの動作を制御する。
【0040】
また、制御部51には、センサ41~44の検出値が入力される。すなわち、温度センサの場合、温度センサが設置された空間の温度、湿度センサの場合、湿度センサが設置された空間の相対湿度、カビセンサの場合、カビセンサが設置された空間のカビ指数(カビの発育と温度および相対湿度との相関関係により求められる指数)が入力される。
【0041】
制御部51は、日時を特定するための日時判定部を備えている。一例として、制御部51は、日時判定部が記憶するカレンダーに従って、雨季と乾季とを判別する。そして、判別結果に従って、雨季には後述の躯体内モードを選択し、乾季には後述の床下モードを選択する。ここで、雨季の期間は、梅雨~夏~秋であり、乾季の期間は、秋~冬~春である。具体的に、雨季の期間は、一例として、5月1日~10月31日であり、乾季の期間は、11月1日~4月30日である。また、制御部51は、地域別に、雨季の期間と乾季の期間を定義している。この住宅1は、蒸暑地域向けであるが、日本国で言えば、蒸暑地域であっても、沖縄県と鹿児島県とではその時期に応じて温度および湿度の環境は異なる。そこで、制御部51は、躯体内モードと床下モードの切り替えを、地域別に雨季の期間と乾季の期間とを定義した期間定義テーブルをメモリに設け、日付によって、躯体内モードと床下モードとを切り替える。地域の特定は、制御部がGNSS(Global Navigation Satellite System)受信部を備えている場合、自動的に、地域を特定することができる。
【0042】
制御部51は、年間を通じて、日の出時刻と日の入り時刻を特定する時刻管理テーブルをメモリに設け、日の出時刻、日の入り時刻などに、ダクトファン35の駆動を切り替える。ここでの日の出時刻と日の入り時刻は、所定期間毎に外部サーバと通信することによって定義を更新する。ダクトファン35を駆動する時刻は、日の入り時刻でもよいし、日の入り時刻より早い時刻でもよいし、日の入り時刻より遅い時刻であってもよい。また、ダクトファン35の駆動を停止する時刻は、日の出時刻でもよいし、日の出時刻より早い時刻でもよいし、日の出時刻より遅い時刻であってもよい。ここでは、便宜的に、ダクトファン35を駆動開始する時刻を日の入り時刻といい、駆動停止する時刻を日の出時刻という。
【0043】
次に、以上のように構成された住宅1の作用について説明する。
地域とカレンダーの年月日の設定は、入居時などに初期設定される。躯体内モードと床下モードとの切り替えは、制御部51が期間定義テーブルを参照して自動的に行ってもよいし、操作部を使って、モード切替指示を入力するようにしてもよい。
【0044】
躯体内モードにおいて、制御部51は、床下開閉部23を閉じて、床下空間11を外気から遮断するとともに、排気ファン26の駆動を停止する。これにより、中空層17は、外気に対して閉鎖空間とされる。
図4は、躯体内モードにおけるダクトファン35が動作しないときの状態を示す。
【0045】
例えば雨季において、日の出後から日の入りまでの昼間は、晴れであれば、外気温が上がり、あわせて第2外壁3bに日射が照射されることで、第2外壁3bの壁体内空間14には壁内空気が暖められて上昇気流が形成される。また、第1外壁3aの壁体内空間14では下降気流が形成される。そこで、制御部51は、日の出時刻になると、ダクトファン35の駆動を停止し、昼間において、中空層17において自然対流を発生させる。すなわち、終日日射量、方位ごとの冷房期の平均日射熱取得率が大きい第2外壁3bの壁体内空間14では、上昇気流を形成させる。また、終日日射量、方位ごとの冷房期の平均日射熱取得率が小さい第1外壁3aの壁体内空間14では、下降気流を形成させる。さらに、第1外壁3aに近い筒状体31内でも、下降気流を形成させる。これにより、筒状体31内において、下降気流が促進される。かくして、床下空間11と小屋裏空間13との空気が混合され、床下空間11の相対湿度を下げることができる。
【0046】
図5は、躯体内モードにおける夜間であって、ダクトファン35の動作状態である。夜間は、日射がないため、小屋裏空間13に日中に温められた相対的に高い温度の空気が滞留し、床下空間11は温度が下がり相対的に低い温度の空気が滞留する。このため、夜間は、第2外壁3bでは壁体内空間14で上昇気流が形成されにくく、終日日射量が小さい第1外壁3aの壁体内空間14および筒状体31では下降気流が形成されにくくなる。そして、夜間の外気温低下に伴って、床下空間11の床下温度も下がることになる。その結果、露点温度も下がり、コンクリート基礎2の床下コンクリート表面などに結露が形成され易くなる。そこで、制御部51は、日の入り時刻なると、ダクトファン35を筒状体31内で強制的に下降気流を形成するように駆動する。これにより、床下空間11と小屋裏空間13との空気が混合され、床下空間11の温度を上げることで結露の発生を抑制できる。
図4および
図5の躯体内モードにおいて、天気や昼夜を問わず、床下空間11は、蒸暑地域の雨季などでは概ね25℃以上に維持することができ、結露の発生が抑制される。
【0047】
図6は、乾季の床下モードのダクトファン35が動作しないときの状態を示す。床下モードにおいて、制御部51は、床下開閉部23を開いて、床下空間11を開放する。そして、小屋裏空間13の排気ファン26を駆動し、小屋裏空間13の空気を排気する。そうすると、床下空間11には、床下換気口21から外気が取り入れられる。そして、床下空間11の空気は、壁体内空間14および筒状体31を通じて小屋裏空間13へ流れ、小屋裏開口24から排気される。
【0048】
冬などは、放射冷却などで小屋裏空間13が低温・高湿化する傾向があるが、制御部51は、ダクトファン35を床下空間11から小屋裏空間13への気流を形成するように駆動することで、小屋裏空間13の低温・高湿化を抑制できる。一例として、制御部51は、小屋裏空間13における相対湿度が閾値以上となるとき、ダクトファン35を床下空間11から小屋裏空間13への上昇気流を形成するように駆動する。
【0049】
なお、雨季に運転される躯体内モードでは、センサ41~44の検出値を使って次のような制御の中の1つまたは複数の制御を行うこともできる。
・制御部51は、床下空間11の温度について、露点温度を閾値に設定しており、床下センサ41が検出する検出温度が閾値以下のとき、ダクトファン35を筒状体31内に下降気流を形成するように駆動し、床下空間11の床下温度を上げるようにする。例えば、雨季における曇りや雨の日など外気温の上昇が小さいときに実行される。なお、ここでの閾値は、実際の露点温度より若干高めに設定して、実際の露点温度になる前に結露抑制対策としてダクトファン35を筒状体31内に下降気流を形成するように駆動するようにしてもよい。これにより、床下空間11での結露の発生を抑制できる。
【0050】
・床下空間11の相対湿度について、制御部51は、カビが繁殖し易くなる相対湿度を閾値に設定し、床下センサ41の検出湿度が閾値以上のとき、ダクトファン35を筒状体31内に下降気流を形成するように駆動し、中空層17内の空気を混合する。これにより、床下空間11での結露の発生を抑制できる。ここでの閾値は、一例として70%である。また、カビセンサを使用している場合、カビ指数が閾値(一例としてカビ指数5:カビ発生開始まで2週間)以上であるかを判定し、閾値以上のとき、ダクトファン35を筒状体31内に下降気流を形成するように駆動し、中空層17内の空気を混合する。これにより、床下空間11での結露の発生を抑制できる。このように、制御部51は、床下空間11の相対湿度が高い方に偏っているときに、制御部51は、昼間であっても、相対湿度を下げるようにダクトファン35駆動する。
【0051】
・小屋裏センサ44が検出する検出温度と床下センサ41が検出する検出温度との差が閾値より小さく、温度差が小さいとき、制御部51は、ダクトファン35を筒状体31内に上降気流または下降気流を形成するように駆動し、中空層17内の空気を混合する。温度差は、一例として、曇りや雨の日など外気温の上昇が小さいときに小さくなる。これにより、床下空間11での結露の発生を抑制できる。
【0052】
・室内センサ42が検出する最上階(ここでは2階)の居住空間12の室温より小屋裏センサ44が検出する検出温度が高くなるとき、制御部51は、ダクトファン35を筒状体31内に上降気流を形成するように駆動し、小屋裏空間13の温度を下げるようにする。
【0053】
・屋外センサ43が検出する外気温が閾値(例えば28℃)より高いとき、制御部51は、ダクトファン35を筒状体31内に上降気流を形成するように駆動し、小屋裏空間13の温度を下げるようにする。
【0054】
・室内センサ42が検出する空調居住空間12aの相対湿度が床下センサ41が検出する相対湿度よりも低いとき、制御部51は、開閉部15aを開き、除湿された空気を床下空間11に供給して床下空間11の相対湿度を下げるようにする。
【0055】
以上のような住宅1は、以下のように列挙する効果を得ることができる。
(1)躯体内モードのように、中空層17が閉鎖空間で構成される場合において、日射の影響の大きい第2外壁3bの部分の壁体内空間14には、壁内空気が暖められることで小屋裏空間13への上昇気流が形成され、日射の影響の小さい第1外壁3aの部分の壁体内空間14および筒状体31には、壁内空気の床下空間11への下降気流が形成される。これにより、床下空間11と小屋裏空間13の空気が混合され、床下空間11の相対湿度を下げることができる。すなわち、外気を使うことなく、床下空間11の相対湿度を下げることができる。また、電力を使用することなく、床下空間11の相対湿度を下げることができる。
【0056】
(2)躯体内モードにおいて、露出部31aで、筒状体31内の空気が、例えば、空調機18によって空調された空調居住空間12aの空気によって冷却される。これにより、小屋裏空間13から床下空間11への下降気流が形成され易くなる。
【0057】
(3)居住空間12は床面に近い位置の方が天井の近くよりも室温が低い傾向があり、露出部31aを床面の近くに位置させることで、躯体内モードにおいて、筒状体31内の空気を、居住空間12の空気によって冷却することができる。これにより、筒状体31内における下降気流を促進することができる。
【0058】
(4)区画空間34は、上下の端部が閉塞されることで、中空層17と連通していない。したがって、中空層17の一部である収納空間32の清浄されていない空気が空調居住空間12aに流入することを防ぐことができる。
【0059】
(5)躯体内モードにおいて、床下空間11と小屋裏空間13との間に対流が形成されにくいときに、ダクトファン35を駆動して、床下空間11と小屋裏空間13の空気を混合できる。また、床下モードにおいて、ダクトファン35を駆動し筒状体31内に上降気流を形成することで、小屋裏空間13の高湿化を抑制できる。
【0060】
(6)センサ41~44が検出した検出値に従って、制御部51は、ダクトファン35を駆動制御することができる。
(7)中空層17、例えば床下空間11の湿度が居住空間12の湿度より高い場合、通気口15を開けることで、中空層17の湿度を下げることができる。
【0061】
(8)床下換気口21を塞ぎ、排気ファン26の駆動を停止することで、開放された空間から閉鎖空間を構成することができる。すなわち、躯体内モードにおいて、中空層17を閉鎖空間とすることができる。また、床下モードにおいて、床下換気口21を開放し排気ファン26を駆動することで、中空層17を開放することができる。
【0062】
なお、住宅1は、さらに、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・住宅1を建設する敷地に住宅1を設計するにあたって、第1外壁3aまたは第1壁および第2外壁3bまたは第2壁は、終日日射量、および、方位ごとの冷房期の平均日射熱取得率の少なくとも1つの条件を使って定義すればよい。
【0063】
・露出部31aは、区画空間34に配置されるのではなく、空調居住空間12aに直接露出するように配置されていてもよい。
・住宅1としては、筒状体31を第2外壁3bよりも第1外壁3aに対して近い位置に配置するのではなく、第1外壁および第2外壁3bの条件に関係なく、空調されている空調居住空間12aまたは空調居住空間12aと連通する空間に露出する露出部31aを設けるだけでもよい。このような構成によっても、筒状体31は、空調された空調居住空間12aの空気によって冷却され、小屋裏空間13から床下空間11への下降気流が形成されるからである。全館冷房の住宅などでは、筒状体31を居住空間12に露出させることで、筒状体31内の空気を冷却し筒状体31に下降気流を形成し易くなる。勿論、このような住宅であっても、建設後、終日日射量または方位ごとの冷房期の平均日射熱取得率の小さい方位の壁体内空間14では下降気流が形成される。
【0064】
・上述の例では、住宅1は、外壁が東西南北を向き、周囲にも、隣接して、日射を大きく遮る高層ビルなどの障害物もないと仮定したが、住宅1は、様々な環境に建設されている。一例として、住宅密集地域では、2つの方位または3つの方位に隣接して住宅が建設されていることもある。このような場合は、北壁以外の壁が、最も終日日射量または方位ごとの冷房期の平均日射熱取得率の小さい方位の第1外壁3aまたは第1壁となり、それ以外の方位の外壁3が第2外壁3bまたは第2壁となることもある。
【0065】
・住宅1は、平断面において、〔第1外壁3a部分における壁体内空間14の断面積〕>〔第1外壁3aと異なる方位を向く各第2外壁3b部分における壁体内空間14の断面積〕の関係となるように設計するようにしてもよい。これにより、第1外壁3a部分における壁体内空間14で下降気流を形成し易くできる。
【0066】
住宅1は、さらに、〔第1外壁3a部分における壁体内空間14の断面積+筒状体31の断面積〕>〔第1外壁3aと異なる方位を向く各第2外壁3b部分における壁体内空間14の断面積〕の関係となるように設計するようにしてもよい。これにより、さらに下降気流を形成し易くできる。この場合、〔第1外壁3a部分における壁体内空間14の断面積〕<〔第1外壁3aと異なる方位を向く各第2外壁3b部分における壁体内空間14の断面積〕であってもよい。
【0067】
・建築物の外壁で囲まれる敷地形状は、上述のような四角形状に限定されるものではなく、例えば凹形状であってもよいし、凸型形状であってもよいし、L形状であってもよい。形状がこのような形状の場合であっても、第1外壁3aまたは第1壁は、最も終日日射量または方位ごとの冷房期の平均日射熱取得率の小さい方位の外壁または壁であり、第2外壁3bまたは第2壁は、第1外壁3aまたは第1壁に定義された方位以外の方位の外壁または壁となる。
【0068】
・住宅1において、筒状体31は、1本であってもよいし、複数本を備えるようにしてもよい。筒状体31が複数本設けられる場合、ダクトファン35を備える筒状体31とダクトファン35を備えない筒状体31を設けてもよい。
【0069】
・住宅1において、外側通気層16は備えていなくてもよい。
・排気ファン26は、小屋裏ダクト25に設けるのではなく、小屋裏空間13を構成する壁に直接設けてもよいし、壁体内空間14の位置に設けるようにしてもよい。また、排気ファン26を省略してもよい。
【0070】
・床下空間11において、床下ダクト22を省略し、床下換気口21に対して直接的に床下開閉部23を設けるようにしてもよい。
・床下空間11には、床下換気口21を設けなくてもよい。この場合、床下換気口21に代わる換気口を壁体内空間14に設けてもよい。また、年間を通じて高温多湿の地域では、床下換気口21又はこれに代わる換気口を省略してもよい。
【0071】
・住宅1は、センサ41~44のうちの少なくとも1つのセンサ、または、全てのセンサを省略してもよい。センサ41~44は、全てが種類のセンサでなくてもよい。一例として、床下センサ41および室内センサ42は、温度センサと湿度センサとし、屋外センサ43は、温度センサだけとし、小屋裏センサ44は、温度センサとしてもよい。
【0072】
・センサは、少なくとも床下空間11に設ければよい。床下空間11の結露抑制のためには、床下空間11の相対湿度や温度を検出し検出値に基づいてダクトファン35を制御すればよいからである。
【0073】
・センサ41~44を省略する場合、ダクトファン35の制御のため、制御部51は、外部の天気サーバから当該住宅1の地域の天気情報を定期的にまたは常時取得し、取得した天気情報に従って制御を行うようにしてもよい。一例として、躯体内モードにおいて、制御部51は、曇り、および、雨のとき、ダクトファン35を筒状体31内に下降気流を形成するように駆動する。また、制御部51は、最高気温が閾値(例えば28℃)以上となるときに、気温が高くなる時間帯(例えば11時から16時)において、ダクトファン35を筒状体31内に上降気流を形成するように駆動し、小屋裏空間13の温度を下げるようにする。
【0074】
・センサ41~44を省略する場合、ダクトファン35の制御のため、制御部51は、屋根4などの屋外に設置された照度計の検出値や屋根4に設置された太陽光発電システムの単位時間当たりの発電量を利用して制御を行ってもよい。すなわち、制御部51は、躯体内モードにおいて、昼間に照度計の検出値が閾値以上であるとき、晴れと判断し、ダクトファン35の駆動を停止し、中空層17において自然対流を発生させるようにする。また、照度計の検出値が閾値未満であるとき、ダクトファン35を筒状体31内で強制的に下降気流を形成するように駆動する。
【0075】
また、制御部51は、躯体内モードにおいて、昼間に太陽光発電システムの単位時間当たりの発電量が閾値以上であるとき、ダクトファン35の駆動を停止し、中空層17において自然対流を発生させるようにする。また、発電量が閾値未満であるとき、ダクトファン35を筒状体31内で強制的に下降気流を形成するように駆動する。
【0076】
・制御部51は、ダクトファン35をタイマによって駆動制御するようにしてもよい。すなわち、制御部51は、ユーザがタイマに設定した動作開始日時になると、ダクトファン35の駆動を開始し、ユーザがタイマに設定した動作停止日時になるとダクトファン35の駆動を停止する。この際、ダクトファン35の回転方向、すなわち下降気流を形成するか上昇気流を形成するかは、ユーザの設定に従うようにする。
【0077】
・制御部51は、ダクトファン35を、ユーザによる駆動開始ボタンまたは駆動停止ボタンの操作に従って制御するようにしてもよい。
・ダクトファン35は、少なくとも床下空間11から小屋裏空間13への気流を形成する動作を行えばよい。また、ダクトファン35は、省略してもよい。
【0078】
・露出部31aは、間取りの都合で、空調居住空間12aの床より天井に近い位置に設けるようにしてもよい。
・筒状体31の一部を空調居住空間12aに直接露出させて露出部31aを構成するようにしてもよい。この場合、区画空間34を設ける必要がなくなる。
【0079】
・住宅1において、筒状体31が配置される収納空間32は、区画空間34を省略し露出部31aを設けないようにしてもよい。
・住宅1としては、木造住宅に限定されるものではなく、鉄筋または鉄骨のコンクリート住宅であってもよい。また、住宅1としては、蒸暑地域の住宅に限定されるものではない。さらに、住宅としては、3階建て以上の住宅であってもよい。また、建築物としては、住宅用とに限定されるものではない。
【0080】
上記実施形態、及び、その変形例によれば、更に、以下の技術的思想が導き出される。
(付記1)
外皮の内側において、居住空間と、前記居住空間以外の空間である中空層とを備える建造物において、
前記中空層は、床下空間と、小屋裏空間と、前記床下空間と前記小屋裏空間とを連通させる壁体内空間と、前記壁体内空間とは別に前記床下空間と前記小屋裏空間とを連通させる筒状体とを備え、
前記中空層は、外気に対して閉鎖された閉鎖空間を構成する場合があり、
壁は、第1壁と、前記第1壁と異なる方位を向く第2壁とを備え、前記第1壁は、前記第2壁より開口部比率が小さい外壁であって、
前記筒状体は、前記第2壁よりも前記第1壁に対して近い位置に配置されている
建造物。
【0081】
建築物において、北側や隣接して日射を大きく遮る建物などの障害物があり採光の悪い方位の壁は、水回り設備などを設けることが多くなり、結果として、窓などの開口部が少なくなって、開口部比率が小さくなる傾向がある。一方で東西南や日射を遮る障害物の少ない方位の壁は、開口部が多くなり、結果として、開口部比率が大きくなる傾向がある。開口部比率が小さい第1壁は、第2壁よりも日射が当たりにくいことが多いと言えることから、第2壁よりも第1壁に対して近い位置に筒状体を配置する。これにより、日射の影響の大きい第2壁の壁体内空間には、暖められた壁内空気によって小屋裏空間への上昇気流が形成され、日射の影響の小さい第1壁部分の壁体内空間および筒状体には、床下空間への下降気流が形成される。これにより、小屋裏空間と床下空間の空気が混合され、床下空間の相対湿度を下げることができる。
【符号の説明】
【0082】
C…壁芯
E…外皮
O…中心
1…住宅
2…コンクリート基礎
3…外壁
3a…第1外壁
3b…第2外壁
4…屋根
11…床下空間
12…居住空間
12a…空調居住空間
13…小屋裏空間
14…壁体内空間
16…外側通気層
17…中空層
18…空調機
21…床下換気口
23…床下開閉部
24…小屋裏開口
31…筒状体
31a…露出部
34…区画空間
35…ダクトファン
41~44…センサ