(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】しわの発生が防止された銅箔、それを含む電極、それを含む二次電池、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C25D 1/04 20060101AFI20230905BHJP
C25D 1/00 20060101ALI20230905BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20230905BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
C25D1/04 311
C25D1/00 311
H01M4/13
H01M4/66 A
(21)【出願番号】P 2020503052
(86)(22)【出願日】2018-07-25
(86)【国際出願番号】 KR2018008399
(87)【国際公開番号】W WO2019027174
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-01-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】10-2017-0096664
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518133500
【氏名又は名称】エスケー ネクシリス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【氏名又は名称】太田 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100120857
【氏名又は名称】渡邉 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】ジン シャン ファ
(72)【発明者】
【氏名】イ アン ナ
(72)【発明者】
【氏名】キム スン ミン
【合議体】
【審判長】池渕 立
【審判官】土屋 知久
【審判官】佐藤 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-21186(JP,A)
【文献】特開2016-50325(JP,A)
【文献】国際公開第2017/018655(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/001885(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/208869(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D1/04
H01M4/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅イオンを含む電解液を製造する段階と、
前記電解液内に互いに離隔して配置された陽極板及び回転陰極ドラムを30~70ASD(A/dm
2)の電流密度で通電させて銅層を形成する段階とを含み、
前記電解液は、
70~100g/Lの銅イオンと、
70~150g/Lの硫酸と、
1~60ppmの塩素(Cl)と、
0.1~2g/Lのヒ素(As)イオンと、
有機添加剤とを含み、
前記有機添加剤は、光沢剤(A成分)、減速剤(B成分)、レベリング剤(C成分)及び粗度調節剤(D成分)の少なくとも1種を含み、
前記光沢剤(A成分)はスルホン酸又はその金属塩を含み、
前記減速剤(B成分)は非イオン性水溶性高分子を含み、
前記レベリング剤(C成分)は窒素(N)及び硫黄(S)の少なくとも1種を含み、
前記粗度調節剤(D成分)は窒素含有ヘテロ環4級アンモニウム塩又はその誘導体を含
み、
ここで、銅箔が、
マット面及び光沢面を有する前記銅層と、
前記銅層上に配置された防錆膜とを含み、
絶対値を基準に、0.5~25Mpaの残留応力(residual stress)を有し、
前記銅層は結晶面を有し、前記銅層の結晶面である(111)面、(200)面、(220)面及び(311)面の集合組織係数(Texture coefficient、TC)の和において(220)面の集合組織係数[TC(220)]が占める比率[TCR(220)]が5~30%であり、
ここで、前記残留応力は、前記(111)面、前記(200)面、前記(220)面及び前記(311)面の少なくとも一つに対して測定されたものであり、および、
前記銅箔が、130℃で30分間の熱処理後、2~20%の延伸率を有する、
銅箔の製造方法。
【請求項2】
前記有機添加剤は、1~150ppmの濃度を有する、請求項1に記載の銅箔の製造方法。
【請求項3】
前記光沢剤は、ビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィドジソジウム塩[bis-(3-Sulfopropyl)-disulfide disodium salt](SPS)、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、3-(N,N-ジメチルチオカルバモイル)-チオプロパンスルホネートソジウム塩、3-[(アミノ-イミノメチル)チオ]-1-プロパンスルホネートソジウム塩、o-エチルジチオカーボネート-S-(3-スルホプロピル)-エステルソジウム塩、3-(ベンゾチアゾリル-2-メルカプト)-プロピル-スルホン酸ソジウム塩及びエチレンジチオジプロピルスルホン酸ソジウム塩(ethylenedithiodipropylsulfonic acid sodium salt)の中で選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の銅箔の製造方法。
【請求項4】
前記光沢剤は、1~50ppmの濃度を有する、請求項1に記載の銅箔の製造方法。
【請求項5】
前記減速剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンコポリマー、ポリグリセリン、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ヒドロキシエチレンセルロース、ポリビニルアルコール、ステアリン酸ポリグリコールエーテル及びステアリルアルコールポリグリコールエーテルの中で選択される少なくとも1種の非イオン性水溶性高分子を含む、請求項1に記載の銅箔の製造方法。
【請求項6】
前記非イオン性水溶性高分子は、500~25,000の数平均分子量を有する、請求項5に記載の銅箔の製造方法。
【請求項7】
前記減速剤は、5~50ppmの濃度を有する、請求項1に記載の銅箔の製造方法。
【請求項8】
前記レベリング剤は、チオウレア(TU)、ジエチルチオウレア、エチレンチオウレア、アセチレンチオウレア、ジプロピルチオウレア、ジブチルチオウレア、N-トリフルオロアセチルチオウレア(N-trifluoroacetylthiourea)、N-エチルチオウレア(N-ethylthiourea)、N-シアノアセチルチオウレア(N-cyanoacetylthiourea)、N-アリルチオウレア(N-allylthiourea)、o-トリルチオウレア(o-tolylthiourea)、N,N’-ブチレンチオウレア(N,N’-butylene thiourea)、チアゾリジンチオール(thiazolidinethiol)、4-チアゾリンチオール(4-thiazolinethiol)、4-メチル-2-ピミリジンチオール(4-methyl-2-pyrimidinethiol)、2-チオウラシル(2-thiouracil)、3-(ベンゾトリアゾール-2-メルカプト)-プロスルホン酸)、2-メルカプトピリジン、3(5-メルカプト1H-テトラゾール)ベンゼンスルホネート、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジメチルピリジン、2,2’-ビピリジン、4,4’-ビピリジン、ピミリジン、ピリダジン、ピミリジン、ピリノリン、オキサゾール、
チアゾール、1-メチルイミダゾール、1-ベンジルイミダゾール、1-メチル-2メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-エチル-4-メチルイミダゾール、N-メチルピロール、N-エチルピロール、N-ブチルピロール、N-メチルピロリン、N-エチルピロリン、N-ブチルピロリン、ピミリジン、プリン、キノリン、イソキノリン、N-メチルカルバゾール、N-エチルカルバゾール及びN-ブチルカルバゾールの中で選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の銅箔の製造方法。
【請求項9】
前記レベリング剤は、1~20ppmの濃度を有する、請求項1に記載の銅箔の製造方法。
【請求項10】
前記粗度調節剤は、下記化学式1~5で表現される化合物の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の銅箔の製造方法。
【化1】
化学式1~5で、j、k、l、m及びn1~n5はそれぞれ繰り返し単位を示し、1以上の整数であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【請求項11】
前記化学式1~5で表現される化合物は、それぞれ500~50,000の数平均分子量を有する、請求項10に記載の銅箔の製造方法。
【請求項12】
前記粗度調節剤は、1~30ppmの濃度を有する、請求項1に記載の銅箔の製造方法。
【請求項13】
前記電解液は、200ppm以下の全有機炭素(TOC)濃度を有する、請求項1に記載の銅箔の製造方法。
【請求項14】
前記銅層を形成する段階は、
活性炭を用いて前記電解液を濾過する段階と、
珪藻土を用いて前記電解液を濾過する段階と、
前記電解液をオゾン(O
3)で処理する段階との少なくとも一つを含む、請求項1に記載の銅箔の製造方法。
【請求項15】
前記電解液を製造する段階は、
銅ワイヤを熱処理する段階と、
前記熱処理された銅ワイヤを酸洗する段階と、
前記酸洗された銅ワイヤを水洗する段階と、
前記水洗された銅ワイヤを電解液用硫酸に投入する段階と、
を含む、請求項1に記載の銅箔の製造方法。
【請求項16】
前記銅層に防錆膜を形成する段階をさらに含む、請求項1に記載の銅箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はしわ又はカール(curl)の発生が防止された銅箔、それを含む電極、それを含む二次電池、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、電気エネルギーを化学エネルギーに変えて貯蔵した後、電気が必要なときに化学エネルギーをさらに電気エネルギーに変換させて電気を発生させるエネルギー変換機器の一種である。二次電池は再充電が可能であるという点で充電式電池(rechargeable battery)とも指称される。
【0003】
このような二次電池のうち、リチウム二次電池は、高作動電圧、高エネルギー密度及び優れた寿命の特性を有する。最近、スマートフォン、ノートブック型パソコンなどの携帯用電子機器の使用増加及び電気自動車の商用化につれて、リチウム二次電池の需要が急増している。このような二次電池は銅箔からなる陰極集電体を含む。銅箔のうち、電解銅箔が二次電池の陰極集電体として広く使われている。二次電池に対する需要増加とともに、高容量、高効率及び高品質の二次電池に対する需要が増加するにつれて、二次電池の特性を向上させることができる銅箔が要求されている。特に、二次電池の高容量化及び安定的な容量維持を保障することができる銅箔が要求されている。
【0004】
一方、銅箔の厚さが薄いほど、同じ空間に収容可能な活物質の量が増加し、集電体の数が増加することができるので、二次電池の容量が増加することができる。しかし、銅箔が薄いほど、カール(curl)が発生し、銅箔の巻付時にエッジ(Edge)部のカールによる銅箔の引裂又はしわ(wrinkle)のような不良が発生するから、極薄膜(very thin film)状の銅箔を製造するのに困難がある。よって、非常に薄い厚さを有する銅箔の製造のために、銅箔のカール(Curl)を防止しなければならない。
【0005】
一方、陰極集電体として使われる電解銅箔は約30~40kgf/mm2程度の引張強度を有する。高容量リチウム二次電池の製造のために、高容量の特性を有する金属系又は複合系活物質が最近脚光を浴びている。金属系又は複合系活物質は充放電の過程で体積膨張がひどいから、銅箔が活物質の体積膨張に対応することができなければならない。
【0006】
このような点を考慮するとき、銅箔の製造過程だけではなく銅箔を用いた二次電池用電極又は二次電池の製造過程で銅箔でカール(Curl)、しわ又は引裂が発生してはいけない。特に、ロールツーロール(Roll to Roll、RTR)工程による銅箔又は銅箔を用いた二次電池用電極の製造過程で、巻付過程又は活物質のコーティング過程で銅箔の角部が破れるなどの不良が発生してはいけない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上のような要求を満たすことができる銅箔、それを含む電極、それを含む二次電池、及び銅箔の製造方法に関するものである。
【0008】
本発明の一実施例は、薄い厚さを持っても、製造過程でカール、しわ又は引裂が発生しない銅箔を提供しようとする。また、本発明の一実施例は、銅箔を用いた二次電池用電極又は二次電池の製造過程でカール、しわ又は引裂が発生しない銅箔を提供しようとする。
【0009】
本発明の他の一実施例は、このような銅箔を含む二次電池用電極、及びこのような二次電池用電極を含む二次電池を提供しようとする。
【0010】
本発明のさらに他の一実施例は、カール、しわ又は引裂の発生が防止された銅箔の製造方法を提供しようとする。
【0011】
前述した本発明の観点の他にも、本発明の他の特徴及び利点が、以下で説明されるか、そのような説明から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明らかに理解可能であろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施例は、銅箔を構成する銅層の結晶配向性を制御して、銅箔のカール(Curl)現象を制御しようとする。また、銅箔内部の残留応力を減少させることにより、銅箔でカール(Curl)が発生することを最大限抑制しようとする。
【0013】
このために、本発明の一実施例は、マット面及び光沢面を有する銅層と、前記銅層上に配置された防錆膜とを含み、絶対値を基準に、0.5~25Mpaの残留応力(residual stress)を有し、前記銅層は結晶面を有し、前記銅層の結晶面である(111)面、(200)面、(220)面及び(311)面の集合組織係数(Texture coefficient、TC)の和において(220)面の集合組織係数[TC(220)]が占める比率[TCR(220)]が5~30%である銅箔を提供する。
【0014】
前記残留応力は、前記(111)面、前記(200)面、前記(220)面及び前記(311)面の少なくとも一つに対して測定されたものである。
【0015】
前記残留応力は、前記(311)面に対して測定されたものである。
【0016】
130℃で30分間の熱処理後、2~20%の延伸率を有する。
【0017】
前記銅箔は、前記マット面方向の第1面及び前記光沢面方向の第2面を有し、前記第1面と前記第2面の表面粗度(Ra)の差が0.5μm以下である。
【0018】
前記銅箔は、4~20μmの厚さを有する。
【0019】
前記防錆膜は、クロム、シラン化合物及び窒素化合物の少なくとも1種を含む。
【0020】
本発明の他の一実施例は、銅箔と、前記銅箔の少なくとも一面に配置された活物質層とを含む二次電池用電極を提供する。
【0021】
本発明のさらに他の一実施例は、陽極(cathode)と、前記陽極と対向して配置された陰極(anode)と、前記陽極と前記陰極との間に配置され、リチウムイオンが移動することができる環境を提供する電解質(electrolyte)と、前記陽極と前記陰極を電気的に絶縁させる分離膜(separator)とを含み、前記陰極は、前記銅箔と、前記銅箔上に配置された活物質層とを含む二次電池を提供する。
【0022】
本発明のさらに他の一実施例は、銅イオンを含む電解液を製造する段階と、前記電解液内に互いに離隔して配置された陽極板及び回転陰極ドラムを30~70ASD(A/dm2)の電流密度で通電させて銅層を形成する段階とを含み、前記電解液は、70~100g/Lの銅イオンと、70~150g/Lの硫酸と、1~60ppmの塩素(Cl)と、
2g/L以下のヒ素(As)イオンと、有機添加剤とを含み、前記有機添加剤は、光沢剤(A成分)、減速剤(B成分)、レベリング剤(C成分)及び粗度調節剤(D成分)の少なくとも1種を含み、前記光沢剤(A成分)はスルホン酸又はその金属塩を含み、前記減速剤(B成分)は非イオン性水溶性高分子を含み、 前記レベリング剤(C成分)は窒素(N)及び硫黄(S)の少なくとも1種を含み、前記粗度調節剤(D成分)は窒素含有ヘテロ環4級アンモニウム塩又はその誘導体を含む銅箔の製造方法を提供する。
【0023】
前記有機添加剤は、1~150ppmの濃度を有する。
【0024】
前記光沢剤は、ビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィドジソジウム塩[bis-(3-Sulfopropyl)-disulfide disodium salt](SPS)、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、3-(N,N-ジメチルチオカルバモイル)-チオプロパンスルホネートソジウム塩、3-[(アミノ-イミノメチル)チオ]-1-プロパンスルホネートソジウム塩、o-エチルジチオカーボネート-S-(3-スルホプロピル)-エステルソジウム塩、3-(ベンゾチアゾリル-2-メルカプト)-プロピル-スルホン酸ソジウム塩及びエチレンジチオジプロピルスルホン酸ソジウム塩(ethylenedithiodipropylsulfonic acid sodium salt)の中で選択される少なくとも1種を含む。
【0025】
前記光沢剤は、1~50ppmの濃度を有する。
【0026】
前記減速剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンコポリマー、ポリグリセリン、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ヒドロキシエチレンセルロース、ポリビニルアルコール、ステアリン酸ポリグリコールエーテル及びステアリルアルコールポリグリコールエーテルの中で選択される少なくとも1種の非イオン性水溶性高分子を含む。
【0027】
前記非イオン性水溶性高分子は、500~25,000の数平均分子量を有する。
【0028】
前記減速剤は、5~50ppmの濃度を有する。
【0029】
前記レベリング剤は、チオウレア(TU)、ジエチルチオウレア、エチレンチオウレア、アセチレンチオウレア、ジプロピルチオウレア、ジブチルチオウレア、N-トリフルオロアセチルチオウレア(N-trifluoroacetylthiourea)、N-エチルチオウレア(N-ethylthiourea)、N-シアノアセチルチオウレア(N-cyanoacetylthiourea)、N-アリルチオウレア(N-allylthiourea)、o-トリルチオウレア(o-tolylthiourea)、N,N’-ブチレンチオウレア(N,N’-butylene thiourea)、チアゾリジンチオール(thiazolidinethiol)、4-チアゾリンチオール(4-thiazolinethiol)、4-メチル-2-ピミリジンチオール(4-methyl-2-pyrimidinethiol)、2-チオウラシル(2-thiouracil)、3-(ベンゾトリアゾール-2-メルカプト)-プロスルホン酸)、2-メルカプトピリジン、3(5-メルカプト1H-テトラゾール)ベンゼンスルホネート、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジメチルピリジン、2,2’-ビピリジン、4,4’-ビピリジン、ピミリジン、ピリダジン、ピミリジン、ピリノリン、オキサゾール、チアゾール、1-メチルイミダゾール、1-ベンジルイミダゾール、1-メチル-2メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-エチル-4-メチルイミダゾール、N-メチルピロール、N-エチルピロール、N-ブチルピロール、N-メチルピロリン、N-エチルピロリン、N-ブチルピロリン、ピミリジン、プリン、キノリン、イソキノリン、N-メチルカルバゾール、N-エチルカルバゾール及びN-ブチルカルバゾールの中で選択される少なくとも1種を含む。
【0030】
前記レベリング剤は、1~20ppmの濃度を有する。
【0031】
前記粗度調節剤は、下記化学式1~5で表現される化合物の少なくとも1種を含む。
【化1】
【0032】
化学式1~5で、j、k、l、m及びn1~n5はそれぞれ繰り返し単位を示し、1以上の整数であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0033】
前記化学式1~5で表現される化合物は、それぞれ500~50,000の数平均分子量を有する。
【0034】
前記粗度調節剤は、1~30ppmの濃度を有する。
【0035】
前記電解液は、200ppm以下の全有機炭素(TOC)濃度を有する。
【0036】
前記銅層を形成する段階は、活性炭を用いて前記電解液を濾過する段階と、珪藻土を用いて前記電解液を濾過する段階と、前記電解液をオゾン(O3)で処理する段階との少なくとも一つを含む。
【0037】
前記電解液を製造する段階は、銅ワイヤを熱処理する段階と、前記熱処理された銅ワイヤを酸洗する段階と、前記酸洗された銅ワイヤを水洗する段階と、前記水洗された銅ワイヤを電解液用硫酸に投入する段階と、を含む。
【0038】
前記銅層に防錆膜を形成する段階をさらに含む。
【0039】
前記のような本発明についての一般的敍述は本発明を例示するか説明するためのものであるだけで、本発明の権利範囲を制限しない。
【発明の効果】
【0040】
本発明の一実施例によれば、銅箔を構成する銅層の結晶配向性が制御され、銅箔内部の残留応力が減少して銅箔のカール(Curl)が減少する。これにより、銅箔の製造過程でカール、しわ又は引裂の発生が防止される。また、このような銅箔が使われる場合、二次電池用電極又は二次電池の製造過程で銅箔のカール、しわ又は引裂が防止される。
【0041】
添付図面は本発明の理解を助け、本明細書の一部を構成するためのものであり、本発明の実施例を例示し、発明の詳細な説明とともに本発明の原理を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の一実施例による銅箔の概略断面図である。
【
図2b】銅箔内部の残留応力に対するXRDグラフの例示である。
【
図3】本発明の他の一実施例による銅箔の概略断面図である。
【
図4】本発明のさらに他の一実施例による二次電池用電極の概略断面図である。
【
図5】本発明のさらに他の一実施例による二次電池用電極の概略断面図である。
【
図6】本発明のさらに他の一実施例による二次電池の概略断面図である。
【
図7】
図3に示した銅箔の製造工程の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施例を詳細に説明する。
【0044】
本発明の技術的思想及び範囲を逸脱しない範囲内で本発明の多様な変更及び変形が可能である点は当業者に明らかであろう。よって、本発明は請求範囲に記載した発明及びその均等物の範囲内の変更及び変形の全部を含む。
【0045】
本発明の実施例を説明するために図面に開示した形状、寸法、比率、角度、個数などは例示的なものであるので、本発明が図面に示した事項に限定されるものではない。明細書全般にわたって同じ構成要素は同じ参照符号で指称する。
【0046】
本明細書で‘含む’、‘有する’、‘なる’などが使われる場合、‘~のみ’という表現が使われない限り、他の部分が付け加わることができる。構成要素が単数で表現された場合、特に明示的な記載事項がない限り、複数を含む。また、構成要素の解釈において、別途の明示的記載がなくても誤差範囲を含むものと解釈される。
【0047】
位置関係についての説明の場合、例えば、‘~上に’、‘~の上部に’、‘~の下部に’、‘~のそばに’などのように二つの部分の位置関係が説明される場合、‘すぐ’又は‘直接’という表現が使わない限り、二つの部分の間に一つ以上の他の部分が位置することもある。
【0048】
時間関係についての説明の場合、例えば、‘~の後に’、‘~に続き’、‘~の次に’、‘~の前に’などのように時間的先後関係が説明される場合、‘すぐ’又は‘直接’という表現を使わない限り、連続的ではない場合も含むことがある。
【0049】
多様な構成要素を敍述するために、‘第1’、‘第2’などの表現を使うが、これらの構成要素はこのような用語に制限されない。このような用語はただ一構成要素を他の構成要素と区別するために使用するものである。よって、以下で言及する第1構成要素は本発明の技術的思想内で第2構成要素であることもある。
【0050】
“少なくとも一つ”の用語は一つ以上の関連項目から提示可能な全ての組合せを含むものと理解されなければならない。
【0051】
本発明の多くの実施例のそれぞれの特徴は部分的に又は全体的に互いに結合又は組合可能であり、技術的に多様な連動及び駆動が可能であり、各実施例が互いに対して独立的に実施されることもでき、連関関係で一緒に実施されることもできる。
【0052】
図1は本発明の一実施例による銅箔101の概略断面図である。
【0053】
本発明の一実施例による銅箔101は銅層110を含む。銅層110はマット面(matte surface)MS及びその反対側の光沢面(shiny surface)SSを有する。
【0054】
銅層110は、例えば、電気メッキによって回転陰極ドラム上に形成されることができる(
図7参照)。ここで、光沢面SSは電気メッキ過程で回転陰極ドラムと接触した面を指称し、マット面MSは光沢面SSの反対側面を指称する。
【0055】
一般に、光沢面SSはマット面MSに比べて低い表面粗度を有する。しかし、本発明の一実施例がこれに限定されるものではなく、光沢面SSの表面粗度がマット面MSの表面粗度Rzと同じかそれより高いこともできる。例えば、銅層110の製造に使われる回転陰極ドラム12(
図7参照)の研磨程度によって、光沢面SSの表面粗度はマット面MSの表面粗度Rzより低くても高くても良い。回転陰極ドラム12の表面は#800~#3000の粒度(Grit)を有する研磨ブラシによって研磨されることができる。
【0056】
図1を参照すると、銅箔101は、銅層110上に配置された防錆膜211を含む。防錆膜211は省略されることもできる。
【0057】
防錆膜211は銅層110のマット面MS及び光沢面SSの少なくとも一方に配置されることができる。
図1を参照すると、防錆膜211がマット面MSに配置される。しかし、本発明の一実施例がこれに限定されるものではなく、防錆膜211が光沢面SSにのみ配置されることもでき、マット面MSと光沢面SSの両面に配置されることもできる。
【0058】
防錆膜211は銅層110を保護し、保存又は流通の過程で銅層110が酸化するか変質することを防止することができる。よって、防錆膜211を保護層とも言う。
【0059】
本発明の一実施例によれば、防錆膜211は、クロム(Cr)、シラン化合物及び窒素化合物の少なくとも1種を含むことができる。
【0060】
例えば、クロム(Cr)を含む防錆液、すなわちクロム酸化合物を含む防錆液によって防錆膜211が作られることができる。
【0061】
本発明の一実施例によれば、銅箔101は、銅層110を基準に、マット面MS方向の表面である第1面S1、及び光沢面SS方向の表面である第2面S2を有する。
図1を参照すると、銅箔101の第1面S1は防錆膜211の表面であり、第2面S2は光沢面SSである。本発明の一実施例によれば、防錆膜211は省略されることもできる。防錆膜211が省略される場合、銅層110のマット面MSが銅箔101の第1面S1となる。
【0062】
本発明の一実施例によれば、銅層110は結晶面を有し、銅層110の結晶面である(111)面、(200)面、(220)面及び(311)面の集合組織係数(Texture coefficient、TC)の和において(220)面の集合組織係数[TC(220)]が占める比率[TCR(220)]が5~30%である。
【0063】
より具体的に、銅層110は複数の結晶面を有し、結晶面はミラー指数(Miller Index)で表現されることができる。具体的に、銅層110の結晶面は(hkl)面で表示されることができる。このような結晶面はそれぞれ集合組織係数(texture coefficient、TC)を有し、結晶面の集合組織係数(TC)はX線回折(XRD)を用いて測定又は計算されることができる。
【0064】
以下、
図2aを参照して、銅箔101を構成する銅層110の結晶面の集合
組織係数(TC)を測定及び算出する方法を説明する。
【0065】
図2aは銅箔のXRDグラフの例示である。より具体的に、
図2aは銅箔101を構成する銅層110のXRDグラフである。
図2aのピークはそれぞれ結晶面に対応する。
【0066】
集合
組織係数(TC)の測定のために、まず、30°~95°の回折角(2θ)の範囲でX線回折法(XRD)によって、n個の結晶面に対応するピークを有するXRDグラフを求める[Target:Copper K alpha 1、2θ interval:0.01°、2θ scan speed:3°/min]。
図2aを参照すると、銅層110で、(111)面、(200)面、(220)面及び(311)面に相当する4個のピークを含むXRDグラフが得られる。この場合、nは4である。
【0067】
ついで、このグラフから各結晶面(hkl)のXRD回折強度[I(hkl)]を求める。また、JCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction Standards)によって規定された標準銅粉末のn個の結晶面のそれぞれに対するXRD回折強度[I0(hkl)]を求める。ついで、n個の結晶面の“I(hkl)/I0(hkl)”に対する算術平均値を算出する。
【0068】
例えば、銅層110の(111)面の集合
組織係数[TC(111)]の測定のために、前記算出された算術平均値で(111)面のI(111)/I0(111)を割ることにより、(111)面の集合
組織係数[TC(111)]を算出する。すなわち、(111)面の集合
組織係数[TC(111)]は次の式1によって算出される。
【数1】
【0069】
同様に、(200)面の集合
組織係数[TC(200)]は次の式2によって算出される。
【数2】
【0070】
(220)面の集合
組織係数[TC(220)]は次の式3によって算出される。
【数3】
【0071】
また、(311)面の集合
組織係数[TC(311)]は次の式4によって算出される。
【数4】
【0072】
本発明の一実施例によれば、銅層110の結晶面である(111)面、(200)面、(220)面及び(311)面の集合
組織係数(TC)の和において(220)面の集合
組織係数[TC(220)]が占める比率を“TCR(220)”といい、TCR(220)は次式5によって算出されることができる。
【数5】
【0073】
(111)面、(200)面、(220)面及び(311)面の集合組織係数(TC)の和に対する(220)面の集合組織係数[TC(220)]の比率[TCR(220)]が5%未満であれば、銅層110で(111)面及び(200)面の成長が相対的に高くなって(111)面及び(200)面が優先に配向され、よって銅層110の結晶組織が余りにも微細になり、不純物の混入も増加する。その結果、銅箔101の残留応力が増加して銅箔101でカール(Curl)の発生が増加することができる。
【0074】
(111)面、(200)面、(220)面及び(311)面の集合組織係数(TC)の和に対する(220)面の集合組織係数[TC(220)]の比率[TCR(220)]が30%を超えれば、銅層110で(111)面及び(200)面の成長が相対的に小さくなって銅層110の微細結晶組織が減少し、よって銅箔101の強度が低くなる。
【0075】
したがって、本発明の一実施例によれば、銅層110の結晶構造で、(111)面、(200)面、(220)面及び(311)面の集合組織係数(Texture coefficient、TC)の和において(220)面の集合組織係数[TC(220)]が占める比率[TCR(220)]が5~30%の範囲に調整される。
【0076】
このように、本発明の一実施例によれば、銅層110の結晶配向性を制御することにより、銅箔101のカール(curl)を防止することができ、よって銅箔101でしわが発生することを防止することができる。
【0077】
本発明の一実施例によれば、銅箔101は、絶対値を基準に、0.5~25Mpaの残留応力(residual stress)を有する。
【0078】
残留応力は、物体に外力が加わっていないにもかかわらず、物体の内部に残存する応力である。残留応力は加工されるか熱処理された物体の内部に生成した応力であり、物体の処理履歴によって引張応力又は圧縮応力が物体に残存することができる。このような残留応力は物体を破壊させるか損傷させる原因となることもできる。
【0079】
絶対値を基準に、銅箔101が大きな残留応力を有する場合、銅箔のカール(Curl)がひどくなる。カール(Curl)現象は薄膜状の銅箔でひどく発生するから、薄膜状の銅箔製造時に特にカール(curl)現象を制御することが重要である。
【0080】
本発明の一実施例によれば、銅箔の残留応力を調整することによって銅箔のカール(Curl)を防止する。
【0081】
具体的に、残留応力が正数であれば引張応力が、負数であれば圧縮応力が銅箔101に存在することを意味する。銅箔101の製造過程で使用された有機添加剤の組成によって銅箔は引張応力又は圧縮応力形態の残留応力を有することができる。
【0082】
銅箔101の残留応力が0.5Mpa未満であれば、銅層110の形成のための電着過程で結晶断面の不均一によって銅箔101の表面が荒くなることができる。この場合、銅箔101を用いた二次電池用電極の製造過程で銅箔101の表面に活物質が均一にコーティングされないことがあり、二次電池の充放電容量維持率又は安定性が低下することができる。
【0083】
銅箔101を構成する銅層110を製造するためのメッキ工程で、水素の部分的な共析(incorporation)又は結晶粒の自己成長などによって銅箔101は絶対値を基準に0.5Mpa以上の残留応力を有することができる。銅箔101の残留応力の絶対値が25Mpaを超えれば、二次電池の製造工程で銅箔101でカール(curl)又はしわなどが発生することができ、作業性が低下し、二次電池の不良率が増加する。
【0084】
したがって、本発明の一実施例によれば、銅箔101の残留応力が絶対値を基準に0.5~25Mpaの範囲になるようにする。このために、銅層110の結晶配向性が調整されることができる。すなわち、本発明の一実施例によれば、銅層110のTCR(220)が5~30%になるようにし、銅箔101の残留応力が絶対値を基準に0.5~25Mpaの範囲になるようにする。
【0085】
銅箔101の残留応力は銅層110の結晶面の少なくとも一つで測定されることができる。すなわち、銅層110の結晶面の少なくとも一つで測定された残留応力を銅箔101の残留応力と言える。例えば、銅箔101の残留応力は、銅層110の結晶面のうち、(111)面、(200)面、(220)面及び(311)面の少なくとも一面で測定されることができる。すなわち、(111)面、(200)面、(220)面及び(311)面の少なくとも一面に対して測定された残留応力が銅箔101の残留応力になることができる。
【0086】
本発明の一実施例によれば、X線回折(X-ray Diffraction、XRD)残留応力測定器によって銅箔101の残留応力が測定されることができる。より具体的に、銅層110の結晶面に対するX線回折(XRD)を用いる残留応力測定器によって銅層110の各結晶面の残留応力が測定されることができる。
【0087】
例えば、X線回折(XRD)残留応力測定器であるBruker社のD8 DISCOVER(登録商標)によって銅箔101の残留応力が測定されることができる。ここで、X線回折分析の条件は次のように設定されることができる。
【0088】
Target:3kW x-ray tube with Cu target
【0089】
出力:40kV、40mA
【0090】
波長:1.5406Å
【0091】
測定範囲:30~100°
【0092】
走査軸:θ-2θ
【0093】
走査速度:2°/min
【0094】
図2bは銅箔内部の残留応力に対するXRDグラフの例示である。
図2bは特に銅層110の(311)面の残留応力測定のためのXRD結果を示している。
【0095】
残留応力測定の際、銅の結晶面のいずれか一つを選定し、2θ値は固定し、θ値のみ360°に変えながら測定する。銅層110の4個の主結晶面である(111)面、(200)面、(220)面及び(311)面に対してそれぞれ残留応力が測定されることができる。
【0096】
特に、XRDグラフにおいて、強度(intensity)は低いが解像度(resolution)が良い結晶面の残留応力を測定し、その測定値を銅箔101の残留応力と判定することができる。例えば、銅層110の(311)面は高角で優れた測定解像度(resolution)を有し、高い信頼度を有する。よって、銅層110の(311)面に対して測定された残留応力が銅箔101の残留応力となることができる。
【0097】
本発明の一実施例によれば、銅箔101は、130℃で30分間の熱処理後、2~20%の延伸率を有する。延伸率は、IPC-TM-650試験方法マニュアルに規定された方法に従って万能試験器(UTM)によって測定されることができる。本発明の一実施例によれば、Instron社の設備が使われることができる。ここで、延伸率測定用サンプルの幅は12.7mm、グリップ(grip)間の距離は50mm、測定速度は50mm/minである。
【0098】
130℃で30分間の熱処理後、銅箔101の延伸率が2%未満であれば、銅箔101が二次電池の集電体として使われるとき、高容量用活物質の大きな体積膨張に対応して銅箔101が充分に伸びずに破れる危険がある。一方、延伸率が20%を超えて余りにも大きければ、二次電池用電極製造工程で銅箔101が易しく伸びて電極の変形が発生することができる。
【0099】
また、銅箔101は25±15℃の常温で2~20%の延伸率を有することができる。
【0100】
本発明の一実施例によれば、銅箔101の第1面S1と第2面S2の表面粗度(Ra)の差は0.5μm以下である。
【0101】
本発明の一実施例による表面粗度(Ra)を算術平均粗度とも言う。表面粗度(Ra)は、表面粗度プロファイルにおいて、測定区間(基準長さ)の中心線の上側及び下側の全面積の和を求め、その和を測定区間の長さで割った値に決定される。表面粗度(Ra)はJIS B 0601-2001規格に従って、表面粗度測定器(M300、Mahr)によって測定されることができる。
【0102】
銅箔101の第1面S1と第2面S2の表面粗度(Ra)の差が0.5μmを超える場合、銅箔101が二次電池用電極の電流集電体として使われるとき、第1面S1と第2面S2の表面粗度(Ra)の差によって活物質が第1面S1及び第2面S2の両面に均等にコーティングされない。よって、二次電池の充放電の際、両面S1、S2の電気的及び物理的特性の差が発生することができ、これにより二次電池の容量維持率及び寿命が低下することができる。
【0103】
また、本発明の一実施例によれば、銅箔101の第1面S1と第2面S2はそれぞれ0.12μm以上かつ0.86μm以下の表面粗度(Ra)を有することができる。
【0104】
本発明の一実施例によれば、銅箔101は4μm~20μmの厚さを有する。銅箔101が二次電池の電極の集電体として使われるとき、銅箔101の厚さが薄いほど同じ空間内により多い集電体が収容されることができるので、二次電池の高容量化に有利である。しかし、銅箔101の厚さが4μm未満の場合、銅箔101を用いた二次電池用電極又は二次電池の製造過程で作業性が低下する。
【0105】
一方、銅箔101の厚さが20μmを超える場合、銅箔101を用いた二次電池用電極の厚さが大きくなり、このような大きな厚さによって二次電池の高容量の具現に難しさが発生することができる。
【0106】
図3は本発明の他の一実施例による銅箔102の概略断面図である。以下、重複を避けるために、既に説明した構成要素についての説明は省略する。
【0107】
図3を参照すると、本発明の他の一実施例による銅箔102は、銅層110及び銅層110のマット面MSと光沢面SSにそれぞれ配置された二つの防錆膜211、212を含む。
図1に示した銅箔101に比べ、
図3に示した銅箔102は銅層110の光沢面SSに配置された防錆膜212をさらに含む。
【0108】
説明の便宜のために、二つの防錆膜211、212のうち、銅層110のマット面MSに配置された防錆膜211を第1保護層といい、光沢面SSに配置された防錆膜212を第2保護層とも言う。
【0109】
また、
図3に示した銅箔102は、銅層110を基準に、マット面MS方向の表面である第1面S1と光沢面SS方向の表面である第2面S2とを有する。ここで、銅箔102の第1面S1はマット面MSに配置された防錆膜211の表面であり、第2面S2は光沢面SSに配置された防錆膜212の表面である。
【0110】
本発明の他の一実施例によれば、二つの防錆膜211、212はそれぞれクロム(Cr)、シラン化合物及び窒素化合物の少なくとも1種を含むことができる。
【0111】
図3に示した銅箔102の銅層110は結晶構造を有し、結晶構造の(111)面、(200)面、(220)面及び(311)面の集合
組織係数(TC)の和において(220)面の集合
組織係数[TC(220)]が占める比率[TCR(220)]は5~30%である。
【0112】
銅箔102は、絶対値を基準に、0.5~25Mpaの残留応力(residual stress)を有する。残留応力は、銅層110の結晶面のうち、(111)面、(200)面、(220)面及び(311)面の少なくとも一つに対して測定されることができる。より具体的に、残留応力は(311)面に対して測定されることができる。
【0113】
130℃で30分間の熱処理後、熱処理後、銅箔102は2~20%の延伸率を有し、銅箔102の第1面S1と第2面S2の表面粗度(Ra)の差が0.5μm以下である。
【0114】
【0115】
図4は本発明のさらに他の一実施例による二次電池用電極103の概略断面図である。
図4に示した二次電池用電極103は、例えば、
図6に示した二次電池105に適用可能である。
【0116】
図4を参照すると、本発明のさらに他の一実施例による二次電池用電極103は、銅箔101及び銅箔101上に配置された活物質層310を含む。ここで、銅箔101は銅層110及び銅層110上に配置された防錆膜211を含み、電流集電体として使われる。
【0117】
具体的に、銅箔101は第1面S1と第2面S2を有し、活物質層310は銅箔101の第1面S1と第2面S2の少なくとも一つに配置される。活物質層310は防錆膜211上に配置されることができる。
【0118】
図4に電流集電体として
図1の銅箔101が用いられた例が示されている。しかし、本発明のさらに他の一実施例がこれに限定されるものではなく、
図3に示した銅箔102が二次電池用電極103の集電体として使われることもできる。
【0119】
また、銅箔101の第1面S1にのみ活物質層310が配置された構造が
図4に示されているが、本発明のさらに他の一実施例がこれに限定されるものではなく、銅箔101の第1面S1と第2面S2の両方に活物質層310がそれぞれ配置されることができる。また、活物質層310は銅箔101の第2面S2にのみ配置されることもできる。
【0120】
図4に示した活物質層310は電極活物質からなり、特に陰極活物質からなることができる。すなわち、
図4に示した二次電池用電極103は陰極として使われることができる。
【0121】
活物質層310は、炭素、金属、金属の酸化物及び金属と炭素の複合体の少なくとも1種を含むことができる。金属として、Ge、Sn、Li、Zn、Mg、Cd、Ce、Ni及びFeの少なくとも1種が使われることができる。また、二次電池の充放電容量を増加させるために、活物質層310はシリコン(Si)を含むことができる。
【0122】
二次電池の充放電が繰り返されるにつれて活物質層310の収縮及び膨張が交互に発生し、これは活物質層310と銅箔101の分離を引き起こして二次電池の充放電効率を低下させる。特に、シリコン(Si)を含む活物質310は膨張と収縮の程度が大きい。
【0123】
本発明のさらに他の一実施例によれば、集電体として使用された銅箔101が活物質層310の収縮及び膨張に対応して収縮及び膨張することができるから、活物質層310が収縮及び膨張しても銅箔101が変形されるか破れることがない。したがって、銅箔101と活物質層310との間で分離が発生しない。よって、このような二次電池用電極103を含む二次電池は優れた充放電効率及び優れた容量維持率を有する。
【0124】
図5は本発明のさらに他の一実施例による二次電池用電極104の概略断面図である。
【0125】
本発明のさらに他の一実施例による二次電池用電極104は、銅箔102及び銅箔102上に配置された活物質層310、320を含む。銅箔102は銅層110及び銅層110の両面に配置された防錆膜211、212を含む。
【0126】
具体的に、
図5に示した二次電池用電極104は、銅箔102の第1面S1と第2面S2にそれぞれ配置された二つの活物質層310、320を含む。ここで、銅箔102の第1面S1上に配置された活物質層310を第1活物質層といい、銅箔102の第2面S2に配置された活物質層320を第2活物質層とも言う。
【0127】
二つの活物質層310、320は互いに同一の材料から同じ方法で作られることもでき、相異なる材料又は相異なる方法で作られることもできる。
【0128】
図6は本発明のさらに他の一実施例による二次電池105の概略断面図である。
図6に示した二次電池105は、例えばリチウム二次電池である。
【0129】
図6を参照すると、二次電池105は、陽極(cathode)370、陽極370と対向して配置された陰極(anode)340、陽極370と陰極340との間に配置され、イオンが移動することができる環境を提供する電解質(electrolyte)350、及び陽極370と陰極340を電気的に絶縁させる分離膜(separator)360を含む。ここで、陽極370と陰極340との間で移動するイオンは、例えばリチウムイオンである。分離膜360は一つの電極で発生した電荷が二次電池105の内部を通して他の電極に移動して無駄に消耗されることを防止するために陽極370と陰極340を分離する。
図6を参照すると、分離膜360は電解質350内に配置される。
【0130】
陽極370は陽極集電体371及び陽極活物質層372を含む。陽極集電体371としてアルミニウムホイル(foil)が使われることができる。
【0131】
陰極340は、陰極集電体341及び活物質層342を含む。陰極340の活物質層342は陰極活物質を含む。
【0132】
陰極集電体341として、
図1又は
図3に示した銅箔101、102が使われることができる。また、
図4又は
図5に示した二次電池用電極103、104が
図6に示した二次電池105の陰極340として使われることができる。
【0133】
以下、
図7を参照して、本発明の他の実施例による銅箔102の製造方法を具体的に説明する。
【0134】
図7は
図3に示した銅箔102の製造方法の概略図である。
【0135】
銅箔102を製造するために、まず銅イオンを含む電解液11が製造される。電解液11は電解槽10に収容される。
【0136】
ついで、電解液11内に互いに離隔して配置された陽極板13及び回転陰極ドラム12が30~70ASD(A/dm2)の電流密度で通電して銅層110が形成される。銅層110は電気メッキの原理によって形成される。陽極板13と回転陰極ドラム12間の間隔は8~13mmの範囲に調整されることができる。
【0137】
陽極板13と回転陰極ドラム12との間に印加される電流密度が30ASD未満の場合、銅層110の結晶粒生成が増加し、70ASDを超える場合、結晶粒の微細化が加速化する。より具体的に、電流密度は40ASD以上に調整されることができる。
【0138】
銅層110の光沢面SSの表面特性は回転陰極ドラム12の表面のバフ又は研磨程度によって変わることができる。光沢面SS方向の表面特性の調整のために、例えば#800~#3000の粒度(Grit)を有する研磨ブラシによって回転陰極ドラム12の表面が研磨されることができる。
【0139】
銅層110の形成過程で、電解液11は40~70℃温度に維持される。より具体的に、電解液11の温度は50℃以上に維持されることができる。ここで、電解液11の組成が調整されることにより、銅層110の物理的、化学的及び電気的特性が制御されることができる。
【0140】
本発明の一実施例によれば、電解液11は、70~100g/Lの銅イオン、70~150g/Lの硫酸、1~60ppmの塩素(Cl)、2g/L以下のヒ素(As)イオン及び有機添加剤を含む。
【0141】
銅の電着によって銅層110が円滑に形成されるようにするために、電解液11内の銅イオン濃度と硫酸の濃度はそれぞれ70~100g/Lの及び70~150g/Lに調整される。
【0142】
本発明の一実施例において、塩素(Cl)は、塩素イオン(Cl-)及び分子内に存在する塩素原子の全部を含む。塩素(Cl)は、例えば銅層110が形成される過程で電解液11に流入した銀(Ag)イオンの除去に使われることができる。具体的に、塩素(Cl)は銀(Ag)イオンを塩化銀(AgCl)の形態に沈澱させることができる。このような塩化銀(AgCl)は濾過によって除去されることができる。
【0143】
塩素(Cl)の濃度が1ppm未満の場合、銀(Ag)イオンが円滑に除去されない。一方、塩素(Cl)の濃度が60ppmを超える場合、過量の塩素(Cl)による不必要な反応が発生することができる。よって、電解液11内の塩素(Cl)の濃度は1~60ppmの範囲に管理される。より具体的に、塩素(Cl)の濃度は25ppm以下に管理されることができ、例えば5~25ppmの範囲に管理されることができる。
【0144】
電解液11内のヒ素(As)イオンの濃度は2g/L以下に管理される。電解液11内のヒ素(As)は、例えば3価イオンの状態(As3+)で存在することができる。しかし、本発明の一実施例がこれに限定されるものではない。
【0145】
ヒ素(As)イオンは一定濃度区間では銅(Cu)の還元反応を促進する加速剤の役割をする。ヒ素(As)イオンの濃度が2g/L以下の場合、銅層110形成過程から結晶面基準で(220)面がまず成長される。
【0146】
一方、ヒ素(As)イオンの濃度が2g/Lを超える場合、銅イオンであるCu2+又はCu1+が銅(Cu)に還元されるときに不溶性化合物が形成されて不純物が銅層110に一緒に電着(共析)されることができる。また、ヒ素(As)イオンの濃度が高い場合、銅層110の形成過程で、結晶面を基準に、(311)面、(111)面及び(100)面が優先に成長し、(220)面の成長が抑制されることができる。
【0147】
したがって、銅層110の結晶構造で、(111)面、(200)面、(220)面及び(311)面の集合組織係数(TC)において(220)面の集合組織係数[TC(220)]が占める比率[TCR(220)]が5~30%になるようにするために、電解液11内のヒ素(As)イオン濃度は2g/L以下に調整される。
【0148】
一方、本発明の一実施例によれば、銅層110の結晶配向性のために、電解液11内でヒ素(As)イオンは0.1g/L以上の濃度を有することができる。すなわち、電解液11内でヒ素(As)イオンは0.1~2g/Lの濃度を有することができる。
【0149】
電解液11に含まれた有機添加剤は、光沢剤(A成分)、減速剤(B成分)、レベリング剤(C成分)及び粗度調節剤(D成分)の少なくとも1種を含む。電解液11内で有機添加剤は1~150ppmの濃度を有する。
【0150】
有機添加剤は、光沢剤(A成分)、減速剤(B成分)、レベリング剤(C成分)及び粗度調節剤(D成分)の2種以上を含むことができ、4種成分の全部を含むこともできる。このような場合であっても、有機添加剤の濃度は150ppm以下である。有機添加剤が光沢剤(A成分)、減速剤(B成分)、レベリング剤(C成分)及び粗度調節剤(D成分)の全部を含む場合、有機添加剤は10~150ppmの濃度を有することができる。
【0151】
光沢剤(A成分)はスルホン酸又はその金属塩を含む。光沢剤(A成分)は電解液11内で1~50ppmの濃度を有することができる。
【0152】
光沢剤(A成分)は、電解液11の電荷量を増加させて銅の電着速度を増加させ、銅箔のカール(Curl)特性を改善し、銅箔102の光沢を増進させることができる。光沢剤(A成分)の濃度が1ppm未満であれば、銅箔102の光沢が低下し、50ppmを超えれば、銅箔102の粗度が上昇して強度が低下することができる。
【0153】
より具体的に、光沢剤(A成分)は電解液11内で5~30ppmの濃度を有することができる。
【0154】
光沢剤は、例えばビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィドジソジウム塩[bis-(3-Sulfopropyl)-disulfide disodium salt](SPS)、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、3-(N,N-ジメチルチオカルバモイル)-チオプロパンスルホネートソジウム塩、3-[(アミノ-イミノメチル)チオ]-1-プロパンスルホネートソジウム塩、o-エチルジチオカーボネート-S-(3-スルホプロピル)-エステルソジウム塩、3-(ベンゾチアゾリル-2-メルカプト)-プロピル-スルホン酸ソジウム塩及びエチレンジチオジプロピルスルホン酸ソジウム塩(ethylenedithiodipropylsulfonic acid sodium salt)から選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0155】
減速剤(B成分)は非イオン性水溶性高分子を含む。減速剤(B成分)は電解液11内で5~50ppmの濃度を有することができる。
【0156】
減速剤(B成分)は銅の電着速度を減少させて銅箔102の急激な粗度上昇及び強度低下を防止する。このような減速剤(B成分)は抑制剤又はサプレッサー(suppressor)とも呼ばれる。
【0157】
減速剤(B成分)の濃度が5ppm未満であれば、銅箔102の粗度が急激に上昇し、銅箔102の強度が低下する問題が発生することができる。一方、減速剤(B成分)の濃度が50ppmを超えても、銅箔102の外観、光沢、粗度、強度、延伸率などの物性変化がほとんどない。よって、減速剤(B成分)の濃度を不必要に高めて製造コストを上昇させて原料を浪費する必要がなく、減速剤(B成分)の濃度を5~50ppmの範囲に調整することができる。
【0158】
減速剤(B成分)は、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンコポリマー、ポリグリセリン、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ヒドロキシエチレンセルロース、ポリビニルアルコール、ステアリン酸ポリグリコールエーテル及びステアリルアルコールポリグリコールエーテルの中で選択される少なくとも1種の非イオン性水溶性高分子を含むことができる。しかし、減速剤の種類がこれに限定されるものではなく、高強度銅箔102の製造に使用可能な他の非イオン性水溶性高分子が減速剤として使われることができる。
【0159】
減速剤(B成分)として使われる非イオン性水溶性高分子は500~25,000の数平均分子量を有することができる。減速剤(B成分)の数平均分子量が500未満であれば、減速剤(B成分)による銅箔102の粗度上昇防止及び強度低下防止の効果が小さく、25,000を超えれば、減速剤(B成分)の大きな分子量によって銅層110が容易に形成されないこともある。
【0160】
より具体的に、減速剤(B成分)として使われる非イオン性水溶性高分子は1,000~10,000の分子量を有することができる
【0161】
レベリング剤(C成分)は、窒素(N)及び硫黄(S)の少なくとも1種を含む。すなわち、レベリング剤(C成分)は一つの分子内に一つ以上の窒素原子(N)、又は一つ以上の硫黄原子(S)を含むことができ、一つ以上の窒素原子(N)と一つ以上の硫黄原子(S)を含むこともできる。例えば、レベリング剤(C成分)は窒素(N)及び硫黄(S)の少なくとも1種を含む有機化合物である。
【0162】
レベリング剤(C成分)は、銅層110に余りにも高いピーク又は余りにも大きい突起が生成されることを防止して、銅層110が巨視的に平坦になるようにする。レベリング剤(C成分)は電解液11内で1~20ppmの濃度を有することができる。
【0163】
レベリング剤(C成分)の濃度が1ppm未満の場合、銅箔102の強度が低下して、高強度銅箔102の製造に難しさが発生する。一方、レベリング剤(C成分)の濃度が20ppmを超える場合、銅箔102の表面粗度が過度に上昇して強度が低下することができ、銅箔102の表面にピンホールやカール(Curl)が発生するために、銅箔102の製造後にワインダーWRから分離するのに難しさが発生することができる。
【0164】
レベリング剤(C成分)は、例えばチオウレア(TU)、ジエチルチオウレア、エチレンチオウレア、アセチレンチオウレア、ジプロピルチオウレア、ジブチルチオウレア、N-トリフルオロアセチルチオウレア(N-trifluoroacetylthiourea)、N-エチルチオウレア(N-ethylthiourea)、N-シアノアセチルチオウレア(N-cyanoacetylthiourea)、N-アリルチオウレア(N-allylthiourea)、o-トリルチオウレア(o-tolylthiourea)、N,N’-ブチレンチオウレア(N,N’-butylene thiourea)、チアゾリジンチオール(thiazolidinethiol)、4-チアゾリンチオール(4-thiazolinethiol)、4-メチル-2-ピミリジンチオール(4-methyl-2-pyrimidinethiol)及び2-チオウラシル(2-thiouracil)、3-(ベンゾトリアゾール-2-メルカプト)-プロスルホン酸)、2-メルカプトピリジン、3(5-メルカプト1H-テトラゾール)ベンゼンスルホネート、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジメチルピリジン、2,2’-ビピリジン、4,4’-ビピリジン、ピミリジン、ピリダジン、ピミリジン、ピリノリン、オキサゾール、チアゾール、1-メチルイミダゾール、1-ベンジルイミダゾール、1-メチル-2メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-エチル-4-メチルイミダゾール、N-メチルピロール、N-エチルピロール、N-ブチルピロール、N-メチルピロリン、N-エチルピロリン、N-ブチルピロリン、ピミリジン、プリン、キノリン、イソキノリン、N-メチルカルバゾール、N-エチルカルバゾール及びN-ブチルカルバゾールの中で選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0165】
粗度調節剤(D成分)は、窒素含有ヘテロ環4級アンモニウム塩又はその誘導体を含む。
【0166】
粗度調節剤(D成分)は、銅箔102の光沢度及び平坦性を向上させる。粗度調節剤(D成分)は電解液11内で1~30ppmの濃度を有することができる。
【0167】
粗度調節剤(D成分)の濃度が1ppm未満の場合、銅箔102の光沢度及び平坦性の向上効果が現れないこともある。一方、粗度調節剤(D成分)の濃度が30ppmを超える場合、銅箔102の第1面S1、すなわちマット面MS方向の表面の光沢が不均一になり、表面粗度が急激に上昇する問題があり、所望の粗度範囲を確保するのに困難がある。より具体的に、粗度調節剤(D成分)は電解液11内で3~20ppmの濃度を有することができる。
【0168】
粗度調節剤(D成分)は下記化学式1~5で表現される化合物の少なくとも一つを含むことができる。
【化2】
【0169】
化学式1~5で、j、k、l、m及びn1~n5はそれぞれ繰り返し単位を示し、1以上の整数であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0170】
本発明の一実施例によれば、化学式1~5で表現される化合物はそれぞれ500~50,000の数平均分子量を有する。
【0171】
粗度調節剤として使われる化学式1~5で表現される化合物の数平均分子量が500未満の場合、単量体の比率が高くて銅箔102の表面粗度が高くなる。粗度調節剤の含量が少ない場合、銅層110のマット面MSの表面粗度が高くなって光沢度及び平坦性が低下することができる。
【0172】
化学式1~5で表現される化合物の数平均分子量が50,000を超えれば、銅箔102の表面粗度偏差が大きくなる。この場合、他の添加剤の濃度を調整しても銅箔102のマット面方向の表面粗度偏差が大きくなることを抑制しにくい。
【0173】
化学式1~5で表現される化合物は、例えばDDAC(Diallyl dimethyl ammoniumchloride)を用いた重合又は共重合によって作られることができる。
【0174】
化学式1で表現される化合物として、PAS-H-1L(Mw 8500、Nittobo社製)などがある。
【0175】
化学式2で表現される化合物として、例えばPAS-2451(Mw 30,000、Nittobo社製)、PAS-2401(Mw 2,000、Nittobo社製)などがある。
【0176】
化学式3で表現される化合物として、例えばPAS-2351(Mw 25,000、Nittobo社製)などがある。
【0177】
化学式4で表現される化合物として、例えばPAS-A-1(Mw 5,000、Nittobo社製)、PAS-A-5(Mw 4,000、Nittobo社製)などがある。
【0178】
化学式5で表現される化合物として、例えばPAS-J-81L(Mw 10,000、Nittobo社製)、PAS-J-41(Mw 10,000、Nittobo社製)などがある。
【0179】
電解液11内のTOC濃度が高いほど銅層110に流入する炭素(C)元素の量が増加し、それにより熱処理時に銅層110から離脱する全体元素の量が増加し、熱処理後に銅箔102の強度が低下する原因となる。
【0180】
本発明の一実施例によれば、電解液11内に添加される有機添加剤、特に窒素(N)又は硫黄(S)を含む有機添加剤の濃度を調整して、銅層110内に一定量の炭素(C)、水素(H)、窒素(N)又は硫黄(S)が共析されるようにすることができる。このような共析によって銅層110の結晶配向性が制御されることができる。
【0181】
銅層110を形成する段階は、活性炭を用いて電解液11を濾過する段階、珪藻土を用いて電解液11を濾過する段階、及び電解液11をオゾン(O3)で処理する段階の少なくとも一つを含むことができる。
【0182】
具体的に、電解液11の濾過のために、電解液11は35~45m3/hourの流量で循環することができる。すなわち、銅層110の形成のための電気メッキが行われるうち電解液11に存在する固形不純物を除去するために、35~45m3/hourの流量で濾過が遂行されることができる。このとき、活性炭又は珪藻土が使われることができる。
【0183】
電解液11の清浄度を維持するために、電解液11がオゾン(O3)で処理されることもできる。
【0184】
また、電解液11の清浄度のために、電解液11の原料となる銅ワイヤ(Cu wire)が洗浄されることができる。
【0185】
本発明の一実施例によれば、電解液11を製造する段階は、銅ワイヤを熱処理する段階、熱処理された銅ワイヤを酸洗する段階、酸洗された銅ワイヤを水洗する段階、及び水洗された銅ワイヤを電解液用硫酸に投入する段階を含むことができる。
【0186】
より具体的に、電解液11の清浄度維持のために、高純度(99.9%以上)の銅ワイヤ(Cu wire)を750℃~850℃の電気炉で熱処理して、銅ワイヤについている各種の有機不純物を燃焼させた後、10%硫酸溶液で10~20分間熱処理された銅ワイヤを酸洗し、酸洗された銅ワイヤを蒸溜水で水洗する過程が順次行われることにより、電解液11製造用銅が製造されることができる。水洗された銅ワイヤを電解液用硫酸に投入して電解液11を製造することができる。
【0187】
本発明の一実施例によれば、銅箔102の特性を満たすために、電解液11内の全有機炭素(TOC)の濃度は200ppm以下に管理される。すなわち、電解液11は200ppm以下の全有機炭素(TOC)濃度を有することができる。
【0188】
このように製造された銅層110は洗浄槽20で洗浄されることができる。
【0189】
例えば、銅層110の表面上の不純物、例えば樹脂成分又は自然酸化膜(natural oxide)などを除去するための酸洗(acid cleaning)及び酸洗に使用された酸性溶液除去のための水洗(water cleaning)が順次遂行されることができる。洗浄工程は省略されることもできる。
【0190】
ついで、銅層110上に防錆膜211、212が形成される。
【0191】
図7を参照すると、防錆槽30に収容された防錆液31内に銅層110を浸漬して、銅層110上に防錆膜211、212を形成することができる。防錆液31はクロムを含むことができ、クロム(Cr)は防錆液31内でイオン状態で存在することができる。
【0192】
防錆液31は1~10g/Lのクロムを含むことができる。防錆膜211、212の形成のために、防錆液31の温度は20~40℃に維持されることができる。銅層110は防錆液31内に1~30秒程度浸漬されることができる。
【0193】
一方、防錆膜211、212はシラン処理によるシラン化合物を含むこともでき、窒素処理による窒素化合物を含むこともできる。
【0194】
このような防錆膜211、212の形成によって銅箔102が形成される。
【0195】
ついで、銅箔102が洗浄槽40で洗浄される。このような洗浄工程は省略されることができる。
【0196】
ついで、乾燥工程が遂行された後、銅箔102がワインダーWRに巻き付けられる。
【0197】
以下、製造例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明する。ただ、下記の製造例及び比較例は本発明の理解を助けるためのものであるだけで、本発明の権利範囲が製造例又は比較例によって限定されない。
製造例1-4及び比較例1-4
【0198】
電解槽10、電解槽10に配置された回転陰極ドラム12及び回転陰極ドラム12から離隔して配置された陽極板13を含む製箔機で銅箔を製造した。電解液11は硫酸銅溶液である。電解液11内の銅イオン濃度は87g/L、硫酸濃度は110g/L、電解液温度は55℃、電流密度は60ASDに設定された。
【0199】
また、電解液11に含まれたヒ素(As)イオン(As3+)の濃度、塩素(Cl)濃度及び有機添加剤の濃度は下記表1の通りである。
【0200】
有機添加剤のうち、光沢剤(A成分)としてビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィドジソジウム塩(SPS)が使われ、減速剤(B成分)としてポリエチレングリコール(PEG)が使われ、レベリング剤(C成分)としてエチレンチオウレア(ETU)及びN-エチルチオウレア(NETU)が使われ、粗度調節剤(D成分)としてトリアイルメチルエチルアンモニウムエチルスルフィドマレイン酸共重合体(PAS-2451(登録商標)、Nittobo社製、Mw 30,000)が使われた。
【0201】
回転陰極ドラム12と陽極板13との間に60ASDの電流密度で電流を印加して銅層110を製造した。ついで、銅層110を防錆液に約2秒間浸漬させることで、銅層110の表面にクロメート処理して防錆膜211、212を形成することにより銅箔102を製造した。防錆液としてクロム酸を主成分とする防錆液が使われ、クロム酸の濃度は5g/Lであった。
【0202】
その結果、製造例1-4及び比較例1-4の銅箔が製造された。
【表1】
【0203】
ETU:エチレンチオウレア
【0204】
NETU:(N-エチルチオウレア)
【0205】
PAS-2451:トリアイルメチルエチルアンモニウムエチルスルフィドマレイン酸共重合体(Nittobo社製、Mw 30,000)
【0206】
このように製造された製造例1-4及び比較例1-4の銅箔に対して、(i)残留応力、(ii)(220)面の集合組織係数[TC(220)]が占める比率[TCR(220)]、(iii)熱処理後の延伸率、(iv)銅箔の第1面と第2面の表面粗度(Ra)の差、及び(v)銅箔のカール(curl)を測定した。
【0207】
また、銅箔を用いて二次電池を製造し、二次電池に対して充放電を実施した後、(vi)二次電池を解体してしわの発生有無を観察した。
(i)残留応力測定
【0208】
X線回折(X-ray Diffraction、XRD)を用いて銅箔の残留応力を測定した。より具体的に、銅層110結晶面に対するX線回折(XRD)を用いて各結晶面の残留応力を測定した。
【0209】
常温で銅箔に対するX線回折分析条件は次のようである。
【0210】
測定機器(モデル名):Bruker D8 DISCOVER
【0211】
Target:3kW x-ray tube with Cu target
【0212】
出力:40kV、40mA
【0213】
波長:1.5406Å
【0214】
測定範囲:30~100°
【0215】
走査軸:θ-2θ
【0216】
走査速度:2°/min
【0217】
具体的に、銅箔を構成する銅層110結晶面の残留応力測定条件は次の表2の通りである。
【表2】
(ii)(220)面の集合組織係数[TC(220)]が占める比率[TCR(220)]の測定
【0218】
製造例1-4及び比較例1-4で製造された銅箔を構成する銅層110の結晶面である(111)面、(200)面、(220)面及び(311)面の集合組織係数(TC)の和において(220)面の集合組織係数[TC(220)]が占める比率[TCR(220)]を測定した。
【0219】
まず、30°~95°の回折角(2θ)の範囲でX線回折法(XRD)によって、n個の結晶面に対応するピークを有するXRDグラフを得た[Target:Copper K alpha 1、2θ interval:0.01°、2θ scan speed:3°/min]。
図2bを参照すると、銅層110の場合、(111)面、(200)面、(220)面、及び(311)面に相応する4個のピークを含むXRDグラフが得られることができる。ここで、nは4である。
【0220】
ついで、このグラフから各結晶面(hkl)のXRD回折強度[I(hkl)]を求めた。また、JCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction Standards)によって規定された標準銅粉末のn個の結晶面のそれぞれに対するXRD回折強度[I0(hkl)]を求めた。ついで、n個の結晶面の“I(hkl)/I0(hkl)”に対する算術平均値を算出し、その算術平均値で(111)面のI(111)/I0(111)を割って(111)面の集合
組織係数[TC(111)]を算出した。すなわち、(111)面の集合
組織係数[TC(111)]を次の式1によって算出した。
【数6】
【0221】
200)面の集合
組織係数[TC(200)]を次の式2によって算出した。
【数7】
【0222】
(220)面の集合
組織係数[TC(220)]を次の式3によって算出した。
【数8】
【0223】
(311)面の集合
組織係数[TC(311)]を次の式4によって算出した。
【数9】
【0224】
ついで、銅層110の結晶面である(111)面、(200)面、(220)面及び(311)面の集合
組織係数(TC)の和において(220)面の集合
組織係数[TC(220)]が占める比率[TCR(220)]を式5によって算出した。
【数10】
【0225】
製造例1-4及び比較例1-4で製造された銅箔を130℃で30分間熱処理した後、銅箔の延伸率を測定した。
【0226】
延伸率はIPC-TM-650試験方法マニュアルの規定によって万能試験器(UTM)によって測定した。具体的に、Instron社製の万能試験器を用いて延伸率を測定した。延伸測定用サンプルの幅は12.7mm、グリップ(grip)間の距離は50mm、測定速度は50mm/minであった。
(iv)銅箔の第1面と第2面の表面粗度(Ra)の差(ΔRa)
【0227】
JIS B 0601-2001規格に従って、表面粗度測定器(M300、Mahr)を用いて、製造例1-4及び比較例1-4で製造された銅箔の第1面S1と第2面S2の表面粗度(Ra)をそれぞれ測定した。測定結果を用いて、銅箔の第1面S1と第2面S2の表面粗度(Ra)の差(ΔRa)を計算した。
(v)銅箔のカール(curl)の測定
【0228】
製造例1-4及び比較例1-4で製造された銅箔を幅方向に30cmの幅に切断(30 cm ×30cm)してサンプルを準備した。サンプルのマット面MS方向の第1面S1が上に向かうように支持台に配置した後、支持台から突出した高さを測定した。サンプルの4ヶ所で測定した高さの平均値を計算して銅箔のカール(curl)値を算定した。
(vi)しわ及び引裂発生の観察
1)陰極製造
【0229】
商業的に利用可能な陰極活物質用シリコン/カーボン複合陰極材100重量部に2重量部のスチレンブタジエンゴム(SBR)及び2重量部のカルボキシメチルセルロース(CMC)を混合し、蒸溜水を溶剤として用いて陰極活物質用スラリーを調剤した。ドクターブレードを用いて10cmの幅を有する製造例1-4及び比較例1-4の銅箔上に40μmの厚さで陰極活物質用スラリーを塗布し、これを120℃で乾燥し、1ton/cm2の圧力を加えて二次電池用陰極を製造した。
2)電解液製造
【0230】
エチレンカーボネート(EC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を1:2の比率で混合した非水性有機溶媒に溶質であるLiPF6を1Mの濃度に溶解して基本電解液を製造した。99.5重量%の基本電解液と0.5重量%の無水コハク酸(Succinic anhydride)を混合して非水性電解液を製造した。
3)陽極製造
【0231】
Li1.1Mn1.85Al0.05O4のリチウムマンガン酸化物とo-LiMnO2の斜方晶系(orthorhombic)結晶構造のリチウムマンガン酸化物を90:10(重量比)の比で混合して陽極活物質を製造した。陽極活物質、カーボンブラック、及び結着剤であるPVDF[Poly(vinylidenefluoride)]を85:10:5(重量比)で混合し、これを有機溶媒であるNMPと混合してスラリーを製造した。このように製造されたスラリーを厚さ20μmのAl箔(foil)の両面に塗布してから乾燥して陽極を製造した。
4)試験用リチウム二次電池製造
【0232】
アルミニウムカンの内部に、アルミニウムカンから絶縁されるように陽極と陰極を配置し、その間に非水性電解液及び分離膜を配置してコイン状のリチウム二次電池を製造した。使用された分離膜はポリプロピレン(Celgard 2325;厚さ25μm、平均細孔径(average pore size)φ28nm、気孔率(porosity)40%)であった。
5)二次電池の充放電
【0233】
このように製造されたリチウム二次電池を用い、4.3Vの充電電圧及び3.4Vの放電電圧で電池を駆動し、50℃の高温で0.2C率(current rate、C-rate)で100回の充/放電を遂行した。
6)しわ又は引裂発生の有無
【0234】
100回の充放電後、二次電池を分解して銅箔にしわ又は引裂が発生するか否かを観察した。銅箔にしわ又は引裂が発生した場合を“発生”で表示し、発生しない場合を“なし”で表記した。
【0235】
以上の試験結果は表3及び4の通りである。
【表3】
【表4】
【0236】
表1、表3及び表4を参照すると、次のような結果を確認することができる。
【0237】
ヒ素(As)イオンとレベリング剤(C成分)を過量で含む電解液によって製造された比較例1の銅箔で引裂が発生した。
【0238】
光沢剤(A成分)と粗度調節剤(D成分)を過量で含む電解液によって製造された比較例2の銅箔は高い残留応力を有し、カール(curl)と引裂が発生した。
【0239】
有機添加剤として過量のレベリング剤(C成分)のみ含む電解液によって製造された比較例3の銅箔は高い残留応力を有し、カールと引裂が発生した。
【0240】
ヒ素(As)イオンと塩素(Cl)を過量で含む電解液によって製造された比較例4の銅箔でしわと引裂が発生した。
【0241】
一方、本発明による製造例1-4の銅箔では20mm以下のカール(curl)が発生し、しわと引裂が発生しなかった。
【0242】
以上で説明した本発明は前述した実施例及び添付図面に限定されるものではなく、本発明の技術的事項を逸脱しない範疇内でさまざまな置換、変形及び変更が可能であることが本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明らかであろう。したがって、本発明の範囲は後述する特許請求範囲によって限定され、特許請求範囲の意味、範囲及びその等価の概念から導出される全ての変更又は変形の形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0243】
101、102:銅箔
211、212:防錆膜
310、320:活物質層
103、104:二次電池用電極
MS:マット面
SS:光沢面