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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】睡眠用器具
(51)【国際特許分類】
   A61H 7/00 20060101AFI20230905BHJP
   A61G 7/015 20060101ALN20230905BHJP
【FI】
A61H7/00 322D
A61G7/015
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020198991
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086790
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福山 弦
(72)【発明者】
【氏名】井上 三樹男
(72)【発明者】
【氏名】山本 玲子
(72)【発明者】
【氏名】若月 勇人
(72)【発明者】
【氏名】花瀬 務
(72)【発明者】
【氏名】田中 成季
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-069056(JP,A)
【文献】特開昭57-112866(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047810(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 7/00
A61G 7/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の臀部を支持可能な中央支持部と、利用者の背部及び頭部を支持可能な上側支持部と、利用者の大腿部を支持可能な下側支持部とを含んで構成されたマット本体と、
前記マット本体を、前記中央支持部、前記上側支持部及び前記下側支持部が連続した平面状となるベッド状態と、前記中央支持部に対して前記上側支持部及び前記下側支持部が上側へ傾斜した安楽状態との間で移行させる可動機構と、
前記上側支持部における安楽状態の利用者の腰部に対応する部分を利用者側へ膨出させる腰部押圧機構と、
前記上側支持部における幅方向中央部を利用者側へ膨出させる脊椎押圧機構と、
利用者の生体情報を検知可能な生体センサと、
を有し、
前記生体センサからの情報に基づき利用者の呼吸に合わせて前記脊椎押圧機構を作動させる睡眠用器具。
【請求項2】
前記生体センサからの情報に基づいて利用者の呼吸の周期を検知し、利用者が空気を吸い込んで胸部が膨らんだタイミングで前記脊椎押圧機構により前記上側支持部における幅方向中央部を利用者側へ膨出させる請求項1に記載の睡眠用器具。
【請求項3】
前記生体センサからの情報に基づいて利用者がストレス状態であると判断した場合に前記腰部押圧機構及び前記脊椎押圧機構を作動させる請求項1又は2に記載の睡眠用器具。
【請求項4】
前記生体センサからの情報に基づいて利用者が睡眠状態から覚醒したことを判断した場合に前記腰部押圧機構及び前記脊椎押圧機構を作動させる請求項1~3の何れか1項に記載の睡眠用器具。
【請求項5】
前記腰部押圧機構は、前記上側支持部の内部に設けられた腰部用ブラダと、前記腰部用ブラダへ空気を供給する空気供給部とを含んで構成されている請求項1~4の何れか1項に記載の睡眠用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エアマットの長手方向に複数のエアセルを配置した構造が開示されている。この特許文献1に開示された構造では、マットレスの長手方向両端部をエアセルに固定することで、体圧分散効果を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-229966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、利用者の腰などを押圧することでストレッチ効果を与えることができるマッサージチェアが知られている。ここで、ストレッチ効果を与えることができる睡眠用器具として、特許文献1のエアセルを膨張させて利用者の腰などを押圧する構成が考えられる。しかしながら、利用者の体格によって腰の位置が異なるため、効果的にストレッチ効果を与えるには改善の余地がある。
【0005】
本発明は、利用者の体格にかかわらず効果的にストレッチ効果を与えることができる睡眠用器具を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る睡眠用器具は、利用者の臀部を支持可能な中央支持部と、利用者の背部及び頭部を支持可能な上側支持部と、利用者の大腿部を支持可能な下側支持部とを含んで構成されたマット本体と、前記マット本体を、前記中央支持部、前記上側支持部及び前記下側支持部が連続した平面状となるベッド状態と、前記中央支持部に対して前記上側支持部及び前記下側支持部が上側へ傾斜した安楽状態との間で移行させる可動機構と、前記上側支持部における安楽状態の利用者の腰部に対応する部分を利用者側へ膨出させる腰部押圧機構と、前記上側支持部における幅方向中央部を利用者側へ膨出させる脊椎押圧機構と、利用者の生体情報を検知可能な生体センサと、を有し、前記生体センサからの情報に基づき利用者の呼吸に合わせて前記脊椎押圧機構を作動させる
【0007】
請求項1に係る睡眠用器具では、マット本体は、中央支持部と上側支持部と下側支持部とを含んで構成されている。また、マット本体は、可動機構によってベッド状態と安楽状態との間で移行される構成となっており、ベッド状態では、中央支持部、上側支持部及び下側支持部が連続した平面状となる。一方、安楽状態では、中央支持部に対して上側支持部及び下側支持部が上側へ傾斜した状態となる。これにより、利用者は、可動機構を作動することで睡眠時の姿勢から安楽姿勢へ移行することができる。
【0008】
また、上側支持部における安楽状態の利用者の腰部に対応する部分は、腰部押圧機構によって上側支持部が利用者側へ膨出される。ここで、安楽状態では、中央支持部に対して上側支持部及び下側支持部が上側へ傾斜するため利用者の体格にかかわらず臀部(ヒップポイント)が中央支持部に支持された状態となる。また、腰部は臀部から比較的近いため、利用者の体格にかかわらず腰部が一定の範囲に位置することとなり、腰部押圧機構が作動することで腰部を押圧することができる。
【0010】
また、脊椎押圧機構によって利用者の脊椎を押圧することで、利用者の胸部を広げることができる。これにより、利用者が空気を多く取り込むことができ、呼吸を促すことができる。
【0012】
さらに、利用者の呼吸に合わせて脊椎押圧機構を作動することで、利用者に効果的に呼吸を促すことができる。
請求項2に係る睡眠用器具は、請求項1において、前記生体センサからの情報に基づいて利用者の呼吸の周期を検知し、利用者が空気を吸い込んで胸部が膨らんだタイミングで前記脊椎押圧機構により前記上側支持部における幅方向中央部を利用者側へ膨出させる。
【0013】
請求項に係る睡眠用器具は、請求項1又は2において、前記生体センサからの情報に基づいて利用者がストレス状態であると判断した場合に前記腰部押圧機構及び前記脊椎押圧機構を作動させる。
【0014】
請求項に係る睡眠用器具では、利用者がストレス状態になる場合に腰部押圧機構及び脊椎押圧機構を作動することで、利用者の身体を伸ばしてストレスを軽減することができる。
【0015】
請求項に係る睡眠用器具は、請求項1~3の何れか1項において、前記生体センサからの情報に基づいて利用者が睡眠状態から覚醒したことを判断した場合に前記腰部押圧機構及び前記脊椎押圧機構を作動させる。
【0016】
請求項に係る睡眠用器具では、利用者が睡眠から目覚める際に自然に多くの空気を体内に取り込むことができ、快適に起床することができる。
【0017】
請求項に係る睡眠用器具は、請求項1~の何れか1項において、前記腰部押圧機構は、前記上側支持部の内部に設けられた腰部用ブラダと、前記腰部用ブラダへ空気を供給する空気供給部とを含んで構成されている。
【0018】
請求項に係る睡眠用器具では、空気供給部から腰部用ブラダ(空気袋)へ空気を供給することで腰部用ブラダを膨張させて利用者の腰部を押圧する。これにより、簡単な構造で利用者の腰部を押圧することができる。また、機械的に腰部を押圧する構造と比較して、軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係る睡眠用器具によれば、利用者の体格にかかわらず効果的にストレッチ効果を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る睡眠用器具をシート幅方向から見た概略側面図であり、安楽状態を示す図である。
図2図1の状態から腰部押圧機構が膨出した状態における睡眠用器具を示す概略側面図である。
図3】実施形態に係る睡眠用器具をシート幅方向から見た概略側面図であり、ベッド状態を示す図である。
図4】実施形態に係る睡眠用器具をシート上方向から見た概略平面図である。
図5】実施形態における睡眠用器具のハードウェア構成を示すブロック図である。
図6】実施形態における睡眠用器具の機能構成を示すブロック図である。
図7】変形例に係る睡眠用器具をシート幅方向から見た概略側面図であり、安楽状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る睡眠用器具10について、図面を参照して説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP及び矢印RHは、睡眠用器具10の前方向、上方向及び幅方向の右側をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、睡眠用器具10における前後方向の前後、上下方向の上下、幅方向の左右を示すものとする。また、睡眠用器具10の前方向とは、利用者が睡眠用器具10の利用時に頭部から脚部へ向かう水平方向に沿った方向である。
【0022】
(全体構成)
図1~3に示されるように、本実施形態の睡眠用器具10は、マット本体12を備えている。マット本体12は、図1に示される安楽状態と、図3に示されるベッド状態との間で相互に移行可能に構成されている。そして、安楽状態では、マット本体12に利用者P1が安楽姿勢で着座可能とされており、ベッド状態では、マット本体12によって利用者P1を仰向けの状態で支持可能とされている。なお、図1には、利用者P1よりも小柄な利用者P2が図示されている。例えば、利用者P1は、平均体型の成人男性であり、利用者P2は、小柄な成人女性である。
【0023】
マット本体12は、中央支持部14、上側支持部16、下側支持部18及び脚部支持部20を含んで構成されている。中央支持部14は、マット本体12における前後方向の中央部に設けられており、利用者P1の臀部を支持可能に構成されている。
【0024】
中央支持部14よりも後側には、中央支持部14と連続して上側支持部16が設けられている。上側支持部16は、図3に示されるベッド状態では、水平方向に沿って略直線状に延在されており、利用者P1の背部及び頭部を支持可能に構成されている。
【0025】
中央支持部14よりも前側には、中央支持部14と連続して下側支持部18が設けられている。下側支持部18は、図3に示されるベッド状態では、水平方向に沿って略直線状に延在されており、利用者P1の大腿部を支持可能に構成されている。
【0026】
下側支持部18よりも前側には、下側支持部18と連続して脚部支持部20が設けられている。脚部支持部20は、図3に示されるベッド状態では、水平方向に沿って略直線状に延在されており、利用者P1の脚部を支持可能に構成されている。このように、マット本体12は、ベッド状態で中央支持部14、上側支持部16、下側支持部18及び脚部支持部20が連続した平面状となる。
【0027】
一方、図1に示されるように、マット本体12を構成する中央支持部14は、安楽状態で幅方向から見て下側が凸となる略V字状に曲がっている。また、上側支持部16は、図1に示す安楽状態で、中央支持部14から後方へ向かうにつれて上方に位置するように傾斜した状態となっている。
【0028】
下側支持部18は、図1に示す安楽状態で、中央支持部14から前方へ向かうにつれて上方に位置するように傾斜した状態となっている。このため、マット本体12は、安楽状態で、幅方向から見て中央支持部14が最下部となるように上側支持部16、中央支持部14及び下側支持部18が連続した略V字状となっている。
【0029】
脚部支持部20は、図1に示す安楽状態で、下側支持部18の前端部から前方へ向かうにつれて下方に位置するように傾斜した状態となっている。このため、下側支持部18及び脚部支持部20は、幅方向から見て上側が凸となる略V字状に曲がっている。
【0030】
マット本体12よりも下方には、マット本体12を安楽状態とベッド状態との間で相互に移行させる可動機構22が設けられている。可動機構22は、リンク機構24、昇降用ブラダ26及び支持ベース28を含んで構成されている。
【0031】
支持ベース28は、上下方向を板厚方向として水平方向に延在された略板状のフレーム部材であり、図示しない床面に設置されてマット本体12を下方から支持している。支持ベース28における後部には、リンク機構24が設けられている。リンク機構24は、第1リンク24A、第2リンク24B及び第3リンク24Cを含んで構成されている。
【0032】
第1リンク24Aは、マット本体12の上側支持部16の下面に取付けられており、第1リンク24Aの一端部が支持ベース28に回動可能に接続されている。第2リンク24Bは、長尺状に形成されており、第2リンク24Bの一端部が第1リンク24Aの後部に回動可能に接続されており、第2リンク24Bの他端部が支持ベース28に回動可能に接続されている。
【0033】
第3リンク24Cは、幅方向から見て略円弧状に形成されており、第3リンク24Cの一端部が第1リンク24Aの前部に回動可能に接続されており、第3リンク24Cの他端部が支持ベース28に回動可能に接続されている。
【0034】
ここで、第2リンク24Bと支持ベース28との接続部分には図示しないモータが設けられており、モータを作動させることで第2リンク24Bが一端部を中心に回動するように構成されている。なお、第1リンク24A、第2リンク24B及び第3リンク24Cはそれぞれ、左右一対設けられているが、図1~3には左側のみが図示されている。
【0035】
昇降用ブラダ26は、下側ブラダ26A及び上側ブラダ26Bを含んで構成されている。下側ブラダ26A及び上側ブラダ26Bは、支持ベース28とマット本体12との間に配設されている。具体的には、下側ブラダ26A及び上側ブラダ26Bは、マット本体12における下側支持部18と脚部支持部20との接続部分に位置している。
【0036】
また、下側ブラダ26Aは、支持ベース28に取付けられている。上側ブラダ26Bは、下側ブラダ26Aの上面に取付けられており、下側ブラダ26Aと内部空間が連通している。さらに、下側ブラダ26Aには、図示しない空気供給部から空気が供給されるように構成されており、下側ブラダ26Aに空気が供給されることで、下側ブラダ26A及び上側ブラダ26Bが膨張して下側支持部18と脚部支持部20との接続部分を上昇させる。
【0037】
昇降用ブラダ26よりも前方には、脚部用ブラダ30が設けられている。脚部用ブラダ30は、後述する回動フレーム32に取付けられている。そして、脚部用ブラダ30に空気が供給されて膨張することで、脚部支持部20の前部を傾斜した状態で支持するように構成されている。
【0038】
回動フレーム32は、支持ベース28の前端部に回動可能に取り付けられている。また、回動フレーム32には図示しないロック機構が設けられており、支持ベース28と一直線上となる位置で回動フレーム32がロックされている。ロックを解除することで、回動フレーム32が支持ベース28に対して下方へ回動可能な状態となる。例えば、支持ベース28が設置されている床面に段差を形成することで回動フレーム32の下方に空間が設けられている場合、回動フレーム32を下方へ回動することで、回動フレーム32の前端部が支持ベース28よりも下方に位置することとなる。この状態で昇降用ブラダ26及び脚部用ブラダ30を収縮させると、脚部支持部20が下方へ移動してマット本体12が椅子の形状となる。
【0039】
(支持用ブラダ)
図4に示されるように、マット本体12の内部には、支持用ブラダ34が設けられている。支持用ブラダ34は、支持用ブラダ34A、支持用ブラダ34B、支持用ブラダ34C、支持用ブラダ34D及び支持用ブラダ34Eを含んで構成されている。
【0040】
支持用ブラダ34Aは、マット本体12における後端部に配設されており、幅方向を長手方向とする空気袋が前後方向に3個連結されて構成されている。また、支持用ブラダ34Aは、上側支持部16内において安楽姿勢の利用者P1の頭部に対応する位置に設けられている(図1参照)。
【0041】
支持用ブラダ34Bは、支持用ブラダ34Aの前部に設けられており、幅方向を長手方向とする空気袋が前後方向に4個連結されて構成されている。支持用ブラダ34Bは、上側支持部16内において安楽姿勢の利用者P1の背部に対応する位置に設けられている。
【0042】
支持用ブラダ34Cは、支持用ブラダ34Bの前部に設けられており、幅方向を長手方向とする空気袋が前後方向に4個連結されて構成されている。支持用ブラダ34Cは、中央支持部14内において安楽姿勢の利用者P1の臀部に対応する位置に設けられている(図1参照)。
【0043】
支持用ブラダ34Dは、支持用ブラダ34Cの前部に設けられており、幅方向を長手方向とする空気袋が前後方向に3個連結されて構成されている。支持用ブラダ34Dは、下側支持部18内において安楽姿勢の利用者P1の大腿部に対応する位置に設けられている(図1参照)。
【0044】
支持用ブラダ34Eは、支持用ブラダ34Dの前部に設けられており、幅方向を長手方向とする空気袋が前後方向に6個連結されて構成されている。支持用ブラダ34Eは、脚部支持部20内において安楽姿勢の利用者P1の脚部に対応する位置に設けられている(図1参照)。
【0045】
以上のように、支持用ブラダ34は、マット本体12の前端部から後端部まで設けられており、図5に示す全体空気供給部60から空気が供給されることで膨張するように構成されている。なお、支持用ブラダ34を構成する空気袋の数は限定されない。
【0046】
(揺動ブラダ)
支持用ブラダ34Bの下面側には、右側揺動ブラダ36R及び左側揺動ブラダ36Lが設けられている。右側揺動ブラダ36Rは、上側支持部16における幅方向の中心よりも右側に位置している。また、左側揺動ブラダ36Lは、上側支持部16における幅方向の中心よりも左側に位置している。
【0047】
右側揺動ブラダ36R及び左側揺動ブラダ36Lは、図5に示す揺動用空気供給部66から空気が供給されることで膨張するように構成されている。揺動用空気供給部66から右側揺動ブラダ36Rへ空気が供給されることで、上側支持部16の右側が持ち上がる。一方、揺動用空気供給部66から左側揺動ブラダ36Lへ空気が供給されることで、上側支持部16の左側が持ち上がる。また、右側揺動ブラダ36R及び左側揺動ブラダ36Lは、所定の条件で作動して左右交互に膨張収縮を繰り返すように制御されている。
【0048】
例えば、利用者P1及びP2が入眠したことを条件として右側揺動ブラダ36R及び左側揺動ブラダ36Lが交互に膨張収縮を繰り返す。これにより、上側支持部16が左右に揺動され、利用者P1及びP2の体圧が作用する部分が周期的に変化する。この結果、利用者P1及びP2の血液の循環が促され、寝返りを打つことなく睡眠状態を良好に維持することができる。
【0049】
(腰部用ブラダ)
支持用ブラダ34Bの上面側には、腰部押圧機構を構成する腰部用ブラダ38が設けられている。腰部用ブラダ38は、平面視で幅方向を長手方向として、上側支持部16を構成する空気袋よりも前後に広幅とされた略矩形状に形成されている。
【0050】
ここで、図1に示されるように、腰部用ブラダ38は、上側支持部16における安楽状態の利用者P1及びP2の腰部に対応する部分に設けられている。また、腰部用ブラダ38は、図5に示す腰部用空気供給部62から空気が供給されることで膨張するように構成されており、腰部用ブラダ38が膨張することで、図2に示されるように上側支持部16における腰部に対応する部分が利用者P1及びP2側へ膨出する。このように、腰部用ブラダ38が膨張することで利用者P1及びP2の腰部が押圧される。
【0051】
(脊椎用ブラダ)
図4に示されるように、支持用ブラダ34Bと腰部用ブラダ38との間には、脊椎用ブラダ39が設けられている。脊椎用ブラダ39は、平面視で前後方向を長手方向として、腰部用ブラダ38と交差する略矩形状に形成されている。
【0052】
また、脊椎用ブラダ39は、上側支持部16における幅方向中央部に位置しており、安楽姿勢の利用者P1及びP2の脊椎、すなわち背骨に沿って延在されている。さらに、脊椎用ブラダ39は、図5に示す脊椎用空気供給部64から空気が供給されることで膨張するように構成されており、脊椎用ブラダ39が膨張することで、上側支持部16における脊椎に対応する部分が利用者P1及びP2側へ膨出する。このように、脊椎用ブラダ39が膨張することで利用者P1及びP2の脊椎が押圧される。
【0053】
図1に示されるように、上側支持部16には生体センサとしての体圧センサ40が設けられている。体圧センサ40は、利用者P1及びP2の心臓に対応する位置に設けられており、この体圧センサ40によって利用者P1及びP2の心拍を検知できるように構成されている。また、利用者P1及びP2の呼吸時における圧力変化を体圧センサ40で検知することで、利用者P1及びP2の呼吸の周期が分かる。
【0054】
(睡眠用器具10のハードウェア構成)
図5は、睡眠用器具10のハードウェア構成を示すブロック図である。この図5に示されるように、睡眠用器具10は制御部42を備えており、この制御部42は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)44、ROM(Read Only Memory)46、RAM(Random Access Memory)48、ストレージ50及び入出力インタフェース52を含んで構成されている。各構成は、バス43を介して相互に通信可能に接続されている。
【0055】
CPU44は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU44は、ROM46又はストレージ50からプログラムを読み出し、RAM48を作業領域としてプログラムを実行する。CPU44は、ROM46又はストレージ50に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0056】
ROM46は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM48は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ50は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する非一時的記録媒体である。本実施形態では、ROM46又はストレージ50には、ブラダ制御処理を行うためのプログラム、及び各種データなどが格納されている。
【0057】
入出力インタフェース52は、体圧センサ40、生体センサとしての室内カメラ54、リンク機構56、昇降用ブラダ58、全体空気供給部60、腰部用空気供給部62、脊椎用空気供給部64及び揺動用空気供給部66と電気的に接続されている。体圧センサ40は、利用者Pの心拍及び呼吸による圧力変化を検知して制御部42へ送信する。
【0058】
室内カメラ54は、車室内に設けられて睡眠用器具10に着座した状態の利用者Pへ向けられている。本実施形態では一例として、室内カメラ54によって利用者Pの顔を撮像するように構成されており、撮像されたデータを制御部42へ送信する。
【0059】
(睡眠用器具10の機能構成)
睡眠用器具10は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。睡眠用器具10が実現する機能構成について図6を参照して説明する。
【0060】
図6に示されるように、睡眠用器具10は、機能構成として、受信部68、マット変形部70、覚醒度判断部72、揺動制御部74、腰部押圧部76及び脊椎押圧部78を含んで構成されている。なお、各機能構成は、CPU44がROM46又はストレージ50に記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0061】
受信部68は、体圧センサ40及び室内カメラ54などから送信された信号を受信する。マット変形部70は、可動機構22を作動させることで、マット本体12を安楽状態とベッド状態との間で相互に移行させる。例えば、マット変形部70は、利用者P1及びP2からの操作を受け付けることで可動機構22を作動させてもよい。また、マット変形部70は、利用者P1及びP2が入眠した場合に可動機構22を作動させてマット本体12を安楽状態からベッド状態へ移行してもよい。さらに、マット変形部70は、利用者P1及びP2が目覚めた場合に可動機構22を作動させてマット本体12をベッド状態から安楽状態へ移行してもよい。
【0062】
覚醒度判断部72は、利用者P1及びP2の覚醒度を判断する。具体的には、覚醒度判断部72は、体圧センサ40及び室内カメラ54から受信した情報に基づいて、利用者P1及びP2の覚醒度を判断する。例えば、覚醒度判断部72は、室内カメラ54から受信した信号から利用者P1及びP2が所定時間以上目を瞑った状態を検知した場合に、利用者P1及びP2が入眠したと判断してもよい。また、覚醒度判断部72は、利用者P1及びP2が入眠状態から目を開けた場合に、覚醒したと判断してもよい。
【0063】
また、覚醒度判断部72は、体圧センサ40から受信した信号から、心拍変動の時系列データを取得し、この心拍変動の時系列データに基づいて、交感神経活動が抑制され、心拍数が下がった状態であれば、利用者P1及びP2が睡眠状態である判断してもよい。また逆に、交感神経活動が活発で副交感神経活動が抑制している状態に移行すれば、利用者P1及びP2が覚醒した状態であると判断してもよい。本実施形態では、室内カメラ54で取得された利用者P1及びP2の顔の画像データと、体圧センサ40で取得された利用者P1及びP2の心拍データの両方に基づいて利用者P1及びP2の覚醒度を判断する。
【0064】
揺動制御部74は、覚醒度判断部72によって利用者P1及びP2が入眠したと判断された場合に、揺動用空気供給部66を作動する。揺動制御部74によって揺動用空気供給部66が作動することで、右側揺動ブラダ36R及び左側揺動ブラダ36Lが交互に膨張収縮を繰り返す。例えば、揺動制御部74は、90分の周期で右側揺動ブラダ36R及び左側揺動ブラダ36Lを交互に膨張収縮させる。
【0065】
腰部押圧部76は、所定の条件が成立した場合に腰部用空気供給部62を作動する。本実施形態の腰部押圧部76は、マット本体12が安楽状態の場合に腰部用空気供給部62を作動する。また、腰部押圧部76は、受信部68が受信した体圧センサ40及び室内カメラ54の信号に基づいて、利用者P1及びP2がストレス状態であると判断した場合に腰部用空気供給部62を作動して腰部用ブラダ38を膨張させる。利用者P1及びP2のストレス状態は、例えば、心拍変動の時系列データから推測する。また、室内カメラ54で利用者P1及びP2の表情を読み取ることで、利用者P1及びP2がストレス状態であるか否かを判断してもよい。
【0066】
さらに、本実施形態では、腰部押圧部76は、利用者P1及びP2が睡眠状態から覚醒した場合に腰部用空気供給部62を作動する。
【0067】
脊椎押圧部78は、所定の条件が成立した場合に脊椎用空気供給部64を作動する。本実施形態の脊椎押圧部78は、マット本体12が安楽状態の場合に脊椎用空気供給部64を作動する。また、脊椎押圧部78は、利用者P1及びP2がストレス状態であると判断した場合に脊椎用空気供給部64を作動して脊椎用ブラダ39を膨張させる。
【0068】
さらに、本実施形態では、脊椎押圧部78は、利用者P1及びP2が睡眠状態から覚醒した場合に脊椎用空気供給部64を作動する。ここで、腰部押圧部76によって利用者P1及びP2の腰部を押圧するタイミングと、脊椎押圧部78によって利用者P1及びP2の脊椎を押圧するタイミングをずらしてもよい。例えば、腰部押圧部76及び脊椎押圧部78は、腰部用ブラダ38と脊椎用ブラダ39が交互に膨張収縮するように制御してもよい。また、例えば、腰部押圧部76及び脊椎押圧部78は、腰部用ブラダ38と脊椎用ブラダ39が同時に膨張収縮するように制御してもよい。
【0069】
また、本実施形態の脊椎押圧部78は、利用者P1及びP2の呼吸に合わせて脊椎用空気供給部64を作動させる。例えば、体圧センサ40及び室内カメラ54によって利用者P1の呼吸の周期を検知し、利用者P1が空気を吸い込んで胸部が膨らんだタイミングで脊椎用空気供給部64を作動して脊椎用ブラダ39を膨張させる。
【0070】
(作用)
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0071】
本実施形態に係る睡眠用器具10では、可動機構22によってマット本体12がベッド状態と安楽状態との間で移行される構成となっている。図3に示されるベッド状態では、中央支持部14、上側支持部16及び下側支持部18が連続した平面状となる。一方、図1に示される安楽状態では、中央支持部14に対して上側支持部16及び下側支持部18が上側へ傾斜した状態となる。これにより、利用者P1及びP2は、可動機構22を作動することで睡眠時の姿勢から安楽姿勢へ移行することができる。
【0072】
また、本実施形態に係る睡眠用器具10では、上側支持部16における安楽状態の利用者の腰部に対応する部分には腰部用ブラダ38が設けられており、この腰部用ブラダ38が膨張することによって利用者の腰部が押圧される。ここで、図1に示されるように、安楽状態では、中央支持部14に対して上側支持部16及び下側支持部18が上側へ傾斜するため利用者の体格にかかわらず臀部(ヒップポイント)が中央支持部14に支持された状態となる。すなわち、利用者P1と利用者P2とでは体格が異なるが、腰部の位置は一定の範囲に収まる。これにより、安楽状態で腰部押圧部76の機能によって腰部用空気供給部62を作動させすることで、利用者P1及び利用者P2の腰部を押圧することができる。この結果、本実施形態に係る睡眠用器具10では、利用者の体格にかかわらず効果的にストレッチ効果を与えることができる。
【0073】
さらに、本実施形態に係る睡眠用器具10では、脊椎押圧部78によって利用者P1及びP2の脊椎を押圧することで、利用者P1及びP2の胸部を広げることができる。これにより、利用者P1及びP2が空気を多く取り込むことができ、呼吸を促すことができる。特に、本実施形態のように利用者P1及びP2の呼吸に合わせて脊椎用空気供給部64を作動することで、利用者に効果的に呼吸を促すことができる。
【0074】
さらにまた、本実施形態に係る睡眠用器具10では、利用者P1及びP2がストレス状態になる場合に腰部用空気供給部62及び脊椎用空気供給部64を作動することで、利用者P1及びP2の身体を伸ばしてストレスを軽減することができる。
【0075】
また、本実施形態に係る睡眠用器具10では、利用者P1及びP2の覚醒時に腰部用空気供給部62及び脊椎用空気供給部64を作動することで、利用者P1及びP2が睡眠から目覚める際に自然に多くの空気を体内に取り込むことができる。この結果、利用者P1及びP2が快適に起床することができる。
【0076】
さらに、本実施形態に係る睡眠用器具10では、腰部用空気供給部62から腰部用ブラダ38へ空気を供給することで腰部用ブラダ38を膨張させて利用者P1及びP2の腰部を押圧する。これにより、簡単な構造で利用者の腰部を押圧することができる。また、機械的に腰部を押圧する構造と比較して、軽量化を図ることができる。
【0077】
なお、上記実施形態では、図1に示されるように、リンク機構56及び昇降用ブラダ26を備えた可動機構22によってマット本体12を変形させる構成としたが、これに限定されない。図7に示す変形例の構造を採用してもよい。
【0078】
(変形例)
図7に示されるように、変形例に係る睡眠用器具80は、リンク機構24、下側フレーム88、脚部フレーム90、第1リクライナ82、第2リクライナ84及び第3リクライナ86を含んで可動機構81が構成されている。第1リクライナ82は、リンク機構24における第2リンク24Bと支持ベース28との接続部分に設けられており、第1リクライナ82を作動させることで第2リンク24Bが一端部を中心に回動するように構成されている。
【0079】
また、マット本体12を構成する下側支持部18の下面側には、下側フレーム88が設けられている。下側フレーム88は、下側支持部18に沿って延在されており、下側支持部18を支持している。
【0080】
ここで、下側フレーム88の一端部は、支持ベース28に回動可能に接続されており、下側フレーム88と支持ベース28との接続部分には、第2リクライナ84が設けられている。そして、第2リクライナ84を作動させることで、下側フレーム88が一端部を中心に回動するように構成されている。
【0081】
下側支持部18よりも前方には脚部フレーム90が設けられている。脚部フレーム90は、脚部支持部20に沿って延在されており、脚部支持部20を支持している。また、下側フレーム88と脚部フレーム90とは回動可能に接続されており、この下側フレーム88と脚部フレーム90との接続部分には、第3リクライナ86が設けられている。そして、第3リクライナ86を作動させることで、脚部フレーム90が下側フレーム88に対して回動するように構成されている。
【0082】
以上のように、変形例に係る睡眠用器具80では、第1リクライナ82、第2リクライナ84及び第3リクライナ86を作動させることで、マット本体12を安楽状態とベッド状態との間で相互に移行させることができる。また、第1リクライナ82、第2リクライナ84及び第3リクライナ86として同じ部品を用いることができるため、部品の種類を減らすことができる。
【0083】
以上、実施形態に係る睡眠用器具10について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、マット本体12を連続する中央支持部14、上側支持部16、下側支持部18及び脚部支持部20によって構成したが、これに限定されない。すなわち、利用者P1の臀部を支持する部位と、利用者P1の背部及び頭部を支持する部位とを別体で形成して連結した構成としてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、図4に示されるように、マット本体12の内部に支持用ブラダ34が設けられていたが、これに限定されない。例えば、支持用ブラダ34を備えていない構成としてもよい。この場合であっても、腰部用ブラダ38及び脊椎用ブラダ39を膨張させることで、利用者P1の腰部及び背部をストレッチすることができる。
【0085】
さらに、上記実施形態では、可動機構22によってマット本体12を安楽状態とベッド状態との間で相互に移行可能な構成としたが、これに限定されない。例えば、可動機構22によってマット本体12を安楽状態、ベッド状態及び椅子状態の3つの状態で相互に移行可能な構成としてもよい。この場合、図1に示す安楽状態から回動フレーム32を下方へ回動させ、昇降用ブラダ26及び脚部用ブラダ30を収縮させることで、下側支持部18が水平となり、脚部支持部20が下側支持部18から下方へ延在された状態となる。そして、リンク機構24を作動して上側支持部16を起立させることで、マット本体12が椅子の形状となる。このように、マット本体12を安楽状態、ベッド状態及び椅子状態の3つの状態で相互に移行可能な構成とすることで、睡眠用器具10を車両に搭載するなど、幅広く利用することができる。
【0086】
さらにまた、上記実施形態では、脊椎用ブラダ39を備えた構成について説明したが、これに限定されない。例えば、腰部用ブラダ38のみを備え、脊椎用ブラダ39を備えていない構成としてもよい。この場合、脊椎用ブラダ39を備えた構造と比較して、マット本体12の厚みを減少させることができる。
【0087】
また、上記実施形態では、腰部用ブラダ38を膨張することで利用者P1及びP2の腰部を押圧したが、これに限定されない。例えば、シリンダなどを用いて機械的に利用者P1及びP2の腰部を押圧する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0088】
10、80 睡眠用器具
12 マット本体
14 中央支持部
16 上側支持部
18 下側支持部
22、81 可動機構
38 腰部用ブラダ(腰部押圧機構)
39 脊椎用ブラダ(脊椎押圧機構)
40 体圧センサ(生体センサ)
54 室内カメラ(生体センサ)
62 腰部用空気供給部(腰部押圧機構)
64 脊椎用空気供給部(脊椎押圧機構)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7