(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】二重硬化性樹脂組成物、該組成物から調製された硬化体、及び該硬化体を含む電子機器
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20230905BHJP
C08L 83/08 20060101ALI20230905BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/08
C08K5/5415
(21)【出願番号】P 2020503902
(86)(22)【出願日】2018-07-31
(86)【国際出願番号】 US2018044586
(87)【国際公開番号】W WO2019028013
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-14
(31)【優先権主張番号】10-2017-0097097
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イム、ジョンオク
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-151328(JP,A)
【文献】特開平04-293962(JP,A)
【文献】特開2005-082734(JP,A)
【文献】特表2017-500394(JP,A)
【文献】特開平04-198270(JP,A)
【文献】特開2016-132705(JP,A)
【文献】特表2017-508853(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103992650(CN,A)
【文献】特開昭62-197453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00 -83/16
C08K 5/5415
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのアルコキシ基を含む第1のポリオルガノシロキサンと、
(B)
以下の化学式A:
【化1】
[式中、mは43、nは5である。]
で表される
[(メルカプトプロピル)メチルシロキサン]-ジメチルシロキサンコポリマーである、第2のポリ
オルガノシロキサンと、
(C)以下の化学式1:
(R
x)
2SiX
2 [化学式1]
[化学式1において、R
xは非置換C1~C4アルキル基であり、Xは、C1~C20アルコキシ基である]で表される少なくとも1つのシラン化合物又はその部分加水分解化合物と、
(D)少なくとも1つの光開始剤と、
(E)少なくとも1つの縮合反応触媒と、
を含む二重硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記第1のポリオルガノシロキサンが、以下の化学式2:
【化2】
[化学式2において、
R
1~R
8は、それぞれ独立して置換若しくは非置換C1~C20アルキル、置換若しくは非置換C3~C20シクロアルキル、置換若しくは非置換C2~C20アルケニル、置換若しくは非置換C2~C20アルキニル、置換若しくは非置換C6~C20アリール、置換若しくは非置換C6~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換C1~C20ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~C20ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C1~C20ヘテロアリール、置換若しくは非置換C1~C20アルコキシ、又はこれらの組み合わせであり、但し、
R
1~R
6のうちの少なくとも1つは、置換又は非置換C2~C20アルケニルであり、
R
1~R
6のうちの少なくとも1つは、置換又は非置換C1~C20アルコキシであり、
nは、50~1,000の範囲の整数である]で表される、請求項1に記載の二重硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
化学式2において、R
1~R
6のうちの少なくとも1つが置換又は非置換C2~C10アルケニルであり、R
1~R
6のうちの少なくとも1つが置換又は非置換C1~C10アルコキシである、請求項2に記載の二重硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
化学式1において、R
xが、置換又は非置換C1~C4アルキルであり、XがC1~C6アルコキシである、請求項
1~3のいずれか一項に記載の二重硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(D)前記光開始剤が、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、及びエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートのうちの少なくとも1つを含む、請求項
1~4のいずれか一項に記載の二重硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
(E)前記縮合反応触媒が、テトラ(イソプロポキシ)チタン、テトラ(n-ブトキシ)チタン、テトラ(t-ブトキシ)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、及びジ(イソプロポキシ)ビス(メチルアセトアセテート)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)チタンのうちの少なくとも1つを含む、請求項
1~5のいずれか一項に記載の二重硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
100重量部の(A)前記第1のポリオルガノシロキサンに対して、
1~30重量部の(B)前記第2のポリオルガノシロキサンと、
0.5~30重量部の(C)前記シラン化合物又はその部分加水分解化合物と、
0.05~5重量部の(D)前記光開始剤と、
0.01~10重量部の(E)前記縮合反応触媒と、
を含む、請求項
1~6のいずれか一項に記載の二重硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
補強充填剤、光重合阻害剤、及び顔料のうちの少なくとも1つを含む(F)添加剤を更に含む、請求項
1~7のいずれか一項に記載の二重硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
二重硬化性樹脂組成物を硬化させることにより調製した硬化体であって、前記二重硬化性樹脂組成物が、請求項
1~8のいずれか一項に記載の二重硬化性樹脂組成物である、硬化体。
【請求項10】
請求項
9に記載の硬化体を含む、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年7月31日に出願された韓国特許出願第10-2017-0097097号の優先権及び全ての利点を主張するものであり、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
二重硬化性樹脂組成物、該組成物から調製された硬化体、及び該硬化体を含む電子機器が開示される。
【背景技術】
【0003】
シリコーン材料は、消費市場だけではなく、業界でシーラント、接着剤、コーティング材、及びポッティング化合物などでも広く使用されている。このような材料としては、室温で空気中の水分によって硬化することができる室温加硫(RTV)シリコーン、高温加硫(HTV)シリコーン、及び光(UV-Vis)硬化性シリコーンなどが挙げられる。
【0004】
一般に、室温硬化性シリコーン材料(又は湿気硬化性シリコーン材料)は、硬化に別個の加熱プロセスが必要とされないため、電子機器内のシーラント及び接着剤として使用される。このような室温硬化性シリコーン組成物は、電気回路又は電極と接触している状態で硬化された場合、長時間経過後にその電気回路又は電極からシリコーン硬化体を除去し、補修及び再利用できるという特徴を有する。
【0005】
しかしながら、室温硬化性シリコーン組成物は、完全に硬化するまでに時間がかかるという欠点を有する。一般的な室温硬化性シリコーン組成物の場合、基材への接着性が良好であるため、シリコーン硬化体を基材から取り外す際に、硬化体が破損したり、凝集破壊を引き起こすという問題があった。
【0006】
室温硬化性シリコーン組成物とは異なり、光硬化性シリコーン組成物は、UV-Vis光によるラジカル重合により、非常に高い反応速度を示す。このような光硬化性シリコーン材料は硬化速度が速いため、硬化体を非常に迅速に提供することができる。
【0007】
しかしながら、光硬化性シリコーン組成物は、UV-Vis照射に直接接触する表面領域では優れた硬化性を有するが、遮られた領域では硬化性が乏しく、特に、UV-Vis照射されないこのような領域の材料は硬化しないという問題がある。
【0008】
上記のような既知の硬化性シリコーン材料の欠点を示すことなく、室温硬化及びUV-Vis照射による硬化の両方に優れた特性を示す、二重硬化性組成物を探索することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2015/098118号パンフレット(2015.07.02)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一実施形態は、光によって迅速に硬化することができる二重硬化性樹脂組成物、及び高い硬度、並びに遮られた領域における優れた硬化性、優れた接着性及び剥離性を提供する。
【0011】
別の実施形態は、二重硬化性樹脂組成物を硬化させることにより調製される硬化体を提供する。
【0012】
更に別の実施形態は、硬化体を含む電子機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一実施形態によれば、(A)1分子中に少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのアルコキシ基を含む第1のポリオルガノシロキサンと、(B)シロキサン主鎖の側鎖上で1分子中に少なくとも2つの光反応性官能基を含む第2のポリオルガノシロキサンと、(C)以下の化学式1で表される少なくとも1つのシラン化合物又はその部分加水分解化合物と、(D)少なくとも1つの光開始剤と、(E)少なくとも1つの縮合反応触媒と、を含む二重硬化性樹脂組成物が提供される:
(Rx)2SiX2 [化学式1]
化学式1において、Rxは一価炭化水素基であり、Xは、C1~C20アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン、カルボキシル基、又はこれらの組み合わせである。
【0014】
第1のポリオルガノシロキサンは、以下の化学式2で表され得る。
【化1】
化学式2において、R
1~R
8は、それぞれ独立して置換若しくは非置換C1~C20アルキル、置換若しくは非置換C3~C20シクロアルキル、置換若しくは非置換C2~C20アルケニル、置換若しくは非置換C2~C20アルキニル、置換若しくは非置換C6~C20アリール、置換若しくは非置換C6~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換C1~C20ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~C20ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C1~C20ヘテロアリール、置換若しくは非置換C1~C20アルコキシ、又はこれらの組み合わせであり、但し、
R
1~R
6のうちの少なくとも1つは、置換又は非置換C2~C20アルケニルであり、
R
1~R
6のうちの少なくとも1つは、置換又は非置換C1~C20アルコキシであり、
nは、50~1,000の範囲の整数である。
【0015】
光反応性官能基はメルカプト基であってもよい。
【0016】
化学式2において、R1~R6のうちの少なくとも1つが置換又は非置換C2~C10アルケニルであってもよく、R1~R6のうちの少なくとも2つが置換又は非置換C1~C10アルコキシである。
【0017】
第2のポリオルガノシロキサンは、以下の化学式3で表される:
【化2】
化学式3において、
R
9~R
14は、それぞれ独立して置換又は非置換C1~C20アルキル、置換若しくは非置換C3~C20シクロアルキル、置換若しくは非置換C6~C20アリール、置換若しくは非置換C6~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換C1~C20ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~C20ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C1~C20ヘテロアリール、置換若しくは非置換C1~C20アルコキシ、又はこれらの組み合わせであり、
R
15~R
18は、それぞれ独立してメルカプト基、メルカプト基を含む一価炭化水素基、置換若しくは非置換C1~C20アルキル、置換若しくは非置換C3~C20シクロアルキル、置換若しくは非置換C6~C20アリール、置換若しくは非置換C6~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換C1~C20ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~C20ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C1~C20ヘテロアリール、又はこれらの組み合わせであり、但し、
R
17及びR
18のうちの少なくとも1つはメルカプト基又はメルカプト基を含む一価炭化水素基であり、
pは0~100の範囲の整数であり、qは2~100の範囲の整数である。
【0018】
化学式3において、R15及びR16は、それぞれ独立して、それぞれ置換又は非置換C1~C20アルキルであってもよく、R17又はR18は、メルカプト基を含む一価炭化水素基であってもよく、pは0~100の範囲の整数であってもよく、qは2~100の範囲の整数であってもよい。
【0019】
化学式3において、R9~R14は、それぞれ独立して置換又は非置換C1~C10アルキルであってもよい。
【0020】
化学式1において、Rxは、置換又は非置換C1~C4アルキルであってよく、XはC1~C6アルコキシである。
【0021】
光開始剤(D)は、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、及びエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0022】
(E)縮合反応触媒が、テトラ(イソプロポキシ)チタン、テトラ(n-ブトキシ)チタン、テトラ(t-ブトキシ)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、及びジ(イソプロポキシ)ビス(メチルアセトアセテート)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)チタンのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0023】
二重硬化性樹脂組成物は、100重量部の(A)第1のポリオルガノシロキサンに対して、1~30重量部の(B)第2のポリオルガノシロキサンと、0.5~30重量部の(C)シラン化合物又はその部分加水分解化合物と、0.05~5重量部の(D)光開始剤と、0.01~10重量部の(E)縮合反応触媒と、を含み得る。
【0024】
二重硬化性樹脂組成物は、補強充填剤、光重合阻害剤、及び顔料のうちの少なくとも1つを含む(F)添加剤を更に含み得る。
【0025】
別の実施形態によれば、二重硬化性樹脂組成物を硬化させることにより調製される硬化体が提供される。
【0026】
更なる実施形態によれば、硬化体を含む電子機器が提供される。
【0027】
発明の効果
一実施形態による二重硬化性樹脂組成物は、光により速やかに硬化させることができ、遮られた領域で優れた硬化性を有する。
【0028】
また、一実施形態による二重硬化性組成物を硬化させることにより調製された硬化体は、高い硬度、並びに優れた接着性及び剥離性を示し、電子機器に使用した場合に、優れた補修性及び再作業性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の例示的な実施形態について詳細に説明する。例示的な実施形態は、本発明の範囲に限定されることなく、本発明を説明するために具体化された例として機能する。
【0030】
本明細書で使用するとき、特定の定義が別途提供されない場合、用語「一価炭化水素基」は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、又はハロゲン化アルキル基を指し得る。
【0031】
本明細書で使用するとき、特定の定義が別途提供されない場合、用語「アルキル」は、C1~C20アルキルを指してもよく、用語「シクロアルキル」は、C3~C20シクロアルキルを指してよく、用語「アルケニル」は、C2~C20アルケニルを指してもよく、用語「アリール」は、C6~C20アリールを指してもよく、用語「アリールアルキル」は、C6~C20アリールアルキルを指してもよく、用語「ハロゲン化アルキル」は、アルキル基の少なくとも1つの水素が、ハロゲン基のうちの少なくとも1つで置換されたC1~C20アルキル基を指してもよい。
【0032】
本明細書で使用するとき、特定の定義が別途提供されない場合、用語「置換された」は、ハロゲン(F、Br、Cl、又はI)、ヒドロキシ基、C1~C20アルコキシ基、ニトロ、シアノ基、アミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、メルカプト基(チオール基)、エステル基、エーテル基、カルボキシル基又はその塩、スルホン酸基又はその塩、リン酸基又はその塩、C1~C20アルキル基、C2~C20アルケニル基、C2~C20アルキニル基、C6~C30アリール基、C3~C20シクロアルキル基、C3~C20シクロアルケニル基、C3~C20シクロアルキニル基、C2~C20ヘテロシクロアルキル基、C2~C20ヘテロシクロアルケニル基、C2~C20ヘテロシクロアルキニル基、C3~C20ヘテロアリール基、又はこれらの組み合わせを含む、化合物の水素の代わりに、少なくとも1つの置換基で置換されたものを指してもよい。
【0033】
本明細書で使用するとき、特定の定義が別途提供されない場合、用語「ヘテロ」は、1つの化学式中のN、O、S、及びPから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を指してもよい。
【0034】
本明細書で使用するとき、特定の定義が別途提供されない場合、用語「組み合わせ」は、混合又は共重合を指す。
【0035】
以下、一実施形態による二重硬化性樹脂組成物について説明する。
【0036】
一実施形態によれば、(A)1分子中に少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのアルコキシ基を含む第1のポリオルガノシロキサンと、(B)シロキサン主鎖の側鎖上で1分子中に少なくとも2つの光反応性官能基を含む第2のポリオルガノシロキサンと、(C)以下の化学式1で表される少なくとも1つのシラン化合物又はその部分加水分解化合物と、(D)少なくとも1つの光開始剤と、(E)少なくとも1つの縮合反応触媒と、を含む二重硬化性樹脂組成物が提供される:
(Rx)2SiX2 [化学式1]
化学式1において、Rxは一価炭化水素基であり、Xは、C1~C20アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン、カルボキシル基、又はこれらの組み合わせである。
【0037】
従来の光硬化性シリコーン組成物は、迅速な硬化プロセスに好適であるが、UV照射と直接接触する表面領域においてのみ良好な硬化性を有し、遮られた領域では硬化性が乏しく、そのような領域での硬化の進行が不十分である。また、湿気硬化性樹脂組成物は、硬化の進行が遅いという問題があるため、その硬化速度は自動化された製造プロセスを迅速に支持するのに好適ではない。
【0038】
一実施形態による二重硬化性樹脂組成物は、第1のポリオルガノシロキサンと、第2のポリオルガノシロキサンと、化学式1で表されるシラン化合物又はその部分加水分解化合物と、を含む。こうして、一実施形態では、光により速やかに硬化させることができる二重硬化性樹脂組成物、及び高い硬度、並びに遮られた領域における優れた硬化性、優れた接着性及び剥離性が提供される。
【0039】
特に、1分子中に少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのアルコキシ基を含む第1のポリオルガノシロキサンは、側鎖上で1分子中に少なくとも2つの光反応性官能基を含む第2のポリオルガノシロキサンと縮合する。これにより、迅速な初期硬化速度を確保することができるため、製造の進行効率を向上させるのに好適である。また、化学式1で表されるシラン化合物を含む一実施形態による二重硬化性樹脂組成物は、光硬化後に硬化しない遮られた領域で硬化処理することにより、優れた硬度を示す。また、一実施形態による二重硬化性樹脂組成物を用いて調製した硬化体により、基材に対して優れた接着性及び剥離性が示され。こうして、このような硬化体を用いた電子機器は、優れた補修性及び再作業性を示す。
【0040】
以下、本実施形態による二重硬化性樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
【0041】
(A)第1のポリオルガノシロキサン
一実施形態による第1のポリオルガノシロキサン(A)は、1分子中に少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのアルコキシ基を含む。
【0042】
一実施態様では、第1のポリオルガノシロキサンは、1分子中に少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも2つのアルコキシ基を含み得る。
【0043】
一例による第1のポリオルガノシロキサンは、以下の化学式2で表され得る。
【化3】
化学式2において、
R
1~R
8は、それぞれ独立して置換若しくは非置換C1~C20アルキル、置換若しくは非置換C3~C20シクロアルキル、置換若しくは非置換C2~C20アルケニル、置換若しくは非置換C2~C20アルキニル、置換若しくは非置換C6~C20アリール、置換若しくは非置換C6~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換C1~C20ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~C20ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C1~C20ヘテロアリール、置換若しくは非置換C1~C20アルコキシ、又はこれらの組み合わせであり、但し、
R
1~R
6のうちの少なくとも1つは、置換又は非置換C2~C20アルケニルであり、
R
1~R
6のうちの少なくとも1つは、置換又は非置換C1~C20アルコキシであり、
nは、50~1,000の範囲の整数である。
一実施態様では、R
1~R
6のうちの少なくとも1つは、置換又は非置換C2~C12アルケニルであってもよく、例えば置換又は非置換C2~C4アルケニルであってよく、例えばビニル基、アリル基、ブテリー基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、又はドデセニル基であってもよい。
【0044】
一実施態様では、R1~R6のうちの少なくとも1つは、置換又は非置換C1~C10アルコキシであってもよく、例えばC1~C4アルコキシであってもよく、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、又はブトキシであってもよい。
【0045】
一実施態様では、化学式2のR1~R6のうちの少なくとも2つは、置換又は非置換C1~C20アルコキシであってもよく、例えば置換又は非置換C1~C10アルコキシであってもよく、例えば置換又は非置換C1~C4アルコキシであってもよい。
【0046】
一実施態様では、第1のポリオルガノシロキサンの重量平均分子量は、20,000~50,000であってもよい。また、一実施形態による第1のポリオルガノシロキサンの粘度は、400cst~3,000cstであってもよい。第1のポリオルガノシロキサンの粘度が上記範囲内であると、得られる二重硬化性樹脂組成物の取り扱い性及び作業性が向上し、一実施形態による硬化体の機械的強度が向上する。
【0047】
(B)第2のポリオルガノシロキサン
一実施形態による第2のポリオルガノシロキサンは、1分子中に少なくとも2つの光反応性官能基を含む。第2のポリオルガノシロキサン中の光反応性官能基は、シロキサン主鎖の側鎖上に位置し、第1のポリオルガノシロキサンと架橋を形成する。
【0048】
光反応性官能基とは、光反応性官能基が光(UV/Vis)を照射されると光反応性を示すことができることを意味する。具体的には、光が照射されると、光反応性官能基が光反応を引き起こし、このプロセスにおいて、シロキサン主鎖の主鎖及び/又は側鎖上に位置する光反応性官能基が光開始剤によって基を形成する。こうして、縮合重合反応が起こる。
【0049】
一例では、光反応性官能基が、第2のポリオルガノシロキサン主鎖の側鎖上に位置することにより、光反応性官能基が官能基、すなわち第1のポリオルガノシロキサンの両端に位置するアルケニル基と結合するため、架橋密度の増加を示す。また、シロキサン主鎖の末端に位置する光反応性官能基と組み合わせることと比較して、硬化後に優れた硬度、弾性、強度を示す。
【0050】
一実施態様では、光反応性官能基はメルカプト基(-SH)であってもよく、例えば、光が照射されると、メルカプト基がチオール基(-S・)を形成して、第1のポリオルガノシロキサンに含有されるアルケニル基との架橋を引き起こす。
【0051】
このような基による架橋は、迅速に硬化可能な二重硬化性樹脂組成物を提供することができる。当該技術分野において周知であるように、多くの湿気硬化性シリコーン材料は、完全に硬化すると優れた物理的特性及び性能をもたらすが、硬化が遅いという欠点を有する。しかしながら、一実施形態による第2のポリオルガノシロキサンは、分子中に光反応性官能基を含有することにより、湿気硬化性樹脂組成物の欠点を解決する。
【0052】
一例による第2のポリオルガノシロキサンは、以下の化学式3で表され得る。
【化4】
化学式3において、
R
9~R
14は、それぞれ独立して置換又は非置換C1~C20アルキル、置換若しくは非置換C3~C20シクロアルキル、置換若しくは非置換C6~C20アリール、置換若しくは非置換C6~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換C1~C20ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~C20ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C1~C20ヘテロアリール、置換若しくは非置換C1~C20アルコキシ、又はこれらの組み合わせであり、
R
15~R
18は、それぞれ独立してメルカプト基、置換若しくは非置換C1~C20アルキル、置換若しくは非置換C3~C20シクロアルキル、置換若しくは非置換C6~C20アリール、置換若しくは非置換C6~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換C1~C20ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~C20ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C1~C20ヘテロアリール、又はこれらの組み合わせであり、但し、
R
17及びR
18のうちの少なくとも1つはメルカプト基又はメルカプト基を含む一価炭化水素基であり、
pは0~100の範囲の整数であり、qは2~100の範囲の整数である。
【0053】
一実施態様では、R17及びR18のうちの少なくとも1つは、メルカプト基(-SH)又はメルカプト基を含む置換若しくは非置換C1~C20アルキルであってもよい。
【0054】
一実施態様では、R17及びR18のうちの少なくとも1つは、メルカプト基を含む置換又は非置換C1~C20アルキル、例えばメルカプト基を含む置換又は非置換C1~C10アルキル、例えばメルカプト基を含む置換又は非置換C1~C4アルキルであってもよい。
【0055】
一実施態様では、R15及びR16はそれぞれ独立して、それぞれ置換又は非置換C1~C20アルキルであってもよく、R17又はR18は、メルカプト基を含む一価炭化水素基であってもよく、pは0~100の範囲の整数であってもよく、qは2~100の範囲の整数であってもよい。
【0056】
一実施態様では、R9~R14は、それぞれ独立して置換又は非置換C1~C20アルキルであってもよく、例えばC1~C10アルキルであってもよく、例えばC1~C4アルキルであってもよい。
【0057】
一実施態様では、R9~R14は、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、又はブチルであってもよい。
【0058】
一実施態様では、第2のポリオルガノシロキサンの重量平均分子量は、500~1,500である。また、一実施形態による第2のポリオルガノシロキサンの粘度は、50cst~250cstである。第2のポリオルガノシロキサンの粘度が上記範囲内であると、得られる二重硬化性樹脂組成物の取り扱い性及び作業性が向上する。
【0059】
第2のポリオルガノシロキサンは、100重量部の第1のポリオルガノシロキサンに対して、1~30重量部、例えば1~20重量部、例えば5~20重量部、例えば5~15重量部を含んでもよい。第2のポリオルガノシロキサンが上記範囲内に含まれると、迅速な初期硬化速度が確保され、優れた貯蔵安定性が示される。
【0060】
(C)シラン化合物又はその部分加水分解化合物
一実施形態による二重硬化性樹脂組成物は、(C)以下の化学式1で表されるシラン化合物又はその部分加水分解化合物のうちの少なくとも1つを含む。化学式1で表されるシラン化合物は、第1のポリオルガノシロキサンとの架橋を形成する。
(Rx)2SiX2 [化学式1]
化学式1において、Rxは一価炭化水素基であり、Xは、C1~C20アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン、カルボキシル基、又はこれらの組み合わせである。
【0061】
一実施形態による二重硬化性樹脂組成物は、化学式1で表される少なくとも2つ以上の化合物を含んでもよい。
【0062】
一実施態様では、Rxは、置換又は非置換C1~C4アルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基であってもよい。
【0063】
一実施態様では、Xは、C1~C6アルコキシ基、例えばメトキシ基又はエトキシ基であってもよい。
【0064】
一実施態様では、化学式1で表されるシラン化合物は、ジメチルジメトキシシラン又はジメチルジエトキシシランであってもよいが、これらに限定されない。
【0065】
化学式1で表されるシラン化合物又はその部分加水分解化合物は、100重量部の第1のポリオルガノシロキサンに対して、0.5~30重量部、例えば0.5~20重量部、例えば0.5~15重量部を含み得る。シラン化合物が上記範囲内に含まれると、一実施形態による二重硬化性樹脂組成物の硬化性が十分に確保され、同時に水分遮断下で製造される組成物の貯蔵寿命が向上し、得られる組成物を空気中の水分により速やかに硬化させることができる。
【0066】
(D)光開始剤
一実施形態による二重硬化性樹脂組成物は、少なくとも1つの光開始剤を含む。光開始剤により、光硬化反応を開始させ、光硬化性樹脂組成物に通常使用することができる、従来から知られている光開始剤を使用することができる。
【0067】
一実施形態による光開始剤は、紫外線又は可視光中の光を吸収すれば、光開始剤及び光開始剤補助剤に限定されず、ラジカル重合が可能である。例えば、光開始剤は、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートなどからなる群から選択される2つ以上のうちの1つ又は混合物であってもよい。
【0068】
一実施態様では、光開始剤は、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、又はエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートであってもよく、例えばビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドであってもよい。
【0069】
光開始剤は、100重量部の第1のポリオルガノシロキサンに対して、0.05~5重量部、例えば0.05~2重量部、例えば0.05~1重量部を含んでもよい。上記範囲内の光開始剤が、例示的な二重硬化性樹脂組成物中に含まれる場合、露光時に光重合が十分に起こり得る。こうして、照射時に光重合が十分に起こり、未反応の開始剤の影響を受けることなく迅速な硬化が進行し、十分な硬度を示す硬化体を得ることができる。
【0070】
(E)縮合反応触媒
一実施形態による二重硬化性樹脂組成物は、少なくとも1つの縮合反応触媒を含む。一実施形態による縮合反応触媒(E)は、チタン化合物であってもよい。
【0071】
例えば、縮合反応触媒は、テトラ(イソプロポキシ)チタン、テトラ(n-ブトキシ)チタン、テトラ(t-ブトキシ)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(メチルアセトアセテート)チタン、又はジ(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)チタンであってもよいが、これらに限定されない。
【0072】
一実施態様では、縮合反応触媒は、ジ(イソプロポキシ)ビス(エチルアセトアセテート)チタンであってもよい。
【0073】
縮合反応触媒は、100重量部の第1のポリオルガノシロキサンに対して、0.01~10重量部、例えば0.05~10重量部、例えば0.05~5重量部、例えば0.05~3重量部を含んでもよい。上記範囲内の縮合反応触媒が、例示による二重硬化性樹脂組成物中に含まれる場合、得られる組成物を急速に反応させることができ、空気中の水分によって速やかに硬化させることができる。
【0074】
(F)添加剤
一実施形態による二重硬化性樹脂組成物は、添加剤のうちの少なくとも1つを更に含んでもよい。一実施形態による添加剤(F)は、補強充填剤、光重合阻害剤、顔料、及びこれらの混合物であってもよい。
【0075】
補強充填剤は、例えばヒュームドシリカ微粉末、沈降シリカ微粉末、溶融シリカ微粉末、焼成シリカ微粉末、ヒュームドチタンオキシド微粉末、ガラス繊維、並びにこれら微粉末をオルガノシラン、シラザン、及びシロキサンオリゴマーで表面処理して得られる疎水化微粉末を含んでもよく、例えばヒュームドシリカ微粉末であってもよい。微粉末の粒径は特に限定されるものではないが、レーザー回折/散乱式の粒度分布を用いた測定方法による微粉末のメジアン径は、例えば0.01μm~1,000μmの範囲であってもよい。
【0076】
補強充填剤は、100重量部の第1のポリオルガノシロキサンに対して、0.1~50重量部、例えば1~50重量部、例えば10~50重量部、例えば10~30重量部を含んでもよい。
【0077】
光重合阻害剤は、一実施形態による二重硬化性樹脂組成物の光硬化中のラジカル反応を阻害する。一実施態様では、光重合阻害剤は、ヒドロキノン、t-ブチルヒドロキノン、p-メトキシフェノール、ニトロベンゾン、BHT(2,6-ジ-テトラ-ブチル-4-メチルフェノール)、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシル-アミンなどを含む。
【0078】
一実施態様では、光重合阻害剤は、ジブチルヒドロキシトルエン、又はジブチルヒドロキシトルエンとアルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシル-アミンとの組み合わせであってもよい。
【0079】
光重合阻害剤は、100重量部の第1のポリオルガノシロキサンに対して、0.01~1重量部、例えば0.01~0.5重量部、例えば0.01~0.1重量部を含んでもよい。
【0080】
顔料は、二重硬化性樹脂組成物の用途で視覚的に区別するために使用され、色表現された材料を使用することができ、光(UV-Vis)によって透過させることができるが、これに限定されない。一実施態様では、顔料は少量で使用され、ナトリウムアルミノスルホシリケート又は酸化鉄などを含んでもよい。
【0081】
また、二重硬化性樹脂組成物には、物理的特性を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、接着促進剤、充填剤、光増感剤、界面活性剤などの他の添加剤を一定量添加することができる。
【0082】
別の実施形態によれば、二重硬化性樹脂組成物を使用して調製された硬化体が提供される。
【0083】
硬化体は、一実施形態による二重硬化性樹脂組成物を硬化させることにより調製される。硬化の方法は特に限定されるものではないが、一例では、最初に、急速硬化のために光(UV-Vis)への露光によって光硬化反応を進行し、次いで、空気中の水分と接触させることによって組成物を更に硬化させ、このように、UV-Vis露出部分及び遮られた領域を硬化させることにより一実施形態による硬化体を調製する。
【0084】
一実施形態による硬化体は、硬化中に接触した基材に対して優れた接着性を示し、基材から効率的に剥離できることにより、良好な剥離性を示す。
【0085】
更に別の実施形態によれば、硬化体を含む電気及び電子機器が提供される。
【0086】
電気及び電子機器は特に限定されるものではないが、酸化インジウムスズ(ITO)などの金属酸化膜電極が形成された電気回路又は電極と、ガラス、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、セラミック等の基材上に銀、銅、アルミニウム、金等の金属電極と、を含む電子機器が例示される。このような電極の例としては、液晶ディスプレイ(LCD)機器、様々なPCBモジュールの電極が挙げられ、本組成物は、速い硬化性、優れた補修性、及び再作業性を有し、電極のコーティング及びシーリング、様々な電気及び電子機器の水密性、気密性の保護ポッティング、ギャップ充填などに使用することができる。
【0087】
一実施態様では、このような電子機器は、硬化体の硬化中に接触した基材への高い接着性及び高い剥離性により、補修及び再作業が可能である。
【0088】
特に、一実施形態による二重硬化性樹脂組成物は、電子物品又は半導体物品用のギャップ充填組成物として有用である。二重硬化性樹脂組成物は、良好な流動性性能を維持し、それにより上記物品間の狭いギャップを容易に充填する。したがって、UV-Vis放射によって調製された硬化体により、電子物品又は半導体物品のこのような狭いギャップを十分に満たし、ギャップをしっかりと封止し、水密性、気密性、及びその確実性が得られる。更に、必要に応じて、硬化体は残留物を残さずに容易に除去され、硬化体を有する物品に対して、二重硬化性樹脂組成物による良好な再作業性がもたらされる。
【0089】
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に記載されている表現、及び特定の化合物、組成物又は方法に限定されず、これらは、添付の特許請求の範囲内にある特定の実施形態の間で変化し得ることが、理解されるべきである。本明細書で様々な実施形態の具体的な特徴又は態様の記述が依拠している任意のマーカッシュ群に関して、異なる、特殊な及び/又は不測の結果が、全ての他のマーカッシュ群の要素から独立して、それぞれのマーカッシュ群の各要素から得られる場合がある。マーカッシュ群の各要素は、個々に、及び、又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。
【0090】
更に、本発明の様々な実施形態を説明する際に依拠とされる任意の範囲及び部分範囲は、独立して及び包括的に、添付の特許請求の範囲内に入り、本明細書にその中の全部及び/又は一部の値が明記されていなくても、そのような値を包含する全範囲を説明及び想到するものと理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分的範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び部分的範囲は、更に関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9」の範囲は、更に、下方の3分の1、すなわち、0.1~0.3、中央の3分の1、すなわち、0.4~0.6、及び上方の3分の1、すなわち、0.7~0.9に描かれ得、これらは、個々に、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内であり、個々に、及び/又は包括的に依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などを本質的に含み、各部分範囲は、個々に、及び/又は包括的に依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けるものである。最終的に、開示した範囲内の個々の数が依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。例えば、「1~9」の範囲は、様々な個々の整数、例えば3、並びに、小数点(又は分数)を含む個々の数、例えば4.1を含み、これは、依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。
【0091】
以下、以下の実施例により、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものでないことを理解されたい。
【実施例】
【0092】
合成実施例1:第1のポリオルガノシロキサン(A-1)の合成
100重量部のヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)及び5~10重量部のビニルトリメトキシシランを、0.03~0.1重量部の酢酸と共に500mlの三口フラスコに添加し、混合物を撹拌機で混合した後、撹拌しながら温度を約150℃から約160℃の温度まで昇温した。3時間後、反応混合物を真空切断して残留触媒及びビニルトリメトキシシランを除去した。
【0093】
実施例1~2及び比較例1~5:二重硬化性樹脂組成物の調製
合成実施例1で調製した第1のポリオルガノシロキサンと、第2のポリオルガノシロキサン及びシラン化合物と、下記の成分とを、表1に示す組成物中で混合し、次いで室温で撹拌した。このようにして、実施例1~2及び比較例1~5に従って、二重硬化性樹脂組成物を調製した。
【0094】
(B-1)第2のポリオルガノシロキサン
:以下の化学式Aで表される[(メルカプトプロピル)メチルシロキサン]-ジメチルシロキサンコポリマー:
【化5】
式中、mは43、nは5である。
【0095】
(B-2)以下の化学式Bで表されるメルカプトジメトキシ末端保護ポリジメチルシロキサン:
【化6】
式中、nは、450cstの粘度(25℃)を提供する数である。
【0096】
(D)光開始剤:エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィネート
【0097】
(E)縮合反応触媒:ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン
【0098】
(F-1)補強充填剤:ヒュームドシリカ
【0099】
(F-2)光重合阻害剤:ジブチルヒドロキシトルエン
【0100】
(F-3)顔料:ナトリウムアルミノスルホシリケート
表1
【表1】
(単位:重量部)
【0101】
硬化体の調製及びその評価
実施例1~2及び比較例1~5で調製した二重硬化性樹脂組成物を、光硬化のために395nm又は405nmの波長で照射されるUV LEDランプを用いて、1,000~5,000mJ/cm2の範囲のエネルギーに露光し、光硬化反応を進行させた。そして、25℃±2℃、相対湿度50%±5%の条件下で室温硬化を進行させ、硬化体を調製した。
【0102】
(1)接着試験及び凝集破壊
実施例1~2及び比較例1~5の樹脂組成物を含む接着剤層をガラス基材上に25mm×10mm×1mmの大きさで適用し、その上に別のガラス基材をコーティングして、剪断試験が可能な形態を調製した。
【0103】
サンプルを、以下の方法によってそれぞれ調製した:1)光(UV-Vis)による露光で硬化する、2)25℃±2℃及び50%±5%室内湿度(Room Humidity、RH)、7日間の条件で、室温での硬化による光硬化されたサンプルを更に硬化する、3)25℃±2℃及び50%±5%室内湿度(Room Humidity、RH)、7日間、光(UV-Vis)による露光なしの条件で、室温で硬化させることにのみよって硬化させる。
【0104】
引張試験機を用いて、硬化したサンプルを50mm/分の速度で常に上下に引っ張ることによって、重ね剪断接着試験を実施した。重ね剪断接着試験後、接着破壊面の状態を目視で観察し、凝集破壊を引き起こす二重硬化性樹脂組成物の比を凝集破壊(以下、CF)比として測定した。
【0105】
100% CF比とは、硬化した接着剤の薄膜が、試験後に基材上に約100%のままであることを意味し、これは、剥離性が乏しいことを意味する。
【0106】
50% CF比は、硬化した接着剤の薄膜が、試験後に基材上に約50%のままであることを意味する。
【0107】
0% CF比とは、シリコーンゴム硬化体の剥離時の凝集破壊が阻害されたこと、及びシリコーンゴム硬化体が基材から良好な剥離性を有することを意味する。
【0108】
(2)硬度
実施例1~2及び比較例1~5の樹脂組成物は、厚さ1~2mmのシート状サンプルを調製し、サンプルを光硬化させて調製した。次いで、25℃±2℃及び50%±5%室内湿度(Room Humidity、RH)、7日間の条件で、室温で更に硬化させ、これらを6nm~8nmの厚さに積層した後、各硬化体のショア硬度を測定することにより、硬度を評価した。
【0109】
ショアA硬度をASTM D 2240-05を使用して測定した。
表2
【表2】
【0110】
実施例1~2に係る硬化体は、(A)1分子中に少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのアルコキシ基を含む第1のポリオルガノシロキサンと、(B)シロキサン主鎖の側鎖上で1分子中に少なくとも2つの光反応性官能基を含む第2のポリオルガノシロキサンと、(C)以下の化学式1で表される少なくとも1つのシラン化合物又はその部分加水分解化合物と、を含む。こうして、表2に示すように、硬化体は、ショアA30以上の優れた硬度を維持し、光硬化及び/又は湿気硬化後に凝集破壊が生じないため、優れた剥離性を示す。
【0111】
一方、室温硬化性樹脂であるシラン化合物のみを含む比較例2は、光硬化が起こらず、硬化反応速度が大幅に遅いという問題がある。また、ビニル末端保護ポリジメチルシロキサンを含む比較例3は、室温硬化に必要なシラン化合物を含まないため、遮られた領域で硬化を示さなかった。また、3つのメルカプト基を有する有機硬化剤を含む比較例4は、光(UV-Vis)反応によって迅速な硬化特性を示し、露光時に遮られた領域で硬化することができる。しかしながら、第1のポリオルガノシロキサンとの混和性は不十分であったため、混合時の透明性の低下、保管中の分離、及び硬化後の基材への接着の凝集破壊を示す。
【0112】
一実施形態による第2のポリオルガノシロキサンとは異なり、分子中のメルカプト基がシロキサン主鎖の末端に位置する比較例5では、最初に、UV-Vis露光による硬化時に第1のポリオルガノシロキサンの末端部の官能基と反応させる。こうして、樹脂の長さを長くする反応は、架橋反応よりも優先される。したがって、硬化組成物の硬化密度は著しく低く、硬化体は、光硬化及び室温硬化後の基材への接着性に関して、100%の凝集破壊率を示した。
【0113】
また、一実施形態による式1のシラン化合物以外のシラン化合物を含む比較例1では、凝集破壊率は、湿気硬化後の基材への接着性が100%であった。
【0114】
これにより、一実施形態による二重硬化樹脂組成物は、光硬化及び/又は湿気硬化後に優れた接着性及び剥離性を有し、それから調製される硬化体は、優れた硬度を示す。また、このような硬化体を含む電子機器は、優れた補修性及び再作業性を示す。
【0115】
本発明の多くの修正及び他の実施形態は、本発明が関係する当業者にとって想起されることになり、前述の説明で提示される教示の利点を有する。したがって、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されるものではなく、修正及び他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。